(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023104227
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】乾燥装置
(51)【国際特許分類】
F26B 17/22 20060101AFI20230721BHJP
【FI】
F26B17/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022005094
(22)【出願日】2022-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】391060199
【氏名又は名称】金井 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104237
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 秀昭
(72)【発明者】
【氏名】金井 正夫
【テーマコード(参考)】
3L113
【Fターム(参考)】
3L113AA07
3L113AB02
3L113AB09
3L113AC04
3L113AC40
3L113AC58
3L113AC59
3L113AC61
3L113AC63
3L113AC67
3L113BA36
3L113BA37
3L113BA38
3L113CB34
3L113DA10
(57)【要約】
【課題】乾燥槽内における被乾燥物の乾燥効率をいっそう高めることができる乾燥装置を提供する。
【解決手段】縦型の円筒形状をなし被乾燥物が投入される乾燥槽11と、該乾燥槽11内で鉛直軸心に沿って延びる回転軸20に設けられた回転巻上羽根31,32と、を有する。回転軸20は、同軸上で上下に並ぶ複数の回転軸部21,22からなり、各回転軸部21,22ごとに回転巻上羽根31,32が設けられている。各回転軸部21,22は、それぞれ軸方向に隣接する回転軸部21,22とは逆方向に回転可能に構成されている。回転巻上羽根31,32は、回転軸部21,22に連結された始端側から該回転軸部21,22の回転方向の反対側に向かって終端側が斜め上方向へ延びる基羽根33A,33Bを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦型の円筒形状をなし被乾燥物が投入される乾燥槽と、該乾燥槽内で鉛直軸心に沿って延びる回転軸に設けられた回転巻上羽根と、を有する乾燥装置において、
前記回転軸は、同軸上で上下に並ぶ複数の回転軸部からなり、各回転軸部ごとに前記回転巻上羽根が設けられ、
前記各回転軸部は、それぞれ軸方向に隣接する回転軸部とは逆方向に回転可能に構成され、
前記回転巻上羽根は、前記回転軸部に連結された始端側から該回転軸部の回転方向の反対側に向かって終端側が斜め上方向へ延びる基羽根を備えることを特徴とする乾燥装置。
【請求項2】
前記回転軸は、上下に並ぶ2つの回転軸部からなり、
下側の前記回転軸部の下端部に連結され、該下側の回転軸部を一の作動方向へ軸心を中心に回転させる下駆動モータと、
上側の前記回転軸部の上端部に連結され、該上側の回転軸部を前記一の作動方向とは逆の作動方向へ軸心を中心に回転させる上駆動モータと、を有し、
前記回転軸は、前記上下の回転軸部の対向し合う端部同士を、互いに逆向きに回転可能に連結する逆回転連結部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項3】
前記逆回転連結部は、
前記上下の回転軸部のいずれか一方の端部で同軸上に延びる係合凸部と、
前記上下の回転軸部のいずれか他方の端部で同軸上に凹み、前記係合凸部が回転可能に嵌入する被係合凹部と、を備えることを特徴とする請求項2に記載の乾燥装置。
【請求項4】
前記回転軸は、上下に並ぶ2つ以上の回転軸部からなり、
前記回転軸の上下端のいずれか一方にある前記回転軸部の端部に連結され、該回転軸部を一の作動方向へ軸心を中心に回転させる1つの駆動モータを有し、
前記回転軸は、前記各回転軸部の対向し合う端部同士を、前記駆動モータに近い側から遠い側へ順に該駆動モータの回転力を逆転させて伝達可能に連結する逆回転伝達部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項5】
前記逆回転伝達部は、
前記各回転軸部および前記軸方向に隣接する回転軸部のいずれか一方の端部で同軸上に延びる係合凸部と、
前記各回転軸部および前記軸方向に隣接する回転軸部のいずれか他方の端部で同軸上に凹み、前記係合凸部が回転可能に嵌入する被係合凹部と、
前記係合凸部および前記被係合凹部の周りに設けられ、それぞれ同軸上に配置された一対の第1かさ歯車と、
前記一対の第1かさ歯車の間で、前記回転軸の周りに間隔を置いて配置され、それぞれ前記回転軸に対して径方向に姿勢調整された歯車軸周りに回転可能であり、かつ前記各第1かさ歯車に対して回転可能に噛み合う複数の第2かさ歯車と、を備えることを特徴とする請求項4に記載の乾燥装置。
【請求項6】
