(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023104196
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】部材の接合構造ならびに電池モジュールおよび電池パック
(51)【国際特許分類】
B23K 26/28 20140101AFI20230721BHJP
H01M 50/503 20210101ALI20230721BHJP
H01M 50/516 20210101ALI20230721BHJP
B23K 26/21 20140101ALI20230721BHJP
【FI】
B23K26/28
H01M50/503
H01M50/516
B23K26/21 N
B23K26/21 G
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022005055
(22)【出願日】2022-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 敬
(72)【発明者】
【氏名】田中 知実
【テーマコード(参考)】
4E168
5H043
【Fターム(参考)】
4E168BA02
4E168BA14
4E168BA21
4E168KA17
5H043AA01
5H043CA22
5H043FA04
5H043FA26
5H043FA37
5H043HA17F
5H043JA04F
5H043JA21F
5H043LA02F
5H043LA11F
(57)【要約】
【課題】接合強度を確保しながら接合時の熱影響を低減させることが可能な部材の接合構造ならびに電池モジュールおよび電池パックを提供する。
【解決手段】部材の接合構造は、第1部材と、第1部材と重ねられた重ね合わせ部分、および重ね合わせ部分から第1の方向に沿って張り出す張出部分を含む板状の第2部材とを備える。重ね合わせ部分において第1部材と第2部材とが溶接または溶着により接合される接合部が形成される。接合部は、張出部分に対して逆側に位置する切り欠き部を含む。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材と、
前記第1部材と重ねられた重ね合わせ部分、および前記重ね合わせ部分から第1の方向に沿って張り出す張出部分を含む板状の第2部材とを備え、
前記重ね合わせ部分において前記第1部材と前記第2部材とが溶接または溶着により接合される接合部が形成され、
前記接合部は、前記張出部分に対して逆側に位置する切り欠き部を含む、部材の接合構造。
【請求項2】
前記切り欠き部が囲む領域の面積は、前記接合部の面積よりも小さい、請求項1に記載の部材の接合構造。
【請求項3】
前記第1の方向に直交する第2の方向に沿った前記接合部の全幅(D1)は、前記第2の方向に沿った前記切り欠き部の幅(D2)の2倍以上6倍以下である、請求項1または請求項2に記載の部材の接合構造。
【請求項4】
前記第1の方向に沿った前記接合部の全幅(H1)と前記切り欠き部の幅(H2)との差(H1-H2)は、前記第2部材の板厚(T)の1.4倍以上4倍以下である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の部材の接合構造。
【請求項5】
前記接合部は略C字状に形成される、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の部材の接合構造。
【請求項6】
前記第1部材としての電極端子を含む電池セルと、
前記第2部材としてのバスバーとを備え、
前記電極端子と前記バスバーとの接合構造として請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の部材の接合構造を含む、電池モジュール。
【請求項7】
ケースと、
前記ケースに収納された請求項6に記載の電池モジュールとを備えた、電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、部材の接合構造ならびに電池モジュールおよび電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の部材を重ね、溶接などにより接合することが従来から行われている。従来の重ね継手構造として、たとえば国際公開第2017/131186号(特許文献1)、特開2010-158717号公報(特許文献2)、および特開2002-079387号公報(特許文献3)に記載のものが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2017/131186号
【特許文献2】特開2010-158717号公報
【特許文献3】特開2002-079387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
接合強度を増大させる観点からは、溶接ないし溶着による接合部の面積を大きくしたいという要請がある。他方、溶接ないし溶着のための熱影響(蓄熱)がクラック等の接合不良に繋がり得るという懸念から、接合部の面積をできるだけ小さくしたいという要請もある。従来の重ね継手構造は、上述の背反する2つの要請を満たすという観点から、必ずしも十分なものとはいえない。
【0005】
本技術の目的は、接合強度を確保しながら接合時の熱影響を低減させることが可能な部材の接合構造ならびに電池モジュールおよび電池パックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本技術に係る部材の接合構造は、第1部材と、第1部材と重ねられた重ね合わせ部分、および重ね合わせ部分から第1の方向に沿って張り出す張出部分を含む板状の第2部材とを備える。重ね合わせ部分において第1部材と第2部材とが溶接または溶着により接合される接合部が形成される。接合部は、張出部分に対して逆側に位置する切り欠き部を含む。
【0007】
