(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023104255
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】タイヤの製造方法および製造システム
(51)【国際特許分類】
B29D 30/06 20060101AFI20230721BHJP
【FI】
B29D30/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022005131
(22)【出願日】2022-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 健太
(72)【発明者】
【氏名】北原 翼
【テーマコード(参考)】
4F215
【Fターム(参考)】
4F215AH20
4F215AP11
4F215AP12
4F215AP14
4F215AR02
4F215AR08
4F215AR09
4F215AR12
4F215AR15
4F215VA11
4F215VD01
4F215VL01
4F215VL11
4F215VL22
4F215VM01
4F215VP11
(57)【要約】
【課題】タイヤ部材のタイヤ製造工程での経時的な収縮に起因して生じるタイヤ重量のバラつきを抑制できるタイヤの製造方法および製造システムを提供する。
【解決手段】長尺体Lのタイヤ1本分の個別サイズに相当する範囲S毎にマーク付与機2が付した識別マーク3を第一リーダ4aで読取り、隣り合う範囲Sに付された識別マーク3間の初期離間距離D1を第一測定機6aで測定して対応する識別マーク3と紐付けして演算部7に記憶し、長尺体Lをドラム体15aに供給する過程で第二リーダ4で読取った隣り合う範囲Sに付された識別マーク3間の使用時離間距離D2を第二測定機6bで測定し、距離D1と距離D2との差異Dに基づいて、その差異Dに対応する使用時離間距離D2に相当する範囲に対して長さ調整機構8による長さ調整操作をしてドラム体15aに巻付けた長尺体Lを切断機14bにより個別サイズに切断する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドラム体に巻付けた長尺体を切断してタイヤ1本分の個別サイズにしたタイヤ部材を含む複数種類のタイヤ部材を一体化してグリーンタイヤを成形し、このグリーンタイヤを加硫することでタイヤを製造するタイヤの製造方法において、
前記長尺体を製造した際に、前記長尺体のタイヤ1本分の個別サイズに相当する範囲毎に識別マークを付し、それぞれの前記識別マークを読み取るとともに前記長尺体の長手方向に隣り合う前記個別サイズに相当する範囲に付された前記識別マーク間の離間距離を測定して、測定したそれぞれの前記離間距離を初期離間距離として、対応するそれぞれの前記識別マークと紐付けして演算部に記憶しておき、
前記グリーンタイヤを成形する際に、前記長尺体をドラム体に供給する過程でそれぞれの前記識別マークを読取るとともに、前記長尺体の長手方向に隣り合う前記個別サイズに相当する範囲に付された前記識別マーク間の離間距離を測定し、この離間距離を使用時離間距離として前記演算部に入力し、前記演算部により、それぞれの前記初期離間距離と対応するそれぞれの前記使用時離間距離との差異を算出し、前記長尺体を前記ドラム体に供給する過程では、算出したそれぞれの前記差異の大きさに基づいて、それぞれの前記差異に対応するそれぞれの前記使用時離間距離に相当する範囲に対して単位長さ当たりの重量を目標範囲にするように長さ調整操作を行って前記長尺体を前記ドラム体に巻付け、前記ドラム体に巻き付けられた前記長尺体をタイヤ1本分の個別サイズに切断するタイヤの製造方法。
【請求項2】
前記長尺体を製造した際に、それぞれの前記初期離間距離に相当する範囲の重量を測定して、それぞれの前記重量を対応するそれぞれの前記識別マークと紐付けして前記演算部に記憶しておき、それぞれの前記重量の大きさに基づいて、対応するそれぞれの前記使用時離間距離に相当する範囲に対して前記長さ調整操作を行う請求項1に記載のタイヤ製造方法。
【請求項3】
前記長尺体を製造した際に、それぞれの前記初期離間距離に相当する範囲内において少なくとも一か所の断面形状を測定して、それぞれの前記断面形状を対応するそれぞれの前記識別マークと紐付けして前記演算部に記憶しておき、それぞれの前記断面形状に基づいて、対応するそれぞれの前記使用時離間距離に相当する範囲に対して前記長さ調整操作を行う請求項1または2に記載のタイヤ製造方法。
【請求項4】
前記長さ調整操作が、前記長尺体を前記ドラム体に外周面に向かって押圧しつつ前記ドラム体を回転させて巻き付ける際の押圧力の大きさを調整することである請求項1~3のいずれかに記載のタイヤの製造方法。
【請求項5】
前記長さ調整操作が、前記長尺体を前記ドラム体に供給する際の搬送速度と、前記ドラム体の回転速度との差異を調整することである請求項1~4のいずれかに記載のタイヤの製造方法。
【請求項6】
前記長さ調整操作が、前記長尺体を前記ドラム体に供給する際にその供給経路に形成される前記長尺体のダンサ量を調整することである請求項1~5のいずれかに記載のタイヤの製造方法。
【請求項7】
前記長さ調整操作が、前記長尺体を前記ドラム体に供給する搬送機構での搬送方向に対する搬送速度分布を変化させることである請求項1~6のいずれかに記載のタイヤの製造方法。
【請求項8】
前記長尺体が、未加硫ゴムが押出されて製造されたタイヤ部材、または、未加硫ゴムが圧延されて製造されたタイヤ部材である請求項1~7のいずれかに記載のタイヤの製造方法。
【請求項9】
複数種類のタイヤ部材のそれぞれを製造するそれぞれの部材製造設備と、複数種類の前記タイヤ部材を一体化してグリーンタイヤを成形する成形設備と、前記グリーンタイヤを加硫する加硫設備とを備えて、それぞれの前記部材製造設備には、長尺体を製造する長尺体製造機と、ドラム体に巻付けられた前記長尺体を切断してタイヤ1本分の個別サイズの前記タイヤ部材にする切断機とが含まれているタイヤの製造システムにおいて、
