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特開2023-104316位置検出回路、位置検出システム、及び位置検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023104316
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】位置検出回路、位置検出システム、及び位置検出方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20230721BHJP
   G06F 3/03 20060101ALI20230721BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
G06F3/041 560
G06F3/03 400A
G06F3/044 A
G06F3/044 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022005230
(22)【出願日】2022-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】100176072
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 功
(74)【代理人】
【識別番号】100169225
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 明
(72)【発明者】
【氏名】野村 佳生
(57)【要約】
【課題】ユーザが意図しない描画結果となることを抑制する。
【解決手段】タッチIC20は、複数のセンサ電極18x,18yが面状に配置されてなる静電容量方式のタッチセンサ18を用いて、ペン信号を送信可能に構成された電子ペン2及び信号を送信しないパッシブポインタとしての指4のタッチセンサ18上に配置されたタッチ面3aにおける各位置を検出する位置検出回路であって、指4のタッチ位置を検出する検出部30と、検出部30により検出されたタッチ位置の領域の大きさが第1範囲内である場合に、検出部30により検出されたタッチ位置を出力する出力部34と、を備え、出力部34は、タッチ面3aに接触している電子ペン2がタッチ面3aから離れた場合に、検出部30により検出されたタッチ位置の出力を一時的に抑制する。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセンサ電極が面状に配置されてなる静電容量方式のタッチセンサを用いて、ペン信号を送信可能に構成された電子ペン及び信号を送信しないパッシブポインタの前記タッチセンサ上に配置されたタッチ面における各位置を検出する位置検出回路であって、
前記パッシブポインタの前記位置を示すタッチ位置を検出する検出部と、
前記検出部により検出された前記タッチ位置の領域の大きさが所定範囲内である場合に、前記検出部により検出された前記タッチ位置を出力する出力部と、
を備え、
前記出力部は、前記タッチ面に接触している前記電子ペンが前記タッチ面から離れた場合に、前記検出部により検出された前記タッチ位置の出力を一時的に抑制する、
位置検出回路。
【請求項2】
前記タッチ面に接触している前記電子ペンが前記タッチ面から離れた場合に、前記検出部により検出された前記タッチ位置の領域であって、大きさが所定範囲内の領域のトラッキングを実行するトラッキング部を更に備え、
前記出力部は、前記トラッキング部により前記領域のトラッキングが続行される場合には前記タッチ位置の出力を抑制し続け、前記トラッキング部により前記領域のトラッキングが続行されない場合には前記タッチ位置の出力の抑制を解除する、
請求項1に記載の位置検出回路。
【請求項3】
前記電子ペンの前記位置を示すペン位置の検出を行う一方で前記タッチ位置の検出を行わない第1の動作モードにおいて、前記タッチ面に接触している前記電子ペンが前記タッチ面から離れた場合に、前記タッチ位置と前記ペン位置とを時分割で検出する第2の動作モードに切り替える動作制御部を更に備え、
前記出力部は、前記動作制御部によって前記第1の動作モードから前記第2の動作モードに切り替えられた場合に、前記検出部により検出された前記タッチ位置の出力を一時的に抑制する、
請求項1又は2に記載の位置検出回路。
【請求項4】
前記出力部は、前記タッチ位置の出力を停止する、又は、前記タッチ位置を無効化して出力することにより、前記タッチ位置の出力を抑制する、
請求項1~3の何れか一項に記載の位置検出回路。
【請求項5】
前記電子ペンのペン先に加わる圧力を示す筆圧値に基づき、前記タッチ面に接触している前記電子ペンが前記タッチ面から離れたか否かを判定する判定部を更に備え、
前記出力部は、前記判定部が肯定判定した場合に、前記タッチ位置の出力を一時的に抑制する、
請求項1~4の何れか一項に記載の位置検出回路。
【請求項6】
前記出力部は、前記電子ペンのペン先に加わる圧力を示す筆圧値に基づき、前記タッチ位置の出力を一時的に抑制する、
請求項1~5の何れか一項に記載の位置検出回路。
【請求項7】
ペン信号を送信可能に構成された電子ペンと、複数のセンサ電極が面状に配置されてなる静電容量方式のタッチセンサを用いて、前記電子ペン及び信号を送信しないパッシブポインタの前記タッチセンサ上に配置されたタッチ面における各位置を検出する位置検出回路と、を備える位置検出システムであって、
前記位置検出回路は、
前記パッシブポインタの前記位置を示すタッチ位置を検出する検出部と、
前記検出部により検出された前記タッチ位置の領域の大きさが所定範囲内である場合に、前記検出部により検出された前記タッチ位置を出力する出力部と、
を有し、
前記出力部は、前記タッチ面に接触している前記電子ペンが前記タッチ面から離れた場合に、前記検出部により検出された前記タッチ位置の出力を一時的に抑制する、
位置検出システム。
【請求項8】
前記位置検出回路は、
前記タッチ面に接触している前記電子ペンが前記タッチ面から離れた場合に、前記検出部により検出された前記タッチ位置の領域であって、大きさが所定範囲内の領域のトラッキングを実行するトラッキング部を更に有し、
前記出力部は、前記トラッキング部により前記領域のトラッキングが続行される場合には前記タッチ位置の出力を抑制し続け、前記トラッキング部により前記領域のトラッキングが続行されない場合には前記タッチ位置の出力の抑制を解除する、
請求項7に記載の位置検出システム。
【請求項9】
前記位置検出回路は、
前記電子ペンの前記位置を示すペン位置の検出を行う一方で前記タッチ位置の検出を行わない第1の動作モードにおいて、前記タッチ面に接触している前記電子ペンが前記タッチ面から離れた場合に、前記タッチ位置と前記ペン位置とを時分割で検出する第2の動作モードに切り替える動作制御部を更に有し、
前記出力部は、前記動作制御部によって前記第1の動作モードから前記第2の動作モードに切り替えられた場合に、前記検出部により検出された前記タッチ位置の出力を一時的に抑制する、
