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特開2023-104164沈殿池におけるスロッシング抑制構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023104164
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】沈殿池におけるスロッシング抑制構造
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/02 20060101AFI20230721BHJP
   B01D 21/00 20060101ALI20230721BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
B01D21/02 E
B01D21/00 G
F16F15/02 L
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022004996
(22)【出願日】2022-01-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】516093541
【氏名又は名称】株式会社エース・ウォーター
(71)【出願人】
【識別番号】502152126
【氏名又は名称】学校法人智香寺学園
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(72)【発明者】
【氏名】川島 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】皆川 佳祐
(72)【発明者】
【氏名】山本 哲也
(72)【発明者】
【氏名】高橋 和孝
(72)【発明者】
【氏名】倉田 朋幸
【テーマコード(参考)】
3J048
【Fターム(参考)】
3J048AA06
3J048AC01
3J048AC04
3J048AC06
3J048BE01
3J048BE10
3J048BE11
3J048CB21
3J048EA38
(57)【要約】
【課題】設置性及びメンテナンス性を向上しつつスロッシングによる揺れの増大を抑制することができるとともに容易に設置することができる。
【解決手段】沈殿池におけるスロッシング抑制構造は、複数の傾斜板52を有する傾斜板ユニット5と、傾斜板ユニット5を吊下げる複数のフックボルト6と、複数のフックボルト6のうちの第一フックボルト61及び第二フックボルト62に接続されるダンパ7と、を備える。ダンパ7は、第一フックボルト61の第一接続位置P1と第二フックボルト62の第一接続位置P1とは高さの異なる第二接続位置P2とに接続されて、第一接続位置P1に対する第二接続位置P2の振動を減衰させる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の傾斜板を有する傾斜板ユニットと、
前記傾斜板ユニットを吊下げる複数のフックボルトと、
前記複数のフックボルトのうちの第一フックボルト及び第二フックボルトに接続されるダンパと、を備え、
前記ダンパは、前記第一フックボルトの第一接続位置と前記第二フックボルトの前記第一接続位置とは高さの異なる第二接続位置とに接続されて、前記第一接続位置に対する前記第二接続位置の振動を減衰させる、
沈殿池におけるスロッシング抑制構造。
【請求項2】
前記ダンパは流体抵抗力により減衰力を得る流体抵抗ダンパである、
請求項1に記載の沈殿池におけるスロッシング抑制構造。
【請求項3】
前記ダンパは、金属の変形により減衰力を得る鋼材ダンパである、
請求項1に記載の沈殿池におけるスロッシング抑制構造。
【請求項4】
前記ダンパは、摩擦抵抗により減衰力を得る摩擦ダンパである、
請求項1に記載の沈殿池におけるスロッシング抑制構造。
【請求項5】
前記ダンパは、弾性力により減衰力を得る弾性ダンパである、
請求項1に記載の沈殿池におけるスロッシング抑制構造。
【請求項6】
前記第二フックボルトは、前記第一フックボルトに隣接するフックボルトである、
請求項1~5の何れか一項に記載の沈殿池におけるスロッシング抑制構造。
【請求項7】
前記傾斜板ユニットは、水平方向である第一方向と、前記第一方向と直交する水平方向である第二方向と、に延びており、
前記第二フックボルトは、前記第一フックボルトと前記第一方向に隣接するフックボルトである、
