(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023104260
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】原料供給装置、金型装置及び原料供給方法
(51)【国際特許分類】
B28B 13/02 20060101AFI20230721BHJP
B28B 3/02 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
B28B13/02
B28B3/02 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022005138
(22)【出願日】2022-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000149136
【氏名又は名称】日本インシュレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 誠児
(72)【発明者】
【氏名】ケオクーンシー マニポン
(72)【発明者】
【氏名】弘中 裕一郎
(72)【発明者】
【氏名】橋本 健志
【テーマコード(参考)】
4G054
4G055
【Fターム(参考)】
4G054AA05
4G054BA02
4G054BA32
4G055CA02
4G055CA07
4G055CA26
4G055CA29
(57)【要約】
【課題】金型のキャビティ内に原料を供給する際に、キャビティ内における原料の密度に偏りを生じにくくする。
【解決手段】原料供給装置3は、金型2のキャビティ211に対して原料を供給する原料供給装置3である。原料供給装置3は、篩61と、篩61から出た原料を前記キャビティ211の上方にある原料出口まで搬送する搬送面711を有する搬送装置7と、原料出口を前記キャビティ211の開口面に沿うように移動させる移動機構8と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型のキャビティに対して原料を供給する原料供給装置であって、
篩と、
前記篩から出た原料を前記キャビティの上方にある原料出口まで搬送する搬送面を有する搬送装置と、
前記原料出口を前記キャビティの開口面に沿うように移動させる移動機構と、
を備える、
原料供給装置。
【請求項2】
前記篩を振動させる篩振動装置を更に備える、
請求項1記載の原料供給装置。
【請求項3】
前記搬送装置は、
前記原料出口と前記キャビティとの間に配置された網と、
前記網を振動させる網振動装置と、
を有する、
請求項1又は請求項2記載の原料供給装置。
【請求項4】
前記搬送装置は、前記搬送面を振動させる発振装置を含む振動フィーダを有する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の原料供給装置。
【請求項5】
前記移動機構は、前記搬送装置を前記キャビティの上方から退避可能に構成されている、
請求項1~4のいずれか一項に記載の原料供給装置。
【請求項6】
前記キャビティ内に供給された前記原料に対し、前記キャビティの開口面に沿って擦切りを行う擦切り装置を更に備える、
請求項1~5のいずれか一項に記載の原料供給装置。
【請求項7】
前記擦切り装置は、
前記キャビティの開口面に沿う第一方向に移動することで、前記原料の擦切りを行うヘラと、
前記ヘラを、前記開口面に沿いかつ前記第一方向に交差する第二方向に振動させながら前記第一方向に移動させるヘラ駆動装置と、
を有する、
請求項6記載の原料供給装置。
【請求項8】
キャビティを有する凹型、及び前記凹型に対して可動な凸型を有する金型と、
前記凸型の移動軌跡の外側に配置された篩と、
前記篩から出た原料を前記キャビティの上方にある原料出口まで搬送する搬送面を有する搬送装置と、
前記原料出口を前記キャビティの開口面に沿う方向に移動させる移動機構と、
を備える、
金型装置。
【請求項9】
金型のキャビティに対して原料を供給する原料供給方法であって、
篩と、前記篩から出た原料を前記キャビティの上方にある原料出口まで搬送する搬送面を有する搬送装置と、を備えた原料供給装置を用いて、
前記原料出口を前記キャビティの開口面に沿う方向に移動させながら、前記原料を供給する、