前記長尺体が製造された際に、前記長尺体のタイヤ1本分の個別サイズに相当する範囲毎に識別マークを付すマーク付与機と、それぞれの前記識別マークを読取る第一リーダと、前記長尺体の長手方向に隣り合う前記個別サイズに相当する範囲に付された前記識別マーク間の離間距離を初期離間距離として測定する第一測定機と、それぞれの前記初期離間距離と対応する前記識別マークとが紐付けされて記憶される演算部と、前記グリーンタイヤが成形される際に、前記長尺体をドラム体に供給する過程でそれぞれの前記識別マークを読取る第二リーダと、前記長尺体の長手方向に隣り合う前記個別サイズに相当する範囲に付された前記識別マーク間の離間距離を使用時離間距離として測定する第二測定機と、前記長尺体を前記ドラム体に供給する過程で前記長尺体に対して長さ調整操作を行う長さ調整機構と、この長さ調整機構を制御する制御部とを有し、
前記演算部により、それぞれの前記初期離間距離と対応するそれぞれの前記使用時離間距離との差異が算出され、前記長尺体を前記ドラム体に供給する過程では、それぞれの前記差異の大きさに基づいて、それぞれの前記差異に対応するそれぞれの前記使用時離間距離に相当する範囲に対して単位長さ当たりの重量が目標範囲になるように前記制御部によって前記長さ調整機構を制御することにより長さ調整操作を行って前記長尺体が前記ドラム体に巻き付けられて、前記ドラム体に巻付けられた前記長尺体が前記切断機により前記個別サイズに切断される構成にしたタイヤの製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの製造方法および製造システムに関し、さらに詳しくは、タイヤ部材のタイヤ製造工程での経時的な収縮に起因して生じるタイヤ重量のバラつきを抑制できるタイヤの製造方法および製造システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤは、押出機等によって押出された未加硫ゴムや、未加硫ゴムと補強コードとで形成された補強層など、様々なタイヤ部材を用いて製造されている。タイヤを製造する際には、これら様々なタイヤ部材を成形工程で一体化してグリーンタイヤが成形される。その後、グリーンタイヤを加硫することでタイヤが製造される。
【0003】
未加硫ゴムを含むタイヤ部材には経時的に大きく収縮するものがあり、収縮することでタイヤ部材は厚みが大きくなる(断面積が大きくなる)。そのため、当初はタイヤ1本分に相当する長さに定尺切断されたタイヤ部材であっても、成形ドラムに巻付けてグリーンタイヤを成形する時には、経時的な収縮によって基準値に満たない長さになっていることがある。そこで、基準値を満たすように、定尺切断されたタイヤ部材を引き伸ばして成形ドラムに巻付ける方法が種々提案されている(例えば特許文献1、2参照)。
【0004】
予め定尺切断されたタイヤ部材を用いるのではなく、グリーンタイヤを成形する際に、タイヤ部材の原反になる長尺体を成形ドラムに巻付けた後にタイヤ1本分に相当する長さに切断する方法もある。この方法では、上述したようにタイヤ部材を引き伸ばす作業は不要になり、製造したタイヤのユニフォミティを向上させるには有利になる。しかしながら、長尺体の経時的な収縮が大きい場合は、成形ドラムに巻き付けたタイヤ1本分に相当する長さのタイヤ部材の重量が過大になる。即ち、この方法でグリーンタイヤを成形すると、長尺体の経時的な収縮具合の差異に起因して、グリーンタイヤの重量にバラつきが生じ、結果的に製造されたタイヤの重量のバラつきにつながる。それ故、タイヤ部材のタイヤ製造工程での経時的な収縮に起因して生じるタイヤ重量のバラつきを抑制して精度よく目標重量にするには改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-136317号公報
【特許文献2】特開平5-245952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、タイヤ部材のタイヤ製造工程での経時的な収縮に起因して生じるタイヤ重量のバラつきを抑制できるタイヤの製造方法および製造システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明のタイヤの製造方法は、ドラム体に巻付けた長尺体を切断してタイヤ1本分の個別サイズにしたタイヤ部材を含む複数種類のタイヤ部材を一体化してグリーンタイヤを成形し、このグリーンタイヤを加硫することでタイヤを製造するタイヤの製造方法において、前記長尺体を製造した際に、前記長尺体のタイヤ1本分の個別サイズに相当する範囲毎に識別マークを付し、それぞれの前記識別マークを読み取るとともに前記長尺体の長手方向に隣り合う前記個別サイズに相当する範囲に付された前記識別マーク間の離間距離を測定して、測定したそれぞれの前記離間距離を初期離間距離として、対応するそれぞれの前記識別マークと紐付けして演算部に記憶しておき、前記グリーンタイヤを成形する際に、前記長尺体をドラム体に供給する過程でそれぞれの前記識別マークを読取るとともに、前記長尺体の長手方向に隣り合う前記個別サイズに相当する範囲に付された前記識別マーク間の離間距離を測定し、この離間距離を使用時離間距離として前記演算部に入力し、前記演算部により、それぞれの前記初期離間距離と対応するそれぞれの前記使用時離間距離との差異を算出し、前記長尺体を前記ドラム体に供給する過程では、算出したそれぞれの前記差異の大きさに基づいて、それぞれの前記差異に対応するそれぞれの前記使用時離間距離に相当する範囲に対して単位長さ当たりの重量を目標範囲にするように長さ調整操作を行って前記長尺体を前記ドラム体に巻付け、前記ドラム体に巻き付けられた前記長尺体をタイヤ1本分の個別サイズに切断することを特徴とする。
【0008】
