IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社オーシャンズの特許一覧

<>
  • 特開-ブレード取付治具 図1
  • 特開-ブレード取付治具 図2
  • 特開-ブレード取付治具 図3
  • 特開-ブレード取付治具 図4
  • 特開-ブレード取付治具 図5
  • 特開-ブレード取付治具 図6
  • 特開-ブレード取付治具 図7
  • 特開-ブレード取付治具 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023104068
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】ブレード取付治具
(51)【国際特許分類】
   B28D 5/04 20060101AFI20230721BHJP
   B24B 27/06 20060101ALI20230721BHJP
   B23D 61/12 20060101ALI20230721BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
B28D5/04 D
B24B27/06 N
B23D61/12 B
H01L21/304 611W
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022004836
(22)【出願日】2022-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】520364347
【氏名又は名称】株式会社オーシャンズ
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】菊地 茂信
(72)【発明者】
【氏名】神 道広
【テーマコード(参考)】
3C069
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C069AA01
3C069BA06
3C069BB02
3C069BB03
3C069BC02
3C069BC06
3C069CA04
3C069EA01
3C069EA03
3C158AA05
3C158AA15
3C158AA16
3C158AB03
3C158CA01
3C158CB03
3C158CB06
3C158DA17
5F057AA52
5F057AA53
5F057BA01
5F057BB03
5F057CA01
5F057CA02
5F057DA14
5F057DA15
5F057EB15
5F057EB16
5F057GA27
(57)【要約】
【課題】作業姿勢が不安定になることなく、かつ、作業の安全性やブレードの損傷等に悪影響が及ぶことなく、作業者が1人であっても安全で確実にブレードを取り付けることができるブレード取付治具を提供する。
【解決手段】切断装置の駆動軸側ホイール211及び従動軸側ホイール221に巻き掛けられるエンドレスベルト状のブレード230を取り付ける際に用いられるブレード取付治具300であって、前記切断装置に着脱可能に固定される治具本体と、上限位置と下限位置との間を上下方向にスライド移動可能に前記治具本体に支持された可動部と、前記可動部を前記上限位置に保持する第1保持手段305、312と、前記可動部を前記下限位置に保持する第2保持手段306a、306b等と、を備え、前記可動部は、退避位置と前記ブレードを支持するブレード受位置との間を揺動可能なブレード受部310を備える。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断装置の駆動軸側ホイール及び従動軸側ホイールに巻き掛けられるエンドレスベルト状のブレードを取り付ける際に用いられるブレード取付治具であって、
前記切断装置に着脱可能に固定される治具本体と、
上限位置と下限位置との間を上下方向にスライド移動可能に前記治具本体に支持された可動部と、
前記可動部を前記上限位置に保持する第1保持手段と、
前記可動部を前記下限位置に保持する第2保持手段と、を備え、
前記可動部は、退避位置と前記ブレードを支持するブレード受位置との間を揺動可能なブレード受部を備えるブレード取付治具。
【請求項2】
前記第1保持手段は、前記治具本体及び前記可動部のうち一方に固定されたラッチ部と、他方に固定され、前記ラッチ部が係合する係合部と、を備え、前記可動部が前記上限位置に位置した場合、前記ラッチ部が前記係合部に係合することにより、前記可動部を前記上限位置に保持する請求項1に記載のブレード取付治具。
