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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023104340
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
   F25D 17/08 20060101AFI20230721BHJP
   F25D 17/06 20060101ALI20230721BHJP
   F25D 11/02 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
F25D17/08 308
F25D17/06 313
F25D11/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022005266
(22)【出願日】2022-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】河井 良二
(72)【発明者】
【氏名】岡留 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】田口 翔一
(72)【発明者】
【氏名】石▲崎▼ 祐理
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 遵自
(72)【発明者】
【氏名】岩渕 真也
【テーマコード(参考)】
3L045
3L345
【Fターム(参考)】
3L045AA02
3L045BA01
3L045CA02
3L045DA02
3L045EA01
3L045HA01
3L045LA10
3L045MA02
3L045MA05
3L045MA07
3L045NA07
3L045PA01
3L045PA02
3L045PA04
3L045PA05
3L345AA02
3L345AA18
3L345BB01
3L345BB02
3L345CC01
3L345DD06
3L345DD17
3L345DD24
3L345EE04
3L345EE05
3L345EE07
3L345EE08
3L345EE33
3L345EE34
3L345EE53
3L345FF04
3L345FF05
3L345FF32
3L345FF37
3L345FF41
3L345KK01
3L345KK02
3L345KK04
3L345KK05
(57)【要約】
【課題】
本発明は、仕切体を介した熱伝達によって冷蔵室を好適に冷却しつつ、冷蔵室以外の貯蔵室を冷やしすぎるといった事態が生じ難くした冷蔵庫を提供する。
【解決手段】
本発明の冷蔵庫1は、冷却器14と、冷蔵温度帯の第一貯蔵室2と、冷凍温度帯の第二貯蔵室60と、第一貯蔵室2を冷却する冷気を流通させる第一風路120と、第一貯蔵室2及び第一風路120との間に配置される冷却体200と、冷却器14の冷気を第一風路120及び第二貯蔵室60に向けて送風する送風機9aと、送風機9aの総風量に対する第二貯蔵室60への風量の割合を減少させ、かつ、送風機9aから第一風路120への風量を増加させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却器と、冷蔵温度帯の第一貯蔵室と、冷凍温度帯の第二貯蔵室と、前記第一貯蔵室を冷却する冷気を流通させる第一風路と、前記第一貯蔵室と前記第一風路との間に配置される冷却体と、前記冷却器の冷気を前記第一風路及び前記第二貯蔵室に向けて送風する送風機と、前記送風機の総風量に対する前記第二貯蔵室への風量の割合を減少させ、かつ、前記送風機から前記第一風路への風量を増加させる風量調整装置と、を備える冷蔵庫。
【請求項2】
前記風量調整装置として、前記第二貯蔵室への風路抵抗を調整する風路抵抗調整装置を備えた請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記風量調整装置として、前記第一風路への風路抵抗を調整する第一風路ダンパと、前記第二貯蔵室への風路抵抗を調整する第二貯蔵室ダンパと、を備えた請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記第一風路ダンパの開口面積より、前記第二貯蔵室ダンパの開口面積を大きくした請求項3に記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記第一貯蔵室への吹き出し口と前記第一貯蔵室からの戻り口とを有する第二風路を有し、
前記第一風路と前記第二風路とは、前記第二風路を流れる空気と前記第一風路を流れる空気とが前記冷却体を介して熱交換するように構成される請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項6】
前記第一風路ダンパを開放状態、前記第二貯蔵室ダンパを閉鎖状態として、前記送風機を所定速度で駆動した場合に前記第一風路に供給される風量をQ1とし、前記第一風路ダンパを閉鎖状態、前記第二貯蔵室ダンパを開放状態として、前記送風機を前記所定速度で駆動した場合に前記第二貯蔵室に供給される風量をQ2とした場合に、Q1<Q2を満足する冷却運転を行う請求項4に記載の冷蔵庫。
【請求項7】
前記第一風路ダンパを開放状態、前記第二貯蔵室ダンパを開放状態として、前記送風機を前記所定速度で駆動した場合に、前記第一風路に供給される風量をQ3とし、前記第二貯蔵室に供給される風量をQ4とした場合に、Q3<Q1<Q4<Q2を満足する冷却運転を行う請求項6に記載の冷蔵庫。
【請求項8】
前記風量調整装置として、前記第一風路に昇圧装置を備えた請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項9】
前記送風機及び前記昇圧装置を駆動した場合に、前記第一風路に供給される風量をQ21、前記第二貯蔵室に供給される風量をQ22とした場合に、Q21<Q22を満足する冷却運転を行う請求項8に記載の冷蔵庫。
【請求項10】
前記送風機を所定速度で駆動し、前記昇圧装置を駆動しない場合に、前記第一風路に供給される風量をQ23、前記第二貯蔵室に供給される風量をQ24とした場合に、Q23<Q21<Q22<Q24を満足する冷却運転を行う請求項9に記載の冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、例えば特開2017-110823号公報(特許文献1)に記載された冷蔵庫が知られている。特許文献1に記載の冷蔵庫は、ワイン室とワイン室を冷却するためのワイン室供給風路とを備える。ワイン室供給風路は、その前方が仕切体によって区画されており、仕切体には吹出口が形成されず、ワイン室供給風路とワイン室とは連通せずに完全に分離されている(段落0077及び図6,7参照)。これにより、ワイン室供給風路を流れる空気はワイン室に流れ込まず、ワイン室は仕切体を介した熱伝達によって冷却される(段落0079参照)。この構成では、冷却器で冷却された空気をワイン室に循環させないでワイン室を冷却することにより、ワイン室内の乾燥を抑制することができる(段落0080参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-110823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の冷蔵庫では、仕切体を介した熱伝達によってワイン室を冷却している。ワイン室の温度は冷蔵室の温度よりも高く設定される。仕切体を介した熱伝達によって冷却する対象を、ワイン室より低い温度帯となる冷蔵室とした場合には、冷却能力が不足して冷蔵室の温度帯を維持できなくなり、好適な冷却が行えなくなる虞がある。また、冷蔵室の冷却を優先すると、冷蔵室以外の貯蔵室を冷やしすぎるといった事態が生じる虞がある。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、仕切体を介した熱伝達によって冷蔵室を好適に冷却しつつ、冷蔵室以外の貯蔵室を冷やしすぎるといった事態を生じ難くした冷蔵庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。本明細書は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、冷却器と、冷蔵温度帯の第一貯蔵室と、冷凍温度帯の第二貯蔵室と、前記第一貯蔵室を冷却する冷気を流通させる第一風路と、前記第一貯蔵室と前記第一風路との間に配置される冷却体と、前記冷却器の冷気を前記第一風路及び前記第二貯蔵室に向けて送風する送風機と、前記送風機の総風量に対する前記第二貯蔵室への風量の割合を減少させ、かつ、前記送風機から前記第一風路への風量を増加させる風量調整装置と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば,仕切体を介した熱伝達によって冷蔵室を好適に冷却しつつ,冷蔵室以外の貯蔵室を冷やしすぎるといった事態を生じ難くした冷蔵庫を提供することができる。
