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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023104241
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】自動体外式除細動器
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/39 20060101AFI20230721BHJP
   A61B 5/33 20210101ALI20230721BHJP
   A61B 5/28 20210101ALI20230721BHJP
   A61B 5/053 20210101ALI20230721BHJP
【FI】
A61N1/39
A61B5/33 120
A61B5/28
A61B5/053
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022005110
(22)【出願日】2022-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】久野 良介
(72)【発明者】
【氏名】宮地 純一
【テーマコード(参考)】
4C053
4C127
【Fターム(参考)】
4C053BB02
4C053JJ15
4C053JJ18
4C127AA02
4C127AA06
4C127CC04
4C127HH06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】自動体外式除細動(AED)のユーザビリティを向上させることを目的とする。
【解決手段】AEDは、被検者の心臓に除細動用の電気ショックを与える除細動処理を自動的に実行するように構成される。AEDは、電極パッドを通じて前記被検者の生体信号を取得し、前記生体信号に基づいて、前記除細動処理が必要であるかどうかを判定し、前記電極パッドが前記被検者に装着されていると共に、所定の操作がAEDに対して行われたかどうかを判定し、前記除細動処理が必要である場合において、前記電極パッドが前記被検者に装着されていると共に、前記所定の操作AEDに対して行われたかどうかの判定の結果に応じて、AEDの電源のオン状態を維持したままで前記除細動処理をキャンセルする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の心臓に除細動用の電気ショックを与える除細動処理を自動的に実行するように構成された自動体外式除細動器であって、
プロセッサと、コンピュータ可読命令を記憶するメモリとを備え、
前記コンピュータ可読命令が前記プロセッサにより実行されると、前記自動体外式除細動器は、
電極パッドを通じて前記被検者の生体信号を取得し、
前記生体信号に基づいて、前記除細動処理が必要であるかどうかを判定し、
前記電極パッドが前記被検者に装着されていると共に、所定の操作が前記自動体外式除細動器に対して行われたかどうかを判定し、
前記除細動処理が必要である場合において、前記電極パッドが前記被検者に装着されていると共に、前記所定の操作が前記自動体外式除細動器に対して行われたかどうかの判定の結果に応じて、前記自動体外式除細動器の電源のオン状態を維持したままで前記除細動処理をキャンセルする、
自動体外式除細動器。
【請求項2】
前記自動体外式除細動器の電源をオン又はオフにするための電源操作部をさらに備え、
前記自動体外式除細動器は、
前記電極パッドが前記被検者に装着されていると共に、前記電源をオフにするための操作が前記電源操作部に対して行われたかどうかを判定し、
前記除細動処理が必要である場合において、前記電極パッドが前記被検者に装着されていると共に、前記電源をオフにするための操作が前記電源操作部に対して行われたかどうかの判定結果に応じて、前記自動体外式除細動器の電源のオン状態を維持したままで前記除細動処理をキャンセルする、
請求項1に記載の自動体外式除細動器。
【請求項3】
前記自動体外式除細動器は、前記除細動処理が必要である場合において、
前記電極パッドが前記被検者に装着されていると共に、前記電源をオフにするための操作が前記電源操作部に対して行われたとの判定に応じて、前記電源のオン状態を維持したままで前記除細動処理をキャンセルし、
前記電極パッドが前記被検者に装着されていると共に、前記電源をオフにするための操作が前記電源操作部に対して行われていないとの判定に応じて、前記除細動処理をキャンセルしない、
請求項2に記載の自動体外式除細動器。
【請求項4】
前記自動体外式除細動器は、
前記電源のオン状態を維持したままで前記除細動処理をキャンセルした後に、前記被検者の生体信号の取得を継続すると共に、前記生体信号に基づいて前記除細動処理が必要であるかどうかの判定を継続する、