原料供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料供給装置、金型装置及び原料供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来の原料供給装置(特許文献1では、粉箱)が開示されている。特許文献1記載の粉箱は、原料であるタイル用坏土が収容された箱である。粉箱は、底面が開口した形状に形成されており、下型に沿って往復動させると、型凹部に原料が落下するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1記載の粉箱では、例えば、流動性が低い原料に使用する場合、底面の開口から落下しようとする原料は、箱内に残っている原料から離れるのに時間が掛かる。このため、粉箱を下型に沿って移動させ、型凹部に差し掛かると、原料が、粉箱底面の開口から型凹部に向かって出るものの、型凹部内において、粉箱の移動に追従して移動する。このため、型凹部内における原料の密度に偏りが生じやすいという問題がある。
【0005】
本発明は、金型のキャビティ内に原料を供給する際に、キャビティ内における原料の密度に偏りを生じにくくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る原料供給装置は、金型のキャビティに対して原料を供給する原料供給装置であって、篩と、前記篩から出た原料を前記キャビティの上方にある原料出口まで搬送する搬送面を有する搬送装置と、前記原料出口を前記キャビティの開口面に沿うように移動させる移動機構と、を備える。
【0007】
本発明の一実施形態に係る金型装置は、キャビティを有する凹型、及び前記凹型に対して可動な凸型を有する金型と、前記凸型の移動軌跡の外側に配置された篩と、前記篩から出た原料を前記キャビティの上方にある原料出口まで搬送する搬送面を有する搬送装置と、前記原料出口を前記キャビティの開口面に沿う方向に移動させる移動機構と、を備える。
【0008】
本発明の一実施形態に係る原料供給方法は、金型のキャビティに対して原料を供給する原料供給方法であって、篩と、前記篩から出た原料を前記キャビティの上方にある原料出口まで搬送する搬送面を有する搬送装置と、を備えた原料供給装置を用いて、前記原料出口を前記キャビティの開口面に沿う方向に移動させながら、前記原料を供給する。
【発明の効果】
【0009】
上記態様によれば、金型のキャビティ内に原料を供給する際に、キャビティ内における原料の密度に偏りを生じにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態に係る金型装置の概略斜視図である。
【
図2】
図2(A)(B)は、実施形態に係る金型装置の移動機構による搬送路の動作を説明する鉛直面での概略断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る金型装置の鉛直面での概略断面図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る擦切り本体の平面図である。
【
図5】
図5(A)~(C)は、実施形態に係る金型装置の擦切り装置の動作を説明する鉛直面での概略断面図である。
【
図6】
図6(A)は、実施形態に係る金型による成形を説明する鉛直面での概略断面図である。
図6(B)は、実施形態に係る金型により成形品が成形された状態を説明する鉛直面での概略断面図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る金型により成形品が成形された後に、成形品を移動させる鉛直面での概略断面図である。
【
図8】
図8は、変形例に係る金型装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態>
実施形態に係る金型装置1は、供給された原料から、金型2によって成形品P1(
図7参照)を成形する装置である。本実施形態に係る金型装置1では、金型2のキャビティ211に対して、密度が略均一になるように原料を供給することができる。したがって、本実施形態に係る金型装置1によれば、成形品P1の強度のばらつきを抑制することができる。
【0012】