本発明のタイヤの製造システムは、複数種類のタイヤ部材のそれぞれを製造するそれぞれの部材製造設備と、複数種類の前記タイヤ部材を一体化してグリーンタイヤを成形する成形設備と、前記グリーンタイヤを加硫する加硫設備とを備えて、それぞれの前記部材製造設備には、長尺体を製造する長尺体製造機と、ドラム体に巻付けられた前記長尺体を切断してタイヤ1本分の個別サイズの前記タイヤ部材にする切断機とが含まれているタイヤの製造システムにおいて、前記長尺体が製造された際に、前記長尺体のタイヤ1本分の個別サイズに相当する範囲毎に識別マークを付すマーク付与機と、それぞれの前記識別マークを読取る第一リーダと、前記長尺体の長手方向に隣り合う前記個別サイズに相当する範囲に付された前記識別マーク間の離間距離を初期離間距離として測定する第一測定機と、それぞれの前記初期離間距離と対応する前記識別マークとが紐付けされて記憶される演算部と、前記グリーンタイヤが成形される際に、前記長尺体をドラム体に供給する過程でそれぞれの前記識別マークを読取る第二リーダと、前記長尺体の長手方向に隣り合う前記個別サイズに相当する範囲に付された前記識別マーク間の離間距離を使用時離間距離として測定する第二測定機と、前記長尺体を前記ドラム体に供給する過程で前記長尺体に対して長さ調整操作を行う長さ調整機構と、この長さ調整機構を制御する制御部とを有し、前記演算部により、それぞれの前記初期離間距離と対応するそれぞれの前記使用時離間距離との差異が算出され、前記長尺体を前記ドラム体に供給する過程では、それぞれの前記差異の大きさに基づいて、それぞれの前記差異に対応するそれぞれの前記使用時離間距離に相当する範囲に対して単位長さ当たりの重量が目標範囲になるように前記制御部によって前記長さ調整機構を制御することにより長さ調整操作を行って前記長尺体が前記ドラム体に巻き付けられて、前記ドラム体に巻付けられた前記長尺体が前記切断機により前記個別サイズに切断される構成にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、それぞれの前記初期離間距離と対応するそれぞれの前記使用時離間距離との差異を算出することで、長尺体を製造してからグリーンタイヤを成形するまでの間におけるそれぞれの前記使用時離間距離に相当する範囲での経時的な収縮量を把握することができる。そして、前記長尺体を前記ドラム体に供給する過程では、算出したそれぞれの前記差異の大きさに基づいて、それぞれの前記差異に対応するそれぞれの前記使用時離間距離に相当する範囲に対して、単位長さ当たりの重量を目標範囲にするように前記長さ調整機構を用いて長さ調整操作を行うことで、精度よく目標範囲にすることができる。このようにして前記ドラム体に巻き付けた前記長尺体をタイヤ1本分の個別サイズの長さに切断することで、前記長尺体を切断して形成されたタイヤ部材のタイヤ製造工程での経時的な収縮に起因して生じるタイヤ重量のバラつきを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明のタイヤの製造システムを例示する説明図である。
【
図2】
図1の製造システムの一部を拡大して例示する説明図である。
【
図3】
図2の製造システムを平面視で例示する説明図である。
【
図4】
図1の長さ調整機構の動きを側面視で例示する説明図である。
【
図5】長さ調整機構の別の実施形態を側面視で例示する説明図である。
【
図6】長さ調整機構のさらに別の実施形態を側面視で例示する説明図である。
【
図7】長さ調整機構のさらに別の実施形態を側面視で例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のタイヤの製造方法および製造システムを、図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0012】
図1~
図4に例示する本発明のタイヤの製造システム1の実施形態では、複数種類のタイヤ部材E(E1、E2、E3、E4、・・・)を一体化してグリーンタイヤGが成形される。このグリーンタイヤGが加硫されることでタイヤTが製造される。
【0013】
この製造システム1の実施形態は、複数種類のそれぞれのタイヤ部材Eを製造するそれぞれの部材製造設備(混練機11、押出機12など)と、それぞれのタイヤ部材Eを一体化してグリーンタイヤGを成形する成形設備(成形機15など)と、グリーンタイヤGを加硫する加硫設備(加硫装置16など)とを備えている。それぞれの部材製造設備、成形設備、加硫設備は、公知の種々のタイプを用いることができる。この製造システム1はさらに、マーク付与機2、第一リーダ4a、第二リーダ4b、第一測定機6a、第二測定機6b、演算部7、長さ調整機構8、制御部10、ストック手段14a、切断機14b、重量計5を備えている。この製造システム1には、プロファイルセンサ5aも備わっているが、プロファイルセンサ5aは任意に備えることができる。
【0014】
複数種類のタイヤ部材Eには、成形機15を構成するドラム体15aに巻付けられた長尺体Lを切断してタイヤ1本分の個別サイズの長さに形成されるタイヤ部材E1が含まれている。長尺体Lは例えば、未加硫ゴムRが押出されて製造された部材、または、圧延されて製造された部材である。
【0015】
長尺体Lが未加硫Rのみで製造される場合、タイヤ部材E1としては、トレッドゴム、サイドゴム、インナーライナなどを例示できる。長尺体Lが未加硫ゴムRと補強コードとを複合して製造される場合、タイヤ部材E1としては、カーカス材、ベルト材などを例示できる。上述した種々の部材であっても、ドラム体15aに巻き付けられる前に予め定尺切断されている部材やビードリングは、タイヤ部材E1ではなく、その他のタイヤ部材E2、E3、E4、・・・になる。
【0016】
タイヤ部材E1の製造設備には、長尺体Lを製造する長尺体製造機12と、ドラム体15aに巻き付けられた長尺体Lを切断することでタイヤ部材E1を製造する切断機14bとが含まれている。この実施形態ではタイヤ部材E1として未加硫ゴムRが押出されて製造されたゴム押出物を例にしているので、タイヤ部材E1の製造設備としては、長尺体製造機12に対して混練された未加硫ゴムRを供給する混練機11を備えていて、長尺体製造機12は未加硫ゴムの押出機12になっている。タイヤ部材E1が、未加硫ゴムRが圧延されて製造された圧延材であれば長尺体製造機12は圧延装置になる。
