(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023104247
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20230721BHJP
【FI】
B41J2/01 303
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022005121
(22)【出願日】2022-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087000
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 淳一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 広信
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EB13
2C056EB36
2C056FA10
2C056HA32
2C056HA37
2C056KD06
(57)【要約】
【課題】キャリッジが移動するに際して、当該移動前の当該キャリッジにおける当該移動の進行方向側に位置する媒体の浮きを検出することができるとともに、当該移動前の当該キャリッジにおける当該移動の進行方向側とは逆方向側に位置する媒体の浮きも検出することができるようにする。
【解決手段】キャリッジの主走査方向における一方の端部と他方の端部とにそれぞれ配置された検出機構を有し、検出機構は、媒体と予め設定された間隔を開けてキャリッジに対して配置された検出板と、検出板をキャリッジ側に引き付ける与圧機構と、キャリッジ側に向けて突出するように検出板に形成されたガイドピンと、キャリッジ側に形成されるとともにガイドピンを予め設定されたクリアランスを開けて収容し、ガイドピンを中心に検出板を揺動可能に配置する凹部と、検出板がガイドピンを中心に揺動することによる検出板の傾きを検出する検知手段とを有する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に対して主走査方向において相対的に移動可能なキャリッジに搭載したインクヘッドを備え、前記インクヘッドから前記媒体に対してインクジェット方式によりインクを吐出して印刷を行うインクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置において、
キャリッジの主走査方向における一方の端部と他方の端部とにそれぞれ配置された検出機構を有し、
前記検出機構は、
媒体と予め設定された間隔を開けて前記キャリッジに対して配置された検出板と、
前記検出板を前記キャリッジ側に引き付ける与圧機構と、
前記キャリッジ側に向けて突出するように前記検出板に形成されたガイドピンと、
前記キャリッジ側に形成されるとともに前記ガイドピンを予め設定されたクリアランスを開けて収容し、前記ガイドピンを中心に前記検出板を揺動可能に配置する凹部と、
前記検出板が前記ガイドピンを中心に揺動することによる前記検出板の傾きを検出する検知手段と
を有することを特徴とするインクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置において、
前記検出板は、前記媒体と対向して配置される軟性材料により形成され、予め設定された荷重で屈曲可能に形成された検出プレートを有する
ことを特徴とするインクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載のインクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置において、
前記検出プレートを屈曲させる荷重は、前記検出板を傾ける際の力よりも大きい
ことを特徴とするインクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置。
【請求項4】
請求項1、2または3のいずれか1項に記載のインクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置において、
前記凹部は、前記検出板に対向して突出して形成された凸形状部材に設けられた
ことを特徴とするインクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置。
【請求項5】
請求項1、2、3または4のいずれか1項に記載のインクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置において、
前記ガイドピンは略半球形状を備え、
前記凹部は略半円筒型凹形状を備えた
ことを特徴とするインクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置。
【請求項6】
請求項5に記載のインクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置において、
前記ガイドピンの外径よりも前記凹部の外径の方が大きく、
前記ガイドピンの突出高さよりも前記凹部の凹み深さの方が大きい
ことを特徴とするインクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置。
【請求項7】
請求項1、2、3、4、5または6のいずれか1項に記載のインクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置において、
前記クリアランスは0.3mmである
ことを特徴とするインクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置。
【請求項8】
請求項1、2、3、4、5、6または7のいずれか1項に記載のインクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置において、
前記与圧機構は、付勢部材を備え、
前記付勢部材の付勢力により、前記検出板を前記キャリッジ側に引き付ける
ことを特徴とするインクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置。
【請求項9】
請求項8に記載のインクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置において、
前記付勢部材は、バネまたは弾性体である
ことを特徴とするインクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置。
【請求項10】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8または9のいずれか1項に記載のインクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置において、
