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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023104112
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】磁気治療装置および磁気治療方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 2/04 20060101AFI20230721BHJP
【FI】
A61N2/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022004916
(22)【出願日】2022-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 正樹
(72)【発明者】
【氏名】中澤 康二
【テーマコード(参考)】
4C106
【Fターム(参考)】
4C106AA03
4C106AA05
4C106BB25
4C106CC02
(57)【要約】
【課題】磁気治療効果が高く、プローブの異常に対応でき、信号ケーブルの取り回しが容易な磁気治療装置および磁気治療方法を提供する。
【解決手段】生体刺激用信号波を生成し、その生体刺激用信号波でコイルに発生させた患部刺激用の磁界を生体の患部に照射して患部および患部周辺の細胞および神経を刺激することで患部の疼痛を治療する磁気治療装置であって、第1の周波数の生体刺激用信号波を生成して出力する信号波出力部を有する装置本体と、前記信号波出力部に信号ケーブルで接続されて、その信号波出力部から出力される前記生体刺激用信号波を供給される一のコイルを有する、前記装置本体と別体に形成されたプローブと、を備え、前記信号ケーブルが、前記装置本体と前記プローブとの間の半二重通信用の信号線を1本有し、前記半二重通信用の信号線に接続する、前記装置本体側および前記プローブ側の送信端子近傍にそれぞれ電気抵抗器を持っている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体刺激用信号波を生成し、その生体刺激用信号波でコイルに発生させた患部刺激用の磁界を生体の患部に照射して患部および患部周辺の細胞および神経を刺激することで患部の疼痛を治療する磁気治療装置であって、
第1の周波数の生体刺激用信号波を生成して出力する信号波出力部を有する装置本体と、
前記信号波出力部に信号ケーブルで接続されて、その信号波出力部から出力される前記生体刺激用信号波を供給される一のコイルを有する、前記装置本体と別体に形成されたプローブと、
を備え、
前記信号ケーブルが、前記装置本体と前記プローブとの間の半二重通信用の信号線を1本有し、
前記半二重通信用の信号線に接続する、前記装置本体側および前記プローブ側の送信端子近傍にそれぞれ電気抵抗器を持っている、磁気治療装置。
【請求項2】
前記信号波出力部は、前記第1の周波数とは異なる第2の周波数の生体刺激用信号波も生成して出力し、
前記プローブは、さらに、前記信号波出力部に前記信号ケーブルで接続されて、その信号波出力部から前記第2の周波数の生体刺激用信号波を供給される他のコイルを有する、請求項1に記載の磁気治療装置。
【請求項3】
さらに、前記プローブが、磁界強度検出用コイルおよび温度センサのいずれか一方または両方を有している、請求項1または2に記載の磁気治療装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の磁気治療装置を用いた磁気治療方法であって、
前記半二重通信用の信号線を介して、前記装置本体の要求信号に応じ、前記プローブが所定の信号を返信し、
前記装置本体が、得られた信号をもとに、前記プローブの状況を判断する、磁気治療方法。
【請求項5】
前記磁気治療装置は、さらに、前記プローブが、磁界強度検出用コイルおよび温度センサのいずれか一方または両方を有し、
前記所定の信号が、前記磁界強度検出用コイルで検出した第1の周波数または第2の周波数の磁界強度の状態、および、前記温度センサが検出した前記プローブの温度の状態のいずれか一方または両方を表す信号であって、
