(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023104195
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】微小異物分離装置
(51)【国際特許分類】
A23L 17/60 20160101AFI20230721BHJP
【FI】
A23L17/60 103C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022005051
(22)【出願日】2022-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】391008294
【氏名又は名称】フルタ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083068
【弁理士】
【氏名又は名称】竹中 一宣
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100165489
【弁理士】
【氏名又は名称】榊原 靖
(72)【発明者】
【氏名】古田 成広
(72)【発明者】
【氏名】山内 宏則
(72)【発明者】
【氏名】鰐部 幸政
【テーマコード(参考)】
4B019
【Fターム(参考)】
4B019LT04
(57)【要約】
【課題】
海苔に付着する微小異物、又は各種の海苔製造機器か、その部品に付着する微小異物を、有効かつ確実に取り除ける微小異物分離装置に関し、改良の余地がある。
【解決手段】
本発明は、海苔製造機器の適所に配備された一基、又は数基の微小異物分離装置であって、
微小異物分離装置は、搬送用ブラシを配備し、
ブラシの先端部位は、微小異物分離装置のパンチング筒内周面に接触し、かつ先端部位は、内周面に摺り合う関係を維持し、かつこの摺り合う関係を利用し、海苔の面・内周面に付着する微小異物を剥離可能とする、微小異物分離装置である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海苔製造工程内に配置し、生海苔混合液中から異物を分離除去する生海苔異物分離除去装置の後工程に配置され、
前記生海苔異物分雛除去装置の隙間を通過した微小異物を分離除去する微小異物分離装置は、
ハウジングに配備したパンチング筒と、
このパンチング筒に配備し、かつブラシを植設した回転自在のブラシ筒と、
前記ハウジングに配備した海苔排出口と、
を備え、
前記ブラシ筒の前記ブラシが前記パンチング筒の内周面に接触可能とし、
このパンチング筒の周囲に水位調整用手段を配設した、
構成とした微小異物分離装置。
【請求項2】
海苔製造機器内に配備された一基、又は数基の微小異物分離装置であって、
この微小異物分離装置は、
ハウジングに配備したパンチング筒と、
このパンチング筒に備えた回転自在のブラシと、
このブラシの先端部位に接触する、前記パンチング筒の内周面と、
で構成されており、
前記ブラシは、前記パンチング筒内を流れる海苔の表面、及び前記内周面に接触し、
前記海苔表面、この海苔間、及び/又は、前記パンチング筒の海苔混合液中に有る微小異物を分離可能、及び/又は、前記パンチング筒の通水性を確保可能とする、
構成とした微小異物分離装置。
【請求項3】
前記ハウジングに水位調整手段を設け、この水位調整手段を操作し、前記ハウジングの水位、及び/又は、前記パンチング筒の水位を調整可能とした請求項1に記載の微小異物分離装置。
【請求項4】
前記ハウジングに沈殿ゴミ除去壁をセットし、この沈殿ゴミ除去壁の下端と、前記ハウジングの内底との間の通路から沈降性ゴミを流し、前記ハウジング内の前記沈降性ゴミを、前記微小異物分離装置外に排出可能とした請求項3に記載の微小異物分離装置。
【請求項5】
前記微小異物分離装置は、前記ブラシを備え、
このブラシの先端部位は、前記パンチング筒の内周面に接触し、
このブラシの基端部位に対して、前記先端部位は、回転方向に偏倚する構成とした請求項1、又は請求項2に記載の微小異物分離装置。