前記検知手段は、前記キャリッジにおいて前記検出板の上方部位に配置された
ことを特徴とするインクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置。
【請求項11】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9または10のいずれか1項に記載のインクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置において、
前記検知手段は、フォトセンサー、磁気センサーまたはリミットスイッチである
ことを特徴とするインクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置に関する。さらに詳細には、本発明は、インクジェット方式により媒体(メディア)に対してインクを吐出して印刷を行うインクジェットプリンタにおいて、ジャムの発生を誘因する媒体の浮きを検出するインクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置に関する。
【0002】
なお、本明細書ならびに本特許請求の範囲において「媒体(メディア)」とは、普通紙などの紙類よりなる各種の記録媒体は勿論のこと、PVC、ポリエステルなどの樹脂材料のような各種の可撓性を備えた材料やアルミ、鉄、木材のような材料などの各種材料が含まれるものとする。
また、本明細書ならびに本特許請求の範囲において「インクジェット方式」とは、二値偏向方式あるいは連続偏向方式などの各種の連続方式や、サーマル方式あるいは圧電素子方式などの各種のオンデマンド方式を含む、従来より公知の各種の手法によるインクジェット技術による印刷方法を意味するものとする。
【背景技術】
【0003】
一般に、コンピューターシステムによって全体の動作を制御され、記録紙などの媒体を載置する載置台を備え、当該載置台上に載置された当該媒体の上方において所定の方向に移動可能なキャリッジを配設するとともに当該キャリッジにインクヘッドを搭載し、このインクヘッドを用いて媒体に対してインクジェット方式により所望の印刷を行うようにしたインクジェットプリンタが知られている。
なお、こうしたインクジェットプリンタにおけるキャリッジの移動方向を、本明細書ならびに本特許請求の範囲においては、「主走査方向」と適宜に称することとする。
ここで、上記したインクジェットプリンタにおいて、インクヘッドと媒体との間の間隔は、印刷精度ならびに印刷品質の向上を図るために、例えば、1mm~2mmなどのような極めて狭い間隔に設定されている。
即ち、インクジェットプリンタにおいてキャリッジに搭載されたインクヘッドは、キャリッジが主走方向に高速で移動することにより、上記した極めて狭い間隔を開けて媒体上を主走査方向に高速で走査することになる。
【0004】
ところで、上記したようなインクジェットプリンタにおいては、印刷の際に媒体がインクを吸収して膨張してしまうことなどにより、所謂、紙浮き(媒体の浮き)を発生する場合があることが知られている。
なお、こうした媒体の浮きは、媒体の端部や端部以外の部分などの各種の部位に発生することが知られている。
そして、こうした媒体の浮きが存在する場合には、仮に当該浮きの量が僅かであっても、インクヘッドと媒体との間隔が非常に狭いため、当該浮きにインクヘッドやキャリッジが接触すると、媒体をインクヘッドやキャリッジの下面や側面に巻き込んでしまい、このためキャリッジに対して当該キャリッジの搬送力以上の負荷がかかることになり、キャリッジの主走査方向への走査が不可能になってジャムを発生する場合が屡々ある。
【0005】
従来、インクジェットプリンタにおいては、こうしたジャムの発生を未然に防止するために、例えば、特開平9-39221号公報に開示されているように、ジャムの発生を誘因する媒体の浮きを検知する浮き検知機構が設けられている。
ここで、特開平9-39221号公報に開示されている浮き検知機構は、左右方向に延長する主走査方向に沿って移動するキャリッジの当該主走査方向における一方の端部(左端部)に第1の浮き検知機構が設けられるとともに当該主走査方向における他方の端部(右端部)に第2の浮き検知機構が設けられている。
そして、特開平9-39221号公報に開示されている浮き検知機構は、第1の浮き検知機構によりキャリッジが主走査方向に沿って左方へ移動する際における媒体の浮きを検知し、一方、第2の浮き検知機構によりキャリッジが主走査方向に沿って右方へ移動する際における媒体の浮きを検知するものであった。
このため、特開平9-39221号公報に開示された浮き検知機構によれば、キャリッジの進行方向側の端部から当該進行方向側に向かって存在する媒体の浮きについては検知することができる。
【0006】
しかしながら、特開平9-39221号公報に開示された浮き検知機構においては、例えば、キャリッジが主走査方向左方へ移動する際に第1の浮き検知機構を抜けて当該キャリッジの下面側に位置するようになった媒体の浮きや、キャリッジの移動前にもともとキャリッジの下面側に発生していた媒体の浮きについては、こうした媒体の浮きを第2の浮き検知機構では検知することができずにジャムが発生していたという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来の技術の有する上記したような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、インクジェットプリンタにおいてキャリッジが移動するに際して、当該移動前の当該キャリッジにおける当該移動の進行方向側に位置する媒体の浮きを検出することができるとともに、当該移動前の当該キャリッジにおける当該移動の進行方向側とは逆方向側に位置する媒体の浮きも検出することができるようにしたインクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するために、本発明によるインクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置は、主走査方向に沿って移動するキャリッジの当該主走査方向における一方の端部に設けられた第1の浮き検出機構と当該主走査方向における他方の端部に設けられた第2の浮き検出機構とを有し、当該第1の浮き検出機構と当該第2の浮き検出機構とのそれぞれが、当該キャリッジに対して当該移動の進行方向側に位置する媒体の浮きと当該進行方向側とは逆方向側に位置する媒体の浮きとを検出するようにしたものである。