前記装置本体が、得られた信号をもとに、アラーム信号の出力、および、前記一のコイルまたは前記他のコイルへの出力の停止のいずれか一方の、または、両方の作業を行う、請求項4に記載の磁気治療方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体刺激用信号波を生成しその信号波でコイルに発生させた磁界を生体の患部に照射して患部の細胞や神経を刺激することで患部の疼痛を治療する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生体の患部に磁界を照射して患部の細胞や神経を刺激することで患部の疼痛を治療する装置としては従来、例えば特許文献1記載のものが知られており、この治療装置は、筐体内に螺旋状の高周波用コイルと低周波用コイルとを互いに並べて配置し、あるいは筐体内にループ状の高周波用コイルと低周波用コイルとを互いに重ねて配置して、それらのコイルを発信回路および電池と一緒に筐体内に収容することで、携帯可能に構成されている。
【0003】
そしてこの治療装置は、発信回路から出力する一定周波数の高周波信号および低周波信号でそれら高周波用コイルおよび低周波用コイルにそれぞれ磁界を発生させ、その筐体を生体の患部にあてがうことで磁界を患部に照射して患部の細胞や神経を刺激し、その刺激で患部の自己修復機能を活性化し、当該細胞、組織を修復することで患部の疼痛を治療する。
【0004】
また、特許文献2には、電磁誘導治療のためのシステムなどであって、1つ以上の人間工学的または身体の輪郭に合致したプローブが含まれ、そのプローブは、コイルに近接して位置付けられた標的神経、筋肉、または他の身体組織に集束される電磁場または磁場を発生させるように構成される、1つ以上の導電性コイルを含み、1つ以上のセンサは、刺激を検出し、前記印加された電磁誘導治療の有効性に関するフィードバックを提供するために利用され、制御器は、コイルを通る電流を変動させ、センサまたは患者によって提供されるフィードバックに基づいて、標的神経、筋肉、または他の身体組織に集束される磁場を調節するように、調節可能なものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2008/056414号
【特許文献2】特表2013-508119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の装置では、高周波用コイルと低周波用コイルとを発信回路および電池と一緒に筐体内に収容しているので、それらのコイルで発生した磁界を患部に照射するためには筐体を患部にあてがう必要があり、筐体が嵩張って邪魔になったり衣類に引っかかって患部から脱落したりするという不都合があった。
【0007】
そしてこの課題の解決のために筐体を小さくすると、発信回路および電池も小さなものにする必要があって、十分な磁界強度や稼働時間が得られなくなるという新たな課題が招じることが判明した
【0008】
特許文献2に記載のセンサは、電磁治療によって刺激された神経の電気伝導を検出するものであって、高周波の磁界強度やプローブの異常等を直接検出するものではないうえ、通信手段も特定されていない。また、おもに、コイルとセンサは別個に用意され、制御部との接続もそれぞれ別の配線となっている。したがって、プローブと本体装置との間の通信用信号線と高周波電流供給用の配線を同一の信号ケーブル内に収める場合の問題については検討されていない。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、磁気治療効果が高く、プローブの異常に対応でき、信号ケーブルの取り回しが容易な磁気治療装置および磁気治療方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を有利に解決する本発明にかかる磁気治療装置は、生体刺激用信号波を生成し、その生体刺激用信号波でコイルに発生させた患部刺激用の磁界を生体の患部に照射して患部および患部周辺の細胞および神経を刺激することで患部の疼痛を治療する磁気治療装置であって、第1の周波数の生体刺激用信号波を生成して出力する信号波出力部を有する装置本体と、前記信号波出力部に信号ケーブルで接続されて、その信号波出力部から出力される前記生体刺激用信号波を供給される一のコイルを有する、前記装置本体と別体に形成されたプローブと、を備え、前記信号ケーブルが、前記装置本体と前記プローブとの間の半二重通信用の信号線を1本有し、前記半二重通信用の信号線に接続する、前記装置本体側および前記プローブ側の送信端子近傍にそれぞれ電気抵抗器を持っていることを特徴とする。