【請求項3】
前記ラッチ部は、ワンタッチで前記係合部に対する係合を解除する機能を有する請求項2に記載のブレード取付治具。
【請求項4】
前記治具本体は、前記切断装置に着脱可能に固定される取付基部を備え、
さらに、前記取付基部を前記切断装置に着脱可能に固定する固定手段を備える請求項1から3のいずれか1項に記載のブレード取付治具。
【請求項5】
前記取付基部を、前記切断装置に位置決めするための位置決め機構をさらに備える請求項4に記載のブレード取付治具。
【請求項6】
前記固定手段は、前記取付基部及び前記切断装置の一方に固定された磁石又はワンタッチ錠を含む請求項4又は5に記載のブレード取付治具。
【請求項7】
前記第2保持手段は、前記可動部に設けられた鉛直方向に延びるスライドシャフトと、前記治具本体に設けられ、前記スライドシャフトにスライド移動可能に係合したスライダーと、前記スライドシャフトに固定位置を調整可能に固定されたストッパと、を備え、前記可動部が、前記下限位置に位置した場合、前記ストッパの下面が前記スライダーの上面に当接することにより、前記可動部を前記下限位置に保持する請求項1から6のいずれか1項に記載のブレード取付治具。
【請求項8】
前記ブレードの受け部材には、ブレード刃面保護部が固定されている請求項1から7のいずれか1項に記載のブレード取付治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレード取付治具、特に、半導体素子製造の素材である、シリコンインゴットを代表とする、円柱状の単結晶体を切断加工するエンドレスベルト状のブレードを有する切断装置におけるブレード取付(交換を含む)の際に用いられるブレード取付治具に関する。
【背景技術】
【0002】
CZ法やFZ法等によって生成された単結晶シリコンインゴットは、その円筒外周部を平滑で一定の外径を有する状態にするための、円筒研削装置によって加工処理される。次いで、OF(オリエンテーションフラット)やノッチといった処理を付与された後、切断の工程に回される。この時に用いられるのが切断装置であり、この切断装置によりインゴットの両端部に残された生成時に出来る円錐状部分(トップ部コーンとボトム部コーン)を切断・排出処理を行ない、円筒部のみとする。その後に必要に応じて複数のブロックに切断したり、不要部分の切断排出や特定部位のサンプル切断・サンプル取出しなどを行う。
【0003】
ここで述べた切断装置の一般的な切断部分の構成は、2個のプーリーとブレードを有しており、プーリー間のブレードが張設された直線進行部分によってインゴットを切断する仕組みとなっている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上述のブレードはエンドレスの帯状薄板鋼の素材下縁部に、ダイヤモンド砥粒を蒸着させたものを用いており、該ブレードを取り付ける際には2個のプーリーに巻き掛けつつもブレードを支えて、且つ前述のプーリー間の距離を徐々に離しながら張設しなければならない。この作業は作業人員や方法に手間が掛かるために、専用の治具を用いる場合もある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-198917号公報
【特許文献2】特開2009-190138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような切断装置で扱おうとするワークの直径は、現在主流となっている300mm程度であり、対応する装置のブレードサイズは、概ね外周長で4m程度である。このサイズのブレードを2つのホイールにまたがって取り付けるには、ブレードをホイールに巻き掛ける様にして保持することと、ホイールの位置を移動調整することとを並行して行なわねばならない。そのため、この作業を行うために複数の人員が必要であり、当該作業を1人で行うことが難しいという課題がある。また、この作業を無理に1人で行おうとすれば、作業員の作業姿勢が不安定なものとなり、作業の安全性やブレードの損傷等に悪影響が及ぶという課題もある。
【0007】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、作業姿勢が不安定になることなく、かつ、作業の安全性やブレードの損傷等に悪影響が及ぶことなく、作業者が1人であっても安全で確実にブレードを取り付けることができるブレード取付治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかるブレード取付治具は、
