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  • 特開-抵抗体、抵抗体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023010412
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】抵抗体、抵抗体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01C 7/00 20060101AFI20230113BHJP
   H01C 17/12 20060101ALI20230113BHJP
   H01C 17/065 20060101ALI20230113BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20230113BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20230113BHJP
   C23C 14/08 20060101ALI20230113BHJP
   H01C 7/06 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
H01C7/00 310
H01C17/12
H01C17/065 100
H01B1/22 C
H01B13/00 503Z
C23C14/08 H
H01C7/00 400
H01C7/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021114529
(22)【出願日】2021-07-09
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】高塚 裕二
【テーマコード(参考)】
4K029
5E032
5E033
5E034
5G301
5G323
【Fターム(参考)】
4K029AA11
4K029AA22
4K029BA43
4K029BC03
4K029CA06
4K029CA17
4K029DC03
4K029DC08
4K029JA02
5E032BA05
5E032BB01
5E033AA03
5E033AA13
5E033AA23
5E033BA03
5E033BC01
5E033BD01
5E034GA05
5G301DA23
5G301DA29
5G301DA42
5G301DD09
5G301DE01
5G323AA03
(57)【要約】
【課題】鉛成分を含有せず、抵抗温度係数を抑制できる抵抗体を提供することを目的とする。
【解決手段】一対の電極と、
前記一対の電極間に配置された抵抗膜と、を有し、
前記抵抗膜は、絶縁性材料と、絶縁粒子の表面に導電膜を配置した被覆粒子とを有し、前記被覆粒子は、前記絶縁性材料内に配置されており、
前記導電膜は、薄膜部と、前記薄膜部よりも膜厚の厚い厚膜部とを有しており、
前記抵抗膜中の前記被覆粒子の体積割合が20%以上60%以下である抵抗体を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極と、
前記一対の電極間に配置された抵抗膜と、を有し、
前記抵抗膜は、絶縁性材料と、絶縁粒子の表面に導電膜を配置した被覆粒子とを有し、前記被覆粒子は、前記絶縁性材料内に配置されており、
前記導電膜は、薄膜部と、前記薄膜部よりも膜厚の厚い厚膜部とを有しており、
前記抵抗膜中の前記被覆粒子の体積割合が20%以上60%以下である抵抗体。
【請求項2】
前記導電膜が酸化ルテニウム膜である請求項1に記載の抵抗体。
【請求項3】
前記薄膜部の膜厚が1nm以上100nm以下であり、
前記厚膜部の膜厚が100nmを超えて2μm以下である請求項1または請求項2に記載の抵抗体。
【請求項4】
絶縁粒子の表面に導電膜を成膜し、被覆粒子を形成する被覆粒子形成工程と、
絶縁性材料と、前記被覆粒子とを混合し、抵抗膜用ペーストを調製するペースト調製工程と、
一対の電極間に前記抵抗膜用ペーストを塗布し、抵抗膜を形成する抵抗膜形成工程と、を有し、
前記被覆粒子形成工程では、前記絶縁粒子の表面に、前記導電膜が、薄膜部と、前記薄膜部よりも膜厚の厚い厚膜部とを含むように成膜し、
前記抵抗膜用ペーストに含まれる前記絶縁性材料と、前記被覆粒子とのうち、前記被覆粒子の体積割合が20%以上60%以下である抵抗体の製造方法。
【請求項5】
前記被覆粒子形成工程では、多角バレルスパッタリング法により、前記絶縁粒子の表面に前記導電膜を成膜する請求項4に記載の抵抗体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗体、抵抗体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品の抵抗体を形成方法としては、抵抗ペーストを用いる厚膜方式と、膜形成材料を用いてスパッタリングなどにより成膜する薄膜方式と、がよく知られている。
【0003】
厚膜方式は、抵抗ペーストをセラミック基板上に印刷、焼成して抵抗体を形成するものであり、設備が安価で、生産性も高いことから、チップ抵抗器やハイブリッドICなどの抵抗体の製造に広範に利用されている。
