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  • 特開-接続不良検出装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023104342
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】接続不良検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/54 20200101AFI20230721BHJP
   G01R 31/66 20200101ALI20230721BHJP
   H01H 83/02 20060101ALN20230721BHJP
【FI】
G01R31/54
G01R31/66
H01H83/02 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022005269
(22)【出願日】2022-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(74)【代理人】
【識別番号】100124420
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 清隆
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智晴
【テーマコード(参考)】
2G014
5G030
【Fターム(参考)】
2G014AA13
2G014AA14
2G014AB33
2G014AB43
2G014AC18
5G030YY12
(57)【要約】
【課題】 電路電流が大きい状態で接続不良が発生しても、発熱温度が高温になる前に接続不良を検出できる接続不良検出装置を提供する。
【解決手段】 接続不良発生を判断する閾値電圧を電路電流に応じて変動させる感度設定部4と、電源側端子2aと負荷側端子2bとの間の電位差を監視して閾値電圧と比較判定する電位差判定部5と、交流電源10と同位相の調整電流を生成して、電源側端子2aと負荷側端子2bの間に、交流電源10から供給される電流に追加して流す電流生成部3と、電源側端子2aと負荷側端子2bとの間に流れる全電流を計測する第1変流器7と、接続不良発生を通知する表示装置6とを有し、感度設定部は、第1変流器7の計測電流値に反比例させて閾値電圧を生成すると共に、電位差判定部5は、電源側端子2aと負荷側端子2bとの間の電位差が、感度設定部4が設定した閾値電圧を超えたら、接続不良発生と判断する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷に交流電力を供給するために、交流電源が接続された電路に設けられた電路接続部の接続不良を検出する接続不良検出装置であって、
前記電路接続部は、電源側の電路が接続される電源側端子と、負荷側の電路が接続される負荷側端子とを有し、
接続不良発生を判断する閾値電圧を電路電流に応じて変動させる感度設定部と、
前記電源側端子と前記負荷側端子との間の電位差を監視して前記閾値電圧と比較判定する電位差判定部と、
前記交流電源と同位相の調整電流を生成して、前記電源側端子と前記負荷側端子の間に、前記交流電源から供給される電流に追加して流す調整電流生成部と、
前記電源側端子と前記負荷側端子との間に流れる全電流を計測する全電流計測部と、
接続不良発生を通知する通知部と、を有し、
前記感度設定部は、前記全電流計測部の計測電流値に反比例させて前記閾値電圧を生成すると共に、
前記電位差判定部は、前記電源側端子と前記負荷側端子との間の電位差が、前記感度設定部が設定した前記閾値電圧を超えたら、接続不良発生と判断することを特徴とする接続不良検出装置。
【請求項2】
前記調整電流生成部は、一定の大きさの電流を生成して前記電源側端子と前記負荷側端子の間に流すことを特徴とする請求項1記載の接続不良検出装置。
【請求項3】
前記調整電流生成部は、前記電源から負荷に供給される電路電流を計測する電路電流計測部と、前記電路接続部に通電させる電流の規定値を記憶する規定電流記憶部と、電流を生成して出力する電源部と、前記電源部の出力電流を制御する電流制御部と、を有し、