前記回転巻上羽根は、前記回転軸部から径方向に延在し該回転軸部と共に回転する複数の基羽根からなり、各基羽根は、それぞれ被乾燥物を始端側から載せて終端側に移動させつつ巻き上げ可能な平坦面を備えることを特徴とする請求項1,2,3,4または5に記載の乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦型の円筒形状の乾燥槽内に投入した被乾燥物を巻き上げつつ、乾燥槽の周壁部の内面に押し付けて乾燥させる乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、粒状、粉末状、液状、塊状等と種々様々な被乾燥物を乾燥させる乾燥装置が知られている。特に本出願人は、サイクロンフィンと呼ばれる独自の羽根の開発により、理想の乾燥条件を実現することができる乾燥装置を既に提案している(例えば特許文献1,2参照)。
【0003】
このような乾燥装置は、縦型の円筒形状の乾燥槽内に投入された被乾燥物が、回転軸に取り付けられた回転巻上羽根をなす複数の基羽根の回転により巻き上げられるように構成されている。かかる構成では、回転巻上羽根が回転すると、被乾燥物が遠心力によって乾燥槽内壁の加熱面に薄膜状に押し付けられ、後から巻き上げられる被乾燥物が先に巻き上げられた被乾燥物を上方へ押し上げる作用と相俟って、被乾燥物を乾燥させることができる。
【0004】
前記回転巻上羽根は一段だけとは限らず、上下に複数段に並ぶように構成されたものも開示されている。このように複数段に構成することにより、乾燥物を次々と各段の基羽根によって巻き上げつつ、加熱面に押し付け乾燥させた被乾燥物を、最上段の基羽根によって巻き上げた後、乾燥物を得る。すなわち、被乾燥物は、乾燥槽の底部から上部まで乾燥されながら連続して上昇するように設計されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2840639号公報
【特許文献2】特許第2958869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した特許文献1,2に記載された乾燥装置は、回転巻上羽根を複数段に構成することにより、乾燥効率を高めることができるものであるが、各段の基羽根の回転方向および回転速度は全て同一であった。そのため、通常の駆動モータによる回転だけでは、被乾燥物の回転速度や加熱面への接触速度に限界があり、よりいっそう乾燥効率を高めるための工夫が望まれていた。
【0007】
本発明は、前述したような従来の技術が有する問題点に着目してなされたものであり、乾燥槽内における被乾燥物の回転速度および加熱面への接触速度を高めることにより、被乾燥物の加熱効率を良くすると共に乾燥速度を早くすることを可能とし、乾燥効率をいっそう高めることができる乾燥装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するため、本発明の一態様は、
縦型の円筒形状をなし被乾燥物が投入される乾燥槽と、該乾燥槽内で鉛直軸心に沿って延びる回転軸に設けられた回転巻上羽根と、を有する乾燥装置において、
前記回転軸は、同軸上で上下に並ぶ複数の回転軸部からなり、各回転軸部ごとに前記回転巻上羽根が設けられ、
前記各回転軸部は、それぞれ軸方向に隣接する回転軸部とは逆方向に回転可能に構成され、
前記回転巻上羽根は、前記回転軸部に連結された始端側から該回転軸部の回転方向の反対側に向かって終端側が斜め上方向へ延びる基羽根を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る乾燥装置によれば、乾燥槽内における被乾燥物の回転速度および加熱面への接触速度を高めることにより、被乾燥物の加熱効率を良くすると共に乾燥速度を早くすることを可能とし、乾燥効率をいっそう高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係る乾燥装置の内部構造を示す縦断面図である。
【
図2】第1実施形態に係る乾燥装置における逆回転連結部を拡大して示す縦断面図である。
【
図3】第2実施形態に係る乾燥装置の内部構造を示す縦断面図である。
【
図4】第2実施形態に係る乾燥装置における逆回転伝達部を拡大して示す縦断面図である。
【
図5】第2実施形態に係る乾燥装置における逆回転伝達部を拡大して示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づき、本発明を代表する各種実施形態を説明する。
各種実施形態に係る乾燥装置10,10Aは、縦型の円筒形状の乾燥槽11内に投入した被乾燥物を巻き上げつつ、乾燥槽11の周壁部12の内面に押し付けて乾燥させるものである。被乾燥物は、生ゴミ、残飯、食品残滓、汚泥、スラッジ、家畜糞尿等と多岐に渡り、その形態も、粒状、粉末状、液状、塊状等、種々様々で、水分含量も多様である。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではなく、既に周知な事項の詳細な説明や、実質的に同一の構成に対する重複説明等は、適宜省略する場合がある。
【0012】
[第1実施形態]
図1および
図2は、本発明の第1実施形態を示している。
図1は、第1実施形態に係る乾燥装置10の内部構造を示す縦断面図である。
図2は、第1実施形態に係る乾燥装置10の逆回転連結部23を拡大して示す縦断面図である。なお、