【0008】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1に係る冷蔵庫の正面図。
図2】実施例1に係る冷蔵庫の縦断面図(図1のII-II断面図)。
図3】実施例1に係る冷蔵庫の庫内の構成を示す正面図。
図4】実施例1に係る冷蔵庫の風路構成を表す模式図。
図5】実施例1に係る冷蔵庫の冷蔵室風路を表す分解斜視図。
図6】実施例1に係る冷蔵庫の冷凍サイクルの構成図。
図7】実施例1に係る冷蔵庫の冷凍室ダンパの構成を表す図。
図8】実施例1に係る冷蔵庫の送風モードと風量との関係を示す表。
図9】実施例1に係る冷蔵庫の制御装置の構成を示すブロック図。
図10】実施例2に係る冷蔵庫の縦断面図。
図11】実施例2に係る冷蔵庫の庫内の構成を示す正面図。
図12】実施例2に係る冷蔵庫の風路構成を表す模式図。
図13】実施例2に係る冷蔵庫の制御装置の構成を示すブロック図。
図14】実施例2に係る冷蔵庫の冷蔵室風路を表す分解斜視図。
図15】実施例2に係る冷蔵庫の送風モードと風量との関係を示す表。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る実施例について説明する。
【0011】
[実施例1]
本発明の第1実施例(実施例1)に係る冷蔵庫について、図1図9を用いて説明する。
【0012】
図1は、実施例1に係る冷蔵庫1の正面図である。
図1に示すように、冷蔵庫1の断熱箱体10は、上方から冷蔵温度帯の冷蔵室2、冷凍温度帯の左右に併設された製氷室3と上段冷凍室4、下段冷凍室5及び冷蔵温度帯の野菜室6の順に配置された複数(本実施例では5つ)の貯蔵室を有している。
【0013】
冷蔵庫1はそれぞれの貯蔵室の開口を開閉する扉を備えている。これらの扉は、冷蔵室2、製氷室3、上段冷凍室4、下段冷凍室5及び野菜室6の開口をそれぞれ開閉する冷蔵室扉2a,2b、製氷室扉3a、上段冷凍室扉4a、下段冷凍室扉5a及び野菜室扉6aで構成される。冷蔵室扉2a,2bは左右に分割された回転式の扉であり、その他の扉3a,4a,5a,6aは、引き出し式の扉である。これら複数の扉2a,2b,3a,4a,5a,6aの内部材料は主に発泡ウレタンで構成されている。また、各扉2a,2b,3a,4a,5a,6aは図示しないシール部材を内面外周部に備えている。なお、本発明の実施にあたり、貯蔵室およびその扉に係る構成は、上記構成に限定されない。
【0014】
扉2aの庫外側表面には、庫内の温度設定の操作を行う操作部26が設けられている。扉の庫外側に操作部を設けることで、扉を開けることなくユーザーは温度設定等の操作を行うことができる。
【0015】
冷蔵室2と製氷室3及び上段冷凍室4との間は断熱仕切壁27によって隔てられ、下段冷凍室5と野菜室6との間は断熱仕切壁28によって隔てられている。また、製氷室3と上段冷凍室4との間の前縁部には、製氷室扉3a及び上段冷凍室扉4aを閉じた状態において、製氷室扉3aの右端内面のシール部材と、上段冷凍室扉4aの左端内面のシール部材とに当接する位置に仕切部29が設けられている。製氷室3及び上段冷凍室4と下段冷凍室との間の前縁部には、製氷室扉3a、上段冷凍室扉4a及び下段冷凍室扉5aを閉じた状態において、製氷室扉3a及び上段冷凍室扉4aの下端内面のシール部材と、下段冷凍室扉5aの上端内面のシール部材とに当接する位置に、仕切部30を備えている。
【0016】
断熱箱体10の天面庫外側の前方と、断熱仕切壁27の前縁とには、冷蔵庫1と扉2a,2bとを固定するための扉ヒンジ(図示せず)が配設されており、上部の扉ヒンジは扉ヒンジカバー16で覆われている。
【0017】
製氷室3、上段冷凍室4及び下段冷凍室5は、基本的に庫内を冷凍温度(0℃未満)の例えば平均的に-18℃程度にした貯蔵室であり、冷蔵室2は庫内を冷蔵温度(0℃以上)の例えば平均的に4℃程度にした貯蔵室、野菜室6は庫内を冷蔵温度(0℃以上)の例えば平均的に7℃程度にした貯蔵室である。以下本明細書中では、冷凍温度の貯蔵室である製氷室3と上段冷凍室4と下段冷凍室5とを、製氷室3と上段冷凍室4と下段冷凍室5との総称として冷凍室60と呼ぶことがある。すなわち本実施例の冷蔵庫1は、貯蔵室として、冷蔵温度帯の第一貯蔵室2と、冷凍温度帯の第二貯蔵室60と、を有する。
【0018】
図2は実施例1に係る冷蔵庫の(図1のII-II断面図)、図3は実施例1に係る冷蔵庫1の庫内の構成を示す正面図である。なお図3では、図1の扉及び容器を外した状態で図示している。図2及び図3を参照しながら、冷蔵庫1の構成を説明する。
【0019】
図2に示すように、冷蔵庫1は、鋼板製の外箱10aと合成樹脂製(例えばABS樹脂)の内箱10bとの間に発泡断熱材(本実施例の冷蔵庫では発泡ウレタン)を充填して形成される断熱箱体10により、庫外と庫内とが隔てられて構成されている。断熱箱体10には発泡断熱材に加えて、発泡断熱材より熱伝導率が低い真空断熱材25を外箱10aと内箱10bとの間に実装することで、内容積の低下を抑えて断熱性能を高めている。本実施例では、断熱箱体10の背面、下面、天井面、両側面及び下段冷凍室扉5aに真空断熱材25を実装して、冷蔵庫1の断熱性能を高めている。
【0020】
また、断熱仕切壁27の内部の断熱材は発泡ポリスチレンであり、断熱仕切壁28の内部は発泡ウレタンが充填されている。なお、断熱仕切壁28の内部の発泡ウレタンは、断熱箱体10の外箱10aと内箱10bとの間にウレタンを発泡充填する工程において、断熱箱体10の発泡ウレタンとともに充填される。
【0021】
冷蔵室扉2a,2bは、庫内側に複数の扉ポケット33a,33b,33cを備えている。また、冷蔵室2内は、棚34a,34b,34c,34dによって複数の貯蔵スペースに区画されている。製氷室扉3a、上段冷凍室扉4a、下段冷凍室扉5a及び野菜室扉6aは、それぞれ一体に引き出される製氷室容器3b、上段冷凍室容器4b、下段冷凍室容器5b及び野菜室容器6bを備えている。
【0022】
図2及び図3に示すように、冷蔵庫1は、下段冷凍室5の背部に、冷却器14が収納された冷却器室8を備え、冷却器室8の上部には、冷凍室ファン9a(第一送風機)を備えている。冷凍室ファン9a下流のファン吐出風路195と、冷凍室60に吹き出す冷気が流れる冷凍室風路100との間には、隔壁180を備えており、隔壁180は第一開口部180aを有している。第一開口部180aには風量を調整する装置(風量調整装置または風量調整部)として、冷凍室60への風路抵抗を可変する装置(風路抵抗調整装置または風路抵抗調整部)である冷凍室ダンパ170を備えている。
【0023】
また、隔壁180は、左側面に第一開口部180aより開口面積が小さい、第二開口部180bを有している。第二開口部180bには、冷凍室60の左端に上下に延在する野菜室風路132が接続され、野菜室風路132の下部には、風量を調整する装置(風量調整装置または風量調整部)として、風路抵抗を可変する装置(風路抵抗調整装置または風路抵抗調整部)である野菜室ダンパ160を備えている。
【0024】
