(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023010429
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】パレット連結具
(51)【国際特許分類】
B65D 19/38 20060101AFI20230113BHJP
B65D 19/32 20060101ALI20230113BHJP
B65D 19/24 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
B65D19/38 Z
B65D19/32 C
B65D19/24
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021114555
(22)【出願日】2021-07-09
(71)【出願人】
【識別番号】591206500
【氏名又は名称】株式会社 ダイサン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小瀧 大蔵
【テーマコード(参考)】
3E063
【Fターム(参考)】
3E063AA02
3E063BA05
3E063BA08
3E063CA01
3E063CA04
3E063CA05
3E063EE03
3E063FF20
(57)【要約】
【課題】パレットに損傷を与え難いパレット連結具を提供する。
【解決手段】パレット連結具10は、脚部材26の上下端部に上板と下板24が接合されフォークリフトのフォークが差し込まれる差込口20Aが隣り合う脚部材26の間に形成されたパレット20を牽引又は押し出すためのパレット連結具10であって、奥行きが脚部材の奥行きより長い第1部材12Aと、第1部材12Aの奥行き方向の手前側と奥側の両端部からそれぞれ並行に延出する一対の第2部材12Bとで形成されたフック本体12であって第1部材12Aと奥側の第2部材12Bとからなる部分の高さが差込口20Aの高さより低いフック本体12と、手前側の第2部材12Bに設けられ運搬装置が連結される連結部14と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脚部材の上下端部に上板と下板が接合されフォークリフトのフォークが差し込まれる差込口が隣り合う前記脚部材の間に形成されたパレットを牽引又は押し出すためのパレット連結具であって、
奥行きが前記脚部材の奥行きより長い第1部材と、前記第1部材の奥行き方向の手前側と奥側の両端部からそれぞれ並行に延出する一対の第2部材とで形成されたフック本体であって、前記第1部材と奥側の第2部材とからなる部分の高さが前記差込口の高さより低いフック本体と、
手前側の第2部材に設けられ運搬装置が連結される連結部と、を備える、
パレット連結具。
【請求項2】
前記第1部材と前記第2部材が鋼材で形成されており、前記第1部材と前記第2部材の接合部が成す隅部に補強材が溶接されている、
請求項1に記載のパレット連結具。
【請求項3】
前記第2部材の自由端部に連結部材が掛け渡されている、
請求項1又は請求項2に記載のパレット連結具。
【請求項4】
前記手前側の第2部材は、前記フック本体に取り囲まれる脚部材と前記差込口を挟んで隣り合う脚部材の位置まで延びている、
請求項1又は請求項2に記載のパレット連結具。
【請求項5】
前記連結部は、前記第2部材と隙間を空けて前記第2部材に取付けられる連結プレートである、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のパレット連結具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パレット連結具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フォークリフトを用いて荷物を運搬するための運搬補助具として、フォークリフトのフォークを挿入する挿入口を側面に有するパレットと呼ばれる平板状の荷台があり、現在世界中で膨大の数量のパレットが運用され、循環流通している。パレットを用いる主な目的は、その上に荷物を積載した状態で挿入口にフォークを挿入して持ち上げ、フォークリフトを移動させることにより、重量物或いは複数の荷物を一括して近距離運搬することである。
【0003】
また、パレットの補助的利用方法として、荷物を倉庫内に保管する際や荷役ヤードに一時的に保管する際にも、パレット上に荷物を積載した状態で保管されることが多く、また、荷物を遠距離運搬するためにトラックなどに積載する場合でも、荷物をパレットに積載したままの状態でトラックなどに積載することが多い。
【0004】
しかし、荷物が既に保管されている倉庫内などに後からフォークリフトで荷物を運んで保管するような際に、フォークリフトが自由に動き回れる自由スペースがない場合があり、このような場合には、荷物を積載したパレットをフォークリフトから一旦降ろした上で、そのパレットを床面上で押したり引いたり或いは回転させたりして空きスペースまで移動させて保管し、保管場所のスペース効率を上げることが求められる。このことは、保管スペースから荷物を積載したパレットを取り出す際も同様で、床面に置かれたパレットをフォークリフトの操作が可能なスペースのある位置まで引き出してくる必要がある。
【0005】
特に、荷物を積載したパレットをトラック荷台上に積む場合や逆に荷台から引き出す際には、通常フォークリフトは荷台上まで乗り入れすることが容易ではないので、荷物を荷台の最奥部に入れる場合や最奥部から引き出すために、そのパレットを荷台床面上で押したり引いたり或いは回転させたりして適切な位置に移動させる必要がある。
【0006】
なお、パレットの移動に用いられる手段として、動力運搬装置であるフォークリフトの他に、パレットトラック或いはハンドリフトなどと呼ばれる人力又は電動運搬装置も用いられているが、いずれも長尺のフォークを備えており、フォークリフトほどではないものの、その自由な操作には一定の広さのスペースを必要とするため、狭隘なスペースでのパレットの移動には、一旦パレットをパレットトラックなどから床に降ろし、床面上で移動させる必要がある。
【0007】