請求項1~6の何れか一項に記載の沈殿池におけるスロッシング抑制構造。
【請求項8】
前記複数のフックボルトは、第一方向に対向する一対の側壁に懸架された懸架フレームに吊下げられている、
請求項7に記載の沈殿池におけるスロッシング抑制構造。
【請求項9】
前記ダンパは、前記傾斜板ユニットを前記第一方向に三分割した場合の両端部のそれぞれに配置されている、
請求項7又は8に記載の沈殿池におけるスロッシング抑制構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、沈殿池におけるスロッシング抑制構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、大規模地震時に沈殿池内の水のスロッシングにより沈降装置が水と共に揺動して、沈降装置が損傷することを防止するスロッシング抑制構造が記載されている。このスロッシング抑制構造は、沈降装置の沈降傾斜板の並列方向の端部に位置するフレームと沈殿池の側壁との間に緩衝装置を介在させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-159199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたスロッシング抑制構造では、緩衝装置を配置するために、沈殿池の水を抜くか沈殿池に潜るかする必要があるため、設置が困難という問題がある。同様に、緩衝装置をメンテナンスするためにも、沈殿池の水を抜くか作業者が沈殿池に潜るかする必要があるため、メンテナンスが困難という問題がある。また、沈降装置と沈殿池の側壁との離隔が狭い場合及び沈降装置が可動式である場合には設置が困難という問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、設置性及びメンテナンス性を向上しつつスロッシングによる揺れの増大を抑制することができるとともに容易に設置することができる沈殿池におけるスロッシング抑制構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る沈殿池におけるスロッシング抑制構造は、複数の傾斜板を有する傾斜板ユニットと、傾斜板ユニットを吊下げる複数のフックボルトと、複数のフックボルトのうちの第一フックボルト及び第二フックボルトに接続されるダンパと、を備え、ダンパは、第一フックボルトの第一接続位置と第二フックボルトの第一接続位置とは高さの異なる第二接続位置とに接続されて、第一接続位置に対する第二接続位置の振動を減衰させる。
【0007】
この沈殿池におけるスロッシング抑制構造では、第一フックボルトの第一接続位置と第二フックボルトの第二接続位置との高さが異なるため、地震等により沈殿池がスロッシングした際に、第一接続位置と第二接続位置との相対距離が変動し、第一接続位置に対して第二接続位置が振動した状態となる。しかしながら、ダンパは、第一接続位置及び第二接続位置において第一フックボルト及び第二フックボルトと接続されて、第一接続位置に対する第二接続位置の振動を減衰させる。このため、沈殿池がスロッシングした際の、第一フックボルト及び第二フックボルトの配列方向における傾斜板ユニットの揺れの増大を抑制することができる。更に、傾斜板ユニットを吊下げる複数のフックボルトにダンパが接続されるため、沈殿池の上方からダンパの設置及びメンテナンスを行うことができる。このため、容易にダンパの設置及びメンテナンスを行うことができる。しかも、ダンパは、第一フックボルトと第二フックボルトとの間の僅かな空間にしか配置されないため、傾斜板ユニットの上方に広い空間を開けることができる。このため、この空間に、配管や傾斜板ユニットを洗浄するための洗浄設備等を配置することができる。
【0008】
前記ダンパは、流体抵抗力により減衰力を得る流体抵抗ダンパであってもよく、金属の変形により減衰力を得る鋼材ダンパであってもよく、摩擦抵抗により減衰力を得る摩擦ダンパであってもよく、弾性力により減衰力を得る弾性ダンパであってもよい。これらの沈殿池におけるスロッシング抑制構造では、ダンパとして、流体抵抗ダンパ、鋼材ダンパ、摩擦ダンパ、又は弾性ダンパを用いることで、第一接続位置に対する第二接続位置の振動を容易かつ簡易に減衰させることができる。なお、液体抵抗ダンパとしては、例えば、オイルの流体抵抗力により減衰力を得るオイルダンパ、オイルの代わりに粘性流体を用いた粘性ダンパ、空気の流体抵抗力により減衰力を得るエアダンパ等が挙げられる。鋼材ダンパとしては、例えば、屈曲された板状のもの、コイルバネ形状のもの等が挙げられる。弾性ダンパとしては、例えば、ゴムの弾性力又は粘弾性力により減衰力を得るゴムダンパ等が挙げられる。