請求項7又は8に記載の位置検出システム。
【請求項10】
前記出力部は、前記タッチ位置の出力を停止する、又は、前記タッチ位置を無効化して出力することにより、前記タッチ位置の出力を抑制する、
請求項7~9の何れか一項に記載の位置検出システム。
【請求項11】
前記位置検出回路は、
前記電子ペンのペン先に加わる圧力を示す筆圧値に基づき、前記タッチ面に接触している前記電子ペンが前記タッチ面から離れたか否かを判定する判定部を更に有し、
前記出力部は、前記判定部が肯定判定した場合に、前記タッチ位置の出力を一時的に抑制する、
請求項7~10の何れか一項に記載の位置検出システム。
【請求項12】
前記出力部は、前記電子ペンのペン先に加わる圧力を示す筆圧値に基づき、前記タッチ位置の出力を一時的に抑制する、
請求項7~11の何れか一項に記載の位置検出システム。
【請求項13】
複数のセンサ電極が面状に配置されてなる静電容量方式のタッチセンサを用いて、ペン信号を送信可能に構成された電子ペン及び信号を送信しないパッシブポインタの前記タッチセンサ上に配置されたタッチ面における各位置を検出する位置検出方法であって、
前記パッシブポインタの前記位置を示すタッチ位置を検出する検出ステップと、
前記検出ステップにおいて検出された前記タッチ位置の領域の大きさが所定範囲内である場合に、前記検出ステップにおいて検出された前記タッチ位置を出力する出力ステップと、
を含み、
前記出力ステップは、前記タッチ面に接触している前記電子ペンが前記タッチ面から離れた場合に、前記検出ステップにおいて検出された前記タッチ位置の出力を一時的に抑制する、
位置検出方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置検出回路、位置検出システム、及び位置検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タッチセンサ上のタッチ面に対する電子ペンのペン位置とユーザの指等を含むパッシブポインタのタッチ位置とを検出する位置検出システムが知られている。例えば、下記特許文献1には、タッチ面に対する電子ペンのペン位置とユーザの指のタッチ位置とを時分割で検出し、検出した位置をホストプロセッサに出力する位置検出システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-193625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の位置検出システムでは、検出されたタッチ位置の領域の大きさに基づき、当該タッチ位置をホストプロセッサに出力するか否かを判定する。例えば、検出されたタッチ位置の領域の大きさが所定範囲内である場合には、指によるタッチであると判定し、当該タッチ位置をホストプロセッサへ出力する。また、検出されたタッチ位置の領域の大きさが上記所定範囲よりも大きい場合には、指よりも大きい手の平又は拳等のパームによるタッチであると判定し、当該タッチ位置をホストプロセッサへの出力対象から除外する。
【0005】
ところが、例えばタッチ面に接触している電子ペンがタッチ面から離れるタイミングや電子ペンがタッチ面に近づくタイミングにおいて、ユーザの動きによっては、電子ペンを把持する把持手とタッチ面との接触領域が小さいタイミングが存在し得る。すなわち、検出するタッチ位置の領域の大きさが一時的に変動し得る。このため、把持手によるタッチであったとしても指によるタッチであると誤判定され、タッチ位置がホストプロセッサに出力されてしまう可能性がある。
【0006】
また、ユーザが電子ペンで絵や文字を入力中には、ユーザの肘や腕等が、入力を意図せずタッチ面に触れることがある。これに対し、例えば電子ペンによる入力中はペン検出を行う一方でタッチ検出を停止する排他モードで動作させることによって、このような入力を意図しないタッチの誤検出を抑制することができる。しかしながら、例えば電子ペンがタッチ面から離れたタイミング等で排他モードが解除されるときに、このような入力を意図しないタッチが誤検出され、ホストプロセッサに出力されてしまう可能性がある。
【0007】
以上のように、従来技術では、タッチ位置の領域の大きさの一時的な変動に伴う当該大きさの誤判定や、ユーザが入力を意図しないタッチの誤検出等に基づき、ユーザが意図しない描画結果となる可能性があるため、改善の余地がある。
【0008】
そこで、本発明は、ユーザが意図しない描画結果となることを抑制することができる位置検出回路、位置検出システム、及び位置検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一態様に係る位置検出回路は、複数のセンサ電極が面状に配置されてなる静電容量方式のタッチセンサを用いて、ペン信号を送信可能に構成された電子ペン及び信号を送信しないパッシブポインタの前記タッチセンサ上に配置されたタッチ面における各位置を検出する位置検出回路であって、前記パッシブポインタの前記位置を示すタッチ位置を検出する検出部と、前記検出部により検出された前記タッチ位置の領域の大きさが所定範囲内である場合に、前記検出部により検出された前記タッチ位置を出力する出力部と、を備え、前記出力部は、前記タッチ面に接触している前記電子ペンが前記タッチ面から離れた場合に、前記検出部により検出された前記タッチ位置の出力を一時的に抑制する。
【0010】
本発明の第二態様に係る位置検出回路では、前記タッチ面に接触している前記電子ペンが前記タッチ面から離れた場合に、前記検出部により検出された前記タッチ位置の領域であって、大きさが所定範囲内の領域のトラッキングを実行するトラッキング部を更に備え、前記出力部は、前記トラッキング部により前記領域のトラッキングが続行される場合には前記タッチ位置の出力を抑制し続け、前記トラッキング部により前記領域のトラッキングが続行されない場合には前記タッチ位置の出力の抑制を解除する。
【0011】
本発明の第三態様に係る位置検出回路では、前記電子ペンの前記位置を示すペン位置の検出を行う一方で前記タッチ位置の検出を行わない第1の動作モードにおいて、前記タッチ面に接触している前記電子ペンが前記タッチ面から離れた場合に、前記タッチ位置と前記ペン位置とを時分割で検出する第2の動作モードに切り替える動作制御部を更に備え、前記出力部は、前記動作制御部によって前記第1の動作モードから前記第2の動作モードに切り替えられた場合に、前記検出部により検出された前記タッチ位置の出力を一時的に抑制する。
【0012】
本発明の第四態様に係る位置検出回路では、前記出力部は、前記タッチ位置の出力を停止する、又は、前記タッチ位置を無効化して出力することにより、前記タッチ位置の出力を抑制する。
【0013】
本発明の第五態様に係る位置検出回路では、前記電子ペンのペン先に加わる圧力を示す筆圧値に基づき、前記タッチ面に接触している前記電子ペンが前記タッチ面から離れたか否かを判定する判定部を更に備え、前記出力部は、前記判定部が肯定判定した場合に、前記タッチ位置の出力を一時的に抑制する。
【0014】
