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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023104239
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】磁気治療装置
(51)【国際特許分類】
   A61N 2/02 20060101AFI20230721BHJP
【FI】
A61N2/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022005108
(22)【出願日】2022-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】592059448
【氏名又は名称】原田電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 正樹
(72)【発明者】
【氏名】中澤 康二
(72)【発明者】
【氏名】原田 証英
【テーマコード(参考)】
4C106
【Fターム(参考)】
4C106AA05
4C106BB25
4C106CC02
(57)【要約】
【課題】安定化電源回路を用いながらEMI規格を満たす磁気治療装置を提供する。
【解決手段】生体刺激用信号波を生成し、その生体刺激用信号波でコイルに発生させた患部刺激用の磁界を生体の患部に照射して患部の細胞を刺激することで患部の疼痛を治療する磁気治療装置であって、生体刺激用の第1信号波を生成して出力する信号波出力部を有する装置本体と、信号波出力部に信号ケーブルで接続されて、その信号波出力部から出力される第1信号波を供給される第1コイルを有する、装置本体と別体に形成されたプローブと、を備え、装置本体は、信号波出力部に電源を供給する安定化電源回路を有し、安定化電源回路は、リニアレギュレータを使用して電源電圧を安定させることを特徴としている。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体刺激用信号波を生成し、その生体刺激用信号波でコイルに発生させた患部刺激用の磁界を生体の患部に照射して患部および患部周辺の細胞および神経を刺激することで患部の疼痛を治療する磁気治療装置であって、
生体刺激用の第1信号波を生成して出力する信号波出力部を有する装置本体と、
前記信号波出力部に信号ケーブルで接続されて、その信号波出力部から出力される前記第1信号波を供給される第1コイルを有する、前記装置本体と別体に形成されたプローブと、
を備え、
前記装置本体は、前記信号波出力部に電源を供給する安定化電源回路を有し、
前記安定化電源回路は、リニアレギュレータを使用して電源電圧を安定させることを特徴とする磁気治療装置。
【請求項2】
前記リニアレギュレータには、商用交流電源を整流して入力した直流電圧もしくはバッテリから入力した直流電圧を、抵抗素子を介して降圧させて供給することを特徴とする、請求項1記載の磁気治療装置。
【請求項3】
前記信号波出力部は生体刺激用の第2信号波も生成して出力し、
前記プローブは前記信号波出力部に信号ケーブルで接続されて、その信号波出力部から出力される前記第2信号波を供給される第2コイルも有することを特徴とする、請求項1または2記載の磁気治療装置。
【請求項4】
前記信号波出力部は生体刺激用の第2信号波も生成し、前記第2信号波で基本信号波を周波数変調することで前記第1信号波を生成して出力することを特徴とする、請求項1または2記載の磁気治療装置。
【請求項5】
前記信号波出力部は生体刺激用の第2信号波も生成して出力し、
前記プローブは前記信号波出力部に信号ケーブルで接続されて、その信号波出力部から出力される第2信号波を供給される第2コイルも有し、