切断装置の駆動軸側ホイール及び従動軸側ホイールに巻き掛けられるエンドレスベルト状のブレードを取り付ける際に用いられるブレード取付治具であって、
前記切断装置に着脱可能に固定される治具本体と、
上限位置と下限位置との間を上下方向にスライド移動可能に前記治具本体に支持された可動部と、
前記可動部を前記上限位置に保持する第1保持手段と、
前記可動部を前記下限位置に保持する第2保持手段と、を備え、
前記可動部は、退避位置と前記ブレードを支持するブレード受位置との間を揺動可能なブレード受部を備える。
【0009】
このような構成により、作業姿勢が不安定になることなく、かつ、作業の安全性やブレードの損傷等に悪影響が及ぶことなく、作業者が1人であっても安全で確実にブレードを取り付けることができる。
【0010】
これは、退避位置とブレードを支持するブレード受位置との間を揺動可能なブレード受部により、ブレードを支持することができることによるものである。
【0011】
また、ブレードの取り付けをより簡便に行うことができる。
【0012】
これは、スライド移動可能な可動部及び揺動可能なブレード受部を備えているため、ブレード受部をブレードの取り付け基準位置に迅速に配置できることによるものである。
【0013】
また、上記ブレード取付治具において、
前記第1保持手段は、前記治具本体及び前記可動部のうち一方に固定されたラッチ部と、他方に固定され、前記ラッチ部が係合する係合部と、を備え、前記可動部が前記上限位置に位置した場合、前記ラッチ部が前記係合部に係合することにより、前記可動部を前記上限位置に保持してもよい。
【0014】
このようにすれば、可動部を切断装置の可動範囲外の上限位置(退避位置)に保持することができる。
【0015】
また、上記ブレード取付治具において、
前記ラッチ部は、ワンタッチで前記係合部に対する係合を解除する機能を有していてもよい。
【0016】
また、上記ブレード取付治具において、
前記治具本体は、前記切断装置に着脱可能に固定される取付基部を備え、
さらに、前記取付基部を前記切断装置に着脱可能に固定する固定手段を備えていてもよい。
【0017】
また、上記ブレード取付治具において、
前記取付基部を、前記切断装置に位置決めするための位置決め機構をさらに備えていてもよい。
【0018】
このようにすれば、ブレード取付治具を切断装置に精度良く位置決めした状態で固定することができる。
【0019】
また、上記ブレード取付治具において、
前記固定手段は、前記取付基部及び前記切断装置の一方に固定された磁石又はワンタッチ錠を含んでいてもよい。
【0020】
このようにすれば、ブレード取付治具を切断装置に容易に着脱することができる。なお、切断装置から取り外したブレード取付治具は、別の同様の装置に着脱自在に固定して用いることができる。
【0021】
また、上記ブレード取付治具において、
前記第2保持手段は、前記可動部に設けられた鉛直方向に延びるスライドシャフトと、前記治具本体に設けられ、前記スライドシャフトにスライド移動可能に係合したスライダーと、前記スライドシャフトに固定位置を調整可能に固定されたストッパと、を備え、前記可動部が、前記下限位置に位置した場合、前記ストッパの下面が前記スライダーの上面に当接することにより、前記可動部を前記下限位置に保持してもよい。
【0022】
また、上記ブレード取付治具において、
前記ブレードの受け部材には、ブレード刃面保護部が固定されていてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明により、作業姿勢が不安定になることなく、かつ、作業の安全性やブレードの損傷等に悪影響が及ぶことなく、作業者が1人であっても安全で確実にブレードを取り付けることができるブレード取付治具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】インゴット切断装置1の斜視図である。
図2】(a)インゴット510の斜視図、(b)インゴット510の切断例の斜視図である。
図3】(a)切断装置本体100の外観図、(b)切断装置本体100内部に設置されている切断ユニット200の斜視図である。
図4】切断ユニット200の斜視図である。