冷凍室風路100は、製氷室吹き出し口101、上段冷凍室吹き出し口102及び下段冷凍室吹き出し口103を備えている。また、冷却器室8の下部前方に、冷凍室60からの戻り冷気が流れる冷凍室戻り風路105を備えている。冷凍室戻り風路105は、冷却器14の幅と略等しい幅に形成されており、冷凍室60からの戻り冷気が冷却器14に効率よく流入するようにしている。また、野菜室風路132の出口には野菜室吹き出し口133を備えている。下段冷凍室5と野菜室6との間の断熱仕切壁28の下面には野菜室戻り口136が開口しており、野菜室戻り口136から冷却器室8の下部前方に至る野菜室戻り風路135を、断熱仕切壁28内に備えている。
【0025】
冷蔵庫1は、冷蔵室2の背面に、冷蔵室第二風路110を備えている。冷蔵室第二風路110は、最上段の棚34aの上方に冷蔵室吹き出し口111aを備え、最上段の棚34aと上から2段目の棚34bとの間に冷蔵室吹き出し口111bを備えている。冷蔵室吹き出し口111a,111bは、冷蔵室2内に空気を吹き出す。
【0026】
冷蔵室第二風路110の後方には、隔壁を隔てて隣接する冷蔵室第一風路120が設けられている。冷蔵室第二風路110と冷蔵室第一風路120との間の隔壁は、伝熱部材200により形成されており、冷蔵室第二風路110内の空気と冷蔵室第一風路120内の空気とが伝熱部材200を介して熱交換する。伝熱部材(隔壁)200は、冷蔵室第一風路120内の空気の冷熱を冷蔵室第二風路110内の空気に伝熱し、冷蔵室2を冷却する冷却体(冷却部材)を構成する。
【0027】
すなわち本実施例の冷蔵庫1は、冷却器14と、冷蔵温度帯の第一貯蔵室(冷蔵室)2と、冷凍温度帯の第二貯蔵室(冷凍室)60と、第一貯蔵室2を冷却する冷気を流通させる第一風路(冷蔵室第一風路)120と、第一貯蔵室2と第一風路120との間に配置される冷却体(伝熱部材)200と、冷却器14の冷気を第一風路120及び第二貯蔵室60に向けて送風する送風機9aと、を備える。
【0028】
この場合本実施例の冷蔵庫1は、第一貯蔵室2への吹き出し口111a,111bと前記第一貯蔵室からの戻り口(冷蔵室第二風路戻り口)115とを有する第二風路(冷蔵室第二風路)110を有し、第一風路120と第二風路110とは、第二風路110を流れる空気と第一風路120を流れる空気とが冷却体(伝熱部材)200を介して熱交換するように構成される。
【0029】
なお、冷蔵室吹き出し口111aの開口面積は1000mm、冷蔵室吹き出し口111bの開口面積は300mmであり、最上段貯蔵スペース(最上段の棚34aの上方に形成される貯蔵スペース)に向けた吹き出し口111aの開口面積を、上から2段目以下の貯蔵スペース(最上段の棚34aより下方に形成される貯蔵スペース)に向けた吹き出し口111bの開口面積より大きくしている。これにより、庫外からの熱侵入に加えて、自然対流によって比較的温度が高い空気が集まりやすい冷蔵室2の上方の貯蔵スペースに、より多くの冷気を供給できるので、温度ムラを小さく抑えた冷却を実現することができ、温度ムラに伴って形成され易くなる湿度(相対湿度)のムラも抑えた冷却を実現できる。なお、冷蔵室吹き出し口111aや冷蔵室吹き出し口111bは、複数に分割して形成する場合は、最上段貯蔵スペースに向けた吹き出し口の総開口面積を、上から2段目以下の貯蔵スペースに向けた吹き出し口の総開口面積より大きくすればよい。
【0030】
さらに、冷蔵庫1は、棚34cと34dとの間の貯蔵スペースに向けた吹き出し口を備えていない。このように最上段貯蔵スペースに向けた吹き出し口を備えるとともに、上から2段目以下の貯蔵スペースの少なくとも一つを、吹き出し口を備えない貯蔵スペースとすることで、冷蔵室2の全体の温度や湿度のムラを抑えつつ、吹き出し口からの気流の作用による食品の乾燥を特に小さく抑えることが可能な高保湿スペースを形成できる。
【0031】
また、冷蔵庫1は、冷蔵室第二風路110の下部中央の庫内側に、冷蔵室第二風路戻り口115を備えている。冷蔵室第二風路戻り口115は、チルド室36を区画する棚34dより上部に配置される。また、冷蔵庫1は、冷蔵室2の背面側であって棚34dより下部の右側に、冷蔵室戻り口131を備えている。さらに、上段冷凍室4及び下段冷凍室5の後方右端には、冷蔵室戻り風路130が配置され、冷蔵室戻り風路130は冷却器室8の右下部に接続される。
【0032】
冷蔵庫1は、冷蔵室第二風路110の下部に、冷蔵室ファン9b(第二送風機)を備えている。また、チルド室36の背部には、冷蔵室第二風路110とファン吐出風路195とを連通する連通路140を備えている。さらに、連通路140の入口部(下部)には、冷凍室風路100から冷気が連通路140や冷蔵室第二風路110に流入する風量を調整する装置(風量調整装置または風量調整部)として、風路抵抗を可変する装置(風路抵抗調整装置または風路抵抗調整部)である冷蔵室第二ダンパ151を備えている。一方、冷蔵室第一風路120の入口部(下部)には、冷凍室風路100から冷気が冷蔵室第一風路120に流入する風量を調整する手段として、冷蔵室第一風路120への風路抵抗を可変する装置(風路抵抗調整装置または風路抵抗調整部)である冷蔵室第一ダンパ152を備えている。冷蔵室第二ダンパ151及び冷蔵室第一ダンパ152は、単一のモータにより駆動されるダンパである。以下では、冷蔵室第二ダンパ151及び冷蔵室第一ダンパ152の機能を合わせた部品を冷蔵室ダンパ150と呼ぶ。
【0033】
冷蔵庫1は、冷却器室8内の冷却器14下方に除霜ヒータ21を備えており、冷却器室8の下面には樋23を備えている。また、樋23の下端部から機械室39に至る排水管22が設けられている。機械室39は、圧縮機24と、圧縮機24の上部に配置された蒸発皿32とを備えている。
【0034】
除霜ヒータ21は、例えば50W~200Wの電気ヒータを採用すれば良く、本実施例では120Wのラジアントヒータとしている。冷却器14の除霜時に発生した除霜水は、樋23から排水管22を介して圧縮機24の上部の蒸発皿32に排出され、圧縮機24からの放熱や、図示しない機械室ファンによる通風等の作用により蒸発する。
【0035】
冷蔵庫1は、断熱仕切壁27の上部の冷蔵室2内に、内部が-1℃程度に維持されるチルド室36を備えており、チルド室36の前方は蓋体36aにより開閉可能となっている。蓋体36aは外周にパッキン(図示せず)を備えており、蓋体36aを閉鎖状態とした場合、パッキンにより蓋体36aとチルド室36の外郭36bとが隙間なく接触し、密閉される構造となっている。また、チルド室36の背部にチルド室36内の空気を吸引するポンプ(図示せず)を備えており、蓋体36aが閉鎖された状態でポンプを駆動することで、チルド室36内の気圧を約0.8気圧に減圧するようにしている。これによりチルド室36内は、蓋体36aにより冷気が直接送風されなくなるとともに、減圧により酸素濃度が低下した環境となるので、食品の乾燥と酸化が抑制される収納スペースとなる。なお、チルド室36の冷却は、その下方に位置する製氷室3や上段冷凍室4から伝わる冷熱によって主に行われる。
【0036】
冷蔵庫1は、冷蔵室2、上段冷凍室4、下段冷凍室5及び野菜室6の庫内背面側に、それぞれ冷蔵室温度センサ41、冷凍室温度センサ43及び野菜室温度センサ44を備え、冷却器14の上部には冷却器温度センサ40を備えている。これらのセンサにより、冷蔵室2、製氷室3、上段冷凍室4、下段冷凍室5、野菜室6、冷却器室8及び冷却器14の温度を検知している。なお、製氷室3、上段冷凍室4及び下段冷凍室5は庫内が一体の冷却空間となるため、一つの冷凍室温度センサ43によって温度を検知するようにしている。また、冷蔵庫1は、天井部の扉ヒンジカバー16の内部に、外気温度センサ37と外気湿度センサ38とを備え、外気(庫外空気)の温度と湿度とを検知している。その他にも、扉センサ(図示せず)を備えており、扉2a,2b,3a,4a,5a,6aの開閉状態をそれぞれ検知している。
【0037】
図4は、実施例1に係る冷蔵庫1の風路構成を表す模式図である。なお図4では、冷気を流す風路構造の概略を示している。
【0038】