本発明の第六態様に係る位置検出回路では、前記出力部は、前記電子ペンのペン先に加わる圧力を示す筆圧値に基づき、前記タッチ位置の出力を一時的に抑制する。
【0015】
本発明の第七態様に係る位置検出システムは、ペン信号を送信可能に構成された電子ペンと、複数のセンサ電極が面状に配置されてなる静電容量方式のタッチセンサを用いて、前記電子ペン及び信号を送信しないパッシブポインタの前記タッチセンサ上に配置されたタッチ面における各位置を検出する位置検出回路と、を備える位置検出システムであって、前記位置検出回路は、前記パッシブポインタの前記位置を示すタッチ位置を検出する検出部と、前記検出部により検出された前記タッチ位置の領域の大きさが所定範囲内である場合に、前記検出部により検出された前記タッチ位置を出力する出力部と、を有し、前記出力部は、前記タッチ面に接触している前記電子ペンが前記タッチ面から離れた場合に、前記検出部により検出された前記タッチ位置の出力を一時的に抑制する。
【0016】
本発明の第八態様に係る位置検出システムでは、前記位置検出回路は、前記タッチ面に接触している前記電子ペンが前記タッチ面から離れた場合に、前記検出部により検出された前記タッチ位置の領域であって、大きさが所定範囲内の領域のトラッキングを実行するトラッキング部を更に有し、前記出力部は、前記トラッキング部により前記領域のトラッキングが続行される場合には前記タッチ位置の出力を抑制し続け、前記トラッキング部により前記領域のトラッキングが続行されない場合には前記タッチ位置の出力の抑制を解除する。
【0017】
本発明の第九態様に係る位置検出システムでは、前記位置検出回路は、前記電子ペンの前記位置を示すペン位置の検出を行う一方で前記タッチ位置の検出を行わない第1の動作モードにおいて、前記タッチ面に接触している前記電子ペンが前記タッチ面から離れた場合に、前記タッチ位置と前記ペン位置とを時分割で検出する第2の動作モードに切り替える動作制御部を更に有し、前記出力部は、前記動作制御部によって前記第1の動作モードから前記第2の動作モードに切り替えられた場合に、前記検出部により検出された前記タッチ位置の出力を一時的に抑制する。
【0018】
本発明の第十態様に係る位置検出システムでは、前記出力部は、前記タッチ位置の出力を停止する、又は、前記タッチ位置を無効化して出力することにより、前記タッチ位置の出力を抑制する。
【0019】
本発明の第十一態様に係る位置検出システムでは、前記位置検出回路は、前記電子ペンのペン先に加わる圧力を示す筆圧値に基づき、前記タッチ面に接触している前記電子ペンが前記タッチ面から離れたか否かを判定する判定部を更に有し、前記出力部は、前記判定部が肯定判定した場合に、前記タッチ位置の出力を一時的に抑制する。
【0020】
本発明の第十二態様に係る位置検出システムでは、前記出力部は、前記電子ペンのペン先に加わる圧力を示す筆圧値に基づき、前記タッチ位置の出力を一時的に抑制する。
【0021】
本発明の第十三態様に係る位置検出方法は、複数のセンサ電極が面状に配置されてなる静電容量方式のタッチセンサを用いて、ペン信号を送信可能に構成された電子ペン及び信号を送信しないパッシブポインタの前記タッチセンサ上に配置されたタッチ面における各位置を検出する位置検出方法であって、前記パッシブポインタの前記位置を示すタッチ位置を検出する検出ステップと、前記検出ステップにおいて検出された前記タッチ位置の領域の大きさが所定範囲内である場合に、前記検出ステップにおいて検出された前記タッチ位置を出力する出力ステップと、を含み、前記出力ステップは、前記タッチ面に接触している前記電子ペンが前記タッチ面から離れた場合に、前記検出ステップにおいて検出された前記タッチ位置の出力を一時的に抑制する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ユーザが意図しない描画結果となることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係る位置検出システムの全体構成及び使用状態の一例を示す図である。
図2図1のタブレット端末の概略構成を示す図である。
図3図2のタッチICが有する機能構成を示す機能ブロック図である。
図4】タッチ領域の大きさの判定処理を説明するための図である。
図5】タッチ領域の大きさの時間変化を示す図である。
図6】位置検出システムにおける動作の流れを模式的に示す状態遷移図である。
図7】タッチ出力抑制状態における処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態(以下、「本実施形態」と称する。)に係る位置検出システムについて説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一要素又は同一機能を有する要素には可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0025】
<全体構成>
図1は、本実施形態に係る位置検出システムの全体構成及び使用状態の一例を示す図である。図1に示すように、本実施形態に係る位置検出システム1は、電子ペン2と、タブレット端末3と、を備える。
【0026】
電子ペン2は、アクティブ静電方式によって動作する電子ペンであり、「スタイラス」ともいう。電子ペン2は、タブレット端末3と相互に信号を送受信可能に構成される。以下、タブレット端末3から電子ペン2に向けて送信される信号をアップリンク信号と称し、電子ペン2からタブレット端末3に向けて送信される信号(ペン信号)をダウンリンク信号と称する。
【0027】
電子ペン2の先端部分にはペン電極が設けられており、電子ペン2は、このペン電極と、タブレット端末3のタッチ面3a内に設けられるタッチセンサ18(図2参照)との間に形成されたキャパシタンスを介して、アップリンク信号の受信及びダウンリンク信号の送信を行う。なお、アップリンク信号受信用のペン電極とダウンリンク信号送信用のペン電極とは、異なっていてもよいし、同じであってもよい。
【0028】
また、電子ペン2は、筆圧検出部、サイドスイッチ状態検出部、記憶部、及び、電源部等の各機能部を有する。筆圧検出部は、電子ペン2のペン先に印加された圧力を筆圧として検出する。サイドスイッチ状態検出部は、電子ペン2の側面に設けられたサイドスイッチのオンオフ状態を検出する。記憶部は、電子ペン2に予め割り当てられた固有IDを記憶する。電源部は、電子ペン2の動作電源を供給する。電子ペン2は、これらの各機能部を制御可能に構成される。
【0029】
タブレット端末3は、例えばタッチパネルディスプレイにより構成されたタッチ面3aを有する電子機器である。タブレット端末3は、電子ペン2のタッチ面3aにおけるペン位置と、信号を送信しないパッシブポインタとしてのユーザの指4のタッチ位置とを検出可能に構成される。なお、位置検出システム1は、当該電子機器として、タブレット端末3に限らず、例えば、スマートフォンやパーソナルコンピュータ等を備えていてもよい。また、パッシブポインタは、指4に限らず、指4と同様に信号を送信しない定規やパッシブペン等の補助デバイスであってもよい。