従って、本発明によるインクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置によれば、キャリッジが移動する際には、当該移動前の当該キャリッジにおける当該移動の進行方向側に位置する媒体の浮きを検出することができるようになり、かつ、当該移動前の当該キャリッジにおける当該移動の進行方向側とは逆方向側に位置する媒体の浮きを検出することができるようになる。
【0010】
即ち、本発明によるインクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置は、媒体に対して主走査方向において相対的に移動可能なキャリッジに搭載したインクヘッドを備え、上記インクヘッドから上記媒体に対してインクジェット方式によりインクを吐出して印刷を行うインクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置において、キャリッジの主走査方向における一方の端部と他方の端部とにそれぞれ配置された検出機構を有し、上記検出機構は、媒体と予め設定された間隔を開けて上記キャリッジに対して配置された検出板と、上記検出板を上記キャリッジ側に引き付ける与圧機構と、上記キャリッジ側に向けて突出するように上記検出板に形成されたガイドピンと、上記キャリッジ側に形成されるとともに上記ガイドピンを予め設定されたクリアランスを開けて収容し、上記ガイドピンを中心に上記検出板を揺動可能に配置する凹部と、上記検出板が上記ガイドピンを中心に揺動することによる上記検出板の傾きを検出する検知手段とを有するようにしたものである。
また、本発明によるインクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置は、上記した本発明によるインクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置において、上記検出板は、上記媒体と対向して配置される軟性材料により形成され、予め設定された荷重で屈曲可能に形成された検出プレートを有するようにしたものである。
また、本発明によるインクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置は、上記した本発明によるインクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置において、上記検出プレートを屈曲させる荷重は、上記検出板を傾ける際の力よりも大きいようにしたものである。
また、本発明によるインクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置は、上記した本発明によるインクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置において、上記凹部は、上記検出板に対向して突出して形成された凸形状部材に設けられたものである。
また、本発明によるインクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置は、上記した本発明によるインクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置において、上記ガイドピンは略半球形状を備え、上記凹部は略半円筒型凹形状を備えたものである。
また、本発明によるインクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置は、上記した本発明によるインクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置において、上記ガイドピンの外径よりも上記凹部の外径の方が大きく、上記ガイドピンの突出高さよりも上記凹部の凹み深さの方が大きいものである。
また、本発明によるインクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置は、上記した本発明によるインクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置において、上記クリアランスを0.3mmとしたものである。
また、本発明によるインクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置は、上記した本発明によるインクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置において、上記与圧機構は、付勢部材を備え、上記付勢部材の付勢力により、上記検出板を上記キャリッジ側に引き付けるようにしたものである。
また、本発明によるインクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置は、上記した本発明によるインクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置において、上記付勢部材をバネまたは弾性体としたものである。
また、本発明によるインクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置は、上記した本発明によるインクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置において、上記検知手段を上記キャリッジにおいて上記検出板の上方部位に配置したものである。
また、本発明によるインクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置は、上記した本発明によるインクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置において、上記検知手段をフォトセンサー、磁気センサーまたはリミットスイッチとしたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、以上説明したように構成されているので、インクジェットプリンタにおいてキャリッジが移動するに際して、当該移動前の当該キャリッジにおける当該移動の進行方向側に位置する媒体の浮きを検出することができるようになるとともに、当該移動前の当該キャリッジにおける当該移動の進行方向側とは逆方向側に位置する媒体の浮きも検出することができるようになるという優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態の一例によるインクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置を備えたインクジェットプリンタを模式的に示す斜視構成説明図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すインクジェットプリンタにおいて外装部材を取り外した状態を模式的に示す斜視構成説明図である。
【
図3】
図3は、
