(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023104346
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】分散剤、及び前記分散剤を含む分散液
(51)【国際特許分類】
C09K 23/52 20220101AFI20230721BHJP
C08F 220/28 20060101ALI20230721BHJP
C08F 220/18 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
B01F17/52
C08F220/28
C08F220/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022005273
(22)【出願日】2022-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】清水 邦雄
(72)【発明者】
【氏名】浅田 健史
(72)【発明者】
【氏名】加賀 彬
【テーマコード(参考)】
4D077
4J100
【Fターム(参考)】
4D077AA03
4D077AA09
4D077AB05
4D077AB06
4D077AB11
4D077AC05
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4D077DD03X
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4J100AL03Q
4J100AL08P
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4J100BA03P
4J100BA08P
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4J100CA03
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4J100FA03
4J100FA06
4J100FA19
4J100JA01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】環境低負荷型であり汎用性に優れ、疎水性粒子を水性媒体中に分散する分散力を備えた新規の分散剤を提供する。
【解決手段】本開示の分散剤は、下記式(1)で表される構成単位を有する親水性ポリマーアームAと、特定の疎水性ポリマーアームBと、を同一分子内に有する星形ポリマーを含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記星形ポリマーを含有する分散剤。
星形ポリマー:下記式(1)で表される構成単位を有する親水性ポリマーアームAと、下記式(2)で表される構成単位を有する疎水性ポリマーアームBと、を同一分子内に有する星形ポリマー
【化1】
(式(1)中、nは1以上の整数を示す。n個のR
1は、同一又は異なって、置換基を有していても良い炭素数1~5のアルキレン基を示す。R
2は水素原子又はメチル基を示す。但し、n=1の場合、R
1は、置換基として酸素含有基を有する炭素数1~5のアルキレン基である)
【化2】
(式(2)中、R
3は炭素数1~18のアルキル基を示し、R
4は水素原子又はメチル基を示す)
【請求項2】
前記親水性ポリマーアームAと前記疎水性ポリマーアームBのモル比(前者/後者)が50/50~90/10である、請求項1に記載の分散剤。
【請求項3】
前記星形ポリマーのGPCによるポリスチレン換算数平均分子量が1万~50万である、請求項1又は2に記載の分散剤。
【請求項4】
前記星形ポリマーの、GPCによるポリスチレン換算分子量分布(Mw/Mn)が1.1~1.5である、請求項1~3の何れか1項に記載の分散剤。
【請求項5】
前記親水性ポリマーアームAのポリスチレン換算数平均分子量が5千~10万である、請求項1~4の何れか1項に記載の分散剤。
【請求項6】
前記疎水性ポリマーアームBのポリスチレン換算数平均分子量が5千~10万である、請求項1~5の何れか1項に記載の分散剤。
【請求項7】
疎水性粒子が、請求項1~6の何れか1項に記載の分散剤の共存下で水性媒体中に分散している分散液。
【請求項8】
請求項1~6の何れか1項に記載の分散剤を含む組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、新規の分散剤、及び前記分散剤を含む分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
塗料、化粧品等の分野では、水性媒体中にフィラー等の疎水性粒子を安定的に分散させる方法が求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、アルコールアルコキシレートとアミノアルコールとN-メチルピロリドンの混合物が、塗料に用いる疎水化二酸化ケイ素粒子の分散剤として使用できることが記載されている。しかし、前記分散剤はアミン臭がするため化粧品には使用しづらい等、汎用性の点で劣っていることが問題であった。
【0004】
特許文献2には、メタクリル酸ベンジル、2-(2-ブロモイソブチリロキシ)エチルメタリレート、シクロへキシルメタクリレート、及びメチルメタクリレートをリビングラジカル重合して得られるコアポリマーと、前記コアポリマーの枝末端に結合した、メタクリル酸ベンジルとメタクリル酸シクロへキシルに由来する構成単位を含む複数のアーム部とを有する星形ポリマーは、黄色水性顔料の分散剤として使用できることが記載されている。しかし、前記星形ポリマーはハロゲン系化合物を含有するため、環境負荷が大きく、使用し難いことが問題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2013-543909号公報
【特許文献2】特開2018-90710号公報
