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特開2023-104150データ処理システム、データ処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023104150
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】データ処理システム、データ処理方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20230721BHJP
   F16K 37/00 20060101ALI20230721BHJP
   G01M 13/003 20190101ALI20230721BHJP
【FI】
G05B23/02 T
G05B23/02 302Y
F16K37/00 F
G01M13/003
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022004974
(22)【出願日】2022-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】592115504
【氏名又は名称】金子産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100214248
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 純
(74)【代理人】
【識別番号】100214260
【弁理士】
【氏名又は名称】相羽 昌孝
(72)【発明者】
【氏名】沖野 史岳
【テーマコード(参考)】
2G024
3C223
3H065
【Fターム(参考)】
2G024AA17
2G024BA27
2G024CA12
2G024CA16
2G024DA28
2G024FA02
2G024FA06
2G024FA15
3C223AA01
3C223BA01
3C223CC01
3C223DD01
3C223EB01
3C223EB02
3C223EB03
3C223FF04
3C223FF22
3C223FF26
3C223FF33
3C223GG01
3C223HH02
3H065AA02
3H065BC02
3H065CA03
3H065CA06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】推定された作用トルクから流体圧駆動弁の異常の有無を判定することを可能とするデータ処理システムを提供する。
【解決手段】データ処理システムは、駆動装置12と、電磁弁1と、を少なくとも備える流体圧駆動弁10に用いられて、主弁11の弁開度の時系列データ、及び、駆動流体の電磁弁出力側圧力の時系列データを少なくとも含む入力データを取得する入力データ取得ユニットと、入力データと、作用トルクの時系列データを含む出力データとの相関関係を機械学習により学習させた学習済モデルに対して、入力データ取得ユニットにより取得された入力データを入力し、作用トルクの時系列データを推論する推論ユニットと、推論ユニットにより推論された作用トルクの時系列データに対して所定の処理を行い、主弁11及び駆動装置12のうち少なくとも1つの異常の有無を判定する異常判定ユニットと、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主弁と、前記主弁に連結された弁軸を駆動する駆動装置と、前記駆動装置に対して駆動流体の給排を制御する電磁弁と、を少なくとも備える流体圧駆動弁に用いられるデータ処理システムであって、
所定期間中における前記主弁の弁開度の時系列データ、及び、前記所定期間中に前記電磁弁から前記駆動装置に給排される前記駆動流体の電磁弁出力側圧力の時系列データを少なくとも含む入力データを取得する入力データ取得ユニットと;
前記入力データと、当該入力データに対応する前記所定期間中に前記弁軸に作用する作用トルクの時系列データを含む出力データとの相関関係を機械学習により学習させた学習済モデルに対して、前記入力データ取得ユニットにより取得された前記入力データを入力し、当該入力データに対応する前記所定期間中に前記弁軸に作用する前記作用トルクの時系列データを推論する推論ユニットと;
前記推論ユニットにより推論された前記作用トルクの時系列データに対して所定の処理を行い、前記処理の結果に基づいて、前記主弁及び前記駆動装置のうち少なくとも1つの異常の有無を判定する異常判定ユニットと;を備える、
データ処理システム。
【請求項2】
前記異常判定ユニットは、
前記処理として、前記推論ユニットにより推論された前記作用トルクの時系列データから前記作用トルクの統計値を求める統計処理を行い、前記統計処理により求めた前記統計値に基づいて、前記異常の有無を判定する、
請求項1に記載のデータ処理システム。
【請求項3】
前記入力データ取得ユニットは、前記所定期間の時期が異なる複数の前記入力データを取得し、
前記推論ユニットは、前記学習済モデルに対して、前記入力データ取得ユニットにより取得された複数の前記入力データをそれぞれ入力し、複数の当該入力データに対応する複数の前記作用トルクの時系列データをそれぞれ推論し、
前記異常判定ユニットは、
前記処理として、前記推論ユニットにより推論された複数の前記作用トルクの時系列データから前記作用トルクの統計値をそれぞれ求める統計処理を行い、前記統計処理により求めた複数の前記統計値の時間推移に基づいて、前記異常の有無を判定する、
請求項1に記載のデータ処理システム。
【請求項4】
前記所定期間は、前記主弁の開閉操作が行われる期間のうち、前記主弁の開操作開始から開操作終了までの開操作期間、前記主弁の閉操作開始から閉操作終了までの閉操作期間、及び、前記開操作期間と前記閉操作期間とを含む開閉操作期間、のいずれかである、
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のデータ処理システム。
【請求項5】
前記作用トルクの時系列データは、
前記弁軸の一部を構成し、前記駆動装置により駆動される第1の軸と、前記弁軸の一部を構成し、前記第1の軸及び前記主弁に連結される第2の軸との間に作用する第1の作用トルクの時系列データ、及び、
前記第1の軸と、前記弁軸の一部を構成し、前記第1の軸に連結されるとともに前記電磁弁の収容部に挿入される第3の軸との間に作用する第2の作用トルクの時系列データ、の少なくとも1つである、
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のデータ処理システム。
【請求項6】
前記流体圧駆動弁は、前記流体圧駆動弁の稼働時間を検出するタイマを更に備え、
前記入力データは、前記稼働時間を更に含む、
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のデータ処理システム。
【請求項7】
前記流体圧駆動弁は、前記主弁、前記駆動装置又は前記電磁弁の作動回数を検出するカウンタを更に備え、
前記入力データは、前記作動回数を更に含む、
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のデータ処理システム。
【請求項8】
前記流体圧駆動弁は、前記駆動流体を前記電磁弁に供給するための駆動流体供給源に接続され、
前記入力データは、前記所定期間中に前記駆動流体供給源から前記電磁弁に供給される前記駆動流体の電磁弁入力側圧力の時系列データを更に含む、
請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載のデータ処理システム。
【請求項9】
主弁と、前記主弁に連結された弁軸を駆動する駆動装置と、前記駆動装置に対して駆動流体の給排を制御する電磁弁と、を少なくとも備える流体圧駆動弁に用いられるデータ処理方法であって、
所定期間中における前記主弁の弁開度の時系列データ、及び、前記所定期間中に前記電磁弁から前記駆動装置に給排される前記駆動流体の電磁弁出力側圧力の時系列データを少なくとも含む入力データを取得する入力データ取得ステップと;
前記入力データと、当該入力データに対応する前記所定期間中に前記弁軸に作用する作用トルクの時系列データを含む出力データとの相関関係を機械学習により学習させた学習済モデルに対して、前記入力データ取得ステップにより取得された前記入力データを入力し、当該入力データに対応する前記所定期間中に前記弁軸に作用する前記作用トルクの時系列データを推論する推論ステップと;
前記推論ステップにより推論された前記作用トルクの時系列データに対して所定の処理を行い、前記処理の結果に基づいて、前記主弁及び前記駆動装置のうち少なくとも1つの異常の有無を判定する異常判定ステップと;を備える、
データ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ処理システム及びデータ処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電磁弁により駆動流体を制御し、駆動装置により駆動される弁軸を介して主弁を開閉する流体圧駆動弁が知られている。例えば、特許文献1には、プラント設備の配管に使用される流体圧駆動弁として、設備に異常が発生したような緊急時に、電磁弁により駆動流体を制御して駆動装置を介してボールバルブ(主弁)を閉じることにより、配管を流れる流体を遮断する緊急遮断弁装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-97539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるような、プラント設備に用いられる緊急遮断弁等の流体圧駆動弁においては、プラント設備全体の稼働率・信頼性を向上させるためには、流体圧駆動弁の動作状態を把握することが望まれる。例えば、駆動装置により駆動される弁軸を介して主弁を開閉する際、弁軸に作用する作用トルクの大きさや変化量を計測することができれば、流体圧駆動弁の動作状態を的確に把握することが可能となる。
【0005】
一方、弁軸に作用する作用トルクを計測するためには、弁軸にトルクセンサを設置することが必要となるが、トルクセンサは高価であるため、流体圧駆動弁の装置費用の増大を招いてしまう。また、流体圧駆動弁の使用環境によっては、故障の原因となり得る汚れ等からトルクセンサを保護するための追加の対策が要求されることも考えられる。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、トルクセンサを要することなく、弁軸に作用する作用トルクを推定することを可能とし、また、推定された作用トルクから流体圧駆動弁の異常の有無を判定することを可能とするデータ処理システム及びデータ処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係るデータ処理システムは、
