(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023104177
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】建物内煙突構造の設計方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/76 20060101AFI20230721BHJP
F23J 13/02 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
E04B1/76 400A
F23J13/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022005021
(22)【出願日】2022-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】591029921
【氏名又は名称】フジモリ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003340
【氏名又は名称】弁理士法人湧泉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中澤 元宏
(72)【発明者】
【氏名】江水 友弘
(72)【発明者】
【氏名】栃下 裕也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 芳宣
【テーマコード(参考)】
2E001
3K070
【Fターム(参考)】
2E001DD05
2E001EA01
2E001GA65
2E001GA66
2E001HA07
2E001HA21
3K070BA04
3K070BA22
3K070BA24
(57)【要約】
【課題】排煙ガスの熱による建物の高温化を防止可能な建物内煙突構造を提供する。
【解決手段】建物1の筒状のシャフト10の内部に通気層13が形成されるように立設された煙突20を含む建物内煙突構造3を設計する際、建物内煙突構造3の所定高さhsにおける内外方向への定常的な熱の伝わり度合いに関する設計伝熱条件a~iを設定する。煙道29を通る排煙ガスgの想定温度tgと設計伝熱条件a~iとに基づいて、所定高さhsにおけるシャフト10の外面の予想温度t
13を算出する。予想温度t
13が所定温度t
13s以下となるよう、設計伝熱条件a~iのうち煙突20の熱伝導率又は厚みの最適値を求める。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物に上下へ延びるように設けられた筒状のシャフトと、前記シャフトの内部に立設されて前記シャフトとの間に通気層を形成する煙突と、前記通気層の下端部に連なる空気取り入れ口と、前記通気層の上端部に連なる空気排出口とを備えた建物内煙突構造の設計方法であって、
前記建物内煙突構造の所定高さにおける内外方向への定常的な熱の伝わり度合いに関する設計伝熱条件を設定する工程と、
前記煙道を通る排煙ガスの想定温度と前記設計伝熱条件とに基づいて、前記所定高さにおける前記シャフトの外面又は内面の予想温度を算出する工程と、
前記予想温度が所定温度以下となるよう、前記設計伝熱条件のうち前記煙突の熱伝導率又は厚みの最適値を求める工程と、を備えたことを特徴とする建物内煙突構造の設計方法。
【請求項2】
前記設定工程において、前記設計伝熱条件として、前記煙突内の煙道を通る排煙ガスと前記煙突の内面との間の熱伝達率、前記煙突の熱伝導率、前記煙突の厚み、前記煙突の外面と前記通気層内の空気との間の熱伝達率、前記通気層の必要換気流量、前記通気層内の空気と前記シャフトの内面との間の熱伝達率、前記煙突及び前記シャフトの断面形状及び寸法、前記シャフトの熱伝導率、並びに前記シャフトの厚みの少なくとも一部を設定することを特徴とする請求項1に記載の建物内煙突構造の設計方法。
【請求項3】
前記設定工程において、前記設計伝熱条件の1つとして前記通気層の必要換気流量を設定し、
前記煙突の熱伝導率又は厚みを前記最適値としたときの前記空気取り入れ口と前記空気排出口との間の予想温度差を算出し、
前記空気取り入れ口と前記空気排出口との間の高低差及び前記予想温度差、並びに前記空気取り入れ口及び前記空気排出口の開口面積に基づいて前記通気層の換気流量を算出し、
前記換気流量算出値が、前記必要換気流量以上であるか否かを判定することを特徴とする請求項1又は2に記載の建物内煙突構造の設計方法。
【請求項4】