【請求項6】
前記偏倚は、前記ブラシの回転方向に対し、負のすくい角、又は、正のすくい角にする構成とした請求項5に記載の微小異物分離装置。
【請求項7】
前記負のすくい角、又は前記正のすくい角の前記ブラシに、垂直ブラシを組み合わせる構成とした請求項6に記載の微小異物分離装置。
【請求項8】
前記ブラシ、及び/又は、垂直ブラシは、正回転、及び/又は、逆回転を繰り返す構成とした請求項1に記載の微小異物分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海苔の表面等の微小異物、及び/又は、海苔混合液中の微小異物を、分離除去できる微小異物分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の微小異物分離装置は、本出願人が提案する「フルタ小異物除去機」とか、類似の機器が市場に出ており、例えば、ブラシとパンチング筒を利用した微小異物分離装置である。
【0003】
これらの微小異物分離装置は、主に、例えば、海苔に付着する微小異物を分離除去するには、十分とは言えなかった。なお、この種の業界では、微小異物を、一般的に、小ゴミと称する。
【0004】
先行文献によれば、海苔洗浄脱水機(微小異物分離装置に類似する)は、ミンチ状に切断された海苔を、洗浄、及び脱水しつつ、副次的に、海苔に付着した微小異物を取り除く機構である。例えば、特開平9-271367号公報が挙げられる(文献(1))。この文献(1)は、螺旋状の搬送脱水ブラシの働きで、下から上に海苔を搬送しつつ、洗浄脱水する機器である。
【0005】
この文献(1)は、縦ブラシ洗浄であり、パンチング筒外に排出された水は、そのまま排水口から排出され、溜まらない構造である。従って、パンチング筒内は上へ行く程、水分量が減り、海苔同士がくっ付き、微小異物の分離が悪くなる。また、ブラシが海苔に強く当たり過ぎて、海苔の軟らかい時期(後述する、一番海苔)に使用すると、海苔を傷めるという問題がある。そして、ブラシ内から水を噴射させているが、水は、すぐにパンチング筒外へ流れ出てしまうため、問題は解消にはならない。漁期の最初に採取する海苔(一番海苔と云われている)は良質で軟らかく単価も高い。しかしながら、藁・屑等の細かい異物のもっとも多い時期と重なり、微小異物の混入により等級の下落が発生している。この時期に微小異物分離装置を稼動させることができれば、異物混入による等級の下落を防げる。
【0006】
本発明は、少なくとも、この時期の海苔(生海苔)に付着する微小異物を、分離除去できる、微小異物分離装置(微小異物分離・除去装置)の提供であって、混合液中、海苔に付着する微小異物を、極めて、少なくすること(微小異物を、略0とする)を意図する。
【0007】
また、近年、食品衛生の品質向上、注意喚起向上と、その厳格化傾向(異物検査厳格化)から、海苔業界も同様に、異物検査機器の高度化(精度向上)に移行し、微小異物に関し、従来の異物と同様な取り扱いが行われる傾向である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来のブラシ洗浄機においては、水は、排水口から排出され、パンチング筒外に排出されるので、溜まらない構造である。それが為、海苔と水の混合液中は、出口に近づくに従って、急速に水分がなくなり、このため海苔同士が密着し、密着面の洗浄が行われず、密着間に挟まった微小異物が分離されなくなる。また、ブラシ洗浄機においては、ブラシが海苔に強く当たり易く、例えば、海苔の軟らかい時期(例えば、一番海苔)に使用すると、海苔を傷めるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記に鑑み、本発明では、下記の構造を提案し、海苔同士の密着を防ぎ、微小異物のすり抜けと、微小異物を効率よく排出する。また、柔らかい時の海苔、例えば、一番海苔に使用しても、海苔を痛めず、かつ乾海苔の艶維持と、品質低下(等級低下)回避等を図り、例えば、一番海苔においても、上記目的達成と、乾海苔の微小異物を、極力少なくする、望ましくは、略0に近くにすることにある。