主弁と、前記主弁に連結された弁軸を駆動する駆動装置と、前記駆動装置に対して駆動流体の給排を制御する電磁弁と、を少なくとも備える流体圧駆動弁に用いられるデータ処理システムであって、
所定期間中における前記主弁の弁開度の時系列データ、及び、前記所定期間中に前記電磁弁から前記駆動装置に給排される前記駆動流体の電磁弁出力側圧力の時系列データを少なくとも含む入力データを取得する入力データ取得ユニットと、
前記入力データと、当該入力データに対応する前記所定期間中に前記弁軸に作用する作用トルクの時系列データを含む出力データとの相関関係を機械学習により学習させた学習済モデルに対して、前記入力データ取得ユニットにより取得された前記入力データを入力し、当該入力データに対応する前記所定期間中に前記弁軸に作用する前記作用トルクの時系列データを推論する推論ユニットと、
前記推論ユニットにより推論された前記作用トルクの時系列データに対して所定の処理を行い、前記処理の結果に基づいて、前記主弁及び前記駆動装置のうち少なくとも1つの
異常の有無を判定する異常判定ユニットとを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様に係るデータ処理システムによれば、弁開度の時系列データ及び電磁弁出力側圧力の時系列データと、弁軸に作用する作用トルクの時系列データとの相関関係を学習モデルに学習させるで、弁軸に作用する作用トルクを推定可能な学習済モデルを提供することができる。よって、この学習済モデルを利用することにより、トルクセンサを要することなく、弁軸に作用する作用トルクを推定することができる。そして、推定された作用トルクから、容易に流体圧駆動弁の異常の有無を判定することができる。
【0009】
上記以外の課題、構成及び効果は、後述する発明を実施するための形態にて明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施の形態に係る機械学習装置等が適用される流体圧駆動弁の一例を示す概略図である。
図2】本発明の一実施の形態に係る機械学習装置等が適用される駆動装置の例を示す概略図である。
図3】本発明の一実施の形態に係る機械学習装置等が適用される電磁弁の一例を示す概略図である。
図4】本発明の一実施の形態に係る機械学習装置等が適用される電磁弁の一例を示すブロック図である。
図5】本発明の一実施の形態に係る機械学習装置の概略ブロック図である。
図6】本発明の一実施の形態に係る機械学習装置等で使用されるデータの構成例(教師あり学習)を示す図である。
図7】本発明の一実施の形態に係る機械学習装置において実施される教師あり学習のためのニューラルネットワークモデルの例を示す図である。
図8】本発明の一実施の形態に係る機械学習方法の例を示すフローチャートである。
図9】本発明の一実施の形態に係るデータ処理システムを示す概略ブロック図である。
図10】本発明の一実施の形態に係るデータ処理システムにおいて異常判定ユニットによる異常判定の例を説明する図である。
図11】本発明の一実施の形態に係るデータ処理システムにおいて異常判定ユニットによる別の異常判定の例を説明する図である。
図12】本発明の一実施の形態に係るデータ処理システムによるデータ処理方法の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明を実施するための各実施の形態について説明する。なお、以下では本発明の目的を達成するための説明に必要な範囲を模式的に示し、本発明の該当部分の説明に必要な範囲を主に説明することとし、説明を省略する箇所については公知技術によるものとする。
【0012】
本発明の一実施の形態に係るデータ処理システム及びデータ処理方法を説明する前に、以下には先ずデータ処理システム等が適用される流体圧駆動弁について説明を行う。
【0013】
(流体圧駆動弁)
図1は、本発明の一実施の形態に係る流体圧駆動弁10の一例を示す概略図である。本実施の形態における流体圧駆動弁10としては、例えば、プラント設備において各種のガ
スや石油等が流れる配管100に設置され、プラント設備に異常等が発生した緊急停止時に、配管100の流れを遮断するための緊急遮断弁として用いることができる。なお、流体圧駆動弁10の設置場所や用途は、上記の例に限られない。
【0014】
図1に示す流体圧駆動弁10は、配管100の途中に配置される主弁11と、主弁11に連結された弁軸13を駆動流体の流体圧に応じて駆動させることで主弁11の開閉操作を行う流体圧式の駆動装置12と、駆動装置12に対して駆動流体の給排を制御する機能を有する電磁弁1とを備えている。
【0015】
流体圧駆動弁10に用いられる駆動流体には、計装空気(以下、単に「空気」という)Aが採用されている。空気Aは空気供給源14から第1の空気配管140を介して電磁弁1に供給され、さらに、第2の空気配管141を介して駆動装置12に供給される。また、流体圧駆動弁10には、外部装置15及び電磁弁1の間で各種のデータを送受信するための通信ケーブル150と、外部電源16から電磁弁1に電力を供給するための電力ケーブル160とが接続されている。なお、駆動流体としては、上記の空気Aに限られず、他の気体でも液体(例えば、油)でもよい。
【0016】
外部装置15は、流体圧駆動弁10との間で各種情報を送受信するための装置であって、例えば、プラント管理用のコンピュータ(ローカルサーバ及びクラウドサーバを含む。)、作業者(保守点検者)が使用する診断用コンピュータ、又は、USBメモリや外付けHDD等の外部記憶ユニットで構成されている。外部装置15は、後述する機械学習装置200に接続されて学習用データセットを構成する各種データを送信することも可能である。また、外部装置15は、流体圧駆動弁10に異常が発生した場合に作業者等に対して異常が発生したことやその内容を報知するための、GUI(Graphical User Interface)等からなる報知手段を備えている。なお、外部装置15及び電磁弁1の間の通信には無線通信を利用してもよい。
【0017】
本実施の形態の流体圧駆動弁10の駆動方式は、エアーレスクローズ方式が採用されている。したがって、定常運転時は空気供給源14から電磁弁1を介して駆動装置12に空気Aを供給(給気)することで、主弁11が開操作され、緊急停止時や試験運転時は、駆動装置12から電磁弁1を介して空気Aを排出(排気)することで、主弁11が閉操作される。なお、流体圧駆動弁10は、エアーレスオープン方式を採用してもよく、その場合には、駆動装置12に空気Aを供給することで閉操作され、駆動装置12から空気Aを排出することで主弁11を閉操作される。
【0018】
主弁11には、ボールバルブが採用されている。主弁11の具体的な構成としては、配管100の途中に配置される弁箱110と、弁箱110内に回動可能に設けられたボール状の弁体111とを備え、弁体111の上部には、弁軸13が連結されている。弁軸13が0度~90度に回動されることに応じて弁箱110内で弁体111が回動し、主弁11の全開状態(図1に示す状態)と全閉状態が切り替えられる。なお、主弁11として用いられる弁は、ボールバルブに限られず、例えば、バタフライバルブやその他のオンオフ弁であってもよい。
【0019】
駆動装置12には、主弁11と電磁弁1との間に配置された単作動式のエアシリンダ機構が採用されている。駆動装置12の具体的な構成としては、スプリング室127及びシリンダ室128を有する、円筒状のシリンダ120と、シリンダ120内に往復直線移動可能に設けられピストンロッド121を介して連結された一対のピストン122A、122Bと、第1のピストン122A側に形成されたスプリング室127に設けられたコイルばね123と、第2のピストン122B側に形成されたシリンダ室128に接続された空気給排口124と、シリンダ120を径方向に沿って貫通するように配置された弁軸13
とピストンロッド121とが直交する部分に設けられた伝達機構125とを備える。なお、駆動装置12は、単作動式に限られず、例えば、複作動式等の他の形式で構成されていてもよい。
【0020】
第1のピストン122Aは、スプリング室127に設けられたコイルばね123により主弁11を閉方向に動作するように付勢されている。また、第2のピストン122Bは、空気給排口124からシリンダ室128に供給された空気A(給気)により主弁11を開方向に動作するように(コイルばね123の付勢力に抗して)押圧するものである。さらに、伝達機構125は、ラックアンドピニオン機構、スコッチヨーク機構、リンク機構、カム機構等で構成されており、ピストンロッド121の往復直線運動を回動運動に変換して弁軸13に伝達するものである。
【0021】
弁軸13は、回動可能なシャフト状に形成され、第1の軸13aと、第2の軸13bと、第3の軸13cとから構成される。第1の軸13aの両端部は、カップリングやコネクタ等を介して第2の軸13b及び第3の軸13cにそれぞれ連結されて、第1の軸13a、第2の軸13b及び第3の軸13cは同軸上に配置される。第1の軸13aは、駆動装置12を貫通するように配置され、駆動装置12により駆動される。第2の軸13bは、第1の軸13aに連結されるとともに主弁11に連結される。第3の軸13cは、第1の軸13aに連結されるとともに電磁弁1の収容部6に挿入されて軸支される。弁軸13は、第1の軸13aが駆動されることに同期して、全体として回動運動を行う。
【0022】
図2は、本発明の一実施の形態に係る機械学習装置等が適用される駆動装置12の例を示す概略図である。図2(a)は伝達機構125がラックアンドピニオン機構の例、図2(b)は伝達機構125がスコッチヨーク機構の例を示す。
【0023】
例えば、伝達機構125が、図2(a)に示すように、ラックアンドピニオン機構の場合、空気Aがシリンダ120に給気又はシリンダ120から排気されることによってピストン122及びピストンロッド121が往復直線運動を行う。すると、ピストンロッド121に設けられたラック125aが往復直線運動を行う。続いて、ラック125aに対して接触して噛み合うピニオン125bが回動する。すると、ピニオン125bと同様に回動する第1の軸13aが回動運動を行う。
【0024】