【0030】
ユーザは、電子ペン2を片手で把持し、タブレット端末3のタッチ面3aにペン先を押し当てながら移動させることで、タブレット端末3に絵や文字を書き込むことができる。また、ユーザは、自身の指4でタッチ面3aに接触させて移動させることで、タブレット端末3に絵や文字を書き込んだり、ピンチアウト操作を含む所望の操作を行ったりすることができる。
【0031】
図2は、図1のタブレット端末3の概略構成を示す図である。図2に示すように、タブレット端末3は、タッチセンサ18と、位置検出回路であるタッチIC(Integrated Circuit)20と、ホストプロセッサ22と、を含む。なお、図2では、タッチセンサ18上に配置されたタッチ面3aの図示を省略している。
【0032】
タッチセンサ18は、タッチ面3aの内側において面状に配置された複数のセンサ電極を有する静電容量方式のタッチセンサである。タッチセンサ18は、X軸上の位置を検出するための複数のセンサ電極18xと、Y軸上の位置を検出するための複数のセンサ電極18yと、を含む。本図に示すx方向,y方向は、タッチ面3a上において定義される直交座標系のX軸,Y軸に相当する。
【0033】
帯状のセンサ電極18xは、y方向に延びて設けられるとともに、x方向に沿って等間隔に配置されている。帯状のセンサ電極18yは、x方向に延びて設けられるとともに、y方向に沿って等間隔に配置されている。なお、タッチセンサ18は、上記した相互容量方式のセンサに代えて、ブロック状の電極を二次元格子状に配置した自己容量方式のセンサであってもよい。
【0034】
タッチIC20は、内部にメモリ(ROM及びRAM)を有しており、このメモリに格納されたファームウェア24を実行可能に構成された集積回路である。タッチIC20は、タッチセンサ18を構成する複数のセンサ電極18x,18yのそれぞれに接続されている。このファームウェア24は、各々のセンサ電極18x,18yから順次出力される検出信号を読み出して処理するスキャン処理を実行する。ファームウェア24は、当該スキャン処理を実行することによりユーザの指4を検出するタッチ検出機能と、当該スキャン処理を実行することにより電子ペン2を検出するペン検出機能と、を実現可能に構成される。換言すると、タッチIC20は、タッチ検出機能を果たすタッチ検出部26と、ペン検出機能を果たすペン検出部28と、を有する。タッチIC20は、タッチ検出部26又はペン検出部28によって取得されたデータを、ホストプロセッサ22に出力する。
【0035】
また、ファームウェア24は、位置検出システム1における動作モードの切り替えを行う動作制御部としても機能する。動作モードとしては、例えば、ペン位置の検出を行う一方でタッチ位置の検出を行わない排他モード(第1の動作モード)と、指4のタッチ位置と電子ペン2のペン位置とを時分割で検出する時分割モード(第2の動作モード)と、を含む。ファームウェア24は、通常スキャン状態では、動作モードを時分割モードとする。また、ファームウェア24は、例えば、電子ペン2が検出された場合に、動作モードを時分割モードから排他モードに切り替える。また、ファームウェア24は、例えば、排他モードにおいて電子ペン2のペン先がタッチ面3aから離れた場合に、排他モードから時分割モードに切り替える。
【0036】
ホストプロセッサ22は、CPU(Central Processing Unit)又はGPU(Graphics Processing Unit)からなるプロセッサである。ホストプロセッサ22は、図示しないメモリからプログラムを読み出し実行することで、例えば、タッチIC20からのデータを用いてストロークデータ生成し、レンダリングしてディスプレイに描画内容として表示させる処理等を行う。
【0037】
<タッチIC20の機能構成>
図3は、図2のタッチIC20が有する機能構成を示す機能ブロック図である。
【0038】
<タッチ検出部26>
図3に示すように、タッチIC20のタッチ検出部26は、検出部30と、判定部32と、出力部34と、トラッキング部36と、を有する。
【0039】
検出部30は、指4の先端とタッチセンサ18内のセンサ電極18x,18yとの間に生ずる容量結合を検出することによって、指4のタッチ位置の検出を実行する。具体的には、検出部30は、各センサ電極18yに対してタッチ検出用信号を送信し、各センサ電極18xにおいてタッチ検出用信号を受信する。検出部30は、当該タッチ検出用信号の受信結果に基づいて、タッチセンサ18の2次元位置毎の検出レベルを示すヒートマップを作成する。タッチセンサ18の2次元位置は、各センサ電極18xと各センサ電極18yとの交点(以下、「クロスポイント」と称する。)であって、この2次元位置毎の検出レベルは、クロスポイントに形成される静電容量の変化が反映されたものである。
【0040】
検出部30は、ヒートマップにおける検出レベルが閾値以上、すなわちクロスポイントに形成される静電容量の変化が閾値以上である領域を、指4のタッチ位置の領域として検出する。以下、このタッチ位置の領域を単に「タッチ領域」とも称する。そして、検出部30は、タッチ領域の例えば中心位置あるいは静電容量の変化が最大である位置を指4のタッチ位置として検出し、その座標を計算する。なお、検出部30は、ヒートマップにおける検出レベルが閾値以上である領域が互いに所定間隔離れて複数個存在する場合には、それぞれを指4のタッチ位置として検出してもよい。検出部30は、生成したヒートマップや計算した指4の位置の座標を、判定部32に出力する。
【0041】
判定部32は、検出部30により作成されたヒートマップに基づき、タッチ領域の大きさについての判定処理を行う。
【0042】
図4は、タッチ領域の大きさの判定処理を説明するための図である。図4では、検出部30により2つのタッチ領域A,Bが検出されたことを示す。タッチ領域A,Bのうち、タッチ領域Bの面積は第1範囲内であり、タッチ領域Aの面積は第2範囲内であるとする。第1範囲とは、小さい領域であることを判定する用の下限値及び上限値で示される所定範囲である。第2範囲とは、大きい領域であることを判定する用の下限値及び上限値で示される所定範囲である。例えば、第1範囲は直径1~5mmの面積の範囲として、第2範囲は第1範囲よりも大きい直径10~30mmの面積の範囲として示される。判定部32は、タッチ領域Bを「小領域」と判定し、タッチ領域Aを「大領域」と判定する。また、判定部32は、小領域であるタッチ領域Bを指4によるタッチ領域(指領域)であると判定し、大領域であるタッチ領域Aを指4よりも大きい手の平又は拳等のパームによるタッチ領域(パーム領域)であると判定する。
【0043】
また、判定部32は、タッチ領域の面積に加えて又は代えて、タッチ領域をなすクロスポイントの個数を用いて、タッチ領域が小領域(指領域)であるか大領域(パーム領域)であるかの判定を行ってもよい。例えば、判定部32は、タッチ領域をなすクロスポイントの個数が第1範囲内である場合には、当該タッチ領域を小領域(指領域)と判定し、タッチ領域をなすクロスポイントの個数が第1範囲よりも多い第2範囲内である場合には、当該タッチ領域を大領域(パーム領域)と判定する。判定部32は、タッチ領域の大きさの判定結果を出力部34に出力する。