1) 排水方式の変更、
パンチング筒外に排出された水を溜めるため、例えば、高さ可変式のパイプや壁板を設けてオーバーフロー式排水にする。これにより、パンチング筒内の海苔はパイプや隔壁よりも下の部分は水中となり、海苔の密着状態を回避する(海苔を混合液中に浮遊させる)ことができる。但し、高さ可変式のパイプや壁板を用いて水位をある程度保ったまま使用すると、底部に微小異物を含む異物が沈殿・滞留する可能性があるため、沈殿ゴミ除去壁を設ける。この沈殿ゴミ除去壁により、排水は必ず最低部の排水口(排水路入口)を通ってから排出されることで、沈殿・滞留している異物を、排水とともに押し流すことができる。
2) ブラシ(回転ブラシ)の変更、
(イ) 負のすくい角(偏倚ブラシ)の採用であって、ブラシに、ブラシ回転方向に負のすくい角をつける。例えば、通常ブラシ(市場のブラシ)では垂直であるが、本発明の負のすくい角のブラシに当たった海苔は外周面に運ばれる。そのためにパンチング筒の内周面、及び/又は、多数の孔に押し付けられることになり、ブラシとパンチング筒の内周面、及び/又は、多数の孔・壁面(以下、内周面とする)との摩擦で汚れが除去される。但し、押し付け力があると軟らかい海苔(例えば、一番乗り)の場合は傷める可能性がある。主に海苔の傷みが心配ないときに使用することが良い。
(ロ) 正のすくい角(偏倚ブラシ)の採用であって、ブラシに、ブラシ回転方向に正のすくい角をつける。例えば、従来例では、この種のブラシに於いては、垂直だが、正のすくい角を付けると、ブラシに当たった海苔はブラシ基端部に運ばれる。そのためパンチングに押し付けられることは少なくなり、海苔を傷めにくくなる。但し、洗浄力も弱くなる。軟らかい傷みやすい海苔(一番乗り)に使用することが良い。
3) 2種類の2条ブラシ形態、
望ましくは、1条は負のすくい角のブラシ、その他の1条は垂直のブラシとする。全てのブラシが負のすくい角ブラシだと、パンチング筒の内周面、及び/又は、多数の孔に海苔が貼りついてしまう可能性があるが、1条を垂直ブラシとすることで、海苔をパンチング筒の内周面、及び/又は、多数の孔に押し付けず上に運ぶことができ、貼りつきを防止できる。又は、1条は正のすくい角のブラシ、その他の1条は垂直のブラシとする。前記ブラシの組合せで、海苔の傷みを回避しつつ、洗浄力を調整できる。
4) ブラシの正転・逆転運転
正転逆転運転を組み合わせることで、パンチング筒内の滞留時間を延長し、洗浄力を増す。
5) 沈殿ゴミ除去壁
排水シャッタ手前に、下部に通路を設けた壁を設置し、この下部通路に沈澱する微小異物等のゴミを吸い上げ、排出し易くする。
6) 海苔の表面を含め、海苔間にある微小異物を分離除去することにある。
【0011】
以上のことを、個々に達成することにある。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明では、前述の1)を達成することにあり、
海苔製造工程内に配置し、生海苔混合液中から異物を分離除去する生海苔異物分離除去装置の後工程に配置され、
生海苔異物分雛除去装置の隙間を通過した微小異物を分離除去する微小異物分離装置は、
ハウジングに配備したパンチング筒と、
パンチング筒に配備し、かつブラシを植設した回転自在のブラシ筒と、
ハウジングに配備した海苔排出口と、
を備え、
ブラシ筒のブラシがパンチング筒の内周面に接触可能とし、
パンチング筒の周囲に水位調整用手段を配設した、
構成とした微小異物分離装置である。
【0013】
請求項2の発明では、請求項1の効果を達成することにあり、
海苔製造機器内に配備された一基、又は数基の微小異物分離装置であって、
微小異物分離装置は、
ハウジングに配備したパンチング筒と、
パンチング筒に備えた回転自在のブラシと、
ブラシの先端部位に接触する、パンチング筒の内周面と、
で構成されており、
ブラシは、パンチング筒内を流れる海苔の表面、及び内周面に接触し、