また、伝達機構125が、図2(b)に示すように、スコッチヨーク機構の場合、空気Aがシリンダ120に給気又はシリンダ120から排気されることによってピストン122A、122B及びピストンロッド121が往復直線運動を行う。すると、ピストンロッド121と同様に移動するローラピン125cが往復直線運動を行う。続いて、ローラピン125cに対して軸偏心して接触し組み付けられるヨーク125dが90°回動する。すると、ヨーク125dと同様に90°回動する第1の軸13aが回動運動を行う。
【0025】
駆動装置12は、ピストン122A、122Bの動きをそれぞれ規制する位置を変更可能なストッパ126A、126Bと、駆動装置12の各部の状態を取得する駆動状態センサ49とをさらに備える。図2(a)及び図2(b)に示す例では、ストッパ126A、126Bは、シリンダ120のシリンダケース120A、120Bそれぞれのピストンロッド121軸上に設置されたボルトにより構成されている。
【0026】
駆動状態センサ49は、例えば、位置センサ491、加速度センサ492、及び、温度・湿度センサ493等である。図2(a)及び図2(b)に示す例では、駆動状態センサ49として、2つの位置センサ491、2つの加速度センサ492、及び、2つ(図2(b)においては3つ)の温度・湿度センサ493が、ストッパ126A、126B又はシリンダ120に取り付けられている。
【0027】
位置センサ491は、シリンダ120のシリンダケース120A、120Bに対するピストン122A、122B又はピストンロッド121の位置を検出する。位置センサ491は、例えば、第1のストッパ126A及び第2のストッパ126Bにそれぞれ取り付けられ、シリンダ120に対するピストン122A、122B又はピストンロッド121の位置(距離)を計測する。位置センサ491は、超音波センサ、赤外線センサ、ホールセンサ、リードセンサ等で構成される。
【0028】
加速度センサ492は、シリンダ120に生じる加速度を計測する。具体的には、加速度センサ492は、ピストン122A、122Bがシリンダ120内を往復直線移動するときに発生する駆動装置12の振動や、ピストン122がストッパ126A、126Bに衝突するときに発生する駆動装置12の振動(衝撃)を、駆動装置12の加速度として計測する。
【0029】
温度・湿度センサ493は、例えば、シリンダ120に形成されたタップ孔に取り付けられ、シリンダ120内の温度及び湿度を検出する。温度・湿度センサ493は、温度を検出する温度センサと、相対湿度を検出する湿度センサとを組み合わせて構成される。
【0030】
駆動装置12が、図2に示すように、単作動式の場合には、空気給排口124aが電磁弁1に接続されるとともに、空気給排口124b、124cが外部環境に開放されているため、温度・湿度センサ493は、電磁弁1から空気給排口124aを介してシリンダ120内に給排される空気A(駆動流体)の温度及び湿度を検出するとともに、外部環境から空気給排口124b、124cを介してシリンダ120内に給排される外気(外部空気)の温度及び湿度を検出する。
【0031】
また、駆動装置12が、複作動式の場合には、空気給排口124a、124bが電磁弁1に接続されて、電磁弁1から空気給排口124a、124bを介して第2のピストン122Bを境にシリンダ120内に形成された左右の空気室に空気Aが交互に給気又は排気されるとともに、空気給排口124cが外部環境に開放されているため、温度・湿度センサ493は、電磁弁1から空気給排口124a、124bを介してシリンダ120内に給排される空気A(駆動流体)の温度及び湿度を検出するとともに、外部環境から空気給排口124cを介してシリンダ120内に給排される外気(外部空気)の温度及び湿度を検出する。
【0032】
なお、駆動状態センサ49が駆動装置12に取り付けられる位置や数は、図2に示す例に限られず、適宜変更されてもよい。例えば、位置センサ491は、シリンダケース120A、120Bに取り付けられてもよい。加速度センサ492は、シリンダケース120A、120Bに取り付けられてもよいし、ストッパ126Aの基端部(図2(b)参照。)に代えて、ストッパ126Aの先端部に取り付けられてもよい。温度・湿度センサ493は、電磁弁1に接続された空気給排口124a、第1の空気配管140、第2の空気配管141、又は電磁弁1の内部に取り付けられてもよい。また、温度・湿度センサ493は、外部環境に開放された空気給排口124b、124cのいずれかに取り付けられてもよいし、空気給排口124b、12cのいずれかに接続されたロングニップル及びティーのいずれかに取り付けられてもよい。
【0033】
電磁弁1は、駆動装置12に対して空気Aの給排を制御する機能を有し、例えば、2ポジションでノーマルクローズタイプ(通電時「開」、非通電時「閉」)の三方電磁弁として構成されている。電磁弁1は、屋内型又は防爆型の電磁弁1のハウジングとして機能する収容部6の内部に、空気Aが流れる流路を切り替えるスプール部2と、通電状態(通電時又は非通電時)に応じてスプール部2を変位させるソレノイド部3とを備えている。な
お、電磁弁1には、上述したタイプの三方電磁弁に限られず、3ポジションであっても、ノーマルオープンタイプであっても、四方電磁弁等であってもよく、これらの任意の組み合わせに基づく各種の形成で構成できる。また、本実施の形態では、電磁弁1は、流体圧駆動弁10におけるパイロットバルブとして用いられるものであるが、電磁弁1の用途はこれに限られない。
【0034】
スプール部2は、空気供給源14に第1の空気配管140を介して接続される入力ポート20と、駆動装置12に第2の空気配管141を介して接続される出力ポート21と、駆動装置12からの排気を排出する排気ポート22とを備える。
【0035】
ソレノイド部3は、通電時に、入力ポート20と出力ポート21との間を連通するように、スプール部2を変位させ、非通電時に、出力ポート21と排気ポート22との間を連通するように、スプール部2を変位させる。
【0036】
上述した一連の構成により、電磁弁1が通電状態である場合には、空気供給源14からの空気A(給気)が、第1の空気配管140、入力ポート20、出力ポート21及び第2の空気配管141の順に流れて、空気給排口124に供給されることで、第2のピストン122Bが押圧されてコイルばね123が圧縮する。そして、コイルばね123の圧縮に応じてピストンロッド121が移動した分だけピストンロッド121及び伝達機構125を介して第1の軸13a(弁軸13)が回動されると、弁箱110内で弁体111が回動し、主弁11が全開状態に操作される。
【0037】
一方、電磁弁1が非通電状態である場合には、シリンダ120内の空気A(排気)が、空気給排口124から第2の空気配管141、出力ポート21及び排気ポート22の順に流れて、外気に排出されることで、第2のピストン122Bの押圧力が低下し、コイルばね123が圧縮状態から復元する。そして、コイルばね123の復元に応じてピストンロッド121が移動した分だけ伝達機構125を介して第1の軸13a(弁軸13)が回動されると、弁箱110内で弁体111が回動し、主弁11が全閉状態に操作される。
【0038】
図3は、本発明の一実施の形態に係る電磁弁1の一例を示す断面図である。本実施の形態に係る電磁弁1は、図3に示すように、上記のスプール部2及びソレノイド部3に加えて、電磁弁1の各部の状態を取得する複数のセンサ4と、複数のセンサ4のうち少なくとも1つが載置された基板5と、スプール部2、ソレノイド部3、複数のセンサ4及び基板5を収容する収容部6とを備える。
【0039】
収容部6は、スプール部2を収容する第1の収容部60と、第1の収容部60に隣接されるとともに、ソレノイド部3、複数のセンサ4及び基板5を収容する第2の収容部61と、通信ケーブル150及び電力ケーブル160が接続されるターミナルボックス62とを備える。第1の収容部60及び第2の収容部61は、例えば、アルミニウム等の金属材料で製作されている。
【0040】
第1の収容部60は、入力ポート20、出力ポート21及び排気ポート22として、それぞれ機能する開口部(不図示)を有する。
【0041】
第2の収容部61は、両端(第1のハウジング端部610a及び第2のハウジング端部610b)が開放された円筒状のハウジング610と、ハウジング610の内部に配置されるボディー611と、第1のハウジング端部610aに固定されたソレノイド部3を外気から覆うソレノイドカバー612と、第2のハウジング端部610bに固定されたターミナルボックス62を外気から覆うターミナルボックスカバー613とを備える。
【0042】
ハウジング610は、その下部に形成されて第3の軸13cが挿入される軸挿入口610cと、その上部に形成されてボディー611が挿入されるボディー挿入口610dと、第2のハウジング端部610b側に形成されて通信ケーブル150及び電力ケーブル160が挿入されるケーブル挿入口610eとを有する。
【0043】
第1の収容部60及び第2の収容部61には、ボディー611を貫通するようにして、入力側流路26から分岐して入力側流路26と第1の圧力センサ40との間を連通する第1の流路63と、出力側流路27から分岐して出力側流路27と第2の圧力センサ41との間を連通する第2の流路64と、スプール部2とソレノイド部3とを連動させるための空気Aが流れるスプール流路65が形成されている。
【0044】
スプール部2は、スプールケースとして機能する第2の収容部61内に形成されたスプールホール23と、スプールホール23内に移動可能に配置されたスプールバルブ24と、スプールバルブ24を付勢するスプールスプリング25と、入力ポート20とスプールホール23との間を連通する入力側流路26と、出力ポート21とスプールホール23との連通する出力側流路27と、排気ポート22とスプールホール23との間を連通する排気流路28とを備える。
【0045】
ソレノイド部3は、ソレノイドケース30と、ソレノイドケース30内に収容されたソレノイドコイル31と、ソレノイドコイル31内に移動可能に配置された可動鉄芯32と、ソレノイドコイル31内に固定状態で配置された固定鉄芯33と、可動鉄芯32を付勢するソレノイドスプリング34とを備える。
【0046】
電磁弁1が非通電状態から通電状態に切り替えられた場合には、ソレノイド部3において、コイル電流がソレノイドコイル31に流れることによりソレノイドコイル31が電磁力を発生し、当該電磁力により可動鉄芯32がソレノイドスプリング34の付勢力に抗して固定鉄芯33に吸引されることで、スプール流路65を流れる空気Aの流通状態が切り替えられる。そして、スプール部2において、スプール流路65を流れる空気Aの流通状態が切り替えられたことにより、スプールバルブ24がスプールスプリング25の付勢力に抗して移動されることで、入力ポート20と排気ポート22との間を連通する状態から、入力ポート20と出力ポート21との間を連通する状態に切り替えられる。
