(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023104305
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】樹脂成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/16 20060101AFI20230721BHJP
B29C 33/42 20060101ALI20230721BHJP
B29C 45/00 20060101ALI20230721BHJP
B29C 44/06 20060101ALI20230721BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
B29C45/16
B29C33/42
B29C45/00
B29C44/06
B29C44/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022005209
(22)【出願日】2022-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】染谷 紀樹
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
4F214
【Fターム(参考)】
4F202AB02
4F202AG03
4F202AG20
4F202CA11
4F202CB01
4F202CB28
4F202CK19
4F202CK23
4F202CK54
4F206AB02
4F206AG03
4F206AG20
4F206JA04
4F206JB28
4F206JL02
4F206JQ81
4F214AB02
4F214AG03
4F214AG20
4F214UA08
4F214UB01
4F214UB28
4F214UF01
4F214UQ01
(57)【要約】
【課題】樹脂成形品の材料選択の自由度を高めるとともに、部材同士の接合強度を向上させる。
【解決手段】樹脂成形品10の製造方法は、固定型1と可動型2との間に形成された第1のキャビティS1に第1の樹脂材料を充填して第1の部材11を成形する工程と、可動型2を後退させ、第1の部材11と可動型2との間に形成された第2のキャビティS2に第2の樹脂材料14を充填する工程と、可動型2をさらに後退させて第2のキャビティS2内の第2の樹脂材料14を発泡させ、第2の部材12を成形する工程とを含み、第1の部材11を成形する工程が、スライドピン3が挿入された第1のキャビティS1に第1の樹脂材料を充填することを含み、第2の樹脂材料14を充填する工程が、第1の部材11からスライドピン3を引き抜き、第1の部材11に貫通孔13を形成した後、第2の樹脂材料14を貫通孔13の内部にまで充填することを含んでいる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の樹脂材料からなる第1の部材と、発泡剤を含む第2の樹脂材料からなる第2の部材とが一体成形された樹脂成形品の製造方法であって、
固定型と可動型とを型締めして両者の間に第1のキャビティを形成し、該第1のキャビティに第1の樹脂材料を充填して前記第1の部材を成形する工程と、
前記第1の部材を成形した後、前記固定型から前記可動型を後退させて前記第1の部材と前記可動型との間に第2のキャビティを形成し、該第2のキャビティに前記第2の樹脂材料を充填する工程と、
前記可動型をさらに後退させて前記第2のキャビティ内の前記第2の樹脂材料を発泡させ、前記第2の部材を成形する工程と、を含み、
前記第1の部材を成形する工程が、前記第1の樹脂材料を充填する前に前記第1のキャビティにスライドピンを挿入し、該スライドピンが挿入された前記第1のキャビティに前記第1の樹脂材料を充填することを含み、
前記第2の樹脂材料を充填する工程が、前記第2の樹脂材料を充填する前に前記第1の部材から前記スライドピンを引き抜き、前記第1の部材に貫通孔または凹部を形成した後、前記第2の樹脂材料を前記貫通孔または凹部の内部にまで充填することを含む、樹脂成形品の製造方法。
【請求項2】
前記スライドピンの挿入および引き抜きは、前記第1のキャビティに対して前記可動型の移動方向と平行に行われる、請求項1に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項3】
前記スライドピンは、前記可動型にスライド可能に複数設けられている、請求項1または2に記載の樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
射出発泡成形法の一つにコアバック法がある。コアバック法は、固定型と可動型とからなる金型内に発泡剤を含む樹脂を充填した後、固定型から可動型を後退させるコアバックを行い、キャビティ容積を拡大させることで樹脂を発泡させて発泡体を得る方法である。一方で、コアバック法は、異なる2種類の樹脂を一体成形する二色成形にも広く用いられ、一次成形後に二次成形用のキャビティを形成するためにコアバックが行われる。そこで、これらを応用し、コアバックを2段階で行うことで、別の樹脂からなる一次成形部材に発泡性樹脂からなる二次成形部材を一体に成形する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した技術では、樹脂部材同士の接合強度を十分に確保するために、接着性(相性)が良好な樹脂材料を選択する必要があるが、機能上の制約などにより、そのような材料選択が困難な場合も多く、適用範囲が限られるのが現状である。
【0005】
