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特開2023-104055アレルゲン低減化剤及びアレルゲン低減化処理剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023104055
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】アレルゲン低減化剤及びアレルゲン低減化処理剤
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20230721BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20230721BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20230721BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230721BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20230721BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20230721BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20230721BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230721BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20230721BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20230721BHJP
   A61Q 5/06 20060101ALI20230721BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20230721BHJP
   A61K 31/765 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
C09K3/00 S
A61L9/01 X
A61P37/08
A61P17/00
A61P11/06
A61P11/02
A61K8/81
A61Q19/00
A61Q19/10
A61Q5/02
A61Q5/06
A61Q1/00
A61K31/765
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022004812
(22)【出願日】2022-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】510087564
【氏名又は名称】積水マテリアルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103975
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】赤峰 隆之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 太郎
(72)【発明者】
【氏名】西原 和也
【テーマコード(参考)】
4C083
4C086
4C180
【Fターム(参考)】
4C083AD111
4C083AD112
4C083CC02
4C083CC03
4C083CC12
4C083CC23
4C083CC25
4C083CC32
4C083CC38
4C083EE11
4C083EE12
4C083EE21
4C083EE41
4C086AA01
4C086AA02
4C086FA02
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA13
4C086MA16
4C086MA17
4C086MA58
4C086MA59
4C086MA63
4C086NA14
4C086ZA34
4C086ZA62
4C086ZA89
4C086ZB13
4C180AA17
4C180CB01
4C180EB06Y
4C180EB22X
4C180GG07
(57)【要約】
【課題】 本発明は、アレルゲンが特異抗体と反応するのを効果的に低減し、アレルギー症状の軽減或いはその発現の予防をすることができると共に、処理を施すアレルゲン対象物に着色を概ね生じさせることのないアレルゲン低減化剤を提供する。