【0004】
厚膜方式に用いる抵抗ペーストは、導電性粒子とガラスフリット、およびそれらを印刷に適したペースト状にするための有機ビヒクルから実質的に構成される。導電性粒子としては、二酸化ルテニウム(RuO)やパイロクロア型ルテニウム系酸化物(PbRu7-x、BiRu)が一般に使用されている。特許文献1によれば、導電性粒子としてRu系酸化物を使用することで、平方当り100オームよりも低い値から平方当り180000オームを超える高い値に至る抵抗領域に対して、1℃当り約0.01%以下のTCRをもつセラミック抵抗素子を提供できるとされている。
【0005】
また、特許文献2には、無機結合剤としてガラスフリットに相当するガラスを添加することが開示されており、ガラスとしては、珪酸鉛ガラスや、硼珪酸鉛ガラスなど鉛を多量に含むガラスを用いることが開示されている。
【0006】
ガラスフリットに硼珪酸鉛系ガラスが用いられるのは、Ru系酸化物との濡れ性が良く、基板と熱膨張係数の値が近く、焼成時の粘性などが適しているからである。(非特許文献1)
ところが、近年、電子機器から毒性のある鉛の使用を排除することが求められることにより、高抵抗領域の厚膜抵抗体用の導電粉としてルテニウム酸鉛粉に代わる、鉛を含有しない導電粉が望まれている。また、厚膜抵抗体から完全に鉛を排除するためには、同時に用いられるガラスフリットからも鉛を排除する必要がある。しかし、抵抗ペーストから鉛を全て排除した状態でも、抵抗温度係数等の電気特性について、良好な抵抗体とすることが求められている。
【0007】
特許文献3においては、導電物として、酸化イリジウム(IrO)を使用することが提案されている。導電粉として酸化イリジウム粉を用いた厚膜抵抗体形成用ペーストは特にルテニウム酸鉛粉に代わる鉛を含まない高抵抗領域の厚膜抵抗体形成用ペーストとして有用である。
【0008】
厚膜ではなく薄膜抵抗を用いて鉛フリー抵抗体を製造することも検討されている。
NiやCrの単層膜やNi-Crの合金膜が実用化されているが、金属膜は低抵抗であるため高抵抗の抵抗体が作成できない。
【0009】
特許文献4には塊状にて抵抗温度係数の大きさが異なる金属の2層以上の薄膜から成り、各々の薄膜は正負の抵抗温度係数を有し且つ該薄膜の膜厚と各々の膜厚比が制御されることによって所定の抵抗値と小さな抵抗温度係数を有することを特徴とする薄膜抵抗体が記載されている。
【0010】
しかし、上述のような金属薄膜を用いた抵抗体は、該金属薄膜を基板上に形成するため、ペースト材を用いることができないという問題がある。
【0011】
非特許文献2や特許文献5に示すように樹脂と導電性フィラーを用いた導電性接着剤や樹脂抵抗体の開発も進められているが抵抗温度係数が低い抵抗体は難しく、得られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特公昭54-1917号公報
【特許文献2】特開平6-45102号公報
【特許文献3】特開2007-277040号公報
【特許文献4】特公昭50-25149号公報
【特許文献5】特開2001-2892号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】M.Prudenziati J.Hormadaly 「Printed films」 2012 Woodhead Publishing limited Oxford
【非特許文献2】小日向茂 エレクトロニクス実装学会誌Vol .9 No.6(2006)pp495
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記従来技術の問題に鑑み、本発明の一側面では、鉛成分を含有せず、抵抗温度係数を抑制できる抵抗体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため本発明は、
一対の電極と、
前記一対の電極間に配置された抵抗膜と、を有し、
前記抵抗膜は、絶縁性材料と、絶縁粒子の表面に導電膜を配置した被覆粒子とを有し、前記被覆粒子は、前記絶縁性材料内に配置されており、
前記導電膜は、薄膜部と、前記薄膜部よりも膜厚の厚い厚膜部とを有しており、
前記抵抗膜中の前記被覆粒子の体積割合が20%以上60%以下である抵抗体を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一側面によれば、鉛成分を含有せず、抵抗温度係数を抑制できる抵抗体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本開示の一態様に係る抵抗体の説明図である。
図2】導電膜の膜厚の測定方法の説明図である。
図3】多角バレルスパッタリング法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の抵抗体、抵抗体の製造方法について説明する。
[抵抗体]
図1に、本実施形態の抵抗体の説明図を示す。図1は、以下に説明する一対の電極111と、抵抗膜112とを配列した方向と平行な面における、抵抗体10の断面図を模式的に示したものである。図1においては、説明の便宜上、被覆粒子を、実際よりも大きく記載している。