請求項1から3のうちいずれか一項に記載の自動体外式除細動器。
【請求項5】
前記自動体外式除細動器は、
筐体部と、
前記筐体部に接続された蓋部と、
をさらに備え、
前記電源をオンにするための操作が前記電源操作部に対して行われる場合に、前記蓋部が開けられ、
前記蓋部が閉じられる場合に、前記電源をオフにするための操作が前記電源操作部に対して行われる、
請求項2又は3に記載の自動体外式除細動器。
【請求項6】
前記電極パッドは、一対の電極パッドを有し、
前記自動体外式除細動器は、前記一対の電極パッド間のインピーダンス値に基づいて前記一対の電極パッドが前記被検者に装着されているかどうかを判定する、
請求項1から5のうちいずれか一項に記載の自動体外式除細動器。
【請求項7】
前記制御部は、
前記電源をオンにするための操作が前記電源操作部に対して行われた場合に、前記電源をオンにし、
前記電極パッドが前記被検者に装着されていないと共に、前記電源をオフにするための操作が前記電源操作部に対して行われた場合に、前記電源をオフにする、
請求項2又は3に記載の自動体外式除細動器。
【請求項8】
前記除細動処理を促すための第1ガイダンス及び/又は前記被検者に心肺蘇生法を行うように促すための第2ガイダンスを可聴的又は視覚的に提示する出力部をさらに備える、
請求項1から7のうちいずれか一項に記載の自動体外式除細動器。
【請求項9】
前記自動体外式除細動器は、前記除細動処理が実行又はキャンセルされた後に、前記出力部を通じて前記第2ガイダンスを可聴的又は視覚的に提示する、
請求項8に記載の自動体外式除細動器。
【請求項10】
前記自動体外式除細動器は、
前記電源のオン状態を維持したままで前記除細動処理をキャンセルした後に、
前記被検者の生体信号に基づいて、前記除細動処理が必要であるかどうかを再度判定し、
前記除細動処理が必要である場合に、前記出力部を通じて前記第1ガイダンスを可聴的又は視覚的に提示する、
請求項8又は9に記載の自動体外式除細動器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自動体外式除細動器に関する。
【背景技術】
【0002】
心室細動によって突然の心停止を起こした患者の心臓に除細動用の強い電気ショックを与えることで患者の心臓の機能を回復させる自動体外式除細動器(以下、AEDという。)が、現在急速に普及している。例えば、特許文献1には、患者の心臓に除細動用の電気ショックを与える除細動処理をAEDに対する操作者の入力操作なしに自動的に実行する全自動のAEDが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5474574号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、患者に電気ショックを与える除細動処理を実行する前に患者の意識が回復した場合では、除細動処理をキャンセルしつつ、患者の状態をAEDによって測定し続けたい(または患者の状態の測定を休止する場合でも即時に測定を再開出来る状態に保ちたい)といった状況が想定される。この点において、特許文献1に開示された全自動のAEDでは、除細動処理をキャンセルするためには全自動のAEDの電源を完全にオフにする必要がある。このため、除細動処理のキャンセル後に患者の状態をAEDによって再度解析するためには、操作者は、AEDを再起動してからAEDの心電図解析処理が開始されるまでの間待ち続ける必要がある。しかしながら、この待機時間の間において患者の心機能の状態が急変することも想定されるため、AEDの電源のオン状態を維持したままで除細動処理をキャンセルできることが望ましい。このように、操作者が除細動処理をキャンセルしたい場面におけるAEDのユーザビリティをさらに改善する余地がある。
【0005】
本開示は、AEDのユーザビリティを向上させることを目的とする。特に、本開示は、操作者が除細動処理をキャンセルしたい場面におけるAEDのユーザビリティを向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る自動体外式除細動器は、被検者の心臓に除細動用の電気ショックを与える除細動処理を自動的に実行するように構成される。
自動体外式除細動器は、プロセッサと、コンピュータ可読命令を記憶するメモリとを備え、
前記コンピュータ可読命令が前記プロセッサにより実行されると、前記自動体外式除細動器は、
電極パッドを通じて前記被検者の生体信号を取得し、
前記生体信号に基づいて、前記除細動処理が必要であるかどうかを判定し、
前記電極パッドが前記被検者に装着されていると共に、所定の操作が前記自動体外式除細動器に対して行われたかどうかを判定し、