本実施形態に係る成形品P1は、アルミニウム溶解炉における溶湯との接触部(「溶湯接触部」という場合がある)に使用される板状の部材である。ただし、成形品P1としては、特に制限はなく、例えば、タイル、壁パネル、天井パネル、床パネル、間仕切り等のパネル材であってもよいし、パネル材以外の形状の部材であってもよい。
【0013】
原料は、粉体である。本実施形態に係る粉体は、流動性が極めて不良である。粉体の安息角は、50°よりも大きく、更に言えば、60°よりも大きい場合がある。粉体の平均粒径としては、0.1μm以上であり、より好ましくは、1μm以上、更に好ましくは4μm以上であり、また、好ましくは4mm以下であり、より好ましくは2mm以下、更に好ましくは1mm以下である。本明細書でいう「平均粒径」はレーザ回析法によって測定される。
【0014】
原料の一例としては、粉体原料に対し、ガラス繊維と、水分とを添加した組成物が挙げられる。粉体原料としては、例えば、耐熱性無機材料が挙げられる。耐熱性無機材料としては、例えば、ワラストナイト、炭化ケイ素、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、チタン酸アルミニウム、アルミナ、ムライト、スピネル、ジルコン、ジルコニア、マグネシア、ペタライト、溶融シリカ、スポジュメン、ユークリプタイト、コーディエライト、サイアロン及びグラファイト等が挙げられる。
【0015】
金型装置1は、
図1に示すように、金型2と、金型2に対して原料を供給する原料供給装置3と、を備える。原料供給装置3は、金型2のキャビティ211に対して、原料を充填し、かつ充填後の原料について、略均一な密度にすることができる。
【0016】
以下では、説明の便宜上、
図1に示すように、水平面に沿い、かつ原料供給装置3と金型2とが並ぶ方向を「前後方向」として定義し、前後方向において原料供給装置3から金型2に向かう方向を「前方向」とし、その反対方向を「後方向」として定義する。また、水平面に沿いかつ前後方向に直交する方向を「左右方向」として定義する。
【0017】
(1)金型
金型2は、原料をプレスすることで成形品P1を形成する。金型2は、凹型21と、凹型21に対して嵌まり込む凸型22と、型駆動機23と、を備える。
【0018】
凹型21は、凹状の金型2の一構成部材であり、原料が充填されるキャビティ211を有する。凹型21は、固定型である。凹型21は、キャビティ211の底面を構成する下パンチ212と、キャビティ211の内側面を構成するダイ213と、ダイベース214と、を備える。
【0019】
本実施形態に係る下パンチ212は、設置面G1に対して固定されている。下パンチ212の上面は、平面であり、また、キャビティ211の底面である。ダイ213は、下パンチ212の上面に対して上下方向に移動し得る。ダイ213の中央部には、上下方向に貫通する貫通路が形成されている。ダイ213は、上方から見て(以下、平面視)略ロ字状に形成されている。下パンチ212は、ダイ213の貫通路に対して、下方から嵌め込まれている。キャビティ211は、ダイ213の貫通路と下パンチ212とで囲まれた空間であり、本実施形態では、直方体状に形成されている。ダイ213の上面と、キャビティ211の開口面とは同一平面上に位置する。
【0020】
なお、ダイ213は、一部材で構成されてもよいし、複数のブロックを組み合わせることで平面視略ロ字状に形成されてもよい。また、キャビティ211としては、直方体状に限らず、例えば、円柱状、三角形柱状、五角柱状等であってもよい。
【0021】
ダイベース214の上面は、ダイ213の上面と面一である。ダイベース214は、ダイ213に対して固定されている。なお、ダイベース214は、ダイ213に対して一体であってもよいし、別体であってもよい。
【0022】
凸型22は、金型2の一構成部材であり、凸状に形成されている。凸型22は、凹型21に対して、上下方向に移動する。本実施形態に係る金型2において、凸型22は可動型である。凸型22の下面は、下パンチ212の上面に対向している。また、凸型22の下面は、下パンチ212の上面に対して略平行である。凸型22は、ダイ213の貫通路(中央部)に対して、上方から近付き、その後、嵌め込まれる。要するに、凸型22は、その下面(成形面)が、キャビティ211の下面に対して、近接又は離間する方向(接離方向)に平行移動可能に構成されている。金型2は、凸型22と凹型21とによって、キャビティ211内に充填された原料を加圧して、成形品P1を成形することができる。