【0019】
図1に示すように、本実施形態の抵抗体10は、一対の電極111と、一対の電極111間に配置された抵抗膜112とを有することができる。
【0020】
抵抗膜112は、絶縁性材料12と、絶縁粒子131の表面に導電膜132を配置した被覆粒子13とを有することができる。
【0021】
被覆粒子13は、図1に示すように絶縁性材料12内に配置されている。
【0022】
そして、導電膜132は、薄膜部1321と、薄膜部1321よりも膜厚の厚い厚膜部1322とを有することができる。また、抵抗膜112中の被覆粒子13の体積割合を20%以上60%以下とすることができる。
【0023】
本発明の発明者は鉛成分を含有せず、抵抗温度係数を抑制できる抵抗体について検討を行った。そして、厚膜は正の抵抗温度係数を有し、薄膜は負の抵抗温度係数をもつことに着目し、絶縁粒子の表面に、薄膜部と、厚膜部とを含む導電膜を形成した被覆粒子を用いることで、抵抗温度係数を抑制した抵抗体にできることを見出し、本発明を完成させた。
【0024】
本発明の抵抗体が有する各部材について説明する。
(1)被覆粒子
(1-1)絶縁粒子
絶縁粒子131としては特に限定されないが、例えばSi(シリコン)、Ta(タンタル)、Zr(ジルコニウム)、Nb(ニオブ)、Al(アルミニウム)から選択された1種類以上の元素の酸化物を含む粒子を好適に用いることができる。絶縁粒子としては、SiO、Ta、ZrO、Nb、Al等から選択された1種類以上を含む粒子をより好ましく用いることができる。
【0025】
中でもSiOは、高抵抗体で、形状や、粒径のばらつきを抑制した粒子を容易に製造できるため、絶縁粒子の材料として特に好ましく用いることができる。
【0026】
絶縁粒子131の平均粒径は特に限定されないが、例えば2μm以上50μm以下が好ましく、2.5μm以上30μm以下がより好ましい。なお、本明細書において平均粒径は、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径を意味する。
(1-2)導電膜
被覆粒子13は、上記絶縁粒子131の表面に導電膜132を有することができる。
【0027】
導電膜132は、図1図2に示すように、絶縁粒子131の表面上に薄膜部1321と薄膜部1321よりも膜厚の厚い厚膜部1322とを有することができる。すなわち、導電膜132は、絶縁粒子131上に同時に膜厚の異なる薄膜部1321と、厚膜部1322とを有することができる。なお、例えば導電膜132のうち、膜厚が予め定めた閾値以下の領域を薄膜部1321とし、膜厚が閾値よりも厚い領域を厚膜部1322とすることができる。閾値は特に限定されないが、例えば100nmとすることができる。
【0028】
既述のように厚膜は正の抵抗温度係数を有し、薄膜は負の抵抗温度係数を有することから、薄膜部1321と厚膜部1322とを有する被覆粒子13を用いることで、抵抗体10の抵抗温度係数を抑制できる。
【0029】
導電膜132の材料は特に限定されないが、被覆する絶縁粒子131の形状に対する追従性に優れ、所望の形状の導電膜132を形成しやすいため、導電膜132は酸化イリジウム、または酸化ルテニウムを含むことが好ましい。コスト等の観点から特に、導電膜132は酸化ルテニウム膜であることが好ましい。
【0030】
薄膜部1321と、厚膜部1322との厚さは特に限定されないが、例えば薄膜部1321の厚さは1nm以上100nm以下であり、厚膜部1322の厚さは100nmを超えて2μm以下であることが好ましい。
【0031】
導電膜132の膜厚の測定に当たっては、まず被覆粒子13をFIB(収束イオンビーム)加工などにより、例えば図2に示した様な該粒子の断面観察が可能な状態とする。なお、被覆粒子13はFIB加工の前に予め樹脂などに埋め込み、必要に応じてクロスセクションポリッシャー加工などを行っておくこともできる。そして、TEM(透過型電子顕微鏡)またはFE-SEM(電界放出型走査電子顕微鏡)を用いて、上記被覆粒子13において、導電膜132の厚さT132を測定できる。導電膜132の厚さT132は、絶縁粒子131の中心Oと、厚さT132を測定する箇所における導電膜132の外表面とを結ぶ直線Lに沿って測定できる。なお、絶縁粒子131が円形ではない場合には、導電膜132の厚さは、絶縁粒子131の外接円の中心と、導電膜132の外表面とを結ぶ直線に沿って測定できる。
【0032】
導電膜132の厚さの最大値と、最小値との差の平均値は、50nm以上2000nm以下であることが好ましい。導電膜132の厚さの最大値と最小値との差の平均値を上記範囲内とすることで、薄膜部1321と、厚膜部1322との割合を特に適切に制御でき、抵抗温度係数を特に抑制できる。
【0033】
導電膜132の厚さの最大値と最小値との差の平均値の測定に当たっては、まず被覆粒子をFIB加工などにより該粒子の断面観察が可能な状態とする。なお、被覆粒子13はFIB加工の前に予め樹脂などに埋め込み、必要に応じてクロスセクションポリッシャー加工などを行っておくこともできる。そして、TEMまたはFE-SEMを用いて、上記被覆粒子において、導電膜132の厚さT132について、最大になる個所と、最小になる個所とで測定し、該粒子における導電膜132の厚さの最大値と最小値との差を算出する。なお、導電膜132の厚さT132の測定方法については既に説明した。