前記除細動処理が必要である場合において、前記電極パッドが前記被検者に装着されていると共に、前記所定の操作が前記自動体外式除細動器に対して行われたかどうかの判定の結果に応じて、前記自動体外式除細動器の電源のオン状態を維持したままで前記除細動処理をキャンセルする。
【0007】
上記構成によれば、電極パッドが被検者に装着されていると共に、所定の操作が自動体外式除細動器(以下、AED)に対して行われたかどうかを判定され、当該判定の結果に応じて、AEDの電源のオン状態を維持したままで被検者に電気ショックを与える除細動処理がキャンセルされる。このように、従来の全自動のAEDとは異なり、AEDの電源のオン状態を維持したままで除細動処理をキャンセルすることが可能となる。この点において、従来の全自動のAEDでは、除細動処理をキャンセルするためにAEDの電源を完全にオフにする必要があるため、被検者の心電図を再度解析する場合にはAEDの再起動から心電図解析処理(若しくは除細動処理が必要であるかを判定する処理)に遷移するまでの待ち時間が発生してしまう。一方で、本構成によれば、AEDの電源のオン状態を維持したままでAEDの除細動処理のみをキャンセルすることができるため、AEDのユーザビリティを飛躍的に向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、AEDのユーザビリティを向上させることができる。特に、操作者が除細動処理をキャンセルしたい場面におけるAEDのユーザビリティを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】蓋部が閉じた状態での自動体外式除細動器(以下、AED)を示す斜視図である。
図2】蓋部が開いた状態でのAEDを示す斜視図である。
図3】AEDの構成を示すブロック図である。
図4】AEDによって実行される一連の処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について図面を参照しながら説明する。各図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。
【0011】
最初に、図1から図3を参照して自動体外式除細動器1(以下、AED1)の構成について以下に説明する。図1は、蓋部2が閉じた状態でのAED1を示す斜視図である。図2は、蓋部2が開いた状態でのAED1を示す斜視図である。図3は、AED1の構成を示すブロック図である。本実施形態に係るAED1は、全自動のAEDである。即ち、AED1は、操作者の入力操作なしに、患者(被検者ともいう。)の心臓に除細動用の電気ショックを与える除細動処理を自動的に実行するように構成されている。このため、図2に示すように、AED1には、除細動処理(電気ショック)を開始するための電気ショックボタン等が設けられていない。
【0012】
図1に示すように、AED1は、筐体部3と、筐体部3に接続された蓋部2と、電源操作部4とを有する。図1に示す矢印の方向に向けて電源操作部4を押すことで、AED1の電源をオンにするための操作が電源操作部4に対して行われると共に、図2に示すように蓋部2が開けられる。蓋部2が閉じられた状態ではAED1の電源はオフとなっている一方、蓋部2が開けられた状態ではAED1の電源はオンとなる。蓋部2が閉じられる場合では、AED1は図2に示す状態から図1に示す状態に遷移すると共に、AED1の電源をオフにするための操作が電源操作部4に対して行われる。このように、本実施形態に係るAED1では、蓋部2が開けられるとAED1の電源をオンにする操作(以下、電源オン操作)が電源操作部4に対して行われる一方、蓋部2が閉じられるとAED1の電源をオフにする操作(以下、電源オフ操作)が電源操作部4に対して行われる。蓋部2の開閉に応じた電源オン操作又は電源オフ操作の詳細については、例えば特許第5046031号明細書を参照されたい。
【0013】
次に、図2及び図3を参照することでAED1の構成について以下に説明する。図2及び図3に示すように、AED1は、AED制御部10と、高電圧発生回路16と、エネルギー蓄積部17と、バッテリー15と、バッテリー制御部14と、記憶部13と、外部通信部12とを備える。また、AED1は、ECG処理回路18と、パッドコネクタ20と、音声出力部8と、電源操作部4と、表示部7と、インジケータ9とをさらに備える。
【0014】