図1に示すインクジェットプリンタの縦断面を模式的に示す断面構成説明図である。
【
図4】
図4は、
図2のA矢視(正面視)において、本発明の実施の形態の一例によるインクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置の構成を模式的に示す構成説明図である。
【
図5】
図5は、
図2のB矢視(左側面視)において、本発明の実施の形態の一例によるインクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置の構成を模式的に示す構成説明図である。
【
図6】
図6は、
図2のA矢視(正面視)において、本発明の実施の形態の一例によるインクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置を構成する第1の検出機構である左方検出機構について、構成部材の一部を破断した状態を模式的に示す構成説明図である。
【
図7】
図7は、
図6のC矢視(左側面視)において、本発明の実施の形態の一例によるインクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置を構成する第1の検出機構である左方検出機構における検出板を中心とした構成を模式的に示す構成説明図である。
【
図8】
図8は、
図6のC矢視(左側面視)において、キャリッジの左方外側下端部の構成を模式的に示す構成説明図である。
【
図9】
図9(a)は、
図7のD-D線による断面の構成を模式的に示す構成説明図である。また、
図9(b)は、
図9(a)の分解構成説明図である。
【
図10】
図10(a)は、
図7のE-E線ならびにF-F線による断面の構成を模式的に示す構成説明図である。また、
図10(b)は、
図10(a)の分解構成説明図である。
【
図11】
図11は、本発明の実施の形態の一例によるインクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置を備えたインクジェットプリンタの印刷時の状態(媒体の浮きを検出していない状態)を示す動作説明図である。
【
図12】
図12は、本発明の実施の形態の一例によるインクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置を備えたインクジェットプリンタの印刷時の状態(媒体の浮きを検出している状態)を示す動作説明図である。
【
図13】
図13は、本発明の実施の形態の一例によるインクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置を備えたインクジェットプリンタの印刷時の状態(媒体の浮きを検出している状態)を示す動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明によるインクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置の実施の形態の一例を詳細に説明することとする。
【0014】
(I) 本発明によるインクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置を備えたインクジェットプリンタの全体の構成の説明
【0015】
以下の説明において、XYZ直交座標系におけるY方向はキャリッジ20(後述する。)の移動方向である主走査方向を示し、また、XYZ直交座標系におけるX方向はXY平面においてY方向(主走査方向)と直交する方向である副走査方向を示し、また、XYZ直交座標系におけるZ方向はXY平面と直交する高さ方向を示す。
さらに、以下の説明においては、説明の便宜上、Y方向(主査方向)については
図1を記載した紙面における左方側を左方向とするとともに右方側を右方向とし、X方向(副走査方向)については
図1を記載した紙面の下方側を前方向とするとともに上方側を後方向とし、Z方向(高さ方向)については
図1を記載した紙面の下方側を下方向とするとともに上方側を上方向として説明する。
なお、上記した方向については、説明の便宜上定めた方向に過ぎないものであって、インクジェットプリンタの設置態様を何ら限定するものではないことは勿論であって、また、本発明を何ら限定するものでもないことも勿論である。
【0016】
符号10は、所謂、フラットベッドタイプのインクジェットプリンタを示し、このインクジェットプリンタ10は、インクヘッド22からインクジェット方式により媒体12上にインクを吐出して画像などを印刷する。
より詳細には、インクジェットプリンタ10は、XY平面が矩形状の基台部14と、予め設定された領域の空間Aを空けて基台部14を上方から被覆するようにして基台部14に配設された外装部材16と、空間A内にX方向(副走査方向)ならびにZ方向(高さ方向)に移動自在かつ上面18aがXY平面と平行となるように配置された矩形板状の載置台18と、空間A内の載置台18の上方においてY方向(主走査方向)に移動自在に配設されたキャリッジ20と、キャリッジ20に搭載されたインクヘッド22と、キャリッジ20の左方外側下端部20Lに配設された第1の検出機構である左方検出機構100Lと、キャリッジ20の右方外側下端部20Rに配設された第2の検出機構である右方検出機構100Rとを有している。
なお、インクジェットプリンタ10による印刷の対象である媒体12は、載置台18の上面18aにおける適宜の位置に載置される。
【0017】
ここで、本発明によるインクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置は、上記した左方検出機構100Lと右方検出機構100Rとを有して構成されている。
なお、符号20aはキャリッジ20を被覆するキャリッジカバーであり、インクヘッド22はキャリッジカバー20aにより覆われてキャリッジ20に搭載されている。
また、キャリッジ20は、後述するように、載置台18に対してY方向(主査方向)、X方向(副走査方向)ならびにZ方向(高さ方向)において相対的に移動自在に構成されている。
【0018】
こうしたインクジェットプリンタ10にはコンピューターシステム(図示せず。)が搭載されており、使用者は外装部材16の上面右端部に配設された操作パネル24に設けられた各種の操作子を操作することによって、当該コンピューターシステムによりインクジェットプリンタ10全体の動作を制御することができる。
【0019】
即ち、操作パネル24には、詳細な図示は省略するが、使用者が画像の印刷に関する設定操作や入力操作などの各種の操作を行うための操作子や当該操作子の操作状況などを表示する表示部などが設けられている。
具体的には、表示部には、例えば、印刷の種類、解像度、印刷の状況ならびに印刷領域の設定などの印刷に関する情報などが表示される。