海苔表面、海苔間、及び/又は、パンチング筒の海苔混合液中に有る微小異物を分離可能、及び/又は、パンチング筒の通水性を確保可能とする、
構成とした微小異物分離装置である。
【0014】
請求項3の発明では、請求項1の効果を達成することにあり、
ハウジングに水位調整手段を設け、水位調整手段を操作し、ハウジングの水位、及び/又は、パンチング筒の水位を調整可能とした微小異物分離装置である。
【0015】
請求項4の発明では、請求項3の効果を達成することにあり、
ハウジングに沈殿ゴミ除去壁をセットし、沈殿ゴミ除去壁の下端と、ハウジングの内底との間の通路から沈降性ゴミを流し、ハウジング内の沈降性ゴミを、微小異物分離装置外に排出可能とした微小異物分離装置である。
【0016】
請求項5の発明では、請求項1の効果を達成することにあり、
微小異物分離装置は、ブラシを備え、
ブラシの先端部位は、パンチング筒の内周面に接触し、
ブラシの基端部位に対して、先端部位は、回転方向に偏倚する構成とした微小異物分離装置である。
【0017】
請求項6の発明では、請求項5の効果を達成することにあり、
偏倚は、ブラシの回転方向に対し、負のすくい角、又は、正のすくい角にする構成とした記載の微小異物分離装置である。
【0018】
請求項7の発明では、請求項6の効果を達成することにあり、
負のすくい角、又は正のすくい角のブラシに、垂直ブラシを組み合わせる構成とした微小異物分離装置である。
【0019】
請求項8の発明では、請求項1の効果を達成することにあり、
ブラシ、及び/又は、垂直ブラシは、正回転、及び/又は、逆回転を繰り返す構成とした微小異物分離装置である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】水位調整シャッタ(水位調整筒)を備えた微小異物分離装置の概念図
【
図2】水位調整シャッタと、沈降性ゴミ除去壁を備えた微小異物分離装置の概念図
【
図3】正の偏倚ブラシと海苔との関係を説明した拡大横断面図
【
図4】負の偏倚ブラシと海苔との関係を説明した拡大横断面図(溜まった海苔がブラシで押し付けられやすい)
【
図5】水位調整バルブと、沈降性ゴミ除去壁を備えた微小異物分離装置の概念図(一部断面図)
【
図6】従来の垂直ブラシの拡大横断面図(溜まった海苔がブラシで押し付けられる)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の各実施例を説明する。各実施例は、好ましい一例であり、各実施例の説明、及び/又は、図面に限定されない。そして、以下に、説明、及び/又は、示した、発明の趣旨・範囲において構成の一部を変更する構造、又は同じ特徴と効果を達成できる構造、等は、当然、本発明の範疇である。そして、本発明では、微小異物に関し、対応可能とする微小異物分離(・除去)装置の提供である。
【0022】
図1、
図2、及び
図3において、図中Aは、縦置き型微小異物分離装置であり、この縦置き型微小異物分離装置Aは、ハウジング2に設けた海苔排出口1(ゴミを除去した処理済海苔の排出口、以下同じ)を備えた円筒形状や角形のハウジング2と、ハウジング2に内設した後述する多数の孔500を備えたパンチング筒5と、パンチング筒5の周壁5aの内周面5bと、この周壁5aに開設した多数の孔500に先端部6aが摺接するブラシ6を備えたブラシ筒7と、ハウジング2の一方側(一例である)に設けた水位調整用のシャッタ8と、その他方側(一例である)に設けた排水口10と、このシャッタ8とパンチング筒5との間に設けた沈降性ゴミ除去壁13と、この沈降性ゴミ除去壁13の下端に設けた流れ14(通路3)と、で形成されている。このハウジング2には、当該ハウジング2に設けた導入口(導入管)11から海苔と海水(海苔混合物)が、パンチング筒5内に供給され、孔500から海水がパンチング筒5外へ流れ出すことで、ハウジング2にはシャッタ8で規定された上位水位まで海水が充填される。図中20は、洗浄水入口であり、パンチング筒5内に、海水、及び/又は、清水等を供給し、パンチング筒5の清掃、主に、ゴミ等の排出を促す。この洗浄水入口20に繋がるブラシ筒7には、清浄水噴出口7aを備えており、清浄水がパンチング筒5に供給される。このパンチング筒5の海苔混合液(海苔と海水、又は水等の混合物)中で浮遊する海苔から、この状態を利用し、微小異物を分離することが、本発明の構造である。そして、海苔と微小異物、及び海苔混合液は、モータ12で回転するブラシ筒7とブラシ6の働きで、下から上へと、順次搬送されつつ洗浄され、微小異物を分離した後、ハウジング2の上方に設けた海苔排出口1より、排出される。