【0044】
ここで、図5を参照して、タッチ領域の大きさの時間変化について説明する。図5は、タッチ領域の大きさの時間変化を示す図である。
【0045】
図5に示す時系列でまず時刻t1では、ユーザは、電子ペン2を片手で把持し、タブレット端末3のタッチ面3aに電子ペン2のペン先を接触させた状態であるとする(筆圧値>0)。この際、電子ペン2を把持しているユーザの把持手5(図1参照)がタッチ面3aに接触しているとすると、電子ペン2のペン位置P1の右側において、把持手5によるタッチ面3aへの接触により、大きさが第2範囲内のタッチ領域A1(大領域)が検出される。
【0046】
このような状態から続いて、時刻t2で、タッチ面3aに接触している電子ペン2のペン先がタッチ面3aから離れたことを示すペンアップ(筆圧値=0)が判定されたとする。この際、ユーザの動きによっては、把持手5がタッチ面3aに接触する領域の大きさが小さくなるタイミングが存在し、大きさが第1範囲内のタッチ領域A2(小領域)が検出され得る。続いて、タッチ面3aから電子ペン2のペン先を少し浮かせた状態で電子ペン2を移動させた場合にも、同様にして、大きさが第1範囲内のタッチ領域A3,A4(小領域)が検出され得る。
【0047】
続いて、時刻t4において、ペン位置P1から移動したペン位置P2において当該ペン先をタッチ面3aに置いたことを示すペンダウン(筆圧値>0)が判定されたとする。この際、把持手5によるタッチ面3aへの接触が安定すると、大きさが第2範囲内のタッチ領域A5(大領域)が検出される。
【0048】
以上のように、ペンアップやペンダウンの際に、把持手5がタッチ面3aに接触するタッチ領域の大きさが一時的に変動する。そこで、本実施形態では、このようなタッチ領域の大きさが一時的に変動する場合を考慮して、タッチ面3aに接触している電子ペン2がタッチ面3aから離れた場合に、ホストプロセッサ22へのタッチ位置の出力を一時的に抑制する。タッチ面3aに接触している電子ペン2がタッチ面3aから離れた場合とは、電子ペン2のペン先に加わる圧力を示す筆圧値に基づき、ペン検出部28の判定部40によりペンアップと判定されたことを示す。すなわち、本実施形態では、電子ペン2のペン先に加わる圧力を示す筆圧値に基づき、ホストプロセッサ22へのタッチ位置の出力を一時的に抑制する。タッチ面3aに接触している電子ペン2がタッチ面3aから離れた場合とは、電子ペン2がタッチ面3aから完全に離れた状態だけでなく、電子ペン2がタッチ面3aから離れそうな状態を含んでもよい。以下、ホストプロセッサ22へのタッチ位置の出力を抑制する状態を「タッチ出力抑制状態」と称し、具体的に説明する。
【0049】
判定部32は、タッチ出力抑制状態では、通常スキャン状態とは異なる態様で判定処理を実行する。例えば、判定部32は、タッチ出力抑制状態では、通常スキャン状態と比べて、タッチ領域が小領域(指領域)と判定され難くなるように設定変更された判定基準を用いてタッチ領域の大きさを判定し、その判定結果を出力部34に出力する。すなわち、判定部32によるタッチ領域の大きさの判定基準としての第1範囲や第2範囲の設定が変更される。例えば、タッチ出力抑制状態における第1範囲が、通常スキャン状態における第1範囲よりも小さく設定される。また、タッチ出力抑制状態における第2範囲が、通常スキャン状態における第1範囲及び第2範囲の両方を含むものとして設定されてもよい。このように設定される場合、タッチ領域は、通常スキャン状態における第1範囲及び第2範囲の何れの範囲内の大きさであっても大領域(パーム領域)と判定される。
【0050】
また、上記のように判定基準の設定を変更せず、タッチ出力抑制状態では、判定部32による判定結果を全て大領域(パーム領域)に置換するものとしてもよい。すなわち、判定部32は、実際の大きさとしては小領域(指領域)と判定される場合であっても、判定結果を大領域(パーム領域)に置換して出力部34に出力してもよい。
【0051】
また、判定部32は、タッチ出力抑制状態において、トラッキング部36によるトラッキングを実行すべきタッチ領域の大きさの判定も実行する。判定部32は、このトラッキングを実行すべきタッチ領域の大きさの判定のための判定基準としては、上記のように設定変更された判定基準ではなく、通常スキャン状態における判定基準を用いることが好ましい。判定部32は、当該判定結果を、トラッキング部36に出力する。
【0052】
図3に戻り、出力部34は、判定部32によるタッチ領域の面積の判定結果に基づき、タッチ位置の座標をホストプロセッサ22へ出力する。具体的には、出力部34は、タッチ領域が小領域(指領域)であると判定された場合、すなわちタッチ領域が第1範囲内である場合に、検出部30により検出されたタッチ位置をホストプロセッサ22へ出力する。なお、出力部34は、検出部30により生成したヒートマップ、判定部32により判定した判定結果等をホストプロセッサ22へ出力してもよい。
【0053】
また、出力部34は、タッチ面3aに接触している電子ペン2がタッチ面3aから離れた場合に、検出部30により検出されたタッチ位置のホストプロセッサ22への出力を一時的に抑制する。本実施形態では、出力部34は、電子ペン2がタッチ面3aから離れたことにより動作モードが排他モードから時分割モードに切り替えられた場合に、検出部30により検出されたタッチ位置のホストプロセッサ22への出力を抑制する。
【0054】
タッチ位置の出力を抑制するとは、通常スキャン状態に比して、タッチ位置が出力され難くすることを示す。上記した通り、タッチ出力抑制状態においては、判定部32によるタッチ領域の大きさの判定基準の設定変更や、判定部32によるタッチ領域の大きさの判定結果の置換によって、通常スキャン状態に比してタッチ領域が小領域(指領域)と判定され難くなる。これによって、出力部34によるタッチ位置の出力が抑制される。
【0055】
例えば、タッチ出力抑制状態において判定部32によってタッチ領域が大領域(パーム領域)として判定又は置換されることにより、出力部34は、タッチ位置の出力停止する、又は、タッチ位置の無効化出力をする。出力停止とは、ホストプロセッサ22へのタッチ位置の出力を停止(出力対象から除外)することを示す。無効化出力とは、タッチ位置の座標がホストプロセッサ22において描画等されないよう無効化してホストプロセッサ22へ出力することを示す。無効化としては、例えば、タッチ位置と共に、無効を示すフラグをホストプロセッサ22へ出力することが挙げられる。このように、出力部34は、出力停止又は無効化出力によって、検出されたタッチ位置に基づく描画等の処理がホストプロセッサ22で実行されないようにする。
【0056】
また、一時的に抑制するとは、所定の解除条件を満たすまでの間、抑制することを示す。出力部34は、例えばトラッキング部36によりトラッキングされるタッチ領域がロスト(消失)するという解除条件を満たすまで、タッチ位置の出力を抑制し続ける。出力部34は、トラッキング部36によりタッチ領域のトラッキングが続行される場合にはタッチ位置の出力を抑制し続け、トラッキング部36によりタッチ領域のトラッキングが続行されない場合にはタッチ位置の出力の抑制を解除する。