このように荷物を積載したパレットを床面上で移動させる方法として、従来、スライダーボードなど滑動性の高い部材を床面に予め敷いておき、その上にパレットを置いて人力で移動させるような方法がある。しかし、このように荷物を積載したパレットを人力により床面上を摺動させて移動するには、例えスライダーボードを下に敷いた場合でも、作業者への負担は避けられず、また、このような方法で人力移動できるパレット荷物の重量には自ずから限界がある。
【0008】
また、フォーク長を加えた全長が比較的大きく、狭隘なスペースで方向転換など自在な操作が困難なフォークリフトのような大型の動力運搬装置でなく、比較的狭隘なスペースでも動き回れる小型の動力運搬装置として、従来、電動式運搬車などがあり、特に運転席を有さず、操縦者が操縦桿を握った状態で一緒に歩行して操作するタイプには、全長が50センチメートル前後の小型の装置も存在する。
【0009】
しかし、これらの電動式運搬車は、本来、キャスター付き台車やかご車など車輪を有するものを単独で或いは複数連結した状態で牽引することを想定した動力運搬装置であり、パレットを直接牽引するような連結構造は有していない。従って、このような運搬装置を用いてパレットを牽引しようとすれば、この運搬装置にパレットを連結する機構を新たに設ける必要がある。なお、前述の電動式運搬車などは、キャスター付き台車などを牽引することを想定したものであるが、進行方向を逆転させて連結している台車などを押すことも可能である。
【0010】
このようにパレットを床面上で摺動によって移動させるために運搬装置に連結する手段として、パレットの側面の幅方向中央に設けられた脚部材を有するパレットであれば、牽引治具を用いて牽引する技術が知られている。例えば、特許文献1には、一対のアーム部を有し平面視でU字状の牽引治具(パレットプーラー)を用いて合成樹脂製パレットを牽引する従来技術が開示されている。
【0011】
また、特許文献1で提案されている発明では、牽引治具の一対のアーム部の先端(一端)側が下方に突出するように折り曲げられることによって、側面視でL字状の係合部が形成されている。また、合成樹脂製パレットの内部では、下板(下面板状部)の上面で脚部材(桁部)の両側の位置に係止部が設けられている。
【0012】
特許文献1では、具体的な係止部の構造として、合成樹脂製パレットの内部で、下板の上面に向けて立ち上がる複数の壁に囲まれた凹部で構成されたフック部(凹部)及び下板の上面に設けられた段差によって構成されたフック部(段差部)が開示されている。牽引時には、牽引治具のU字状アーム部をパレットの外側から脚部材を挟み込むように挿入し、アーム部の先端の下向きに突出したL字状係合部を、フック部の凹部内側壁面又は段差壁面に上側から係合させる。そして、下向きに突出した係合部とフック部の壁面とが係合した状態で、牽引治具を介して合成樹脂製パレットが牽引される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、パレットを本来の用法に従ってフォークリフトやパレットトラックなどの運搬装置により移動させるためには、いずれもフォークを備えているために、比較的広い操作スペースを必要とする。このため、狭隘なスペースにおける荷物移動には利用できないという問題がある。
【0015】
また、スライダーボードを床面に敷いて、その上でパレットを人力で移動させる従来技術においては、パレットの移動が狭隘なスペースでも自在にできる利点はあるものの、人力で移動させるために扱える荷物の重量が自ずと限られる。このため、比較的重量がある荷物の移動には適さないという問題がある。
【0016】
また、従来の電動式牽引車などのような小型の動力運搬装置は、フォークを備えていないので比較的狭隘なスペースで操作可能であるが、これらの運搬装置は台車などの牽引を想定した設計であり、パレットの運搬を想定していない。このため、このような小型の動力運搬装置を用いてパレットを移動させるには、動力運搬装置とパレットを連結する新たな連結手段を必要とするという問題がある。
【0017】
また、そのように動力運搬装置とパレットを連結する手段については、特許文献1において提案がなされているが、特許文献1の構成において、フック部の壁の剛性が比較的小さいため、牽引作業の際、牽引荷重によって負荷がかかるとフック部の壁は破損し易い。このため、パレットに損傷を与え易いという問題が生じる。
【0018】
同じく、特許文献1における構成においては、牽引作業の際、フック部の凹所又は段差にフックを上から引っ掛けるだけである。このため、フック部の壁が破損しないまでも、移動時の振動などによって係合が外れる恐れがあるという問題がある。
【0019】
同じく、特許文献1における発明は、パレットにフック部などの特別な構造を設ける提案である。このため、現在膨大な数量が流通している既存の標準的パレットをこの新しい構造のパレットに置き換えるためには、膨大な費用と時間を要するという問題がある。
【0020】
本発明は、上記した問題に着目して為されたものであって、荷物を積載した状態で比較的狭隘な床面に置かれたパレットを、比較的小型の運搬装置を用いて自在に移動させることができ、既存のパレットをそのまま利用でき、かつ、移動中にフックが外れ難く、パレットに損傷を与え難い、パレットと運搬具を連結するためのパレット連結具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
請求項1に記載のパレット連結具は、脚部材の上下端部に上板と下板が接合されフォークリフトのフォークが差し込まれる差込口が隣り合う脚部材の間に形成されたパレットを牽引又は押し出すためのパレット連結具であって、奥行きが脚部材の奥行きより長い第1部材と、第1部材の奥行き方向の手前側と奥側の両端部からそれぞれ並行に延出する一対の第2部材とで形成されたフック本体であって、第1部材と奥側の第2部材とからなる部分の高さが差込口の高さより低いフック本体と、手前側の第2部材に設けられ運搬装置が連結される連結部と、を備える。なお、ここで奥行き方向とは、対象とするパレットの差込口を前面とした場合の、パレットとパレットに装着したパレット連結具とが対向する方向である。
【0022】