【0017】
長尺体Lは、長尺体製造機12によって製造されると、ストック手段14aにストックされる。その後、グリーンタイヤGを成形する際にタイヤ部材E1が必要になった時に、長尺体Lはストック手段14aから成形機15に供給される。長尺体製造機12とストック手段14aとの間、ストック手段14aと成形機15との間にはそれぞれ搬送機構13が配置されている。
【0018】
成形設備は、ドラム体15aを有する成形機15を備えている。ドラム体15aは一般的な成形ドラムに限らず、製造されるタイヤTの内面と同形状の外面を有する剛性コアの場合もある。成形設備には、成形機15にそれぞれのタイヤ部材Eを供給する供給機構(搬送機構13など)、その他に必要な設備が適宜備わる。
【0019】
加硫設備は、加硫モールド17が取付けられる加硫装置16を備えている。加硫設備には、加硫モールド17にグリーンタイヤGを投入する投入機構、製造されたタイヤTを加硫モールド17から取り出す取出機構、その他に必要な設備が適宜備わる。
【0020】
マーク付与機2は、長尺体Lが製造された際に、長尺体Lのタイヤ1本分の個別サイズ(即ち、1つのタイヤ部材E1の長さ)に相当する範囲S毎に識別マーク3を付す。例えば、長尺体Lの表面にインクなどを噴射、転写などによって塗布することで識別マーク3を付す機器などをマーク付与機2として用いる。マーク付与機2を制御する制御部10には搬送機構13による長尺体Lの搬送速度が入力されるので、このマーク付与機2を用いて、搬送移動されている長尺体Lに対して、範囲S毎に識別マーク3を付すことができる。この実施形態では、長尺体Lのタイヤ1本分の個別サイズに相当する範囲S毎に1つの識別マーク3が付されているが、1つの範囲Sに同じ識別マーク3が間隔をあけた位置に付されてもよい。
【0021】
識別マーク3は、第一リーダ4a、第二リーダ4bにより読み取られて、識別マーク3を付された位置が特定できればよいので、そのマーク仕様は特に限定されない。様々な文字、数字、記号、二次元コード、或いは、これらの組み合わせを識別マーク3として用いることができ、例えば、識別マーク3を付した順番を示す追番を含めるとよい。
【0022】
識別マーク3は、読み取り精度を向上させるために、識別マーク3を付すタイヤ部材E1の色に対して目立つ色にすることが好ましい。タイヤ部材E1は黒色が多いので、黒色に対しては例えば、適度に視認し易い白系統色、黄系統色などの識別マーク3を用いる。
【0023】
第一リーダ4aと第二リーダ4bとは同じ仕様にすればよく、例えば、搬送移動されている長尺体Lに対して非接触で識別マーク3を読取できる公知の種々のタイプを用いることができる。詳述すると、第一リーダ4aは、長尺体製造機12とストック手段14aとの間でマーク付与機2の下流側に配置されている。第二リーダ4bは、ストック手段14aと成形機15との間に配置されている。第一リーダ4a、第二リーダ4bとしては具体的には、画像データを取得するデジタルカメラ等を備えた公知のスキャナ類を用いることができる。
【0024】
第一測定機6a、第二測定機6bは、長尺体Lの対象部分の長さを測定する。第一測定機6aと第二測定機6bとは同じ仕様にすればよく、例えば、搬送移動されている長尺体Lに対して非接触で長尺体Lの対象部分の長さを測定できる公知の種々のタイプを用いることができる。
【0025】
詳述すると、第一測定機6aは、長尺体製造機12とストック手段14aとの間に配置され、第一リーダ4aの下流側に配置されている。長尺体Lが搬送機構13によって長尺体製造機12からストック手段14aに搬送される過程で、長尺体Lの長手方向に隣り合う範囲Sに付された識別マーク3間の離間距離を初期離間距離D1として測定する。搬送機構13による搬送速度は既知なので、第一測定機6aが1つの範囲Sに付された識別マーク3を検知してから隣り合う範囲Sに付された識別マーク3を検知するまでの時間と、搬送機構13による搬送速度とに基づいて、これら識別マーク3の間の初期離間距離D1を測定することができる。測定されたそれぞれの初期離間距離D1は演算部7に入力される。
【0026】
第二測定機6bは、ストック手段14aと成形機15との間で、第二リーダ4bの下流側に配置されている。第二測定機6bは、長尺体Lが搬送機構13によってストック手段14aから成形機15に搬送される過程で、長尺体Lの長手方向に隣り合う範囲Sに付された識別マーク3間の離間距離を使用時離間距離D2として測定する。第二測定機6bが1つの範囲Sに付された識別マーク3を検知してから隣り合う範囲Sに付された識別マーク3を検知するまでの時間と、搬送機構13による搬送速度とに基づいて、これら識別マーク3の間の使用時離間距離D2を測定することができる。測定されたそれぞれの使用時離間距離D2は演算部7に入力される。
【0027】
尚、第一リーダ4a、第二リーダ4bをそれぞれ、第一測定機6a、第二測定機6bとして機能させることもできる。この場合は、第一リーダ4a、第二リーダ4bがそれぞれ第一測定機6a、第二測定機6bを兼務するので、測定機器を削減することができる。
【0028】
重量計5は長尺体Lの所定範囲の重量を測定し、測定された重量は演算部7に入力される。この実施形態では、長尺体Lのそれぞれの初期離間距離D1に相当する範囲の重量が測定される。重量計5としては、搬送機構13の下面に設置されて、搬送移動されている長尺体Lの質量を連続的に測定できる公知の重量計などを用いることができる。
【0029】
プロファイルセンサ5aは長尺体Lの所望の設定された位置の断面形状を測定し、測定された断面形状は演算部7に入力される。この実施形態では、長尺体Lのそれぞれの初期離間距離D1に相当する範囲内において少なくとも一か所の断面形状が測定される。プロファイルセンサ5aとしては、搬送機構13を上下から挟み込むように設置されて、搬送移動されている長尺体Lの断面形状を任意の間隔で断続的に測定できる公知のセンサなどを用いることができる。