【解決手段】 本発明のアレルゲン低減化剤は、ポリビニルフェノールを有効成分として含有し且つビニルフェノールのオリゴマーの含有量が1質量%以下であるので、優れたアレルゲン低減化効果を有していると共に、アレルゲン対象物に施しても、アレルゲン対象物に着色を殆ど生じさせることはなく、アレルゲン対象物の外観を損なうことがない。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルフェノールを有効成分として含有し且つビニルフェノールのオリゴマーの含有量が1質量%以下であることを特徴とするアレルゲン低減化剤。
【請求項2】
ダニ由来及び/又はスギ花粉由来のアレルゲンに対してアレルゲン低減化効果を奏することを特徴とする請求項1に記載のアレルゲン低減化剤。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のアレルゲン低減化剤を含むことを特徴とするアレルゲン低減化処理剤。
【請求項4】
溶媒と、上記溶媒に含有された請求項1に記載のアレルゲン低減化剤0.1~5質量%とを含有することを特徴とするアレルゲン低減化処理剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレルゲン低減化剤及びアレルゲン低減化処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎などの多くのアレルギー疾患が問題となっている。このアレルギー疾患の主な原因としては、住居内に生息するダニ類、特に、室内塵中に多く存在するヒョウヒダニのアレルゲン(Der1、Der2)や、主に春季に多量に空気中に浮遊するスギ花粉アレルゲン(Cry j1、Cry j2)などのアレルゲンが生活空間内に増加してきているためである。
【0003】
ヒョウヒダニのアレルゲンは、ヒョウヒダニそのものではなく、ヒョウヒダニの死骸や糞がアレルゲンとなるために、殺ダニ剤などを用いてヒョウヒダニを駆除しても、アレルギー疾患の根本的な解決にはならない。ダニを殺すことはかえってダニの死骸を増やすことになり、アレルギー症状をかえって悪化させる場合がある。
【0004】
又、スギ花粉アレルゲンであるCry j1やCry j2は、各々分子量が約40kDaの糖タンパク質、分子量が約37kDaの糖タンパク質である。スギ花粉アレルゲンは、鼻粘膜などに付着すると生体外異物として認識されて炎症反応を引き起こす。
【0005】
従って、アレルギー疾患の症状を軽減し或いは新たなアレルギー症状を防止するためには、生活空間からアレルゲンを完全に取り除くか、アレルゲンを不活性化させることが必要となる。
【0006】
アレルゲンは蛋白質であるので、アレルゲンを熱、強酸又は強アルカリなどで変性させると、アレルゲンはアレルゲン性を失うと考えられる。しかしながら、アレルゲンは非常に安定性が高く、家庭で安全に使用できる酸化剤、還元剤、熱、アルカリ、酸などでは容易に変性されない。
【0007】
又、アレルゲンに汚染されたアレルゲン対象物に存在するアレルゲンを変性させようとすると、アレルゲンの汚染場所であるアレルゲン対象物が条件によっては破損してしまう可能性があった。アレルゲン対象物としては、例えば、畳、絨毯、床、家具(ソファー、布ばり椅子、テーブル)、寝具(ベッド、布団、シーツ)、車輛内用品(シート、チャイルドシート)、車輛内装材(天井材など)、キッチン用品、ベビー用品、カーテン、壁紙、タオル、衣類、ぬいぐるみ、その他の繊維製品、空気清浄機(本体及びフィルター)などが挙げられる。
【0008】
そこで、特許文献1には、茶抽出物などを用いてアレルゲンを除去する方法が、特許文献2には、ヒドロキシ安息香酸系化合物又はその塩を用いてアレルゲンを除去する方法などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平6-279273号公報
【特許文献2】特開平11-292714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1及び2にて提案されているアレルゲンの除去方法は、アレルゲンを低減化させるために処理されるアレルゲン対象物を着色させるという問題点を有している。
【0011】
本発明は、アレルゲンが特異抗体と反応するのを効果的に低減し、アレルギー症状の軽減或いはその発現の予防をすることができると共に、処理を施すアレルゲン対象物に着色を概ね生じさせることのないアレルゲン低減化剤、及び、このアレルゲン低減化剤を含むアレルゲン低減化処理剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のアレルゲン低減化剤は、ポリビニルフェノールを有効成分として含有し且つビニルフェノールのオリゴマーの含有量が1質量%以下であることを特徴とする。
【0013】