前記電流制御部は、前記電路接続部に流れる電流が前記規定値になるよう前記電源部を制御することを特徴とする請求項1記載の接続不良検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子部等の電路接続部の接続不良を検出する接続不良検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電線や導体バー等の電路を接続する電路接続部では、ネジの緩み、プラグの緩み等により接続不良が発生することがある。配電路や電力機器への電路等の比較的大電流を通電する接続部において接続不良が発生すると、接触抵抗の増大により発熱して機器が劣化し、更にはアーク放電が発生して最悪火災に至る場合がある。
そのため、これを回避するための接続不良の発生を検出する装置として、例えば特許文献1に開示された技術がある。特許文献1では、端子間の電位差でオン動作するようフォトカプラを配置して、このフォトカプラのオン動作により接続不良を検知させた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-145083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の接続不良を検出する技術は、端子間に発生する電圧降下が所定の値になったら接続不良発生と判断する構成となっている。この場合、接続部に流れる電流値は接続不良を判断する物理量ではないため、電圧降下量が同一であっても、接続不良発生と判断した時点での発熱量が様々であった。
例えば、判定する電圧降下量が1.0Vであるとすると、電路電流が5Aの場合、接触抵抗が0.2Ωとなったら1.0Vの電圧降下が発生する。また電路電流が25Aの場合、0.04Ωとなったら電圧降下は1.0Vとなる。一方、接続不良検出時の発生電力(発熱量)を見ると、電力=電圧×電流であるから、電路電流5Aでは5W、25Aでは25Wとなり、5倍の差が発生する。
このように、電圧降下量で検出する場合、電路電流が大きい場合は発熱量が大きくなるため、接続不良を検出した時点では既に危険な状態となってにる場合があった。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、電路電流が大きい状態で接続不良が発生しても、発熱温度が高温になる前に接続不良を検出できる接続不良検出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、負荷に交流電力を供給するために、交流電源が接続された電路に設けられた電路接続部の接続不良を検出する接続不良検出装置であって、電路接続部は、電源側の電路が接続される電源側端子と、負荷側の電路が接続される負荷側端子とを有し、接続不良発生を判断する閾値電圧を電路電流に応じて変動させる感度設定部と、電源側端子と負荷側端子との間の電位差を監視して閾値電圧と比較判定する電位差判定部と、交流電源と同位相の調整電流を生成して、電源側端子と負荷側端子の間に、交流電源から供給される電流に追加して流す調整電流生成部と、電源側端子と負荷側端子との間に流れる全電流を計測する全電流計測部と、接続不良発生を通知する通知部と、を有し、感度設定部は、全電流計測部の計測電流値に反比例させて閾値電圧を生成すると共に、電位差判定部は、電源側端子と負荷側端子との間の電位差が、感度設定部が設定した閾値電圧を超えたら、接続不良発生と判断することを特徴とする。
この構成によれば、接続不良発生を判定する閾値電圧は、電路接続部に流れる電流に反比例して設定されるため、電路電流が大きい状態で接続不良が発生しても、発熱温度が高温になる前に接続不良を検出でき、電路接続部に流れる電流の大きさに関わらず発熱温度が危険な温度になることがない。
また、電源から負荷に供給される電流が小さくても、調整電流を電路接続部に流すため、接続不良による電圧降下を電路電流のみによる場合より増大させることができ、接続不良を確実に検出できる。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の構成において、調整電流生成部は、調整電流生成部は、一定の大きさの電流を生成して電源側端子と負荷側端子の間に流すことを特徴とする。
この構成によれば、調整電流生成部が生成する電流値は一定であるため、簡易な回路で構成できる。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1に記載の構成において、調整電流生成部は、電源から負荷に供給される電路電流を計測する電路電流計測部と、電路接続部に通電させる電流の規定値を記憶する規定電流記憶部と、電流を生成して出力する電源部と、電源部の出力電流を制御する電流制御部と、を有し、電流制御部は、電路接続部に流れる電流が規定値になるよう電源部を制御することを特徴とする。