【0023】
型駆動機23は、凸型22と凹型21との少なくとも一方を相対的に動かす。本実施形態では、型駆動機23は、可動型である凸型22を上下方向に移動させる。型駆動機23は、例えば、プレス機である。
【0024】
(2)原料供給装置
原料供給装置3は、金型2のキャビティ211に対して、原料を供給する。原料供給装置3は、
図1に示すように、架台4と、ホッパー5と、篩(ふるい)61を有する篩装置6と、搬送装置7と、移動機構8と、擦切り装置9と、を備える。
【0025】
(2.1)架台
架台4は、原料供給装置3の一部又は全部が設置される台である。本実施形態に係る架台4には、ホッパー5及び篩装置6が設置されている。架台4は、搬送装置7の上に篩61が位置するように篩装置6を支持し、かつ篩61の上にホッパー5の吐出口53が位置するように、ホッパー5を支持する。
【0026】
(2.2)ホッパー
ホッパー5は、原料供給装置3における原料の投入口511を有する。ホッパー5は、上方に行くに従って拡がる投入部51を有し、投入部51の上端面に投入口511が形成されている。ホッパー5の投入部51の形状は、逆角錐台状に形成されているが、特に制限はなく、逆円錐台状に形成されてもよい。ホッパー5は、投入部51につながる流通路52を有し、流通路52の下端部に吐出口53が形成されている。流通路52は、水平面に沿って延びている。投入部51と吐出口53との間に流通路52が設けられることによって、投入口511と吐出口53とは、平面視でずれた位置に配置される。
【0027】
ここでいう「ずれている」とは、投入口511の図心と吐出口53の図心とが、平面視で異なる位置にあることを意味する。したがって、平面視において、投入口511の一部と吐出口53の一部とが重なっていても、「投入口511と吐出口53とが平面視でずれた位置に配置される」の範疇である。
【0028】
(2.3)篩装置
篩装置6は、投入された原料をふるいにかける装置である。篩装置6は、
図1に示すように、篩61と、篩振動装置62と、を備える。
【0029】
篩61は、原料をふるいにかけることで、原料のかたまりを解す。篩61は、上面に開口面を有する箱状に形成されており、ホッパー5の吐出口53から出た原料を全て受けることができる。篩61の底面は、多数の穴を有しており、網目状に形成されている。篩61の底面が有する各穴は、一辺の寸法が均一であることが好ましい。ここで、一辺の寸法とは、穴が内接する四角形の一辺の寸法を意味し、例えば、穴が円形の場合は直径を指す。一辺の寸法としては、例えば、0.02mm以上であり、より好ましくは、0.5mm以上、更に好ましくは1mm以上であり、また、好ましくは30mm以下であり、より好ましくは20mm以下、更に好ましくは10mm以下である。
【0030】
本実施形態に係る篩61は、底面が金網で構成され、側面が矩形枠状に組まれた木質板で構成されている。ただし、篩61の底面としては、金網に限らず、例えば、樹脂網、パンチングメタル、エキスパンドメタル、籠、ざる等であってもよい。また、篩61は、本実施形態では、底面のみが金網で構成されているが、篩全体が金網で構成されてもよい。網の線径としては、0.02mm以上が好ましく、より好ましくは、0.2mm以上、更に好ましくは0.5mm以上であり、また、好ましくは3mm以下であり、より好ましくは2mm以下、更に好ましくは1mm以下である。また、網のメッシュは、原料に応じて適宜設定されるが、例えば、2メッシュ以上が好ましく、より好ましくは3メッシュ以上であり、また、635メッシュ以下が好ましく、より好ましくは32メッシュ以下である。
【0031】
篩61は、複数の車輪611を有する。複数の車輪611は、篩本体を架台4上に支持する。複数の車輪611は、前後方向に転がりながら移動可能であり、篩61は、複数の車輪611によって、前後方向に往復するように振動し得る。複数の車輪611の回転軸は、本実施形態では、左右方向に延びているが、篩61が往復動することができれば、回転軸の方向は特に制限はない。
【0032】
篩振動装置62は、篩61を振動させる装置である。本実施形態に係る篩振動装置62は、篩61を前後方向に沿って往復移動させることができる。ただし、篩振動装置62は、篩61を振動させることができれば、一方向に沿った直線運動でなくてもよく、例えば、円運動、円弧運動、上下運動等や、これらを組み合わせた運動等であってもよい。