本発明のアレルゲン低減化処理剤は、アレルゲン低減化剤を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明のアレルゲン低減化剤は、優れたアレルゲン低減化効果を有していると共に、アレルゲン対象物に施しても、アレルゲン対象物に着色を殆ど生じさせることはなく、アレルゲン対象物の外観を損なうことがない。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のアレルゲン低減化剤は、ポリビニルフェノールを有効成分として含有し且つビニルフェノールのオリゴマーの含有量が1質量%以下である。
【0016】
アレルゲン低減化剤は、ポリビニルフェノールを有効成分として含有している。ポリビニルフェノールは、ビニルフェノールを汎用の要領でラジカル重合して製造することができる。ポリビニルフェノールは、ビニルフェノールの重合物のうち、ビニルフェノールのオリゴマーを除いたものをいう。即ち、ポリビニルフェノールは、重合度が6以上のビニルフェノールの重合物をいう。
【0017】
アレルゲン低減化剤中におけるポリビニルフェノールの含有量は、アレルゲン低減化剤のアレルゲン低減化効果が向上するので、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、96質量%以上がより好ましく、97質量%以上がより好ましく、98質量%以上がより好ましく、99質量%以上がより好ましい。
【0018】
ここで、アレルゲン低減化剤とは、アレルゲン低減化効果を有するものをいい、又、「アレルゲン低減化効果」とは、ヒョウヒダニのアレルゲン(Der1、Der2)、空気中に浮遊するスギ花粉アレルゲン(Cryj1、Cryj2)、犬や猫に起因するアレルゲン(Can f1、Fel d1)などのアレルゲンを変性し或いは吸着し、アレルゲンの特異抗体に対する反応性を低減化する効果をいう。このようなアレルゲン低減化効果を確認する方法としては、例えば、ニチニチ製薬社から市販されているELISAキットを用いてELISA法によりアレルゲン量を測定する方法、アレルゲン測定具(住化エンビロサイエンス社製 商品名「マイティーチェッカー」)を用いてアレルゲン性を評価する方法などが挙げられる。
【0019】
ポリビニルフェノール中の水酸基(-OH)の位置は特に限定されないが、アレルゲン低減化効果に優れているので、ポリビニルフェノールは、ポリ(p-ビニルフェノール)が好ましい。
【0020】
ポリビニルフェノールを有効成分として含有するアレルゲン低減化剤は、優れたアレルゲン低減化効果を奏するが、経時的に着色を生じることがあるという問題点を有しており、発明者らが鋭意検討した結果、ポリビニルフェノールに含まれているビニルフェノールのオリゴマーを低減化することによって、優れたアレルゲン低減化効果を維持しつつ、アレルゲン低減化剤の着色化を抑えることができることを見出した。
【0021】
ビニルフェノールのオリゴマーは、ビニルフェノールのラジカル重合時に生成される低分子量成分であり、重合度が5以下のビニルフェノールの重合物である。アレルゲン低減化剤において、ビニルフェノールのオリゴマーの含有量は、1質量%以下であり、0.9質量%以下が好ましく、0.85質量%以下がより好ましい。アレルゲン低減化剤中におけるビニルフェノールのオリゴマーの含有量が1質量%以下であると、アレルゲン低減化剤の経時的な着色を防止することができる。
【0022】
アレルゲン低減化剤中におけるビニルフェノールのオリゴマーの含有量を低減化する方法としては、特に限定されない。例えば、ポリビニルフェノールの重合液中から残存モノマーを除去する時に、通常は250℃以上の条件下にて減圧乾燥を行うが、乾燥温度が高いとポリビニルフェノールの一部が分解されてビニルフェノールのオリゴマーが生成される可能性が高くなる。そこで、ポリビニルフェノールの重合液中からの残存モノマーの除去を、凍結乾燥により行ったり、又は、乾燥温度を150℃以下での溶媒置換により行うなどして、低温にて残存モノマーの除去を行うことによって、ビニルフェノールからポリビニルフェノールのオリゴマーが生成することを低減させ、ビニルフェノールのオリゴマーの含有量を低減化させる方法が挙げられる。
【0023】
アレルゲン低減化剤中に含まれているビニルフェノールのオリゴマー及びポリビニルフェノールを含む重合物全体の重量平均分子量は、2000以上が好ましく、3000以上がより好ましく、5000以上がより好ましく、6000以上がより好ましく、7000以上がより好ましく、8000以上がより好ましく、9000以上がより好ましく、9500以上がより好ましい。ビニルフェノールのオリゴマー及びポリビニルフェノールを含む重合物全体の重量平均分子量が3000以上であると、アレルゲン低減化剤の黄変を低減化し、アレルゲン対象物にアレルゲン低減化剤を処理した場合に、アレルゲン対象物の外観を損なうことなく、アレルゲン低減化効果をより効果的に発現させることができると共に、アレルゲン低減化剤1分子当たりのアレルゲンとの吸着点が増大し、アレルゲン低減化剤とアレルゲンとの相互作用が強くなり、アレルゲン低減化剤のアレルゲン低減化効果を向上させることができる。