そこで、本発明の目的は、材料選択の自由度を高めるとともに、部材同士の接合強度を向上させる樹脂成形品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するために、本発明の樹脂成形品の製造方法は、第1の樹脂材料からなる第1の部材と、発泡剤を含む第2の樹脂材料からなる第2の部材とが一体成形された樹脂成形品の製造方法であって、固定型と可動型とを型締めして両者の間に第1のキャビティを形成し、第1のキャビティに第1の樹脂材料を充填して第1の部材を成形する工程と、第1の部材を成形した後、固定型から可動型を後退させて第1の部材と可動型との間に第2のキャビティを形成し、第2のキャビティに第2の樹脂材料を充填する工程と、可動型をさらに後退させて第2のキャビティ内の第2の樹脂材料を発泡させ、第2の部材を成形する工程と、を含み、第1の部材を成形する工程が、第1の樹脂材料を充填する前に第1のキャビティにスライドピンを挿入し、スライドピンが挿入された第1のキャビティに第1の樹脂材料を充填することを含み、第2の樹脂材料を充填する工程が、第2の樹脂材料を充填する前に第1の部材からスライドピンを引き抜き、第1の部材に貫通孔または凹部を形成した後、第2の樹脂材料を貫通孔または凹部の内部にまで充填することを含んでいる。
【発明の効果】
【0007】
以上、本発明によれば、樹脂成形品の材料選択の自由度を高めるとともに、部材同士の接合強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る樹脂成形品の製造方法の各工程を示す断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る樹脂成形品の製造方法の各工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の製造方法により製造される樹脂成形品は、第1の樹脂材料からなる第1の部材と、発泡剤を含む第2の樹脂材料からなる第2の部材とが一体成形されたものであれば、その用途や形状などは特に限定されるものではない。また、樹脂材料の種類も特に限定されず、射出成形に使用可能な様々な種類の樹脂材料を用いることができる。
【0010】
図1(a)から
図2(c)は、本発明の一実施形態に係る樹脂成形品の製造方法の各工程を示す断面図である。
【0011】
本実施形態の樹脂成形品10は、第1の部材11と第2の部材12とが一体成形されたもの(
図2(c)参照)であり、固定型1と、可動型2と、複数のスライドピン3とを用いて製造される。可動型2は、固定型1に対して進退可能に設けられ、複数のスライドピン3は、可動型2の進退方向(移動方向)と平行に可動型2を貫通し、可動型2に対してスライド可能に設けられている。
【0012】
樹脂成形品10の製造方法は、大別すると、
図1に示す一次成形工程と、
図2に示す二次成形工程とから構成される。
【0013】
一次成形工程では、まず、
図1(a)に示すように、可動型2を固定型1に向けて前進させ、固定型1と可動型2とを型締めする。これにより、固定型1と可動型2との間に第1のキャビティS1が形成される。それと同時に、またはその後に、
図1(b)に示すように、スライドピン3を固定型1に向けて前進させ、第1のキャビティS1に挿入する。そして、スライドピン3が挿入された第1のキャビティS1に対し、固定型1に設けられたゲート(図示せず)を通じて溶融状態の一次成形樹脂(第1の樹脂材料)を射出して充填する。その後、一次成形樹脂を冷却により硬化させることで、
図1(c)に示すように、一次成形部材(第1の部材)11が成形される。
【0014】
こうして一次成形部材11が成形されると、次に、
図2(a)に示すように、可動型2を固定型1から後退させるコアバックを行うのと同時に、スライドピン3を固定型1から後退させて一次成形部材11から引き抜く。これにより、固定型1と可動型2との間、すなわち、一次成形部材11と可動型2との間に、第2のキャビティS2が形成されるとともに、一次成形部材11には、第2のキャビティS2に連通する貫通孔13が形成される。そして、固定型1に設けられたゲート(図示せず)を通じて、発泡剤を含む溶融状態の二次成形樹脂(第2の樹脂材料)14を第2のキャビティS2に射出し、
図2(b)に示すように、第1の部材11の貫通孔13の内部にまで二次成形樹脂14を充填させる。
【0015】
その後、
図2(c)に示すように、2回目のコアバックを行い、可動型2(およびスライドピン3)を固定型1からさらに後退させ、第2のキャビティS2の容積を拡大させることで、第2のキャビティS2内の二次成形樹脂14を発泡させる。その後、二次成形樹脂14を冷却により硬化させることで、二次成形部材12が一次成形部材11と一体に成形され、二次成形工程が完了する。
【0016】
このように、本実施形態の製造方法によれば、一次成形部材11の貫通孔13の内部に二次成形部材12が入り込むことで接合面積が増大するとともに、いわゆるアンカー効果によって両者の接合強度を向上させることができる。そのため、機能上の制約などにより、一次成形樹脂および二次成形樹脂14として、接着性(相性)が良好でない樹脂材料を選択しなければならない場合にも、一次成形部材11と二次形成部材12の接合強度を十分に確保することができる。その結果、両部材11,12の材料選択の自由度が高まり、様々な材料の組み合わせを選択することも可能になる。このため、本実施形態の製造方法は、特に、ポリプロピレン(PP)などの難接着材料を使用する場合への適用に有用である。例えば、一次成形樹脂として、制振材に用いるエラストマーなどの高弾性樹脂材料を選択し、二次成形樹脂としてPPを選択する場合にも、接着の前処理や接着工程そのものを行うことなく、発泡成形されたPP製部材に、制振などの機能を備えた弾性部材を接着(一体成形)することが可能になる。
【0017】
なお、一次成形工程では、スライドピン3を第1のキャビティS1の底面まで到達させなくてもよい。すなわち、二次成形工程において、第1の部材11には貫通孔13の代わりに凹部が形成されてもよく、この場合にも同様のアンカー効果を得ることができる。また、スライドピン3の数は特に限定されず、例えば、一次成形部材11と二次成形部材12の形状や寸法、樹脂材料同士の相性など、様々な条件に応じて適切な数のスライドピン3を設けることができる。
【符号の説明】
【0018】
1 固定型
2 可動型
3 スライドピン
10 樹脂成形品
11 一次成形部材(第1の部材)
12 二次成形部材(第2の部材)
13 貫通孔
14 二次成形樹脂(第2の樹脂材料)
S1 第1のキャビティ
S2 第2のキャビティ