図1の縦断面図においてはハッチングを省略している。また、各図において、各構成要素の相対的な寸法関係や形状等は、適宜設計変更されるものであり、実際とは異なる場合がある。
【0013】
<乾燥槽11について>
図1に示すように、乾燥槽11は、縦型の円筒形状に金属材により構成されている。乾燥槽11は、その下側に設けられた脚部(図示省略)によって、フロア上に軸心が鉛直となる姿勢に設置される。乾燥槽11の周壁部12の内面は、加熱手段からの熱を被乾燥物に伝える加熱面12aとなっている。ここで加熱手段は、例えば、乾燥槽11の外周を囲むように形成したジャケット13と、このジャケット13に連結され、ジャケット13内に蒸気を送り込むボイラー(図示省略)とを備えてなる。
【0014】
ジャケット13には図示省略したが、蒸気をジャケット13内に導く蒸気流入部と、蒸気をジャケット13外に排出する蒸気排出部が設けられている。加熱手段の他の例として、蒸気の代わりに熱風をジャケット13内に送り込むように構成したり、あるいは、ジャケット13内に収容した熱媒体と、ジャケット13の外周に配設した電気ヒーターとから構成しても良い。すなわち、電気ヒーターからの熱を熱媒体を介して加熱面12aに伝えるものである。さらに構成を簡略化して、ジャケット13の外周に配設した電気ヒーターの熱を加熱面12aに直接伝えるようにしても良い。このように加熱手段には種々のものが考えられる。
【0015】
乾燥槽11の内部に被乾燥物を供給したり外部に排出する構成も様々であり、例えば、乾燥槽11の上面部15の一部に開閉可能な供給口(図示省略)を設けて、この供給口より被乾燥物を内部に投入すると良い。一方、乾燥槽11の底面部14付近に開閉可能な排出口(図示省略)を設けて、この排出口より乾燥済みの被乾燥物を外部に排出すると良い。かかる構成によれば、全ての工程が終了するまで、途中で被乾燥物の供給ないし排出を行わないバッチ式の処理を行うものとなる。
【0016】
あるいは、図示省略したが、乾燥槽11の底面部14付近の周壁部12に供給管を接続して、被乾燥物を供給管より乾燥槽11内に供給する一方、上面部15付近の周壁部12に排出管を接続して、乾燥物を排出管より外部に排出するように構成しても良い。かかる構成によれば、被乾燥物の供給を区切って、間欠的に乾燥物を得るバッチ式の処理だけでなく、被乾燥物を連続的に供給すると共に乾燥物を連続的に排出する連続式の処理も可能となる。
【0017】
<回転軸20について>
図1に示すように、乾燥槽11内には、その鉛直軸心に沿って延びる回転軸20が配設されている。回転軸20は、乾燥槽11の底面部14と上面部15の中心を貫通した状態で軸支されている。回転軸20は、同軸上で上下に並ぶ複数の回転軸部21,22からなり、各回転軸部21,22ごとに後述する回転巻上羽根31,32が設けられている。ここで各回転軸部21,22は、それぞれ軸方向に隣接する回転軸部21,22とは逆方向に回転可能に構成されている。
【0018】
本実施形態に係る回転軸20は、上下に並ぶ2つの回転軸部21,22からなる。下側の回転軸部21の下端部は、乾燥槽11の底面部14の下方に設けられた下軸受部16に回転可能に軸支されている。下軸受部16の下方に突出した回転軸部21の下端部には、下駆動モータ18がギヤボックス18aを介して動力伝達可能に連結されている。下側の回転軸部21は、下駆動モータ18によって一の作動方向へ軸心を中心に回転するように設定されている。ここで一の作動方向は、
図1中の矢印V1で示すように平面視で時計回りの方向であり、以下に「第1方向V1」とする。
【0019】
一方、上側の回転軸部22の上端部は、乾燥槽11の上面部15の上方に設けられた上軸受部17に回転可能に軸支されている。上軸受部17の上方に突出した回転軸部22の上端部には、上駆動モータ19がギヤボックス19aを介して動力伝達可能に連結されている。上側の回転軸部22は、上駆動モータ19によって前記一の作動方向とは逆の作動方向へ軸心を中心に回転するように設定されている。ここで逆の作動方向は、
図1中の矢印V2で示すように平面視で反時計回りの方向であり、以下に「第2方向V2」とする。
【0020】
<<逆回転連結部23>>
また、回転軸20は、上下の回転軸部21,22の対向し合う端部同士を、互いに逆向きに回転可能に連結する逆回転連結部23を備えている。
図2に示すように、逆回転連結部23は、上側の回転軸部22の下端部で同軸上に延びる係合凸部231と、下側の回転軸部21の上端部で同軸上に凹み、前記係合凸部231が回転可能に嵌入する被係合凹部232と、を備えている。
【0021】
係合凸部231は、上側の回転軸部22の下端部より縮径した軸状に設けられている。一方、被係合凹部232は、下側の回転軸部21の上端部が筒状に形成され、その内側として設けられている。なお、逆の態様として、上側の回転軸部22の下端部に被係合凹部232を設ける一方、下側の回転軸部21の上端部に係合凸部231を設けるように構成しても良い。また、係合凸部231の外周側と被係合凹部232の内周側の間には、複数のベアリング233~235が配置されている。
【0022】
各ベアリング233~235は、それぞれ係合凸部231が被係合凹部232に対して軸心を中心に回転することを円滑にするものであり、その構成は一般的であるので詳細な説明は省略する。また、各ベアリング233~235の具体的な数や配置は、適宜定め得る設計事項である。なお、上下のベアリング233,234の間の係合凸部231には、上下のベアリング間の距離を保つためのカラー236が外装されている。