図5図4から抜き出した主要構成の斜視図である。
図6】(a)従動軸ユニット220が適正張力位置に移動した場合のブレード230の形状を表す図、(b)従動軸ユニット220が無張力位置に移動した場合のブレード230の形状を表す図である。
図7】(a)ブレード取付治具300の斜視図(上限位置)、(b)ブレード取付治具300の斜視図(下限位置)である。
図8】ブレード取付治具300が着脱自在に固定された切断装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(実施形態1)
以下、本発明の実施形態1であるインゴット切断装置1について添付図面を参照しながら説明する。各図において対応する構成要素には同一の符号が付され、重複する説明は省略される。
【0026】
<インゴット切断装置1>
図1は、インゴット切断装置1の斜視図である。
【0027】
図1に示すようにインゴット切断装置1は、主に、切断装置本体100、切断ユニット200、排出ユニット250、ローダーユニット400、インゴット搬送台500、ブロック搬送ユニット600、排出バケットユニット700、サンプルマガジンユニット800、制御盤900を備えている。
【0028】
<インゴット510>
まず、加工対象のインゴット510の構成例について説明する。
【0029】
図2(a)はインゴット510の斜視図、図2(b)はその切断例を示す斜視図である。
【0030】
インゴット510は、例えば、シリコンインゴット(円筒研削済みのシリコンインゴット)である。インゴット510は、その中心軸AX510の同軸上両端にそれぞれ、トップ側コーン511、ボトム側コーン512を有し、その中央部には直動部513を有する。なお、インゴット切断装置1においては、インゴット510の300mm標準的仕様として、290~330mm程度の直径ΦD510のインゴット510を扱うことができる。また、インゴット510はインゴット切断装置1によってトップ側コーン511、ボトム側コーン512を切断後、図2(b)に示すように、ブロック部514及びサンプル部515に切断される。なお、ブロック部514及びサンプル部515それぞれのサイズ等は指定入力された加工指示によって設定される。
【0031】
<切断装置本体100>
次に、切断装置本体100の構成例について説明する。
【0032】
図3(a)は、切断装置本体100の外観斜視図である。図3(b)は切断装置本体100内部に設置されている切断ユニット200の斜視図である。
【0033】
切断装置本体100には、インゴット510を加工する切断ユニット200が内蔵されている。切断ユニット200は、昇降可能に支持されている。
【0034】
切断装置本体100は、インゴット510に対して予め定められた加工条件を満たすように所定の加工を施すことができる公知の切断装置である。加工条件は、例えば、インゴット510のトップ側コーン切断長・切断回数、ボトム側コーン切断長、直動部切断長・切断回数(分割数)、サンプル切断等の追加工を行うか否か等の条件で、オペレータが入力する。
【0035】
<切断ユニット200>
図4は切断ユニット200の斜視図、図5図4から抜き出した主要構成の斜視図である。
【0036】
図4図5に示すように、切断ユニット200は、主に、駆動軸ユニット210、従動軸ユニット220、ブレード230、駆動軸側ブレードカバー232、従動軸側ブレードカバー233、ブレード張設ユニット240を備えている。
【0037】
駆動軸ユニット210は、鉛直方向に延びる回転軸AX211を中心に回転可能な駆動軸側ホイール211(駆動プーリー)、当該駆動軸側ホイール211を回転軸AX211を中心に回転させる駆動用モータ212を備えている。なお、駆動軸側ホイール211の回転軸と駆動用モータ212の駆動軸は同軸上に配置されている。
【0038】
従動軸ユニット220は、鉛直方向に延びる回転軸AX221を中心に回転可能な従動軸側ホイール221(従動プーリー)を備えている。
【0039】
駆動軸側ホイール211の回転軸AX211と従動軸側ホイール221の回転軸AX221は、互いに平行である。また、駆動軸側ホイール211及び従動軸側ホイール221は、同一直径であり、かつ、同一水平面上に配置されている。
【0040】
ブレード230は、エンドレスベルト状(無端ベルト状)の帯状薄板鋼からなるブレードである。ブレード230の下縁部(全周)には、ダイヤモンド砥粒が蒸着されている。ブレード230は、駆動軸側ホイール211及び従動軸側ホイール221に巻き掛けられた状態で取り付けられる。