【0034】
同様にして10個以上の被覆粒子について求めた粒子ごとの導電膜の最大値と最小値との差を平均することで、該抵抗体が有する被覆粒子における、導電膜の厚さの最大値と最小値との差を求めることができる。
【0035】
(1-3)抵抗膜における被覆粒子の含有量について
本実施形態の抵抗体では、一対の電極111間に配置された抵抗膜112において、被覆粒子13を介して電流が生じ、一対の電極111間に電気を流すことができる。
【0036】
具体的には例えば図1中に示した様に、電極111間で被覆粒子13が連なって配置されることで、該被覆粒子13を点線Aに沿って電流を流すことができる。このため、抵抗体10の電極111間に電流が流れるようにするためには、絶縁性材料12中に一定量以上の被覆粒子13を含むことが好ましい。係る含有量は、被覆粒子13のサイズ等に応じて変化するが、例えば抵抗膜112中の被覆粒子13の体積割合が、20%以上であることが好ましく、25%以上であることがより好ましい。
【0037】
ただし、抵抗膜112中の被覆粒子13の割合が過度に高くなると、抵抗膜112が膜の形状を維持できなくなる恐れや、強度が低下する恐れがある。また、抵抗膜112を形成する際に用いる抵抗膜用ペーストの流動性が低くなり、塗布、乾燥時に均一な抵抗膜112を形成できない恐れがある。
【0038】
このため、抵抗膜112中の被覆粒子13の体積割合は、60%以下であることが好ましく、55%以下であることがより好ましい。
(2)導電粒子
本実施形態の抵抗体は、抵抗値を調整することを目的に、導電粒子をさらに含有しても良い。本実施形態の抵抗体は、後述するように、例えば絶縁性材料12や、被覆粒子13を含むペーストを電極111間に塗布し、乾燥、焼成することで形成できる。このため、導電粒子は、ペーストを加熱硬化する際のアニールにより抵抗が変化しない材料であることが好ましく、例えばAu(金)、Ag(銀)等の貴金属や、RuO(酸化ルテニウム)、IrO(酸化イリジウム)等から選択された1種類以上の材料であることが好ましい。
【0039】
導電粒子の形状は特に限定されず、例えば球状、フレーク状等から選択された1種類以上の形状を有することができる。また、導電粒子の平均粒径も特に限定されないが、例えば0.1μm以上10μm以下であることが好ましく、0.5μm以上2μm以下であることがより好ましい。
【0040】
導電粒子の製造方法は特に限定されず、用いる材料の種類等に応じて、各種製造方法により製造できる。導電粒子として酸化ルテニウム粒子を製造する場合、例えば塩化ルテニウム水溶液をKOH(水酸化カリウム)で中和、洗浄、乾燥することで、水和した酸化ルテニウム粒子が得られる。さらに、例えば酸化性雰囲気下で400℃を超える温度、例えば600℃以上850℃以下で熱処理することで、結晶水が取れ、酸化ルテニウム粉末とすることができる。なお、酸化性雰囲気とは、酸素を10容量%以上含有する雰囲気であり、例えば空気等を好適に用いることができる。
(3)絶縁性材料
絶縁性材料12は、既述の被覆粒子13を含有し、抵抗膜112を形成できる絶縁材料であればよく、特に限定されない。
【0041】
絶縁性材料12は樹脂を含むことができ、該樹脂としては、例えば、熱硬化性樹脂や、熱可塑性樹脂から選択された1種類以上が挙げられる。また、絶縁性材料12は、必要に応じて硬化剤を含むことができる。
【0042】
熱硬化性樹脂としてはエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、ビスマレイミド樹脂等から選択された1種類以上を好適に用いることができる。
【0043】
また、熱可塑性樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂等から選択された1種類以上を好適に用いることができる。
【0044】
絶縁性材料12の樹脂としては、特に耐熱性、耐湿性、電気特性、硬化性等においてバランスが取れていることから、エポキシ樹脂をより好ましく用いることができる。エポキシ樹脂は、1分子中に1より大きい数のエポキシ基を有するものを好適に用いることができる。エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA、ビスフェノールAD、ビスフェノールF、カテコール、レゾルシンなどの多価フェノール、またはグリセリンやポリエチレングリコールのような多価アルコールとエピクロルヒドリンとを反応させて得られたポリグリシジルエーテル、あるいはP-オキシ安息香酸、β-オキシナフトエ酸のようなヒドロキシカルボン酸とエピクロルヒドリンとを反応させて得られたグリシジルエーテルエステル、あるいはフタル酸、テレフタル酸のようなポリカルボン酸から得られるポリグリシジルエステル、さらにはノボラック型エポキシやエポキシ化ポリオレフィンなどが挙げられる。
【0045】