【0011】
上記課題を有利に解決する本発明にかかる磁気治療方法は、上記磁気治療装置を用いた磁気治療方法であって、前記半二重通信用の信号線を介して、前記装置本体の要求信号に応じ、前記プローブが所定の信号を返信し、前記装置本体が、得られた信号をもとに、前記プローブの状況を判断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明の磁気治療装置および磁気治療方法にあっては、装置本体が有する信号波出力部が生体刺激用信号波(第1の周波数)を生成して出力し、装置本体と別体に形成されたプローブが有する一のコイルが信号波出力部に信号ケーブルで接続されて、その信号波生成部から出力される生体刺激用信号波を供給され、その生体刺激用信号波で患部刺激用交番磁界を発生させる。
【0013】
したがって、この発明の磁気治療装置および磁気治療方法によれば、装置本体とは別体のプローブを生体の患部にあてがうことで、一のコイルで発生した、例えば高周波の患部刺激用交番磁界を患部に照射して患部および患部周辺の細胞および神経を刺激し、その刺激によって例えば患部の損傷した神経を活性化し自己修復により、患部の神経障害を軽減させることが期待できる。
【0014】
しかも、この発明の磁気治療装置によれば、前記信号ケーブルが、前記装置本体と前記プローブとの間の半二重通信用の信号線を1本有し、前記半二重通信用の信号線に接続する、前記装置本体側および前記プローブ側の送信端子近傍にそれぞれ電気抵抗器を持っているので、前記半二重通信用の信号線を介して、装置本体の要求信号に応じ、プローブが所定の信号を返信し、装置本体が、得られた信号をもとに、プローブの状況を判断することにより、信号ケーブル内の心線数を抑え、かつ、プローブの状況を装置本体が把握することができる。そのため、プローブの異常に対応でき、信号ケーブルの取り回しが容易となり、安全にかつ簡便に磁気治療を行うことができる。
【0015】
なお、この発明の磁気治療装置および磁気治療方法においては、前記信号波出力部は、上記とは異なる周波数(第2の周波数)の生体刺激用信号波も生成して出力し、前記プローブは、前記信号波出力部に信号ケーブルで接続されて、その信号波出力部から出力される前記異なる周波数の生体刺激用信号波を供給される他のコイルも有するものであってもよい。このようにすれば、前記異なる周波数の生体刺激用信号波によって他のコイルで発生した、たとえば、患部刺激用の低周波の交番磁界を患部に照射して与えた刺激が、感覚神経(Aβ線維:触覚)を伝って脊髄後角から脳(感覚野)へ到達するので、脳が触覚の快さを認識し、下行性痛覚抑制系を賦活させて鎮痛効果やリラックス効果をもたらすことも期待できる。
【0016】
また、この発明の磁気治療装置および磁気治療方法においては、さらに、プローブが、磁界強度検出用コイルおよび温度センサのいずれか一方または両方を有していることが好ましく、前記所定の信号が、前記磁界強度検出用コイルで検出した第1の周波数または第2の周波数の磁界強度の状態、および、温度センサが検出したプローブの温度の状態のいずれか一方または両方を表す信号であって、装置本体が、得られた信号をもとに、アラーム信号の出力、および、前記一のコイルまたは前記他のコイルへの出力の停止のいずれか一方の、または、両方の作業を行うことが好ましい。このような検出手段を用いることで、コイルの断線や異常電流による発熱などを検出でき、安全に適切に磁気治療を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態にかかる磁気治療装置の全体概念図である。
図2】上記実施形態にかかる磁気治療装置のプローブを示す模式図であって、(a)は上面図を表し、(b)は背面図を表し、(c)はA-A断面図を表す。
図3】上記実施形態にかかる磁気治療装置のコイル配置を示すプリント配線図であって、(a)は上面図を表し、(b)は下面図を表す。
図4】上記実施形態の装置本体とプローブとの間の通信方式を説明する模式図であって、(a)は本実施形態の半二重通信方式を表し、(b)は全二重通信方式を表し、(c)は従来の半二重通信方式を表す。