【0023】
下側の回転軸部21の上端部にて、被係合凹部232の開口周囲にはフランジ237が設けられている。このフランジ237と、上側の回転軸部22の下端部にて係合凸部231の基端周囲の段差面と間には、リング状のプレート238が配置されている。プレート238は、フランジ237と一体に固定されており、係合凸部231の回転を阻害することなく各ベアリング233~235の抜け止めを防止している。
【0024】
<回転巻上羽根31,32について>
図1に示すように、回転軸20の各回転軸部21,22ごとに回転巻上羽根31,32が設けられている。ここで下側の回転軸部21は、下駆動モータ18の駆動により第1方向V1へ回転し、この回転軸部21に設けられた回転巻上羽根31は、回転軸部21と同期して第1方向V1へ回転する。一方、上側の回転軸部22は、上駆動モータ19の駆動により第2方向V2へ回転し、この回転軸部22に設けられた回転巻上羽根32は、回転軸部22と同期して第2方向V2へ回転する。
【0025】
各回転巻上羽根31,32は、それぞれ回転軸部21,22から径方向に延在し、該回転軸部21,22と共に回転する複数の基羽根33A,33Bからなる。本実施形態では、下段となる回転巻上羽根31は、2枚の基羽根33Aを備えており、上段となる回転巻上羽根32も、同様に2枚の基羽根33Bを備えている。ここで基羽根33A,33Bは、それぞれ回転軸部21,22に連結された始端側から該回転軸部21,22の回転方向の反対側に向かって終端側が斜め上方向へ延びている。
【0026】
下段の回転巻上羽根31において、各基羽根33Aは同一形状に形成されており、位相が略180度ずれた状態に配置されている。ここで各基羽根33Aは、それぞれ平面視で被乾燥物を始端側から載せて終端側まで移動させつつ巻き上げ可能な平坦面を備えている。この平坦面は、回転軸部21が回転する第1方向V1の反対側に向かって、始端側から終端側にかけて斜め上方へ湾曲しながら延びるように形成されている。すなわち、各基羽根33Aは、被乾燥物を平坦面上に載せて巻き上げつつ、遠心力によって乾燥槽11の加熱面12aに押し付けるように構成されている。
【0027】
上段の回転巻上羽根32においても、各基羽根33Bは同一形状に形成されており、位相が略180度ずれた状態に配置されている。ここで各基羽根33Bも、それぞれ平面視で被乾燥物を始端側から載せて終端側まで移動させつつ巻き上げ可能な平坦面を備えている。この平坦面は、回転軸部22が回転する第2方向V2の反対側に向かって、始端側から終端側にかけて斜め上方へ湾曲しながら延びるように形成されている。すなわち、各基羽根33Bも、被乾燥物を平坦面上に載せて巻き上げつつ、遠心力によって乾燥槽11の加熱面12aに押し付けるように構成されている。
【0028】
このように上下の回転巻上羽根31,32では、それぞれの各基羽根33A,33Bが互いに逆向きとなるように構成されている。なお、各基羽根33A,33Bの終端側における平坦面の外周端は、乾燥槽11の加熱面12aと近接している。ここで平坦面の外周端と加熱面12aとの間には、各基羽根33A,33Bの回転を許容する隙間が確保されている。
【0029】
また、各基羽根33A,33Bは、始端側が回転軸部21,22に連結され、終端側が回転軸部21,22から径方向に延在するアーム34に支持されている。さらに、上段の各基羽根33Bでは、始端側と終端側の途中も回転軸部22から径方向に延在するアーム35に支持されている。ここでアーム34,35の先端は、各基羽根33A,33Bにおける平坦面の裏側に固定されている。
【0030】
<乾燥装置10の作用>
次に、第1実施形態に係る乾燥装置10の作用について説明する。
図1において、乾燥槽11の上面部15にある供給口(図示省略)より被乾燥物を投入する。そして、下駆動モータ18と上駆動モータ19を、それぞれ同時に駆動する。すると、下側の回転軸部21と回転巻上羽根31は、平面視で時計回りの第1方向V1へ回転し、上側の回転軸部22と回転巻上羽根32は、平面視で反時計回りの第2方向V2へ回転する。このように、上下の回転巻上羽根31,32は、互いに逆方向へ回転する。このとき、ボイラーからジャケット13内に蒸気を導入して、加熱面12aを加熱する。
【0031】
乾燥槽11内では、先ず下段の回転巻上羽根31によって、底面部14上の被乾燥物が掻き上げられる。ここで回転巻上羽根31の各基羽根33Aは、それぞれ回転軸部21に連結された始端側が、乾燥槽11の底面部14上の被乾燥物を掻き上げることができるように底面部14に近接している。各基羽根33Aの始端側より掻き上げられた被乾燥物は、そのまま平坦面上を終端側に向かって、第1方向V1と逆方向へ巻き上げられて上昇する。このとき、各基羽根33Aの平坦面上の被乾燥物は、遠心力によって乾燥槽11内の加熱面12aに薄膜状に押し付けられて乾燥する。
【0032】