【0057】
トラッキング部36は、タッチ面3aに接触している電子ペン2がタッチ面3aから離れた場合に、検出部30により検出されたタッチ位置の領域であって、大きさが第1範囲内の領域のトラッキングを実行する。例えば、トラッキング部36は、判定部32により小領域(指領域)であると判定されたタッチ領域をトラッキングする。トラッキングとは、タッチ領域を追跡することである。
【0058】
例えば、トラッキング部36は、出力部34によるタッチ位置の出力抑制を開始するタイミングで、判定部32により小領域(指領域)であると判定されたタッチ領域のトラッキングを開始する。トラッキング部36は、トラッキング開始の際に、トラッキングを開始するタッチ領域に所定のトラッキングID(トラッキングID=1)を付与する。トラッキング部36は、トラッキング中のタッチ領域(トラッキングID=1)の検出レベルが閾値以上である場合には、当該トラッキングを続行する。また、トラッキング部36は、トラッキング中のタッチ領域(トラッキングID=1)の検出レベルが閾値以下である場合には、トラッキングすべきタッチ領域がロストしたとして当該トラッキングを終了する。すなわち、トラッキング部36は、タッチ面3aに対するユーザのタッチがタッチ面3aから離れるまでの間の一続きのタッチによるタッチ領域をトラッキングし、ユーザのタッチがタッチ面3aから離れたタイミングで当該トラッキングを終了する。トラッキング部36は、例えば図5に示すペンアップからペンダウンまでの間の一連のタッチ領域A2~A4をトラッキングする。
【0059】
<ペン検出部28>
また、タッチIC20のペン検出部28は、検出部38と、判定部40と、出力部42と、を有する。
【0060】
検出部38は、電子ペン2に対して信号を送信し、それに応じて電子ペン2が送信した信号を受信することによって、電子ペン2のペン位置の検出を実行する。具体的には、検出部38は、アップリンク信号を生成して各センサ電極18x,18yに対して入力することにより、電子ペン2に対してアップリンク信号を送信する処理を行う。アップリンク信号は、電子ペン2をタブレット端末3に同期させるとともに、電子ペン2に対して送信すべきデータの内容を指示するコマンドを送信するための信号である。
【0061】
検出部38は、電子ペン2がアップリンク信号を受信したことに応じて電子ペン2が送信するペン信号を受信する。ペン信号は、無変調のバースト信号と、電子ペン2内で取得される各種データにより変調されたデータ信号とをこの順で含む。電子ペン2内で取得される各種データは、上記した電子ペン2の各機能部によって取得されるデータである。この各種データには、例えば、筆圧検出部によって検出された筆圧を示すデータ(筆圧値)、サイドスイッチ状態検出部によって取得されたサイドスイッチのオンオフ状態を示すデータ(スイッチデータ)、記憶部内に記憶される固有のペンID等が含まれ得る。
【0062】
検出部38は、グローバルスキャンを行うか否かの判定に基づき、スキャン処理を実行する。検出部38は、グローバルスキャンを行うと判定された場合には、グローバルスキャンを実行する。すなわち、検出部38は、電子ペン2がペン信号の送信を行っているタイミングで、タッチセンサ18を構成する全センサ電極18x,18yをスキャンする。また、検出部38は、グローバルスキャンを行わないと判定された場合には、セクタスキャンを実行する。すなわち、検出部38は、電子ペン2がバースト信号の送信を行っているタイミングで、タッチセンサ18を構成する複数のセンサ電極18x,18yのうち直前のペン座標の近傍に位置する所定数のセンサ電極18x,18yのみをスキャンする。
【0063】
検出部38は、グローバルスキャン又はセクタスキャンの結果としてペン信号を検出する。検出部38は、ペン信号が検出されない場合には、ペン不検出を示すペンデータを出力部42に出力する。検出部38は、ペン信号が検出された場合には、センサ電極18x,18yにおけるペン信号の検出レベルに基づき、ペン座標を計算する。そして、検出部38は、計算したペン座標を示すペンデータを、出力部42に出力する。また、検出部38は、セクタスキャンの結果として計算したペン座標に最も近いセンサ電極18x,18yを用いてデータ信号を受信して復調することによって、電子ペン2から送信された各種データを受信する。検出部38は、各種データを判定部40や出力部42に出力する。
【0064】
判定部40は、電子ペン2から送信された各種データに基づき、ペン状態情報を判定する。ペン状態情報は、ペンダウン、ペンムーブ、ペンアップの何れかを示す情報である。ペンダウンは、上記した通り電子ペン2のペン先をタッチ面3aに置いたこと、すなわち電子ペン2がタッチ面3aに接触したことを示す。ペンムーブは、タッチ面3aに接触した電子ペン2が引き続きタッチ面3aに接触していることを示す。ペンアップは、上記した通りタッチ面3aに接触している電子ペン2がタッチ面3aから離れたことを示す。判定部40は、電子ペン2から送信された各種データに含まれる筆圧値が閾値以上であるか否かに基づき、ペン状態情報を判定する。ペン状態情報は、ホストプロセッサ22において、ストロークの始まりと終わりとを認識するために使用される。
【0065】
判定部40は、筆圧値が例えば0より大きい値から0に変化した場合にはペンアップと判定する。また、判定部40は、筆圧値が0に変化した場合だけでなく、例えば0に近い閾値以下の値に変化した場合に、ペンアップと判定してもよい。このように筆圧値が0に近い閾値以下の値に変化した場合には、電子ペン2がタッチ面3aから離れそうな状態であり、電子ペン2がタッチ面3aから完全に離れていない場合であっても、電子ペン2がタッチ面3aから離れた場合とみなしてもよい。また、判定部40は、筆圧値が0から0より大きい値に変化した場合にはペンダウンと判定する。また、判定部40は、筆圧値が0より大きい値を維持し続けている場合にはペンムーブと判定する。判定部40は、ペン状態情報の判定結果を、出力部42、タッチ検出部26の出力部34やトラッキング部36等に出力する。
【0066】
出力部42は、検出部38によりペン信号が検出されなかった場合、ペン不検出を示すペンデータをホストプロセッサ22に対して送信する。また、出力部42は、検出部38によりペン信号が検出された場合、検出部38により導出されたペン座標を示すペンデータをホストプロセッサ22に対して送信する。また、出力部42は、電子ペン2から送信された各種データや、判定部40により判定されたペン状態情報等を、ホストプロセッサ22に対して送信してもよい。
【0067】
<位置検出システム1の動作>
次に、図6を参照して、位置検出システム1の動作について説明する。図6は、位置検出システム1における動作の流れを模式的に示す状態遷移図である。
【0068】
(ステップSP10:通常スキャン状態)