図5】上記実施形態の磁気治療装置の構成を機能ブロックで示すブロック線図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について具体的に説明する。なお、図面は模式的なものであって、現実のものとは異なる場合がある。また、以下の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置および方法を例示するものであり、構成を下記のものに特定するものでない。すなわち、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0019】
本発明の一実施形態にかかる磁気治療装置の全体概念図を斜視図で図1に示す。以後の図中、符号1はこの実施形態の磁気治療装置が備える装置本体を示し、符号2は、プローブを示し、符号3は信号ケーブルを示す。また、装置本体1に着脱可能に差し込み装着される図示しない電源ケーブルを備えている。
【0020】
装置本体1は、主として、樹脂製のケーシング4と、そのケーシング4内に斜め上向きに収容されてケーシング4の前面の開口部4aから露出するタッチ入力式ディスプレイ5と、ケーシング4内でディスプレイ5の後側に斜め下向きに収容されて装置本体後方から見て左右に並ぶ二枚のプリント配線基板と、ケーシング4の後部下側の突出部4b内に上向きで水平に収容されて装置本体後方から見て左右に並ぶ二枚のプリント配線基板と、ケーシング4の後部下側の突出部4b内でそれらのプリント配線基板の下側に収容されたバッテリ10とを有している。なお、装置本体1のケーシング4の前面の開口部4aの下側の左右にはアラーム停止ボタンと電源スイッチボタンが設けられ、それらのボタンのさらに下側には信号ケーブル3のプラグ用のソケットが、装置本体1への3つのプローブ2の接続を可能にするために横並びに3個設けられている。
【0021】
図2は、この実施形態の磁気治療装置のプローブ2の上面図(a)、背面図(b)およびA-A断面図(c)である。この実施形態では、プローブ2は略四辺形の柔軟な素材の外装2fと、電気回路等を保護する目的で角錐台状に盛った回路部2gとを持っている。回路部2gの背部から信号ケーブル3を引き出している。
【0022】
図2(c)に示すように、プローブ2は、コイルや電気回路を配置したプリント基板である可撓性薄板20をエラストマーやゴム材料などの軟質性樹脂の外装2f内に収容している。プローブ2は射出成形やRIM成形などの樹脂成形によって製造することができる。樹脂成形では自己発熱を伴うため、電気回路等の保護を目的として、樹脂モールドを回路部2gに事前に施すことが好ましい。
【0023】
図3はこの実施形態の磁気治療装置のコイル配置を示すプリント配線図であって、上面図(a)および下面図(b)を表す。プリント基板20上に回路部2g、第1の周波数を出力する一のコイルとして高周波出力用コイル2a、磁界強度検出用コイル2d、第2の周波数を出力する他のコイルとして低周波出力用コイル2bなどが配置されている。この実施形態では、プリント基板20の上面に、高周波出力用コイル2aを環状円板とし、その外側に磁界強度検出用コイル2dを円環状として、配置している。また、高周波出力用コイル2aの内側に渦巻き状の低周波出力用コイル2bを配置してもよい。高周波出力用コイル2aおよび低周波出力用コイル2bはプリント基板20の下面にも配置しており、それぞれ面対称に構成して、高周波電流および低周波電流がそれぞれ上下両面で同じ向きに流れるように配置している。そうすることで、上下両面のコイルが発生する磁界の中心を一致させることができる。プリント基板20の高周波出力用コイル2aと低周波出力用コイル2bとの間には、スリット部21を設け、プローブ2の変形時にプリント基板20の追随が容易になっている。また、スリット部の円周上の複数個所がブリッジ部22でつながっており、プリント基板を樹脂成形で覆う際に、安定して成形できるようになっている。なお、高周波出力用コイル2aを環状円板に変えて、方形状としてもよい。
【0024】