前記信号波出力部は前記第2信号波で基本信号波を周波数変調することで前記第1信号波を生成して、前記第2信号波とは別個に出力することを特徴とする、請求項1または2記載の磁気治療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、生体刺激用信号波を生成しその信号波でコイルに発生させた磁界を生体の患部に照射して患部の細胞や神経を刺激することで患部の疼痛を治療する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生体の患部に磁界を照射して患部の細胞を刺激することで患部の疼痛を治療する装置としては従来、例えば特許文献1記載のものが知られており、この治療装置は、高周波コイルと低周波コイルとをそれぞれ螺旋状あるいはループ状にして発信回路および電池と一緒に筐体内に収容することで、携帯可能に構成されている。
【0003】
そしてこの治療装置は、発信回路から出力する一定周波数の高周波信号および低周波信号によってそれら高周波コイルおよび低周波コイルでそれぞれ磁界を発生させ、その筐体を生体の患部にあてがうことで磁界を患部に照射して患部の細胞を刺激し、その刺激で患部の細胞内における神経栄養因子群の産生を促進させ、当該細胞の修復、成長、分化、増殖を促して患部の疼痛を治療する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2008/056414号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような磁気治療装置では、他の機器や設備に誤動作等の影響を与えないようにノイズのレベルを低減させることが、例えばEN55011(工業用、科学用および医療用機器-無線周波妨害特性-限度値および測定方法)国際規格等のEMI規格で求められている。
【0006】
また、このような磁気治療装置では、高周波コイルに供給する所定周波数の高周波信号を生成する必要上、装置を据置き型として外部の100V商用交流電源から電源供給する場合も、また、装置を携帯型として外部の100V商用交流電源からバッテリに充電する場合も、電源供給する電圧を安定させるために安定化電源回路を備えるのが通常であり、近年の安定化電源回路には、高効率で動作するスイッチングレギュレータを用いることが多い。
【0007】
しかしながらスイッチングレギュレータは、100V商用交流電源の50Hzあるいは60Hzの交流を整流器で整流した直流を、トランスで所望の低電圧に変換するためにスイッチング動作で高周波の交流に変換するので、原理的に出力電圧に大きいノイズが含まれ易いことから、その出力電圧をそのまま使用するのはEMI規格を満たす上で不都合があった。
【0008】
それゆえこの発明は、安定化電源回路を用いながらEMI規格を満たす磁気治療装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の磁気治療装置は、生体刺激用信号波を生成し、その生体刺激用信号波でコイルに発生させた患部刺激用の磁界を生体の患部に照射して患部および患部周辺の細胞および神経の細胞を刺激することで患部の疼痛を治療する磁気治療装置であって、
生体刺激用の第1信号波を生成して出力する信号波出力部を有する装置本体と、
前記信号波出力部に信号ケーブルで接続されて、その信号波出力部から出力される前記第1信号波を供給される第1コイルを有する、前記装置本体と別体に形成されたプローブと、
を備え、
前記装置本体は、前記信号波出力部に電源を供給する安定化電源回路を有し、
前記安定化電源回路は、リニアレギュレータを使用して電源電圧を安定させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
この発明の磁気治療装置にあっては、装置本体が有する信号波出力部が生体刺激用の例えば高周波の第1信号波を生成して出力し、装置本体と別体に形成されたプローブが有する第1コイルが信号波出力部に信号ケーブルで接続されて、その信号波生成部から出力される第1信号波を供給され、その第1信号波で患部刺激用の第1交番磁界を発生させる。
【0011】
従って、この発明の磁気治療装置によれば、装置本体とは別体のプローブを生体の患部にあてがうことで、第1コイルで発生した第1交番磁界を患部に照射して患部の細胞や神経を刺激し、その刺激によって例えば患部の損傷した神経を活性化し、自己修復により、患部の神経障害を軽減させることが期待できる。
【0012】