【0047】
基板5は、基板面500A、500Bが軸挿入口610cから挿入された第3の軸13cに沿うように配置された第1の基板50と、ターミナルボックス62に近接して配置された第2の基板51と、ソレノイド部3に近接して配置された第3の基板52とを備える。
【0048】
第1の基板50の基板面500A、500Bのうち、第1の基板面500A側には、ボディー611、ソレノイド部3及び第3の基板52が配置される。第1の基板面500A側と反対側の第2の基板面500B側には、第2の基板51及びターミナルボックス62が配置される。
【0049】
第1の基板50、第2の基板51及び第3の基板52の適所には、センサ4が配置されている。センサ4としては、例えば、入力側流路26及び第1の流路63を流れる空気Aの流体圧を計測する第1の圧力センサ40と、出力側流路27及び第2の流路64を流れる空気Aの流体圧を計測する第2の圧力センサ41と、第3の軸13c(弁軸13)が回動するときの回動角度を計測し、当該回動角度に応じて主弁11の弁開度情報を取得する主弁開度センサ42とを含む。
【0050】
主弁開度センサ42は、例えば、磁気センサにより構成されており、第3の軸13cに
取り付けられた永久磁石131が発生する磁気の強さを計測し、当該磁気の強さに応じて主弁11の弁開度情報を取得する。主弁開度センサ42は、軸挿入口610cから挿入された第3の軸13cに沿うように配置された第1の基板5の第1の基板面500Aのうち第3の軸13cの軸周りの外周に対向する位置に載置されると好ましい。これにより、収容部6内において、配置スペースを無駄にすることなく、第1の基板50に載置された主弁開度センサ42と、第3の軸13cとを近接して配置することが可能となり、弁開度情報を正確に取得することができる。
【0051】
図4は、本発明の一実施の形態に係る電磁弁1及び流体圧駆動弁10の一例を示すブロック図である。電磁弁1は、図4に示すように、電気的な構成例として、上記のソレノイド部3及びセンサ4の他に、電磁弁1を制御する制御部7と、外部装置15と通信するための通信部8と、外部電源16に接続される電源回路部9とを備える。
【0052】
複数のセンサ4は、各部の物理量を計測するセンサ群として、上記の第1の圧力センサ40、第2の圧力センサ41、主弁開度センサ42の他に、ソレノイド部3に対する供給電圧を計測する電圧センサ43と、ソレノイド部3における通電時の電流値及び非通電時の抵抗値を計測する電流・抵抗センサ44と、収容部6の内部温度を計測する温度センサ45と、ソレノイド部3が発生する磁気の強さを計測する磁気センサ46とを備える。
【0053】
また、複数のセンサ4は、各部の動作履歴に関する情報を取得するセンサ群として、流体圧駆動弁10の稼働時間としてソレノイド部3に対する通電時間の合計及び現在の通電連働時間の少なくとも一方を計測する稼働時間計(タイマ)47と、電磁弁1、駆動装置12及び主弁11それぞれの作動回数を計数する作動カウンタ(カウンタ)48とを備える。
【0054】
なお、複数のセンサ4(以下では、「複数のセンサ4」は、駆動状態センサ49を含む符号40~49で示すセンサを示す用語として定義する。)は、上述のようにそれぞれのセンサが個別に設けられたものに限られず、特定のセンサが他のセンサの機能を兼ねることで、当該他のセンサが個別に設けられていなくてもよい。例えば、磁気センサ46が、ソレノイド部3が発生する磁気の強さを計測するとともに、当該磁気の強さに基づいてソレノイド部3における通電時の電流値を求めることで、電流・抵抗センサ44が個別に設けられていなくてもよい。また、マイクロコントローラ70が、センサの機能を内蔵したり、センサの機能の一部を実現したりしてもよく、例えば、マイクロコントローラ70が、稼働時間計47及び作動カウンタ48を内蔵することで、稼働時間計47及び作動カウンタ48が個別に設けられていなくてもよい。
【0055】
制御部7は、複数のセンサ4により取得された電磁弁1及び駆動装置12を含む流体圧駆動弁10の各部の状態を示す情報を処理するとともに、流体圧駆動弁10の各部を制御するマイクロコントローラ70と、ソレノイド部3の通電状態を制御し、試験運転時における主弁11の開閉操作を行うバルブテストスイッチ71とを備える。
【0056】
マイクロコントローラ70は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ(不図示)と、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等により構成されるメモリとを備える。マイクロコントローラ70は、本実施の形態において後述するデータ処理システム300を実現する機能を含むことができる。
【0057】
バルブテストスイッチ71は、所定の試験運転条件が満たされた場合にマイクロコントローラ70からの指令を受けて、試験運転として、流体圧駆動弁10のストロークテストを実行するためのものである。
【0058】
ストロークテストは、例えば、フルストロークテスト及びパーシャルストロークテストのいずれかにより実行される。フルストロークテストは、主弁11を全開状態において通電状態から非通電状態に切り替えることで全閉状態に操作し、全閉状態において非通電状態から通電状態に切り替えることで全開状態に戻すことで実行される。パーシャルストロークテストは、主弁11を全閉状態に操作することなく(すなわち、プラント設備を停止することなく)、主弁11を全開状態において通電状態から非通電状態に切り替えることで所定の開度まで部分的に閉じて、部分的な閉状態において非通電状態から通電状態に切り替えることで全開状態に戻すことで実行される。
【0059】
なお、試験運転条件としては、例えば、管理者により設定値として指定された実行頻度(例えば、1年に1回)による実行時期や特定の指定日時が到来したり、外部装置15からの実行命令を受け付けたり、電磁弁1に設けられた試験実行ボタン(不図示)が管理者により操作されたりした場合に、試験運転条件を満たすものとして、試験運転(ストロークテスト)が実行されるようにすればよい。
【0060】
(機械学習装置)
上述した一連の構成を備える流体圧駆動弁10においては、上述した複数のセンサ4を備えることにより、例えば、定常運転時及び非定常運転時(例えば、開閉操作が行われる試験運転時や緊急停止時を含む。)において流体圧駆動弁10の各種情報を取得することができる。そこで、以下には、流体圧駆動弁10から取得可能な情報(状態変数)に基づいて流体圧駆動弁10の状態を推定することが可能な推論モデル(学習済モデル)を学習する機械学習装置200について説明する。なお、機械学習装置200は、それ単独で動作する装置として提供されるもののみならず、任意のプロセッサに以下に説明する動作を実行させるためプログラム、あるいは当該動作を実行させるための1乃至複数の命令を格納した非一時的なコンピュータ読取可能媒体の形式で提供されるものを含む。
【0061】
図5は、本発明の一実施の形態に係る機械学習装置200の概略ブロック図である。本実施の形態に係る機械学習装置200は、図5に示すように、学習用データセット取得ユニット201と、学習用データセット記憶ユニット202と、学習ユニット203と、学習済モデル記憶ユニット204とを備えている。
【0062】
学習用データセット取得ユニット201は、例えば、有線又は無線の通信回線を介して接続された各種機器から学習(トレーニング)用データセットを構成する複数のデータを取得するためのインタフェースユニットである。
【0063】
ここで、学習用データセット取得ユニット201に接続される各種機器としては、例えば、外部装置15や流体圧駆動弁10の作業者が使用する作業者用コンピュータPC1等が挙げられる。なお、図5では、外部装置15と作業者用コンピュータPC1とは別々の装置として示されているが、外部装置15と作業者用コンピュータPC1とは同一のコンピュータにより構成されていてもよい。
【0064】
外部装置15には、流体圧駆動弁10の各種試験を実施する試験装置17が接続されている。試験装置17は、試験対象となる流体圧駆動弁10と、開閉操作を伴う試験を実施する際に弁軸13に作用する作用トルクを計測する第1のトルクセンサ170A及び第2のトルクセンサ170Bを備える。なお、試験装置17は、第1のトルクセンサ170A及び第2のトルクセンサ170Bの少なくとも一方を備えていればよい。
【0065】
第1のトルクセンサ170Aは、第1の軸13aと第2の軸13bとの間に作用する第1の作用トルクを計測する。第2のトルクセンサ170Bは、第1の軸13aと第3の軸1
3cとの間に作用する第2の作用トルクを計測する。
【0066】
学習用データセット取得ユニット201は、例えば、外部装置15を介して試験装置17から、流体圧駆動弁10の複数のセンサ4により計測された計測結果を入力データとして取得する。また、学習用データセット取得ユニット201は、例えば、外部装置15を介して試験装置17から、第1のトルクセンサ170A及び第2のトルクセンサ170Bの少なくとも一方にて測定された作用トルクの計測結果を出力データとして取得する。そして、これら入力データと出力データとが互いに対応付けられることで後述する一の学習用データセットを構成する。
【0067】
図6は、本発明の一実施の形態に係る機械学習装置200で使用されるデータの構成例(教師あり学習)を示す図である。なお、図6は、データ処理システム300及び推論装置の説明でも適宜参照する。
【0068】
学習用データセットは、図6に示すように、入力データとして、所定期間中における、主弁11の弁開度の時系列データ、及び、空気Aの電磁弁出力側圧力の時系列データを少なくとも含むとともに、出力データとして、所定期間中における作用トルクの時系列データを含んでおり、後述する機械学習において使用するためのデータセットを指すものである。これらの各種データの詳細について以下に一例を説示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0069】
入力データに含まれる主弁11の弁開度は、主弁11の開閉状態の値を指すものであって、上述した主弁開度センサ42より取得できる。
【0070】