【0030】
演算部7には上述したように、第一リーダ4a、第二リーダ4b、第一測定機6a、第二測定機6b、重量計5およびプロファイルセンサ5aにより取得されたデータが入力される。演算部7には、長尺体Lの単位長さ当たりの重量および断面形状(断面積)の目標範囲ARのデータが入力、記憶されていて、その他に様々なデータが入力、記憶される。演算部7は入力されたデータを用いて様々な演算処理を行う。演算部7は、有線または無線によって制御部10と通信可能に接続されている。
【0031】
制御部10は、長さ調整機構8を制御する。この制御部10によって、製造システム1を構成するその他の機器を制御する構成にしてもよい。この実施形態では、制御部10によって搬送機構13、切断機14b、成形機15も制御される。
【0032】
演算部7、制御部10としては公知のコンピュータを用いることができる。1つのコンピュータを演算部7および制御部10として機能させてもよく、それぞれを別々のコンピュータで構成してもよい。
【0033】
長さ調整機構8は、長尺体Lをドラム体15aに供給する過程で、長尺体Lに対して長さ調整操作を行う。この実施形態では、長さ調整機構8は、押圧ローラ9aと、アクチュエータ9bと、押圧ローラ9aとアクチュエータ9bとを連結するリング部材9d、9eと、を有している。
【0034】
詳述すると、
図4に例示する長さ調整機構8Aは、ドラム体15aの上方に配置された押圧ローラ9aと、進退するロッド9cを備えたアクチュエータ9bと、押圧ローラ9aを旋回させるリンク部材9dと、リンク部材9dとロッド9cとを連結するリンク部材9eとを有している。円柱状または円筒状の押圧ローラ9aは、その長さが長尺体Lの全幅以上に設定されていて、L字状のリンク部材9dの先端部に回転可能に軸支されている。リンク部材9dの後端部は搬送機構13のフレームに回転可能に軸支されている。L字状のリンク部材9dの角部とロッド9cの先端部とは、リンク部材9eを介して回転可能に連結されている。
【0035】
このロッド9cを前進移動させると、リンク部材9dの後端部の支軸を中心にして押圧ローラ9aは下方に旋回移動してドラム体15aの外周面に近接し、ロッド9cを後退移動させると押圧ローラ9aは上方に旋回移動してドラム体15aの外周面から離反する。したがって、ドラム体15aの外周面に長尺体Lが巻き付けられていると、ドラム体15aの外周面とこの外周面に向かって移動する押圧ローラ9aとの間で長尺体Lが挟まれて押圧される。ロッド9cの前進移動量が大きい程、押圧力Fは大きくなり、押圧力Fの大きさはロッド9cの進退具合によって変化する。
【0036】
搬送機構13による長尺体Lの搬送速度V1とドラム体15aの回転速度V2とを実質的に同じにして、長尺体Lをドラム体15aに供給しつつ押圧ローラ9aによってドラム体15aの外周面に向かって押圧してドラム体15aに巻付ける。尚、この回転速度V2はドラム体15aの外周面での周速である。このように長尺体Lをドラム体15aに供給する過程では、押圧力Fを大きくする程、長尺体Lがより大きく引き伸ばされることが判明している。
【0037】
したがって、ロッド9cの進退移動を制御して押圧力Fを調整することで、ドラム体15aに巻き付けられる長尺体Lに対して長さ調整操作を行うことができる。即ち、この長さ調整機構8Aでは、長尺体Lをドラム体15aに向かって押圧しつつドラム体15aを回転させて巻付ける際の押圧力Fを調整することが長さ調整操作になる。長尺体Lの種類(仕様)毎に、押圧力Fの大きさと、長尺体Lの長さの変化具合との相関関係は異なるので、長尺体Lの種類(仕様)毎に、この相関関係を予め把握しておくとよい。そして、この相関関係を用いて長さ調整操作を行う。
【0038】
この実施形態ではアクチュエータ9bとして流体シリンダを採用して、そのシリンダロッド(ロッド9c)を用いて押圧ローラ9aを移動させて押圧力Fを変化させているが、押圧力Fを変化させるにはこの仕様に限定されない。例えば、サーボモータによって進退移動するロッド9cを用いて押圧ローラ9aをドラム体15aの外周面に対して近接および離反させて押圧力Fを変化させる仕様にすることもできる。
【0039】
そして、長尺体Lをどの程度引伸ばすと、長尺体Lの単位長さ当たり重量がどの程度変化(減少)するのかは予め把握することができる。したがって、長尺体Lの長さの変化具合と長尺体Lの単位長さ当たりの重量の変化具合との相関関係を予め把握しておき、この相関関係を用いて長さ調整操作を行う。即ち、この実施形態では、押圧力Fの大きさと、長尺体Lの単位長さ当たりの重量の変化具合との相関関係を用いて、長尺体Lの長さ調整操作を適切に行うことで、長尺体Lの単位長さ当たりの重量を目標範囲ARにすることができる。
【0040】
また、長尺体Lをどの程度引伸ばすと、長尺体Lの断面形状がどの程度変化するのかは予め把握することができる。したがって、長尺体Lの長さの変化具合と長尺体Lの断面形状の変化具合との相関関係を予め把握しておき、この相関関係を用いて長さ調整操作を行うこともできる。即ち、この実施形態では押圧力Fの大きさと、長尺体Lの断面形状の変化具合との相関関係を用いて、長尺体Lの長さ調整操作を適切に行うことで、長尺体Lの断面形状(断面積)を目標範囲ARにすることができる。
【0041】
次に、製造システム1を用いた本発明のタイヤの製造方法の手順を、長尺体Lが、未加硫ゴムRが押出されて製造される場合を例にして説明する。
【0042】
図1に例示するように、混練機11は、複数種類の原材料M(原料ゴム、各種配合剤)を混練して未加硫ゴムRを製造する。混練機11としてはバンバリーミキサなどが使用される。製造された未加硫ゴムRは、ベルトコンベヤなどの搬送機構13によって次工程の押出機12に投入される。
【0043】
押出機12は、未加硫ゴムRを適度な粘度にして、先端の口金から予め設定された断面形状に型付けして長尺体Lとして押出す。圧延装置によって未加硫ゴムRをシート状の長尺体Lを製造することも、未加硫ゴムRと多数本の引き揃えられた補強コードとを一体化させたシート状の長尺体Lを製造することもある。製造された長尺体Lは、押出機12の前方に配置されたベルトコンベヤなどの搬送機構13によってストック手段14aに搬送される。長尺体Lの搬送速度は常に制御部10によって把握され、制御されている。