本技術に係る電池モジュールは、第1部材としての電極端子を含む電池セルと、第2部材としてのバスバーとを備え、電極端子とバスバーとの接合構造として上述の部材の接合構造を含む。
【0008】
本技術に係る電池パックは、ケースと、ケースに収納された上述の電池モジュールとを備える。
【発明の効果】
【0009】
本技術によれば、荷重が作用した際の応力が高い部分に選択的に接合部分を形成することにより、接合強度を確保しながら接合時の熱影響を低減させることが可能な部材の接合構造ならびにそれを備えた電池モジュールおよび電池パックを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】電池セルを含む電池モジュールを収納するケースの外観図である。
【
図5】電極端子とバスバーの接合構造を示す斜視図である。
【
図6】接合部と力点との位置関係を示す図(その1)である。
【
図7】接合部と力点との位置関係を示す図(その2)である。
【
図8】接合部と力点との位置関係を示す図(その3)である。
【
図9】接合部と力点との位置関係を示す図(その4)である。
【
図10】接合部と力点との位置関係を示す図(その5)である。
【
図11】接合部の形状について説明するための図(その1)である。
【
図12】接合部の形状について説明するための図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本技術の実施の形態について説明する。なお、同一または相当する部分に同一の参照符号を付し、その説明を繰返さない場合がある。
【0012】
なお、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本技術の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、以下の実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本技術にとって必ずしも必須のものではない。また、本技術は、本実施の形態において言及する作用効果を必ずしもすべて奏するものに限定されない。
【0013】
なお、本明細書において、「備える(comprise)」および「含む(include)」、「有する(have)」の記載は、オープンエンド形式である。すなわち、ある構成を含む場合に、当該構成以外の他の構成を含んでもよいし、含まなくてもよい。
【0014】
また、本明細書において幾何学的な文言および位置・方向関係を表す文言、たとえば「平行」、「直交」、「斜め45°」、「同軸」、「沿って」などの文言が用いられる場合、それらの文言は、製造誤差ないし若干の変動を許容する。本明細書において「上側」、「下側」などの相対的な位置関係を表す文言が用いられる場合、それらの文言は、1つの状態における相対的な位置関係を示すものとして用いられるものであり、各機構の設置方向(たとえば機構全体を上下反転させる等)により、相対的な位置関係は反転ないし任意の角度に回動し得る。
【0015】
本明細書において、「電池」は、リチウムイオン電池に限定されず、ニッケル水素電池など他の電池を含み得る。本明細書において、「電極」は正極および負極を総称し得る。また、「電極板」は正極板および負極板を総称し得る。
【0016】
図1は、電池セル100を示す斜視図である。
図1に示すように、電池セル100は、平坦面状の略直方体形状に形成されている。電池パック内において、電池セル100はY軸方向(第1の方向)に積層される。
【0017】
電極端子110は、正極端子111と、負極端子112とを含む。正極端子111と負極端子112とは、X軸方向(第2の方向)に並ぶ。電極端子110は、角型の筐体120の上面に設けられている。
【0018】
Z軸方向(第3の方向)に沿って対向する筐体120の上面および底面は、X軸方向が長辺方向、Y軸方向が短辺方向となるような略長方形形状を有する。筐体120には、電極体および電解液が収容されている。筐体120の上面には、ガス排出弁121が設けられている。筐体120内の圧力が上昇したときは、ガス排出弁121が開弁して筐体120内のガスが排出される。
【0019】
なお、本技術に係る電池セルは必ずしも角型の電池セル100に限定されず、たとえば円筒型の電池セルであっても本技術に係る部材の接合構造が適用され得る。
【0020】
図2は、電池パック1の外観図である。
図2に示すように、電池パック1は、ケース200を含む。ケース200は、カバー210と、本体220と、冷却プレート230とを含む。カバー210、本体220、および冷却プレート230は、ケース200の強度を確保するための構造部材を構成する。
【0021】
図3は、ケース200の内部を示す斜視図であり、
図4は、ケース200の内部を示す上面図である。
図3,
図4に示すように、ケース200の内部空間には、複数の電池セル100からなる電池モジュールが収容される。複数の電池セル100は、Y軸方向(第1の方向)に沿って配列されている。複数の電池セル100は、Y軸方向に拘束された状態でケース200の内部空間に収納されている。複数の電池セル100は、バスバー300により電気的に互いに接続される。
【0022】
図5は、電極端子110(第1部材)とバスバー300(第2部材)の接合構造を示す斜視図である。
図5に示すように、バスバー300は、電極端子110と重ねられた重ね合わせ部分310と、重ね合わせ部分310からY軸方向に沿って張り出す張出部分320とを含む。
【0023】
重ね合わせ部分310には、電極端子110とバスバー300とが接合される接合部10が形成される。電極端子110とバスバー300とは、溶接または溶着により接合される。具体的な一例として、接合部10はレーザ溶接または超音波接合により形成されるが、接合部10の形成方法はこれらに限定されない。
【0024】
接合部10は、第1部分10Aと、第2部分10Bとを含むように、略C字状に形成される。
【0025】
第1部分10Aは、Y軸方向に交差する方向に延びる。より具体的には、
図5に示す例において、第1部分10Aは、Y軸方向に直交するX軸方向に延びる。第1部分10Aは、複数に分断されていてもよい。