AED1は、心室細動により心停止を起こした患者の心臓の機能を回復させるために除細動処理を自動的に実行するように構成された医療機器である。また、AED1は、患者の心電図を測定するように構成されている。AED制御部10は、AED1に設けられた各構成部品を制御するように構成されている。AED制御部10は、例えば、プロセッサとメモリとを含むマイクロコントローラと、AD変換部(アナログ-デジタル変換回路)を少なくとも含むアナログ電子回路とによって構成されている。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)のうちの少なくとも一つを含む。メモリは、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)とを含む。プロセッサは、記憶装置13又はROMに組み込まれた各種プログラムから指定されたプログラム(コンピュータ可読命令)をRAM上に展開し、RAMとの協働で各種処理(例えば、図4に示す一連の処理)を実行するように構成されてもよい。
【0015】
高電圧発生回路16は、充電制御回路と放電制御回路とによって構成されている。充電制御回路は、除細動用の電気ショックを患者(被検者)に与えるための電気エネルギーをエネルギー蓄積部17に充電するように構成されている。放電制御回路は、エネルギー蓄積部17に蓄積された当該電気エネルギーを放電するように構成されている。エネルギー蓄積部17は、除細動用の電気ショックを患者に与えるための電気エネルギーを蓄積するように構成されており、例えば、複数の誘電体フィルムによって構成された高電圧のフィルムコンデンサであってもよい。エネルギー蓄積部17から放電された電気エネルギーは、高電圧発生回路16及びパッドコネクタ20を経由して一対の電極パッド5a,5bから出力される。
【0016】
バッテリー15は、バッテリー本体部とバッテリーメモリとを有する。バッテリー本体部は、AED1の各構成部品に電力を供給するように構成された電源として機能し、例えば、リチウム一次電池である。バッテリーメモリにはバッテリー残量等のバッテリーに関連する情報が保存されている。バッテリー15は、交換可能であってもよい。本例では、バッテリー15はAED1の構成部品として定義されているが、AED1とは別の構成部品(付属品)として定義されてもよい。
【0017】
バッテリー制御部14は、バッテリー15の電圧をAED1の各構成部品に必要な電圧に変換するように構成された回路(例えば、スイッチングレギュレータ又はシリーズレギュレータ)を備える。また、バッテリー制御部14は、バッテリー15の電圧を示す信号をAED制御部10に送信するように構成されている。AED制御部10は、バッテリー制御部14から送信された信号に基づいてバッテリー15の使用量を決定した上で、バッテリー15の使用量を積算することでバッテリー15の残量レベルを決定してもよい。
【0018】
記憶部13は、AED1を制御するための各種プログラム、表示部7に表示される画像データ、音声出力部8から出力される音声データ、患者の心電図データ、AED1の使用状態(バッテリ残量やAED1の異常の有無等)に関連するデータ等を保存するように構成されている。記憶部13は、例えば、フラッシュメモリやハードディスクにより構成されている。外部通信部12は、記憶部13に保存された各種データを管理サーバ等の外部装置に送信するように構成されている。外部通信部12は、Bluetooth(登録商標)やWi‐Fi(登録商標)等の近距離無線通信規格に対応した無線通信モジュールであってもよい。外部通信部12が無線通信モジュールである場合、外部通信部12は、送受信アンテナと、高周波回路と、信号処理回路とを有してもよい。外部通信部12は、例えば、AED1に関連するデータを図示しない中継器を介して通信ネットワーク上の管理サーバに送信してもよい。この場合、AED1は、近距離無線通信によって中継器に接続されてもよい。
【0019】
ECG処理回路18は、患者に装着された一対の電極パッド5a,5bから出力された心電図信号を処理するように構成されている。例えば、ECG処理回路18は、一対の電極パッド5a,5bのうち一方から出力された心電図信号と他方の電極パッドから出力された心電図信号とを差動増幅する差動増幅器と、差動増幅された心電図信号をアナログ信号からデジタル信号に変換するAD変換器とを有してもよい。
【0020】
図2に示すように、一対の電極パッド5a,5bは、パッドケーブル6を介してパッドコネクタ20に接続されている。一対の電極パッド5a,5bはAED1に着脱可能に取り付けられており、使い捨てであってもよい。AED1の使用前において一対の電極パッド5a,5bは図示しないパッケージ内に収納されていてもよい。AED1の使用時において一対の電極パッド5a,5bは患者の体表面に装着される。一対の電極パッド5a,5bには患者の心電図信号が入力される一方で、患者の心臓に電気ショックを与えるための電気エネルギーが出力される。本例では、電極パッド5a,5bは、AED1の構成部品ではなく付属品として定義されているが、AED1の構成部品として定義されてもよい。
【0021】