図6に示すように、まず、初期状態が通常スキャン状態である場合には、動作モードが時分割モードで動作し、タッチ検出とペン検出とが時分割で交互に実行される。ここで、タッチ検出の実行頻度とペン検出の実行頻度とは、所定の比率となるように予め設定されている。1回の繰り返し周期におけるペン検出とタッチ検出との実行頻度の比率は、1:1、1:n、n:1、n:m(ただし、n、mは整数。)の何れであってもよい。このステップSP10の処理でタッチ検出が実行されたタイミングにおいて、検出部30によって指4のタッチ位置が検出されると、処理は、タッチ検出状態に移行する(ステップSP12)。また、このステップSP10の処理でペン検出が実行されたタイミングにおいて、検出部38により検出された電子ペン2について判定部40によってペンダウンが判定されると、処理は、ペン検出状態に移行する(ステップSP14)。
【0069】
(ステップSP12:タッチ検出状態)
タッチ検出状態では、タッチ検出部26により、通常のタッチ検出が実行される。具体的には、検出されたタッチ位置の領域の大きさについて判定部32による判定が実行され、当該判定により小領域(指領域)と判定されたタッチ位置が出力部34によりホストプロセッサ22へ出力される。指4がタッチ面3aから離れて検出部30により検出されたタッチ位置がロストすると、ステップSP10の通常スキャン状態に戻る。
【0070】
(ステップSP14:ペン検出状態)
ペン検出状態では、ペン検出部28により、通常のペン検出が実行される。具体的には、検出されたペン位置が出力部42によってホストプロセッサ22へ出力される。このペン検出状態では、例えばペン位置の検出のみ行いタッチ位置の検出は行わない排他モードで動作されてもよい。また、ペン検出状態では、判定部40によりペン状態情報が判定される。この判定によりペンアップが判定された場合には、処理は、タッチ出力抑制状態へ移行する(ステップSP16)。
【0071】
(ステップSP16:タッチ出力抑制状態)
タッチ出力抑制状態では、通常スキャン状態と同様にタッチ検出とペン検出とが時分割で交互に実行される時分割モードで動作する一方で、タッチ検出があったとしても検出されたタッチ位置の出力を抑制する。この処理の流れについて、図7のフローチャートを参照して詳述する。
【0072】
図7は、タッチ出力抑制状態における処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、以下のステップの順番は、適宜、変更することができる。
【0073】
(ステップSP20)
タッチ出力抑制状態では、通常スキャン状態と同様にして、タッチ検出とペン検出とが時分割で交互に実行される。このステップSP20の処理でペン検出が実行されたタイミングにおいて、検出部38により検出された電子ペン2について判定部40によってペンダウンが判定されると、処理は、ステップSP14のペン検出状態に戻る。また、このステップSP20の処理において、タッチ検出が実行されると、処理は、ステップSP22の処理に移行する。
【0074】
(ステップSP22)
タッチ検出部26の検出部30は、タッチ位置が検出されたか否かを判定する。当該判定を肯定判定した場合には、処理は、ステップSP24の処理に移行し、当該判定を否定判定した場合には、処理は、ステップSP20の処理に戻る。
【0075】
(ステップSP24)
タッチ検出部26の出力部34は、判定部32によるタッチ領域の大きさの判定基準の設定変更や、判定部32によるタッチ領域の大きさの判定結果の置換によって、検出されたタッチ位置の出力を抑制する。例えばタッチ領域が大領域(パーム領域)として判定又は置換されることにより、出力部34は、タッチ位置のホストプロセッサ22への出力を停止する、又は、タッチ位置を無効化してホストプロセッサ22へ出力する。そして、処理は、ステップSP26の処理に移行する。
【0076】
(ステップSP26)
タッチ検出部26のトラッキング部36は、ステップSP22の処理において検出されたと判定されたタッチ位置のタッチ領域のトラッキングを実行する。例えば、タッチ検出部26の判定部32が、検出されたタッチ位置の領域判定を行い、トラッキング部36は、当該判定により小領域(指領域)と判定されたタッチ領域についてトラッキングID=1を付与してトラッキングを実行する。そして、処理は、ステップSP28の処理に移行する。
【0077】
(ステップSP28)
トラッキング部36は、トラッキングID=1が付与されたタッチ領域がロストしたか否かを判定する。当該判定が肯定判定された場合には、処理は、ステップSP30の処理に移行し、当該判定が否定判定された場合には、処理は、ステップSP20の処理に戻る。
【0078】
(ステップSP30)
トラッキング部36は、トラッキングを終了する。そして、タッチ出力抑制状態が解除されて、処理は、ステップSP10の通常スキャン状態に戻る。
【0079】
<作用効果>
以上、本実施形態に係る位置検出システム1は、ペン信号を送信可能に構成された電子ペン2と、複数のセンサ電極18x,18yが面状に配置されてなる静電容量方式のタッチセンサ18を用いて、電子ペン2及び指4のタッチセンサ18上に配置されたタッチ面3aにおける各位置を検出するタッチIC20と、を備える。タッチIC20は、指4のタッチ位置を検出する検出部30と、検出部30により検出されたタッチ位置の領域の大きさが第1範囲(所定範囲)内である場合に、検出部30により検出されたタッチ位置を出力する出力部34と、を有し、出力部34は、タッチ面3aに接触している電子ペン2がタッチ面3aから離れた場合に、検出部30により検出されたタッチ位置の出力を一時的に抑制する。
【0080】
また、本実施形態に係る位置検出方法は、タッチセンサ18を用いて電子ペン2及び指4のタッチ面3aにおける各位置を検出する位置検出方法であって、指4のタッチ位置を検出する検出ステップ(ステップSP10)と、検出ステップにおいて検出されたタッチ位置の領域の大きさが第1範囲内である場合に、検出ステップにおいて検出されたタッチ位置を出力する出力ステップ(ステップSP12)と、を含み、出力ステップは、タッチ面3aに接触している電子ペン2がタッチ面3aから離れた場合に、検出ステップにおいて検出されたタッチ位置の出力を一時的に抑制する(ステップSP16)。
【0081】
ここで、上記で図5を参照して説明したように、ペンアップやペンダウン等の際に、把持手5がタッチ面3aに接触するタッチ領域の大きさが一時的に変動する場合がある。従来技術では、このような場合、例えば小領域であるタッチ領域A2~A4は、把持手5によるタッチであったとしても指領域と誤判定され、タッチ位置がホストプロセッサ22に出力されてしまう可能性があった。また、ユーザが電子ペン2で絵や文字を入力中には、ユーザの肘や腕が入力を意図せずにタッチ面3aに触れることがある。ペンアップのタイミングにおいては、この肘や腕等の入力を意図しないタッチの位置が検出されてホストプロセッサ22へ出力されてしまう可能性もあった。
【0082】