【0044】
ストック手段14aは、長尺体Lを次工程で必要になる時まで一時的にストックする。ストック手段14aとしては例えば、長尺体Lをライナとともに巻き取る巻取りドラム装置が使用される。製造された長尺体Lが次工程で直ちに使用される押出・成形直結ラインなどの場合は、ストック手段14aは不要になる。
【0045】
グリーンタイヤGを成形する際に必要な時に、長尺体Lはストック手段14aから繰り出されて、ベルトコンベヤなどの搬送機構13によって搬送されて成形機15に供給される。成形機15では、タイヤ部材E1を含む様々なタイヤ部材Eがドラム体15a上で一体化されてグリーンタイヤGが成形される。次いで、グリーンタイヤGが、加硫装置16によって加硫されることで加硫モールド17によって所定形状に型付けされたタイヤTが製造される。
【0046】
図2、
図3に例示するように、押出機12からストック手段14aまでの搬送区間では、長尺体Lを製造した際に、搬送移動されている長尺体Lの表面に対して、マーク付与機2によってタイヤ1本分の個別サイズに相当する範囲S毎に識別マーク3が順次付される。付されたそれぞれの識別マーク3は、第一リーダ4aによって順次読み取られる。また、搬送移動されている長尺体Lに対して、第一測定機6aによって、隣り合う範囲Sに付された識別マーク3間の初期離間距離D1が順次測定される。それぞれの初期離間距離D1は、対応するそれぞれの識別マーク3(その初期離間距離D1の始点になる識別マーク3または終点になる識別マーク3でもよい)と紐付けされて演算部7に記憶される。
【0047】
この実施形態では、搬送移動されている長尺体Lのそれぞれの初期離間距離D1に相当する範囲の重量が測定される。測定されたそれぞれの重量は、対応するそれぞれの識別マーク3(その初期離間距離D1の始点になる識別マーク3または終点になる識別マーク3でもよい)と紐付けされて演算部7に記憶される。
【0048】
また、搬送移動されている長尺体Lのそれぞれの初期離間距離D1に相当する範囲内において少なくとも一か所の断面形状がプロファイルセンサ5aにより測定される。測定されたそれぞれの断面形状は、対応するそれぞれの識別マーク(その初期離間距離D1の始点になる識別マーク3または終点になる識別マーク3でもよい)と紐付けされて演算部7に記憶される。
【0049】
ストック手段14aから成形機15までの搬送区間では、グリーンタイヤGを成形する際に、長尺体Lをドラム体15aに供給する過程でそれぞれの識別マーク3が第二リーダ4bによって順次読み取られる。また、搬送移動されている長尺体Lの隣り合う範囲Sに付された識別マーク3間の使用時離間距離D2が順次測定される。それぞれの使用時離間距離D2は、対応するそれぞれの識別マーク3(その使用時離間距離D2の始点になる識別マーク3または終点になる識別マーク3でもよい)と紐付けされて演算部7に入力される。
【0050】
演算部7は、記憶されているそれぞれの初期離間距離D1と対応するそれぞれの使用時離間距離D2との差異D(D=D1-D2)を算出する。即ち、同じ識別マーク3が始点(または終点)となる初期離間距離D1と使用時離間距離D2との差異Dを算出する。これにより、長尺体Lを製造してからグリーンタイヤGを成形するまでの間におけるそれぞれ使用時離間距離D2に相当する範囲での経時的な収縮量(即ち、差異Dの大きさ)を把握することができる。
【0051】
そして、
図4に例示するように、長尺体Lをドラム体15aに供給する過程では、演算部7によって算出された差異Dの大きさに基づいて、制御部10がロッド9cの進退を制御して押圧力Fの大きさを調整する。これより、それぞれの差異Dを算出した対応するそれぞれの使用時離間距離D2に相当する範囲に対して単位長さ当たりの重量を目標範囲ARにするように長さ調整機構8Aによって長さ調整操作を行う。例えば、差異Dが大きい程、その差異Dに対応する使用時離間距離D2に相当する範囲は、当初に比してより大きく収縮しているので、単位長さ当たりの重量が目標範囲ARに対してより大きくなっている。そのため、その差異Dに対応する使用時離間距離D2に相当する範囲に対しては、引伸ばし量をより大きくする長さ調整操作を行う。この長さ調整操作を行うことで、長尺体Lの単位長さ当たりの重量を精度よく目標範囲ARにすることができる。
【0052】
プロファイルセンサ5aを用いる場合は、
図4に例示するように、長尺体Lをドラム体15aに供給する過程では、演算部7によって算出された差異Dの大きさに基づいて、制御部10がロッド9cの進退を制御して押圧力Fの大きさを調整する。これより、それぞれ差異Dを算出した対応するそれぞれの使用時離間距離D2に相当する範囲に対して単位長さ当たりの重量および断面形状を目標範囲ARにするように長さ調整機構8Aによって長さ調整操作を行う。例えば、差異Dが大きい程、その差異Dに対応する使用時離間距離D2に相当する範囲は、当初に比して大きく収縮しているので、単位長さ当たりの重量と断面形状が目標範囲ARに対してより大きくなっている。そのため、その差異Dに対応する使用時離間距離D2に相当する範囲に対しては、引伸ばし量をより大きくする長さ調整操作を行う。この長さ調整操作を行うことで、長尺体Lの単位長さ当たりの重量と断面形状(断面積)を精度よく目標範囲ARにすることができる。
【0053】
このように長さ調整操作されて、ドラム体15aに1周巻き付けられた長尺体Lが、切断機14bによってタイヤ1本分の個別サイズの長さに切断されてタイヤ部材E1が形成される。それ故、このタイヤ部材E1を用いて成形されたグリーンタイヤGの重量のバラつきは抑制される。これに伴い、このグリーンタイヤGを加硫して製造されたタイヤTの重量のバラつきも抑制されることになる。したがって、この長尺体Lを切断して形成されたタイヤ部材E1のタイヤ製造工程での経時的な収縮に起因して生じるタイヤ重量のバラつきを抑制することができる。
