(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023104158
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】鋼管基礎、基礎構造、基礎構造の施工方法および鋼管基礎の撤去方法
(51)【国際特許分類】
E02D 27/12 20060101AFI20230721BHJP
E02D 27/32 20060101ALI20230721BHJP
E02D 27/52 20060101ALI20230721BHJP
E02D 5/28 20060101ALI20230721BHJP
E02D 7/22 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
E02D27/12 Z
E02D27/32 Z
E02D27/52 A
E02D5/28
E02D7/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022004984
(22)【出願日】2022-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】大久保 憲二
【テーマコード(参考)】
2D041
2D046
2D050
【Fターム(参考)】
2D041AA02
2D041CA03
2D041CB06
2D041DB02
2D041FA14
2D046CA01
2D046DA05
2D046DA62
2D050AA06
2D050CB05
(57)【要約】
【課題】硬質地盤に対して特殊な装備を用いずに容易に施工したり撤去したりできる鋼管基礎、基礎構造、基礎構造の施工方法および鋼管基礎の撤去方法を提供すること。
【解決手段】鋼管基礎1は、先端部に形成される掘削リング部4と、掘削リング部4の上方に位置し、内面5に螺旋状の内面側リブ7が形成され外面6に螺旋状の外面側リブ8が形成されたリブ付き鋼管部3と、リブ付き鋼管部3の上方に形成されたリブなし鋼管部2とを具備する。基礎構造19を施工する際には、鋼管基礎1を正回転させながらリブ付き鋼管部3が地盤15に埋まるまで圧入する。基礎構造19は、リブ付き鋼管部3が地盤15に埋め込まれ、リブなし鋼管部2が地盤15上に露出する。基礎構造19から鋼管基礎1を撤去する際には、鋼管基礎1を逆回転させながら地盤15から引き抜く。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管基礎であって、
先端部に形成される掘削リング部と、
前記掘削リング部の上方に位置し、内面又は外面の少なくとも一方に螺旋状のリブが形成されたリブ付き鋼管部と、
前記リブ付き鋼管部の上方に形成されたリブなし鋼管部と、
を具備することを特徴とする鋼管基礎。
【請求項2】
前記掘削リング部は、地盤を切削する切削部と、掘削ずりを取り込む取り込み部とが周方向に交互に形成され、
前記切削部は、前記リブ付き鋼管部の下端部における前記リブの形成位置に対応した位置に形成され、前記取り込み部が、前記リブ付き鋼管部の下端部における前記リブ同士の間に対応した位置に形成されることを特徴とする請求項1記載の鋼管基礎。
【請求項3】
前記リブ付き鋼管部は、少なくとも内面側に前記リブが形成され、
前記切削部に対して前記取り込み部の厚みが薄く、内面側において、前記取り込み部が厚み方向に凹部となることを特徴とする請求項2記載の鋼管基礎。
【請求項4】
前記切削部は、外面側の長さが長く、内面側に向けて長さが短くなるようなテーパ形状を有することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の鋼管基礎。
【請求項5】
前記切削部は、周方向に向けて鋸状の形状を有することを特徴とする請求項2から請求項4のいずれかに記載の鋼管基礎。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の鋼管基礎を用いた基礎構造であって、
前記リブ付き鋼管部が地盤に埋め込まれ、前記リブなし鋼管部が地盤上に露出することを特徴とする基礎構造。
【請求項7】
前記地盤は水中地盤であり、
洋上風車用のモノパイル基礎として使用されることを特徴とする請求項6記載の基礎構造。
【請求項8】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の鋼管基礎を用いた基礎構造の施工方法であって、
前記鋼管基礎を正回転させながら、前記リブ付き鋼管部が地盤に埋まるまで圧入することを特徴とする基礎構造の施工方法。
【請求項9】
請求項6又は請求項7に記載の基礎構造からの鋼管基礎の撤去方法であって、