【特許文献3】特開2021-186700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本開示の目的は、環境低負荷型であり汎用性に優れ、疎水性粒子を水性媒体中に分散する分散力を備えた新規の分散剤を提供することにある。
本開示の他の目的は、前記分散剤を使用して疎水性粒子を水性媒体中に分散してなる分散液を提供することにある。
本開示の他の目的は、前記分散剤を含む組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した結果、親水性ポリマーアームAと疎水性ポリマーアームBとを有する星形ポリマーにおいて、親水性ポリマーアームAと疎水性ポリマーアームBの構成を調整することで、優れた分散力を発揮することができることを見出した。本開示に係る発明はこれらの知見に基づき、さらに検討を重ねて完成させたものである。
【0008】
すなわち、本開示は、下記星形ポリマーを含有する分散剤を提供する。
星形ポリマー:下記式(1)で表される構成単位を有する親水性ポリマーアームAと、下記式(2)で表される構成単位を有する疎水性ポリマーアームBと、を同一分子内に有する星形ポリマー
【化1】
(式(1)中、nは1以上の整数を示す。n個のR
1は、同一又は異なって、置換基を有していても良い炭素数1~5のアルキレン基を示す。R
2は水素原子又はメチル基を示す。但し、n=1の場合、R
1は、置換基として酸素含有基を有する炭素数1~5のアルキレン基である)
【化2】
(式(2)中、R
3は炭素数1~18のアルキル基を示し、R
4は水素原子又はメチル基を示す)
【0009】
本開示は、また、前記親水性ポリマーアームAと前記疎水性ポリマーアームBのモル比(前者/後者)が50/50~90/10である前記分散剤を提供する。
【0010】
本開示は、また、前記星形ポリマーのGPCによるポリスチレン換算数平均分子量が1万~50万である、請求項1又は2に記載の分散剤を提供する。
【0011】
本開示は、また、前記星形ポリマーの、GPCによるポリスチレン換算分子量分布(Mw/Mn)が1.1~1.5である前記分散剤を提供する。
【0012】
本開示は、また、前記親水性ポリマーアームAのポリスチレン換算数平均分子量が5千~10万である前記分散剤を提供する。
【0013】
本開示は、また、前記疎水性ポリマーアームBのポリスチレン換算数平均分子量が5千~10万である前記分散剤を提供する。
【0014】
本開示は、また、疎水性粒子が前記分散剤の共存下で水性媒体中に分散している分散液を提供する。
【0015】
本開示は、また、前記分散剤を含む組成物を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本開示の分散剤は優れた分散力を有する。そして、ハロゲンフリーであり環境への負荷が小さい。また、アミン臭を有さないので、汎用性に優れる。
前記分散剤を使用すれば、疎水性粒子を水性媒体中に安定的に高分散することができる。そして、前記分散剤を使用して得られる分散液は化粧品等への使用に好適である。
また、前記分散剤は優れた分散力を有するため、少量の使用により、水性媒体を増粘することなく疎水性粒子を高分散することができる。そのため、前記分散剤を使用すれば、所望の粘度或いは剤型(例えば、液状、乳状、クリーム状、ジェル状等)の組成物を調製することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[分散剤]
本開示の分散剤は、下記星形ポリマーを少なくとも含有する。
【0018】
(星形ポリマー)
星形ポリマーは、中央のコアから複数のポリマーアームが、放射状に結合した分岐高分子である。本開示の分散剤が含有する星形ポリマーは、下記式(1)で表される構成単位を有する親水性ポリマーアームAと、下記式(2)で表される構成単位を有する疎水性ポリマーアームBとを有する。
【化3】
(式(1)中、nは1以上の整数を示す。n個のR
1は、同一又は異なって、置換基を有していても良い炭素数1~5のアルキレン基を示す。R
2は水素原子又はメチル基を示す但し、n=1の場合、R
1は、置換基として酸素含有基を有する炭素数1~5のアルキレン基である)
【化4】
(式(2)中、R
3は炭素数1~18のアルキル基を示し、R
4は水素原子又はメチル基を示す)
【0019】
式(1)中、nは1以上の整数を示し、例えば1~18の整数である。前記範囲の上限値は、好ましくは12、特に好ましくは10、最も好ましくは8である。前記範囲の下限値は、好ましくは2、特に好ましくは3、最も好ましくは4である。
【0020】
R1における炭素数1~5のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基等の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基が挙げられる。R1としては、親水性に特に優れる点で、炭素数2~4のアルキレン基が特に好ましく、炭素数2~3のアルキレン基が最も好ましい。
【0021】
前記炭素数1~5のアルキレン基が有していても良い置換基としては、例えば、ヒドロキシル基、置換オキシ基(例えば、C1-5アルコキシ基、C6-10アリールオキシ基、C7-11アラルキルオキシ基、C1-5アシルオキシ基等)等の酸素含有基が挙げられる。
【0022】
R3における炭素数1~18のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、デシル基、ドデシル基等の直鎖又は分岐鎖状アルキル基が挙げられる。R3の炭素数は、なかでも炭素数1~5のアルキル基が好ましい。
【0023】
本開示の星形ポリマーの親水性ポリマーアームAと疎水性ポリマーアームBのモル比(前者/後者)は、例えば50/50~90/10、好ましくは60/40~85/15、更に好ましくは65/35~85/15、特に好ましくは70/30~85/15、最も好ましくは75/25~85/15である。親水性ポリマーアームAの結合量が前記範囲を下回ると、疎水性粒子を分散させる効果が低下する傾向がある。一方、疎水性ポリマーアームBの結合量が前記範囲を下回ると、部材表面への密着性が低下して、疎水性粒子を分散させる効果が低下する傾向がある。なお、星形ポリマーにおける前記親水性ポリマーアームAのポリマーに対する前記疎水性ポリマーアームBのポリマーの割合は、例えば1H-NMRスペクトルにより求めることができる。