しかもこの発明の磁気治療装置によれば、装置本体が、信号波出力部に電源を供給する安定化電源回路を有し、その安定化電源回路は、スイッチングレギュレータよりも出力電圧のノイズが小さいリニアレギュレータを使用して電源電圧を安定させるので、安定化電源回路を用いながらEMI規格を満たすことができる。
【0013】
なお、この発明の磁気治療装置においては、前記リニアレギュレータには、商用交流電源を整流して入力した直流電圧もしくはバッテリから入力した直流電圧を、抵抗素子を介して降圧させて供給してもよい。このようにすれば、入力した直流電圧とリニアレギュレータの出力電圧との差のエネルギを、そのリニアレギュレータと抵抗素子とで分担して熱に変えることができるので、発熱箇所を装置本体の複数箇所に分散させて、安定化電源回路が発する熱を効果的に放散させることができる。
【0014】
また、この発明の磁気治療装置においては、前記信号波出力部は生体刺激用の例えば低周波の第2信号波も生成して出力し、前記プローブは前記信号波出力部に信号ケーブルで接続されて、その信号波出力部から出力される前記第2信号波を供給される第2コイルも有するものであってもよい。このようにすれば、生体刺激用の第2信号波によって第2コイルで発生した患部刺激用の第2交番磁界を患部に照射して与えた刺激が、例えば感覚神経(Aβ線維:触覚)を伝って脊髄後角から脳(感覚野)へ到達するので、脳が触覚の快さを認識し、下行性痛覚抑制系を賦活させて鎮痛効果やリラックス効果をもたらすことも期待できる。
【0015】
一方、この発明の磁気治療装置においては、前記信号波出力部は生体刺激用の例えば低周波の第2信号波も生成し、前記第2信号波で基本信号波を周波数変調することで前記第1信号波を生成して出力するものであってもよい。このようにすれば、信号波出力部から供給される、生体刺激用の第2信号波で基本信号波を周波数変調して生成した生体刺激用の第1信号波によって第1コイルで発生した患部刺激用の第1交番磁界で患部の細胞を刺激することで、周波数変調がない場合よりも活性化させて、患部の損傷した神経を活性化し、自己修復により、患部の神経障害を軽減させることが期待できる。
【0016】
さらにこの発明の磁気治療装置においては、前記信号波出力部は生体刺激用の例えば低周波の第2信号波も生成して出力し、前記プローブは前記信号波出力部に信号ケーブルで接続されて、その信号波出力部から出力される前記第2信号波を供給される第2コイルも有し、前記信号波出力部は前記第2信号波で基本信号波を周波数変調することで前記第1信号波を生成して、前記第2信号波とは別個に出力するものであってもよい。このようにすれば、生体刺激用の第2信号波によって第2コイルで発生した患部刺激用の第2交番磁界で鎮痛効果やリラックス効果をもたらすとともに、生体刺激用の第2信号波で基本信号波を周波数変調して生成した生体刺激用の第1信号波によって第1コイルで発生した患部刺激用の第1交番磁界で患部の神経障害をより軽減させることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】この発明の一実施形態の磁気治療装置の全体的な外観を示す斜視図である。
図2】上記実施形態の磁気治療装置の装置本体の外観を示す正面図である。
図3】上記実施形態の磁気治療装置の装置本体の外観を示す側面図である。
図4】上記実施形態の磁気治療装置の図3中のA-A断面を示す断面図である。
図5】上記実施形態の磁気治療装置の図3中のB-B断面を示す断面図である。
図6】上記実施形態の磁気治療装置の構成を機能ブロックで示すブロック線図である。
図7】(a)は、上記実施形態の磁気治療装置の電源部の電源制御部15aの、互いに同一の構成で出力電圧が異なる二つのうちの一方の電源回路の一構成例を示す構成図、(b)は、その電源回路の動作を示す説明図である。
図8】(a)は、上記実施形態の磁気治療装置の電源部の電源制御部15aの、互いに同一の構成で出力電圧が異なる二つのうちの一方の電源回路の他の一構成例を示す構成図、(b)は、その電源回路の動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の実施の形態について図面に基づき詳細に説明する。図1はこの発明の一実施形態の磁気治療装置の全体的な外観を示す斜視図、図2および図3はその実施形態の磁気治療装置の装置本体の外観を示す正面図および側面図、図4および図5は、その実施形態の磁気治療装置の図3中のA-A断面およびB-B断面をそれぞれ示す断面図である。