可撓性薄板20は、フィルム状のプリント基板であって、屈曲性を持つ絶縁材料のフィルムからなるベース層と、必要に応じて接着剤層とをもつことが好ましい。ベース層は、ポリイミド樹脂やポリエステル樹脂、ポリアミド紙基材エポキシ樹脂、ガラス布基材エポキシ樹脂、ガラス基材BTレジンなどを用いることができる。各コイルは、金属箔などプリント基板20にプリントされ、あるいは、エッチングされた導体であってもよい。プリント基板20の厚みは、0.1mm程度が好ましい。
【0025】
図4は、上記実施形態の装置本体とプローブとの間の通信方式を説明する模式図である。本実施形態では、図4(a)に示すように、信号線1(3a)の1本で装置本体側中央処理ユニット(CPU)とプローブ側CPUとを繋いで半二重通信可能なように構成する。この実施形態では、装置本体側の送信端子33近傍、および、プローブ側の送信端子33の近傍に電気抵抗器35を配置して、送信していない側の送信端子33に過大な電位が負荷されるのを抑制している。また、本実施形態では、装置本体側CPUからのコマンド信号に応答する信号として、プローブ側CPUがプローブの状況を返信する形態であり、図4(b)に示すような全二重通信としての2本の信号線3a、3bは必要ない。また、通常の半二重通信では、図4(c)に示すような、送信端子同士の接続を排除するための切り替えスイッチ3cを必要とするが、本実施形態では不要であり、構造が簡便となる。信号ケーブル内の心線数を増やすと、磁気治療の際、信号ケーブル3の変形抵抗が大きくなり、取り回しが不便となってしまう。
【0026】
図5は、この実施形態の磁気治療装置の構成を機能ブロックで示すブロック線図である。図5に示すように、この実施形態の磁気治療装置は、装置本体1と、プローブ2と、信号ケーブル3とを備え、装置本体1は機能的には、信号波出力部13と、画面制御部14と、電源部15とを有す。この実施形態での信号波出力部13は、複数の中央処理ユニット(CPU)を用いて回路構成され、基本高周波信号生成部13aで、たとえば、250MHzの基本高周波信号を生成し、基本高周波信号シフト部13bでその基本高周波信号を、250MHzを中心周波数として、たとえば、その±10%である225MHzから275MHzまでの範囲内で、航空機用救命無線機で使用している周波数帯を除外しつつ、一定時間としての、たとえば、0.00014秒(即ち、約7000回/秒)ごとに適度にシフト(変動)させて、そのシフトさせた基本高周波信号を基本高周波信号周波数変調部13cに出力する。
【0027】
信号波出力部13は、また、カードスロットなどに装着されたSDカード等の外部記憶装置または内蔵された記憶装置にあらかじめ記録された、音楽等の音源信号を含む磁気信号パターンを磁気信号パターン読出し部13dでそのSDカードなどから読み出して生体刺激用低周波信号生成部13eに供給する。生体刺激用低周波信号生成部13eはその磁気信号パターンの周波数情報(例えば1kHz以上かつ3kHz以下)から生体刺激用低周波信号を生成し、その生体刺激用低周波信号を基本高周波信号周波数変調部13cに出力する。
【0028】
そして、基本高周波信号周波数変調部13cは、基本高周波信号生成部13aで生成して基本高周波信号シフト部13bで周波数シフトさせた、たとえば、250MHz±10%の基本高周波信号を、生体刺激用低周波信号生成部13eで生成した、たとえば、1kHz以上かつ3kHz以下の生体刺激用低周波信号で周波数変調して生体刺激用高周波信号出力部13fに供給し、生体刺激用高周波信号出力部13fはその周波数変調された生体刺激用高周波信号を増幅して出力する。なお、生体刺激用高周波信号出力部13fはその周波数変調された生体刺激用高周波信号を上記生体刺激用低周波信号で振幅変調した後に増幅して出力してもよい。また、生体刺激用低周波信号出力部13gは、生体刺激用低周波信号生成部13eで生成した、たとえば、1kHz以上かつ3kHz以下の生体刺激用低周波信号を増幅して出力する。信号波出力部13におけるこれらの動作は、動作状態制御部13hによって制御する。
【0029】