入力データに含まれる空気Aの電磁弁出力側圧力は、電磁弁1から駆動装置12に給排される空気Aの圧力であって、電磁弁1から駆動装置12に空気Aが供給されるときの空気A(給気)の圧力と、駆動装置12から電磁弁1を介して外気に空気Aが排出されるときの空気A(排気)の圧力とを含む。空気Aの電磁弁出力側圧力は上述した第2の圧力センサ41により取得できる。
【0071】
出力データに含まれる作用トルクは、ガスや石油等が配管100を流れることにより生じた圧力が弁軸13に作用するトルク、及び、上述した電磁弁1と駆動装置12とのによって弁軸13を回転させる際に弁軸13に作用するトルクのうち、少なくともいずれか一つからなり、第1のトルクセンサ170A、又は、第2のトルクセンサ170Bにより取得される。あるいは、第1のトルクセンサ170Aで計測する作用トルク、及び、第2のトルクセンサ170Bで計測する作用トルクの2種類の作用トルクを出力データとして取得してもよい。
【0072】
時系列データは、所定期間内の異なる複数の時点でそれぞれ取得された複数のデータで構成されたものであり、例えば、所定のサンプリング周期で取得される。本実施の形態においては、主弁11の弁開度の時系列データ、空気Aの電磁弁出力側圧力の時系列データ、及び、作用トルクの時系列データは、同一のサンプリング周期及び同一の位相(位相差がない状態)で複数の時点で取得されたものとするが、サンプリング周期及び位相の少なくとも一方が異なるものでもよい。
【0073】
所定期間は、流体圧駆動弁10の操業環境の定常運転時及び非定常運転時(試験運転時や緊急停止時を含む)に主弁11の開閉操作が行われる期間である。
【0074】
非定常運転時における所定期間は、例えば、流体圧駆動弁10におけるストロークテストを実行したときの実行期間からなる。所定期間は、ストロークテストの実行期間のうちテ
スト開始からテスト終了までの全期間でもよいし、そのうちの一部の期間でもよい。したがって、所定期間は、例えば、フルストロークテストの全期間(全開状態→全閉状態→全開状態)やパーシャルストロークテストの全期間(全開状態→部分的な閉状態態)でもよいし、フルストロークテストの一部の期間(全開状態→全閉状態、又は、全閉状態→全開状態等)やパーシャルストロークテストの一部の期間(全開状態→部分的な閉状態、部分的な閉状態→全開状態等)でもよいし、これらに限られない。
【0075】
所定期間は、主弁11の開閉操作が行われる期間のうち開始から終了までの全期間でもよいし、そのうちの一部の期間でもよい。したがって、所定期間は、例えば、主弁11の開操作開始から開操作終了までの開操作の全期間でもよいし、そのうちの一部の期間でもよい。また、主弁11の閉操作開始から閉操作終了までの閉操作期間の全期間でもよいし、そのうちの一部の期間でもよい。さらに、開操作期間と閉操作期間とを含む開閉操作期間の全期間でもよいし、そのうちの一部の期間でもよく、これらに限られない。
【0076】
オプションとして、学習用データセット内の入力データには、更に、空気Aの圧力(空気Aの電磁弁出力側圧力を除く)の時系列データ、ソレノイド部3の制御パラメータの時系列データ、電磁弁1の温度の時系列データ、駆動装置12の動作状態の時系列データ、流体圧駆動弁10の総稼働時間、流体圧駆動弁10に対して最後に電源が投入されてからの稼働時間、主弁11の作動回数、駆動装置12の作動回数、ソレノイド部3の作動回数、及び、主弁11の開閉時間を選択的に含むことができる。
【0077】
空気Aの圧力(空気Aの電磁弁出力側圧力を除く)は、流体圧駆動弁10の内部の各部を流れる空気Aの圧力であることが好ましく、具体的には、空気供給源14から電磁弁1に供給される空気Aの電磁弁入力側圧力、及び、空気Aの電磁弁入力側圧力と空気Aの電磁弁出力側圧力との差圧の少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0078】
ソレノイド部3の制御パラメータは、ソレノイド部3を制御するための各種パラメータ情報であって、具体的にはソレノイドコイル31へ供給される供給電圧、ソレノイドコイル31への通電時の電流値、ソレノイドコイル31の非通電時における抵抗値、ソレノイド部3の稼働時間、及び、ソレノイド部3に生じる磁気の強度の少なくとも1つを含むと好ましい。このうち、ソレノイドコイル31へ供給される供給電圧は上述した電圧センサ43により取得でき、ソレノイドコイル31への通電時の電流値、及び、非通電時における抵抗値は上述した電流・抵抗センサ44により取得でき、ソレノイド部3の稼働時間は上述した稼働時間計47により取得でき、ソレノイド部3に生じる磁気の強度は上述した磁気センサ46により取得できる。
【0079】
電磁弁1の温度は、電磁弁1の特に内部温度の値を指すものであって、上述した温度センサ45により取得できる。
【0080】
駆動装置12の動作状態は、シリンダ120に対する第1のピストン122Aの位置、シリンダ120に対する第2のピストン122Bの位置、シリンダ120及びピストン122A、122Bの間で生じる振動に基づく駆動装置12の加速度、及び、シリンダ120内の温度及び湿度の少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0081】
シリンダ120に対するピストン122A、122Bの位置は上述した位置センサ491により取得できる。駆動装置12の加速度は、ピストン122A、122Bがシリンダ120内を往復直線移動するときに発生する振動に基づくシリンダ120の加速度と、ピストン122A、122Bがストッパ126A、126Bに衝突するときに発生する振動(衝撃)に基づくシリンダ120の加速度とを含む。駆動装置12の加速度は上述した加速度センサ492により取得できる。シリンダ120内の温度及び湿度は、電磁弁1から
空気給排口124(図2に示す単作動式の場合には、124a、複作動式の場合には、124a、124b)を介して駆動装置12に給排される空気A(駆動流体)の温度及び湿度、及び、外部環境から空気給排口124(図2に示す単作動式の場合には、124b、124c、複作動式の場合には、124c)を介して駆動装置12に給排される外気(外部空気)の温度及び湿度の少なくとも1つを含むことが好ましい。シリンダ120内の温度及び湿度は上述した温度・湿度センサ493により取得できる。
【0082】
流体圧駆動弁10の総稼働時間と流体圧駆動弁10に対して最後に電源が投入されてからの稼働時間とは上述した稼働時間計47により取得でき、主弁11の作動回数と駆動装置12の作動回数とソレノイド部3の作動回数とは上述した作動カウンタ48により取得でき、主弁11の開閉時間は図示しないタイマ等を用いて取得できる。
【0083】
上述のように入力データの種類を増やすことは、機械学習の後に得られる学習済モデルの推定精度を向上させるのに概ね寄与するものであるが、出力データとの相関度合いが低い入力データを採用することは、却って学習済モデルの推定精度の向上を阻害する可能性がある。したがって、入力データとして採用するデータの数及び種類については、学習済モデルが適用される流体圧駆動弁10の状態等を考慮して適宜選択されるべきものである。
【0084】
したがって、本実施の形態においては、主弁11の弁開度の時系列データ、及び、空気Aの電磁弁出力側圧力の時系列データに基づいて、弁軸13に作用する作用トルクの推定を行うものである。つまり、電磁弁1から駆動装置12に給排される空気Aの電磁弁出力側圧力の変化によって、シリンダ120に対してピストン122が移動し、主弁11の弁開度が変化するが、この弁開度及び電磁弁出力側圧力の変化に伴って弁軸13に作用する作用トルクの時系列データを推定することができる。
【0085】
学習用データセット記憶ユニット202は、学習用データセット取得ユニット201で取得した学習用データセットを構成するための複数のデータを、関連する入力データと出力データとを関連付けて1つの学習用データセットとし、格納するためのデータベースである。学習用データセット記憶ユニットを構成するデータベースの具体的な構成については適宜調整することができる。例えば、図5においては、説明の都合上、学習用データセット記憶ユニット202と後述する学習済モデル記憶ユニット204とを別々の記憶手段として示しているが、これらは単一の記憶媒体(データベース)によって構成することもできる。
【0086】
学習ユニット203は、学習用データセット記憶ユニット202に記憶された複数の学習用データセットを用いて機械学習を実行することで、複数の学習用データセットに含まれる入力データと出力データとの相関関係を学習した学習済モデルを生成するものである。本実施の形態においては、後に詳しく説示するように、機械学習の具体的な手法としてニューラルネットワークを用いた教師あり学習を採用している。ただし、機械学習の具体的な手法については、これに限定されるものではなく、入出力の相関関係を学習用データセットから学習することができるものであれば他の学習手法を採用することも可能である。例えば、アンサンブル学習(ランダムフォレスト、ブースティング等)を用いることもできる。
【0087】
学習済モデル記憶ユニット204は、学習ユニット203で生成された学習済モデルを記憶するためのデータベースである。学習済モデル記憶ユニット204に記憶された学習済モデルは、要求に応じて、インターネットを含む通信回線や記憶媒体を介して実システムへ適用される。実システム(データ処理システム300)に対する学習済モデルの具体的な適用態様については、後に詳述する。
【0088】
次に、上述のようにして得られた複数の学習用データセットを用いた、学習ユニット203における学習手法について、教師あり学習を中心に説明する。図7は、本発明の一実施の形態に係る機械学習装置において実施される教師あり学習のためのニューラルネットワークモデルの例を示す図である。
【0089】
図7に示すニューラルネットワークモデルにおけるニューラルネットワークは、入力層にあるl個のニューロン(x1~xl)、第1中間層にあるm個のニューロン(y11~y1m)、第2中間層にあるn個のニューロン(y21~y2n)、及び、出力層にあるo個のニューロン(z1~zo)から構成されている。第1中間層及び第2中間層は、隠れ層とも呼ばれており、ニューラルネットワークとしては、第1中間層及び第2中間層の他に、さらに複数の隠れ層を有するものであってもよく、あるいは第1中間層のみを隠れ層とするものであってもよい。なお、図7においては、出力層が複数個(o個)設定されたニューラルネットワークモデルを例示している。
【0090】