【0033】
篩振動装置62は、駆動源として、例えば、スライダを直線運動させる直動アクチュエータが用いられる。スライダは、篩61に連結されており、篩61を直接振動させる。なお、篩振動装置62の駆動源としては、直動アクチュエータに限らず、例えば、モータ、ソレノイド、シリンダ等が用いられてもよい。また、駆動源は、電気駆動、エア駆動及び油圧駆動のいずれであってもよい。
【0034】
篩装置6は、凸型22の移動軌跡の外側に配置されている。篩装置6によってふるいに掛けられた原料は、搬送装置7を通って金型2に供給される。
【0035】
(2.4)搬送装置
搬送装置7は、篩61から落下した原料を、キャビティ211内に搬送する装置である。搬送装置7は、搬送面711を有する搬送路71と、搬送面711上の原料を出口(原料出口)まで移動させる搬送駆動装置72と、網73と、を備える。
【0036】
搬送路71は、原料を移動させる通路である。搬送路71は、上述した通り、搬送面711を有している。搬送面711は、上方に臨んでいる。搬送面711の少なくとも一部は、篩61の鉛直方向の下側に位置している。
【0037】
搬送面711は、原料を搬送路71の原料出口まで搬送することができる。搬送面711としては、搬送面711自体が移動することで、原料を原料出口まで搬送してもよいし、搬送面711自体は移動せずに、原料を原料出口まで搬送してもよい。移動する搬送面711の一例として、ベルトコンベアが挙げられる。また、搬送面711上の容器を移動させるローラコンベアであってもよい。移動しない搬送面711の一例として、振動フィーダを用いたものが挙げられる。本実施形態では、搬送面711の一例として、振動フィーダを用いた構造を挙げて説明する。
【0038】
搬送面711は、金型2に向かうに従って下方に位置するように、水平面に対して傾斜している。搬送面711の搬送方向は、平面視で前後方向に平行である。搬送路71は、搬送面711の幅方向の両端から立ち上がる立上げ部712を有する。立上げ部712によって、原料が移動中に搬送面711から落下するのを防ぐことができる。
【0039】
搬送路71の原料出口は立上げ部712の前側の端部と搬送面711とで囲まれた出口である。ただし、原料出口は、搬送面711の前側の端縁を含んでいればよく、必ずしも、立上げ部712によって囲まれていなくてもよい。
【0040】
搬送駆動装置72は、本実施形態では、搬送面711を振動させる発振装置720である。発振装置720が搬送面711を振動させることで、原料を原料出口まで移動させる。なお、搬送面711がベルトコンベアの上面である場合、搬送駆動装置72は、ベルトコンベアの駆動プーリを回転させるモータである。
【0041】
網73は、搬送路71の原料出口とキャビティ211との間に配置される。網73は、原料出口から落下した原料を受け、原料を解しながらキャビティ211内に落とすことができる。網73がない場合、搬送路71を移動する原料は、原料出口から落下する際に、まとまりになって落下することがある。この場合、キャビティ211に充填された原料の密度が偏る。しかし、原料出口とキャビティ211との間に網73が設けられると、原料出口から原料がまとまりになって落下しても、網73によっていったん受けることができるため、まとまりの原料を解して、キャビティ211に入れることができる。
【0042】
搬送装置7は、網73を振動させる網振動装置74を有する。網73を振動させることで、受けた原料を解しながら、少しずつ落下させることができる。網73は、搬送路71に対して固定されており、搬送路71の搬送面711の振動が伝達する。したがって、本実施形態に係る網振動装置74は、振動フィーダの発振装置720で構成されている。もちろん、発振装置720とは別に、網振動装置74を設けてもよい。
【0043】
(2.5)移動機構
移動機構8は、搬送路71を移動させることにより、原料出口をキャビティ211の開口面に沿うように移動させる。移動機構8は、
図2に示すように、一対の移動レール81と、移動体82と、搬送路移動装置83と、を備える。
【0044】