【0009】
第二フックボルトは、第一フックボルトに隣接するフックボルトであってもよい。この沈殿池におけるスロッシング抑制構造では、第二フックボルトが第一フックボルトに隣接するフックボルトであるため、他のフックボルトに干渉されることなくダンパを第一フックボルト及び第二フックボルトに接続することができる。
【0010】
傾斜板ユニットは、水平方向である第一方向と、第一方向と直交する水平方向である第二方向と、に延びており、第二フックボルトは、第一フックボルトと第一方向に隣接するフックボルトであってもよい。この沈殿池におけるスロッシング抑制構造では、第二フックボルトが第一フックボルトと第一方向に隣接するフックボルトであるため、他のフックボルトに干渉されることなくダンパを第一フックボルト及び第二フックボルトに接続することができるとともに、傾斜板ユニットの第一方向における揺れの増大を適切に抑制することができる。
【0011】
複数のフックボルトは、第一方向に対向する一対の側壁に懸架された懸架フレームに吊下げられていてもよい。この沈殿池におけるスロッシング抑制構造では、第一方向に対向する一対の側壁に懸架された懸架フレームに複数のフックボルトが吊下げられているが、第一方向に隣接する第一フックボルト及び第二フックボルトにダンパが接続されているため、ダンパにより第一方向における傾斜板ユニットの揺れを減衰させることができる。このため、傾斜板ユニットが一対の側壁に衝突するのを抑制することができる。
【0012】
ダンパは、傾斜板ユニットを第一方向に三分割した場合の両端部のそれぞれに配置されていてもよい。この沈殿池におけるスロッシング抑制構造では、傾斜板ユニットを第一方向に三分割した場合の両端部のそれぞれにダンパが配置されるため、スロッシングにより傾斜板ユニットが第一方向に揺れた際に、傾斜板ユニットの揺れを効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、設置性及びメンテナンス性を向上しつつスロッシングによる揺れの増大を抑制することができるとともに容易に設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施形態に係る沈殿池におけるスロッシング抑制構造が適用される沈殿池の模式断面図である。
図2図2は、図1に示す沈殿池の模式平面図である。
図3図3は、図2に示すIII-III線における模式断面図である。
図4図4は、図3の一部を拡大した図である。
図5図5(a)及び図5(b)は、ダンパ、第一フックボルト、及び第二フックボルトの模式図である。
図6図6は、オイルダンパを示す模式図である。
図7図7は、鋼材ダンパを示す模式図である。
図8図8は、摩擦ダンパを示す模式図である。
図9図9は、ゴムダンパの模式図である。
図10図10(a)及び図10(b)は、ダンパ、第一フックボルト、及び第二フックボルトの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
図1は、実施形態に係る沈殿池におけるスロッシング抑制構造が適用される浄水場の沈殿池1の模式断面図である。図2は、図1に示す沈殿池1の模式平面図である。図3は、図2に示すIII-III線における模式断面図である。図4は、図3の一部を拡大した図である。図1図4に示すように、沈殿池1は、水平方向である第一方向D1に対向する一対の側壁3と、一対の側壁3に懸架された複数の懸架フレーム4と、複数の懸架フレーム4に吊下げられる傾斜沈降装置2と、を備える。沈殿池1では、第一方向D1と直交する水平方向である第二方向D2に向けて水が流れて行く。
【0017】
傾斜沈降装置2は、沈殿池1に設置されることで、沈降面積を増やすことにより、フロック等の懸濁物質の沈降を促進し、浄水場の処理能力の向上を図る装置である。傾斜沈降装置2は、傾斜板ユニット5と、複数のフックボルト6と、1又は複数のダンパ7と、を備える。
【0018】
傾斜板ユニット5は、全体として直方体状に形成されて、一対の側壁3の間に配置されている。傾斜板ユニット5は、ユニットフレーム51と、複数の傾斜板52と、を有する。
【0019】
ユニットフレーム51は、複数の傾斜板52を保持する枠体である。ユニットフレーム51は、例えば、直方体の格子状に形成されている。