なお、抵抗膜112は、抵抗膜112を構成する材料に加えて、希釈剤等を添加し、抵抗膜形成用ペーストとしてから、該ペーストを一対の電極111間に塗布、乾燥、焼成することで形成される。このため、抵抗膜112は、既述の絶縁性材料12、被覆粒子13、に加えて、希釈剤等に起因する不可避成分を含んでいても良い。
(4)電極
一対の電極111の材料は特に限定されず、抵抗体に用いられる各種電極とすることができる。なお、本実施形態の抵抗体10は、各種絶縁性基板上に形成することができる。
【0046】
以上に説明した本実施形態の抵抗体が有する各部材は鉛を含有しないことが好ましい。ここでいう鉛を含有しないとは、意図して添加していないことを意味し、不可避成分として含まれる場合を排除するものではない。
【0047】
以上に説明した本実施形態の抵抗体によれば、薄膜部と厚膜部とを備えた被覆粒子13を含む抵抗膜112を有している。このため、薄膜部と厚膜部との割合や、被覆粒子13の添加量等を調整することで、抵抗体10の抵抗値を容易に制御し、抵抗温度係数を抑制できる。従って、鉛成分を含有する材料を用いなくても、所望の抵抗値とし、抵抗温度係数を抑制した抵抗体とすることができる。
[抵抗体の製造方法]
本実施形態の抵抗体の製造方法について説明する。本実施形態の抵抗体の製造方法によれば、既述の抵抗体を製造できる。このため、既に説明した事項については説明を省略する。
【0048】
本実施形態の抵抗体の製造方法は、以下の被覆粒子形成工程と、ペースト調製工程と、抵抗膜形成工程とを有することができる。
【0049】
以下、各工程の説明を行う。
(1)被覆粒子形成工程
被覆粒子形成工程は、絶縁粒子の表面に導電膜を成膜し、被覆粒子を形成できる。すなわち、被覆粒子形成工程では、既述の被覆粒子を形成でき、絶縁粒子の表面に、導電膜が、薄膜部と、薄膜部よりも膜厚の厚い厚膜部とを含むように成膜できる。
【0050】
被覆粒子形成工程において、絶縁粒子の表面に導電膜を成膜する方法は特に限定されない。
【0051】
絶縁粒子131上に導電膜を形成する方法としては、例えばスパッタリング法、蒸着法やCVD法のような気相法や、ゾル-ゲル法等のような湿式法から選択された1種類以上が挙げられる。絶縁粒子131は立体的な形状を有することから、導電膜を成膜する方法としては、バレルスパッタリング法や、CVD法、ゾル-ゲル法から選択された1種類以上が好ましく、多角バレルスパッタリング法であることがより好ましい。すなわち、被覆粒子形成工程では、多角バレルスパッタリング法により絶縁粒子の表面に導電膜を成膜することがより好ましい。
【0052】
多角バレルスパッタリング法は、例えば図3に示したスパッタリング装置30を用いて実施できる。なお、図3は多角バレルスパッタリング法を実施できるスパッタリング装置について、多角形の容器31の回転軸に沿って見た側面図になる。該スパッタリング装置30は、多角形の容器(バレル)31と、カソード32、ターゲット33とを有することができる。また、スパッタリングを行っている間の雰囲気を制御するため、チャンバー34を有することができる。チャンバー34内は、例えば真空排気し、アルゴン等のガスを導入しておくことができる。
【0053】
多角形の容器31は図中の回転軸Cを中心として、両矢印Bに沿って回転や、揺動可能に構成されている。なお、カソード32およびターゲット33は回転しないように構成されている。このため、多角形の容器31内に収容された絶縁粒子131は多角形の容器31の回転、揺動に伴って移動する。ただし、多角形の容器31の回転の角度が一定角度以上になると、絶縁粒子は多角形の容器31の内周面から外れて、落下する。その際、絶縁粒子は回転して、ターゲット33側に向ける面が変化することになる。
【0054】
このように、多角バレルスパッタリング法によれば、多角形の容器31内に絶縁粒子131を収容し、多角形の容器31を回転や揺動させることにより、絶縁粒子のターゲット33側に向ける面を変化させながら、スパッタリング成膜を行うことができる。
【0055】
製造する被覆粒子13の導電膜132は、既述のように薄膜部1321と厚膜部1322とを有することができる。
【0056】
そこで、例えばスパッタリング開始時には、多角形の容器31の回転や揺動を行わずに成膜することで、絶縁粒子131の表面の一部に膜を成膜し、厚膜部1322の一部を成膜できる(第1成膜工程)。なお、この際、多角形の容器31内の絶縁粒子131の量によっては、絶縁粒子131が積層配置され、多角形の容器31側に配置された底部側の絶縁粒子131Aには成膜されない恐れがある。この場合、一定時間のスパッタリング後、多角形の容器31を短時間、回転または揺動し、上部側の絶縁粒子131Bとの位置を入れ替える操作を行った後、再度一定時間のスパッタリングを行っても良い。
【0057】
その後、多角形の容器31の回転や揺動を行いながらスパッタリング成膜を行うことで、さらに絶縁粒子131の表面に均一な厚さの膜を成膜できる(第2成膜工程)。
【0058】
第1成膜工程で成膜した部分は、第2成膜工程でさらに肉厚となり、厚膜部とすることができる。第1成膜工程で成膜されていない部分については、第2成膜工程で導電膜が形成され、薄膜部となる。
【0059】