前記鋼管基礎を逆回転させながら地盤から引き抜くことを特徴とする鋼管基礎の撤去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管基礎、基礎構造、基礎構造の施工方法および鋼管基礎の撤去方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、再生可能エネルギーの一つとして風力発電設備の建設が世界中で盛んになっている。風力発電設備の基礎構造は、構造が単純で経済性の高いモノパイル形式の基礎を油圧ハンマーで打設して施工するのが最も一般的である。
【0003】
また、硬質地盤や岩盤へのモノパイル基礎の施工方法として、二重管構造のケーシングを回転させてカッタビットで水底の地盤を掘削することで円周溝を形成しつつ、掘削ずりと二重管の間からケーシングの下端付近に注入された流体とを内管の内周面に設けられた螺旋状リブに沿って上昇させ、ケーシングを円周溝から引き抜いた後に円周溝にモノパイルを建て込む方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、硬質地盤に対して大口径のモノパイルを施工する場合、油圧ハンマーで打設すると、振動や騒音が大きく生態系への環境負荷が増大する。また打撃回数の増大によりモノパイルに発生する疲労を考慮した設計が必要となる。特許文献1記載の方法はこれらの問題点を解決するものであるが、特殊なケーシングを用いる必要がある。また、円周溝の掘削後にケーシングを引き抜いて使いまわすため、工程数や工種が多くなり工期も長くなる。
【0006】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とすることは、硬質地盤に対して特殊な装備を用いずに容易に施工したり撤去したりできる鋼管基礎、基礎構造、基礎構造の施工方法および鋼管基礎の撤去方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために第1の発明は、鋼管基礎であって、先端部に形成される掘削リング部と、前記掘削リング部の上方に位置し、内面又は外面の少なくとも一方に螺旋状のリブが形成されたリブ付き鋼管部と、前記リブ付き鋼管部の上方に形成されたリブなし鋼管部と、を具備することを特徴とする鋼管基礎である。
【0008】
第1の発明の鋼管基礎は、先端部に形成された掘削リング部で地盤を掘削し、掘削ずりを螺旋状のリブ用いて地盤上まで上昇させることができるので、硬質地盤や岩盤に対して特殊な装備を用いずに容易に打設することができる。
【0009】
前記掘削リング部は、地盤を切削する切削部と、掘削ずりを取り込む取り込み部とが周方向に交互に形成され、前記切削部は、前記リブ付き鋼管部の下端部における前記リブの形成位置に対応した位置に形成され、前記取り込み部が、前記リブ付き鋼管部の下端部における前記リブ同士の間に対応した位置に形成されることが望ましい。
これにより、鋼管基礎を回転させて切削部で地盤を切削すると同時に、切削により発生した掘削ずりを取り込み部に誘導し、取り込み部からリブ同士の間に効率よく取り込むことができる。
【0010】
前記リブ付き鋼管部は、少なくとも内面側に前記リブが形成され、前記切削部に対して前記取り込み部の厚みが薄く、内面側において、前記取り込み部が厚み方向に凹部となることが望ましい。また、前記切削部は、外面側の長さが長く、内面側に向けて長さが短くなるようなテーパ形状を有することが望ましい。
掘削リング部の内面側において取り込み部が厚み方向に凹部となるようにすれば、切削部で切削した掘削ずりを取り込み部の内面側に取り込みやすい。また、切削部が外面側から内面側に向けて長さが短くなるようなテーパ形状を有すれば、掘削ずりを切削部の内面側に誘導することができる。掘削リング部において掘削ずりを切削部の内面側に誘導して取り込み部の内面側に取り込み、リブ付き鋼管部において掘削ずりを内面側のリブに沿って揚土すれば、外面側の地盤が掘削ずりで乱されないので水平方向の地盤抵抗の低減を防止でき、掘削ずりを撤去する際の水質汚濁も低減できる。
【0011】
前記切削部は、周方向に向けて鋸状の形状を有することが望ましい。
これにより、切削部で切削した掘削ずりを取り込み部に誘導しやすくなる。また、撤去時に逆回転させた際に、切削部先端の鋸状の勾配により地盤から上向きの反力を受けるため引き抜きに寄与する。
【0012】
第2の発明は、第1の発明の鋼管基礎を用いた基礎構造であって、前記リブ付き鋼管部が地盤に埋め込まれ、前記リブなし鋼管部が地盤上に露出することを特徴とする基礎構造である。
【0013】