移動レール81は、前後方向に沿って延びている。一対の移動レール81は、左右方向に離れており、互いに平行である。移動体82は、移動レール81に沿って移動する。搬送路71は、移動体82に対して固定されている。本実施形態では、移動体82には発振装置720が搭載されており、発振装置720及び搬送路71は、移動体82と共に移動する。
【0045】
搬送路移動装置83は、移動体82を移動レール81に沿って移動させる。搬送路移動装置83は、移動体82を移動レール81に沿って移動させることができれば、特に制限はないが、一例を挙げると、モータと、ボールねじと、を備えた構成が挙げられる。モータがボールねじを軸回りに回転させることで、移動体82を移動レール81に沿って移動させることができる。なお、搬送路移動装置83としては、モータ及びボールねじに限らず、ラックアンドピニオンで構成されてもよいし、直動式のアクチュエータで構成されてもよい。
【0046】
搬送路移動装置83は、搬送路71を第一位置と第二位置との間で移動させることができる。第一位置は、
図2(A)に示すように、キャビティ211の後側の端部の上に原料出口が位置する位置である。第二位置は、
図3に示すように、キャビティ211の前側の端部の上に原料出口が位置する位置である。
【0047】
図2(A)に示すように、搬送路71を第一位置に位置させた状態で、原料をホッパー5に投入すると、原料は篩61に入る。篩61にかけられた原料は、解されながら搬送面711に落下し、搬送面711に沿って原料出口に移動する。原料出口から落下した原料は、網73によって更に解され、キャビティ211内の後側の端部近傍に落下する。
【0048】
搬送路移動装置83は、搬送路71をゆっくりと第二位置に向かう方向(本実施形態では前方向)に移動させる。これにより、原料出口が前方向に移動する。落下する原料は、キャビティ211内に落ちる位置を徐々に前方向に変える(
図2(A)、(B)、
図3参照)。
【0049】
搬送路移動装置83は、搬送路71を、第一位置から第二位置まで移動させた後、再び、第二位置から第一位置まで移動させる。搬送路移動装置83は、何度も往復するように搬送路71を移動させて原料の充填を完了させてもよいし、前方向への移動のみでキャビティ211への原料の充填を完了してもよい。
【0050】
搬送路71の原料出口の第一位置と第二位置との間における移動速度は、特に制限はないが、例えば、1mm/sec以上が好ましく、より好ましくは、5mm/sec以上、更に好ましくは10mm/sec以上であり、また、好ましくは100mm/sec以下であり、より好ましくは70mm/sec以下、更に好ましくは50mm/sec以下である。
【0051】
搬送路移動装置83は、キャビティ211内への原料の充填が完了すると、搬送装置7をキャビティ211の上方から退避させることができる。ここでは、搬送路71の全てを、凸型22の移動軌跡に重ならない位置に移動させる。これにより、金型2と搬送路71との干渉を防ぐことができる。
【0052】
(2.6)擦切り装置
擦切り装置9は、キャビティ211内に供給された原料に対し、キャビティ211の開口面に沿って擦切りを行う装置である。擦切り装置9は、
図4に示すように、擦切り本体91と、ヘラ駆動装置92と、を備える。
【0053】
擦切り本体91は、擦切り装置9の主体を構成する部分である。擦切り本体91は、一対のヘラ911,912と、一対のヘラ911,912を連結するフレーム914と、を備える。
【0054】
ヘラ911,912は、キャビティ211の開口面に沿う第一方向に移動することで、原料の擦切りを行う。ここでいう「第一方向」とは、キャビティ211の開口面に沿う一方向であれば特に制限はないが、本実施形態では、第一方向は前後方向である。ここで、一対のヘラを、第一ヘラ911と、第二ヘラ912とする。第一ヘラ911と第二ヘラ912とは、前後方向に一定の間隔をおいて配置されている。第一ヘラ911と第二ヘラ912との間の開口は、搬送路71の原料出口から落下した原料が通る原料通過口913である。
【0055】
第一ヘラ911及び第二ヘラ912は板状に形成されている。第一ヘラ911の先端部は、前方向に向く。第一ヘラ911の先端部は、先端縁に行くに従って薄くなるように形成されている。第二ヘラ912の先端部は後方向に向く。第二ヘラ912の先端部は、先端縁に行くに従って薄くなるように形成されている。第一ヘラ911の下面と第二ヘラ912の下面とは同一平面上に位置している。
【0056】