なお、ここでは多角バレルスパッタリング法により成膜した例を用いて説明したが、上述のように、多角バレルスパッタリング法以外の方法で導電膜を成膜しても良い。また、例えば第1成膜工程を多角バレルスパッタリング法で成膜し、第2成膜工程を他の方法で成膜しても良い。上記他の方法としては、例えば化学気相成長法(CVD法)等を用いることができる。
【0060】
既述のように、導電膜の材料は、特に限定されず、酸化イリジウムまたは酸化ルテニウムを含有することが好ましい。特に導電膜としては、酸化ルテニウム膜を好適に用いることができる。
【0061】
酸化ルテニウムのような、金属状態から酸化した場合に体積膨張が起きる物質は、金属膜の形成、その後に酸化処理すると膜が絶縁粒子から剥がれ易くなる。このため、上述のように多角バレルスパッタリング法等により、酸化ルテニウム膜を成膜する場合、ターゲットとしてRu金属ターゲットを用い、スパッタガスに酸素を混合して、成膜を行うことが好ましい。スパッタガスに酸素を混合しておくことで、酸化ルテニウム膜を絶縁粒子表面に直接成膜できる。スパッタガス中の酸素の含有割合は特に限定されないが、例えば5体積%以上20体積%以下であることが好ましい。
【0062】
なお、ターゲットとして酸化ルテニウムのターゲットを用いることも考えられるが、酸化ルテニウムは、昇華性があるため焼結が難しく、ターゲットを製造することが難しい。これに対して、金属であるルテニウムのターゲットは、例えばプラズマ熔解による熔解法により製造できる。また、金属ルテニウムのターゲットは、金属ルテニウム粉末を原料として、ホットプレス法や熱間圧縮(HIP)等により製造することもできる。
(2)ペースト調製工程
ペースト調製工程は、絶縁性材料と、被覆粒子とを混合し、抵抗膜用ペーストを調製できる。
【0063】
絶縁性材料、被覆粒子については既に説明したため、ここでは説明を省略する。
【0064】
ペースト調製工程で、抵抗膜用ペーストを調製する際、ペースト状にするために、必要に応じて硬化剤や、希釈剤を添加することができる。
【0065】
硬化剤や、希釈剤は、用いる絶縁性材料の樹脂の種類等により選択できる。
【0066】
例えば絶縁性材料の樹脂としてエポキシ樹脂を選択した場合、硬化剤は、加熱時(例えば60℃以上300℃以下)にエポキシ樹脂と速やかに硬化反応を生じ、かつ室温以下で長期間の貯蔵安定性を有するものを好適に用いることができる。
【0067】
絶縁性材料の樹脂がエポキシ樹脂の場合、硬化剤としては、例えばレゾルシン、カテコール、ハイドロキノン、ピロガロールなどの多価フェノール類、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェノール-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾールなどのイミダゾール類、ジシアンジアミド、テトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロメチル無水フタル酸などの酸無水物、ルイス酸の錯体、DCMUなどの尿素塩類などが挙げられ、これらの化合物は単独でもよく、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。そして硬化剤の添加量は、絶縁性材料がエポキシ樹脂の場合、該エポキシ樹脂と過不足なく硬化反応をする量であればよい。
【0068】
希釈剤は、抵抗膜用ペーストの粘度等を調整するための成分であり、抵抗膜形成後、蒸発し、除去されることになる。このため、希釈剤は特に限定されず、例えばジメチルヘキシルグリシジルエーテル、ジエチルヘキシルグリシジルエーテル、ジプロピルヘキシルグリシジルエーテルなどのモノエポキシ化合物、高沸点パラフィン、芳香族炭化水素、セルソルブアセテート、カルボニルアセテート(ジエチレングルコールモノエチルエーテル)、アルコール類 ジエチレングルコール等、1,3-プロパンジオール等が挙げられる。エポキシ樹脂との相溶性があり、かつエポキシ当量が100~250であることが望ましい。このエポキシ当量の値は短時間で過不足なく硬化剤と反応出来、得られた硬化物の強度を維持するために好ましい値であり、エポキシ当量が100未満では、反応性に乏しく硬化物の耐熱性が期待できない恐れがあり、一方250を超えると分子量の増加による粘性が高くなり、希釈効率の低下や硬化時間の増加を招く恐れがある。
【0069】
ペースト調製工程で材料を混合する方法は特に限定されず、例えば各種ミキサーを用いることができる。ただし、3本ロール等の粉砕力が大きな装置で混合、分散すると被覆粒子の導電膜が割れる場合があるので、粉砕力が強い装置は用いないことが好ましい。
(2-1)各成分の混合割合について
抵抗膜用ペースト中の各成分の割合は特に限定されず、用いる材料や、要求される特性等に応じて選択できる。
【0070】
ここで、抵抗膜用ペースト中の被覆粒子の体積割合をA、絶縁性材料のうちの樹脂の体積割合をB、希釈剤の体積割合をC、硬化剤をDとする。
【0071】
なお、ここでは絶縁性材料のうちの樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合を例に説明する。