図4に示すように冷蔵庫1においては、冷凍室ダンパ170が開放状態の場合、冷却器室8で冷却器14と熱交換した冷気は、冷凍室ファン9aによって昇圧されて、ファン吐出風路195から冷凍室風路100に送られる。冷凍室風路100に送られた冷気は、製氷室吹き出し口101、上段冷凍室吹き出し口102及び下段冷凍室吹き出し口103から、それぞれ製氷室3、上段冷凍室4及び下段冷凍室5に吹き出す。製氷室3、上段冷凍室4及び下段冷凍室5を冷却した冷気は、下段冷凍室5から冷凍室戻り風路105を流れて冷却器室8に戻る。
【0039】
冷蔵室第二ダンパ151が開放状態の場合、冷凍室ファン9aによって昇圧された冷気は、連通路140から冷蔵室第二風路110に流れて、冷蔵室吹き出し口111から冷蔵室2に送られる。図4の冷蔵室吹き出し口111は、図2の冷蔵室吹き出し口111a,111bである。冷蔵室2を冷却した冷気は、冷蔵室戻り口131を介して冷蔵室戻り風路130を流れ、冷却器室8に戻る。このように、冷蔵室第二ダンパ151を開放して、冷却器14と熱交換した低温冷気を冷蔵室第二風路110から冷蔵室2内に直接流入させることで、冷蔵室2の冷却を加速する急冷運転が実施される。
【0040】
野菜室ダンパ160が開放状態の場合、冷凍室ファン9aによって昇圧された冷気は、野菜室風路132を流れ、野菜室吹き出し口133から野菜室6に吹き出す。野菜室6においては、野菜室容器6bの外に指向して吹き出すようにしてあり、野菜室容器6bに収納される野菜等の食品が乾燥したり、低温になり過ぎたりすることを抑制するようにしている。野菜室6を冷却した冷気は、断熱仕切壁28下面に備えられた野菜室戻り口136(図2参照)を介して、断熱仕切壁28内に設けられた野菜室戻り風路135(図2参照)を流れ、冷却器室8に戻る。
【0041】
冷蔵室第二ダンパ151が閉鎖状態、冷蔵室第一ダンパ152が開放状態で、冷蔵室ファン9bを駆動状態とすることで、冷蔵室2内の空気が、冷蔵室第二風路戻り口115から、冷蔵室第二風路110に入り、冷蔵室第二風路110を流れて冷蔵室吹き出し口111から再び冷蔵室2に入り冷蔵室2内を循環する空気流が形成される。一方で、冷蔵室第一ダンパ152を開放しているので、冷凍室ファン9aによって昇圧された冷気は、冷蔵室第一風路120を流れ、伝熱部材200において冷蔵室第二風路110内の空気と熱交換し、冷蔵室戻り風路130を流れ、冷却器室8に戻り冷却器14と熱交換する。このように冷蔵室第二風路110から冷蔵室2を通って冷却器14を介さずに再び冷蔵室第二風路110に至るように空気を循環させつつ、冷蔵室第一風路120に冷却器14と熱交換した空気を導くようにして冷蔵室2を冷却する冷却運転が実施される。
【0042】
また、冷蔵室第二ダンパ151が閉鎖状態、冷蔵室第一ダンパ152が閉鎖状態または冷凍室ファン9a停止状態で、冷蔵室ファン9bを駆動状態とすることで、冷蔵室2内の空気が、冷蔵室第二風路戻り口115から,冷蔵室第二風路110に入り,冷蔵室第二風路110を流れて冷蔵室吹き出し口111から再び冷蔵室2に入り冷蔵室2内を循環する空気流が形成される。一方で、冷蔵室第一ダンパ152を閉鎖状態または冷凍室ファン9aを停止状態としているので、冷蔵室第一風路120内に冷却器14と熱交換した低温冷気は流れず、伝熱部材200を介した冷蔵室第二風路110内空気の冷却は行われない状態となる。このように冷蔵室第一風路120への送風を停止した状態(冷蔵室第一ダンパ152閉鎖状態または冷凍室ファン9a停止状態)で、冷蔵室ファン9bを駆動することによって、伝熱部材200に成長した霜を融解する伝熱部材除霜運転が実施される。伝熱部材除霜運転は、伝熱部材が0℃より高い温度に到達するまで実施され、霜の融解とともに伝熱部材200上の霜と、冷蔵室第一風路120に通風される空気との間での水分移動(物質移動)が生じ、冷蔵室2内を高湿化できる。なお、伝熱部材除霜運転と同様の制御状態で、伝熱部材200の温度が0℃以下で運転を終了するようにして、霜の融解を完了させずに、霜と、冷蔵室第一風路120に通風される空気との間での水分移動(物質移動)による高湿化を図る保湿運転を実施してもよい。保湿運転は、伝熱部材除霜運転よりも伝熱部材温度が低い状態で終了する運転となるので、冷蔵室2の温度を上昇させずに冷蔵室2内を高湿化でき、温度の変動を抑えた冷却を実施し易くなる。保湿運転を実施するためには、伝熱部材除霜運転より、冷蔵室ファン9bの駆動時間を短くしたり、伝熱部材除霜運転より、冷蔵室ファン9bの回転速度を下げたりすることが有効となる。
【0043】
図5は、実施例1に係る冷蔵庫1の冷蔵室風路を表す分解斜視図である。なお図5では、冷蔵室第二風路110及び冷蔵室第一風路120の構成を示す。
【0044】
図5に示すように、冷蔵室2の背部に形成される冷蔵室第二風路110及び冷蔵室第一風路120は、第二風路部材210と、第一風路部材220と、第二風路部材210と第一風路部材220との間に設置される伝熱部材200と、から成る。第二風路部材210は、前面に冷蔵室吹き出し口111a,111bを備え、背面に伝熱部材200が取り付けられる開口部210aを備えている。第一風路部材220の前面は、開口部220aを備えており、伝熱部材200が取り付けられた第二風路部材210と一体に組み合わせることで、冷蔵室第二風路110と冷蔵室第一風路120とが、伝熱部材200を介して隔てられた状態となる。第一風路部材220は、冷蔵室第一風路120の内部に往流路120aと還流路120bとを形成する仕切部材121を備えている。これにより、冷蔵室第一ダンパ152(図2図3及び図4参照)が開放状態の場合には、第一風路部材220の内部に矢印で示すように、冷蔵室第一風路120の左側に形成された往流路120aを上方に向けて流れた冷気が、冷蔵室第一風路120上部において反転し、冷蔵室第一風路120の右側の還流路120bを下方に流れるようにしている。その結果、冷蔵室2の背部の広い領域において、冷蔵室第二風路110内の空気と冷蔵室第一風路120内の空気とが効率よく熱交換される。なお、冷蔵室戻り口131が左側に形成されるようなレイアウトの冷蔵庫の場合には、往流路120aが右側、還流路120bが左側、にそれぞれ配置されても良い。いずれにしても、往流路120aと還流路120bとを左右方向に並ぶように形成することで、冷蔵室第二風路110の背部に面する領域が多く確保され熱交換が促進されるだけでなく、前後方向の省スペース化も可能となる。
【0045】
本実施例の冷蔵庫1においては、第二風路部材210及び第一風路部材220は合成樹脂(例えばABS樹脂)で形成し、伝熱部材200は金属であるアルミニウムで形成している。このように伝熱部材200として熱伝導率が高い金属部材を採用することで、冷蔵室第一風路120側の冷熱が冷蔵室第二風路110の空気に伝わりやすくなるので、効率よく伝熱部材200を介した冷却を行うことができる。また、他の実施例として、伝熱部材200を樹脂(例えばABS樹脂)で形成することもできる。この場合は、よりコストを抑えて伝熱部材200を形成することが可能となる。すなわち伝熱部材200は、冷蔵室第一風路120側の冷熱を冷蔵室第二風路110の空気に伝える機能を果たすものであれば良く、材質や形状は限定されない。また、第二風路部材210及び第一風路部材220に関しても、伝熱部材200を介して隔てられた冷蔵室第二風路110及び冷蔵室第一風路120を形成できれば良く、材質、形状、組み立て方式は限定されない。
【0046】
図6は、実施例1に係る冷蔵庫1の冷凍サイクルの構成図である。
本実施例の冷蔵庫1は、圧縮機24、冷媒の放熱を行う庫外放熱器50a(放熱手段)、断熱箱体10の左右側面に配置された壁面放熱配管50b(外箱10aと内箱10bとの間の領域の外箱10aの内面に配置された放熱手段)、断熱仕切壁27,28、仕切部29,30の前面部に配置され、結露を抑制する結露防止配管50c(断熱仕切壁27,28、仕切部29,30の内面に配置された放熱手段)、冷媒を減圧する減圧手段であるキャピラリチューブ53、及び、冷媒と庫内の空気を熱交換することで庫内の熱を吸熱する冷却器14を備えている。壁面放熱配管50b及び結露防止配管50cの内径は3.2mmであり、キャピラリチューブ53の内径は壁面放熱配管50b及び結露防止配管50cの内径の三分の一以下の0.7mmである。また、冷凍サイクル中の水分を除去するドライヤ51と、液冷媒の圧縮機24への流入を抑制する気液分離器54とを備えており、これらを冷媒配管により接続することで冷凍サイクルを構成している。キャピラリチューブ53と、冷却器14と圧縮機24とを接続する冷媒配管とは、冷媒の熱交換を行う熱交換部57を備えている。