また、操作子としては、例えば、インクジェットプリンタ10の電源をオン/オフするスイッチや、印刷に関する情報を設定するための入力ボタンなどが配設されている。
【0020】
ここで、外装部材16は、下面が開口した箱型形状を備えるとともに、前方部位には開閉可能なカバー部材26が設けられている。
また、外装部材16は、その下方部位において基台部14に着脱自在に取り付けられている。
【0021】
さらに詳細に説明すると、インクジェットプリンタ10は、載置台18の上方においてY方向(主走査方向)に沿って延長するようにして、基台部14上に配設されたフレーム28を有している。
このフレーム28の前面にはY方向(主走査方向)に沿って延長するガイドレール30が設けられており、このガイドレール30にキャリッジ20がY方向(主走査方向)に摺動自在に係合されている。
【0022】
ここで、インクジェットプリンタ10においては、ガイドレール30上においてキャリッジ20をY方向(主走査方向)に沿って往復移動自在にする構成として、ガイドレール30の左側端部よりも左方に設けられた左側プーリー32と、ガイドレール30の右側端部よりも右方に設けられた右側プーリー34と、左側プーリー32と右側プーリー34とに巻回された無端状のベルト36と、右側プーリー34に接続され当該右側プーリー34を回転するモーター38と有している。
そして、ベルト36の予め設定された箇所にキャリッジ20が固定されており、モーター38が駆動して右側プーリー34を回転することにより、左側プーリー32と右側プーリー34との間でベルト36が走行し、これによりベルト36に固定されたキャリッジ20がY方向(主走査方向)に移動する。
【0023】
本実施の形態においては、インクヘッド22は、媒体12へ向けてインクジェット方式によりインクを吐出するノズルを下方に位置するようにして、キャリッジ20内に配設されている。
なお、キャリッジ20の下方部位は開口しており、インクヘッド22のノズルから媒体12へ向けてのインクの吐出の障碍とならないように形成されている。
【0024】
次に、インクジェットプリンタ10は、上記したように媒体12を載置する載置台18を備えているが、この載置台18はXY平面に沿って延長する板状体により形成されている。
なお、載置台18とインクヘッド22とのZ方向(高さ方向)における位置関係について説明すると、載置台18は、インクヘッド22のノズルの下方位置に配置されている。
【0025】
ここで、インクジェットプリンタ10においては、載置台18をX方向(副走査方向)へ移動する副走査方向移動機構40と、載置台18をZ方向(高さ方向)へ移動する高さ方向移動機構42とを備えている。
【0026】
こうした副走査方向移動機構40は、基台部14内に収容されており、X方向(副走査方向)に延長するとともに基台部14に設けられた右側スライドレール44Rと、右側スライドレール44Rと平行となるようにX方向(副走査方向)に延長するとともに基台部14に設けられた左側スライドレール(図示せず。)と、右側スライドレール44Rと左側スライドレールとに摺動自在に係合してガイドされてX方向(副走査方向)に往復移動自在な支持部材46と、支持部材46に接続された支持部材移動用モーター(図示せず。)とを有して構成されている。
なお、支持部材46は箱型状に形成されており、上方に向けて開口する開口部46aが形成されている。
従って、副走査方向移動機構40によれば、支持部材移動用モーターが駆動されて回転することによって、支持部材46は右側スライドレール44Rおよび左側スライドレールに沿ってX方向(副走査方向)に移動される。
【0027】
次に、上記した高さ方向移動機構42は、支持部材46内に収容されており、Z方向(高さ方向)へ延長する複数のガイド支柱48と、ガイド支柱48に摺動自在に係合してガイドされてZ方向(高さ方向)に往復移動自在な箱型形状の載置台支持ケース50と、載置台支持ケース50に接続された載置台支持ケース移動用モーター(図示せず。)と有して構成されている。
なお、載置台支持ケース50上面に載置台18が固定され、載置台18は載置台支持ケース50により支持される。
従って、高さ方向移動機構42によれば、載置台支持ケース移動用モーターが駆動されて回転することによって、載置台支持ケース50はガイド支柱48に沿ってZ方向(高さ方向)に移動される。
【0028】
(II) 本発明によるインクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置の詳細な構成の説明
上記において説明したように、本発明によるインクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置は、キャリッジ20の左方外側下端部20Lに配設された第1の検出機構である左方検出機構100Lと、キャリッジ20の右方外側下端部20Rに配設された第2の検出機構である右方検出機構100Rとを有して構成されている。
【0029】
これら左方検出機構100Lと右方検出機構100Rとは、それぞれキャリッジ20の左方外側下端部20Lと右方外側下端部20Rとに対して、それぞれの構成部材を対称の関係で配置して構成されている。
従って、以下の説明においては、左方検出機構100Lに関して詳細に説明することとし、右方検出機構100Rについては、左方検出機構100Lの説明に際して各構成部材に付した符号中の「L」を「R」に変えて各構成部材に付して示すことにより、その詳細な説明は適宜に省略する。
【0030】
ここで、左方検出機構100Lは、キャリッジ20の左方外側下端部20L(右方検出機構100Rについては、キャリッジ20の右方外側下端部20Rである。)に対向して配置されるとともに、XY平面に対してZ方向に垂直に延長するようにして配置可能とされた検出板102Lを備えている。
この検出板102Lは、略平板形状を備えた金属剛体などより形成されたベースプレート104Lと、媒体12と当接した際に当該媒体12を棄損することのないようにゴムなどの軟性材料により形成された略平板形状の検出プレート106Lとを有して構成されている。
【0031】
ここで、検出プレート106Lは、Z方向において載置台18の上面18aに載置された媒体12と対向して配置されるものであるが、このときに媒体12とは予め設定された間隔を開けて配置されるように寸法設定されている。
【0032】
また、このベースプレート104Lの上端部は折り曲げられていて、検出板102LがXY平面に対してZ方向に垂直に延長するようにして配置されているときに、XY平面と平行に延長する領域である反射部104Laが形成されている。
【0033】
ここで、検出プレート106Lは、上記したようにゴムなどの軟性材料により形成されているため、当該軟性材料に応じた一定以上の荷重により屈曲して力を逃がす構成となっているものであり、これにより検出プレート106Lが媒体12の浮き12a(