【0041】
ブレード張設ユニット240は、テンションシリンダ241を備えている。テンションシリンダ241は、例えば、油圧モータ(図示せず)により駆動される油圧シリンダである。テンションシリンダ241は、油圧モータを制御することにより駆動され、従動軸ユニット220を、駆動軸側ホイール211及び従動軸側ホイール221に巻き掛けられたブレード230の張力が適正張力(例えば、1,000kgf以上)となる適正張力位置(図6(a)参照)又は当該ブレード230の張力が無張力となる無張力位置(図6(b)参照)に移動させる。その際、駆動軸側ホイール211の回転軸AX211と従動軸側ホイール221の回転軸AX221は、互いに平行の状態が保たれる。図6(a)は従動軸ユニット220が適正張力位置に移動した場合のブレード230の形状を表す図、図6(b)は従動軸ユニット220が無張力位置に移動した場合のブレード230の形状を表す図である。
【0042】
従動軸ユニット220は、適正張力位置(図6(a)参照)と無張力位置(図6(b)参照)との間をスライド移動可能に支持機構(図示せず)により支持されている。
【0043】
従動軸ユニット220が適正張力位置(図6(a)参照)に位置した場合、ホイール211及び221のピッチ間距離は規定値となる。これにより、図6(a)に示すように、駆動軸側ホイール211と従動軸側ホイール221との間のブレード部分230a、230b(手前側のブレード部分230a及び奥側のブレード部分230b)は、駆動軸側ホイール211及び従動軸側ホイール221に接する平面状に張り渡された状態となる。そのため、ブレード230の張設幅W1(手前側のブレード部分230aと奥側のブレード部分230bとの間の距離)はホイール径と等しくなる。
【0044】
一方、従動軸ユニット220が無張力位置(図6(b)参照)に位置した場合、ホイール211及び221のピッチ間距離は最小値となる。これにより、図6(b)に示すように、駆動軸側ホイール211と従動軸側ホイール221との間のブレード部分230a、230b(手前側のブレード部分230a及び奥側のブレード部分230b)は、ブレードカバー232、233に当接するまで外側に凸の円弧状に広がる。そのため、ブレード230の張設幅W1(手前側のブレード部分230aと奥側のブレード部分230bとの間の距離)はホイール径より大きくなる。
【0045】
<ブレード取付治具>
ブレード取付治具300は、インゴット切断装置1(切断ユニット200)の駆動軸側ホイール211及び従動軸側ホイール221に巻き掛けられるエンドレスベルト状のブレード230を取り付ける(交換を含む)際に用いられる治具である。
【0046】
図7(a)はブレード取付治具300の斜視図(上限位置)、図7(b)はブレード取付治具300の斜視図(下限位置)である。図8は、ブレード取付治具300が着脱自在に固定されたインゴット切断装置1(切断ユニット200及びコラム201)の斜視図である。
【0047】
図7(a)、図7(b)、図8に示すように、ブレード取付治具300は、インゴット切断装置1(コラム201)に着脱可能に固定される治具本体301、上限位置と下限位置との間を上下方向にスライド移動可能に治具本体301に支持された可動部302を備えている。
【0048】
治具本体301は、第1支持アーム303、取付基部304a、304b、係合部305、スライダー306a、306bを備えている。
【0049】
第1支持アーム303は、水平方向に配置されている。第1支持アーム303の一方の主面の両端部には、インゴット切断装置1(コラム201)に着脱可能に固定(例えばボルト固定)される取付基部304a、304bが固定(例えばねじ固定)されている。一方、第1支持アーム303の他方の主面の概ね中央部には、可動部302(第2支持アーム307)に設けられたラッチ部312が係合する係合部305が固定(例えばねじ固定)されている。また、第1支持アーム303の他方の主面の両端部には、スライドシャフト308a、308bにスライド移動可能に係合したスライダー306a、306bが固定(例えばねじ固定)されている。
【0050】