【0047】
次に、本実施例の冷蔵庫1の冷凍サイクルにおける冷媒の流れについて説明する。本実施例の冷蔵庫1では、圧縮機24が駆動すると冷媒が圧縮されて、高温高圧のガス冷媒となり庫外放熱器50aに入る。庫外放熱器50aはフィンチューブ式熱交換器である。庫外放熱器50aにおいては、図示しない庫外ファンによる通風によって冷媒から熱が奪われてエンタルピが減少し、二相状態となって壁面放熱配管50bに流入する。断熱箱体10の両側面に配置された壁面放熱配管50bでは、断熱箱体10の外壁を介して主に庫外の空気に冷媒から放熱が行われる。続いて、断熱仕切壁27,28及び仕切部29,30の前面部に配置された結露防止配管50cに冷媒が入る。断熱仕切壁27,28及び仕切部29,30の前方には断熱性を有する扉が備えられているために、冷媒は結露防止配管50cにおいて主に庫内の空気に放熱して液冷媒となり、ドライヤ51を流れて水分が除去された後に、キャピラリチューブ53に至る。
【0048】
キャピラリチューブ53では冷媒が減圧されて、低温低圧の二相冷媒になり冷却器14の入口に至る。冷凍室ファン9aの駆動によって、庫内の各貯蔵室から戻った空気が冷却器14を通過することで、冷却されて低温になり、再び庫内の各貯蔵室の冷却を行う。このとき、本実施例の冷蔵庫の冷蔵室2に関しては、冷蔵室第一風路120を流れる冷気の冷熱を、伝熱部材200を介して間接的に冷蔵室第二風路110に伝えて冷却する運転を実施するので、直接冷気を送る場合よりも冷熱を供給し難く冷却能力が不足しやすくなる。そこで、本実施例の冷蔵庫1では、キャピラリチューブ53の内径を壁面放熱配管50b及び結露防止配管50cの内径の三分の一以下として、十分な抵抗による減圧を行うようにして冷却器14の温度を下げ、冷蔵室第一風路120に供給される冷気の温度を十分低温として冷蔵室2を冷却できるようにしている。
【0049】
冷媒は、冷却器14において庫内の空気と熱交換してエンタルピが上昇するとともに渇き度が上がり、略飽和ガス冷媒となり冷却器14の出口に至る。冷却器14の出口から、圧縮機24に戻る配管の一部は、キャピラリチューブ53と熱交換するように近接して設けられており、キャピラリチューブ53内の冷媒によって加熱されてエンタルピが上昇して、再び圧縮機24に吸い込まれる。熱交換部57を備えることにより、圧縮機24に吸い込まれる冷媒の温度が上昇して、冷媒配管への結露や着霜が防止できるとともに、熱交換によって冷却器14に流入する冷媒のエンタルピが低下して、冷却器14における冷却能力が向上するようになる。なお、冷凍サイクルに封入される冷媒は可燃性冷媒のイソブタンである。
【0050】
図7は、実施例1に係る冷蔵庫1の冷凍室ダンパ170の構成を表す図である。
冷凍室ダンパ170は、モータ収納部170aと開口170bとを備えている。開口170bは、開閉板170cによって開閉される。具体的には、モータ収納部170a内に設置されたステッピングモータ(図示せず)によって開閉板170cが開角度0度の閉鎖状態から開角度90度の全開放状態の範囲で制御可能となっており、開閉板170cを開確度45度の半開放状態とすることも可能である。開閉板170cの開口170bと対向する側の面には、図示しないシール部材が配設されており、閉鎖状態において開口170bと開閉板170cとの間に隙間が形成されることを抑制している。
【0051】
図8は、実施例1に係る冷蔵庫1の送風モードと風量の関係を示す表である。
図8に示す各送風モードにおいて、冷凍室ファン9aは1600min-1で駆動、圧縮機は1500min-1で駆動、冷蔵室第二ダンパ151は閉鎖、野菜室ダンパ160は閉鎖状態となっている。送風モードAでは、冷蔵室第一ダンパ152を閉鎖状態、冷凍室ダンパ170を開放状態(全開放状態)として、冷凍室60に0.55m/minの風量を供給する。送風モードBでは、冷蔵室第一ダンパ152を開放状態(全開放状態)、冷凍室ダンパ170を開放状態(全開放状態)として、冷蔵室第一風路120に0.10m/min、冷凍室60に0.50m/minの風量を供給する。送風モードCでは、冷蔵室第一ダンパ152を開放状態(全開放状態)、冷凍室ダンパ170を半開放状態(開角度45度)として、冷蔵室第一風路120に0.15m/min、冷凍室60に0.25m/min,の風量を供給する。送風モードDでは、冷蔵室第一ダンパ152を開放状態(全開放状態)、冷凍室ダンパ170を閉鎖状態として、冷蔵室第一風路120に0.15m/min、冷凍室60に0.25m/min、の風量を供給する。送風モードB,C,Dに示すように、冷凍室60の風路抵抗調整装置である冷凍室ダンパ170の開度を下げることによって、冷凍室60に供給される風量の割合を減少させて、冷蔵室第一風路120に供給される風量を増加させている。
【0052】
なお、各送風モードにて冷却運転を実施している間における冷却器14の時間平均温度は、送風モードAでは-25℃、送風モードBでは-22℃、送風モードCでは-20℃、送風モードDでは-16℃である。これらの送風モードに加え、冷蔵室2が過負荷状態にある場合には、冷蔵室第二ダンパ151を開放状態とする送風モードや、野菜室6の温度が上昇して冷却が必要になった場合に使われる野菜室ダンパ160を開放状態にする送風モードも、庫内の冷却状態に基づいて適宜用いられる。また、冷蔵室第二ダンパ151、冷蔵室第一ダンパ152、冷凍室ダンパ170及び野菜室ダンパ160の開口面積は、それぞれ950mm、1800mm、6300mm及び560mmである。さらに、各ダンパの閉鎖状態は、流路を完全に遮断した状態だけに限られず、僅かな隙間が空く状態(例えば、全開放状態のときと比べて風量が10%以下となる状態)も含むものとする。
【0053】
図9は、実施例1に係る冷蔵庫1の制御装置70の構成を示すブロック図である。
冷蔵庫1の背面下部の機械室39には、制御装置70A(図2参照)が配設される。制御装置70Aは、CPU71、ROMやRAM等のメモリ72、タイマー73、入力インターフェース74及び出力インターフェース75を含むインターフェース回路等を搭載した制御基板を有する。制御装置70Aの制御基板は、外気温度センサ37、外気湿度センサ38、冷蔵室温度センサ41、冷凍室温度センサ43、野菜室温度センサ44、冷却器温度センサ40等と電気配線76で接続されている。制御装置70Aでは、各センサの出力値や操作部26の設定、メモリ72のROMに予め記録されたプログラム等を基に、圧縮機24や冷凍室ファン9a,9bのON/OFFや回転速度制御を行うほか、冷蔵室第二ダンパ151、冷蔵室第一ダンパ152、野菜室ダンパ160及び冷凍室ダンパ170の開閉制御や、除霜ヒータ21の制御を行っている。このために、除霜ヒータ21、圧縮機24、冷凍室ファン9a,9b、冷凍室ダンパ170、野菜室ダンパ160、冷蔵室第二ダンパ151及び冷蔵室第一ダンパ152は、電気配線77で制御装置70Aに接続されている。
【0054】
図4で説明した冷気の流れの制御は、冷凍室ファン9a,9b、冷蔵室第二ダンパ151、冷蔵室第一ダンパ152及び冷凍室ダンパ170を制御装置70Aで制御することにより実行される。また、制御装置70は、上述した冷蔵室ファン9bの駆動時間を制御する場合、タイマー73を参照する。なお、駆動時間を計測する手段はタイマー73に限定されない。
【0055】
以上で、本実施例の冷蔵庫1の構成を説明したが、次に、本実施例の冷蔵庫1の奏する効果について説明する。
【0056】