図12ならびに
図13を参照する。)を押した際に当該媒体12を棄損することが抑制される。
また、検出プレート106Lを屈曲させる荷重は、検出プレート106Lが媒体12の浮き12a(
図12ならびに
図13を参照する。)を押して、その結果、検出板102Lが回動する際の力よりも大きく設定することが好ましい。
【0034】
なお、検出プレート106Lが媒体12の浮き12a(
図12ならびに
図13を参照する。)を押して、その結果、検出板102Lが回動する動作については、
図12ならびに
図13を参照しながら後に詳述する。
【0035】
一方、こうした反射部104Laの上方位置には、検知手段としてのフォトセンサー108Lが配設されている。
より詳細には、フォトセンサー108Lは、キャリッジ20の左方外側下端部20L(フォトセンサー108Rについては、キャリッジ20の右方外側下端部20Rである。)に取り付けられている。
フォトセンサー108Lには、光を出射する発光部108Laと、発光部108Laから出射された光(出射光)の反射光を受光可能な受光部108Lbとが設けられている。
【0036】
ここで、検出板102Lとフォトセンサー108Lとは、キャリッジ20の左方外側下端部20Lにおいて、検出板102LがXY平面に対してZ方向に垂直に延長するようにして配置されていて、反射部104LaがXY平面と平行に延長して位置するときに、反射部104Laにより発光部108Laから出射された光(出射光)を反射して、受光部108Lbにより当該反射した光である反射光を受光可能な位置関係に配置されている。
即ち、反射部104LaがXY平面と平行に延長して位置するときには、反射部104Laが発光部108Laから出射された光(出射光)を受光部108Lbに向けて反射することができ、受光部108Lbは当該反射した光である反射光を受光可能であるが、一方、反射部104LaがXY平面と平行に延長して位置していないときには、反射部104Laが発光部108Laから出射された光(出射光)を受光部108Lbに向けて反射することができず、受光部108Lbは当該反射した光である反射光を受光することができない。
【0037】
なお、本実施の形態においては、フォトセンサー108Lにおいて、受光部108Lbが発光部108Laから出射された光(出射光)の反射光を受光している状態をオフ(OFF:媒体12の浮き12aを検出していない状態)とし、受光部108Lbが発光部108Laから出射された光を受光していない状態をオン(ON:媒体12の浮き12aを検出した状態)としている。
【0038】
また、上記したようなフォトセンサー108Lは、従来より公知の技術を適用することにより構成することができるので、その詳細な説明については省略する。
【0039】
次に、主に
図6、
図7、
図8ならびに
図9(a)(b)を参照しながら、キャリッジ20へのベースプレート104Lの取り付け方法について説明すると、XZ平面におけるベースプレート104Lの略中央部には、キャリッジ20側に向けて突出するキャリッジ取り付けピン110Lが形成されている。
一方、キャリッジ20の左方外側下端部20Lの壁面20Laには、キャリッジ取り付けピン110Lが予め設定された間隙を開けて挿通可能な貫通穴20Lbが形成されている。
【0040】
ベースプレート104Lは、キャリッジ取り付けピン110Lを左方側から右方側に向けて貫通穴20Lbに挿入するようにして、貫通穴20Lbにキャリッジ取り付けピン110Lを挿通して壁面20Laに係止され、さらに、キャリッジ取り付けピン110Lには、付勢部材である伸張方向への付勢力を備えたコイルバネ112Lが挿通される。
【0041】
ここで、符号114Lはワッシャーであり、キャリッジ取り付けピン110Lの先端部側(右方側端部側)の端面に、ビス116Lにより固定されている。
上記したコイルバネ112Lは、右方側端部112Laをワッシャー114Lに当接するとともに、左方側端部112Lbを壁面20Laに当接するようにして、予め設定された伸張方向への付勢力を備えて配置される。
【0042】
従って、ベースプレート104Lのピン110を貫通穴20Lbに挿通し、その後にコイルスプリング112Lをピン110に挿通して、それからワッシャー114Lをビス116Lによりキャリッジ取り付けピン110Lの先端部側(右方側端部側)の端面に固定することにより、ベースプレート104Lは予め設定された付勢力によりキャリッジ20側に常に引き付けられて押さえられることになる。
即ち、左方検出機構100Lは、コイルバネ112Lの付勢力によって検出板102Lのベースプレート104Lをキャリッジ20側に常に引き付ける与圧機構を備えている。
【0043】
次に、主に
図6、
図7、
図8ならびに
図10(a)(b)を参照しながら、キャリッジ20へのベースプレート104Lの取り付け方法について説明すると、ベースプレート104Lのキャリッジ取り付けピン110LのX方向(副走査方向)の前方側と後方側とには、キャリッジ20側に向けて突出して略半球形状を形成したガイドピン120Lがそれぞれ形成されている。
一方、キャリッジ20の左方外側下端部20Lの壁面20Laには、予め設定されたクリアランス(間隙)を開けてガイドピン120Lを収容可能な略半円筒型凹形状を備えた凹部122aを設けたベースブロック122が配設されている。
【0044】
このベースブロック122は、検出板102Lのベースプレート104Lに対向して突出して形成された凸形状部材であり、ベースブロック122における凹部122aの周囲の領域は、XZ平面に平行な平面を備えた平坦部122bとして形成されている。
【0045】
ここで、上記した与圧機構におけるコイルバネ112Lの付勢力によって検出板102Lのベースプレート104Lがキャリッジ20側に引き付けられ、これによりガイドピン120Lが凹部122a内に収容されることになる。
この際に、ベースプレート104Lのキャリッジ20と対向する面におけるXZ平面に平行な平面を備えた平坦部124Lとベースブロック122の平坦部122bとが当接し、予め設定されたクリアランス(間隙)を開けて凹部122a内にガイドピン120Lが収容される。
【0046】
上記したクリアランス(間隙)については、例えば、ガイドピン120Lの外径αよりもベースブロック122の凹部122aの外径βの方が大きくなり(α<β)、かつ、ガイドピン120Lの突出高さγよりもベースブロック122の凹部122aの凹み深さδの方が大きくなる(γ<δ)ように設定されている。
具体的には、ガイドピン120Lと凹部122aとは、上記した与圧機構によりガイドピン120Lが凹部122a内に収容された際に、例えば、0.3mm程度のクリアランス(間隙)が開くように寸法設定すればよい。
【0047】