前記換気流量算出値が前記必要換気流量以上になるよう、前記空気取り入れ口及び前記空気排出口の少なくとも一方の開口面積を設定することを特徴とする請求項3に記載の建物内煙突構造の設計方法。
【請求項5】
前記換気流量算出値が前記必要換気流量以上になるよう、前記通気層の中間狭隘部の流路断面積を設定することを特徴とする請求項3又は4に記載の建物内煙突構造の設計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、煙突構造を設計する方法に関し、特に、商業ビルなどの建物内に設置される建物内煙突構造の設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、商業ビル、工場等の建物には、ボイラー、発電機などのガス放出を伴う設備と、放出されたガス(排煙ガス)を外部へ排出するための煙突が備えられている。煙突は、建物内を上下に通され、屋上から更に上方へ突出されている。建物内における煙突部分は、鉛直な吹き抜け状のシャフトの内部に収容されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開番号 WO2015/101751
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
煙突内の煙道を通る排煙ガス温度は、例えば200℃~650℃程度の高温である。その熱が建物内に伝達されて、建物内の温度が上昇するおそれがある。
本発明は、かかる事情に鑑み、排煙ガスの熱による建物の高温化を防止可能な建物内煙突構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、本発明は、
建物に上下へ延びるように設けられた筒状のシャフトと、前記シャフトの内部に立設されて前記シャフトとの間に通気層を形成する煙突と、前記通気層の下端部に連なる空気取り入れ口と、前記通気層の上端部に連なる空気排出口とを備えた建物内煙突構造の設計方法であって、
前記建物内煙突構造の所定高さにおける内外方向への定常的な熱の伝わり度合いに関する設計伝熱条件を設定する工程と、
前記煙道を通る排煙ガスの想定温度と前記設計伝熱条件とに基づいて、前記所定高さにおける前記シャフトの外面又は内面の予想温度を算出する工程と、
前記予想温度が所定温度以下となるよう、前記設計伝熱条件のうち前記煙突の熱伝導率又は厚みの最適値を求める工程と、を備えたことを特徴とする。
【0006】
好ましくは、前記設定工程において、前記設計伝熱条件として、前記煙突内の煙道を通る排煙ガスと前記煙突の内面との間の熱伝達率、前記煙突の熱伝導率、前記煙突の厚み、前記煙突の外面と前記通気層内の空気との間の熱伝達率、前記通気層の必要換気流量、前記通気層内の空気と前記シャフトの内面との間の熱伝達率、前記煙突及び前記シャフトの断面形状及び寸法、前記シャフトの熱伝導率、並びに前記シャフトの厚みの少なくとも一部を設定する。
【0007】
好ましくは、前記設定工程において、前記設計伝熱条件の1つとして前記通気層の必要換気流量を設定し、前記煙突の熱伝導率又は厚みを前記最適値としたときの前記空気取り入れ口と前記空気排出口との間の予想温度差を算出し、前記空気取り入れ口と前記空気排出口との間の高低差及び前記予想温度差、並びに前記空気取り入れ口及び前記空気排出口の開口面積に基づいて前記通気層の換気流量を算出し、前記換気流量算出値が、前記必要換気流量以上であるか否かを判定する。
【0008】
好ましくは、前記換気流量算出値が前記必要換気流量以上になるよう、前記空気取り入れ口及び前記空気排出口の少なくとも一方の開口面積を設定する。
【0009】
好ましくは、前記換気流量算出値が前記必要換気流量以上になるよう、前記通気層の中間狭隘部の流路断面積を設定する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、排煙ガスの熱による建物の高温化を防止可能な建物内煙突構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る建物内煙突構造の設計方法において設定される建物内煙突構造の簡易モデルを示す正面断面図である。
【
図2】
図2は、前記設計方法の手順を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、前記設計方法において設定される建物内煙突構造の実際に近いモデルを示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面にしたがって説明する。