音声出力部8(出力部の一例)は、AED1の操作や患者の処置に関連する音声ガイダンスおよび警告音を可聴的に出力するように構成されたスピーカである。電源操作部4は、操作者によるAED1の電源をオン又はオフにするための操作を受け付けるように構成されている。本例では、電源操作部4は、蓋部2の開閉動作に伴って、電源オン操作又は電源オフ操作を受け付ける。
【0022】
表示部7(出力部の一例)は、AED1の操作や患者の処置に関連するガイダンスを表示画面上に表示するように構成されている。表示部7は、例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等によって構成される。インジケータ9は、AED1の状態を表示するように構成されている。例えば、インジケータ9は、AED1が使用可能である場合に、第1表示色で点灯する一方で、AED1が使用不可である場合に、第1表示色とは異なる第2表示色で点灯してもよい。また、バッテリーの残量レベルを示すインジケータがAED1に設けられてもよい。
【0023】
次に、図4を参照して、電源オン後にAED1によって実行される一連の処理について以下に説明する。図4は、電源オン後にAED1によって実行される一連の処理を説明するためのフローチャートである。図4に示すように、AED1の蓋部2が操作者によって開けられることで電源操作部4は電源オン操作を受け付ける。AED制御部10は、電源オン操作を示す信号に基づいてAED1の電源をオンにする(ステップS1)。電源がオンになった場合、AED制御部10は内部の動作チェックを含む各種の初期化処理を実行する。次に、AED制御部10は、心停止状態の患者を救助するための救助ガイダンスを可聴的及び/又は視覚的に出力する(ステップS2)。この点において、救助ガイダンスは、音声出力部8から可聴的に出力されてもよいし、表示部7の表示画面上に表示されてもよい。本例において、ガイダンス等の情報が視覚的に出力される場合には、当該情報が表示部7に表示されることを意味する。その一方で、情報が可聴的に出力される場合には、当該情報が音声出力部8から出力されることを意味する。
【0024】
次に、ステップS3において、AED制御部10は、一対の電極パッド5a,5b間のインピーダンス値に基づいて一対の電極パッド5a,5bが患者の体表面に装着されているかどうかを判定する。例えば、一対の電極パッド5a,5b間のインピーダンス値が所定値以下である場合では、AED制御部10は一対の電極パッド5a,5bが患者の体表面に装着されていると判定してもよい。これとは反対に、一対の電極パッド5a,5b間のインピーダンス値が所定値よりも大きい場合では、AED制御部10は一対の電極パッド5a,5bが患者の体表面に装着されていないと判定してもよい。ステップS3の判定結果がNoである場合、AED制御部10はステップS3の判定結果がYesとなるまで待機する。ステップS3の判定結果がYesである場合、本処理はステップS4に進む。
【0025】
次に、AED制御部10は、一対の電極パッド5a,5bが患者に装着されていると共に、電源オフ操作が電源操作部4に対して行われている状態かどうかを判定する(ステップS4)。本例では、蓋部2が閉じられる場合に電源オフ操作が電源操作部4に対して行われるため、AED制御部10は、一対の電極パッド5a,5bが患者に装着されていると共に、蓋部2が閉じられている状態かどうかを判定している。また、上記したように、AED制御部10は、一対の電極パッド5a,5b間のインピーダンス値に基づいて一対の電極パッド5a,5bが患者に装着されているかどうかを判定している。
【0026】
ステップS4の判定結果がYesの場合、本処理はステップS13に進む一方で、ステップS4の判定結果がNoの場合、本処理はステップS5に進む。尚、本例では、一対の電極パッド5a,5bが患者に装着されていることが前提となっている。このため、電極パッド5a,5bが患者に装着されておらず、電源オフ操作が電源操作部4に対して行われている状態では、AED1の電源は完全にオフとなり、ステップS5以降の処理は実行されない。さらに、電極パッド5a,5bが患者に装着されていない一方で、電源オフ操作が電源操作部4に対して行われていない状態(蓋部2が開いている状態)では、AED制御部10は、電極パッドを患者に装着するように促すためのガイダンスを視覚的及び/又は可聴的に出力してもよい。
【0027】
ステップS5において、AED制御部10は、一対の電極パッド5a,5b及びECG処理回路18を通じて患者の心電図信号(生体信号の一例)を取得した上で、当該心電図信号に基づいて患者の心電図を解析する。AED制御部10は、取得された心電図信号(心電図データ)を記憶部13に保存してもよいし、外部通信部12を介して心電図データを通信ネットワーク上の管理サーバに送信してもよい。次に、ステップS6において、ステップS4の判定処理と同様に、AED制御部10は、一対の電極パッド5a,5bが患者に装着されていると共に、電源オフ操作が電源操作部4に対して行われている状態かどうかを判定する。ステップS6の判定結果がYesである場合、ステップS7からS10の各処理がキャンセルされた上で、AED制御部10は、患者にCPR(心肺蘇生法)を行うように促すためのガイダンスを可聴的及び/又は視覚的に出力する(ステップS11)。