(III) 本発明によるインクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置の動作の説明
【0048】
ここで、インクジェットプリンタ10においては、キャリッジ20をY方向(主走査方向)において左方と右方とに往復移動させながら、媒体12に対して印刷を行うことになる。
この際に、キャリッジ20に取り付けられている検出板102Lは、キャリッジ20の移動時における加速動作や振動あるいはインクジェットプリンタ10全体が受ける振動などにより、ガイドピン120Lを中心にして矢印G(
図11を参照する。)に方向に揺動してXY平面に垂直な位置から傾く可能性がある。
【0049】
しかしながら、上記において説明したように、左方検出機構100Lは、コイルバネ112Lの付勢力によって検出板102Lのベースプレート104Lをキャリッジ20側に常に引き付ける与圧機構を備えているため、上記した加速動作や振動による矢印G方向への検出板102Lの揺動を著しく抑制することができる。
従って、インクジェットプリンタ10においては、キャリッジ20をY方向(主走査方向)に往復移動させながら媒体12に対して印刷を行う印刷動作の際においては、
図11に示すように、ベースプレート104Lの平坦部124Lとベースブロック122の平坦部122bとが当接し、予め設定されたクリアランス(間隙)を開けて凹部122a内にガイドピン120Lが収容された状態となり、検出板102LはXY平面に対して垂直位置にあり、かつ、反射部104LaはXY平面に対して水平位置にある。
この状態においては、フォトセンサー108Lは、受光部108Lbが発光部108Laから出射された光(出射光)の反射光を受光しているオフ状態となっている。
【0050】
しかしながら、
図12に示すように、キャリッジ20がY方向(主走査方向)左方に移動している際に媒体12に浮き12aがあると、相対的に媒体12の浮き12aが検出板102Lの検知プレート106LをY方向(主走査方向)右方に押すことになる。
これにより、検出板102Lは、ガイドピン120Lを中心にして矢印Hに方向に回動してXY平面に垂直な位置から傾く。
【0051】
ここで、検出板102Lが矢印Hに方向に回動して当該検出板102LがXY平面に垂直な位置から傾いても、ガイドピン120Lがベースブロック122の凹部122a内に収容されているので、検出板102Lは位置ずれを発生させることなく傾き、また、ガイドピン120Lが凹部122a内に収容された際に予め設定されたクリアランス(間隙)が開くように設定されているので、検出板102Lが傾いても凹部122a内においてガイドピン120Lが凹部122aにひっかかって抉ることなく滑らかに移動することができる。
【0052】
このように、検出板102Lは、相対的に媒体12の浮き12aが検出板102Lの検知プレート106LをY方向(主走査方向)右方に押す力が、上記した与圧機構によりキャリッジ20側に引き付けられている力よりも大きくなると矢印Hに方向に回動し、検出板102LがXY平面に対して垂直位置から傾き、かつ、反射部104LaはXY平面に対して水平位置から傾く。
【0053】
この状態においては、フォトセンサー108Lは、受光部108Lbが発光部108Laから出射された光(出射光)の反射光を受光することができずオン状態となり、これにより媒体12の浮き12aを検出することができる。
即ち、フォトセンサー108Lは検知板102の傾きを検知するものであり、これにより媒体12の浮き12aを検出することができる。
【0054】
また、
図13に示すように、キャリッジ20がY方向(主走査方向)右方に移動している際に媒体12に浮き12aがあると、相対的に媒体12の浮き12aが検出板102Lの検知プレート106LをY方向(主走査方向)左方に押すことになる。
これにより、検出板102Lは、ガイドピン120Lを中心にして矢印Iに方向に回動してXY平面に垂直な位置から傾く。
【0055】
ここで、検出板102Lが矢印Iに方向に回動して当該検出板102LがXY平面に垂直な位置から傾いても、ガイドピン120Lがベースブロック122の凹部122a内に収容されているので、検出板102Lは位置ずれを発生させることなく傾き、また、ガイドピン120Lが凹部122a内に収容された際に予め設定されたクリアランス(間隙)が開くように設定されているので、検出板102Lが傾いても凹部122a内においてガイドピン120Lが凹部122aにひっかかって抉ることなく滑らかに移動することができる。
【0056】
このように、検出板102Lは、相対的に媒体12の浮き12aが検出板102Lの検知プレート106LをY方向(主走査方向)左方に押す力が、上記した与圧機構によりキャリッジ20側に引き付けられている力よりも大きくなると矢印Iに方向に回動し、検出板102LがXY平面に対して垂直位置から傾き、かつ、反射部104LaはXY平面に対して水平位置から傾く。
【0057】
この状態においては、フォトセンサー108Lは、受光部108Lbが発光部108Laから出射された光(出射光)の反射光を受光することができずオン状態となり、これにより媒体12の浮き12aを検出することができる。
即ち、フォトセンサー108Lは検知板102の傾きを検知するものであり、これにより媒体12の浮き12aを検出することができる。
【0058】
従って、左方検出機構100Lによれば、キャリッジ20がY方向(主走査方向)において左方と右方とのどちらの方向に移動した際においても、媒体12の浮き12aを検出することができる。
【0059】
また、右方検出機構100Rにおいても、上記した左方検出機構100Lと同様な動作が行われ、キャリッジ20がY方向(主走査方向)において左方と右方とのどちらの方向に移動した際においても、媒体12の浮き12aを検出することができる。
【0060】
(IV) 本発明によるインクジェットプリンタにおける媒体の浮き検出装置の作用効果の説明
以上において説明したように、左方検出機構100Lと右方検出機構100Rとを有して構成される本発明によるインクジェットプリンタ10における媒体の浮き検出装置は、インクジェットプリンタ10においてキャリッジ20が移動するに際して、当該移動前の当該キャリッジ20における当該移動の進行方向側に位置する媒体12の浮き12aを検出することができるとともに、当該移動前の当該キャリッジ20における当該移動の進行方向側とは逆方向側に位置する媒体12の浮き12aも検出することができるようになる。
【0061】
(V)その他の実施の形態および変形例の説明
上記した実施の形態は例示に過ぎないものであり、本発明は他の種々の形態で実施することができる。即ち、本発明は、上記した各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。
例えば、上記した実施の形態は、以下の(V-1)乃至(V-12)に示すように変形するようにしてもよい。