【0072】
この場合、A/(B+D)は、20/80以上60/40以下を充足することが好ましい。
【0073】
すなわち、抵抗膜用ペーストに含まれる絶縁性材料と、被覆粒子とのうち、被覆粒子の体積割合は、20%以上60%以下であることが好ましく、25%以上55%以下であることがより好ましい。なお、上記絶縁性材料とは、絶縁性材料が含有する樹脂、および硬化剤を意味する。
【0074】
上記割合を20%以上とすることで、抵抗膜中の被覆粒子の量を十分なものとし、被覆粒子が連続的につながり、すなわちパーコレーションし、電極間を電気的に接続できる。
【0075】
また、上記割合を60%以下とすることで、抵抗膜用ペーストの流動性を高め、塗布、乾燥時に特に均一な抵抗膜を形成できる。
【0076】
また、(A+B+D)/Cは、90/10以上50/50以下であることが好ましい。すなわち、抵抗膜用ペースト中の希釈剤の体積割合は、10%以上50%以下であることが好ましく、15%以上35%以下であることがより好ましい。
【0077】
抵抗膜用ペースト中の希釈剤の体積割合を10%以上とすることで、抵抗膜用ペーストの粘度を抑制し、塗布性を高められる。また、抵抗膜用ペースト中の希釈剤の体積割合を50%以下とすることで、塗布後の抵抗膜用ペーストの収縮を抑制し、特に均一な抵抗膜を形成できる。
【0078】
抵抗膜用ペーストは、不可避不純物を含有することもできるが、不純物イオン濃度のうち、加水分解性塩素イオンについては100ppm以下であることが好ましく、アルカリなどの金属イオンについては50ppm以下であることが好ましい。不純物イオン濃度を上記範囲とすることで、電子部品の接合時にペーストの染み出し等を防止し、接着強度、耐熱性、耐湿性、耐ヒートサイクル性、導電性、作業性などの特性を特に高めることができる。
【0079】
抵抗膜用ペーストは、上記した成分以外に、必要に応じてブロックイソシアネートなどの硬化促進剤や接合強度を向上させるためのシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤や、顔料、染料などの着色剤を含有することもできる。
(3)抵抗膜形成工程
抵抗膜形成工程は、一対の電極間に抵抗膜用ペーストを塗布し、抵抗膜を形成できる。
【0080】
具体的には、予め絶縁性基板上に形成されている一対の電極間に抵抗膜用ペーストを塗布し、乾燥、熱処理することで、抵抗体を形成できる。
【0081】
この際の塗布条件は特に限定されず。抵抗膜用ペーストの組成や、抵抗体に要求される特性等に応じて選択できる。
【0082】
また、乾燥、熱処理の条件についても特に限定されず、抵抗膜用ペーストに含まれる各成分に応じて乾燥、熱処理条件を選択できる。乾燥、硬化温度は希釈剤の沸点以上が好ましく、例えば80℃以上200℃以下が好ましい。例えば室温から12℃/分で硬化温度(120℃~250℃)まで昇温し、硬化温度で、20分以上2時間以下定温保持し、硬化させその後、炉外に取り出し自然放冷できる。
【実施例0083】
以下に具体的な実施例、比較例等を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(評価方法)
以下の実施例、比較例で作製した抵抗体の評価方法について説明する。
(1)抵抗値測定
膜厚は、各実施例、比較例で同じ条件で作製した5個の抵抗体について、触針の厚さ粗さ計(東京精密社製 型番:サーフコム480B)により膜厚を測定し、測定した値を平均することで算出した。
【0084】
製造した5個の抵抗体について、室温(300K)においてデジタルマルチメーター(KEITHLEY社製、2001番)により抵抗値を測定し、得られた抵抗値を、抵抗体の厚さが50μmの場合に換算した。そして、換算後の5個の厚膜抵抗体の抵抗値の平均を該厚膜抵抗体の抵抗値とした。
(2)抵抗温度係数
抵抗温度係数は次の手順で算出した。
【0085】
以下の各実施例、比較例で同じ条件で幅1mm、長さ10mmの抵抗体を5個作製し、各抵抗体を-55℃、25℃、125℃にそれぞれ15分保持してから抵抗値を測定した。各厚膜抵抗体の各温度での抵抗値はR-55、R25、R125とする。例えばR-55は、-55℃での抵抗値を意味する。
【0086】
次に各厚膜抵抗体について以下の式(A)、式(B)によって低温側の抵抗温度係数COLD-TCRと、高温側の抵抗温度係数HOT-TCRとを算出し、5個の抵抗体の平均を各実施例、比較例の厚膜抵抗体の抵抗温度係数(COLD-TCR、HOT-TCR)とした。
COLD-TCR(ppm/℃)=(R-55-R25)/R25/(-80)×10・・・(A)
HOT-TCR(ppm/℃)=(R125-R25)/R25/(100)×10・・・(B)
なお、抵抗温度係数は0に近いことが望ましく、-100ppm/℃≦抵抗温度係数≦100ppm/℃であることが優れた抵抗体の目安とされている。
(製造条件)
[実施例1]
(被覆粒子形成工程)
絶縁粒子として、平均粒径が20μmの球状シリカ(AGCエスアイテック製 型番:NP-200)を用意した。
【0087】
(第1成膜工程)