取付基部304a、304b及びインゴット切断装置1(コラム201)のうち一方には位置決めピン(図示せず)が設けられ、他方には当該位置決めピンが挿入される位置決め穴(図示せず)が設けられている。これにより、ブレード取付治具300(取付基部304a、304b)をインゴット切断装置1(コラム201)に精度良く位置決めした状態で固定することができる。位置決めピン及び位置決め穴が本発明の位置決め機構の一例である。
【0051】
可動部302は、第2支持アーム307、スライドシャフト308a、308b、ストッパ309a、309b、ブレード受部310、ブレード刃面保護板311、ラッチ部312を備えている。
【0052】
第2支持アーム307は、水平方向に配置されている。第2支持アーム307(上面)の両端部には、鉛直方向に延びるスライドシャフト308a、308bの下端部が固定されている。スライドシャフト308a、308bには、ストッパ309a、309bが固定位置を調整可能に固定(例えばねじ固定)されている。
【0053】
可動部302を、スライドシャフト308a、308bがスライダー306a、306bにガイドされた状態で下限位置まで下方にスライド移動すると、スライドシャフト308a、308bに固定されたストッパ309a、309b(下面)がスライダー306a、306b(上面)に当接する。これにより、それ以上下方へのスライド移動が規制され、可動部302が下限位置に保持される。可動部302に設けられた鉛直方向に延びるスライドシャフト308a、308b、治具本体301に設けられ、スライドシャフト308a、308bにスライド移動可能に係合したスライダー306a、306b、スライドシャフト308a、308bに固定位置を調整可能に固定されたストッパ309a、309bが、本発明の第2保持手段の一例である。
【0054】
なお、可動部302の下限位置は、スライドシャフト308a、308bに対するストッパ309a、309bの固定位置を変更することにより調整することができる。ここでは、スライドシャフト308a、308bに対するストッパ309a、309bの固定位置は、可動部302が下限位置に位置した場合(すなわち、ストッパ309a、309b(下面)がスライダー306a、306b(上面)に当接した場合)、ブレード受部310がブレード230の取付基準高さ位置に位置するように調整されている。
【0055】
また、第2支持アーム307の概ね中央部には、ブレード受部310の基端部側が鉛直方向に延びる揺動軸AX310を中心に、退避位置(図7(a)参照)とブレード受位置(図7(b)参照)との間を揺動可能に固定されている。退避位置とは、ブレード受部310がブレード230に干渉しない位置、例えば、ブレード受部310が第2支持アーム307に重なる位置をいう。ブレード受位置とは、ブレード230(手前側のブレード部分230a)の下方の位置をいう。
【0056】
ブレード受部310(上面)のうちブレード230の下端部が当接する箇所には、ブレード刃面保護板311が固定されている。ブレード刃面保護板311は、例えば、樹脂板又はゴム板である。また、第2支持アーム307の概ね中央部には、ブレード受部310に隣接して、治具本体301(第1支持アーム303)に設けられた係合部305に係合するラッチ部312が固定(例えばねじ固定)されている。ラッチ部312は、ワンタッチで係合部305に対する係合を解除する機能を有している。
【0057】
可動部302を、スライドシャフト308a、308bがスライダー306a、306bにガイドされた状態で上限位置(退避位置)まで上方にスライド移動すると、ラッチ部312が係合部305に係合する。これにより、可動部302が上限位置に保持される。ラッチ部312、係合部305が本発明の第1保持手段の一例である。
【0058】
次に、上記構成のブレード取付治具300の使用方法の一例について説明する。
【0059】
以下の説明においては、ブレード取付治具300は、図8に示すように、インゴット切断装置1、例えば、切断ユニット200を昇降可能に支持するコラム201に係合されているカバーフレーム202(図3参照)に固定されているものとする。
【0060】
まず、図7(a)に示すように、第2支持アーム307に固定されたラッチ部312が第1支持アーム303に固定された係合部305に係合している場合、その係合を解除し、可動部302を、スライドシャフト308a、308bに固定されたストッパ309a、309b(下面)がスライダー306a、306b(上面)に当接する下限位置まで下方にスライド移動する。これにより、それ以上下方へのスライド移動が規制され、可動部302が下限位置に保持される。
【0061】