【0024】
前記親水性ポリマーアームAの数平均分子量(Mn)は、例えば5千~10万である。前記数平均分子量の下限値は、好ましくは1万である。前記数平均分子量の上限値は、好ましくは7万、より好ましくは5万、更に好ましくは4万、特に好ましくは3万、最も好ましくは2.5万である。また、分子量分布(Mw/Mn)は、例えば1.1~1.5である。
【0025】
前記疎水性ポリマーアームBの数平均分子量(Mn)は、例えば5千~10万である。前記数平均分子量の上限値は、好ましくは5万、より好ましくは3万、更に好ましくは2.5万、特に好ましくは2万、最も好ましくは1.5万である。前記数平均分子量の下限値は、好ましくは7千である。また、分子量分布(Mw/Mn)は、例えば1.1~1.5である。
【0026】
星形ポリマーの数平均分子量(Mn)は、例えば1万~50万である。前記数平均分子量の下限値は、好ましくは3万、更に好ましくは4万、特に好ましくは4.5万、最も好ましくは5万である。前記数平均分子量の上限値は、好ましくは30万、より好ましくは20万、更に好ましくは9万、特に好ましくは8万、最も好ましくは7.5万である。また、分子量分布(Mw/Mn)は、例えば1.1~1.5である。
【0027】
前記数平均分子量及び分子量分布は、GPCを用いて、ポリスチレン換算として測定することができる。
【0028】
(星形ポリマーの製造方法)
前記星形ポリマーは、例えばリビングラジカル重合法により合成できる。リビングラジカル重合法には、ニトロキシド媒介重合法(NMP重合法)、原子移動ラジカル重合法(ATRP重合法)、及び可逆的付加-開裂型連鎖移動重合法(RAFT重合法)が含まれる。前記方法のなかでも、RAFT法を用いることが、分子量分布の狭い星形ポリマーを、分子量を制御しつつ合成できる点で好ましい。
【0029】
RAFT重合法による前記星形ポリマーの製造方法は、例えば下記工程1~3を含む。
工程1:下記式(a)
【化5】
(式(a)中、R
1、R
2、nは前記式(1)中のR
1、R
2、nに同じ)
で表される化合物を、RAFT剤(若しくは、連鎖移動剤)及びラジカル重合開始剤の存在下、通常溶剤中でRAFT重合に付して、上記式(1)で表される構成単位を有し、末端に反応性を有するポリマーa(以後、「反応性ポリマーa」と称する場合がある)を得る。
工程2:下記式(b)
【化6】
(式(b)中、R
3、R
4は前記式(2)中のR
3、R
4に同じ)
で表される化合物を、RAFT剤及びラジカル重合開始剤の存在下、通常溶剤中でRAFT重合に付して、上記式(2)で表される構成単位を有し、末端に反応性を有するポリマーb(以後、「反応性ポリマーb」と称する場合がある)を得る。
工程3:工程1,2で得られた反応性ポリマーaと反応性ポリマーbを、架橋剤及びラジカル重合開始剤の存在下、通常溶剤中でRAFT重合に付して、前記星形ポリマーを得る。
【0030】
(工程1)
工程1は、重合性化合物(或いは、モノマー)である上記式(a)で表される化合物をRAFT重合に付して、反応性ポリマーaを得る工程である。前記RAFT重合反応は、RAFT剤及びラジカル重合開始剤の存在下、通常溶剤中にて行われる。
【0031】
上記式(a)で表される化合物としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート(=(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレンモノ(メタ)アクリレート)、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)ブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の末端水酸基含有(ポリ)C1-5アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;グリセリンモノ(メタ)アクリレート;グリセリンモノ(メタ)アクリル酸エステルモノC1-5アルキルエーテル等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0032】
前記RAFT剤には、ジチオベンゾエート型、トリチオカルボネート型、ジチオカルバマート型、及びジチオカルボナート型が含まれる。なかでも、式(a)で表される化合物等の共役モノマーのリビングラジカル重合反応を効率よく促進することができる点で、ジチオベンゾアート型、又はトリチオカルボネート型が好ましい。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0033】
ジチオベンゾエート型RAFT剤としては、例えば、ベンゾジチオ酸2-シアノプロパン-2-イル、4-シアノ-4-[(チオベンゾイル)スルファニル]ペンタン酸等が挙げられる。
【0034】
トリチオカルボネート型RAFT剤としては、例えば、4-シアノ-4-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタン酸、2-シアノ-2-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]プロパン、S,S-ジベンジルトリチオ炭酸、4-シアノ-4-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタン酸メチル等が挙げられる。
【0035】
重合性化合物の使用量(2種以上を含有する場合はその合計使用量)と前記RAFT剤の使用量の比([重合性化合物]/[RAFT剤]:モル比)は、例えば10~500である。前記比を、前記範囲内で調整することで、得られる反応性ポリマーaの重合度をコントロールすることができる。そして、前記比を小さくすると、得られる反応性ポリマーaの重合度が小さくなり、前記比を大きくすると、得られる反応性ポリマーaの重合度が大きくなる傾向がある。前記比が10を下回ると、疎水性粒子を分散させる分散力が低下する傾向があり、前記比が500を上回ると、増粘により製造効率が低下する傾向がある。