【0023】
図1、
図2に示した水位調整手段、すなわちハウジング2内の水位調整は、水位調整棒21と、そのロック手段21aにより、シャッタ8を上下動して決められる。
図2では、ハウジング2に配備した沈降性ゴミ除去壁13で形成される通路3を、排水、ゴミ等が流れる(流れ14)。即ち、この流れ14を作ることで、シャッタ8からオーバーフローさせ、非沈降性のゴミとともに、通路3にある沈降性ゴミも共に排除される。沈降性ゴミ除去壁13の配備と、流れ14で、沈降性ゴミを、シャッタ8の上部方向に誘導する。併せて、例えば、重い沈降性ゴミは、流れ14の内底面に沈降し易いことを利用する。また、
図5に示した水位調整手段、ハウジング2内の水位調整は、バルブ22とレバー22aの組合せであって、バルブ22の開閉を利用し、シャッタ8の替りとなる壁板8aを備えた構造である。その他は、前述の例に準ずる。
【0024】
次に、ブラシ6の構造の一例を、
図3と
図4を基に説明する。
図3は、正のすくい角ブラシ600の拡大横断面図で、この例では、前述の如く、正のすくい角αを付けると、正のすくい角ブラシ600に当たった海苔は、基端部6bに運ばれる。そのためパンチング筒5に押し付けられることは少なくなり、海苔を傷めにくくなる。即ち、正のすくい角ブラシ600の先端には、海苔が溜まらず、傷を付けないことが理解できる。この正のすくい角αとは、例えば
図6において、通常ブラシ(垂直ブラシ)はブラシ筒7に対して垂直であるのに対し、正のすくい角ブラシ600は、パンチング内周面5bと直交する線Xに対し、すくい角αを備えたブラシである。また、
図4は、負のすくい角ブラシ601の拡大横断面図を示しており、原則として、この負のすくい角ブラシ601では、角度βをつける(負のすくい角β)。例えば、前述の通り、通常ブラシはブラシ筒7に対して垂直であるのに対し、負のすくい角ブラシ601は、直交する線Xに対し、負のすくい角βを備えたブラシである。負のすくい角(傾斜角)βをつけた負のすくい角ブラシ601に当たった海苔は、パンチング筒5の内周面5b方向に運ばれる。この際に、海苔は、パンチング筒5の内周面5b、及び/又は、多数の孔500(以下、孔500とする)・壁面に押し付けられることになり、内周面5b、及び/又は、多数の孔500・壁面との摩擦で汚れが除去される。ただし海苔が柔らかい時期は海苔を傷める恐れがあり、垂直ブラシ(
図6)や、正のすくい角ブラシ600との使い分けをおこなう。
【0025】
また、押し付け力があると孔500から海苔が押し出されて外に漏れる可能性がある。その解決策として、例えば、孔500ではなく微小な凹凸のある板(透水性なしの筒体)を用いて適度な摩擦で海苔を擦るようにすることも可能である。しかし、この方法では、パンチング筒5外に水が流れないために、孔500の高さ方向(例えば、
図1において、パンチング筒5の上下方向)で、透水性のある部分と無い部分を造り分けることも考えられる。
【0026】
また、ブラシ6(ブラシの形態)を、2種類の2条ブラシ(例えば、負のすくい角ブラシ601と垂直ブラシ(
図6)の組合せ)とすることも可能である。全てのブラシ6が負のすくい角ブラシ601だと、内周面5b、及び/又は、多数の孔500に海苔が貼りついてしまう可能性があるが、1条を垂直ブラシ(
図6)とすることで、貼りついた海苔を上に運ぶことができ、貼りつき防止と、洗浄力を両立できる。
【0027】