本実施例の冷蔵庫1は、冷却器14と、冷蔵温度帯の第一貯蔵室(冷蔵室)2と、冷凍温度帯の第二貯蔵室(冷凍室)60と、第一貯蔵室(冷蔵室)2を冷却する冷気を流通させる第一風路(冷蔵室第一風路)120と、第一貯蔵室(冷蔵室)2と第一風路120との間、具体的には冷蔵室第一風路120と冷蔵室第二風路110との間に配置される冷却体(伝熱部材)200と、冷却器14の冷気を第一風路120、第一貯蔵室(冷蔵室)2及び第二貯蔵室(冷凍室)60のそれぞれに向けて送風する送風機(第一送風機:冷凍室ファン)9aと、第一送風機(冷凍室ファン)9aとは別に設けられ、第一送風機(冷凍室ファン)9aから第二貯蔵室(冷凍室)60に向かう風量の割合を減少させて、第一送風機(冷凍室ファン)9aから第一風路(冷蔵室第一風路)120に向かう風量を増加させる風量調整装置152,170と、を備えている。すなわち本実施例の冷蔵庫1は、送風機(第一送風機)9aの総風量に対する第二貯蔵室60への風量の割合を減少させ、かつ、送風機(第一送風機)9aから第一風路(冷蔵室第一風路)120への風量を増加させる風量調整装置152,170と、を備える。
【0057】
これにより、伝熱部材200を介した熱伝達によって冷蔵室2を好適に冷却しつつ、冷蔵室2以外の貯蔵室を冷やしすぎるといった事態を生じ難くした冷蔵庫1を提供することができる。理由を以下で説明する。
【0058】
例えば特許文献1には、仕切体(伝熱部材)を介した熱伝達によってワイン室を好適に冷却する冷蔵庫が開示されているが、ワイン室は冷蔵室に比べて維持温度が高いために冷却負荷が小さい。このことは、標準的な使い方を想定して定められた消費電力量測定時の目標温度として、JISC9801-3:2015に、ワイン室(ワイン貯蔵室)は12℃,冷蔵室は4℃と定められていることからも明らかである。したがって、伝熱部材を介した熱伝達によってワイン室であれば好適に冷却できる構成であっても、冷蔵室の冷却に採用する場合、より低温に冷却する必要があることから、冷却能力が不足することがある。特に庫外温度が比較的高い場合や、扉開閉が頻繁に行われる等により庫内負荷が増えた場合には、冷却能力の不足が顕著となり、冷蔵室を好適な温度に維持できなくなる。そこで、冷却能力向上の一般的な手段として、冷却器と熱交換した空気を庫内に循環させるファンの送風量を増やすように回転速度を上げたり、圧縮機の回転速度を上げたりすることが考えられる。しなしながら、これらの手段により冷蔵室の冷却能力を向上すると、他の貯蔵室に供給される冷却能力も向上するため、他の貯蔵室を過剰に冷却することになる。
【0059】
そこで、本実施例の冷蔵庫1では、上述の構成を採用することにより、冷凍室60に向かう風量の割合を減少させて、冷蔵室第一風路120に向かう風量を増加させることができるので、 伝熱部材200を介した熱伝達を向上しつつ、冷凍室60への送風を抑制でき、庫外温度が比較的高い場合や、扉開閉が頻繁に行われる等により冷蔵室2の庫内負荷が増えた場合であっても、冷蔵室2を好適に冷却しつつ、冷蔵室2以外の貯蔵室(冷凍室60)を冷やしすぎるといった事態を生じ難くすることができる。
【0060】
本実施例の冷蔵庫1は、風量調整手段として冷凍室ファン9aから冷凍室60に至る経路に、風路抵抗可変手段である冷凍室ダンパ170を備えている。すなわち本実施例の冷蔵庫1は、風量調整装置として、第二貯蔵室(冷凍室)60への風路抵抗を調整する風路抵抗調整装置を備え、この風路抵抗調整装置は冷凍室ダンパ170で構成することができる。冷凍室ダンパ170は、第二貯蔵室(冷凍室)60に至る経路の風路抵抗を可変する手段であるので、第二貯蔵室ダンパと呼んで説明する場合がある。
【0061】
冷凍室ダンパ170は、開度により風路抵抗を調整でき、開度を下げることで、冷凍室60へ向かう風量の割合を減少させて、冷蔵室第一風路120に向かう風量を増加させることができるので、複雑な機構を設けることなく、伝熱部材200を介した熱伝達によって冷蔵室2を好適に冷却しつつ、冷蔵室2以外の貯蔵室を冷やしすぎるといった事態を生じ難くした冷蔵庫1を提供することができる。
【0062】
また、冷凍室60へ向かう風量の割合を減少させて、冷蔵室第一風路120に向かう風量を増加させる手段は、冷蔵室第一ダンパ152で構成することもできる。このために本実施例の冷蔵庫1は、冷蔵室第一風路120の風路抵抗可変手段である冷蔵室第一ダンパ152と、冷蔵室第一ダンパ152より開口面積の大きい冷凍室ダンパ170とを備えるようにするとよい。冷蔵室第一ダンパ152は、第一貯蔵室(冷蔵室)2の冷却風路である冷蔵室第一風路120、或いはこの冷蔵室第一風路120に至る経路の風路抵抗を可変する手段であるので、第一風路ダンパと呼んで説明する場合がある。
【0063】
以上のことから本実施例の冷蔵庫1は、風量調整装置として、第一風路120への風路抵抗を調整する第一風路ダンパ152と、第二貯蔵室60への風路抵抗を調整する第二貯蔵室ダンパ170と、を備える。この場合、第一風路ダンパ152の開口面積より、第二貯蔵室ダンパ170の開口面積を大きくするとよい。
【0064】
冷蔵室第一ダンパ152を備えることで、冷蔵室2の庫内負荷が比較的小さい場合には、冷蔵室第一ダンパ152の開度を下げることで冷蔵室2が過度に冷却されないように調節できるとともに、より低温に冷却される冷凍室60の風路抵抗可変手段である冷凍室ダンパ170の開口面積を、冷蔵室第一ダンパ152の開口面積よりも大きくすることで、冷凍室60の負荷が大きい場合には、冷蔵室第一風路120を流れる風量より多くの冷気を冷凍室60に供給しやすくなり、冷蔵室2及び冷凍室60の両方を好適に冷却できるようになる。
【0065】
本実施例の冷蔵庫1は、冷蔵室第二ダンパ151と、冷蔵室第一ダンパ152と、冷凍室ダンパ60と、野菜室ダンパ160とを備え、冷蔵室第二ダンパ151と、冷凍室ダンパ60と、野菜室ダンパ160とを閉鎖状態として、冷蔵室第一ダンパ152を開放状態とすることで、冷却器冷蔵室第一風路120に冷却器14の冷気を集中的に流すことができる。これにより、冷蔵室2の負荷がより大きい場合であっても、伝熱部材200を介した熱伝達によって冷蔵室2を好適に冷却することができる。
【0066】
本実施例の冷蔵庫1は、冷蔵室第一ダンパ152を開放状態、冷凍室ダンパ170を閉鎖状態として冷凍室ファン9aを所定速度で駆動した場合に冷蔵室第一風路120に供給される風量をQ1、冷蔵室第一ダンパ152を閉鎖状態、冷凍室ダンパ170を開放状態として、冷凍室ファン9aを前記所定速度で駆動した場合に冷凍室60に供給される風量をQ2とすると、Q1<Q2を満足するようにしている(図8)。
【0067】
すなわち本実施例の冷蔵庫1は、第一風路ダンパ(冷蔵室第一ダンパ)152を開放状態、第二貯蔵室ダンパ(冷凍室ダンパ)170を閉鎖状態として、送風機(冷凍室ファン)9aを所定速度で駆動した場合に第一風路(冷蔵室第一風路)120に供給される風量をQ1とし、第一風路ダンパ152を閉鎖状態、第二貯蔵室ダンパ170を開放状態として、送風機9aを所定速度で駆動した場合に第二貯蔵室(冷凍室)60に供給される風量をQ2とした場合に、Q1<Q2を満足する冷却運転を行う。
【0068】
冷蔵室2の負荷が大きい場合に冷蔵室第一風路120に供給する風量を大きくすることで、冷蔵室2を好適に冷却することができるが、冷蔵室第一風路120に供給した冷気は、伝熱部材200を介して冷蔵室2内の空気と熱交換して冷凍室60の背部の冷却器室18に戻る。このとき、冷蔵室第一風路120から戻る空気の風量が大きいと、冷却器室8の温度が上昇して、前方の冷凍室60の温度を上昇させる。一方、冷凍室60に供給する冷気の量は多くても冷却器室8の温度が上昇することはなく、冷凍室60の温度を上げることはない。したがって、Q1<Q2とすることで、冷蔵室第一風路120から戻る空気の作用で冷凍室60の温度を上昇させ難くなり、冷蔵室2及び冷凍室60の両方を好適に冷却できるようになる。
【0069】