【0024】
アレルゲン低減化剤中に含まれているビニルフェノールのオリゴマー及びポリビニルフェノールを含む重合物全体の重量平均分子量は、20000以下が好ましく、15000以下がより好ましく、14000以下がより好ましく、13000以下がより好ましく、12000以下がより好ましく、11000以下がより好ましく、10000以下がより好ましい。ビニルフェノールのオリゴマー及びポリビニルフェノールの重量平均分子量が1000000以下であると、アレルゲン低減化剤の凝集性が低減され、結果としてアレルゲン低減化剤とアレルゲンとが相互作用しやすい形態となり、アレルゲン低減化剤のアレルゲン低減化効果が向上する。
【0025】
アレルゲン低減化剤中に含まれているビニルフェノールのオリゴマー及びポリビニルフェノールの重合物全体の分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)は、アレルゲン低減化剤を用いて作製されたアレルゲン低減化製品に均質なアレルゲン低減化効果を付与することができるので、10以下が好ましく、5以下がより好ましく、3以下がより好ましい。
【0026】
なお、本発明において、ポリマー及びオリゴマーを含む重合物の重量平均分子量及び数平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって測定されたポリスチレン換算した値である。
【0027】
例えば、下記測定装置及び測定条件にて測定することができる。
ゲルパミエーションクロマトグラフ:Waters社製 商品名「2690 Separations Model」
カラム:昭和電工社製 商品名「GPC KF-806L」
検出器:示差屈折計
サンプル流量:1mL/min
カラム温度:40℃
溶出液:THF
【0028】
次に、アレルゲン低減化剤の使用要領について説明する。アレルゲン低減化剤は、スプレー型、エアゾール型、マトリックスへの混合などの汎用の使用方法を用いることができる。
【0029】
アレルゲン低減化剤を溶媒に溶解或いは分散させてアレルゲン低減化処理剤とし、このアレルゲン低減化処理剤に必要に応じて水溶剤、油剤、乳剤、懸濁剤などを配合することによって、アレルゲン低減化剤をスプレー型のアレルゲン低減化処理剤とすることができる。なお、スプレー型とは、常圧下にあるアレルゲン低減化処理剤に圧力を加えてアレルゲン低減化剤を噴霧する使用方法をいう。
【0030】
なお、上記溶媒としては、例えば、水(好ましくは、イオン交換水)、アルコール類(メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールなど)、炭化水素類(トルエン、キシレン、メチルナフタレン、ケロセン、シクロヘキサンなど)、エーテル類(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)、アミド類(N,N-ジメチルホルムアミドなど)などが挙げられる。
【0031】
アレルゲン低減化処理剤中におけるアレルゲン低減化剤の含有量は、0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましく、0.3質量%以上がより好ましい。アレルゲン低減化剤は、黄変が概ね抑制されているので、アレルゲン対象物に処理した場合にあっても、アレルゲン対象物の外観を損なうことがない。従って、アレルゲン低減化処理剤中におけるアレルゲン低減化剤の含有量を多くすることができ、アレルゲン低減化処理剤のアレルゲン低減化効果を向上させることができる。
【0032】
アレルゲン低減化処理剤中におけるアレルゲン低減化剤の含有量は、5質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましく、1.5質量%以下がより好ましい。アレルゲン低減化剤の含有量が5質量%以下であると、アレルゲン低減化剤の経時的な着色を防止することができる。
【0033】
そして、上記スプレー型のアレルゲン低減化処理剤に、固体担体(タルク、ベントナイト、クレー、カオリン、珪藻土、シリカ、バーミュライト、パーライトなど)を添加することにより、アレルゲン低減化剤をエアゾール型とすることができる。
【0034】
ここで、エアゾール型とは、容器内にアレルゲン低減化処理剤を噴射剤と共に該噴射剤が圧縮された状態に封入しておき、噴射剤の圧力によってアレルゲン低減化剤を霧状に噴霧させる使用方法をいう。なお、噴射剤としては、例えば、窒素、炭酸ガス、ジメチルエーテル、LPGなどが挙げられる。
【0035】