【0019】
この実施形態の磁気治療装置は、図1に示すように、装置本体1と、プローブ2と、装置本体1にプローブ2を接続する信号ケーブル3と、装置本体1に着脱可能に差し込み装着される図示しない電源ケーブルとを備えており、装置本体1は、図2図5に示すように、主として、樹脂製のケーシング4と、そのケーシング4内に斜め上向きに収容されてケーシング4の前面の開口部4aから露出するタッチ入力式ディスプレイ5と、ケーシング4内でディスプレイ5の後側に斜め下向きに収容されて装置本体後方から見て左右に並ぶ二枚のプリント配線基板6,7と、ケーシング4の後部下側の突出部4b内に水平に収容されて装置本体後方から見て左右に並ぶ二つのAC-DCコンバータ8,9と、ケーシング4の後部下側の突出部4b内でそれらのAC-DCコンバータ8,9の下側に収容されたバッテリ10とを有している。
【0020】
なお、装置本体1のケーシング4の前面の開口部4aの下側の左右にはアラーム停止ボタンと電源スイッチボタンが設けられ、それらのボタンのさらに下側には信号ケーブル3のプラグ用のソケットが、装置本体1への3つのプローブ2の接続を可能にするために横並びに3個設けられている。
【0021】
図6は、この実施形態の磁気治療装置の構成を機能ブロックで示すブロック線図であり、この図に示すように、この実施形態の磁気治療装置は、装置本体1と、プローブ2と、信号ケーブル3とを備え、装置本体1は機能的には、信号波出力部13と、画面制御部14と、電源部15とを有し、この実施形態での信号波出力部13は、主に左側のプリント配線基板6上で図示しない複数の中央処理ユニット(CPU)を用いて回路構成され、基本高周波信号生成部13aで基本信号波としての250MHzの基本高周波信号を生成し、基本高周波信号シフト部13bでその基本高周波信号を、250MHzを中心周波数として例えばその±10%である225MHzから275MHzまでの範囲内で、航空機用救命無線機で使用している周波数帯を除外しつつ、一定時間としての例えば0.00014秒(即ち、約7000回/秒)ごとに適度にシフト(変動)させて、そのシフトさせた基本高周波信号を基本高周波信号周波数変調部13cに出力する。
【0022】
信号波出力部13はまた、左側のプリント配線基板6上のカードスロットに装着された図示しないSDカード等の外部記憶装置または装置本体1に内蔵された内部記憶装置にあらかじめ記録された、音楽等の音源信号を含む磁気信号パターンを磁気信号パターン読出し部13dでそのSDカード等から読み出して生体刺激用低周波信号生成部13eに供給し、生体刺激用低周波信号生成部13eは、その磁気信号パターンの周波数情報(例えば1kHz以上かつ3kHz以下)から第2信号波としての生体刺激用低周波信号を生成し、その生体刺激用低周波信号を基本高周波信号周波数変調部13cに出力する。
【0023】
そして基本高周波信号周波数変調部13cは、基本高周波信号生成部13aで生成して基本高周波信号シフト部13bで周波数シフトさせた、例えば250MHz±10%の基本高周波信号を、生体刺激用低周波信号生成部13eで生成した、例えば1kHz以上かつ3kHz以下の生体刺激用低周波信号で周波数変調して生体刺激用高周波信号出力部13fに供給し、生体刺激用高周波信号出力部13fは、第1信号波としてのその周波数変調された生体刺激用高周波信号を増幅して出力する。なお、生体刺激用高周波信号出力部13fは、その周波数変調された生体刺激用高周波信号を上記生体刺激用低周波信号で振幅変調した後に増幅して出力してもよい。また、生体刺激用低周波信号出力部13gは、生体刺激用低周波信号生成部13eで生成した例えば1kHz以上かつ3kHz以下の生体刺激用低周波信号を増幅して出力する。信号波出力部13におけるこれらの動作は、動作状態制御部13hによって制御する。
【0024】