次に、ブレード受部310を、揺動軸AX310を中心に図7(b)中矢印AR1方向に揺動させることにより、ブレード230(手前側のブレード部分230a)の下方のブレード受位置に配置する(図8参照)。
【0062】
次に、図6(b)に示すように、従動軸ユニット220を、無張力位置に位置させる。これは、ブレード張設ユニット240により実現される。これにより、駆動軸側ホイール211と従動軸側ホイール221との間のブレード部分230a、230b(手前側のブレード部分230a及び奥側のブレード部分230b)は、ブレードカバー232、233に当接するまで外側に凸の円弧状に広がる。
【0063】
このように広がったブレード230は、当該ブレード230(奥側のブレード部分230b)の下方に配置された、ブレードカバー232、233に設けられたブレード受部234、235、及び、当該ブレード230(手前側のブレード部分230a)の下方に配置された、ブレード取付治具300に設けられたブレード受部310(ブレード刃面保護板311)により支持される。なお、ブレードカバー232、233に設けられたブレード受部234、235、及び、ブレード取付治具300に設けられたブレード受部310は、それぞれ、同一高さ(ブレード230の張設基準高さ位置)に配置されている。
【0064】
以上のように、広がったブレード230は、ブレードカバー232、233に設けられたブレード受部234、235、及び、ブレード取付治具300に設けられたブレード受部310により支持されるため、作業者が一人であっても、ブレード230を容易に取り外すことができる。
【0065】
次に、新たなブレード230を、駆動軸側ホイール211及び従動軸側ホイール221に巻き掛ける。その際、ブレードカバー232、233に設けられたブレード受部234、235、ブレード取付治具300に設けられたブレード受部310に新たなブレード230を支持させることができるため、作業者が1人であっても安全で確実にブレードを取り付けることができる。
【0066】
次に、従動軸ユニット220を、適正張力位置(図6(a)参照)に位置させる。これは、ブレード張設ユニット240により実現される。これにより、駆動軸側ホイール211と従動軸側ホイール221との間のブレード部分230a、230b(手前側のブレード部分230a及び奥側のブレード部分230b)は、駆動軸側ホイール211及び従動軸側ホイール221に接する平面状に張り渡された状態となる。
【0067】
次に、ブレード受部310を、揺動軸AX310を中心に図7(b)中矢印AR2方向に揺動させることにより、第2支持アーム307に重なる退避位置に位置させる。
【0068】
次に、可動部302を、第2支持アーム307に固定されたラッチ部312が第1支持アーム303に固定された係合部305に係合する上限位置(退避位置)まで上方にスライド移動する。これにより、可動部302が上限位置に保持される。
【0069】
以上により、ブレード230の取付が完了する。以後、ブレード230を回転させた状態で切断ユニット200を昇降機構(図示せず)によって下降させることにより、ブレード230の直進部231(平面状に張り渡されたブレード部分230a)によってインゴット510を切断することが可能となる。
【0070】
以上説明したように、本実施形態によれば、作業姿勢が不安定になることなく、かつ、作業の安全性やブレード230の損傷等に悪影響が及ぶことなく、作業者が1人であっても安全で確実にブレード230を取り付ける(交換を含む)ことができる。
【0071】
これは、退避位置とブレード230を支持するブレード受位置との間を揺動可能なブレード受部310により、ブレード230を支持することができることによるものである。
【0072】
また、本実施形態によれば、ブレード230の取り付けをより簡便に行うことができる。また、本実施形態によれば、可動部302をインゴット切断装置1(切断ユニット200)の可動範囲外の上限位置(退避位置)に保持することができる。
【0073】
これは、スライド移動可能な可動部302及び揺動可能なブレード受部310を備えているため、ブレード受部310をブレード230の取り付け基準位置に迅速に配置できることによるものである。
【0074】
次に、変形例について説明する。
【0075】
上記実施形態では、位置決め機構として、取付基部304a、304b及びインゴット切断装置1(コラム201)のうち一方に設けられた位置決めピン(図示せず)、及び他方に設けられた当該位置決めピンが挿入される位置決め穴(図示せず)を用いた例について説明したが、これに限らない。