第2の発明の基礎構造では、地盤への根入れ部分にリブが設けられ、地盤上に露出する部分にはリブが設けられないので、鋼管基礎へのリブの形成範囲を必要最小限にできる。
【0014】
前記地盤は水中地盤であり、洋上風車用のモノパイル基礎として使用されてもよい。
これにより、硬質地盤に大型のモノパイル形式の洋上風車を設置できる。
【0015】
第3の発明は、第1の発明の鋼管基礎を用いた基礎構造の施工方法であって、前記鋼管基礎を正回転させながら、前記リブ付き鋼管部が地盤に埋まるまで圧入することを特徴とする基礎構造の施工方法である。
【0016】
第3の発明によれば、鋼管基礎を特殊な装備を用いずに硬質地盤に対して正確に所定の深さまで打設することができる。また、鋼管基礎に衝撃を与えないので、生態系への環境負荷を大幅に低減でき、衝撃による疲労を考慮せずに鋼管基礎を設計できる。
【0017】
第4の発明は、第2の発明の基礎構造からの鋼管基礎の撤去方法であって、前記鋼管基礎を逆回転させながら地盤から引き抜くことを特徴とする鋼管基礎の撤去方法である。
【0018】
第4の発明によれば、特殊な装備を用いずに鋼管基礎の全長を容易に回収できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、硬質地盤に対して特殊な装備を用いずに容易に施工したり撤去したりできる鋼管基礎、基礎構造、基礎構造の施工方法および鋼管基礎の撤去方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0022】
図1は鋼管基礎1の立面図、
図2は
図1に示す線A1-A1による鋼管基礎1の断面を示す図、
図3は
図1に示す矢印A2の方向から見た掘削リング部4を示す図である。
図4、
図5は掘削リング部4付近の詳細を示す図であり、
図4は
図2に示す範囲Bの拡大図、
図5(a)は
図4に示す線D1-D1による断面を示す図、
図5(b)は
図4に示す線D2-D2による断面を示す図である。
【0023】
図1、
図2に示すように、鋼管基礎1は、リブなし鋼管部2、リブ付き鋼管部3、掘削リング部4等で構成される。鋼管基礎1は、
図1、
図2に示す下側が先端側であり、施工時には上から見て正回転され、撤去時には逆回転される。
【0024】
リブなし鋼管部2は、リブ付き鋼管部3の上方に形成される。リブなし鋼管部2は、通常のモノパイルと同様の鋼管であり、施工時と供用時に必要な耐力と耐久性をもつ。
【0025】
リブ付き鋼管部3は、掘削リング部4の上方に位置し、内面5に内面側リブ7が形成され、外面6に外面側リブ8が形成される。内面側リブ7、外面側リブ8は、正回転方向の前方が先端側となるように傾斜した螺旋状である。リブ付き鋼管部3は、リブ付き圧延鋼帯をスパイラル加工して形成される。リブ付き鋼管部3の板厚は根入れ部に必要な耐力と耐久性が得られるように設定される。
【0026】
掘削リング部4は、鋼管基礎1の先端部に形成される。掘削リング部4は、
図3に示すように、地盤を切削する切削部9と、掘削ずりを取り込む取り込み部10とが周方向に交互に形成される。掘削リング部4は、切削部9に対して取り込み部10の厚みが薄く、内面側において、取り込み部10が厚み方向に凹部となる。掘削リング部4は、内面側において取り込み部10の内面12aが切削部9の内面12より凹んでいる。
【0027】
図4に示すように、掘削リング部4では、切削部9が、リブ付き鋼管部3の下端部11における内面側リブ7の形成位置24に対応した位置に形成される。また、取り込み部10が、リブ付き鋼管部3の下端部11における内面側リブ7の形成位置24同士の間に対応した位置に形成される。
【0028】
掘削リング部4のうち少なくとも切削部9は、
図4に示すように周方向に向けて鋸状の形状を有し、正回転方向の前方が下端部11からの長さが長く後方に向けて下端部11からの長さが徐々に短くなるテーパ形状を有する。また、切削部9は、
図5(a)に示すように掘削リング部4の径方向の断面において外面13側の先端が鋭角となるようにカットされ、外面13側の方が下端部11からの長さが長く、内面12側に向けて下端部11からの長さが短くなるようなテーパ形状を有する。すなわち、切削部9は、掘削リング部4の周方向および径方向に勾配が形成されており、内面側リブ7の形成位置24付近の外面13側から取り込み部10との境界位置25の内面12側に向けて傾斜するテーパ面14を有する。
【0029】