この実施形態でのプローブ2は、軟質樹脂のカバー(外装)2f内にフレキシブルプリント配線基板20を収容している。そのフレキシブルプリント配線基板20上にはプリント配線で、外側に高周波出力用コイル2aが形成されるとともに内側に低周波出力用コイル2bとが形成される。加えて高周波出力用コイル2aの外側に磁界強度検出用コイル2dが形成される。さらにそのフレキシブルプリント配線基板上に実装された温度検出素子2eとCPUとを用いて動作状態検出部2cが回路構成される。高周波出力用コイル2aは、生体刺激用高周波信号出力部13fから信号ケーブル3を介して供給される生体刺激用高周波信号で患部刺激用高周波交番磁界を発生させる。低周波出力用コイル2bは、生体刺激用低周波信号出力部13gから信号ケーブル3を介して供給される生体刺激用低周波信号で患部刺激用低周波交番磁界を発生させる。信号ケーブル3内には、高周波電流用の作動信号用に2本の心線を用意し、低周波信号用にグラウンド(GND)と信号用の2本の心線を用意する。
【0030】
そして動作状態検出部2cは、温度検出素子2eが検出したそれら高周波出力用コイル2aおよび低周波出力用コイル2bの温度と磁界強度検出用コイル2dで検出した高周波または低周波の磁界強度とから信号波出力部13の動作状態やプローブ2の状態を検出し、その状態を示す信号を、信号ケーブル3を介して信号波出力部13の動作状態監視部13iに入力する。この状態を示す信号によって動作状態監視部13iは、信号波出力部13の信号波生成・出力等の動作ひいては高周波出力用コイル2aおよび低周波出力用コイル2bで発生させる交番磁界のレベルを監視し、異常を検出した場合はアラーム制御部13jによってアラーム信号(例えば、装置本体1が内蔵する図示しないスピーカでのアラーム音の鳴動や画像表示部14aでのLCD5aへのアラームメッセージの表示など)を出力する。なお、このアラーム音の鳴動は、装置本体1のケーシングの前面の上記アラーム停止ボタンの操作で停止する。また、異常を検出すると即時に、動作状態制御部13hが当該磁気治療装置の使用者の安全確保のため、高周波信号出力部13fから高周波出力コイル2aへの生体刺激用高周波信号の供給と生体刺激用低周波信号出力部13gから低周波出力コイル2bへの生体刺激用低周波信号の供給とを停止させる。また、プローブ2の使用回数を把握するようにして、プローブ2の交換時期を定めてもよい。信号ケーブル3内には、動作状態監視部13iと動作状態検出部2cとの半二重通信用に共通グラウンド(GND)と信号用の2本の心線を用意する。共通グラウンドは、信号ケーブル3をシールドケーブルとして、金属のシールドと同電位としてもよい。シールドケーブルとすることによって、外部のノイズを受けにくくするとともに、外部にノイズを放散しにくくなる。なお、プローブ2の状態には、プローブ2のCPUがカウントしている、プローブ2の使用回数などが含まれていてもよい。
【0031】
この実施形態での画面制御部14は、グラフィック処理ユニット(GPU)等を用いて回路構成され、画像表示部14aで、カードスロット等に装着されたSDカードなどの外部記憶装置にあらかじめ記録されたタッチ入力式ディスプレイ5の液晶ディスプレイ(LCD)5aに表示させる指示ボタン等の画面情報をSDカード等から読み出してそのLCD5aに表示させるとともに、指示入力部14bで、当該磁気治療装置の使用者の指がタッチ入力式ディスプレイ5のタッチパネル5bにタッチした位置をその位置の静電気の変化等から検出し、そのタッチ位置に対応してLCD5aに表示させている操作ボタンによる指示入力を示す信号を動作状態制御部13hに送る。この指示入力を示す信号によって動作状態制御部13hは、信号波出力部13の信号波生成・出力等の動作ひいては高周波出力用コイル2aおよび低周波出力用コイル2bで発生させる交番磁界等を使用者の指示に合わせて制御する。
【0032】
画面制御部14はまた、LCD5aに表示させている操作ボタンによる指示入力部14bへの指示入力とその際の信号波出力部13の動作状態とを記録したログを作成し、そのログの情報を、ケーシング4の後部下側の突出部4b内の二枚のプリント配線基板の間に配置して開閉可能な蓋で覆ったUSBメモリスロットに突出部4bの上面側から抜き差し可能に装着された図示しないUSBメモリ内に保存し、さらに、画像表示部14aでLCD5aに時計を表示させる時計機能を持ち、その時計機能を右側のプリント配線基板上の電池ホルダに装着されたボタン電池で維持する。
【0033】