【0020】
複数の傾斜板52のそれぞれは、沈降面積を増やすために鉛直方向に対して傾斜した板状部材である。複数の傾斜板52は、互いに平行となるように第一方向D1に配列されている。なお、複数の傾斜板52のそれぞれは、第二方向D2に延びていてもよく、第二方向D2に対して傾斜する方向に延びていてもよい。
【0021】
複数のフックボルト6は、複数の懸架フレーム4に対して傾斜板ユニット5を吊下げる部材である。複数のフックボルト6は、複数の懸架フレーム4のそれぞれに揺動可能に吊下げられている。また、複数のフックボルト6は、傾斜板ユニット5のユニットフレーム51に揺動可能に吊下げられている。つまり、一つの懸架フレーム4に複数のフックボルト6が吊下げられており、ユニットフレーム51は、複数の懸架フレーム4に吊下げられた全てのフックボルト6に吊下げられている。
【0022】
ダンパ7は、複数のフックボルト6の任意の二つのフックボルト6に接続される。複数のフックボルト6のうち、ダンパ7に接続される二つのフックボルトを、第一フックボルト61及び第二フックボルト62という。傾斜沈降装置2に一つのダンパ7のみが設けられる場合は、第一フックボルト61及び第二フックボルト62も一セットのみである。傾斜沈降装置2に複数のダンパ7が設けられる場合は、第一フックボルト61及び第二フックボルト62も複数セットある。なお、一つのフックボルト6に複数のダンパ7が接続される場合、当該フックボルト6は、第一フックボルト61及び第二フックボルト62の何れにも成り得る。
【0023】
ダンパ7は、第一フックボルト61の第一接続位置P1に接続されるとともに、と第二フックボルト62の第二接続位置P2と、に接続される。第二接続位置P2は、第一接続位置P1と高さが異なる。本実施形態では、一例として、第一接続位置P1が第二接続位置P2よりも高い位置となっている。
【0024】
ここで、図5を参照して、第一接続位置P1と第二接続位置P2との位置関係について説明する。図5は、ダンパ7、第一フックボルト61、及び第二フックボルト62の模式図である。図5(a)は、傾斜板ユニット5が第一フックボルト61に対する第二フックボルト62側に移動した場合を示しており、図5(b)は、傾斜板ユニット5が静止した状態から第二フックボルト62に対する第一フックボルト61側に移動した場合を示している。図5では、傾斜板ユニット5が静止している状態を実線で示しており、スロッシングにより傾斜板ユニット5が揺れた状態を二点鎖線で示している。また、第一接続位置P1と第二接続位置P2との直線距離を相対距離Lとしている。
【0025】
図5に示すように、スロッシングにより傾斜板ユニット5が揺れると、第一フックボルト61及び第二フックボルト62が傾斜するため、相対距離Lは振動するように変位する。例えば、図5(a)に示すように、傾斜板ユニット5が第一フックボルト61に対する第二フックボルト62側に移動すると、相対距離Lは、傾斜板ユニット5が静止している場合に比べて長くなる。一方、図5(b)に示すように、傾斜板ユニット5が静止した状態から第二フックボルト62に対する第一フックボルト61側に移動すると、相対距離Lは、傾斜板ユニット5が静止している場合に比べて短くなる。
【0026】
このように、スロッシングにより傾斜板ユニット5が揺れると、相対距離Lが振動するように変位する。つまり、スロッシングにより傾斜板ユニット5が揺れると、第一接続位置P1に対して第二接続位置P2が振動した状態となる。そこで、ダンパ7は、第一接続位置P1に対する第二接続位置P2の振動を減衰させるように、第一接続位置P1及び第二接続位置P2に接続されている。
【0027】
ダンパ7としては、例えば、流体抵抗力により減衰力を得る流体抵抗ダンパ、弾性力により減衰力を得る弾性ダンパ、弾性力により減衰力を得る弾性ダンパ、金属の変形により減衰力を得る鋼材ダンパ、摩擦抵抗により減衰力を得る摩擦ダンパ等が挙げられる。
【0028】
液体抵抗ダンパとしては、例えば、オイルの流体抵抗力により減衰力を得るオイルダンパ、オイルの代わりに粘性流体を用いた粘性ダンパ、空気の流体抵抗力により減衰力を得るエアダンパ等が挙げられる。流体抵抗ダンパの一例として、図6に、オイルダンパの模式図を示す。図6に示すオイルダンパ71は、内部にオイル室71aが形成された筒部71bと、筒部71bに挿入されたロッド部71cと、ロッド部71cに固定されてオイル室71aに配置されたピストン71dと、を有する。ピストン71dには、オイルを通過させるオリフィス等の穴が形成されている。そして、筒部71b及びロッド部71cの何れか一方が、第一接続位置P1において第一フックボルト61に接続されており、筒部71b及びロッド部71cの何れか他方が、第二接続位置P2において第二フックボルト62に接続されている。このオイルダンパ71では、ピストン71dを通過するオイルの抵抗により減衰力が発生する。