図5に示すように、リブ付き鋼管部3に形成される内面側リブ7は外面側リブ8より鉛直断面が大きく、内面側リブ7の内面5からの突出高さ26は外面側リブ8の外面6からの突出高さ27より大きいことが望ましい。この際、外面側リブ8の端部21は掘削リング部4の外面13の略延長上に位置する。内面側リブ7の端部22は、切削部9では内面12の略延長上に位置し、取り込み部10では内面12aの延長上よりも内側に位置する。取り込み部10の内面12aはリブ付き鋼管部3の内面5(内面側リブ7以外の部位の内面)に連続する。すなわち、取り込み部10は、内面側リブ7の突出高さ26の分だけ、切削部9よりも厚みが薄い。また、リブの断面形状やピッチ、本数等は図示した例には限られない。
【0030】
次に、鋼管基礎1を用いた基礎構造19とその施工方法について説明する。
図6は、基礎構造19の施工手順を示す図であり、
図6(a)は鋼管基礎1を建て込んだ状態を示す図、
図6(b)は鋼管基礎1を水中の地盤15に圧入した状態を示す図である。
【0031】
鋼管基礎1を用いて基礎構造19を施工するには、まず、大型SEP23に搭載した大口径全周回転掘削機16と鋼管基礎1を基礎構造19の施工予定位置付近まで運搬する。そして、
図6(a)に示すように大型SEP23の張出桁上に全周回転掘削機16を設置し、全周回転掘削機16内に鋼管基礎1を建て込む。鋼管基礎1は、掘削リング部4が形成された先端部が地盤15側となるように建て込まれる。
【0032】
次に、鋼管基礎1を矢印E1に示すように正回転させながら矢印E2に示すように地盤15内に圧入してリブ付き鋼管部3を地盤15に埋め込み、
図6(b)に示す基礎構造19を完成する。基礎構造19は、リブ付き鋼管部3の全長が地盤15に埋め込まれ、リブなし鋼管部2が地盤15上に露出する。
【0033】
基礎構造19が完成したら、鋼管基礎1上に図示しないプラットフォームと風車を設置して、基礎構造19をモノパイル基礎とする洋上風車を組み立てる。
【0034】
図7から
図9は、地盤15内に圧入中の鋼管基礎1を示す図である。
図7(a)は地盤15の表面付近の鉛直断面を示す。
図7(b)は、圧入中の鋼管基礎1の
図3に示す範囲Cに対応する部分を示す図である。
図8(a)(b)はそれぞれ圧入中の鋼管基礎1の
図5(a)(b)に対応する部分を示す図、
図9は圧入中の鋼管基礎1の
図4に対応する部分を示す図である。
【0035】
鋼管基礎1を全周回転掘削機16で正回転させると、
図7(a)に示すように掘削リング部4によって地盤15が切削されて掘削溝20が形成される。また、螺旋状の内面側リブ7および外面側リブ8の効果によって周辺の地盤15との摩擦でネジをねじ込むような押し込み力が発生する。リブ付き鋼管部3は、この押し込み力と全周回転掘削機16による圧入力、及び鋼管基礎1の自重によって掘削溝20に圧入される。
【0036】
ここで、上記したように掘削リング部4は切削部9と取り込み部10とが周方向に交互に配置され、切削部9にテーパ面14が設けられ、取り込み部10の内面12aが切削部9の内面12より凹んでいる。そのため、掘削リング部4を正回転させると、切削部9で切削された大半の掘削ずり17は、
図7(b)や
図8(a)の矢印に示すようにテーパ面14に沿って正回転方向の後方側且つ内面12側に誘導され、取り込み部10の内面12a側の凹部に取り込まれる。取り込み部10の内面12a側に取り込まれた掘削ずり17は、
図8(b)や
図9の矢印に示すようにリブ付き鋼管部3に形成された内面側リブ7同士の間に入って螺旋効果によって上方に運ばれ、
図7(a)に示すように鋼管基礎1の内側の地盤15上に排出される。内面側リブ7の突出高さ26は外面側リブ8の突出高さ27より大きいので、内面側リブ7同士の間に取り込むことで掘削溝20の体積と略同程度の掘削ずり17を揚土して排出できる。
【0037】
一方、切削部9の外面13側に入った少量の掘削ずり18は、リブ付き鋼管部3の外面側リブ8同士の間に入って螺旋効果によって上方に運ばれ、
図7(a)に示すように鋼管基礎1の外側の地盤15上に排出される。外面側リブ8は突出高さ27が小さいので、鋼管基礎1の外面6側は余掘りが少なく、掘削ずり18で地盤15があまり乱されない。そのため、地盤15の根入れ部において水平抵抗の低減が抑制される。
【0038】
次に、基礎構造19からの鋼管基礎1の撤去方法について説明する。
図10は、鋼管基礎1の撤去手順を示す図であり、
図10(a)は鋼管基礎1の撤去準備をした状態を示す図、
図10(b)は鋼管基礎1を地盤15から引き抜いている状態を示す図である。
【0039】
基礎構造19から鋼管基礎1を撤去するには、まず図示しない風車とプラットフォームを撤去し、
図10(a)に示すように大型SEP23の張出桁を用いて鋼管基礎1上に全周回転掘削機16を設置する。次に、鋼管基礎1を矢印F1に示すように施工時と逆回転させながら矢印F2に示すように引き上げ、