この実施形態での電源部15は、CPUおよび二台のAC-DCコンバータと、ケーシング4の後部下側の突出部4b内の二枚のプリント配線基板とを用いて回路構成され、プリント配線基板上の電源制御部15aで、ケーシング4の後部下側の突出部4bに後ろ向きに配置した電源ソケットに着脱可能に差し込み装着される図示しない電源ケーブルを介して供給される100Vの商用交流電源を、上記二台のAC-DCコンバータで所定の直流電源を得て、それらの直流電源を直列接続することで、バッテリ10の充電電圧を得てバッテリ10を充電するとともに、それらの直流電源からスイッチング電源およびリニアレギュレータで降圧した所定の直流電源を、装置本体1の信号波出力部13および画面制御部14とプローブ2の動作状態検出部2cとに、それぞれに必要な電圧の直流電源として供給する。電源回路8には、上記二台のAC-DCコンバータ、スイッチング電源およびリニアレギュレータが含まれる。
【0034】
そして電源部15は、電源ケーブルを装着されていない当該磁気治療装置の通常の使用時には、バッテリ10からの36Vの直流電源を装置本体1の信号波出力部13および画面制御部14とプローブ2の動作状態検出部2cとに、スイッチング電源およびリニアレギュレータでそれぞれに必要な直流電圧に降圧して供給することで、当該磁気治療装置を携帯して使用可能なものとする。
【0035】
この実施形態の磁気治療装置にあっては、装置本体1が有する信号波出力部13の基本高周波信号生成部13a、基本高周波信号シフト部13bおよび基本高周波信号周波数変調部13cが生体刺激用高周波信号を生成して生体刺激用高周波信号出力部13fが出力し、装置本体1と別体に形成されたプローブ2が有する高周波出力用コイル2aが信号波出力部13の生体刺激用高周波信号出力部13fに信号ケーブル3で接続されて、その生体刺激用高周波信号出力部13fから出力される例えば250MHzを中心周波数とする生体刺激用高周波信号を供給され、その生体刺激用高周波信号で患部刺激用高周波交番磁界を発生させる。
【0036】
したがって、この実施形態の磁気治療装置によれば、装置本体1とは別体のプローブ2を生体の患部にあてがうことで、高周波出力用コイル2aで発生した高周波交番磁界を患部に照射して患部の細胞を刺激し、その刺激によって例えば患部の損傷した感覚細胞を活性化させて神経栄養因子を誘導し、患部の神経障害を軽減させることが期待でき、その中心の250MHzの高周波交番磁界は損傷した感覚細胞を活性化させて神経栄養因子を誘導する作用が高いので、患部の神経障害を軽減させる効果を高めることが期待できる。
【0037】
さらに、この実施形態の磁気治療装置によれば、装置本体1が有する信号波出力部13の生体刺激用低周波信号生成部13eが磁気信号パターンの周波数情報(例えば1KHz以上かつ3KHz以下)から生体刺激用低周波信号を生成して、生体刺激用低周波信号出力部13gがその生体刺激用低周波信号を出力し、プローブ2が有する低周波コイル2bが、信号波出力部13の生体刺激用低周波信号出力部13gに信号ケーブル3で接続されてその生体刺激用低周波信号出力部13gから生体刺激用低周波信号を供給されることから、その生体刺激用低周波信号によって低周波コイル2bで発生した患部刺激用の低周波交番磁界を患部に照射して与えた刺激が、感覚神経(Aβ線維:触覚)を伝って脊髄後角から脳(感覚野)へ到達するので、脳が触覚の快さを認識し、下行性痛覚抑制系を賦活させて鎮痛効果やリラックス効果をもたらすことも期待できる。
【0038】
さらに、この実施形態の磁気治療装置によれば、装置本体1が有する信号波出力部13の基本高周波信号変調部13cが、信号波出力部13が生成した生体刺激用低周波信号で基本高周波信号を周波数変調して生体刺激用高周波信号を生成し、生体刺激用高周波信号出力部13fがその周波数変調された生体刺激用高周波信号をプローブ2の高周波出力用コイル2aに供給することから、生体刺激用低周波信号で周波数変調された生体刺激用高周波信号によって高周波出力用コイル2aで発生した患部刺激用の高周波交番磁界で患部の細胞を刺激することで、患部の損傷した感覚細胞を周波数変調がない場合よりも活性化させて神経栄養因子をより多く誘導し、患部の神経障害をより軽減させることが期待できる。
【0039】