【0076】
例えば、位置決め機構として、取付基部304a、304b及びインゴット切断装置1(コラム201)のうち一方に設けられた位置決め用の凹部(例えば、溝)、及び他方に設けられた当該位置決め用の凹部に挿入される凸部を用いてもよい。
【0077】
また上記実施形態では、治具本体301(第1支持アーム303)に係合部305を設け、可動部302(第2支持アーム307)に係合部305に係合するラッチ部312を設けた例について説明したが、これに限らない。例えば、逆に、治具本体301(第1支持アーム303)にラッチ部312を設け、可動部302(第2支持アーム307)にラッチ部312が係合する係合部305を設けてもよい。
【0078】
また上記実施形態では、ブレード取付治具300(取付基部304a、304b)をインゴット切断装置1(コラム201)に着脱可能に固定する固定手段として、ボルトを例示したが、これに限らない。例えば、ブレード取付治具300(取付基部304a、304b)をインゴット切断装置1(コラム201)に着脱可能に固定する固定手段として、取付基部304a、304b及びインゴット切断装置1(コラム201)の一方に固定された磁石(図示せず)を用いてもよい(他方が磁力により吸着される材料製の場合)。また、図示しないが、ブレード取付治具300(取付基部304a、304b)をインゴット切断装置1(コラム201)に着脱可能に固定する固定手段として、受金具とこの受金具に係合する係合部とにより構成されるワンタッチ錠(図示せず)を用いてもよい。この場合、取付基部304a、304b及びインゴット切断装置1(コラム201)のうち一方に受金具を固定し、他方にこの受金具に係合する係合部を設けてもよい。なお、この係合部は、ワンタッチで受金具に対する係合を解除する機能を有している。このようなワンタッチ錠としては、例えば、ワンタッチプッシュキャッチ(タキゲン製造株式会社製)を用いることができる。
【0079】
このようにすれば、ブレード取付治具300をインゴット切断装置1(コラム201)に容易に着脱することができる。なお、インゴット切断装置1(コラム201)から取り外したブレード取付治具300は、別の同様の装置に着脱自在に固定して用いることができる。
【0080】
上記実施形態で示した数値は全て例示であり、これと異なる適宜の数値を用いることができるのは無論である。
【0081】
上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎない。上記実施形態の記載によって本発明は限定的に解釈されるものではない。本発明はその精神または主要な特徴から逸脱することなく他の様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0082】
1…インゴット切断装置
100…切断装置本体
200…切断ユニット
201…コラム
202…カバーフレーム
210…駆動軸ユニット
211…駆動軸側ホイール
212…駆動用モータ
220…従動軸ユニット
221…従動軸側ホイール
230…ブレード
230a、230b…ブレード部分
231…直進部
232…駆動軸側ブレードカバー
233…従動軸側ブレードカバー
234、235…ブレード受部
240…ブレード張設ユニット
241…テンションシリンダ
300…ブレード取付治具
301…治具本体
302…可動部
303…第1支持アーム
304a、304b…取付基部
305…係合部
306a、306b…スライダー
307…第2支持アーム
308a、308b…スライドシャフト
309a、309b…ストッパ
310…ブレード受部
310a、310b…スライドシャフト
311…ブレード刃面保護板
312…ラッチ部
400…ローダーユニット
500…インゴット搬送台
510…インゴット
511…トップ側コーン
512…ボトム側コーン
513…直動部
514…ブロック部
515…サンプル部
600…ブロック搬送ユニット
700…排出バケットユニット
800…サンプルマガジンユニット
900…制御盤
AR1…中矢印
AR2中矢印
AX211…回転軸
AX221…回転軸
AX310…揺動軸
AX510…中心軸
W1…張設幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8