【0029】
鋼材ダンパとしては、例えば、屈曲された板状のもの、コイルバネ形状のもの等が挙げられる。鋼材ダンパの一例として、図7に、屈曲された板状の鋼材ダンパの模式図を示す。図7に示す鋼材ダンパ72は、屈曲された板状の鋼材72aにより構成されている。そして、鋼材72aの一方の端部が、第一接続位置P1において第一フックボルト61に接続されており、鋼材72aの他方の端部が、第二接続位置P2において第二フックボルト62に接続されている。この鋼材ダンパ72では、鋼材72aが曲がるときの力が熱エネルギー等に変わることにより減衰力が発生する。
【0030】
摩擦ダンパとしては、例えば、挟持により摩擦力を発生させる摩擦ダンパ等が挙げられる。摩擦ダンパの一例として、図8に、挟持により摩擦力を発生させる摩擦ダンパの模式図を示す。図8に示す摩擦ダンパ73は、第一接続位置P1において第一フックボルト61に接続される第一接続部73aと、第二接続位置P2において第二フックボルト62に接続される第二接続部73bと、第一接続部73aに固定されて第二接続部73bを摺動可能に挟み込む挟持部73cと、を有する。第二接続部73bには、長穴73dが形成されており、挟持部73cは、長穴73dを通したボルトにより締結されることで、第二接続部73bを摺動可能に挟み込んでいる。この摩擦ダンパ73では、第二接続部73bと挟持部73cとの間の摩擦力により減衰力が発生する。
【0031】
弾性ダンパとしては、例えば、ゴムの弾性力又は粘弾性力により減衰力を得るゴムダンパ等が挙げられる。弾性ダンパの一例として、図9に、ゴムの弾性伸縮力により摩擦力を発揮させるゴムダンパの模式図を示す。図9に示すゴムダンパ74は、第一接続位置P1において第一フックボルト61に接続される第一接続部74aと、第二接続位置P2において第二フックボルト62に接続される第二接続部74bと、第一接続部74aと第二接続部74bとの間に配置されるゴム部74cと、を有する。第一接続部74aのゴム部74c側の端面74d及び第二接続部74bのゴム部74c側の端面74eは、互いに対向する平面状になっている。このゴムダンパ74では、第一接続部74aの端面74dと第二接続部74bの端面74eとの間におけるゴム部74cの弾性伸縮力により減衰力が発生する。
【0032】
傾斜沈降装置2におけるダンパ7の数、配置等は、特に限定されるものではなく、傾斜沈降装置2の大きさ及び形状、沈殿池1の大きさ及び形状等に応じて適宜設定される。
【0033】
例えば、全てのフックボルト6にダンパ7を接続してもよく、一部のフックボルト6にのみダンパ7を接続してもよい。また、隣り合うフックボルト6にダンパ7を接続してもよく、隣り合わないフックボルト6にダンパ7を接続してもよい。
【0034】
隣り合うフックボルト6にダンパ7を接続する場合、第二フックボルト62は、第一フックボルト61と第一方向D1に隣接するフックボルト6であってもよく、第一フックボルト61と第二方向D2に隣接するフックボルト6であってもよく、第一フックボルト61と第一方向D1及び第二方向D2に対して傾斜した方向に隣接するフックボルト6であってもよい。
【0035】
一方、隣り合わないフックボルト6にダンパ7を接続する場合、ダンパ7は、第一フックボルト61と第二フックボルト62との間に配置されるフックボルト6を避けて配置する必要がある。しかしながら、第一フックボルト61と第二フックボルト62の水平距離が長くなるほど、傾斜板ユニット5の移動に伴う相対距離Lの変位量が大きくなる。例えば、図10(a)は、複数のフックボルト6が等間隔で配置されている場合の1スパン設置を示しており、図10(b)は、複数のフックボルト6が等間隔で配置されている場合の2スパン設置を示している。1スパン設置では、隣り合うフックボルト6にダンパ7が接続されており、2スパン設置では、二本隣のフックボルト6にダンパ7が接続されている。図10(a)と図10(b)とを対比すると明らかなように、複数のフックボルト6が等間隔で配置されている場合は、1スパン設置よりも2スパン設置の方が、傾斜板ユニット5の移動に伴う相対距離Lの変位量が大きくなる。このため、一つのダンパ7の減衰効果を増大させる観点からは、隣り合わないフックボルト6にダンパ7を接続して、第一フックボルト61と第二フックボルト62の水平距離を長くすることも好ましい。