また、入力層と第1中間層との間、第1中間層と第2中間層との間、第2中間層と出力層との間には、層間のニューロン(ノード)を接続するシナプス(エッジ)が張られており、それぞれのエッジには、重みwij(i、jは自然数、iはいずれの層間のエッジであるかを表し、jは同じ層間のニューロンを接続するエッジの番号を表す)が対応づけられている。
【0091】
本実施の形態に係るニューラルネットワークモデルにおけるニューラルネットワークは、学習用データセットを用いて、所定期間中における、主弁11の弁開度の時系列データ、及び、空気Aの電磁弁出力側圧力の時系列データと、弁軸13に作用する作用トルクの時系列データとの相関関係を学習する。
【0092】
具体的には、状態変数としての所定期間中における、主弁11の弁開度の時系列データ、及び、空気Aの電磁弁出力側圧力の時系列データのそれぞれを入力層のニューロンに対応づけ、出力層にあるニューロンの値を、一般的なニューラルネットワークの出力値の算出方法で、つまり、出力側のニューロンの値を、当該ニューロンに接続される入力側のニューロンの値と、出力側のニューロンと入力側のニューロンとを接続するエッジに対応づけられた重みwijとの乗算値の数列の和として算出することを、入力層にあるニューロン以外の全てのニューロンに対して行う方法を用いることで、算出する。
【0093】
なお、上記状態変数を入力層のニューロンに入力するに際し、状態変数として取得した情報をどのような形式として入力するかは、生成される学習済モデルの精度等を考慮して適宜設定することができる。具体的には、入力データそれぞれに対応させるニューロンの数を調整するため、あるいはニューロンに対応可能な値に調整するために、特定の入力データに対して前処理を実行することができる。例えば、前処理として、正規化を行うことで、数値の範囲を一定の範囲内の数値に収めるように変換してもよい。
【0094】
そして、算出された出力層にあるo個のニューロンz1~zoの値、すなわち本実施の形態においては、学習用データセットの一部を構成する、弁軸13に作用する作用トルクの時系列データからなる教師データt1~toとを、それぞれ比較して誤差を求め、求められた誤差が小さくなるように、各エッジに対応づけられた重みwijを調整する(バックプロパゲーション)ことを反復する。
【0095】
そして、上述した一連の工程を所定回数反復実施すること、あるいは前記誤差が許容値より小さくなること等の所定の条件が満たされた場合には、学習を終了して、そのニューラルネットワークモデル(のエッジのそれぞれに対応づけられた全ての重みwij)を学
習済モデルとして学習済モデル記憶ユニット204に記憶する。
【0096】
(機械学習方法)
上記に関連して、本発明は、機械学習方法を提供する。以下に本発明に係る機械学習方法について、図6(学習フェーズ)、図7図8を参照して説明を行う。図8は、本発明の一実施の形態に係る機械学習方法の例を示すフローチャートである。以下に示す機械学習方法においては、上述した機械学習装置200に基づいて説明を行うが、前提となる構成については、上記機械学習装置200に限定されない。また、この機械学習方法はコンピュータを用いることで実現されるものであるが、コンピュータとしては種々のものが適用可能であり、例えば外部装置15、作業者用コンピュータPC1あるいはマイクロコントローラ70を構成するコンピュータ装置や、ネットワーク上に配されたサーバ装置等を挙げることができる。また、コンピュータの具体的構成については、例えば、少なくともCPUやGPU等からなる演算装置と、揮発性又は不揮発性メモリ等で構成される記憶装置と、ネットワークや他の機器に通信するための通信装置と、これら各装置を接続するバスとを含むものを採用することができる。
【0097】
本実施の形態に係る機械学習方法としての教師あり学習は、機械学習を開始するための事前準備として、先ず、所望の数の学習用データセット(図6参照。)を準備し、準備した複数個の学習用データセットを学習用データセット記憶ユニット202に記憶する(ステップS11)。ここで準備する学習用データセットの数については、最終的に得られる学習済みモデルに求められる推論精度を考慮して設定するとよい。
【0098】
教師あり学習に用いられる学習用データセットを準備する方法として、弁開度センサ42による弁開度の検出、第2の圧力センサ41による空気Aの電磁弁出力側圧力の検出、及び、第1のトルクセンサ170Aによる作用トルクの検出を、所定期間に、同一のサンプリング周期及び同一位相で取得した時系列データを取得して、主弁11の弁開度の時系列データ、及び、空気Aの電磁弁出力側圧力の時系列データを入力データとし、弁軸13の作用トルクの時系列データを出力データとして採用する。時系列データを取得する所定期間は、ストロークテストの実行期間のうちテスト開始からテスト終了までの全期間でもよいし、そのうちの一部の期間でもよいが、同一期間についてサンプリングした時系列データを学習用データセットとする。なお、ストロークテストの開始から所定の時間、及び、終了前の所定の時間は、弁開度の揺れが大きいため、その期間のサンプリングデータは学習用データセットには入れないようにしてもよい。複数回のストロークテストを行うことで、所望の数の学習用データセットを準備することができる。
【0099】
ただし、流体圧駆動弁10の各種情報は流体圧駆動弁10夫々に特有の傾向が存在することが多いため、学習用データセットを構成するデータを取得する対象としては、後述する機械学習を経て得られる学習済みモデルを適用する予定の一の流体圧駆動弁10のみから収集することが好ましい。
【0100】
ステップS11が完了すると、次いで学習ユニット203における学習を開始すべく、学習前のニューラルネットワークモデルを準備する(S12)。ここで準備される学習前のニューラルネットワークモデルは、その構造としては、例えば図7で示した構造を有し、且つ各エッジの重みwijが初期値に設定されている。そして、学習用データセット記憶ユニット202に記憶された複数個の学習用データセットから、例えばランダムに一の学習用データセットを選択し(ステップS13)、当該一の学習用データセット中の入力データを、準備された学習前のニューラルネットワークモデルの入力層(図7参照。)に入力する(ステップS14)。
【0101】
ここで、上記ステップS14の結果として生成された出力層(図7参照。)の値は、学
習前のニューラルネットワークモデルによって生成されたものであるため、ほとんどの場合望ましい結果とは異なる値、すなわち、弁軸13の作用トルクの時系列データとは異なる値である。そこで、次に、ステップS13において取得された一の学習用データセット中の教師データとしての弁軸13の作用トルクの時系列データとステップS13において生成された出力層の値とを用いて、機械学習を実施する(ステップS15)。ここで行う機械学習とは、例えば、教師データを構成する弁軸13の作用トルクの時系列データと出力層の値とを比較し、好ましい出力層の値が得られるよう、学習前のニューラルネットワークモデル内の各エッジに対応付けられた重みwijを調整する処理(バックプロパゲーション)であってよい。なお、学習前のニューラルネットワークモデルの出力層に出力される値の数及び形式は、学習対象としての学習用データセット中の教師データと同様の数及び形式である。
【0102】
ここでいう機械学習について具体的に例示する。教師データを構成する弁軸13の作用トルクの時系列データと、出力層から出力された値を1つずつ比較してもよいが、作用トルクの時系列データを作用トルクベクトルとし、出力層から出力したデータを出力ベクトルとして、例えば、作用トルクベクトルのスカラ量と出力データのベクトルのスカラ量が一致し、正規化した作用トルクベクトルと正規化した出力データのベクトルの内積が「1」となるときが、作用トルクの時系列データと、出力データとが一致したものと判断することができる。そこで、ステップS15では、弁軸13の作用トルクの時系列データと、出力データとが一致するように、当該学習中のニューラルネットワークモデルの各エッジに対応付けられた重みwijを調整する。
【0103】
ステップS15において機械学習が実施されると、さらに機械学習を継続する必要があるか否かを、例えば学習用データセット記憶ユニット202内に記憶された未学習の学習用データセットの残数に基づいて特定する(ステップS16)。そして、機械学習を継続する場合(ステップS16でNo)にはステップS13に戻り、機械学習を終了する場合(ステップS16でYes)には、ステップS17に移る。上記機械学習を継続する場合には、学習中のニューラルネットワークモデルに対してステップS13~S15の工程を未学習の学習用データセットを用いて複数回実施する。最終的に生成される学習済モデルの精度は、一般にこの回数に比例して高くなる。
【0104】
機械学習を終了する場合(ステップS16でYes)には、各エッジに対応付けられた重みwijが、一連の工程によって調整され生成されたニューラルネットワークの学習済モデルとして、学習済モデル記憶ユニット204に記憶され(ステップS17)、一連の学習プロセスを終了する。ここで記憶された学習済モデルは、後述するデータ処理システム300に適用され使用され得るものである。
【0105】
上述した機械学習装置の学習プロセス及び機械学習方法においては、1つの学習済モデルを生成するために、1つの(学習前の)ニューラルネットワークモデルに対して複数回の機械学習処理を繰り返し実行することでその精度を向上させ、データ処理システム300に適用するに足る学習済モデルを得るものを説示している。しかし、本発明はこの取得方法に限定されない。例えば、所定回数の機械学習を実施した学習済モデルを一候補として複数個の学習済モデル記憶ユニット204に格納しておき、この複数個の学習済モデル群に妥当性判断用のデータセットを入力して出力層(のニューロンの値)を生成し、出力層で特定された値の精度を比較検討して、データ処理システム300に適用する最良の学習済モデルを1つ選定するようにしてもよい。なお、妥当性判断用データセットは、学習に用いた学習用データセットと同様のデータセットで構成され、且つ学習に用いられていないものであればよい。
【0106】
以上説明した通り、本実施の形態に係る機械学習装置及び機械学習方法を適用すること
により、主弁11の弁開度の時系列データ、及び、空気Aの電磁弁出力側圧力の時系列データから、弁軸13の作用トルクの時系列データを的確に導出することが可能な学習済モデルを得ることができる。
【0107】
上述では、第1のトルクセンサ170Aを用いて検出した作用トルクの時系列データを学習用データセットに用いる場合について説明したが、作用トルクの検出を第2のトルクセンサ170Bで検出した時系列データを、第1のトルクセンサ170Aを用いて検出した作用トルクの時系列データに変えて学習用データセットとして、弁軸13の時系列データを導出するニューラルネットワークの学習済モデルを得てもよい。