下段の回転巻上羽根31の通常の回転速度で掻き上げられた薄膜状の被乾燥物は、続いて上段の回転巻上羽根32にすくい上げられる。詳しく言えば、下段の回転巻上羽根31における各基羽根33Aの終端側より薄膜状に上昇した被乾燥物は、その上段の回転巻上羽根32における各基羽根33Bの始端側との間で、比較的早い速度で各基羽根33Aと共廻りする。そして、被乾燥物がさらに上昇すると、その上段で逆方向の第2方向V2へ回転する回転巻上羽根32にすくい上げられる。
【0033】
このように被乾燥物が、下段の回転巻上羽根31から上段の回転巻上羽根32に移行するとき、被乾燥物には、下段における第1方向V1の回転速度と、上段における第2方向V2の回転速度とが加算される。そのため、上段の回転巻上羽根32の回転により被乾燥物が巻き上げられる勢いが、この回転巻上羽根32の通常の回転速度以上に増すことになる。このように、上下の回転巻上羽根31,32が互いに逆方向へ回転することにより、乾燥物の相対的な回転速度がいっそう加速するという相乗効果が生じる。
【0034】
上段の回転巻上羽根32でも、その各基羽根33Bの始端側よりすくい上げられた被乾燥物は、そのまま平坦面上を終端側に向かって、第2方向V2と逆方向へ巻き上げられて上昇する。このとき、各基羽根33Bの平坦面上の被乾燥物は、遠心力によって乾燥槽11内の加熱面12aに薄膜状に押し付けられて乾燥する。ここで前述の相乗効果が生じるため、通常の回転速度でも、被乾燥物の回転速度および加熱面12aへの接触速度は非常に高くなるため、熱効率は良くなり、乾燥速度が早くなる。
【0035】
このような上下の回転巻上羽根31,32の正逆回転による被乾燥物の回転速度および加熱面12aへの接触速度の相乗効果を、例えば上下の回転巻上羽根を同じ方向へ回転させる1つの駆動モータで得るためには、駆動モータの回転数を高くしなければならず、負荷が非常に大きくなる。また、駆動モータの回転数を高くすることに伴う騒音、振動、駆動系の負荷等による故障が起きやすくなり、乾燥装置10の各部の耐久性も短くなる。しかし、本乾燥装置10によれば、前述の相乗効果により駆動モータの回転数を高くすることなく、よりいっそう乾燥効率を高めることができる。
【0036】
さらに、第1実施形態に係る乾燥装置10によれば、上下の回転巻上羽根31,32は、それぞれ別々の駆動モータ18,19によって駆動するため、例えば上下の回転巻上羽根31,32を異なる回転速度で回転することも可能となる。ここで上下の回転巻上羽根31,32を設けた各回転軸部21,22は、互いに逆方向の回転であっても、また回転速度の異同に関わらず、逆回転連結部23を介して同軸上に連結可能であり、1つの回転軸20として構成することができる。
【0037】
[第2実施形態]
図3から
図5は、本発明の第2実施形態を示している。
図3は、第2実施形態に係る乾燥装置10Aの内部構造を示す縦断面図である。
図4は、第2実施形態に係る乾燥装置10Aの逆回転伝達部24を拡大して示す縦断面図である。
図5は、逆回転伝達部24の要部を分解して示す斜視図である。なお、
図3の縦断面図においてはハッチングを省略している。また、
図5は、逆回転伝達部24の部品を概略的に示し、必ずしも厳密に図示したものではない。また、各図において、各構成要素の相対的な寸法関係や形状等は、適宜設計変更されるものであり、実際とは異なる場合がある。
【0038】
第2実施形態に係る乾燥装置10Aは、前述した第1実施形態に係る乾燥装置10と基本的な構成は共通する。特に、乾燥装置10Aの主要部をなす乾燥槽11は、第1実施形態のものと同一であるが、回転軸20Aとその駆動系が、第1実施形態のものとは異なっている。以下に、第1実施形態と異なる点について主に説明し、第1実施形態と同種の部位については、同一符号を付し重複した説明を省略する。
【0039】
<回転軸20Aについて>
図3に示すように、第2実施形態に係る回転軸20Aも、同軸上で上下に並ぶ複数の回転軸部21,22からなるが、各回転軸部21,22は、上側の回転軸部22の回転力を下側の回転軸部21に逆転させて伝達可能な逆回転伝達部24を介して互いに同軸上に連結されている。回転軸20Aにおいて、逆回転伝達部24を介して連結する回転軸部21,22の数は、第1実施形態のように2つとは限らず、例えば3つ以上の回転軸部を、それぞれ隣接する端部同士で逆回転伝達部24を介して連結することも可能である。
【0040】
上側の回転軸部22の上端部は、乾燥槽11の上面部15の上方に設けられた上軸受部17に回転可能に軸支されている。上軸受部17の上方に突出した回転軸部22の上端部には、上駆動モータ19がギヤボックス19aを介して動力伝達可能に連結されている。上側の回転軸部22は、上駆動モータ19によって一の作動方向へ軸心を中心に回転するように設定されている。かかる上側の回転軸部22の上駆動モータ19による回転駆動は、第1実施形態と共通する。
【0041】
一方、下側の回転軸部21の下端部は、乾燥槽11の底面部14の下方に設けられた下軸受部16に回転可能に軸支されている。ここで下側の回転軸部21の下端部は、第1実施形態のような下駆動モータ18に連結されることはない。すなわち、下側の回転軸部21は、上側の回転軸部22の回転力が逆回転伝達部24によって逆転して伝達され、上側の回転軸部22とは逆の作動方向へ回転するように構成されている。
【0042】
第2実施形態では、上駆動モータ19に近く該上駆動モータ19によって最初に回転させる上側の回転軸部22の回転方向を「一の作動方向」とする。よって、第1実施形態とは逆に、上側の回転軸部22が回転する一の作動方向が、