【0054】
また、ドラム体15aに1周巻き付けられた長尺体Lを、タイヤ1本分の個別サイズの長さに切断したタイヤ部材E1は、別途引伸ばしされることなく、環状に形成される。そのため、グリーンタイヤGでのタイヤ部材E1のタイヤ周方向での重量のバラつきが抑制される。その結果、製造されたタイヤTでは優れたユニフォミティを確保できる。
【0055】
本発明は空気入りタイヤに限らず、その他の種々のタイプのタイヤTを製造する際に用いることができる。
【0056】
この実施形態では、それぞれの初期離間距離D1に応じて、その初期離間距離D1を測定した範囲の重量が、事前のデータによって決定(推定)されている。そのため、それぞれの初期離間距離D1に相当する範囲の重量を実際に測定しなくても済む仕様になっている。しかし、この決定(推定)されている重量は実際の重量に対して誤差があるので、長尺体Lを製造した際に、それぞれの初期離間距離D1に相当する範囲を測定した重量を用いるとよい。
【0057】
長尺体Lを製造した際に、それぞれの初期離間距離D1に相当する範囲の測定された重量が、対応するそれぞれ識別マーク3(その初期離間距離D1の始点になる識別マーク3または終点になる識別マーク3でもよい)と紐付けされて演算部7に記憶されている。そこで、測定されたそれぞれの重量の大きさに基づいて、その重量を測定した範囲に対応するそれぞれの使用時離間距離D2に相当する範囲に対して、長さ調整機構8Aによって長さ調整操作を行う。このように、それぞれの初期離間距離D1に相当する範囲の測定された重量を考慮して長さ調整操作をすることで、長尺体Lの単位長さ当たりの重量を精度よく目標範囲ARにするには一段と有利になる。
【0058】
また、それぞれ初期離間距離D1に応じて、その初期離間距離D1を測定した範囲の断面形状が、事前のデータによって決定(推定)されている。そのため、それぞれの初期離間距離D1に相当する範囲の断面形状を実際に測定しなくても済む仕様になっている。しかし、この決定(推定)されている断面形状は実際の断面形状に対して誤差があるので、長尺体Lを製造した際に、それぞれの初期離間距離D1に相当する範囲内で少なくとも一か所をプロファイルセンサ5aにより測定した断面形状を用いるとよい。
【0059】
長尺体Lを製造した際に、それぞれの初期離間距離D1に相当する範囲内において少なくとも一か所測定された断面形状が、対応するそれぞれ識別マーク3(その初期離間距離D1の始点になる識別マーク3または終点になる識別マーク3でもよい)と紐付けされて演算部7に記憶されている。そこで、測定されたそれぞれの断面形状に基づいて、その断面形状を測定した範囲に対応するそれぞれの使用時離間距離D2に相当する範囲に対して、長さ調整機構8Aによって長さ調整操作を行う。このように、それぞれの初期離間距離D1に相当する範囲の測定された断面形状を考慮して長さ調整操作をすることで、長尺体Lの断面形状を精度よく目標範囲ARにするには一段と有利になる。
【0060】
長尺体Lに対して長さ調整操作を行う長さ調整機構8は上述した仕様に限らず、種々の仕様を採用することができる。長さ調整機構8(8B、8C、8D)の別の実施形態を、
図5~
図7に基づいて説明する。
【0061】
図5に例示する長さ調整機構8Bは、ドラム体15aに長尺体Lを搬送する搬送機構13と、成形機15とを有している。この搬送機構13による長尺体Lの搬送速度V1とドラム体15aの回転速度V2とは個別に制御できる。
【0062】
長尺体Lを搬送機構13によりドラム体15aに供給しつつドラム体15aを回転させて、長尺体Lに対する押圧ローラ9aによる押圧力Fは所定値(一定)にして長尺体Lをドラム体15aに巻付ける。このように長尺体Lをドラム体15aに供給する過程では、搬送速度V1と回転速度V2とが同じであれば、両者の速度に起因して長尺体Lの長さが実質的に変化することはない。ところが、搬送速度V1に対して回転速度V2を速くする程、長尺体Lはより大きく引伸ばされてドラム体15aに巻き付けられる。搬送速度V1を回転速度V2よりも遅くするとドラム体15aに巻き付けられる長尺体Lを収縮させることも可能になる。
【0063】
したがって、搬送速度V1と回転速度V2との差異を調整することで、ドラム体15aに巻き付けられる長尺体Lに対して長さ調整操作を行うことができる。即ち、この長さ調整機構8Bでは、長尺体Lをドラム体15aに供給する際の搬送速度V1と、ドラム体15aの回転速度V2との差異を調整することが長さ調整操作になる。長尺体Lの種類(仕様)毎に、搬送速度V1と回転速度V2との差異の大きさ具合と、長尺体Lの長さの変化具合との相関関係は異なるので、長尺体Lの種類(仕様)毎に、この相関関係を予め把握しておくとよい。そして、この相関関係を用いて長さ調整操作を行う。
【0064】
長尺体Lをドラム体15aに供給する過程では、初期離間距離D1と対応する使用時離間距離D2との差異Dの大きさに基づいて、制御部10は搬送速度V1と回転速度V2との差異を調整する。これより、長尺体Lの対応する使用時離間距離D2に相当する範囲に対して単位長さ当たりの重量を目標範囲ARにするように長さ調整操作を行う。その後、ドラム体15aに1周巻き付けられた長尺体Lが切断機14bによってタイヤ1本分の個別サイズに切断される。
【0065】
図6に例示する長さ調整機構8Cは、ドラム体15aに長尺体Lを搬送する搬送機構13と、ダンサ量センサ9fとを有している。2台の搬送機構13が長手方向(搬送方向)に間隔をあけて配置されていて、両者の間に隙間が形成されている。搬送される長尺体Lはこのすき間で下方に垂れ下がり、この垂れ下がった量がダンサ量Hになる。ダンサ量Hはダンサ量センサ9fにより検知されて演算部7に入力される。縦列されたそれぞれの搬送機構13による長尺体Lの搬送速度V1a、V1bは個別に制御できる。
【0066】