この実施形態でのプローブ2は、軟質樹脂のカバー内に図示しないフレキシブルプリント配線基板を収容しており、そのフレキシブルプリント配線基板上にはプリント配線で、第1コイルとしての高周波コイル2aが形成されるとともにその内側に第2コイルとしての低周波コイル2bが形成され、加えて高周波コイル2aの外側に磁界強度検出コイルが形成され、さらにそのフレキシブルプリント配線基板上に実装された温度検出素子とCPUとを用いて動作状態検出部2cが回路構成されており、高周波コイル2aは、生体刺激用高周波信号出力部13fから信号ケーブル3を介して供給される生体刺激用高周波信号で患部刺激用の第1交番磁界としての高周波交番磁界を発生させ、低周波コイル2bは、生体刺激用低周波信号出力部13gから信号ケーブル3を介して供給される生体刺激用低周波信号で患部刺激用の第2交番磁界としての低周波交番磁界を発生させる。
【0025】
そして動作状態検出部2cは、信号ケーブル3を介して信号波出力部13の動作状態制御部13hから与えられた指示信号に基づき、温度検出素子が検出したそれら高周波コイル2aおよび低周波コイル2bの温度と磁界強度検出コイルで検出した高周波または低周波の磁界強度とから信号波出力部13の動作状態やプローブ2の状態を検出し、その状態を示す信号を、信号ケーブル3を介して信号波出力部13の動作状態制御部13hに出力する。この状態を示す信号によって動作状態制御部13hは、信号波出力部13の信号波生成・出力等の動作ひいては高周波コイル2aおよび低周波コイル2bで発生させる交番磁界のレベルを監視し、異常を検出した場合は、例えば装置本体1が内蔵する図示しないスピーカからアラーム音を出力する。なお、このアラーム音の出力は、異常状態の解消または装置本体1のケーシングの前面の上記アラーム停止ボタンの操作で停止する。また、動作状態制御部13hは、異常を検出すると即時に、当該磁気治療装置の使用者の安全確保のため、高周波信号出力部13fから高周波出力コイル2aへの生体刺激用高周波信号の供給と生体刺激用低周波信号出力部13gから低周波出力コイル2bへの生体刺激用低周波信号の供給とを停止させる。
【0026】
この実施形態での画面制御部14は、主に右側のプリント配線基板7上で図示しないグラフィック処理ユニット(GPU)等を用いて回路構成され、画像表示部14aで、右側のプリント配線基板7上のカードスロットに装着された図示しないSDカードにあらかじめ記録された、タッチ入力式ディスプレイ5の液晶ディスプレイ(LCD)5aに表示させる指示ボタン等の画面情報をそのSDカードから読み出してLCD5に表示させるとともに、指示入力部14bで、当該磁気治療装置の使用者の指がタッチ入力式ディスプレイ5のタッチパネル5bにタッチした位置をその位置の静電気の変化等から検出し、そのタッチ位置に対応してLCD5に表示させている操作ボタンによる指示入力を示す信号を動作状態制御部13hに送る。この指示入力を示す信号によって動作状態制御部13hは、信号波出力部13の信号波生成・出力等の動作ひいては高周波コイル2aおよび低周波コイル2bで発生させる高周波および低周波の交番磁界の強度等を使用者の指示に合わせて制御する。
【0027】
画面制御部14はまた、LCD5に表示させている操作ボタンによる指示入力部14bへの指示入力とその際の信号波出力部13の動作状態とを記録したログを作成し、そのログの情報を、ケーシング4の後部下側の突出部4b内の二枚のプリント配線基板8,9の間に配置して開閉可能な蓋で覆ったUSBメモリスロット11に突出部4bの上面側から抜き差し可能に装着された図示しないUSBメモリ内に保存し、さらに、画像表示部14aでLCD5に時計を表示させる時計機能を持ち、その時計機能を右側のプリント配線基板7上の電池ホルダに装着された図示しないボタン電池で維持する。
【0028】
この実施形態での電源部15は、主に左側のプリント配線基板6上に搭載された、何れも図示しないCPU、通常のスイッチングレギュレータおよび、リニアレギュレータとしての通常の三端子レギュレータを有する電源制御部15aと、ケーシング4の後部下側の突出部4b内にそれぞれ水平に収容された通常の二つのAC-DCコンバータ8,9とを用いて回路構成されており、その電源制御部15aにより、ケーシング4の後部下側の突出部4bに後ろ向きに配置した電源ソケット12に着脱可能に差し込み装着される図示しない電源ケーブルからの100Vの商用交流電源を上記二つのAC-DCコンバータ8,9に供給し、その100Vの交流をそれらのAC-DCコンバータ8,9によりそれぞれ、先ず直流に整流し、次いでスイッチング制御で高周波の交流にしてトランスで降圧し、その後に再度直流に整流するとともにその電圧をスイッチング制御に用いることで、安定化させた所定電圧の直流に変換し、それらの直流電圧を互いに直列接続することで、バッテリ10の出力電圧に対応する例えば36Vの直流電圧を得てバッテリ10を充電するとともに、その36Vの直流電圧を、後述の如くして降圧および安定化させ、装置本体1の信号波出力部13および画面制御部14とプローブ2の動作状態検出部2cとに、それぞれに必要な電圧の直流電源として供給する。
【0029】
また、電源部15は、電源ケーブルを装着されていないときや電源ケーブルから100Vの商用交流電源を供給されていないときには、バッテリ10からの例えば36Vの直流電圧を電源制御部15aにより、後述の如くして降圧および安定化させて、装置本体1の信号波出力部13および画面制御部14とプローブ2の動作状態検出部2cに、それぞれに必要な電圧の直流電源として供給することで、当該磁気治療装置を携帯して使用可能なものとする。そして電源部15の上記CPUは、バッテリ10への充電を制御するとともに、装置本体1の信号波出力部13および画面制御部14とプローブ2の動作状態検出部2cへの電源供給を制御する。
【0030】
この実施形態の磁気治療装置にあっては、装置本体1が有する信号波出力部13の基本高周波信号生成部13a、基本高周波信号シフト部13bおよび基本高周波信号周波数変調部13cが生体刺激用高周波信号を生成して生体刺激用高周波信号出力部13fが出力し、装置本体1と別体に形成されたプローブ2が有する高周波コイル2aが信号波出力部13の生体刺激用高周波信号出力部13fに信号ケーブル3で接続されて、その生体刺激用高周波信号出力部13fから出力される例えば250MHzを中心周波数とする生体刺激用高周波信号を供給され、その生体刺激用高周波信号で患部刺激用高周波交番磁界を発生させる。
【0031】
従って、この実施形態の磁気治療装置によれば、装置本体1とは別体のプローブ2を生体の患部にあてがうことで、高周波コイル2aで発生した高周波交番磁界を患部に照射して患部の細胞や神経を刺激し、その刺激によって例えば患部の損傷した神経を活性化し、自己修復により、患部の神経障害を軽減させることが期待できる。
【0032】
しかもこの実施形態の磁気治療装置によれば、装置本体1が有する信号波出力部13の基本高周波信号シフト部13bが生体刺激用高周波信号の周波数を例えば250MHz±10%の範囲内で変動させるので、生体刺激用高周波信号の周波数を一定とする場合よりも高調波ノイズのQP(quasi peak:準尖頭)値が低くなり、EMI規格内で高い強度の生体刺激用高周波信号を高周波コイル2aに供給して、高い強度の患部刺激用高周波交番磁界を発生させることができる。
【0033】
図7(a)は、上記実施形態の磁気治療装置の電源部15の電源制御部15aの、互いに同一の構成で出力電圧が異なる二つの電源回路のうちの一方の電源回路の一構成例を示す構成図、また図7(b)は、その電源回路の動作を示す説明図であり、図7(a)に示すように、電源制御部15aは、上記AC-DCコンバータ8,9またはバッテリ10からの例えば36Vの直流電圧を、AC-DCコンバータから最初の整流回路を除いた構成を有するスイッチングレギュレータ15bで降圧させるとともに安定化させて得た所定の入力電圧Vinを、リニアレギュレータとしての三端子レギュレータ15cに入力し、GND端子を接地させた三端子レギュレータ15cでその入力電圧Vinを降圧させるとともに安定化させて得た例えば3.3Vまたは1.8Vの所定の出力電圧Voutを、装置本体1の信号波出力部13および画面制御部14と、プローブ2の動作状態検出部2cとに、それぞれに必要な電圧の直流電源として供給する。
【0034】
その際、図7(b)に示すように、三端子レギュレータ15cは、比較的大きなスイッチングノイズを含むスイッチングレギュレータ15bからの入力電圧Vinを、出力電圧Voutまで降圧させることで、出力電圧Voutに含まれるノイズを僅かなものとするとともに、同図中にギャップとして示す電圧の降圧分のエネルギを、熱に変換して放散する。