これに対し、本実施形態に係る位置検出システム1、タッチIC20、及び位置検出方法によれば、電子ペン2がタッチ面3aから離れたペンアップのタイミングで、タッチ位置の検出結果の出力が一時的に抑制される。よって、ペンアップのタイミングで、タッチ領域の大きさの一時的な変動や、ユーザによる入力を意図しないタッチがあった場合でも、指4とは異なる導体(例えば、把持手5、肘、腕等)によるタッチのタッチ位置がホストプロセッサ22に出力されてしまうことを抑制することができる。よって、ユーザが意図しない描画結果となることを抑制することができる。
【0083】
また、本実施形態では、電子ペン2がタッチ面3aから離れた場合に、検出部30により検出されたタッチ位置の領域であって、大きさが第1範囲内の領域のトラッキングを実行するトラッキング部36を更に備え、出力部34は、トラッキング部36により領域のトラッキングが続行される場合にはタッチ位置の出力を抑制し続け、トラッキング部36により領域のトラッキングが続行されない場合にはタッチ位置の出力の抑制を解除する。
【0084】
この構成によれば、ユーザが入力を意図しないタッチが引き続き検出されている場合に限って、タッチ位置の出力を抑制することができる。具体的には、ペンアップのタイミングで実行されたタッチ領域のトラッキングが続行される場合には、ユーザが入力を意図しないタッチが引き続き検出されている可能性が高いので、タッチ位置の出力抑制が続行される。これにより、ユーザが意図しない描画結果となることを適切に抑制することができる。これに対し、当該トラッキングが続行されない場合には、ユーザが入力を意図しないタッチが引き続き検出されている可能性が低いので、タッチ位置の出力抑制が解除される。これにより、ユーザが入力を意図しないタッチが検出されている可能性が低い場合には、タッチ位置を通常通りにホストプロセッサ22に出力してユーザの意図に沿って描画等されるようにすることができる。
【0085】
また、本実施形態に係るタッチIC20は、電子ペン2のペン位置の検出を行う一方でタッチ位置の検出を行わない排他モード(第1の動作モード)において、タッチ面3aに接触している電子ペン2がタッチ面3aから離れた場合に、タッチ位置とペン位置とを時分割で検出する時分割モード(第2の動作モード)に切り替える動作制御部としてのファームウェア24を更に備え、出力部34は、ファームウェア24によって排他モードから時分割モードに切り替えられた場合に、検出部30により検出されたタッチ位置の出力を一時的に抑制する。
【0086】
排他モードは、電子ペン2を使用中のユーザであれば入力を意図するタッチを通常行わないだろうという考えに基づき、タッチ検出を停止する動作モードである。よって、排他モードから時分割モードに切り替えられるタイミングで検出されるタッチ位置は、ユーザが入力を意図してタッチしたものではない可能性が高い。よって、このようなタイミングにおいてタッチ位置の出力を一時的に抑制することで、ユーザの意図しない描画を適切に抑制することができる。
【0087】
また、本実施形態では、出力部34は、タッチ位置の出力を停止する、又は、タッチ位置を無効化して出力することにより、タッチ位置の出力を抑制する。
【0088】
この構成によれば、タッチ位置の出力を停止することでもユーザの意図しない描画を抑制することができるし、タッチ位置の出力はするものの無効化して出力することによってもユーザの意図しない描画を抑制することができる。
【0089】
また、本実施形態では、電子ペン2のペン先に加わる圧力を示す筆圧値に基づき、タッチ面3aに接触している電子ペン2がタッチ面3aから離れたか否かを判定する判定部40を更に備え、出力部34は、判定部40が肯定判定した場合に、タッチ位置の出力を一時的に抑制する。
【0090】
この構成によれば、筆圧値に基づき、電子ペン2がタッチ面3aから離れたか否かを適切に判定することができ、タッチ位置の出力を一時的に抑制するタイミングをより適切なものとすることができる。
【0091】
また、本実施形態では、出力部34は、電子ペン2のペン先に加わる圧力を示す筆圧値に基づき、タッチ位置の出力を一時的に抑制する。
【0092】
この構成によれば、例えば、筆圧値に基づき、電子ペン2がタッチ面3aから離れそうな状態である場合等には、電子ペン2がタッチ面3aから離れた場合とみなして、タッチ位置の出力を一時的に抑制することができる。
【0093】
<変形例>
本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。すなわち、上記の実施形態に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。また、上記の実施形態及び後述する変形例が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【0094】
例えば、上記実施形態では、タッチ位置の出力抑制を、タッチ領域の大きさの判定基準の設定変更や、タッチ領域の大きさの判定結果の置換によって実現する例について説明したが、当該設定変更や当該置換は必ずしも行わなくてもよい。例えば、ペンアップを契機としたタッチ出力抑制状態において、判定部32による判定結果によらず、出力部34によるホストプロセッサ22へのタッチ位置の出力を全て停止又は無効化出力するものとしてもよい。
【0095】
また、上記実施形態では、判定部32が、異なる第1範囲及び第2範囲を用いてタッチ領域の大きさを判定するとしたが、共通の所定範囲を用いて当該判定を行ってもよい。例えば、所定の下限値及び所定の上限値で示される一つの所定範囲内である場合には小領域(指領域)とし、当該所定範囲よりも大きい場合には大領域(パーム領域)と判定してもよい。また、タッチ領域の大きさは、面積やクロスポイント等の上記に挙げた条件に限らず、例えばX方向やY方向での長さ等のその他の条件によって判定してもよい。
【0096】
また、上記実施形態では、トラッキングすべきタッチ領域がロスト(消失)するという解除条件を満たすまで、タッチ出力抑制状態を続行する例について説明したが、タッチ出力抑制状態の解除条件はこれに限定されない。
【0097】
また、位置検出システム1における動作モードを切り替える方法やタイミングは、上記した例に限らない。例えば、上記実施形態では、電子ペン2が検出された場合に、動作モードを時分割モードから排他モードに切り替えるものとしたが、排他モードに切り替えることなく時分割モードを維持してもよい。また、電子ペン2が検出されたタイミングではなく、電子ペン2がタッチ面3aに接触したタイミングで時分割モードから排他モードに切り替えるとしてもよい。
【符号の説明】
【0098】
1:位置検出システム、2:電子ペン、3a:タッチ面、4:指(パッシブポインタ)、18x,18y:センサ電極、18:タッチセンサ、20:タッチIC(位置検出回路)、24:ファームウェア(動作制御部)、30:検出部、34:出力部、36:トラッキング部、40:判定部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7