【0062】
(V-1) 上記した実施の形態においては、与圧機構を構成する付勢部材としてコイルバネを用いた場合について説明したが、与圧機構を構成する付勢部材はコイルバネに限られるものではないことは勿論である。
即ち、与圧機構を構成する付勢部材としては、例えば、板バネや弦巻バネなどのようなバネあるいはゴムなどの弾性体などでもよく、設計条件などに応じて適宜に選択して用いるようにすればよい。
【0063】
(V-2) 上記した実施の形態においては、検知手段としてフォトセンサーをキャリッジに取り付けた場合について説明したが、フォトセンサーの取り付け場所はキャリッジに限られるものではないことは勿論である。
即ち、検出板の傾きが検知できる場所であれば、設計条件などに応じて適宜の場所を選択してフォトセンサーを取り付ければよい。
【0064】
(V-3) 上記した実施の形態においては、検知手段としてフォトセンサーを用いた場合について説明したが、検知手段はフォトセンサーに限られるものではないことは勿論である。
即ち、検知手段としては、例えば、磁気センサーやリミットスイッチなどを、設計条件などに応じて適宜に選択して用いるようにすればよい。
【0065】
(V-4) 上記した実施の形態においては、ベースプレートを金属剛体により形成し、また、検出プレートを軟性材料により形成したが、これに限られるものではないことは勿論である。
即ち、ベースプレートや検出プレートを形成する材料については、設計条件などに応じて適宜に選択して用いるようにすればよい。
【0066】
(V-5) 上記した実施の形態においては、検出板はベースプレートと検出プレートとの2個の部材を用いて構成するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論である。
即ち、検出板は、単体の部材により構成するようにしてもよいし、3個以上の部材をを用いて構成するようにしてもよい。
また、検出板は形成する材料については、設計条件などに応じて適宜に選択して用いるようにすればよい。
【0067】
(V-6) 上記した実施の形態においては、キャリッジとベースブロックとを別体に構成し、キャリッジに対してベースブロックを配設するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論である。
例えば、キャリッジを形成する際に、予め壁面にベースブロックを一体成型して構成するようにしてもよい。
【0068】
(V-7) 上記した実施の形態においては、凹部122aが略半円筒型凹形状を備える場合について説明したが、凹部122aの形状はこれに限られるものではないことは勿論であり、例えば、凹部122aが略半球型凹形状を備えるようにしてもよい。
【0069】
(V-8) 上記した実施の形態においては、キャリッジが載置台に対してY方向(主走査方向)に移動する場合について説明したが、これに限られるものではないことは勿論である。
例えば、載置台がキャリッジに対してY方向(主走査方向)に移動するようにしてもよいし、あるいは、キャリッジと載置台との双方がY方向(主走査方向)に移動するようにしてもよい。
要するに、キャリッジと媒体とがY方向(主走査方向)において相対的に移動可能な構成とすればよい。
【0070】
(V-9) 上記した実施の形態においては、載置台18をキャリッジ20に対してX方向(副走査方向)に相対的に移動させる場合について説明したが、これに限られるものではないことは勿論である。例えば、載置台18をX方向(副走査方向)に対して固定的に設置しておき、載置台18に対してキャリッジ20をY方向(主走査方向)ならびにX方向(副走査方向)に相対的に移動自在に構成するようにしてもよい。
【0071】
(V-10) 上記した実施の形態においては、載置台18をキャリッジ20に対してZ方向(高さ査方向)に相対的に移動させる場合について説明したが、これに限られるものではないことは勿論である。例えば、載置台18をZ方向(高さ査方向)に対して固定的に設置しておき、載置台18に対してキャリッジ20をZ方向(高さ査方向)に相対的に移動自在に構成するようにしてもよい。
【0072】
(V-11) 上記した実施の形態においては、インクジェットプリンタとして、所謂、フラットベッドタイプのインクジェットプリンタ10について説明したが、これに限られるものではないことは勿論である。インクジェットプリンタとしては、例えば、ロール状に巻回された媒体をX方向(副走査方向)に搬送しながら印刷を行うRoll-to-Rollタイプのような、所謂、ペーパームーブタイプのインクジェットプリンタもあり、こうしたインクジェットプリンタに対して本発明を適用するようにしてもよい。
【0073】
(V-12)上記した実施の形態ならびに上記した(V-1)乃至(V-11)に示す各種の他の実施の形態や変形例は、適宜に組み合わせるようにしてもよいことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、インクジェット方式により媒体に対してインクを吐出して印刷を行うインクジェットプリンタに用いて好適である。
【符号の説明】
【0075】
10 インクジェットプリンタ
12 媒体
12a 浮き
14 基台部
16 外装部材
18 載置台
18a 上面
20 キャリッジ
20a キャリッジカバー
20L 左方外側下端部
20La 壁面
20Lb 貫通穴(与圧機構)
20R 右方外側下端部
22 インクヘッド
24 操作パネル
26 カバー部材
28 フレーム
30 ガイドレール
32 左側プーリー
34 右側プーリー
36 ベルト
38 モーター
40 副走査方向移動機構
42 高さ方向移動機構
44R 右側スライドレール
46 支持部材
46a 開口部
48 ガイド支柱
50 載置台支持ケース
100L 左方検出機構(第1の検出機構)(検出機構)
100R 右方検出機構(第2の検出機構)(検出機構)
102L 検出板
102R 検出板
104L ベースプレート
104R ベースプレート
104La 反射部
104Ra 反射部
106L 検出プレート
106R 検出プレート
108L フォトセンサー(検知手段)
108La 発光部(検知手段)
108Lb 受光部(検知手段)
108R フォトセンサー(検知手段)
108Ra 発光部(検知手段)
108Rb 受光部(検知手段)
110L キャリッジ取り付けピン(与圧機構)
112L コイルバネ(与圧機構)(付勢部材)
114L ワッシャー(与圧機構)
116L ビス(与圧機構)
120L ガイドピン
122 ベースブロック(凸形状部材)
122a 凹部
122b 平坦部
124L 平坦部
A 空間
α ガイドピンの外径
β ベースブロックの凹部の外径
γ ガイドピンの突出高さ
δ ベースブロックの凹部の凹部の凹み深さ