長尺体Lをそれぞれの搬送機構13によりドラム体15aに供給しつつドラム体15aを回転させて、長尺体Lに対する押圧ローラ9aによる押圧力Fは所定値(一定)にして長尺体Lをドラム体15aに巻付ける。前方の搬送機構13による搬送速度V1aとドラム体15aの回転速度V2との差異は一定にする。このように長尺体Lをドラム体15aに供給する過程では、搬送速度V1aと搬送速度V1bとが同じであれば、両者の速度に起因して長尺体Lのダンサ量Hが実質的に変化することはない。ところが、搬送速度V1aに対して搬送速度V1bを速くする程、ダンサ量Hが増大し、長尺体Lの垂れ下がっている部分の重さが、ドラム体15aに巻き付けられている長尺体Lに対してより大きな引張力として作用する。この引張力によって、ドラム体15aに巻き付けられている長尺体Lは引伸ばされる。搬送速度V1aに対して搬送速度V1bを遅くすると、ダンサ量Hが減少してドラム体15aに巻き付けられている長尺体Lに作用する引張力は小さくなる。作用する引張力の大きさに応じて、ドラム体15aに巻き付けられている長尺体Lに対する引伸ばし量は変化する。
【0067】
したがって、搬送速度V1aと搬送速度V1bとの差異を調整してダンサ量Hを調整することで、ドラム体15aに巻き付けられる長尺体Lに対して長さ調整操作を行うことができる。即ち、この長さ調整機構8Cでは、長尺体をLドラム体15aに供給する供給経路に形成される長尺体Lのダンサ量Hを調整することが長さ調整操作になる。長尺体Lの種類(仕様)毎に、ダンサ量Hの大きさと、長尺体Lの長さの変化具合との相関関係は異なるので、長尺体Lの種類(仕様)毎に、この相関関係を予め把握しておくとよい。そして、この相関関係を用いて長さ調整操作を行う。
【0068】
長尺体Lをドラム体15aに供給する過程では、初期離間距離D1と対応する使用時離間距離D2との差異Dの大きさに基づいて、制御部10は搬送速度V1aと搬送速度V1bとの差異を調整してダンサ量Hを制御する。これより、長尺体Lの対応する使用時離間距離D2に相当する範囲に対して単位長さ当たりの重量と断面形状を目標範囲ARにするように長さ調整操作を行う。その後、ドラム体15aに1周巻き付けられた長尺体Lが切断機14bによってタイヤ1本分の個別サイズに切断される。
【0069】
図7に例示する長さ調整機構8Dは、回転駆動される複数の回転支持ローラ13aを備えた搬送機構13で構成されている。ドラム体15aに長尺体Lを搬送するこの搬送機構13では、搬送方向に並んで配置されたそれぞれの回転支持ローラ13aの回転速度Va、Vb、Vc、Vdが個別に制御できる。回転支持ローラ13aは多い方がよく、例えば、長尺体Lのタイヤ1本分の個別サイズに相当する範囲Sの長さの半分以上、より好ましく全長が回転支持ローラ13aによって支持される構成にする。尚、この回転速度Va、Vb、Vc、Vdは、それぞれの回転支持ローラ13a外周面での周速である。
【0070】
長尺体Lを搬送機構13によりドラム体15aに供給しつつドラム体15aを回転させて、長尺体Lに対する押圧ローラ9aによる押圧力Fは所定値(一定)にして長尺体Lをドラム体15aに巻付ける。最前方の回転支持ローラ13aの回転速度Vaとドラム体15aの回転速度V2とは実質的に同じにする。このように長尺体Lをドラム体15aに供給する過程では、すべての回転支持ローラ13aの回転速度Va、Vb、Vc、Vdが同じであれば、これらの回転支持ローラ13aの回転速度に起因して長尺体Lの長さが実質的に変化することはない。ところが、例えば、前方に配置された回転支持ローラ13aになるほど回転速度を速くすると(Va>Vb>Vc>Vd)、搬送されている長尺体Lはより引伸ばされて、それぞれの速度差をより大きくするほど、より大きく引き伸ばされる。前方に配置された回転支持ローラ13aになるほど回転速度を遅くすると(Va<Vb<Vc<Vd)、搬送されている長尺体Lを収縮させることも可能になる。
【0071】
したがって、それぞれの回転支持ローラ13aの回転速度Va、Vb、Vc、Vdの差異を調整することで、ドラム体15aに巻き付けられる長尺体Lに対して長さ調整操作を行うことができる。即ち、この長さ調整機構8Dでは、長尺体Lをドラム体15aに供給する搬送機構13での搬送方向に対する搬送速度分布を変化させることが長さ調整操作になる。長尺体Lの種類(仕様)毎に、それぞれの回転支持ローラ13aの回転速度Va、Vb、Vc、Vdの差異の大きさ具合と、長尺体Lの長さの変化具合との相関関係は異なるので、長尺体Lの種類(仕様)毎に、この相関関係を予め把握しておくとよい。そして、この相関関係を用いて長さ調整操作を行う。
【0072】
長尺体Lをドラム体15aに供給する過程では、初期離間距離D1と対応する使用時離間距離D2との差異Dの大きさに基づいて、制御部10はそれぞれの回転支持ローラ13aの回転速度Va、Vb、Vc、Vdの差異を調整する。これより、長尺体Lの対応する使用時離間距離D2に相当する範囲に対して単位長さ当たりの重量と断面形状を目標範囲ARにするように長さ調整操作を行う。その後、ドラム体15aに1周巻き付けられた長尺体Lが切断機14bによってタイヤ1本分の個別サイズに切断される。
【0073】
図4~
図7に例示した長さ調整機構8による長さ調整操作は、それぞれの単独で行うだけでなく、これらの長さ調整機構8(長さ調整操作)を複数組み合わせて行うこともできる。
【符号の説明】
【0074】
1 製造システム
2 マーク付与機
3 識別マーク
4a 第一リーダ
4b 第二リーダ
5 重量計
5a プロファイルセンサ
6a 第一測定機
6b 第二測定機
7 演算部
8(8A、8B、8C、8D) 長さ調整機構
9a 押圧ローラ
9b アクチュエータ
9c ロッド
9d、9e リンク部材
9f ダンサ量センサ
10 制御部
11 混練機
12 押出機(長尺体製造機)
13 搬送機構
13a 回転支持ローラ
14a ストック手段
14b 切断機
15 成形機
15a ドラム体
16 加硫装置
17 加硫モールド
G グリーンタイヤ
T 加硫済みタイヤ
L 長尺体
E(E1、E2、E3、E4、・・・) タイヤ部材
R 未加硫ゴム
M 原材料