【0036】
また、スロッシングにより傾斜板ユニット5が第一方向D1に揺れると、傾斜板ユニット5の変位量は、第一方向D1における中央部よりも第一方向D1における両端部の方が大きくなる。このため、一つのダンパ7の減衰効果を増大させる観点からは、ダンパ7は、傾斜板ユニット5を第一方向D1に三分割、四分割、又は五分割した場合の両端部のそれぞれに配置されていることが好ましい。この場合、両端部以外にもダンパ7が配置されていてもよい。
【0037】
以上説明したように、本実施形態に係る沈殿池におけるスロッシング抑制構造では、第一フックボルト61の第一接続位置P1と第二フックボルト62の第二接続位置P2との高さが異なるため、地震等により沈殿池1がスロッシングした際に、第一接続位置P1と第二接続位置P2との相対距離Lが変動し、第一接続位置P1に対して第二接続位置P2が振動した状態となる。しかしながら、ダンパ7は、第一接続位置P1及び第二接続位置P2において第一フックボルト61及び第二フックボルト62と接続されて、第一接続位置P1に対する第二接続位置P2の振動を減衰させる。このため、沈殿池1がスロッシングした際の、第一フックボルト61及び第二フックボルト62の配列方向における傾斜板ユニット5の揺れの増大を抑制することができる。更に、傾斜板ユニット5を吊下げる複数のフックボルト6にダンパ7が接続されるため、沈殿池1の上方からダンパ7の設置及びメンテナンスを行うことができる。このため、容易にダンパ7の設置及びメンテナンスを行うことができる。しかも、しかも、ダンパ7は、第一フックボルト61と第二フックボルト62との間の僅かな空間にしか配置されないため、傾斜板ユニット5の上方に広い空間Aを開けることができる。このため、この空間Aに、配管や傾斜板ユニット5を洗浄するための洗浄設備等を配置することができる。
【0038】
また、ダンパ7として、流体抵抗ダンパ、鋼材ダンパ、摩擦ダンパ、又は弾性ダンパを用いることで、第一接続位置P1に対する第二接続位置P2の振動を容易かつ簡易に減衰させることができる。
【0039】
また、第二フックボルト62が第一フックボルト61に隣接するフックボルトであることで、他のフックボルト6に干渉されることなくダンパ7を第一フックボルト61及び第二フックボルト62に接続することができる。
【0040】
また、第二フックボルト62が第一フックボルト61と第一方向D1に隣接するフックボルト6であることで、他のフックボルト6に干渉されることなくダンパ7を第一フックボルト61及び第二フックボルト62に接続することができるとともに、傾斜板ユニット5の第一方向D1における揺れの増大を適切に抑制することができる。
【0041】
また、第一方向D1に対向する一対の側壁3に懸架された懸架フレーム4に複数のフックボルト6が吊下げられているが、第一方向D1に隣接する第一フックボルト61及び第二フックボルト62にダンパ7が接続されていることで、ダンパ7により第一方向D1における傾斜板ユニット5の揺れを減衰させることができる。このため、傾斜板ユニット5が一対の側壁3に衝突するのを抑制することができる。
【0042】
また、傾斜板ユニット5を第一方向D1に三分割、四分割、又は五分割した場合の両端部のそれぞれにダンパが配置されることで、スロッシングにより傾斜板ユニット5が第一方向D1に揺れた際に、傾斜板ユニット5の揺れを効果的に抑制することができる。
【0043】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用してもよい。
【符号の説明】
【0044】
1…沈殿池、2…傾斜沈降装置、3…側壁、4…懸架フレーム、5…傾斜板ユニット、6…フックボルト、7…ダンパ、51…ユニットフレーム、52…傾斜板、61…第一フックボルト、62…第二フックボルト、71…オイルダンパ、71a…オイル室、71b…筒部、71c…ロッド部、71d…ピストン、72…鋼材ダンパ、72a…鋼材、73…摩擦ダンパ、73a…第一接続部、73b…第二接続部、73c…挟持部、73d…長穴、A…空間、D1…第一方向、D2…第二方向、L…相対距離、P1…第一接続位置、P2…第二接続位置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10