ブラシ6、6等を、正転・逆転運転することで、パンチング筒5内の滞留時間を延長し、洗浄力を増すという形態も可能である。
【0028】
更に、ブラシ6を複数本とし、ブラシ6、6等を、それぞれ正転・逆転運転することも可能とする。この正転逆転運転を組み合わせることで、パンチング筒5内の滞留時間を延長し、洗浄力を増すという形態も可能である。
【0029】
また、横置き型微小異物分離装置B(図示しない)も可能であり、構造は、前述した縦置き型微小異物分離装置Aに準ずる。この横置き型微小異物分離装置Bは、設置面積が、縦置き型微小異物分離装置Aに比し、やや大きい。その他として、縦置き型微小異物分離装置Aは、海苔機器に掛置き(引掛け、吊下げ等)方式もできて重宝する(機材の節約化)。横置き型微小異物分離装置Bは、図示しないが、水平式に限定されず、傾斜方式も可能であり、前述の設置面積減少化、他の海苔機器を活用し、設置器具の省略化等の特典もある。
【0030】
本発明の微小異物分離装置A又はBを用いた微小異物除去動作の流れを説明すると、下記のようになる。
1.導入口(導入管)11から、微小異物混じりの海苔と水の混合液を、パンチング筒5内へ送り込む。
2.パンチング筒5とブラシ筒7の間に、海苔と水の混合液が流れ込む。
3.海苔と水の混合液が流れ込むパンチング筒5内の通路にはブラシ6が回転していて、海苔の表面、周面、辺とか、重なり面等とブラシ6との接触により、内周面5b、及び/又は、水中に浮遊する海苔表面の微小異物や珪藻が海苔から分離する。
4.微小異物や珪藻は、シャッタ8よりも内側の位置では水位を保ったまま洗浄し、海苔が水中を漂い(海苔が浮遊した状態で)、海苔同士が密着することがなく自由に動くことができるため、パンチング筒5の孔500からパンチング筒5外へ効率よく流れ出す(ブラシ筒7内に水を供給するタイプではブラシ筒7に設けた多数の清浄水噴出口7aから水を噴出させ、微小異物や珪藻の、パンチング筒5外への排出を促進する)。
5.ブラシ6の回転による水圧で内周面5bに張り付く海苔を移動させる得る故、孔500の通水性は常時確保される。これにより、例えは、微小異物の排出を促進できる。
6.一部の海苔は水圧でパンチング筒5の内周面5bに張り付くが、ブラシ6の回転により、先端部6aと内周面5bにはさまれる形で接触し、少なくとも、海苔表面の微小異物や珪藻の分離が促進される。
7.螺旋状に配置したブラシ6の旋回と水流により、海苔は清浄化されながら上方へ運ばれる。
8.流れ出した微小異物や珪藻は、パンチング筒5外周面と沈降性ゴミ除去壁13(なしの場合もあり)の隙間を通り、通路3の内底面に沈殿した微小異物や珪藻、細かい海苔片を吸い下げながら流れ14の水流とともにシャッタ8の方向に誘導され、排水口10を経て排出される。
9.上方へ運ばれた清浄な海苔は、水面より出て、上昇する際に、ブラシ6上に載り、かつブラシ6の上昇で、海苔排出口1に至り、外部に送り出される。尚、パンチング筒5のブラシ6で上昇した海苔は、パンチング筒5の上部に配備した、図示しない、排出スクリューの回転で、海苔排出口1から出て、次工程へ送られる。
【0031】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態および変形が可能とされる。従って、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【符号の説明】
【0032】
A 縦置き型微小異物分離装置(微小異物除去洗浄機)
B 横置き型微小異物分離装置(微小異物除去洗浄機)
1 海苔排出口
2 ハウジング
3 通路
5 パンチング筒
500 孔
5a 周壁
5b 内周面
5c 外周面
6 ブラシ
6a 先端部
6b 基端部
600 正のすくい角ブラシ
601 負のすくい角ブラシ
7 ブラシ筒
7a 洗浄水噴出口
8 シャッタ
8a 壁板
10 排水口
11 導入口(導入管)
12 モータ
13 沈降性ゴミ除去壁
14 流れ
20 洗浄水入口
21 水位調整棒
21a ロック手段
22 バルブ
22a レバー
α 正のすくい角
β 負のすくい角