図3中の矢印V2で示す「第2方向V2」となり、下側の回転軸部21が回転する逆の作動方向が、
図3中の矢印V1で示す「第1方向V1」となる。なお、回転軸20Aの全体を回転駆動する1つの駆動モータは、上側の回転軸部22を直接駆動する上駆動モータ19ではなく、下側の回転軸部21を直接駆動する下駆動モータ18として構成しても良い。
【0043】
<<逆回転伝達部24>>
第2実施形態の回転軸20Aは、上下の回転軸部21,22の対向し合う端部同士を、1つの上駆動モータ19に近い側から遠い側へ順に、該上駆動モータ19の回転力を逆転させて伝達可能に連結する逆回転伝達部24を備えている。
図4に示すように、逆回転伝達部24は、第1実施形態と共通する係合凸部241および被係合凹部242に加えて、これらの周りに配置された一対の第1かさ歯車25A,25Bと、各第1かさ歯車25A,25Bに対して回転可能に噛み合う複数の第2かさ歯車26,26…と、を備えている。
【0044】
係合凸部241は、第1実施形態の係合凸部231と同様に、上側の回転軸部22の下端部より縮径した軸状に設けられており、後述する各かさ歯車25A,25B,26の間を通過する分だけ第1実施形態のものよりも長く延出している。一方、被係合凹部242は、第1実施形態の被係合凹部232と同様に、下側の回転軸部21の内側に設けられている。また、係合凸部241の先端側の外周側と被係合凹部242の内周側の間には、第1実施形態と同様に複数のベアリング233~235およびカラー236等が設けられている。
【0045】
一対の第1かさ歯車25A,25Bは、一方の第1かさ歯車25Aが係合凸部241の基端側に固定され、他方の第1かさ歯車25Bが被係合凹部242の開口周囲のフランジ237に固定され、互いに同軸上で対向するように配置されている。また、
図5に示すように、複数の第2かさ歯車26,26…は、本実施形態では4つが上下の第1かさ歯車25A,25Bの間で、回転軸20Aの周りに間隔を置いて配置されている。
図4に示すように、各第2かさ歯車26は、それぞれ回転軸20Aに対して径方向に姿勢調整された歯車軸27の周りに回転可能であり、かつ各第1かさ歯車25A,25Bに対して回転可能に噛み合っている。
【0046】
係合凸部241の基端側で一方の第1かさ歯車25Aの上側には、円盤状のプレート28が固定されている。また、各第2かさ歯車26の歯車軸27の一端には、それぞれ車輪29が軸支されている。ここで各車輪29は、それぞれプレート28に対して回転可能に当接している。このような状態で各第2かさ歯車26は、上下の第1かさ歯車25A,25Bに対して回転可能に噛み合っており、上駆動モータ19に連結された上側の回転軸部22と共に第1かさ歯車25Aが第2方向V2へ回転すると、各第2かさ歯車26を介して下側の第1かさ歯車25Bと共に回転軸部21が第2方向V2と逆の第1方向V1へ回転する。
【0047】
<回転巻上羽根31,32について>
図3に示すように、回転軸20Aの各回転軸部21,22ごとに、第1実施形態と同様に回転巻上羽根31,32が設けられている。ここで上側の回転軸部22は、上駆動モータ19の駆動により第2方向V2へ回転し、この回転軸部22に設けられた回転巻上羽根32は、回転軸部22と同期して第2方向V2へ回転する。一方、下側の回転軸部21は、上駆動モータ19の駆動により逆回転伝達部24を介して第1方向V1へ回転し、この回転軸部21に設けられた回転巻上羽根31は、回転軸部21と同期して第1方向V1へ回転する。なお、回転巻上羽根31,32の詳細については、第1実施形態のものと同一であり重複した説明は省略する。
【0048】
<乾燥装置10Aの作用>
次に、第2実施形態に係る乾燥装置10Aの作用について、第1実施形態と異なる点を説明する。
図3において、乾燥槽11内に被乾燥物を投入した後、上駆動モータ19を駆動すると、上側の回転軸部22と回転巻上羽根32は、平面視で反時計回りの第2方向V2へ回転する。すると、上側の回転軸部22の回転が、逆回転伝達部24を介して下側の回転軸部21に逆転して伝達され、下側の回転軸部21と回転巻上羽根31は、平面視で時計回りの第1方向V1へ回転する。
【0049】
詳しく言えば
図4において、上駆動モータ19により上側の回転軸部22が第2方向V2へ回転すると、この回転軸部22に固定された一方の第1かさ歯車25Aも第2方向V2へ回転する。一方の第1かさ歯車25Aの回転は、4つの第2かさ歯車26を介して他方の第1かさ歯車25Bに逆転して伝達される。よって、他方の第1かさ歯車25Bが固定されている下側の回転軸部21は、下段の回転巻上羽根31と共に第1方向V1へ回転する。
【0050】
このように、1つの上駆動モータ19の駆動によって、回転軸20Aの各回転軸部21,22は、それぞれ逆回転伝達部24を介して軸方向に隣接する他の回転軸部21,22とは逆方向に回転する。従って、下段の回転巻上羽根31の回転により被乾燥物が上方に巻き上げられる勢いを、逆方向に回転する上段の回転巻上羽根32で受けることにより、第1実施形態と同様に、乾燥物の相対的な回転速度がいっそう加速するという相乗効果が生じる。
【0051】