又、アレルゲン低減化剤を混合させるマトリックスとしては、アレルゲン低減化剤を変性させないものであれば、特に限定されず、例えば、多糖類やその塩、デキストリン、ゼラチン、高級アルコール、油脂類、ステアリン酸などの高級脂肪酸、パラフィン類、流動パラフィン類、白色ワセリン、ハイドロカーボンゲル軟膏、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、各種塗料が挙げられる。
【0036】
そして、生活用品などのように、アレルゲンが存在し或いはアレルゲンが将来に存在する可能性のある対象物、即ち、アレルゲンを低減化したい対象物(以下、「アレルゲン対象物」という)にアレルゲン低減化剤を噴霧、分散、塗布又は固着させることによって供給し、アレルゲン対象物をアレルゲン低減化製品とすることができる。このようにすることによって、アレルゲン対象物のアレルゲンを低減化することができる。上記アレルゲン低減化剤は、単独で用いられても2種以上が併用されてもよい。
【0037】
又、上記アレルゲン対象物としては、生活空間においてアレルゲンの温床となる生活用品などが挙げられる。この生活用品としては、例えば、畳、絨毯、家具(ソファー、ソファー内部の発泡体、布ばり椅子、テーブルなど)、寝具(ベッド、布団、布団の中綿、羽毛布団の羽毛、シーツ、マットレス、クッション及びこれらを構成している発泡体など)、車、飛行機、船などの車輛内用品及び車輛内装材(シート、チャイルドシート及びこれらを構成している発泡体など)、キッチン用品、ベビー用品、建築内装材(壁紙、床材など)、繊維製品(カーテン、タオル、衣類、ぬいぐるみなど)、網戸などのフィルター、医薬品、医薬部外品、化粧品などが挙げられる。
【0038】
特に、アレルゲン低減化剤は、不測の着色や、日常の生活環境における変色が殆どないことから、光による退色、変色が課題となる用途に適している。このような用途としては、例えば、建築内装材、車輛内用品、車輛内装材、フィルター、繊維製品が挙げられる。
【0039】
上記フィルターとは、分離、濾過、異物を排除する能力を有するものをいい、例えば、空気清浄機、エアコン、掃除機、換気扇などのフィルターや、埃や花粉などの進入を防ぐマスク、障子、虫などの進入を防ぐ網戸やカヤなどを挙げることができる。
【0040】
上記医薬品、医薬部外品及び化粧品とは、特に限定されるものではなく、例えば、皮膚外用剤、鼻スプレー、点眼剤、シャンプー、入浴剤、整髪料、ファンデーション、洗顔剤などを挙げることができる。
【0041】
上記建築内装材とは、特に限定されるものではなく、例えば、床材、壁紙、天井材、塗料、ワックスなどを挙げることができる。
【0042】
上記繊維製品とは、特に限定されるものではなく、例えば、寝具、カーペット、カーテン、タオル、衣類、ぬいぐるみなどを挙げることができる。
【0043】
上記車輛内用品及び車輛内装材とは、特に限定されるものではなく、例えば、シート、チャイルドシート、シートベルト、カーマット、シートカバー、絨毯などを挙げることができる。
【0044】
アレルゲン低減化剤におけるアレルゲン対象物に対する使用量としては、アレルゲン対象物100質量部に対して0.001質量部以上が好ましく、0.01質量部以上がより好ましく、0.02質量部以上がより好ましい。アレルゲン低減化剤におけるアレルゲン対象物に対する使用量としては、アレルゲン対象物100質量部に対して100質量部以下が好ましく、50質量部以下がより好ましく、30質量部以下がより好ましい。アレルゲン低減化剤の使用量が上記範囲内であると、アレルゲン対象物の黄変を防止しつつ、アレルゲン低減化剤のアレルゲン低減化効果をアレルゲン対象物に効果的に付与することができる。
【0045】
アレルゲン低減化剤が対象とするアレルゲンとしては、ヒョウヒダニのアレルゲン(Der1、Der2)、犬や猫に起因するアレルゲン(Can f1、Fel d1)などの動物性アレルゲン、空気中に浮遊するスギ花粉アレルゲン(Cryj1、Cryj2)、花粉などの植物性アレルゲンが挙げられる。特に効果のある動物アレルゲンとしては、ダニ類のアレルゲン(ダニ類、節足動物一蛛形綱-ダニ目の生物で、主に7つの亜目に分かれている。アシナガダニに代表される背気門、カタダニに代表される四気門、ヤマトマダニ、ツバメヒメダニに代表される後気門、イエダニ、スズメサシダニ代表される中気門、クワガタツメダニ、ナミホコリダニに代表される前気門、コナヒョウヒダニなどのヒョウヒダニ類、ケナガコナダニに代表される無気門、イエササラダニ、カザリヒワダニに代表される隠気門など)のいずれの種類でも対象となり得るが、室内塵中、特に寝具類に多く、アレルギー疾患の原因となるヒョウヒダニ類に特に効果がある。
【0046】
このように、アレルゲン低減化剤によれば、アレルゲン対象物に必要に応じてアレルゲン低減化剤を供給することによって、アレルゲン対象物に黄変を概ね生じさせることなく、アレルゲン対象物に存在し或いは将来、存在するであろうアレルゲンの特異抗体に対する反応性を低減化することができる。