本実施例の冷蔵庫1は、冷蔵室第一ダンパ152を開放状態、冷凍室ダンパ170を閉鎖状態として冷凍室ファン9aを所定速度で駆動した場合に冷蔵室第一風路120に供給される風量をQ1、冷蔵室第一ダンパ152を閉鎖状態、冷凍室ダンパ170を開放状態として、冷凍室ファン9aを前記所定速度で駆動した場合に冷凍室60に供給される風量をQ2、冷蔵室第一ダンパ152を開放状態、冷凍室ダンパ170を開放状態として冷凍室ファン9aを前記所定速度で駆動した場合に冷蔵室第一風路120に供給される風量をQ3、冷凍室60に供給される風量をQ4とすると、Q3<Q1<Q4<Q2を満足するようにしている(図8)。
【0070】
すなわち本実施例の冷蔵庫1は、第一風路ダンパ(冷蔵室第一ダンパ)152を開放状態、第二貯蔵室ダンパ(冷凍室ダンパ)170を開放状態として、送風機(冷凍室ファン)9aを前記所定速度で駆動した場合に、第一風路(冷蔵室第一風路)120に供給される風量をQ3とし、第二貯蔵室(冷凍室)60に供給される風量をQ4とした場合に、Q3<Q1<Q4<Q2を満足する冷却運転を行う。
【0071】
冷蔵室第一ダンパ152と冷凍室ダンパ170とを共に開放状態とする場合、冷蔵室第一風路120から戻る空気は、冷却器14と熱交換した後に、開放された冷凍室ダンパ170を介して一部が冷凍室60に直接供給されることになる。このため、冷蔵室第一風路120の風量Q3が大きいと、冷凍室60の温度をより上昇させやすくなる。そこで、冷蔵室第一ダンパ152と冷凍室ダンパ170を共に開放状態とする場合の冷蔵室第一風路120の風量Q3を、冷蔵室第一ダンパ152を開放状態、冷凍室ダンパ170を閉鎖状態として冷凍室ファン9aを所定速度で駆動した場合に冷蔵室第一風路120に供給される風量をQ1より小さくなるようにして、冷却器室8の温度を上昇させて、冷凍室60の温度を上げることがないように、冷凍室60への風量Q4,Q2より小さくすることが有効となる。一方、冷蔵室第一風路120に供給される風量は、冷凍室ダンパ170を開放状態から閉鎖状態に開度を下げることで、冷凍室60への風量を減少させ、冷蔵室第一風路120への風量を増加させることが冷蔵室2の負荷が大きい場合に有効となるので、Q1~Q4を、Q3<Q1<Q4<Q2を満足するようにすることで、冷蔵室2及び冷凍室60の両方を好適に冷却できるようになる。
【0072】
[実施例2]
次に、本発明に関する冷蔵庫の第二実施例(実施例2)について図10図15を用いて説明する。なお,実施例1と同様の構成には実施例1と同じ符号を用い、重複する説明を省略する。
【0073】
図10は実施例2に係る冷蔵庫1の縦断面図、図11は実施例2に係る冷蔵庫1の庫内の構成を示す正面図である。
図10及び図11に示すように、本実施例の冷蔵庫1も、冷蔵室2の背面に設けられた冷蔵室第二風路110と、冷蔵室第二風路110の後方に設けられ、隔壁を隔てて隣接する冷蔵室第一風路120とを備えており、冷蔵室第二風路110と冷蔵室第一風路120との間の隔壁は、伝熱部材200により形成されている。冷蔵室第二風路110内の空気と、冷蔵室第一風路120内の空気とは伝熱部材200を介して熱交換する。また、本実施例の冷蔵庫1は、実施例1と異なり、冷蔵室第一風路120の上部に,冷蔵室第一風路120を流れる風量と、冷凍室60に供給される風量とを調整する手段(風量調整手段)として、昇圧手段である昇圧ファン9cを備えている。すなわち本実施例の冷蔵庫1は、風量調整装置として、第一風路(冷蔵室第一風路)120に昇圧装置としての昇圧ファン9cを備える。
【0074】
冷蔵庫1は、下段冷凍室5の背部に、冷却器14が収納された冷却器室8を備え、冷却器室8の上部には、冷凍室ファン9aを備えている。実施例1と異なり、冷凍室ファン9aの吹き出し領域には冷凍室風路100を備えており、冷凍室風路100は、前方の製氷室3、上段冷凍室4及び下段冷凍室5に冷気を吹き出す製氷室吹き出し口100a、上段冷凍室吹き出し口100b及び下段冷凍室吹き出し口100cをそれぞれ備えている。また冷凍室風路100の構成の相違により、実施例1の冷凍室ダンパ170は本実施例では設けられていない。
【0075】
さらに、冷蔵庫1は、実施例1と異なり、冷凍室60(製氷室3、上段冷凍室4及び下段冷凍室5)の背部の冷凍室風路100左下部から下方に向けて野菜室風路132を備え、野菜室風路132の出口には野菜室吹き出し口133を備えている。
【0076】
図12は、実施例2に係る冷蔵庫1の風路構成を表す模式図である。
図12に示すように冷蔵庫1においては、冷却器室8で冷却器14と熱交換した冷気は、冷凍室ファン9aによって昇圧されて、冷凍室風路100に送られる。冷凍室風路100に送られた冷気は、冷蔵室第二ダンパ151、冷蔵室第一ダンパ152及び野菜室ダンパ160の開閉状態によらず、製氷室吹き出し口100a、上段冷凍室吹き出し口100b及び下段冷凍室吹き出し口100cから、それぞれ製氷室3、上段冷凍室4及び下段冷凍室5に吹き出す。製氷室3、上段冷凍室4及び下段冷凍室5を冷却した冷気は、それぞれの貯蔵室を冷却して、下段冷凍室5から冷凍室戻り風路105を介して冷却器室8に戻る。
【0077】
次に、冷気の流れを説明する。圧縮機24が駆動され、冷却器14に冷媒が供給されている状態で、冷蔵室第二ダンパ151が閉鎖状態、冷蔵室第一ダンパ152が開放状態、冷凍室ファン9aが駆動状態、冷蔵室ファン9bが駆動状態に制御された場合、冷凍室ファン9aによって昇圧された冷気は、冷凍室60(製氷室3、上段冷凍室4及び下段冷凍室5)に送られるとともに、冷蔵室第一風路120を流れて、伝熱部材200を介して、冷蔵室第二風路110内の空気と熱交換して、冷蔵室戻り風路130を流れ、冷却器室8に戻る。一方、伝熱部材200を介して冷蔵室第一風路120内の冷気と熱交換し、低温となった冷蔵室第二風路110内の空気は、冷蔵室ファン9bの駆動によって冷蔵室吹き出し口111a,111bから吹き出し、冷蔵室2を冷却する。冷蔵室2を冷却した冷気は、冷蔵室第二風路戻り口115から冷蔵室第二風路110に戻る。この運転により、冷却器14と熱交換した低温で低湿な冷気を、冷蔵室2の内部に送ることなく、伝熱部材200を介した間接的な冷却によって冷蔵室2を冷却できるので、冷蔵室2内を高湿に保つことができる。
【0078】
さらに、冷蔵室2を冷却する運転状態において、冷蔵室第一風路120の昇圧ファン9cを駆動すると、冷蔵室第一風路120内の空気が昇圧されるために、冷凍室ファン9aによって昇圧された冷気のうち、冷蔵室第一風路120を流れる風量が増加するとともに冷凍室60を流れる風量が減少し、伝熱部材200を介した熱伝達が促進され、冷蔵室2の負荷が大きい状態に対応した冷却能力を供給できる。
【0079】
このように、昇圧ファン9cを、冷凍室ファン9aから冷蔵室第一風路120に向かう風量を増加させ、かつ、冷凍室ファン9aから冷凍室60に向かう風量を減少させる風量調整手段として用いることで、冷蔵室2の負荷が大きい状態に対応して、伝熱部材200を介した熱伝達によって冷蔵室2を好適に冷却しつつ、冷蔵室2以外の貯蔵室を冷やしすぎるといった事態を生じ難い冷蔵庫1を提供することができる。
【0080】
図13は、実施例2に係る冷蔵庫1の制御装置70Bの構成を示すブロック図である。
本実施例の制御装置70Bは、実施例1に対して、冷凍室ダンパ170が設けられておらず、昇圧ファン9cが新たに設けられている。
【0081】
図14は、実施例2に係る冷蔵庫1の冷蔵室風路を表す分解斜視図である。
【0082】
図14に示すように、冷蔵室2の背部に形成される冷蔵室第二風路110及び冷蔵室第一風路120は、第二風路部材210と、第一風路部材220と、第二風路部材210と第一風路部材220との間に設置される伝熱部材200と、昇圧ファン9cを取り付けるファン保持部材230とを備える。第二風路部材210は、前面に冷蔵室吹き出し口111a,111bを備え、背面に伝熱部材200が取り付けられる開口部210aを備えている。第一風路部材220は、その前面に開口部220aを備えており、伝熱部材200が取り付けられた第二風路部材210と一体に組み合わされることで、冷蔵室第二風路110と冷蔵室第一風路120とが、伝熱部材200を介して隔てられた状態となる。
【0083】