上記構成によれば、パレットの手前側にある差込口へ、連結部を手前にしてフック本体の第1部材と奥側の第2部材を差し込む。そして、2つの第2部材の間に脚部材が位置するように、フック本体を脚部材に向かって横移動させる。これにより、脚部材が第1部材と2つの第2部材で構成されたフック本体に取り囲まれる状態となる。この状態で、手前側の第2部材に設けられた連結部に運搬装置を連結して、電動牽引車その他の運搬装置により牽引又は押し出す力を加えることによりパレットを牽引又は押し出す。なお、上記構成においてパレットを回転させる場合には、パレットの進行方向の左右に異なる牽引または押し出す力を加えることにより、パレットに回転運動を与えることができる。
【0023】
つまり、特許文献1に開示されているような下板に形成された凹部にフックを引っ掛けて牽引する方法などと比較すると、上記構成によれば、剛性が大きい脚部材をフック本体で取り囲んで牽引するので、移動時の振動などによりフックが外れる恐れがなく、また、パレットに損傷を与え難い。なお、上記構成によれば、脚部材に当接する第1部材及び第2部材の内側に、クッション材など軟質材を張り付けるなどして取り付けることにより、パレット損傷のリスクを更に低減することもできる。
【0024】
請求項2に記載のパレット連結具では、第1部材と第2部材が鋼材で形成されており、第1部材と第2部材の接合部が成す隅部に補強材が溶接されている。パレット連結具を用いて運搬装置によりパレットを牽引した場合、2つの第2部材の間に両者の間隔を開こうとする力が働き、特に第1部材と第2部材の接合部に梃子の作用で強い力が働くが、上記構成によれば、第1部材と第2部材の隅部を補強材で補強することで、手前側の第2部材と奥側の第2部材が第1部材との接合部で歪みまたは破壊により開くことが抑制される。
【0025】
請求項3に記載のパレット連結具では、第2部材の自由端部に連結部材が掛け渡されている。上記構成によれば、手前側と奥側の第2部材の自由端部にそれぞれ連結部材を掛け渡すことで、パレット連結具により運搬装置とパレットとを連結してパレットを牽引したときに、連結部が設けられている手前側の第2部材とパレットの脚部材に接している奥側の第2部材の間に両者を引き離そうとする力が加わるが、その力により両者の間隔が塑性変形により開くことが抑制される。
【0026】
請求項4に記載のパレット連結具では、手前側の第2部材は、フック本体に取り囲まれる脚部材と差込口を挟んで隣り合う脚部材の位置まで延びている。上記構成によれば、パレット連結具を押し出す際、手前側の第2部材は、フック本体に取り囲まれる脚部材と差込口を挟んで左右両側に隣り合う2本の脚部材の手間側側面に当接する。すなわち、手前側の第2部材は、3本の脚部材に跨って延びている。
【0027】
このため、手前側の第2部材がフック本体に取り囲まれる脚部材のみに当接してパレットを押し出す場合に比べ、パレットをより安定的に押すことができる。また、手前側の第2部材が3本の脚部材に跨って延びるようにすることにより、3本の脚部材に跨って延びていない場合に比べ、その第2部材の先端が脚部材に接する点を支点としたより大きな梃子作用が生まれ、牽引時に一対の第2部材が塑性変形により開くことを一層抑制できる。
【0028】
特に、パレット連結具を用いてパレットを運搬装置に連結し、運搬中のパレットの方向を変える際、脚部材には、パレットの方向を変えるための回転方向の力(トルク)、すなわちパレットを捻る力が、パレット連結具を介して加えられる。上記の構成では、幅が延長された手前側の第2部材によって、その第2部材の先端が脚部材に接する点を支点としたより大きな梃子作用が生まれ、脚部材に加えられる捻る力を緩和することが可能になる。この結果、脚部材の破損、パレット連結具の変形破損が抑制できる。
【0029】
請求項5に記載のパレット連結具では、連結部は、第2部材と隙間を空けて第2部材に取付けられる連結プレートである。上記構成によれば、第2部材と連結プレートの間の隙間を用いて、パレットを牽引又は押し出すことができる。例えば、この隙間に、運搬装置である電動牽引車などにアタッチメントとして牽引用フックが付設されているような場合、この第2部材と連結プレートの間の隙間に運搬装置の牽引用フックを引っ掛けてパレットを牽引又は押し出すことができる。
【0030】
なお、パレット連結具と運搬装置の連結方法としては、上記のように連結プレートを取り付ける方法に限定されず、第2部材にIボルトを取り付ける方法、第2部材に鉄道車両同士の連結に用いられるような連結器を取り付ける方法、又は第2部材を運搬装置により直接把持又は当接して牽引又は押し出す方法などその他の方法を排除するものではない。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、荷物を積載した状態で比較的狭隘な床面に置かれたパレットを、比較的小型の運搬装置を用いて自在に移動させることができ、既存のパレットをそのまま利用でき、かつ、移動中にフックが外れ難く、パレットに損傷を与え難い、パレットと運搬具を連結するためのパレット連結具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本実施形態に係るパレット連結具を説明する斜視図である。
【
図2】本実施形態に係るパレット連結具を用いた運搬対象物であるパレットを説明する斜視図である。
【
図3】本実施形態に係るパレット連結具を用いたパレットの運搬方法を、一部を破断して説明する平面図である。
【
図4】
図3に続けて、本実施形態に係るパレット連結具を用いたパレットの運搬方法を、一部を破断して説明する平面図である。
【
図5】
図4に続けて、
図4中の5-5線で断面した位置で、本実施形態に係るパレット連結具を用いたパレットの運搬方法を説明する平面図である。
【
図6】本実施形態に係るパレット連結具の第1変形例を説明する側面図である。
【
図7】本実施形態に係るパレット連結具の第2変形例を、パレットの一部を破断して説明する平面図である。
【