図1に示すように、例えば商業用ビルや工場などの建物1には、ボイラー、発電機などの排煙ガスgの放出を伴う排煙放出設備2と、その排煙ガスgを外部へ排出するための建物内煙突構造3が備えられている。
【0013】
図1は、建物内煙突構造3の単純なモデルを示したものである。建物内煙突構造3は、筒状のシャフト10と、煙突20を含む。シャフト10は、建物1の躯体と一体となって、上下へ延びている。シャフト10は、鉄筋コンクリートによって構成されている。シャフト10を構成するコンクリートとしては、普通コンクリートの他、軽量気泡コンクリート(Autoclaved Lightweight aerated Concreate;以下「ALC」と称す)等が用いられている。シャフト10の断面形状は、四角形、円形の他、四角形の1のコーナーに出隅部が設けられた変形多角形等が挙げられる。
【0014】
図1に示すように、シャフト10の内部に煙突20が立設されるように収容されている。煙突20の主壁材21は、例えばケイ酸カルシウム等の断熱材によって構成されている。主壁材21の内面には鋼板等の内面材22が設けられ、主壁材21の外面には鋼板等の外面材23が設けられている。煙突20の内部に煙道29が形成されている。
【0015】
煙突20の断面形状は、四角形、円形等が挙げられる。シャフト10と煙突20の断面形状は必ずしも相似である必要はなく、例えばシャフト10の断面は四角形であるのに対して、煙突20の断面は円形であってもよい。煙突20の下端部に、前記設備2からのガス導入管4が接続されている。煙突20の上端部は、シャフト10の上端部ひいては建物1の屋上から更に上方へ突出されている。
【0016】
シャフト10の内面と煙突20の外面との間に通気層13が形成されている。シャフト10の下端部には、ガラリ等からなる空気取り入れ口14が設けられている。通気層13の下端部が、空気取り入れ口14と連なっている。シャフト10の上端部にはガラリ等からなる空気排出口15が設けられている。通気層13の上端部が、空気排出口15と連なっている。
【0017】
排煙放出設備2で発生した排煙ガスgが、ガス導入管4から煙道29の下端部に導入され、煙道29内を上昇して、煙突20の上端部から外部へ排出される。排煙ガスgの熱が、煙突20を厚み方向へ貫通して、通気層13の空気に伝わり、該空気を媒介にしてシャフト10に伝わる。
【0018】
建物内煙突構造3における熱の伝わり度合いに関わる主なファクター(伝熱条件)としては、下記が挙げられる。
a.煙道29内の排煙ガスgと煙突20の内面との間の熱伝達率
b.煙突20の熱伝導率
c.煙突20の厚み
d.煙突20の外面と通気層13内の空気との間の熱伝達率
e.煙突20及びシャフト10の断面形状及び寸法
f.通気層13内における空気の換気流量
g.通気層13内の空気とシャフト10の内面との間の熱伝達率
h.シャフト10の熱伝導率
i.シャフト10の厚み
【0019】
通気層13内には、空気の加熱による上昇気流acすなわち前記換気流量が発生する。上昇気流に伴って、建物内煙突構造3の外部の常温の空気が、空気取り入れ口14から通気層13内に流入する。通気層13内を上昇した空気は、空気排出口15から屋外へ排出される。これと一緒に、煙突20の熱の一部が系外へ排出される。換気流量が大きいほど、煙突20からの排熱量が大きくなる。
【0020】
換気流量は、空気取り入れ口14での空気の温度、空気排出口15での空気の温度、及び通気層13の通気コンダクタンス(空気の流れやすさの度合い)に依存する。通気コンダクタンスひいては「f.換気流量」を決めるサブファクターとしては、主に下記f1~f4が挙げられる。
f1.空気取り入れ口14から空気排出口15までの高低差h13
f2.通気層13の流路断面積
f3.空気取り入れ口14の開口面積
f4.空気排出口15の開口面積
【0021】
<建物内煙突構造3の設計方法>
図2のフローチャートに示すように、建物内煙突構造3は、次のようにして設計される。
設計にあたっては建物内煙突構造3の所定の高さhsにおいて内側から外側へ熱が定常的に伝わっているものとする。前記所定の高さhsは、好ましくはシャフト10の中間高さより上側部分に設定し、より好ましくはシャフト10の上端部近く(空気排出口15の少し下)に設定する。
前記所定高さhsにおける熱の伝わりを解析する。解析は、フーリエの法則などの熱伝導の基本式及びニュートンの冷法則などの熱対流の基本式を応用した演算式を組み込んだ解析プログラムを搭載したコンピュータによって行うことが好ましい。
【0022】
<設計伝熱条件の設定>