【0108】
あるいは、ニューラルネットワークモデルの出力層のノードの数を増やして、第1のトルクセンサ170Aと第2のトルクセンサ170Bで検出した時系列データの両方を教師データとする学習用データセットを用意して、2種類の弁軸13の作用トルクの時系列データを導出するニューラルネットワークの学習済モデルを得てもよい。
【0109】
上述では、入力データとして、主弁11の弁開度の時系列データ、及び、空気Aの電磁弁出力側圧力の時系列データを用いる場合について説明したが、第1の圧力センサ40で検出される空気Aの電磁弁入力側圧力の時系列データを入力データに加えて、学習用データセットにしてもよい。
【0110】
また、入力データを増やす場合には、ニューラルネットワークモデルの入力層のノードに、空気Aの電磁弁入力側圧力の時系列データを入力するためのノードを追加した構成とし、主弁11の弁開度の時系列データ、空気Aの電磁弁出力側圧力の時系列データ、及び、空気Aの電磁弁入力側圧力の時系列データを入力データとし、弁軸13の作用トルクの時系列データ(あるいは、2種類の弁軸13の作用トルクの時系列データ)を導出するニューラルネットワークの学習済モデルを得てもよい。あるいは、空気Aの電磁弁入力側圧力の時系列データの代わりに、空気Aの電磁弁入力側圧力と空気Aの電磁弁出力側圧力との差圧の時系列データを用いた学習用データセットにしてもよい。
【0111】
さらに、入力データに、稼働時間計(タイマ)47で検出した稼働時間を加えたものを学習用データセットとし、ニューラルネットワークモデルの入力層に、主弁11の弁開度の時系列データ、及び、空気Aの電磁弁出力側圧力の時系列データ(あるいは、主弁11の弁開度の時系列データ、空気Aの電磁弁出力側圧力の時系列データ、及び、空気Aの電磁弁入力側圧力の時系列データ)に加えて、稼働時間を入力するためのノードを追加して、弁軸13の作用トルクの時系列データ(あるいは、2種類の弁軸13の作用トルクの時系列データ)を導出するニューラルネットワークの学習済モデルを得てもよい。稼働時間に応じて弁軸13の作用トルクは変化するため、稼働時間を入力データに加えることで、弁軸13の作用トルクをより正確に推定することが可能になる。
【0112】
また、稼働時間の代わりに、電磁弁1、駆動装置12及び主弁11それぞれの作動回数を計数するカウンタ48の計数を入力データに加えた学習用データセットとしてもよい。電磁弁1、駆動装置12及び主弁11は作動する度に弁軸13の作用トルクは変化するため、カウンタの値を入力データに加えることで、弁軸13の作用トルクの変化をより正確に推定することが可能になる。
【0113】
なお、稼働時間又は計数は、時系列データの数値とのバランスを考慮して、前処理で適切な範囲の値に調整しておくのが好ましい。
【0114】
さらに、駆動状態センサ49として設けられた、位置センサ491、加速度センサ492、及び、温度・湿度センサ493から取得したいずれかのデータを加えたものを学習用
データセットとしてもよい。駆動状態を表すデータを入力データとして学習することにより、駆動状態に応じて、より正確な弁軸13の作用トルクの時系列データを推定することが可能になる。例えば、温度・湿度センサ493から取得したデータを入力データとして追加することで、気温や湿度に応じた弁軸13の作用トルクの変化を加味したデータを推定することが可能になる。あるいは、例えば、位置センサ491によって取得されたシリンダ120に対するピストン122A、122B又はピストンロッド121の位置、及び、加速度センサ492による駆動装置12の振動のデータを、入力データとして追加することで、駆動装置12の状態に応じた弁軸13の作用トルクの変化を加味したデータを推定することが可能になる。
【0115】
上記では、学習用データセットに含まれる時系列データのサンプリング周期及び位相が一致している場合について説明したが、同一期間の時系列データであれば、サンプリング周期及び位相のいずれかが一致していない学習用データセットを用いて学習を行うことも可能である。
【0116】
(データ処理システム)
次に、図9を参照して、上述した機械学習装置200及び機械学習方法によって生成された学習済モデルの適用例を説示する。図9は、本発明の一実施の形態に係るデータ処理システム300を示す概略ブロック図である。
【0117】
本実施の形態に係るデータ処理システム300としては、上述した流体圧駆動弁10のマイクロコントローラ70内に搭載された態様を例示する。なお、データ処理システム300については、その少なくとも一部を他の機器、例えば外部装置15や流体圧駆動弁10に接続された他の装置に適用することも可能である。
【0118】
データ処理システム300は、入力データ取得ユニット301と、推論ユニット302と、学習済モデル記憶ユニット303と、異常判定ユニット305と、報知ユニット304とを少なくとも含むものである。
【0119】
入力データ取得ユニット301は、流体圧駆動弁10が有する複数のセンサ4に接続されて各センサ4が出力するデータを取得するためのインタフェースユニットである。入力データ取得ユニット301は、少なくとも、所定期間中における、主弁11の弁開度の時系列データ、及び、空気Aの電磁弁出力側圧力の時系列データを取得する。
【0120】
なお、図9に示す例においては、後述する推論に利用可能な入力データの全てが取得できるように、流体圧駆動弁10の備える全てのセンサ4に接続されているが、入力データ取得ユニット301にどのセンサ4を接続するかについては、後述する推論ユニット302において用いられる学習済モデル等に合わせて適宜選択することができる。また、推論ユニット302の推論結果は、図示しない記憶手段に記憶することが好ましく、記憶された過去の推論結果は、例えば学習済モデル記憶ユニット303内の学習済モデルの推論精度の更なる向上のための、オンライン学習に用いられる学習用データセットとして利用することができる。
【0121】
推論ユニット302は、入力データ取得ユニット301により取得された流体圧駆動弁10の各種データから、弁軸13の作用トルクの時系列データを推論するためのものである。この推論には、例えば上述した機械学習装置200及び機械学習方法を用いて学習が行われた学習済モデルが用いられ、この学習済モデルは任意の記憶媒体で構成された学習済モデル記憶ユニット303内に格納されている。なお、推論ユニット302は、学習済モデルを用いた推論処理を行う機能のみならず、推論処理の前処理として、入力データ取得ユニット301により取得された入力データを所望の形式等に調整して学習済モデルに
入力する前処理機能や、推論処理の後処理として、学習済モデルが出力した出力値を所定の形式に変換して記憶する機能をも含んでいる。
【0122】
学習済モデル記憶ユニット303は、上述した通り、推論ユニット302において用いられる学習済モデルを格納するための記憶媒体である。学習済モデル記憶ユニット303には、複数個の学習済モデルが格納されて、推論ユニット302により選択的に用いられてもよい。複数個の学習済モデルは、例えば、入力データの数、学習手法、流体圧駆動弁10の使用環境、又は、流体圧駆動弁10の仕様が異なる毎に生成されたものである。流体圧駆動弁10の使用環境は、例えば、駆動流体の種類や供給圧力、配管100を流れる流体の種類や圧力等である。流体圧駆動弁10の仕様は、例えば、電磁弁1の仕様(流量、応答速度等)、主弁11の仕様(寸法、パッキンの種類等)、又は駆動装置12(ピストン122A、122Bの受圧面積、コイルばね123のばね定数等)の仕様等である。
【0123】
異常判定ユニット305は、推論ユニット302により推論された弁軸13の作用トルクの時系列データに対して所定の処理を行い、処理の結果に基づいて、主弁11及び駆動装置12のうち少なくとも1つの異常の有無を判定するためのものである。主弁11の異常には、例えば、バルブ漏れ、バルブのシート漏れ、グランド漏れ、及び、バルブの異物の噛みこみなどがある。駆動装置12の異常には、例えば、ラックアンドピニオン機構の各部の摩耗や欠損、より具体的には、ラック125aやピニオン125bの摩耗や欠損等、スコッチヨーク機構における各部の摩耗や欠損、より具体的には、ローラピン125cやヨーク125dのうちローラピン125cに接する部位の摩耗や欠損等、そして、コイルばね123の付勢力の劣化等が挙げられる。また、異常判定ユニット305は、異常の発生の有無について判定するのみならず、異常の予兆の発生の有無について判定することができるものである。つまり、本発明における異常は、発生してしまった異常、及び、これから発生する異常の予兆の少なくともいずれか一つを含むものである。
【0124】
異常判定ユニット305で行う所定の処理は、推論ユニット302で推論した作用トルクの時系列データの統計値を求める統計処理を含むものである。作用トルクの時系列データの統計値としては、例えば、作用トルクの時系列データの最大値、最小値及び最大値と最小値の差等が挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0125】
図10は、本発明の一実施の形態に係るデータ処理システム300において、異常判定ユニット305による異常判定の例を説明する図である。図10(a)は、推論ユニット302により推論された所定期間中に弁軸13に作用する作用トルクの時系列データと、この時系列データに対して異常判定ユニット305が統計処理によって求めた結果である統計値の例とを示す図であり、図10(b)は、異常判定ユニット305が統計値に基づいて異常判定を行う方法を例示する図である。
【0126】
図10(a)には、推論ユニット302により推論された所定期間中に弁軸13に作用する作用トルクの時系列データ500、異常判定ユニット305が作用トルクの時系列データに統計処理を実行した結果である統計値として、最大値501、最小値502、そして、最大値501と最小値502の差分503が示されている。異常判定ユニット305は、この他にも、統計値として図示しない中央値、最頻値や平均値等を求めてもよい。
【0127】
異常判定ユニット305は、統計処理によって求めた統計値に対して、例えば閾値を用いて主弁11及び駆動装置12のうち少なくとも一つの異常の有無を判定する。図10(b)は、異常判定ユニット305が、最大値501が予め設定された所定の閾値504以上か否かに基づき異常判定を行う一例を示している。異常判定ユニット305は、主弁11や駆動装置12の異常の種類ごとに、異なる統計処理を実施して異なる統計値を求めてもよく、異常の種類ごと及び異なる統計値ごとに、対応する閾値を用いて、発生してしまっ