【0035】
従って、この実施形態の磁気治療装置によれば、装置本体1が、信号波出力部13に電源を供給する安定化電源回路として電源制御部15aを有し、その電源制御部15aは、スイッチングレギュレータ15bよりも出力電圧のノイズが小さい、リニアレギュレータとしての三端子レギュレータ15cを最終段に使用して出力電圧Voutを安定させるので、安定化電源回路を用いながらEMI規格を満たすことができる。
【0036】
図8(a)は、上記実施形態の磁気治療装置の電源部15の電源制御部15aの、互いに同一の構成で出力電圧が異なる二つの電源回路のうちの一方の電源回路の他の一構成例を示す構成図、また図8(b)は、その電源回路の動作を示す説明図であり、図8(a)に示すように、電源制御部15aは、上記AC-DCコンバータ8,9またはバッテリ10からの例えば36Vの直流電圧を、AC-DCコンバータから最初の整流回路を除いた構成を有するスイッチングレギュレータ15bで降圧させるとともに安定化させて得た所定の入力電圧Vinを、図8(b)に示すように、この構成例では抵抗素子15dにより降圧させて抵抗出力電圧Vとして、リニアレギュレータとしての三端子レギュレータ15cに入力し、GND端子を接地させた三端子レギュレータ15cでその抵抗出力電圧Vを降圧させるとともに安定化させて得た例えば3.3Vまたは1.8Vの所定の出力電圧Voutを、装置本体1の信号波出力部13および画面制御部14と、プローブ2の動作状態検出部2cとに、それぞれに必要な電圧の直流電源として供給する。
【0037】
その際、図8(b)に示すように、抵抗素子15dが、比較的大きなスイッチングノイズを含むスイッチングレギュレータ15bからの入力電圧Vinを抵抗出力電圧Vまで降圧させ、三端子レギュレータ15cが、その抵抗出力電圧Vをさらに出力電圧Voutまで降圧させることで、出力電圧Voutに含まれるノイズを僅かなものとする。そして、同図中に抵抗素子分として示す電圧の降圧分のエネルギを抵抗素子15dが、またギャップとして示す電圧の降圧分のエネルギを三端子レギュレータ15cが、それぞれ分担して熱に変換して放散する。
【0038】
従って、この構成例によれば、先の構成例と同様に安定化電源回路を用いながらEMI規格を満たすことができ、加えて、発熱箇所を装置本体1の複数箇所に分散させて、安定化電源回路が発する熱を効果的に放散させることができる。
【0039】
さらに、この実施形態の磁気治療装置によれば、装置本体1が有する信号波出力部13の生体刺激用低周波信号生成部13eが音源信号から生体刺激用低周波信号を生成して、生体刺激用低周波信号出力部13gがその生体刺激用低周波信号を出力し、プローブ2が有する低周波コイル2bが、信号波出力部13の生体刺激用低周波信号出力部13gに信号ケーブル3で接続されてその生体刺激用低周波信号出力部13gから生体刺激用低周波信号を供給されることから、その生体刺激用低周波信号によって低周波コイル2bで発生した患部刺激用の低周波交番磁界を患部に照射して与えた刺激が、感覚神経(Aβ線維:触覚)を伝って脊髄後角から脳(感覚野)へ到達するので、脳が触覚の快さを認識し、下行性痛覚抑制系を賦活させて鎮痛効果やリラックス効果をもたらすことも期待できる。
【0040】
さらに、この実施形態の磁気治療装置によれば、装置本体1が有する信号波出力部13の基本高周波信号変調部13cが、信号波出力部13が生成した生体刺激用低周波信号で基本高周波信号を周波数変調して生体刺激用高周波信号を生成し、生体刺激用高周波信号出力部13fがその周波数変調された生体刺激用高周波信号をプローブ2の高周波コイル2aに供給することから、生体刺激用低周波信号で周波数変調された生体刺激用高周波信号によって高周波コイル2aで発生した患部刺激用の高周波交番磁界で患部の細胞や神経を刺激することで、周波数変調がない場合よりも活性化させて、患部の損傷した神経を活性化し、自己修復により、患部の神経障害を軽減させることが期待できる。
【0041】