解析にあたって、建物内煙突構造3の所定高さhsにおける内外方向への定常的な熱の伝わり度合いに関する設計伝熱条件を設定する。すなわち、前述したファクターa~iの少なくとも一部を設計伝熱条件として設定する(ステップ101)。
a.煙突20の内面での熱伝達率は、内面材22の材質によって決まる。したがって、内面材22の材質を選定することによって、煙突20の内面での熱伝達率が設定される。
b.煙突20の熱伝導率は、主として、煙突20の主壁材21の断熱材質によって決まる。したがって、主壁材21の材質を選定することによって、煙突20の熱伝導率が設定される。
c.煙突20の厚みは、ステップ101においては、所要の煙突機能を果たす範囲内ないしは経験的な範囲内の暫定的な値を任意に設定する。
d.煙突20の外面での熱伝達率は、外面材23の材質によって決まる。したがって、外面材23の材質を選定することによって、煙突20の面での熱伝達率が設定される。
e.煙突20及びシャフト10の断面形状及び寸法は、建物1の設計情報に従って設定する。
【0023】
f.換気流量については、ステップ101においては、シャフト10及び煙突20の断面形状及び寸法、空気取り入れ口14と空気排出口15との高低差h13、空気取り入れ口14の開口面積、空気排出口15の開口面積などを勘案して、シャフト10を冷やすのに必要な「必要換気流量Q13s」を設定しておく。
f1.高低差h13は、建物1の設計情報に従って設定される。
f2.通気層13の流路断面積は、シャフト10及び煙突20の断面形状及び寸法によって決まる。
f3.空気取り入れ口14の開口面積については、ステップ101においては、暫定的な値を設定しておく。
f4.空気排出口15の開口面積についても、ステップ101においては、暫定的な値を設定しておく。これによって、演算処理を簡単化できる。
【0024】
g.シャフト10の内面での熱伝達率は、シャフト10の材質すなわちシャフト10を構成するコンクリートの種類(普通コンクリートなのかALCなのか等)によって決まる。
h.シャフト10の熱伝導率についても、シャフト10を構成するコンクリートの種類によって決まる。したがって、シャフト10を構成するコンクリートの種類を選定することによって、シャフト10の内面での熱伝達率及びシャフト10の熱伝導率が設定される。
i.シャフト10の厚みは、建物1の設計情報に従って設定される。
煙突20の各要素21~23の材質及びシャフト10を構成するコンクリートの種類(材質)と熱伝導率とを紐付けたデータベースをコンピュータに格納しておき、材質を入力したら熱伝導率が読み出されるようにしてもよい。
【0025】
<排煙ガスの想定温度の設定>
また、煙道29を通る排煙ガスgの想定温度tgsを設定する(ステップ102)。想定温度tgsは、排煙放出設備2の種類等を考慮して、例えばtgs=35℃~650℃の温度範囲で設定する。前記温度範囲内の数℃~数十℃置きに、想定温度tgsを複数設定してもよい。前記温度範囲における高温側の温度を想定温度tgsとしてもよい。
【0026】
<シャフトの予想温度算出>
排煙ガスgの想定温度tgsと設計伝熱条件a~iとに基づいて、所定高さhsにおける煙突20の内面及び外面、並びにシャフト10の内面及び外面の予想温度を算出する(ステップ103)。
排煙ガスgの温度及び設計伝熱条件a~iの値が決まれば、フーリエの法則などの熱伝導の基本式及びニュートンの冷法則などの熱対流の基本式を応用した演算式によって、煙突20の内面温度t22、煙突20の外面温度t23、シャフト10の内面温度t12、シャフト10の外面温度t13が求まる。
【0027】
<最適化工程>
さらに、シャフト10の外面の予想温度t13が所定温度t13s以下(t13≦t13s)となるよう、設計伝熱条件のうち「b.煙突の熱伝導率」又は「c.厚み」の最適値を求める(ステップ104)。すなわち、煙突20の主壁材21を構成する断熱材の材質(又はグレード)を選定したり、主壁材21の厚みを設定変更したりすることによって、t13≦t13sとなるよう調整する。シャフト10などの建物躯体の設計変更をする必要はない。
【0028】
<判定工程>
前記最適化工程後すなわち煙突20の熱伝導率又は厚みを最適値としたときの空気排出口15での予想空気温度t15を算出する(ステップ105)。予想空気温度t15は、排煙ガス想定温度tgs、煙突20の断面形状及び大きさ、煙突20の熱伝導率、煙突20と通気層13との熱伝達率、通気層13とシャフト10との間の熱伝達率、シャフト10の断面形状及び大きさ、シャフト10の熱伝導率、外気温度(常温)、空気取り入れ口14から空気排出口15までの高低差h13をファクターとして含む熱伝導・熱対流の演算式によって求めることができる。