図8】本実施形態に係るパレット連結具の第3変形例を、パレットの一部を破断して説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一の部分及び類似の部分には、同一の符号又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各装置や各部材の厚みの比率等は現実のものとは異なる。よって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判定すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0034】
<パレット連結具>
図1に示すように、本実施形態に係るパレット連結具10は、フック本体12と、連結部14と、を備える。まず、パレット連結具10が用いられる運搬方法における運搬対象物であるパレット20を、
図2を参照して説明する。
【0035】
(パレット)
図2に示すように、本実施形態のパレット20は、上板22と下板24と脚部材(桁部)26とを有する。本実施形態では、上板22と下板24とは、平面視で正方形状であるが、本発明では、矩形状や他の多角形状、円形状等、任意の幾何学形状であってよい。
【0036】
本実施形態の脚部材26は、四角柱状であり、側面の4隅には丸みが設けられている。なお、本発明では、脚部材26の側面の4隅に丸みが設けられなくてもよく、また、四角柱状に限らず、円柱状、多角柱状、その他不定形の柱状であってもよい。上板22と下板24とは、脚部材26の上下端部に接合されている。なお、本実施形態のパレット20では、上板22と下板24と脚部材26とが一体的に作製されているが、本発明では、それぞれ別個に作製された上板22と下板24と脚部材26とが結合されることでパレットが形成されてよい。
【0037】
本実施形態では、脚部材26は、パレット20の正方形の4隅のコーナー部と、正方形の一辺に相当する外縁部の幅方向中央とに、それぞれ設けられている。隣り合う脚部材26の間には、フォークリフトのフォークが差し込まれる差込口20Aが形成されている。本実施形態では、パレット20の差込口20Aの個数は、正方形の一辺に2個ずつ形成されているが、本発明では、脚部材26の個数は、任意に設定できる。また、本実施形態のパレット20は、例えば合成樹脂製であるが、本発明では、木製等、他の素材が用いられてよい。
【0038】
ここで、外縁部の幅方向中央に設けられている脚部材26の横断面の寸法(縦の幅×横の幅)は、合成樹脂製のものにあっては、製造業者が異なっても、ほぼ一定(195mm×190mm)に揃えられている場合が多い。本実施形態に係るパレット連結具10を用いた運搬方法では、この差込口20Aに対し、フォークではなく、パレット連結具10が差し込まれると共に、脚部材26に嵌め込まれることになる。
【0039】
(フック本体)
次に、本実施形態のパレット連結具10を具体的に説明する。
図1に示したように、フック本体12は、長尺状の第1部材12Aと、第1部材12Aの端部からそれぞれ並行に延出する2つの第2部材12Bと、を有する。第1部材12Aと一対の第2部材12Bとによって、チャンネル形状(C字状)が形成されている。
【0040】
本実施形態のフック本体12では、1枚の板状部材を平面視でチャンネル形状に折り曲げることによって、3個の部材が連結された構造が一体的に作製されているが、本発明では、これに限定されない。例えば、2つの第2部材12Bが、第1部材12Aの両端に、ネジ結合等によって着脱自在に連結されてもよい。また、本実施形態では、第1部材12Aと第2部材12Bとは、いずれも矩形状の板状部材であるが、本発明では、第1部材と第2部材の形状は、取扱いの容易さ、軽量化、材料の節約などを考慮して、例えば棒状、簀ノ子状等、任意に変更できる。
【0041】
また、本実施形態では、第1部材12Aと第2部材12Bとは、鋼材で形成されているが、本発明では、材質は任意に変更できる、例えば、アルミニウムを用いることによって、軽量化を図ることができる。
【0042】
本実施形態では、第2部材12Bの第1部材12Aと固定されている側と反対側(
図1中の左上側)の2つの端部をそれぞれ「自由端部」と称する。また、本実施形態では、2つの第2部材12Bの寸法は同じである。すなわち、2つの第2部材12Bの形状は、平面視で、第1部材12Aに対して対称的である。なお、本発明では、2つの第2部材12Bの寸法は、脚部材26を挟み込むことが可能な内形サイズが形成される限り、互いに異なっていてもよいし、非対称的であってもよい。
【0043】
フック本体12の外形サイズは、パレット20の差込口20Aに挿入可能なサイズに設定されている。具体的には、フック本体12における第1部材12Aと奥側(
図3中の上側)の第2部材12Bとからなる部分の外幅FW1は、パレット20の差込口20Aの幅PW(
図3参照)より狭い。また、フック本体12における第1部材12Aと奥側の第2部材12Bとからなる部分の高さFHは、パレット20の差込口20Aの高さPH(
図2参照)より低い。このため、フック本体12を差込口20Aに差し込むことが可能である。
【0044】
なお、本発明では、差し込みのために、フック本体における第1部材と奥側の第2部材とからなる部分の外幅がパレットの差込口の幅より狭いことは、必須ではない。具体的には例えば、奥側の第2部材の自由端部が奥行き方向の前側に位置し、かつ、第1部材と奥側の第2部材との隅部が奥行き方向の後側に位置する状態で、第1部材と奥側の第2部材とを差込口に差し込む。
【0045】
そして、フック本体の開口部が脚部材に対向するようにパレットの内側でフック本体を回転させ、フック本体を脚部材に向かって移動させればよい。すなわち、第2部材の幅が差込口の幅より多少長くても、フック本体が開口部を有するフック状であるため、第1部材と奥側の第2部材とが部分的に差し込めると共にフック本体をパレットの内側で回転することでフック本体を脚部材に装着できればよい。
【0046】
また、第1部材12A及び2つの第2部材12Bで形成される内形サイズは、脚部材26の断面サイズと同等以上であるように設定されている。具体的には、本実施形態における内形サイズは、第1部材12Aの奥行きFW2と第2部材12Bの内幅FW3と同じである。本実施形態では、第1部材12Aの奥行きFW2は、脚部材26の奥行きCL(
図2参照)とほぼ同じである。
【0047】