ヘラ駆動装置92は、擦切り本体91を、第一方向(ここでは前後方向)に移動させることで、ヘラ911,912によって擦切りを行うが、このとき、水平面に沿いかつ第一方向に直交する第二方向(ここでは、左右方向)にヘラ911,912を振動させながら、前後方向にヘラ911,912を移動させる。これによって、ヘラ911,912がキャビティ211に充填された原料を押しつぶすことなく、擦切りを行うことができる。
【0057】
ヘラ駆動装置92は、擦切り本体91を第一方向に移動させる第一駆動部920と、擦切り本体91を第二方向に振動する第二駆動部921と、を備える。本実施形態では、
図5に示すように、擦切り本体91は搬送路71に対して固定されているため、移動機構8によって、擦切り本体91は第一方向に移動する。したがって、本実施形態に係る第一駆動部920は、移動機構8によって構成されている。
【0058】
第二駆動部921は、
図4に示すように、擦切り本体91に連結されている。第二駆動部921は、擦切り本体91と共に第一方向に移動する。第二駆動部921としては、特に制限はなく、例えば、ステッピングモータ、ソレノイド、振動アクチュエータ、シリンダ装置等が挙げられる。第二駆動部921による、ヘラ911,912の第二方向(ここでは左右方向)へ振動する速度は、特に制限はないが、例えば、5mm/sec以上が好ましく、より好ましくは、50mm/sec以上、更に好ましくは100mm/sec以上であり、また、好ましくは3000mm/sec以下であり、より好ましくは2000mm/sec以下、更に好ましくは1000mm/sec以下である。
【0059】
なお、本実施形態では、第一駆動部920が移動機構8によって構成されたが、ヘラ911,912を移動させるための移動機構8を個別に設けてもよい。また、ヘラとしては、第一ヘラ911と第二ヘラ912とのうちのいずれか一つであってもよい。
【0060】
図5(A)に示すように、第一ヘラ911は、キャビティ211に原料を充填しながら、前方向に移動する。このとき第一ヘラ911は、左右方向に振動しながら、前方向に移動して、擦切りを行う。搬送路71の原料出口が第二位置まで移動すると、
図5(B)に示すように、第二ヘラ912は、左右方向に振動しながら、後方向に移動して、擦切りを行う。そして、擦切った際の余剰分の原料は、
図5(C)に示すように、第二ヘラ912によってダイ213上から押し出され、回収部93に収容される。回収部93に収容された原料は、再利用してもよいし、廃棄してもよい。
【0061】
擦切り装置9によって擦切られたキャビティ211の原料の上面は、キャビティ211の開口面に沿って平面状になり、凹型21の上面に面一となる。キャビティ211に充填された原料は、搬送路71の原料出口から落下した際に、密度が偏ることなく均一に充填されるが、擦切り装置9によって押し付けることなく擦切りすることができるため、最終的に、略均一に充填される。
【0062】
この後、
図6(A)に示すように、凸型22が下降し、凹型21内に嵌まり込む。そして、凸型22と下パンチ212とで原料が加圧される。原料の加圧後、
図6(B)に示すように、ダイ213が下降し、下パンチ212の上面とダイ213の上面とが面一になる。
【0063】
この後、
図7に示すように、擦切り本体91が前方向に移動し、擦切り本体91によって、成形品P1を前方向に移動させる。成形品P1はダイベース214上に移動する。
【0064】
<変形例>
上記実施形態は、本発明の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態は、本発明の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下、実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0065】
上記実施形態では、搬送路71が、振動フィーダを用いた構造で構成されたが、
図8に示すように、搬送路71はベルトコンベアであってもよい。
図8に示すように、搬送路71は、駆動プーリ7111と、従動プーリ7112と、駆動プーリ7111と従動プーリ71112とに掛けられたベルト7113と、を備える。搬送面711は、ベルト7113の上面で構成される。
【0066】
搬送面711は、水平面に略平行である。これによって、搬送装置7や原料供給装置3の高さを抑えることができ、金型装置1の小型化を図ることも可能である。