係る球状シリカを図3に示した多角バレルスパッタリング法によるスパッタリング装置30に入れて、バレル回転させずに成膜した。なお、ターゲットとしてはRuターゲットを用いた。スパッタ前のチャンバー34内の真空度は2×10-4Pa、スパッタガスとしてはAr:O混合ガスを用い、流量比はAr:O=9:1とした。球状シリカの表面上に酸化ルテニウム膜は、最大で500nmとなるように成膜した。
【0088】
なお、多角形の容器31内の球状シリカの位置を入れ替えるために一旦スパッタリングを止めて、多角形の容器31を2回揺動させ、再度スパッタリングを行う操作を20回行った。これにより、多角形の容器31内に入れた底部側の絶縁粒子131Aと、上部側の絶縁粒子131Bとの位置を入れ替え、多角形の容器31内に入れた各絶縁粒子131の表面の一部に酸化ルテニウム膜を、最大で500nmとなるように成膜した。
(第2成膜工程)
次いで、バレル回転速度を0.1rpmとして、すなわち、200秒で回転軸Cを回転の中心として120度回転させる回転速度で、絶縁粒子の表面全体に酸化ルテニウム膜を平均で5nmとなるように成膜した。
【0089】
得られた被覆粒子について、評価を行ったところ、得られた被覆粒子が有する酸化ルテニウム膜は厚さが100nm以下の薄膜部と、厚さが100nmを超える厚膜部と、を有しており、最大値と最小値との差の平均は280nmであることを確認できた。
【0090】
酸化ルテニウム膜の膜厚の測定に当たっては、まず被覆粒子をFIB加工により該粒子の断面観察が可能な状態とした。そして、TEMを用いて、上記被覆粒子13において、導電膜132の厚さT132を測定した。導電膜132の厚さT132は、絶縁粒子の中心Oと、厚さT132を測定する箇所における導電膜132の外表面とを結ぶ直線Lに沿って測定した。
【0091】
導電膜132の厚さの最大値と最小値との差の平均値の測定に当たっては、まず被覆粒子をFIB加工により該粒子の断面観察が可能な状態とした。そして、TEMを用いて、上記被覆粒子において、導電膜132の厚さT132について、最大になる個所と、最小になる個所とで測定し、該粒子における導電膜132の厚さの最大値と最小値との差を算出した。
【0092】
同様にして10個の被覆粒子について求めた粒子ごとの導電膜の最大値と最小値との差を平均することで、該抵抗体が有する被覆粒子における、導電膜の厚さの最大値と最小値との差を求めた。
(ペースト調製工程)
エポキシ樹脂(ビスフェノールA)100質量部に対して、フェノールノボラック硬化剤を40質量部、潜在性硬化促進剤としてイミダゾールIBMZ-OK(商品名;四国化成社製)1質量部の割合で添加した絶縁性材料を用意した。
【0093】
上記被覆粒子と、上記絶縁性材料との体積比が1:1となるように、上記容器に上記絶縁性材料を入れた。また、希釈剤として2-エチルへキシルグリシジエーテルを、絶縁性材料100質量部に対して20質量部の割合となるように、上記容器に入れた。
【0094】
上記容器に入れた材料を自転・公転ミキサー(シンキー製 真空LEDタイプARV―310LED)で真空脱泡後に1200rpmで10分間の撹拌混合してペースト化した。
(抵抗膜形成工程)
ペースト調製工程で得られた抵抗膜用ペーストを、予め一対の電極が形成されたアルミナ基板上に、マスクを介して塗布し、室温で30分放置後、電気オーブン中で150℃、30分間加熱し硬化させた。
【0095】
これにより、一対の電極間に幅1mmで長さ10mm、平均膜厚が50μmである抵抗膜が形成できた。なお、電極はAgペーストを用いて形成した。
【0096】
得られた抵抗体について、抵抗値、および抵抗温度係数の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0097】
[比較例1]
被覆粒子と、絶縁性材料との体積比を2:1となるように変更した点以外は、実施例1と同様にして抵抗膜用ペーストと抵抗体を作製して評価を行った。
【0098】
本比較例では被覆粒子の含有割合が高いため、得られた抵抗体が有する抵抗膜の強度が低くなっていた。また、被覆粒子同士の接触が多くなり、厚膜部同士の接触も多くなる。その結果、電子が薄膜部を通らなくなって、抵抗が下がり、金属的な伝導が主になったため抵抗温度係数が大きくなったと考えられる。
【0099】
[比較例2]
被覆粒子と、絶縁性材料との体積比を1:5となるように変更した点以外は、実施例1と同様にして抵抗膜用ペーストと抵抗体を作製して評価を行った。
【0100】
本比較例では、被覆粒子の含有割合が低かったため、50MΩと抵抗値が測定装置の上限値となっており、電極111間に導通が取れていないことを確認できた。なお。抵抗温度係数は基板についての値になっているものと考えられる。
【0101】
【表1】
表1に示した様に所定の被覆粒子を所定の割合で含む実施例1においては、鉛成分を含有していない抵抗体が得られ、抵抗温度係数が-100ppm以上+100ppm以下の範囲内に抑制できることが確認できた。
【符号の説明】
【0102】
10 抵抗体
111 電極
112 抵抗膜
12 絶縁性材料
13 被覆粒子
131、131A、131B 絶縁粒子
132 導電膜
1321 薄膜部
1322 厚膜部
T132 膜厚
図1
図2
図3