本実施形態では、奥行き方向とは、パレット20の差込口20Aを前面とした場合に、パレット20と、パレット20に装着したパレット連結具10とが対向する方向(
図3中の上下方向)を意味する。なお、本発明は、木製のパレット60(
図8参照)など脚部材66がパレット60の一方端から他端まで連通して、奥行きCLがパレット幅と等しいような場合でも、第1部材52Aの奥行きFW2を所要の寸法にすることで対応可能である。また、本実施形態では第1部材12Aは板状であったが、本発明ではこれに限定されず、例えば第1部材が棒状であってもよい。また、本発明の第1部材は、持ち運びや保管の便宜のために、両端の間の途中に、釣り竿のような伸縮機構、或いは、継ぎ足し機構が設けられてもよい。
【0048】
また、2つの第2部材12Bの内幅FW3は、脚部材26の横幅CW(
図2参照)より長い。奥行きCLは、脚部材26の断面の縦方向(
図3中の上下方向)の一辺の最大幅である。また、横幅CWは、脚部材26の断面の横方向(
図3中の左右方向)の一辺の最大幅である。
【0049】
このため、フック本体12を差込口20Aに差し込むと、第1部材12A及び一対の第2部材12Bの内面が、脚部材26の外側面に接触した状態で、フック本体12により脚部材26を挟み込むことが可能になる。フック本体12と脚部材26との間には、僅かな隙間が形成されてもよい。また、第2部材12Bの自由端部(
図1中の左先端)は、幅方向中央の脚部材26より
図2中の左側のコーナー部の脚部材26側に突出することになる。
【0050】
なお、本発明では、パレット連結具を用いて牽引作業又は押出作業が実施できる程度にフック本体12と脚部材26との一体性が確保される限り、2つの第2部材の内幅は、脚部材の横幅より短くてもよい。また、2つの第2部材の内幅が互いに異なっていてもよい。ただし、第1部材12A及び2つの第2部材12Bで形成される内形サイズが、脚部材26の脚幅と同等以上である方が、フック本体12と脚部材26との接触面積が大きくなり、安定的に牽引できる点で好ましい。
【0051】
(連結部)
本実施形態において、連結部14は、作業者から見て手前側(
図5中の左側)に位置する第2部材12Bに設けられ、連結部14には運搬装置が連結される。連結部14は、第2部材12Bと平行に隙間を空けて第2部材12Bに取付けられる平板状のプレートである。なお、本発明では、連結部の形状や長さ等は、適宜変更できる。連結部14は、第2部材12Bと、両端部でボルト締めされている。
【0052】
また、本実施形態においては、パレット運搬具の連結部14に連結してパレットを移動させる外部の運搬装置として、動力で作動する動力運搬装置40(
図5参照)が用いられている。動力運搬装置40は、その進行方向を切り換えて前進及び後退が可能であり、ハンドルにより方向転換も自在である。動力運搬装置40には板状の先端部を有する連結フック部42がアタッチメントとして付設されている。
【0053】
動力運搬装置40は、連結フック部42を介してパレット運搬具の連結部14に着脱自在に取り付け可能である。例えば、
図5に示すように、動力運搬装置40に付設された連結フック部42の板状の先端部を、パレット連結具の連結部14における連結プレートと第2部材12Bとで形成される隙間に嵌めることによって、パレット連結具10と動力運搬装置40とを連結できる。
【0054】
本発明においては、本実施形態に示される動力運搬装置に限らず、例えば、フック部材をフォーク先端に付設したフォークリフト、フック部材をワイヤ先端に有するウィンチその他の動力又は人力による運搬装置をパレット移動用の運搬装置として用いることができるが、そのような運搬装置に付設された連結機構とパレット運搬具の連結部の構造が互いに適合していれば望、また、前進、後退又は方向転換が可能であれば、更に望ましい。また、比較的狭隘なスペースで自由に動けるように小型であれば、一層望ましい。このような運搬装置として、小型の電動牽引車が市販されており、比較的容易に入手可能である。
【0055】
なお、本発明において運搬装置に連結するためにパレット連結具に設けられる連結部は、本実施形態に示されるような板状部材に限定されず、例えば棒状等の他の形状であってもよい。また、第2部材との間の隙間も必須ではない。例えば、第2部材12Bの手前側(
図1中の左下側)に、運搬装置の連結機構で把持又は鉤持できる凸部や凹部、Iボルト(アイボルト)、鉄道車両連結器類似の連結機構等の運搬装置の連結機構に適合する機構が、連結部として適宜第2部材12Bに設けられてもよい。
【0056】
また、本実施形態の連結部14としてのプレートには、中央に貫通孔14Aが設けられている。貫通孔14Aには、例えば動力運搬装置40の連結フック部42をパレット連結具10の連結部14に連結する前後の予備作業として、フック部材等を引っ掛けて手動でパレット位置を微調整することが可能である。また、連結フック部42を用いることなく、貫通孔14Aにフック部材等を引っ掛けた状態で牽引がおこなわれてもよい。このように、貫通孔14Aを適宜利用することによって、パレット運搬作業の作業性を向上できる。
【0057】
(補強材)
図1に示したように、本実施形態においては、第1部材12Aと第2部材12Bの接合部が成す隅部に、補強材16が溶接されている。補強材16のフック本体12の内側に面した表面は、湾曲している。換言すると、補強材16は、第1部材12Aの内面と第2部材12Bの内面との交差線上に形成される隅部をほぼ三角柱状に埋める溶接材を指す。
【0058】
補強材16によって、第1部材12Aと第2部材12Bが成す隅部の接合強度が高まる。このことにより、動力運搬装置40がパレット連結国連結されてパレットを運搬する際に、第1部材12Aと第2部材12Bの隅部に働く力により、その隅部の接合が破壊される恐れが軽減される。また、フック本体12が脚部材26を挟み込み、第1部材12Aが脚部材26に当接した際、フック本体12と脚部材26とが隅部において相互に曲面で接触するため、フック本体12と脚部材26との接触面積が増大することで、フック本体12と脚部材26との一体性が高まる。
【0059】