さらに、第2実施形態に係る乾燥装置10Aによれば、上下の回転巻上羽根31,32は、それぞれ1つの上駆動モータ19によって駆動するため、2つの駆動モータを備える場合に比べてコストを低減することができる。また、回転軸20Aの各回転軸部21,22は、上下2段に限られることなく、3つ以上の回転軸部を、それぞれ隣接する端部同士で逆回転伝達部24を介して連結することも可能となる。なお、逆回転伝達部24は、図示した構成に限られるものではなく、回転力を逆転して伝達できるものであれば別の構成であっても良い。
【0052】
[本発明の構成と作用効果]
以上、本発明の各種実施形態について説明したが、本発明は前述した各種実施形態に限定されるものではない。前述した各種実施形態から導かれる本発明について、以下に説明する。
【0053】
先ず、本発明は、縦型の円筒形状をなし被乾燥物が投入される乾燥槽11と、該乾燥槽11内で鉛直軸心に沿って延びる回転軸20,20Aに設けられた回転巻上羽根31,32と、を有する乾燥装置10,10Aにおいて、
前記回転軸20,20Aは、同軸上で上下に並ぶ複数の回転軸部21,22からなり、各回転軸部21,22ごとに前記回転巻上羽根31,32が設けられ、
前記各回転軸部21,22は、それぞれ軸方向に隣接する回転軸部21,22とは逆方向に回転可能に構成され、
前記回転巻上羽根31,32は、前記回転軸部21,22に連結された始端側から該回転軸部21,22の回転方向の反対側に向かって終端側が斜め上方向へ延びる基羽根33A,33Bを備えることを特徴とする乾燥装置10,10A。
【0054】
このような構成によれば、各回転軸部21,22ごとに回転巻上羽根31,32の基羽根33A,33Bが延びる向きも、それぞれの回転軸部21,22の回転方向に応じて上下で互いに逆向きとなる。そして、複数段の回転巻上羽根31,32ごとに、被乾燥物は各基羽根33A,33Bの平坦面上を始端側から終端側へ移動しつつ巻き上げられ、かつ遠心力により乾燥槽11の加熱面12aに薄膜状に押し付けられながら下段から上段の回転巻上羽根31,32へ順次上昇する。
【0055】
被乾燥物が、下段の回転巻上羽根31から上段の回転巻上羽根32に移行するとき、被乾燥物には、下段における第1方向V1の回転速度に、上段における第2方向V2の回転速度が加算される。そのため、上段の回転巻上羽根32の回転により被乾燥物が巻き上げられる勢いが、この上段の回転巻上羽根32の通常の回転速度以上に増すことになる。
【0056】
このように、上下の回転巻上羽根31,32が互いに逆方向へ回転することにより、乾燥物の相対的な回転速度がいっそう加速するという相乗効果が生じる。かかる相乗効果によれば、乾燥槽11内における被乾燥物の回転速度および加熱面12aへの接触速度を高めることができる。そのため、乾燥装置10による被乾燥物の加熱効率を良くすると共に乾燥速度を早くすることが可能となり、被乾燥物の乾燥効率をいっそう高めることができる。
【0057】
また、本発明では、前記回転軸20は、上下に並ぶ2つの回転軸部21,22からなり、
下側の前記回転軸部21の下端部に連結され、該下側の回転軸部21を一の作動方向へ軸心を中心に回転させる下駆動モータ18と、
上側の前記回転軸部22の上端部に連結され、該上側の回転軸部22を前記一の作動方向とは逆の作動方向へ軸心を中心に回転させる上駆動モータ19と、を有し、
前記回転軸20は、前記上下の回転軸部21,22の対向し合う端部同士を、互いに逆向きに回転可能に連結する逆回転連結部23をさらに備えることを特徴とする。
【0058】
このような構成によれば、上下の回転巻上羽根31,32は、それぞれ別々の駆動モータ18,19によって駆動するため、例えば上下の回転巻上羽根31,32を異なる回転速度で回転することも可能となる。ここで上下の回転巻上羽根31,32を設けた各回転軸部21,22は、互いに逆方向の回転であっても、また回転速度の異同に関わらず、逆回転連結部23を介して同軸上に連結可能であり、1つの回転軸20として構成することができる。
【0059】
また、本発明では、前記逆回転連結部23は、
前記上下の回転軸部21,22のいずれか一方の端部で同軸上に延びる係合凸部231と、
前記上下の回転軸部21,22のいずれか他方の端部で同軸上に凹み、前記係合凸部231が回転可能に嵌入する被係合凹部232と、を備えることを特徴とする。
【0060】
このような構成によれば、互いに逆方向に回転する上下の回転軸部21,22の端部同士を、それぞれの回転を妨げることなく、簡易な構成でもって同軸上に連結することができる。ここで係合凸部231の外周側と被係合凹部232の内周側の間には、ベアリング233~235を介在させれば、より円滑に互いに逆方向に回転する状態を維持することができる。
【0061】
また、本発明では、前記回転軸20Aは、上下に並ぶ2つ以上の回転軸部21,22からなり、
前記回転軸20Aの上下端のいずれか一方にある前記回転軸部21,22の端部に連結され、該回転軸部21,22を一の作動方向へ軸心を中心に回転させる1つの駆動モータ19を有し、
前記回転軸20Aは、前記各回転軸部21,22の対向し合う端部同士を、前記駆動モータに近い側から遠い側へ順に該駆動モータ19の回転力を逆転させて伝達可能に連結する逆回転伝達部24をさらに備えることを特徴とする。
【0062】