この構成によれば、電路接続部には例えば電路接続部の定格電流を常時流すことができる。よって、常時大電流を流すことで接続不良を確実に検出できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、接続不良発生を判定する閾値電圧は、電路接続部に流れる電流に反比例して設定されるため、電路電流が大きい状態で接続不良が発生しても、発熱温度が高温になる前に接続不良を検出でき、電路接続部に流れる電流の大きさに関わらず発熱温度が危険な温度になることがない。
また、電源から負荷に供給される電流が小さくても、調整電流を電路接続部に流すため、接続不良による電圧降下を電路電流のみによる場合より増大させることができ、接続不良を確実に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る接続不良検出装置の一例を示す回路ブロック図である。
図2】電路電流と調整電流の関係を示す波形図であり、(a)は電路電流、(b)は調整電流、(c)は合成電流で電路接続部に流れる電流を示している。
図3】感度設定部が設定する閾値電圧と電路接続部に流れる電流の関係を示す図である。
図4】三相電路に設けた接続不良検出装置を示す回路ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明に係る接続不良検出装置の一例を示す回路ブロック図であり、単相の電路に設けた構成を示している。電路Lは、交流100V単相の商用電力から成る電源10の電力を負荷11に供給する2本の電線(第1電線L1、第2電線L2)から成る単相2線式の場合を示している。接続不良検出装置1は、この電路Lに取り付けられた電路接続部2に接続不良が発生したらそれを検出するよう構成されている。
【0012】
電路接続部2は、電源側端子2aと負荷側端子2bとを有し、電線L1,L2の2線からなる電路Lの双方に電路接続部2は設けられている。
電源側端子2a及び負荷側端子2bは、正常な状態では接触抵抗が無いか殆ど無い状態で連結されているが、接続不良が発生するとこの端子間の接触抵抗が増大して電路電流に比例する電圧降下が発生する。図1に示すrはこの接触抵抗を示している。
【0013】
また、Iは電路電流、I1は電路接続部2に流れる電流、I2は後述する電流生成部(調整電流生成部)3から送出される電流(調整電流)であり、これらの電流は次の関係を有している。
I1=I+I2
尚、I3は後述する第1変流器7が検出する電流を示し、それぞれの電流の矢印の方向は接続不良検出装置1が検出動作する際の電流の方向を示し、電源10の一方の極性となる半波の中で動作する。
また図1では、説明の都合上2組有する電源側端子2aと負荷側端子2bの組のうち、一方の組(第2電路L2の電路接続部2)のみに接続不良検出装置1を設けた場合を示しているが、実際には双方の組に接続不良検出装置は設置される。
【0014】
接続不良検出装置1は、調整電流を生成する電流生成部3、接続不良発生を判定する閾値を設定する感度設定部4、接続不良発生を判定する電位差判定部5、判定結果を表示する通知部としての表示装置6を有している。
また、7、8は電流計測手段を構成する変流器であり、7は電路接続部2に流れる電流を計測する第1変流器、8は電路Lの電流を計測する第2変流器である。第1変流器は7、電路接続部2でなく電路電流Iを計測する部位に設置されているが、電流生成部3が生成する調整電流I2が通電される電線を巻回することで、実質電路接続部2に流れる電流I1を計測するよう構成されている。
【0015】
電流生成部3は、電源10に同期して電路接続部2に通電する電流である調整電流I2を生成する電源部31、電路Lの電流を計測する電流計測部32、所定の電流値(規定値)を記憶する記憶部33、電源部31が生成する電流を制御する電流制御部34、電流生成部3を電路Lから絶縁する絶縁トランス35等を備えている。
尚、電源部31は、第2変流器8が計測した電路電流Iの位相情報を基に、同位相の一定の大きさの交流電流を生成する。
【0016】
調整電流I2は、絶縁トランス35を介して生成され、電源側端子2aと負荷側端子2bの間に供給される。また、この調整電流I2は第1変流器7にも供給される。
図2は、電路電流Iと調整電流I2の関係を示す波形図であり、(a)は電路電流I、(b)は調整電流I2、(c)は合成電流で電路接続部2に流れる電流I1を示している。
【0017】