なお、本実施形態では、補強材16は、溶接によって、第1部材12Aと2つの第2部材12Bとの間の隅部のそれぞれに接合されているが、本発明では、接合方法はこれに限定されない。接合方法としては、例えば、フック本体及び補強材の素材に応じて、或いは、所望の強度に応じて、接着、熱溶着、ボルト締め等の他の任意の方を採用できる。また、本発明では、補強材は必須ではない。
【0060】
(連結部材)
本実施形態において、連結部材18は、2つの第2部材12Bの自由端部に掛け渡されている。本実施形態では、連結部材18は、板状部材であるが、本発明では、棒状部材や紐状部材等、他の形状であってよい。また、本実施形態では、連結部材18は、鋼材で形成されているが、本発明では、連結部材の素材は任意に変更できる。例えば、アルミニウムを用いることによって、連結部材の軽量化を図ることができる。
【0061】
また、本実施形態では、連結部材18の両端の下部に切り欠き18Aが形成されている。切り欠き18Aの幅は、第2部材12Bの板厚とほぼ同じである。2つの第2部材12Bの自由端部の上部が切り欠き18Aに嵌合することよって、フック本体12と連結部材18とが一体化される。なお、本発明では、第2部材と連結部材との一体化の方法は、これに限定されない。例えば、2つの第2部材の自由端部に凸部又は凹部を設けると共に、連結部材に、凸部又は凹部に対応する凹部又は凸部を設けることで、一体化させてもよい。
【0062】
また、本実施形態では、連結部材18が第2部材12Bの自由端部の上部に掛け渡されているが、本発明では、連結部材を掛け渡す位置は、これに限定されない。例えば、第2部材の自由端部の側面又は下面に掛け渡してもよい。また、本実施形態では、連結部材18は第2部材12Bとは分離した部材とされているが、本発明では、連結部材の一端が第2部材の何れかに自由端部に蝶番などにより取り付けられていてもよい。
【0063】
また、本発明では、連結部材として、2つの第2部材の自由端部を連結する紐状部材が用いられてもよい。なお、本発明では、運搬作業が実施できる程度にフック本体と脚部材との一体性が確保されれば、連結部材は設けられなくてもよい。例えば、連結部付設されない奥側の第2部材の外側面に、この第2部材の自由端部をフック本体のU字の内側に押し込むように力を加える付勢部材が設けられてよい。付勢部材としては、例えば、板バネ等を採用できる。付勢部材によって、パレット連結具の強度を向上できる。なお、付勢部材は、連結部材と共に用いられてもよい。
【0064】
<運搬方法>
次に、本実施形態に係るパレット連結具10を用いた牽引、押出、方向転換等の運搬方法を
図3~5を参照して説明する。なお、
図3及び
図4中では、パレット20は、上板22と脚部材26との境界位置で水平に断面されている。
【0065】
まず、
図3に示すように、運搬対象物であるパレット20と下側の床面Gとの間には、摺動性を高めるための、摺動補助部材30が配置されている。本実施形態では、摺動補助部材30として、パレット20との接触部分を低減することで摩擦抵抗を減少させる複数の突部が上面に形成された樹脂製の板状部材(スライダーボード)が採用されている。
【0066】
なお、パレット20と共に設置される摺動補助部材30の枚数や配置位置は、運搬作業の内容に応じて適宜設定すればよい。また、本発明では、摺動補助部材は、スライダーボードに限定されず、例えば、ローラ部材等が用いられてもよい。
【0067】
次に、作業者は、例えば右手でパレット連結具10のフック本体12を把持した状態で、パレット20の差込口20Aの前に移動する。運搬作業がフォークリフトの動力を用いて行われる場合には、フォークリフトのオペレータがフォークリフトの操作を中断し、フォークリフトから降りて、運搬作業の作業者を兼ねてもよい。
【0068】
そして、作業者は、パレット20の手前側にある
図3中の右側の差込口20Aへ、連結部14を手前にしてフック本体12を差し込む。なお、フック本体12は、
図3中の幅方向中央の脚部材26の左側の差込口20Aに差し込まれてもよい。次に、
図4に示すように、そして、2つの第2部材12Bの間に脚部材26が位置するように、フック本体12を幅方向中央の脚部材26に向かって横移動させる。これにより、脚部材26の周囲の三方が第1部材12Aと第2部材12Bで構成されたフック本体12に取り囲まれる。
【0069】
なお、本発明では、フック本体12に取り囲まれる脚部材26は、幅方向中央の脚部材に限定されない。例えば、
図3中の幅方向の左側の脚部材26がフック本体12に取り囲まれてもよいし、或いは、右側の脚部材26がフック本体12に取り囲まれてもよい。
【0070】
脚部材26の三方がフック本体12に取り囲まれた状態では、2つの第2部材12Bの左側の自由端部は、
図4中の幅方向中央の脚部材26の左側まで突出する。換言すると、第2部材12Bの自由端部は、
図4中の幅方向中央の脚部材26の左側の差込口20A側の奥部に位置する。
【0071】
次に、作業者は、左手で連結部材18を把持した状態で、連結部材18を
図4中の左側の差込口20Aに差し込み、パレット20の内側で、切り欠き18Aに2つの第2部材12Bの自由端部を嵌合させる。そして、脚部材26がフック本体12に取り囲まれた状態で、第2部材12Bに設けられた連結部14に外部の動力運搬装置40をアタッチメントの連結フック部42を介して連結して、パレット20を牽引又は押し出す。
【0072】
具体的には、例えば、
図5に示すように、作業者は、連結部14と第2部材12Bとの間の隙間に、動力運搬装置40のアタッチメントそして付設されている連結フック部42の板状フック先端を下側から差し込んで、パレット連結具10と動力運搬装置40とを連結できる。なお、連結フック部42は上側から差し込まれる構成であってもよいし、板状以外の形状で形成されてもよい。
【0073】
そして、作業者が動力運搬装置40を操作して移動させることによって、動力運搬装置40に連結されたパレット20を任意の位置まで牽引又は押し出すことができる。本実施形態では、パレット20の牽引方向Dは、
図5中の右側から左端に向かう。なお、動力運搬装置40を用いて、パレット20を作業者側に牽引するだけでなく、作業者より奥側に押し出してもよい。すなわち、本実施形態に係るパレット連結具10は、牽引作業と押出作業の両方に用いることができる。
【0074】
(作用効果)