このような構成によれば、駆動モータ19に連結された回転軸部22が、先ず一の作動方向(第2方向V2)へ回転する。この回転軸部22に隣接する回転軸部21は、逆回転伝達部24を介して駆動モータ19の回転力が逆転して伝達されるため、一の作動方向と逆の作動方向(第1方向V1)へ回転する。すなわち、回転軸20Aの軸方向に隣接する各回転軸部21,22は、駆動モータ19に近い側から遠い側へ順に回転力が伝達されるが、交互に回転方向が逆転することになる。
【0063】
このように上下に隣接した回転巻上羽根31,32は、それぞれ1つの駆動モータ19によって駆動するため、2つの駆動モータ18,19を備える場合に比べてコストを低減することができる。なお、回転軸20Aの各回転軸部21,22は、上下2段に限られることなく、3つ以上の回転軸部を、それぞれ隣接する端部同士で逆回転伝達部24を介して連結することもできる。また、各回転軸部21,22の数に応じて、回転巻上羽根31,32も複数段に設けられる。
【0064】
また、本発明では、前記逆回転伝達部24は、
前記各回転軸部21,22および前記軸方向に隣接する回転軸部21,22のいずれか一方の端部で同軸上に延びる係合凸部241と、
前記各回転軸部21,22および前記軸方向に隣接する回転軸部21,22のいずれか他方の端部で同軸上に凹み、前記係合凸部241が回転可能に嵌入する被係合凹部242と、
前記係合凸部241および前記被係合凹部242の周りに設けられ、それぞれ同軸上に配置された一対の第1かさ歯車25A,25Bと、
前記一対の第1かさ歯車25A,25Bの間で、前記回転軸20Aの周りに間隔を置いて配置され、それぞれ前記回転軸20Aに対して径方向に姿勢調整された歯車軸27周りに回転可能であり、かつ前記各第1かさ歯車25A,25Bに対して回転可能に噛み合う複数の第2かさ歯車26と、を備えることを特徴とする。
【0065】
このような構成によれば、上下の回転軸部21,22の端部同士を同軸上に連結した状態で、駆動モータ19に近い側の回転軸部22に固定された第1かさ歯車25Aが一の作動方向(第2方向V2)へ回転すると、隣接した回転軸部21に固定された第1かさ歯車25Bが第2かさ歯車26を介して逆の作動方向(第1方向V1)へ回転する。従って、駆動モータ19に近い側の回転軸部22の回転力を、軸方向に隣接する他の回転軸部21に対して、確実に逆方向に変換して伝達することができる。
【0066】
さらに、本発明では、前記回転巻上羽根31,32は、前記回転軸部21,22から径方向に延在し該回転軸部21,22と共に回転する複数の基羽根33A,33Bからなり、各基羽根33A,33Bは、それぞれ被乾燥物を始端側から載せて終端側に移動させつつ巻き上げ可能な平坦面を備えることを特徴とする。
【0067】
このような構成によれば、各回転巻上羽根31,32は、それぞれ基羽根33A,33Bの平坦面により、被乾燥物を効率良くすくい上げて巻き上げつつ、遠心力によって乾燥槽11の加熱面12aに薄膜状に押し付けることができる。ここで加熱面12aとの接触により含水率の低くなった被乾燥物は、含水率の高い被乾燥物と入れ替わるように、基羽根33A,33Bの平坦面上を加熱面12aから離反する方向へ移動する。これにより、被乾燥物を効率良く乾燥させることができる。
【0068】
以上、本発明の実施形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。例えば、各実施形態の乾燥槽11は、全体的に寸胴の円筒形であるが、他に例えば、乾燥槽11の上面部15から底面部14に向かって横断面積が漸次縮径する逆円錐台形に構成しても良い。
【0069】
また、各実施形態では、下段の回転巻上羽根31における基羽根33Aと、上段の回転巻上羽根32における基羽根33Bとは、互いに逆向きである以外は対称形であるが、例えば長さや幅が異なるように形成しても良い。具体的には、下段の基羽根33Aは、上段の基羽根33Bに比べて長い寸法に形成すれば、乾燥槽11の底面部14に多く溜まる被乾燥物に対して、いっそう大きな巻き上げ力を付与することができる。
【0070】
さらに、各実施形態では、回転巻上羽根31,32が、何れも2つの基羽根33A,33Bを備えるように構成したが、基羽根33A,33Bの数は3つ、あるいは4つ以上に構成しても良い。その他、回転巻上羽根の変形例として、回転軸部21,22に連結された始端側から該回転軸部21,22の回転方向の反対周りに旋回して終端側まで延びる一続きの螺旋状の基羽根から構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の乾燥装置においては、様々な種類の被乾燥物に対応可能であり、特に、固形物や半固形物を含む被乾燥物や粘性の強い被乾燥物であっても、効率良く乾燥させることが可能な乾燥装置として幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0072】
10…乾燥装置
11…乾燥槽
12…周壁部
12a…加熱面
13…ジャケット
14…底面部
15…上面部
18…下駆動モータ
19…上駆動モータ
20…回転軸
21…回転軸部
22…回転軸部
23…逆回転連結部
24…逆回転伝達部
31…回転巻上羽根
32…回転巻上羽根
33A…基羽根
33B…基羽根