好ましくは、ステップ105においては、排煙ガスgの想定温度tgsを前記温度範囲内の最も高い温度に設定したときの、空気排出口15での予想空気温度t15を算出することが好ましい。
【0029】
さらに、空気取り入れ口14と空気排出口15との間の予想温度差(Δt13=t15-t14)を算出する(ステップ106)。空気取り入れ口14における空気温度t14は、外部温度とほぼ等しいと考えることができ、例えばt14=25℃~35℃の範囲で設定しておく。
【0030】
続いて、空気取り入れ口14と空気排出口15との間の高低差hs及び予想温度差Δt13、並びに空気取り入れ口14及び空気排出口15の開口面積に基づいて通気層13の換気流量Q13を再算出する(ステップ107)。
そして、換気流量算出値Q13が必要換気流量Q13s以上であるか否かを判定する(ステップ108)。Q13≧Q13sであれば、設定伝熱条件a~iは許容範囲にあり、煙突構造設計は良好であると認定できる。すなわち、建物内煙突構造3を実際に可動したとき、シャフト10の外面温度を許容温度以内に抑えることができる。これによって、排煙ガスgの熱による建物1の高温化を防止することができる。
【0031】
<再最適化工程>
Q13<Q13sのときは、煙突構造設計は不良であるから、煙突20の熱伝導率又は厚みを「t13≦t13s」が維持される範囲内で再度調節することで、Q13≧Q13sとなるようにする(ステップ104~108)。
【0032】
<開口面積設定工程>
煙突20の熱伝導率又は厚みの調節だけでは、Q13≧Q13sとすることが難しい場合には、空気取り入れ口14の開口面積を設定変更したり、空気排出口15の開口面積を設定変更したりしてもよい。
空気取り入れ口14及び空気排出口15の開口面積の少なくとも一方を変更することによって、通気層13の換気流量を変更でき、Q13≧Q13sとすることができる。シャフト10などの建物躯体の設計変更をする必要はない。
【0033】
<建物内煙突構造の実際的モデル>
図3に示すように、実際の建物内煙突構造3Aにおける煙突20Aは、複数の煙突ユニット25によって構成されている。これら煙突ユニット25が上下に積層されている。煙突ユニット25は、建物1のフロアごとに設けられている。建物1の各フロアスラブ5には、シャフト10内へ突出する張り出し部5bが設けられている。各煙突ユニット25が、対応するフロアスラブ5の張り出し部5bに、支持アーム26を介して支持されている。張り出し部5bが煙突20の点検用通路として用いられる場合もある。張り出し部5bによって、通気層13の断面積が狭くなっており、通気層13に中間狭隘部13cが形成されている。
【0034】
<中間狭隘部流路断面積設定工程>
煙突20の熱伝導率又は厚みの調節だけでは、Q13≧Q13sとすることが難しい場合、ないしは、空気取り入れ口14又空気排出口15の開口面積を調節してもQ13≧Q13sとすることが難しい場合には、中間狭隘部の流路断面積を設定変更することによって、Q13≧Q13sとなるようにしてもよい。
例えば、張り出し部5bの張り出し量を調整することによって、通気層13の換気流量を変更でき、Q13≧Q13sとなるようにできる。
【0035】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、シャフト10の内面温度が所定温度以下となるように、煙突の熱伝導率又は厚みを調節してもよい。
ステップ101~ステップ102の順序は、適宜入れ替えることができる。
煙突20の熱伝導率又は厚み、空気取り入れ口14の開口面積、空気排出口15の開口面積等の調整によって通気層13の自然換気だけで必要換気流量Q13s以上の換気流量を得ることが難しい場合には、通気層13を強制換気させるファン、ブロアなどの強制換気手段を設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、例えば商業ビル、工場等の建物に設けられた煙突構造に適用できる。
【符号の説明】
【0037】
g 排煙ガス
1 建物
2 排煙放出設備
3,3A 建物内煙突構造
4 ガス導入管
5 フロアスラブ
5b 張り出し部
10 シャフト
13 通気層
13c 中間狭隘部
14 空気取り入れ口
15 空気排出口
20,20A 煙突
21 主壁材
22 内面材
23 外面材
25 煙突ユニット
26 支持アーム
29 煙道