本実施形態では、剛性が大きい脚部材26をフック本体12で取り囲んで牽引又は押し出すので、例えばパレットの下板に形成されたフック用凹部や段差にフックを引っ掛けて牽引する方法と比較すると、パレット運搬時の振動などによりフック本体12が脚部材26から外れる恐れがなく、また、パレット20に損傷を与え難い。また、本実施形態のパレット連結具10は、それに連結される動力運搬装置40の大きさを選ばず、それに付設される連結機構を適合させるだけでよいので、動力運搬装置40として小型の運搬装置を選ぶことによって、トラック荷台上など比較的狭隘なスペースでもパレット20を牽引又は押し出すことができる。
【0075】
また、床に置かれたパレットを運搬する作業の際、床面とパレット底面の間の摩擦抵抗に起因する力を脚部材26から受けることによって、作業者の手前側の第2部材12Bと奥側の第2部材12Bが、フック本体12の弾性変形可能な距離を超えて開くと、フック本体12が破損する。本実施形態では、第1部材12Aと第2部材12Bの隅部を補強材16で補強することで、運搬作業時に、手前側の第2部材12Bと奥側の第2部材12Bが回復限度を超えて開くことが抑制される。
【0076】
また、本実施形態では、第2部材12Bの自由端部に連結部材18が掛け渡されていることで、パレットを牽引又は押し出したときに、手前側の第2部材12Bと奥側の第2部材12Bが回復限度を超えて開くことが抑制される。
【0077】
また、本実施形態では、第2部材12Bと連結部14の間の隙間に外部の動力運搬装置40の連結フック部42のフック先端部を引っ掛けて、パレット20を牽引又は押し出すことができる。
【0078】
<その他の実施形態>
本発明は上記の開示した実施の形態によって説明したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。
【0079】
(第1変形例:操作部)
例えば、
図6に示すように、パレット連結具10に、上側に延びる操作部32が取り付けられてもよい。操作部32は、例えば、棒状部材であり、作業者が把持できる。操作部32によって作業者は、例えば床面G上に立った状態のままフック本体12を操作して差込口20Aに差し込む、又は、脚部材26を挟み込むように横に動かすことが可能になる。このため、作業者がパレット20の高さまで腰を落としてしゃがみ込む必要がなく、作業負担が軽減する。また、この操作部32に伸縮機構を設けることを妨げない。
【0080】
(第1変形例:走行輪)
また、
図6に示すように、パレット連結具10の下部に、キャスター等の走行輪34が回転自在に設けられてもよい。走行輪34によって、作業者がフック本体12を差込口20Aに差し込む、又は、脚部材26を挟み込むように横に動かす際、フック本体12を容易に移動することが可能になるので、作業負担が軽減する。
【0081】
(第2変形例)
図7に示すように、第2変形例に係るパレット連結具10では、手前側の第2部材12B1は、フック本体12に取り囲まれる脚部材26と差込口を挟んで隣り合う脚部材26の位置まで延びている。具体的には、手前側の第2部材12B1は、フック本体12に取り囲まれる、
図7中で左右方向の中央の脚部材26と、左右方向の左右の2本の脚部材26との3本の脚部材に跨って延びている。なお、本発明では、手前側の第2部材は、2本の脚部材に跨って延びてもよいし、或いは、4本以上の脚部材に跨って延びてもよく、跨る脚部材の本数は任意である。
【0082】
第2変形例でも、フック本体12の外形サイズは、パレット20の差込口20Aに挿入可能なサイズに設定されている。具体的には、フック本体12における第1部材12Aと奥側(
図7中の上側)の第2部材12Bとからなる部分の外幅FW1は、パレット20の差込口20Aの幅PWより狭い。また、図示を省略するが、フック本体12における第1部材12Aと奥側の第2部材12Bとからなる部分の高さは、パレット20の差込口20Aの高さより低い。このため、第2変形例においても、フック本体12を差込口20Aに差し込むことが可能である。
【0083】
また、第2変形例に係るパレット連結具10では、フック本体12の第1部材12Aの内幅FW2が、パレット60の奥行きCLとほぼ同じに設定されている。奥行きCLは、脚部材26の断面の縦方向(
図7中の上下方向)の一辺の最大幅である。また、奥側の第2部材12Bの内幅は、脚部材26の横幅CWより長い。
【0084】
このため、第2変形例でも、フック本体12を差込口20Aに差し込むと、第1部材12A及び一対の第2部材12B,12B1の内面が、脚部材26の外側面に接触した状態で、フック本体12により脚部材26を挟み込むことが可能になる。第2変形例に係るパレット連結具10の他の構成については、
図1~6中のパレット連結具10における同名の部材の構成と同様であるため、重複説明を省略する。
【0085】
第2変形例では、パレット連結具10を押し出す際、手前側の第2部材12B1は、フック本体12に取り囲まれる脚部材26と、この脚部材26と差込口を挟んで隣り合う2本の脚部材26との3本の脚部材26に接触する。このため、フック本体12に取り囲まれる1本の脚部材26のみに接触してパレット20を押し出す場合に比べ、パレット20をより安定的に押すことができる。
【0086】
また、手前側の第2部材12B1が3本の脚部材26に跨って延びているため、3本の脚部材26に跨って延びていない場合に比べ、手前側の第2部材12B1の先端が脚部材26に接する点を支点としたより大きな梃子作用が生まれ、牽引時に、一対の第2部材12B1が塑性変形により開くことを一層抑制できる。
【0087】
特に、パレット連結具10を用いてパレット20を運搬装置に連結し、運搬中のパレット20の方向を変える際、脚部材26には、パレット20の方向を変えるための回転方向の力(トルク)、すなわち捻る力が、パレット連結具10を介して加えられる。第2変形例では、
図4中の手前側の第2部材12Bより幅が延長された手前側の第2部材12B1によって、第2部材12B1の先端が脚部材26に接する点を支点としたより大きな梃子作用が生まれ、脚部材26に加えられる捻る力を緩和することが可能になる。この結果、脚部材26の破損、パレット連結具10の変形破損が抑制できる。第2変形例に係るパレット連結具10の他の作用効果は、