【0026】
第2部分10Bは、第1部分10Aの両端から張出部分320に対して逆側に向かってY軸方向に延びる。
【0027】
張出部分320には、仮想の力点20がある。力点20には、任意の方向の力が作用し得る。たとえば、隣り合う電池セル100の電極端子110どうしがZ軸方向に位置ずれした場合、力点20にはZ軸方向の力が作用し得る。力点20にZ軸方向の力が作用したとき、重ね合わせ部分310の接合部10には剥離方向の力が作用する。力点20にX軸方向ないしY軸方向の力が作用したとき、重ね合わせ部分310の接合部10にはせん断方向の力が作用する。
【0028】
図6~
図10は、接合部10と力点との位置関係の例を示す図である。
図6,
図7は、比較例に係る接合部10を示し、
図8~
図10は、本実施の形態の実施例に係る接合部10を示す。
【0029】
【0030】
図6,
図7に示す比較例においては、略矩形状の接合部10が形成される。
図8,
図9に示す実施例において、略C字状の接合部10は、X軸方向に延びる第1部分10Aと、第1部分10Aの両端から力点20に対して逆側に向かってY軸方向に延びる第2部分10Bとを含む。
図10に示す変形例において、略C字状の接合部10は、力点20に対向する曲線状(円弧状)の第1部分10Aと、第1部分10Aの両端から力点20に対して逆側に向かって延びる第2部分10Bとを含む。
【0031】
接合部10における接合強度を増大させる観点からは、
図6,
図7に示す比較例のように、接合部10の面積をできるだけ大きくしたいという要請がある。他方、接合部10の形成に起因する熱影響(蓄熱)が接合部10におけるクラック発生等の接合不良に繋がり得るという懸念から、接合部10の面積をできるだけ小さくしたいという要請もある。互いに背反し得る上記2つの要請を満たす接合部10の構造が求められる。
【0032】
図8,
図9に示す実施例に係る接合部10は、X軸方向に延びる第1部分10Aと、Y軸方向に延びる第2部分10Bとを含むため、X軸方向およびY軸方向のせん断荷重に対して必要な接合強度を確保することができる。また、力点20に近い側に第1部分10Aを設けることにより、力点20に荷重が作用したときの応力が比較的高い位置に選択的に接合部10を設けることができる。換言すると、接合強度の低下を抑制しながら、接合部10の形成時の熱影響を効果的に低減することができる。熱影響を低減することにより、接合部10における残留歪みに起因する接合不良の発生を抑制することができる。これらの点については、
図10に示す変形例に係る接合部10においても同様である。
【0033】
次に、
図11,
図12を参照して、接合部10の形状の例について説明する。
図11,
図12に示す例において、張出部分320および力点20と反対側に切り欠き部10Cが形成されている。切り欠き部10Cが囲む領域(
図11,
図12に示す二点鎖線と接合部10の輪郭が囲む領域)の面積は、接合部10の面積よりも小さい。
【0034】
張出部分320および力点20に対して逆側に切り欠き部10Cを設けることにより、力点20に荷重が作用したときの応力が比較的高い位置に選択的に接合部10を設けることができる。換言すると、接合強度の低下を抑制しながら、接合部10の形成時の熱影響を効果的に低減することができる。熱影響を低減することにより、接合部10における残留歪みに起因する接合不良の発生を抑制することができる。
【0035】
図11,
図12に示す例において、X軸方向に沿った接合部10の全幅(D1)は、X軸方向に沿った切り欠き部10Cの幅(D2)の2倍以上6倍以下程度(より好ましくは、2倍以上3倍以下程度)である。また、Y軸方向に沿った接合部10の全幅(H1)と切り欠き部10Cの幅(H2)との差(H1-H2)は、バスバー300(第2部材)の板厚(T)の1.4倍以上4倍以下程度(より好ましくは、1.4倍以上1.7倍以下程度)である。
【0036】
接合部10および切り欠き部10Cの寸法関係を上述の範囲に調整することにより、接合強度の低下を抑制しながら、接合部10の形成時の熱影響を効果的に低減することができる。熱影響を低減することにより、接合部10における残留歪みに起因する接合不良の発生を抑制することができる。
【0037】
なお、
図12の例のように接合部10の輪郭に細かい凹凸が存在する場合、接合部10の全幅(D1,H1)は、基本的には幅が最大になる位置での寸法を意味するが、接合部10の面積の増減に実質的に寄与しない極端な凹凸については、接合部10の全幅(D1,H1)には含まれない。この点、切り欠き部10Cの幅(D2,H2)についても同様である。
【0038】
図12の例に示すように、切り欠き部10Cは、接合部10が形成される部材に設けられた孔部30を避けるように形成されてもよい。切り欠き部10Cの輪郭形状は、略矩形、略円形、略長円形(略楕円形)の一部に限定されず、
図12に示すように細かい凹凸のある輪郭を有してもよいし、三角形などの多角形状を有してもよい。
【0039】
本技術に係る部材の接合構造は、上述した電極端子110とバスバー300との接合部10の例に限定されるものではない。たとえば、電池モジュールにおけるバスバーと電圧検出線との接合部に対しても本技術は適用され得る。また、電極端子110およびバスバー300は典型的には金属部材であるが、樹脂部材を含む接合部に対しても本技術は適用され得る。
【0040】
以上、本技術の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本技術の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0041】
1 電池パック、10 接合部、10A 第1部分、10B 第2部分、10C 切り欠き部、20 力点、30 孔部、100 電池セル、110 電極端子、111 正極端子、112 負極端子、120 筐体、121 ガス排出弁、200 ケース、210 カバー、220 本体、230 冷却プレート、300 バスバー、310 重ね合わせ部分、320 張出部分。