電流計測部32は、第2変流器8の計測値を基に電路電流Iを算出する。また、記憶部33は、例えば電路接続部2に通電できる最大電流値である定格電流値を記憶している。
【0018】
電流制御部34は、調整電流I2のオン/オフを制御する。具体的に、電流計測部32が算出した電路電流情報を基に、電路接続部2に流れる電流I1が記憶部33に設定された電流値になったら、調整電流I2を停止させる制御を実施する。
こうして調整電流I2を電路接続部2に通電することで、電路電流Iが小さくても電路接続部2の接触抵抗rによる電圧降下量を大きくでき、接続不良の検出をし易くしている。
【0019】
感度設定部4は、接続不良発生を判断する閾値を設定する。具体的に、電路接続部2の電源側端子2aの電圧情報が入力される基準端子4aと、電路接続部2に流れる電流情報が入力される電流入力端子4bとから成る電流情報入力部41、閾値電圧V2を出力する閾値出力端子4cを有し、閾値出力端子4cからは電路接続部2を流れる電流I1に反比例して変化する電圧情報を出力する。
図3は、感度設定部4が設定する閾値電圧V2と電路接続部2に流れる電流I1の関係を示している。図3に示すように、閾値出力端子4cから出力される閾値電圧V2は、電路接続部2に通電される電流I1に反比例する値で出力される。尚、42は電源端子である。
【0020】
電位差判定部5は、接続不良発生を判断する。具体的に、電路接続部2の負荷側端子2bの電圧情報が入力される電圧入力端子5a、閾値電圧V2が入力される閾値入力端子5b、判定結果を出力する出力端子5cを有し、検出した電位差V1が入力された閾値電圧V2を超えたら出力端子5cから信号(接続不良発生信号)を出力する。尚、51は電源端子である。
【0021】
表示装置6は、LED等を備えた発光表示部、警報音発生部を有し、電位差判定部5が接続不良発生信号を出力したら、LEDの発光、ブザーの報音等の接続不良発生の通知動作を実施する。
【0022】
このように、接続不良発生を判定する閾値電圧は、電路接続部2に流れる電流に反比例して設定されるため、電路電流Iが大きい状態で接続不良が発生しても、発熱温度が高温になる前に接続不良を検出でき、電路接続部2に流れる電流の大きさに関わらず発熱温度が危険な温度になることがない。
また、電源10から負荷に供給される電流が小さくても、調整電流I2を電路接続部2に流すため、接続不良による電圧降下を電路電流Iのみによる場合より増大させることができ、接続不良を確実に検出できる。
更に、電流生成部3が生成する電流値は一定であるため、簡易な回路で済む。
【0023】
次に、接続不良検出装置1の他の形態を説明する。上記形態では電路接続部2に流す調整電流I2を一定値としているが、ここでは変動させている。
この場合、電流制御部34が、電流計測部32が算出した電路電流Iの情報を基に、電路電流Iの変化に関わらず、電路接続部2に流れる電流I1が記憶部33に設定された電流となるよう電源部31を制御して調整電流I2を変更制御する。この結果、電路接続部2には例えば電路接続部2の定格電流が常に通電される。
このように、電路接続部2に対して常に一定の大電流を通電することで、接触抵抗rが小さい状態でも、大きな電圧降下が発生するため、接続不良の確実な検出を可能としている。
【0024】
尚、上記実施形態は、単相2線式電路Lの電路接続部2に関して説明したが、多相の電路に対しても上記接続不良検出装置は良好に適用できる。例えば、三相電路に適用した場合を図4に示している。図4において、20は三相電源、電路LはL3~L5の三相で構成される電線(第3電線L3、第4電線L4、第5電線L5)を有し、接続不良検出装置1を第4電線L4線に設けた構成を示している。
そして、接続不良検出装置1の電源を検出対象の電線以外の2本の電線(第3電線L3,第5電線L5)から入手している。
このように構成することで、接続不良検出装置1を上記単相電路の場合のように良好に動作させることができる。また、三相4線式の場合は、接続不良を検出する電線以外の3本の電線から接続不良検出装置に電源を供給するよう構成すれば良い。
【符号の説明】
【0025】
1・・接続不良検出装置、2・・電路接続部、2a・・電源側端子、2b・・負荷側端子、3・・電流生成部(調整電流生成部)、4・・感度設定部、5・・電位差判定部、6・・表示装置(通知部)、7・・第1変流器(全電流計測部)、8・・第2変流器(電路電流計測部)、11・・負荷、31・・電源部、32・・電流計測部(電路電流計測部)、33・・記憶部(規定電流記憶部)、L・・電路、I2・・調整電流。
図1
図2
図3
図4