【0028】
一方で、ステップS6の判定結果がNoである場合、AED制御部10は、心電図の解析結果に基づいて除細動処理が必要であるかどうかを判定する(ステップS7)。具体的には、AED制御部10は、患者の心電図に心室細動等の不整脈がある場合に、除細動処理が必要であると判定する。一方で、AED制御部10は、患者の心電図に異常がない場合には、除細動処理が必要ではないと判定する。ステップS7の判定結果がNoである場合、ステップS8からS10の各処理がキャンセルされた上で、AED制御部10は、患者にCPRを行うように促すためのガイダンスを可聴的及び/又は視覚的に出力する(ステップS11)。ステップS7の判定結果がYesである場合、AED制御部10は、除細動処理の開始前のカウントダウン通知を視覚的及び/又は可聴的に出力する(ステップS8)。操作者は、カウントダウン通知を見ることで、除細動処理が自動的に実行されることを明確に認識することができる。
【0029】
次に、ステップS9において、AED制御部10は、一対の電極パッド5a,5bが患者に装着されていると共に、電源オフ操作が電源操作部4に対して行われている状態かどうかを判定する。ステップS9の判定結果がYesである場合、ステップS10の除細動処理がキャンセルされた上で、AED制御部10は、患者にCPR(心肺蘇生法)を行うように促すためのガイダンスを可聴的及び/又は視覚的に出力する(ステップS11)。ステップS9の判定結果がNoである場合、AED制御部10は、患者の心臓に除細動用の電気ショックを与える除細動処理を実行する(ステップS10)。この場合、エネルギー蓄積部17に蓄積された電気エネルギーが高電圧発生回路16及びパッドコネクタ20を通じて電極パッド5a,5bから出力される。
【0030】
次に、ステップS10の除細動処理が実行された後に、AED制御部10は、ステップS11のガイダンスが出力された時点から所定時間(例えば、2分)が経過したかどうかを判定する(ステップS12)。所定時間が経過していない場合(ステップS12でNo)、AED制御部10は、患者の心電図信号の取得を続けながら、所定時間が経過するまで待機する。一方で、所定時間が経過した場合、AED制御部10は、ステップS3の判定処理を実行する。このように、AED1の電源がオフにならない限り、図4に示す一連の処理は繰り返し実行される。
【0031】
次に、ステップS3の判定処理がYesである場合において、本処理はステップS4の判定処理を実行する。ここで、ステップS4の判定結果がYesである場合において、AED制御部10は、一対の電極パッド5a,5b及びECG処理回路18を通じて心電図信号を再度取得した上で、当該心電図信号に基づいて患者の心電図を再度解析する(ステップS13)。例えば、ステップS6又はS9の判定結果を通じて除細動処理がキャンセルされた場合では、ステップS3,S4の判定処理が再度実行された後にステップS13の処理が実行される。特に、除細動処理がキャンセルされた場合では、一対の電極パッド5a,5bが患者に装着されていると共に、電源オフ操作が電源操作部4に対して行われている状態(即ち、蓋部2が閉じている状態)となっている。このため、ステップS4の判定結果はYesとなり、ステップS13の処理が実行される。
【0032】
次に、AED制御部10は、ステップS4の判定処理と同様に、一対の電極パッド5a,5bが患者に装着されていると共に、電源オフ操作が電源操作部4に対して行われている状態かどうかを判定する(ステップS14)。ステップS14の判定結果がNoである場合、本処理はステップS7に進む。一方、ステップS14の判定結果がYesである場合、本処理はステップS15に進む。ステップS15において、AED制御部10は、心電図の解析結果に基づいて除細動処理が必要であるかどうかを再度判定する。ステップS15の判定結果がNoである場合、AED制御部10は、患者にCPRを行うように促すためのガイダンス(第2ガイダンスの一例)を可聴的及び/又は視覚的に出力する(ステップS11)。ステップS15の判定結果がYesである場合、AED制御部10は、患者に除細動処理を促すためのガイダンス(第1ガイダンスの一例)を可聴的及び/又は視覚的に出力する(ステップS16)。ここで、除細動処理を促すためのガイダンスの一例として、「電気ショックが必要です。電気ショックを患者に与える場合には、蓋部2を開けてください。」等のメッセージが可聴的及び/又は視覚的に出力されてもよい。次に、AED制御部10は、一対の電極パッド5a,5bが患者に装着されていると共に、電源オフ操作が電源操作部4に対して行われている状態かどうかを判定する(ステップS17)。ステップS17の判定結果がNoである場合、本処理はステップS8に進む。一方、ステップS17の判定結果がYesである場合、本処理はステップS11に進む。その後、ステップS12の判定処理を通じてステップS3以降の処理が繰り返し実行される。