た異常、及び、これから発生する異常の予兆の少なくともいずれか一つを含む異常の判定を行なってもよい。
【0128】
また、入力データ取得ユニット301は、所定期間の時期が異なる複数の入力データを取得してもよい。この場合、推論ユニット302は、学習済モデルに対して、入力データ取得ユニット301により取得された複数の入力データをそれぞれ入力し、複数の当該入力データに対応する複数の作用トルクの時系列データをそれぞれ推論する。そして、異常判定ユニット305は、複数の作用トルクの時系列データから作用トルクの統計値をそれぞれ求める統計処理を行い、統計処理により求めた複数の統計値の時間推移に基づいて、異常の有無を判定する。
【0129】
図11は、本発明の一実施の形態に係るデータ処理システム300において、異常判定ユニット305による別の異常判定の例である、作用トルクの時間推移の統計処理による異常判定を説明する図である。図11(a)は、異常判定ユニット305が、推論ユニット302により推論された所定期間中に弁軸13に作用する複数の作用トルクの時系列データのそれぞれに対して統計処理を行い、この結果として複数の時系列データに対応する複数の最大値を求め、これらを時間軸に沿って表した統計値の時間推移600を示す図であり、図11(b)は、異常判定ユニット305が統計値の時間推移に基づいて異常判定を行う方法を例示する図である。
【0130】
図11(a)において、プロットのそれぞれが、一つの入力データに対応する作用トルクの時系列データに統計処理を実行して求めた統計値を示しており、ここでは統計値は一例として最大値を用いている。そして、複数の統計値の経時的変化が時間推移600として図示されている。図11(a)グラフの横軸は時間としているが、これは一例であり、サンプリング数等の経時的変数でもよく、これらに限られるものではない。また、もちろん、異常判定ユニット305が統計処理で求めた結果である作用トルクの統計値は、最大値に限られず、前述した最小値や、最大値と最小値の差分であってもよく、これらに限られない。
【0131】
異常判定ユニット305は、統計処理によって求めた統計値の時間推移に対して、例えば微分値を用いて主弁11及び駆動装置12のうち少なくとも一つの異常の有無を判定する。図11(b)は、異常判定ユニット305が、予め設定された指定期間601における統計値の微分値が、予め設定された所定の変化量閾値604以上か否かに基づく異常判定方法を示しており、ここでは統計値の一例として最大値を用いている。指定期間601における統計値の微分値は、例えば、所定の時点の統計値と所定の時点から指定期間601が経過した時点の統計値との差分602によって求められる。異常判定ユニット305は、主弁11及び駆動装置12の異常の種類ごとに、異なる統計処理を実施して異なる統計値を求めてもよく、異常の種類ごと及び異なる統計値ごとに対応する変化量閾値604を用いてもよい。また、指定期間601における変化量は微分値に限られず、平均変化率等の変化量でもよく、これらに限られない。
【0132】
報知ユニット304は、推論ユニット302の推論結果及び異常判定ユニット305の異常判定結果を作業者等に報知するためのものである。具体的な報知の手段は種々採用でき、例えば推論結果について通信部8を介して外部装置15に送信し、外部装置15のGUIにグラフ表示等を行うことができる。なお、推論ユニット302の推論結果は、リアルタイム又は事後的にグラフ表示が行われてもよいし、任意のデータ形式によりデータ処理システム300又は外部装置15が備える記憶装置に記憶されてもよい。同様に、異常判定ユニット305の異常判定結果は、リアルタイム又は事後的に表示されてもよいし、任意のデータ形式によりデータ処理システム300又は外部装置15が備える記憶装置に記憶されてもよい。
【0133】
(データ処理方法)
以上の構成を備えたデータ処理システムによるデータ処理方法について、図6(推論フェーズ)、図12を参照して以下に説明を行う。図12は、本発明の一実施の形態に係るデータ処理システム300によるデータ処理方法の例を示すフローチャートである。
【0134】
流体圧駆動弁10の電磁弁1に外部電源16からの電力の供給が開始され、それに伴ってデータ処理システム300によるデータ処理プロセスが開始されると、入力データ取得ユニット301が、複数のセンサ4により取得された所定期間中における主弁11の弁開度の時系列データ、及び、空気Aの電磁弁出力側圧力の時系列データを少なくとも含む、流体圧駆動弁10の各部の状態を示す各種データを取得する(ステップS21)。
【0135】
入力データ取得ユニット301が、所望の入力データ(所定期間中における、主弁11の弁開度の時系列データ、及び、空気Aの電磁弁出力側圧力の時系列データ(図6参照。))を取得できた時点で、当該入力データに基づく推論ユニット302による推論が実施される(ステップS22)。このとき、推論に用いられる学習済モデルは事前に特定されていることが好ましい。また、事前に特定された学習済モデルが、例えばその入力データとして所定の時系列データを要するものである場合には、入力データ取得ユニット301において必要なデータ量が取得された後に、ステップS22における推論が実施される。
【0136】
具体的には、推論ユニット302は、入力データに前処理を施して学習済モデルに入力すると、推論結果である弁軸13に作用する作用トルクの時系列データを推論結果として出力する。
【0137】
ステップS22において、推論ユニット302による推論が実施された結果に対し異常判定ユニット305で所定の処理を行い、処理の結果に基づいて主弁11及び駆動装置12の異常を判定する。(ステップS23)。
【0138】
そして、ステップS23において異常判定ユニット305による異常判定が実施された結果が、報知ユニット304によりメール等の方法で作業者等に報知され、作業者等は主弁11及び駆動装置12のうち少なくとも1つの以上の有無を確認することができる(ステップS24)。
【0139】
(推論装置)
本発明は、上述したデータ処理システム300の態様によるもののみならず、推論を行うための推論装置の態様で提供することもできる。その場合、推論装置としては、メモリと、少なくとも1つのプロセッサとを含み、このうちのプロセッサが、一連の処理を実行するものとすることができる。当該一連の処理とは、所定期間中における、主弁11の弁開度の時系列データ、及び、空気Aの電磁弁出力側圧力の時系列データを取得する処理と、当該入力データが入力されると、所定期間中に弁軸13に作用する作用トルクの時系列データを推論する処理と、を含む。
【0140】
本発明を上述した推論装置の態様で提供することで、データ処理システム300を実装する場合に比して簡単に種々の流体圧駆動弁10への適用が可能となる。このとき、推論装置が、作用トルクの時系列データを推論する処理を行うに際しては、ここまで本書において説明した、本発明における、機械学習装置及び機械学習方法によって学習された学習済みモデルを用い、データ処理システムの推論ユニット302が実施する推論手法を適用してもよいことは、当業者にとって当然に理解され得るものである。
【0141】
上述では、ニューラルネットワークモデルを用いて、弁軸13の作用トルクの時系列デ
ータを推定する場合について説明したが、学習用データセット記憶ユニット202に記憶されている主弁11の弁開度の時系列データ、及び、空気Aの電磁弁出力側圧力の時系列データと、弁軸13の作用トルクの時系列データの相関に基づいて、主弁11の弁開度、及び、空気Aの電磁弁出力側圧力を変数とする関数を得て、弁軸13の作用トルクの時系列データを推定するようにしてもよい。あるいは、学習用データセット記憶ユニット202に、主弁11の弁開度の時系列データ、空気Aの電磁弁出力側圧力の時系列データ、及び、空気Aの電磁弁入力側圧力の時系列データが記憶されている場合には、これらの時系列データと、弁軸13の作用トルクの時系列データの相関に基づいて、主弁11の弁開度、空気Aの電磁弁出力側圧力、及び、空気Aの電磁弁入力側圧力を変数とする関数を得て、弁軸13の作用トルクの時系列データを推定するようにしてもよい。
【0142】
また、機械学習装置200、データ処理システム300、マイクロコントローラ70等を構成するコンピュータが、CPUやGPUを備える場合について説明したが、さらに、プロセッサとしてFPGA(Field-programmable gate array)等のプログラマブルロジックデバイス (programmable logic device: PLD)やASIC(Application Specific IC)等の専用の論理回路を設ける構成にしてもよい。同様に、推論装置にも、プロセッサとしてFPGA等のプログラマブルロジックデバイスやASIC等の専用の論理回路を設ける構成にしてもよい。
【0143】
本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。そして、それらはすべて、本発明の技術思想に含まれるものである。
【符号の説明】
【0144】
1…電磁弁、3…ソレノイド部、4…センサ、10…流体圧駆動弁、11…主弁、12…(流体圧式)駆動装置、13…弁軸、13a…第1の軸、13b…第2の軸、13c…第3の軸、14…空気供給源(駆動流体供給源)、15…外部装置、17…試験装置、26…入力側流路、27…出力側流路、28…排気流路、30…ソレノイドケース、31…ソレノイドコイル、32…可動鉄芯、40…第1の圧力センサ、41…第2の圧力センサ、42…主弁開度センサ、43…電圧センサ、44…電流・抵抗センサ、45…温度センサ、46…磁気センサ、47…稼働時間計(タイマ)、48…作動カウンタ(カウンタ)、49…駆動状態センサ、70…マイクロコントローラ、100…配管、170A…第1のトルクセンサ、170B…第2のトルクセンサ、200…機械学習装置、201…学習用データセット取得ユニット、202…学習用データセット記憶ユニット、203…学習ユニット、204…学習済モデル記憶ユニット、300…データ処理システム、301…入力データ取得ユニット、302…推論ユニット、303…学習済モデル記憶ユニット、304…報知ユニット、305…異常判定ユニット、A…空気(駆動流体)、PC1…作業者用コンピュータ
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