図1~6中のパレット連結具10の作用効果と同様である。
【0088】
なお、本発明では、延長される手前側の第2部材の幅は限定されず、適宜変更できる。例えば、延長される手前側の第2部材の幅は、挟み込む脚部材26に隣り合う脚部材26に必ずしも接触する必要はない。手前側の第2部材は、例えば、
図2中の差込口20Aの上下に位置する上板22又は下板24に接触する高さを有していれば、運搬中のパレット20の方向を変える際、上板22又は下板24に接触することで、脚部材26に加えられる捻る力を緩和することができる。
【0089】
なお、本実施形態では、脚部材26に加えられる捻る力を緩和する方法として、手前側の第2部材12B1の幅を拡大延長する場合が例示的に説明されたが、本発明では、これに限定されない。本発明では、例えば、手前側の第2部材と奥側の第2部材とがほぼ同じ長さを有していても、手前側の第2部材に対して着脱可能な棒状の延長部材を用意し、延長部材を手前側の第2部材に取付けてもよい。すなわち、パレット連結具の一部の部材のサイズを拡大延長することは必須ではない。
【0090】
(第3変形例)
また、
図8に示すように、第3変形例に係るパレット連結具50は、木製のパレット60に対しても適用できる。
図8中に例示されたパレット60は隣り合う3本の脚部材66を有し、3本の脚部材66の間に、2個の差込口60Aが形成されている。
【0091】
第3変形例に係るパレット連結具50のフック本体52は、長尺状の第1部材52Aと、第1部材52Aの端部からそれぞれ並行に延出する2つの第2部材52B,52B1と、を有する。第1部材52Aと一対の第2部材52B,52B1とによって、チャンネル形状(C字状)が形成されている。また、手前側(
図8中の下側)の第2部材52B1には、連結部54が設けられている。
【0092】
手前側の第2部材52B1は、
図7中の第2変形例に係るパレット連結具10の手前側の第2部材12B1と同様に、フック本体52に取り囲まれる、
図8中で左右方向の中央の脚部材66と、左右方向の左右の2本の脚部材66との3本の脚部材に跨って延びている。このため、第2変形例と同様に、フック本体52に取り囲まれる1本の脚部材66のみに接触してパレット60を押し出す場合に比べ、パレット60をより安定的に押すことができる。
【0093】
図8中の木製のパレット60では、脚部材66がパレット60の一方端(例えば
図8中の上端)から他端(例えば
図8中の下端)まで連通して、縦幅CLがパレット幅とほぼ等しい。すなわち、脚部材66は、パレット60の上板62と下板64との間に、壁状に設けられている縦木状の部材である。
【0094】
フック本体52の外形サイズは、パレット60の差込口60Aに挿入可能なサイズに設定されている。具体的には、フック本体52における第1部材52Aと奥側(
図8中の上側)の第2部材52Bとからなる部分の外幅FW1は、パレット60の差込口60Aの幅PW(
図2参照)より狭い。また、図示を省略するが、フック本体52における第1部材52Aと奥側の第2部材52Bとからなる部分の高さは、パレット60の差込口60Aの高さより低い。このため、第3変形例においても、フック本体52を差込口60Aに差し込むことが可能である。
【0095】
また、第3変形例に係るパレット連結具50では、フック本体52の第1部材52Aの内幅FW2が、パレット60の奥行きCLとほぼ同じに設定されている。奥行きCLは、脚部材66の断面の縦方向(
図8中の上下方向)の一辺の最大幅である。また、奥側の第2部材52Bの内幅は、脚部材66の横幅CWより長い。脚部材66の横幅CWは、脚部材66の断面の横方向(
図8中の左右方向)の一辺の最大幅、すなわち脚部材66の厚みに相当する。
【0096】
このため、第3変形例でも、フック本体52を差込口60Aに差し込むと、第1部材52A及び一対の第2部材52B,52B1の内面が、脚部材66の外側面に接触した状態で、フック本体52により脚部材66を挟み込むことが可能になる。
【0097】
なお、
図8中では、パレット連結具50の連結部54の長さは、左右方向の横幅が同じ長さを有するパレットに適用される場合として、
図1~
図7中のパレット連結具10の連結部14の長さより、延長された場合が例示されている。連結部54の厚みが同じであれば連結部54の長さが延長されることによって、荷物が積載されたパレット60に連結されたパレット連結具50の重心を動力運搬装置側により近づけることが可能になる。このため、運搬時の安定性を高めることができる。
【0098】
本発明では、連結部の長さは、パレット連結具の取り回しに干渉しない範囲で適宜変更できる。具体的には例えば、パレットの横幅と同程度の長さを連結部の長さの上限として設定できる。第3変形例に係るパレット連結具50の他の構成については、
図1~
図7中のパレット連結具10における同名の部材の構成と同様であるため、重複説明を省略する。
【0099】
また、本発明は、例えば、
図1~
図8中に示したそれぞれのパレット連結具10,50に含まれる構成を部分的に組み合わせて構成してもよい。本発明は、上記に記載していない様々な実施の形態等を含むと共に、本発明の技術的範囲は、上記の説明から妥当な特許請求の範囲の発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0100】
10 パレット連結具
12 フック本体
12A 第1部材
12B 第2部材
12B1 第2部材(手前側)
14 連結部
14A 貫通孔
16 補強材
18 連結部材
20 パレット
20A 差込口
22 上板
24 下板
26 脚部材
30 摺動補助部材
32 操作部
34 走行輪
40 動力運搬装置
42 連結フック部
50 パレット連結具
52 フック本体
52A 第1部材
52B 第2部材
52B1 第2部材(手前側)
54 連結部
60 パレット
60A 差込口
62 上板
64 下板
66 脚部材
CL 脚部材の奥行き
CW 脚部材の横幅
FH フック本体の高さ
FW1 フック本体の外幅
FW2 第1部材の奥行き
FW3 第2部材の内幅
G 床面
PH 差込口の高さ
PW 差込口の幅