【0033】
本実施形態によれば、一対の電極パッド5a,5bが患者に装着されていると共に、電源オフ操作が電源操作部4に対して行われたかどうか(即ち、蓋部2が閉じられたかどうか)が判定される。当該判定の結果に応じてAED1の電源のオン状態を維持したままで患者に電気ショックを与える除細動処理がキャンセルされる。このように、除細動処理を実行する前に患者の意識が回復した状況において、AED1の電源のオン状態を維持したままで除細動処理をキャンセルすることが可能となる。この点において、従来の全自動のAEDでは、除細動処理をキャンセルするためにAEDの電源を完全にオフにする必要があるため、患者の心電図を再度解析する場合にはAEDの再起動から心電図解析処理に遷移するまでの待ち時間が発生してしまう。一方で、本実施形態では、AED1の電源オン状態を維持したままでAED1の除細動処理のみをキャンセルすることができる。換言すると、完全に電源がオフされる従来のAEDと比較すると、本実施の形態に係るAED1では、例えば、AED1の起動時に実行される初期化処理(ステップS1)を省略することができる。さらに、除細動処理がキャンセルされた後であっても、患者の心電図解析が継続されると共に、除細動処理が必要であるかどうかの判定が継続される。即ち、除細動処理がキャンセルされた後であっても、AED制御部10による患者の心電図信号(心電図データ)の取得が継続される。心電図信号(心電図データ)の取得が継続されることにより、除細動処理のキャンセル後でも患者の状態を後に参照できる。このように、操作者が除細動処理をキャンセルしたい場面におけるAED1のユーザビリティを飛躍的に向上させることが可能となる。
【0034】
また、本実施形態では、蓋部2が閉じられる場合に電源オフ操作が電源操作部4に対して行われる。このように、操作者は、電極パッド5a,5bが患者に装着されている状態で、蓋部2を閉じることで除細動処理をキャンセルすることができる。したがって、比較的簡単な操作によって電源オンを維持したまま除細動処理をキャンセルすることが可能となる。
【0035】
また、本実施形態では、除細動処理を促すためのガイダンス(ステップS16)及び患者にCPRを行うように促すためのガイダンス(ステップS11)が可聴的及び/又は視覚的に出力される。このように、操作者は、これらのガイダンスを通じて患者に適切な処置を施すことができる。特に、ステップS10の除細動処理がキャンセルされた後にステップS12,S3-S4,S13-15の処理を経由して、除細動処理を促すためのガイダンスが出力されるため、操作者は、当該ガイダンスを通じて患者に除細動処理を施す必要があることを明確に認識することができる。
【0036】
以上、本発明の実施形態について説明をしたが、本発明の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではない。本実施形態は一例であって、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【0037】
例えば、本実施形態では、電極パッド5a,5bが患者に装着されていると共に、電源オフ操作が電源操作部4に対して行われたかどうかの判定の結果に応じて、除細動処理がキャンセルされているが、本実施形態はこれに限定されるものではない。この点において、AED制御部10は、電極パッドが患者に装着されていると共に、AED1に対して所定の操作(例えば、AED1に設けられた所定のボタンに対する操作)が行われたかどうかの判定の結果に応じて、除細動処理をキャンセルしてもよい。また、本実施形態では、蓋部2の開閉に応じて電源操作部4に対して電源オン操作又は電源オフ操作が行われているが、電源オン操作又は電源オフ操作は、蓋部2の開閉に関連付けられていなくてもよい。
【0038】
図4に示す一連の処理の順番は単なる一例であって、各処理の順番は適宜変更されてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1:AED(自動体外式除細動器)
2:蓋部
3:筐体部
4:電源操作部
5a,5b:電極パッド
6:パッドケーブル
7:表示部
8:音声出力部
9:インジケータ
10:AED制御部
12:外部通信部
13:記憶部
14:バッテリー制御部
15:バッテリー
16:高電圧発生回路
17:エネルギー蓄積部
18:ECG処理回路
20:パッドコネクタ
図1
図2
図3
図4