さらに、この実施形態の磁気治療装置によれば、装置本体1が有する信号波出力部13は生体刺激用低周波信号も生成して出力し、プローブ2は信号波出力部13に信号ケーブル3で接続されて、その信号波出力部13から生体刺激用低周波信号を供給される低周波コイル2bも有し、信号波出力部13は生体刺激用低周波信号で基本高周波信号を周波数変調して生体刺激用高周波信号を生成して、生体刺激用低周波信号とは別個に出力することから、生体刺激用低周波信号によって低周波コイル2bで発生した患部刺激用の低周波交番磁界で鎮痛効果やリラックス効果をもたらすとともに、生体刺激用低周波信号で基本高周波信号を周波数変調した生体刺激用高周波信号によって高周波出力用コイル2aで発生した患部刺激用高周波交番磁界で患部の神経障害をより軽減させることが期待できる。
【0040】
そして、この実施形態の磁気治療装置によれば、生体刺激用低周波信号の周波数は1kHz以上かつ3kHz以下であり、その生体刺激用低周波信号によって低周波コイル2bで発生する1kHz以上かつ3kHz以下の低周波交番磁界による刺激は特に、感覚神経を伝って脊髄後角から脳へ伝導し易いことから、より高い鎮痛効果やリラックス効果等の神経系を介した効果をもたらすことが期待できる。
【0041】
以上、図示の実施形態に基づいて説明したが、この発明の磁気治療装置は上述の実施形態に限定されるものでなく特許請求の範囲の記載範囲内で適宜変更することができ、例えば、基本高周波信号シフト部13bは、250MHzの基本高周波信号を例えば250MHz±20%の範囲内でシフトさせてもよい。
【0042】
また、例えば生体刺激用低周波信号生成部13eは、1kHz以上かつ3kHz以下と異なる周波数範囲、例えば1.6kHzを中心周波数として200Hz以上かつ3kHz以下の周波数範囲の生体刺激用低周波信号を生成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
かくして、この発明の磁気治療装置および磁気治療方法によれば、装置本体が有する信号波出力部が生体刺激用高周波信号を生成して出力し、装置本体と別体に形成されたプローブが有する高周波出力用コイルが信号波出力部に信号ケーブルで接続されて、その信号波生成部から出力される生体刺激用高周波信号を供給され、その生体刺激用高周波信号で患部刺激用高周波交番磁界を発生させるので、その装置本体とは別体のプローブを生体の患部にあてがうことで、高周波出力用コイルで発生した高周波交番磁界を患部に照射して患部の細胞を刺激し、その刺激によって例えば患部の損傷した神経、細胞の自己修復機能を活性化することで患部の神経障害を軽減することが期待できる。
【0044】
しかも、この発明の磁気治療装置および磁気治療方法によれば、信号ケーブルが、前記装置本体と前記プローブとの間の半二重通信用の信号線を1本有し、前記半二重通信用の信号線に接続する、前記装置本体側および前記プローブ側の送信端子近傍にそれぞれ電気抵抗器を持っているので、前記半二重通信用の信号線を介して、装置本体の要求信号に応じ、プローブが所定の信号を返信し、装置本体が、得られた信号をもとに、プローブの状況を判断することにより、信号ケーブル内の心線数を抑え、かつ、プローブの状況を装置本体が把握することができる。そのため、プローブの異常に対応でき、信号ケーブルの取り回しが容易となり、安全にかつ簡便に磁気治療を行うことができる。
【符号の説明】
【0045】
1 装置本体
2 プローブ
2a 高周波出力用コイル(一のコイル)
2b 低周波出力用コイル(他のコイル)
2c 動作状態検出部
2d 磁界強度検出用コイル
2e 温度検出用素子
2f 外装
2g 回路部
3 信号ケーブル
3a 信号線1
3b 信号線2
3c 切替スイッチ
4 ケーシング
4a 開口部
4b 突出部
5 ディスプレイ
5a LCD
5b タッチパネル
8 電源回路
10 バッテリ
11 USBメモリスロット
12 電源ソケット
13 信号波出力部
13a 基本高周波信号生成部
13b 基本高周波信号シフト部
13c 基本高周波信号周波数変調部
13d 磁気信号パターン読出し部
13e 生体刺激用低周波信号生成部
13f 生体刺激用高周波信号出力部
13g 生体刺激用低周波信号出力部
13h 動作状態制御部
13i 動作状態監視部
13j アラーム制御部
14 画面制御部
14a 画像表示部
14b 指示入力部
15 電源部
15a 電源制御部
20 可撓性薄板(プリント基板)
21 スリット部
22 ブリッジ部
31 本体側CPU
32 プローブ側CPU
33 送信端子
34 受信端子
35 電気抵抗器
図1
図2
図3
図4
図5