図10(b)に示すようにリブ付き鋼管部3を地盤15から引き抜く。リブ付き鋼管部3の全長を地盤15から引き抜いたら、鋼管基礎1を大型SEP23に乗せて処分地まで運搬する。
【0040】
鋼管基礎1を全周回転掘削機16で逆回転させると、掘削リング部4と螺旋状の内面側リブ7および外面側リブ8の効果によって、鋸状の周方向のテーパ形状による先端での反力と周辺の地盤15との摩擦でネジを緩めるような引き抜き力が発生する。リブ付き鋼管部3は、この引き抜き力と全周回転掘削機16の引き抜き力とによって掘削溝20から引き抜かれる。
【0041】
このように、本実施形態の鋼管基礎1によれば、鋼管基礎1の先端部に形成された掘削リング部4で地盤15を掘削し、掘削ずり17、18を螺旋状の内面側リブ7、外面側リブ8で地盤15上まで上昇させることができる。そのため、硬質地盤や岩盤に対して特殊な装備を用いずに鋼管基礎1を容易に施工できる。
【0042】
鋼管基礎1では、掘削リング部4が切削部9と取り込み部10とが周方向に交互に形成され、切削部9が周方向に向けて鋸状の形状でテーパ面14を有し、取り込み部10が内面側において切削部9に対して厚み方向に凹部となっている。そのため、切削部9で切削した大半の掘削ずり17をテーパ面14に沿って取り込み部10の方向に誘導し、取り込み部10の内面12a側に取り込むことができる。
【0043】
また、切削部9が内面側リブ7の形成位置24に対応した位置に形成され、取り込み部10が内面側リブ7同士の間に対応した位置に形成されるので、取り込み部10の内面12a側に取り込んだ掘削ずり17を内面側リブ7同士の間に効率よく運び、リブ付き鋼管部3の内面5側に沿って掘削ずり17を上昇させて地盤15上に排出することができる。すなわち、掘削時に生じる掘削ずりは、リブ付き鋼管部3の内面5側に優先的に排出することができる。残りの掘削ずり18はリブ付き鋼管部3の外面6側に沿って揚土されるが、少量であるため外面6側の地盤15が掘削ずり18で乱されず、余掘りが小さいため、水平方向の荷重に抵抗する水平方向地盤反力を期待通りに得ることができる。また、掘削ずり18の撤去時の水質汚濁も抑制される。
【0044】
本実施形態の基礎構造19では、リブ付き鋼管部3が地盤15に埋め込まれ、リブなし鋼管部2が地盤15上に露出される。そのため、鋼管基礎1への内面側リブ7および外面側リブ8の形成範囲を必要最小限にできる。また、地盤15からの露出部において、リブ等の凹凸が形成されていないため、水流等の抵抗を受けにくい。
【0045】
本実施形態の基礎構造19の施工方法によれば、全周回転掘削機16の圧入力と螺旋状の内面側リブ7および外面側リブ8により発生する押し込み力によって、特殊な装備を用いずに鋼管基礎1を硬質の地盤15に対して正確に所定の深さまで打設できる。また、鋼管基礎1に衝撃を与えないため、衝撃による疲労を考慮せずに鋼管基礎1の肉厚を設定でき、施工時の生態系への環境負荷を大幅に低減できる。
【0046】
本実施形態の鋼管基礎1の撤去方法によれば、全周回転掘削機16の引き抜き力と螺旋状の内面側リブ7および外面側リブ8により発生する引き抜き力によって、特殊な施工装備を用いずに鋼管基礎1の全長を容易に回収して撤去できる。そのため、鋼管基礎の一部が地盤15中に残置されることがなく、全長をスクラップとして再利用できる。
【0047】
本実施形態によれば、基礎構造19の施工時、鋼管基礎1の撤去時を通じて、地盤15の改変量が少ない。そのため地盤15の環境への負荷を減らすことができる。
【0048】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0049】
例えば、本発明の基礎構造19は洋上風車用のモノパイル基礎以外にも適用できる。また、鋼管基礎1では内面5と外面6の両方に螺旋状のリブを設けたが、より優先的に内面への掘削ずり17を上方へ運搬するために、外面6にはリブを設けずに、内面5のみにリブを形成してもよい。また、掘削ずり18の撤去等が容易であれば、内面5にはリブを設けずに、外面6のみにリブを設けてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1………鋼管基礎
2………リブなし鋼管部
3………リブ付き鋼管部
4………掘削リング部
5、12、12a………内面
6、13………外面
7………内面側リブ
8………外面側リブ
9………切削部
10………取り込み部
11………下端部
14………テーパ面
15………地盤
16………全周回転掘削機
17、18………掘削ずり
19………基礎構造
20………掘削溝
21、22………端部
23………大型SEP
24………形成位置
25………境界位置
26、27………突出高さ