第一風路部材220の上部左側には、昇圧ファン9cを保持した状態のファン保持部材230が着脱可能に取り付けられる。伝熱部材200は樹脂(例えばABS樹脂)で形成しており、ファン保持部材230が設置される高さ位置の部分が前方に突出している。これに対応する高さ位置において、第二風路部材210の上部も前方に突出する構造としている。
【0084】
第一風路部材220は、冷蔵室第一風路120の内部に往流路120aと還流路120bとを形成する仕切部材121を備えている。これにより、冷蔵室第一ダンパ152(図10図11及び図12参照)が開放状態の場合には、第一風路部材220、ファン保持部材230に矢印で示すように、冷蔵室第一風路120の左側に形成された往流路120aを上方に向けて流れた冷気が、昇圧ファン9cに入り、昇圧ファン9cから出た流れは、右方に向かって流れて、冷蔵室第一風路120の右側の還流路120bに入り、下方に流れる。このように昇圧ファン9cを設置する高さ位置の伝熱部材200(隔壁)の部分を前方に突出させて、その下方においては、風路の奥行寸法を抑えた構造にすることで、昇圧ファン9cの設置に伴うスペースの減少が冷蔵室2の最上段棚34a後方の手が届き難い領域に限られるので、使い勝手の低下を抑えた冷蔵庫とすることができる。
【0085】
図15は、実施例2に係る冷蔵庫1の送風モードと風量との関係を示す表である。
図15に示す各送風モードにおいて、冷凍室ファン9aは1600min-1で駆動、圧縮機は1500min-1で駆動、冷蔵室第二ダンパ151は閉鎖、野菜室ダンパ160は閉鎖状態となっている。送風モードAでは、冷蔵室第一ダンパ152を閉鎖状態、昇圧ファン9cを停止状態として、冷凍室60に0.55m/minの風量を供給する。送風モードBでは、冷蔵室第一ダンパ152を開放状態(全開放状態)、昇圧ファン9cを駆動状態(1400min-1)として、冷蔵室第一風路120に0.10m/min、冷凍室60に0.50m/minの風量を供給する。送風モードCでは、冷蔵室第一ダンパ152を開放状態(全開放状態)、昇圧ファン9cを駆動状態(1400min-1)として、冷蔵室第一風路120に0.25m/min、冷凍室60に0.45m/minの風量を供給する。送風モードB,Cに示すように、昇圧手段である昇圧ファン9cを停止状態から駆動状態とすることによって、冷凍室60に供給される風量の割合を減少させて、冷蔵室第一風路120に供給される風量を増加させている。これにより、伝熱部材200を介した熱伝達によって冷蔵室2を好適に冷却しつつ、冷蔵室2以外の貯蔵室を冷やしすぎるといった事態を生じ難くした冷蔵庫を提供することができる。
【0086】
なお、各送風モードにて冷却運転を実施している間における冷却器14の時間平均温度は、送風モードAでは-25℃、送風モードBでは-22℃、送風モードCでは-18℃である。これらの送風モードに加え、冷蔵室2が過負荷状態にある場合には、冷蔵室第二ダンパ151を開放状態とする送風モード、野菜室6の温度が上昇して冷却が必要になった場合に使われる野菜室ダンパ160を開放状態にする送風モードも庫内の冷却状態に基づいて適宜用いられる。
【0087】
本実施例の冷蔵庫1は、冷蔵室第一ダンパ152を開放状態、冷凍室ファン9aを第一所定速度で駆動、昇圧ファン9cを第二所定速度で駆動した場合に冷蔵室第一風路120に供給される風量をQ21、冷凍室60に供給される風量をQ22とすると、Q21<Q22を満足するようにしている(図15のC)。
【0088】
すなわち本実施例の冷蔵庫1では、送風機(冷凍室ファン)9a及び昇圧装置(昇圧ファン)9cを駆動した場合に、第一風路(冷蔵室第一風路)120に供給される風量をQ21、第二貯蔵室(冷凍室)60に供給される風量をQ22とした場合に、Q21<Q22を満足する冷却運転を行う。
【0089】
冷蔵室2の負荷が大きい場合に冷蔵室第一風路120に供給する風量を大きくすることで、冷蔵室2を好適に冷却することができるが、冷蔵室第一風路120に供給した冷気は、伝熱部材200を介して冷蔵室2内の空気と熱交換して冷凍室60の背部の冷却器室8に戻る。このとき、冷蔵室第一風路120から戻る空気の風量が大きいと、冷却器室8の温度が上昇して、前方の冷凍室60の温度を上昇させる。一方、冷凍室60に供給する冷気の量は大きくても冷却器室8の温度が上昇し、冷凍室60の温度を上げることはない。したがって,Q21<Q22とすることで、冷蔵室第一風路120から戻る空気の作用で冷凍室60の温度を上昇させ難くなり、冷蔵室2と冷凍室60をともに好適に冷却できるようになる。
【0090】
本実施例の冷蔵庫は1、冷蔵室第一ダンパ152を開放状態、冷凍室ファン9aを第一所定速度で駆動、昇圧ファン9cを第二所定速度で駆動した場合に冷蔵室第一風路120に供給される風量をQ21、冷凍室60に供給される風量をQ22とし(図15のC)、冷蔵室第一ダンパ152を開放状態、冷凍室ファン9aを前記第一所定速度で駆動、昇圧ファン9cを停止した場合に冷蔵室第一風路120に供給される風量をQ23、冷凍室60に供給される風量をQ24とすると(図15のB)、Q23<Q21<Q22<Q24を満足するようにしている(図15のB,C)。
【0091】
すなわち本実施例の冷蔵庫1では、送風機(冷凍室ファン)9aを所定速度で駆動し、昇圧装置(昇圧ファン)9cを駆動しない場合に、第一風路(冷蔵室第一風路)120に供給される風量をQ23、第二貯蔵室(冷凍室)60に供給される風量をQ24とした場合に、Q23<Q21<Q22<Q24を満足する冷却運転を行う。
【0092】
冷蔵室第一ダンパ152を開放状態として、冷凍室ファン9aを駆動する場合、冷蔵室第一風路120から戻る空気は、冷却器14と熱交換した後に、開放された冷凍室ダンパ170を介して一部が冷凍室60に直接供給されることになる。このため、冷蔵室第一風路120の風量Q23が大きいと、冷凍室60の温度をより上昇させやすくなる。そこで、冷蔵室第一ダンパ152を開放状態として、昇圧ファン9cを停止する場合の冷蔵室第一風路120の風量Q23を、冷蔵室第一ダンパ152を開放状態、昇圧ファン9cを第二所定速度で駆動する場合の風量Q21より小さくなるようにして、冷却器室8の温度が上昇して冷凍室60の温度を上げることがないように、冷凍室60への風量Q22より小さくすることが有効となる。一方、冷蔵室第一風路120に供給される風量は、昇圧ファン9cを駆動して、冷凍室60への風量を減少させ、冷蔵室第一風路120への風量を増加させることが冷蔵室2の負荷が大きい場合に有効となるので、Q21~Q24を、Q23<Q21<Q22<Q24を満足するようにすることで、冷蔵室2及び冷凍室60の両方を好適に冷却できるようになる。
【0093】
なお、本発明は上記した各実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0094】
1…冷蔵庫、2…冷蔵室、3…製氷室、4…上段冷凍室、5…下段冷凍室、6…野菜室、8…冷却器室、9a…冷凍室ファン、9b…冷蔵室ファン、9c…昇圧ファン(風量調整装置,昇圧装置)、10…断熱箱体、10a…外箱、10b…内箱、14…冷却器、24…圧縮機、25…真空断熱材、27,28…断熱仕切壁、29,30…仕切部、70…制御装置、39…機械室、110…冷蔵室第二風路、111…冷蔵室吹き出し口、115…冷蔵室第二風路戻り口、120…冷蔵室第一風路、130…冷蔵室戻り風路、131…冷蔵室戻り口、150…冷蔵室ダンパ(風量調整装置、風路抵抗調整装置)、151…冷蔵室第二ダンパ(風量調整装置、風路抵抗調整装置)、152…冷蔵室第一ダンパ(風量調整装置、風路抵抗調整装置)、160…野菜室ダンパ(風量調整装置、風路抵抗調整装置)、170…冷凍室ダンパ(風量調整装置、風路抵抗調整装置)、200…伝熱部材。
図1
図2
図3
図4
図5
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図9
図10
図11
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図15