【実施例0047】
以下に、本発明を実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0048】
(実施例1)
ポリビニルフェノール99.2質量%及びビニルフェノールのオリゴマー0.8質量%を含むアレルゲン低減化剤を用意した。このアレルゲン低減化剤をエチルアルコールに溶解させてアレルゲン低減化処理剤を作製した。アレルゲン低減化処理剤中におけるアレルゲン低減化剤の含有量は、1質量%であった。
【0049】
(比較例1)
ポリビニルフェノール98.7質量%及びビニルフェノールのオリゴマー1.3質量%を含むアレルゲン低減化剤を用意した。このアレルゲン低減化剤をエチルアルコールに溶解させてアレルゲン低減化処理剤を作製した。アレルゲン低減化処理剤中におけるアレルゲン低減化剤の含有量は、1質量%であった。
【0050】
ポリビニルフェノール及びビニルフェノールのオリゴマーを含む重合物全体について、重量平均分子量、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)を表1に示した。
【0051】
アレルゲン低減化剤のアレルゲン低減化性及び耐黄変性を下記の要領で測定し、アレルゲン低減化性の結果を表2に、耐黄変性の結果を表3に示した。
【0052】
(アレルゲン低減化性)
アレルゲンとして、コナヒョウヒダニの糞由来のダニアレルゲン(Derf1、LSL社製 商品名「Mite,Dermatophagoides farinae Crude Extract」)と、スギ花粉由来の花粉アレルゲン(Crj11、ITEA社製 商品名「スギ花粉抽出物」)を用意した。これらのアレルゲンの冷結乾燥粉末を別々にリン酸バッファー(pH7.6)に溶解させて、タンパク量が10μg/ミリリットルのアレルゲン液を調製した。
【0053】
次に、アレルゲン液を1ミリリットル供給した試験管を用意した。一辺が7cmの平面正方形状のポリエステル繊維から形成された試験布にアレルゲン低減化処理剤0.2gを噴霧した。アレルゲン低減化処理剤が噴霧された試験布を上記試験管に入れ、試験管を37℃にて振盪した。なお、アレルゲンとしてダニアレルゲンを用いた場合は18時間に亘って振盪し、花粉アレルゲンを用いた場合は10分間に亘って振盪した。
【0054】
次に、上記試験管内の液中におけるアレルゲンの存在量W1(ng/ミリリットル)を測定装置を用いて測定した。なお、測定装置としては、ニチニチ社から商品名「ELISAキット」にて市販されている測定装置を用いた。
【0055】
又、別の試験管を用意した。試験布にアレルゲン低減化処理剤を噴霧しなかったこと以外は、上述と同様の要領で、試験管内の液中におけるアレルゲンの存在量W0(ng/ミリリットル)を測定した。
【0056】
そして、下記式に基づいてアレルゲン低減化率(%)を算出して表2に示した。
アレルゲン低減化率(%)=100-(W1/W0)×100
【0057】
(耐黄変性)
ポリエステル繊維80質量%と綿繊維20質量%とからなる試験布を用意した。この試験布の表面にアレルゲン低減化処理剤を霧状に噴霧して乾燥させ、アレルゲン低減化剤0.4gを試験布1m2の表面に固着させて、複数枚のアレルゲン低減化製品を得た。試験開始前のアレルゲン低減化製品の表面を目視観察し、下記基準に基づいて評価した。
【0058】
アレルゲン低減化製品を4℃の雰囲気下にて、1ヶ月経過後及び3カ月経過後のそれぞれにおいて、アレルゲン低減化製品の表面を目視観察し、下記基準に基づいて評価した。
【0059】
雰囲気温度を25℃、40℃又は60℃に変更したこと以外は上述と同様の要領にて、試験開始前、1ヶ月経過後及び3カ月経過後のそれぞれにおいて、アレルゲン低減化製品の表面を目視観察した。色見本として、下記の4個の色見本0~3を用意した。色見本は0から3になるほど黄色が濃くなる。従って、色見本0は「黄変なし」と判断され、色見本3が「最も黄変した」と判断できる。アレルゲン低減化製品の表面の色と、色見本とを比較し、アレルゲン低減化製品の表面の色が最も近い色見本を評価として採用した。アレルゲン低減化製品の表面の色が、2個の色見本の何れに近いか判断が難しい場合は、色見本の数値の大きい方の色見本(例えば、色見本1と2との間で判断が難しい場合は、色見本2)を採用した。
【0060】
色見本0・・・sRGB:Red255,Green255,Blue255
色見本1・・・sRGB:Red255,Green252,Blue229
色見本2・・・sRGB:Red255,Green243,Blue153
色見本3・・・sRGB:Red255,Green225,Blue0
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】