【0067】
上記実施形態では、ホッパー5及び篩装置6が、架台4に設置されたが、ホッパー5及び篩装置6は、例えば、ダイベース214に設置されてもよい。また、搬送装置7は、ダイベース214に設置されたが、架台4に設置されてもよい。また、ホッパー5及び篩装置6は、搬送路71に対して固定されてもよく、搬送路71と一緒に移動してもよい。
【0068】
上記実施形態では、篩61は、篩振動装置62によって動作し、自動でふるいを掛けられたが、作業者が手動で篩61を動かしてもよい。
【0069】
上記実施形態では、原料供給装置はホッパー5を有したが、本発明では、ホッパー5はなくてもよく、原料を直接、篩61に入れてもよい。
【0070】
上記実施形態では、擦切り装置9が搬送路71に対して取り付けられ、搬送路71と一緒に移動したが、擦切り装置9による擦切りに代えて、作業者が手動で擦切りを行ってもよい。すなわち、擦切り装置9は無くてもよい。
【0071】
上記実施形態では、キャビティ211の底面(下パンチ212の上面)は平面であったが、本発明では、必ずしも平面である必要はない。キャビティ211の底面は、例えば、曲面、凹凸面等であってもよい。
【0072】
本明細書にて、「略平行」、又は「略直交」のように「略」を伴った表現が、用いられる場合がある。例えば、「略平行」とは、実質的に「平行」であることを意味し、厳密に「平行」な状態だけでなく、数度程度の誤差を含む意味である。他の「略」を伴った表現についても同様である。
【0073】
また、本明細書において「端部」及び「端」などのように、「…部」の有無で区別した表現が用いられている。例えば、「端」は物体の末の部分を意味するが、「端部」は「端」を含む一定の範囲を持つ域を意味する。端を含む一定の範囲内にある点であれば、いずれも、「端部」であるとする。他の「…部」を伴った表現についても同様である。
【0074】
<作用効果>
以上説明したように、本実施形態の原料供給装置3は、篩61と、搬送装置7と、移動機構8とを備えるため、篩61によってほぐされた原料が、搬送面711によってキャビティ211上に運ばれると共に、ほぐされた原料が、移動機構8によってキャビティ211の開口面に沿って移動しながら供給される。このため、キャビティ211内に原料を供給する際に、キャビティ211内における原料の密度に偏りが生じにくい。
【0075】
また、本実施形態に係る原料供給装置3は、篩61を振動させる篩振動装置62を備えるため、篩61を自動で振動させることができ、作業性が高い。
【0076】
また、本実施形態に係る搬送装置7は、原料出口とキャビティ211との間に配置された網73と、網73を振動させる網振動装置74と、を有するため、搬送面711から落下する原料が、まとまって落下するのを防ぐことができ、より一層、キャビティ211内における原料の密度に偏りが生じにくい。
【0077】
また、本実施形態に係る搬送装置7は、発振装置720を含む振動フィーダを有するため、コンベア等に比べて搬送装置7の小型化を図りやすい。
【0078】
また、移動機構8は、搬送装置7を前記キャビティ211の上方から退避可能に構成されているため、搬送装置7があっても、金型2の成形を妨げないようにできる。
【0079】
また、本実施形態に係る原料供給装置3は、キャビティ211内に供給された原料に対し、キャビティ211の開口面に沿って擦切りを行う擦切り装置9を備えるため、キャビティ211の開口面よりも上方に余剰分の原料が残ると、成形後に、密度の偏りが生じるが、これを防ぐことができる。
【0080】
また、擦切り装置9は、第一方向に移動することで原料の擦切りを行うヘラと、ヘラを第二方向に振動させながら第一方向に移動させるヘラ駆動装置92と、を有するため、ヘラによって原料を押し付けることなく擦切りを行うことができるため、より一層、キャビティ211内における原料の密度に偏りが生じにくい。
【符号の説明】
【0081】
1 金型装置
2 金型
21 凹型
211 キャビティ
22 凸型
3 原料供給装置
6 篩装置
61 篩
62 篩振動装置
7 搬送装置
711 搬送面
720 発振装置
73 網
74 網振動装置
8 移動機構
9 擦切り装置
911 第一ヘラ(ヘラ)
912 第二ヘラ(ヘラ)
92 ヘラ駆動装置
P1 成形品