さらに、この実施形態の磁気治療装置によれば、装置本体1が有する信号波出力部13は生体刺激用低周波信号も生成して出力し、プローブ2は信号波出力部13に信号ケーブル3で接続されて、その信号波出力部13から生体刺激用低周波信号を供給される低周波コイル2bも有し、信号波出力部13は生体刺激用低周波信号で基本高周波信号を周波数変調して生体刺激用高周波信号を生成して、生体刺激用低周波信号とは別個に出力することから、生体刺激用低周波信号によって低周波コイル2bで発生した患部刺激用の低周波交番磁界で鎮痛効果やリラックス効果をもたらすとともに、生体刺激用低周波信号で基本高周波信号を周波数変調した生体刺激用高周波信号によって高周波コイル2aで発生した患部刺激用高周波交番磁界で患部の神経障害をより軽減させることが期待できる。
【0042】
そして、この実施形態の磁気治療装置によれば、生体刺激用低周波信号の周波数は1kHz以上かつ3kHz以下であり、その生体刺激用低周波信号によって低周波コイル2bで発生する1kHz以上かつ3kHz以下の低周波交番磁界による刺激は特に、感覚神経を伝って脊髄後角から脳へ到達し易いことから、より高い鎮痛効果やリラックス効果等の神経障害軽減効果をもたらすことが期待できる。
【0043】
以上、図示の実施形態に基づいて説明したが、この発明の磁気治療装置は上述の実施形態に限定されるものでなく特許請求の範囲の記載範囲内で適宜変更することができ、例えば安定化電源回路を構成する電源制御部15aの二つの電源回路を互いに同一に構成する代わりに、それらの電源回路のうちの高周波信号の生成に関わる一方のみを、スイッチングレギュレータ15bと三端子レギュレータ15cとを使用して構成するようにし、低周波信号の生成に関わる他方はスイッチングレギュレータ15bだけを使用して構成するようにしてもよい。
【0044】
また、例えば基本高周波信号シフト部13bは、250MHzの基本高周波信号を例えば250MHz±20%の範囲内でシフトさせてもよい。
【0045】
さらに、例えば生体刺激用低周波信号生成部13eは、1kHz以上かつ3kHz以下と異なる周波数範囲、例えば1.6kHzを中心周波数として200Hz以上かつ3kHz以下の周波数範囲の生体刺激用低周波信号を生成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
かくしてこの発明の磁気治療装置によれば、装置本体が有する信号波出力部が生体刺激用高周波信号を生成して出力し、装置本体と別体に形成されたプローブが有する高周波コイルが信号波出力部に信号ケーブルで接続されて、その信号波生成部から出力される生体刺激用高周波信号を供給され、その生体刺激用高周波信号で患部刺激用高周波交番磁界を発生させるので、その装置本体とは別体のプローブを生体の患部にあてがうことで、高周波コイルで発生した高周波交番磁界を患部に照射して患部の細胞や神経を刺激し、その刺激によって例えば患部の損傷した神経を活性化し、自己修復により、患部の神経障害を軽減させることが期待できる。
【0047】
しかもこの発明の磁気治療装置によれば、装置本体が信号波出力部に電源を供給する安定化電源回路を有し、その安定化電源回路は、スイッチングレギュレータよりも出力電圧のノイズが小さいリニアレギュレータを使用して電源電圧を安定させるので、安定化電源回路を用いながらEMI規格を満たすことができる。
【符号の説明】
【0048】
1 装置本体
2 プローブ
2a 高周波コイル(第1コイル)
2b 低周波コイル(第2コイル)
2c 動作状態検出部
3 信号ケーブル
4 ケーシング
4a 開口部
4b 突出部
5 ディスプレイ
5a LCD
5b タッチパネル
6,7 プリント配線基板
8,9 AC-DCコンバータ
10 バッテリ
11 USBメモリスロット
12 電源ソケット
13 信号波出力部
13a 基本高周波信号生成部
13b 基本高周波信号シフト部
13c 基本高周波信号周波数変調部
13d 磁気信号パターン読出し部
13e 生体刺激用低周波信号生成部
13f 生体刺激用高周波信号出力部
13g 生体刺激用低周波信号出力部
13h 動作状態制御部
14 画面制御部
14a 画像表示部
14b 指示入力部
15 電源部
15a 電源制御部
15b スイッチングレギュレータ
15c 三端子レギュレータ(リニアレギュレータ)
15d 抵抗素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8