【0036】
前記ラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物や有機過酸化物類を挙げることができる。
【0037】
前記アゾ化合物としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0038】
前記有機過酸化物類としては、例えば、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシケタール、ケトンパーオキサイド等(具体的には、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイル)パーオキシヘキサン、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジブチルパーオキシヘキサン、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、1,4-ジ(2-t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、メチルエチルケトンパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート等)が含まれる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0039】
また、前記ラジカル重合開始剤の使用量は、RAFT剤の使用量の、例えば0.5モル倍以下である。前記ラジカル重合開始剤の使用量の下限値は、重合性化合物中に含まれる重合禁止剤や不純物の影響を受けずにラジカル重合が開始される量が下限値となるが、RAFT剤の使用量の、例えば0.001モル倍である。
【0040】
前記溶剤としては、反応に不活性な溶剤であればよく、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素;シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール;1-メトキシ-2-プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、1-メトキシ-2-プロピルアセテート等のグリコールエーテル及びそのエステル;酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル等のエステル;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミドが挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0041】
前記溶媒の使用量としては、重合性化合物(2種以上を含有する場合はその総量)に対して、例えば0.1~10重量倍である。
【0042】
反応温度は、適宜設定できるが、例えば40~150℃、好ましくは50~110℃である。リビング重合は、アルゴン、窒素などの不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。重合反応は、例えば、氷冷等により温度を下げることで反応を停止することができる。
【0043】
この反応終了後、得られた反応生成物は、一般的な、沈殿・洗浄・濾過により分離精製できる。
【0044】
この工程を経て、反応性ポリマーaが得られる。前記反応性ポリマーaの末端には前記RAFT剤が結合している。このRAFT剤は容易に外れ、それによりラジカルが生じて反応性が発現する。
【0045】
前記反応性ポリマーaの数平均分子量(Mn)は、例えば5千~10万である。前記数平均分子量の下限値は、好ましくは1万である。前記数平均分子量の上限値は、好ましくは7万、より好ましくは5万、更に好ましくは4万、特に好ましくは3万、最も好ましくは2.5万である。また、分子量分布(Mw/Mn)は、例えば1.1~1.5である。
【0046】
尚、本開示のポリマーの数平均分子量及び分子量分布は、GPCを用いて測定された、ポリスチレン換算値である。
【0047】
(工程2)
工程2は、重合性化合物(或いは、モノマー)である上記式(b)で表される化合物をRAFT重合に付して、反応性ポリマーbを得る工程である。
【0048】
上記式(b)で表される化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル等の、(メタ)アクリル酸C1-18アルキルエステルが挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0049】
RAFT剤、ラジカル重合開始剤、及び溶剤としては、工程1と同様の例が挙げられる。また、RAFT剤、ラジカル重合開始剤、及び溶媒の使用量や、反応温度・反応雰囲気も工程1と同様である。
【0050】
この工程を経て、反応性ポリマーbが得られる。前記反応性ポリマーbの末端には前記RAFT剤が結合している。このRAFT剤は容易に外れ、それによりラジカルが生じて反応性が発現する。
【0051】
前記反応性ポリマーbの数平均分子量(Mn)は、例えば5千~10万である。前記数平均分子量の上限値は、好ましくは5万、より好ましくは3万、更に好ましくは2.5万、特に好ましくは2万、最も好ましくは1.5万である。前記数平均分子量の下限値は、好ましくは7千である。また、分子量分布(Mw/Mn)は、例えば1.1~1.5である。
【0052】
(工程3)
工程3は、重合性化合物である反応性ポリマーaと反応性ポリマーbをRAFT重合に付して、前記星形ポリマーを得る工程である。前記RAFT重合反応は、架橋剤及びラジカル重合開始剤の存在下、通常溶剤中にて行われる。
【0053】
尚、反応性ポリマーa、反応性ポリマーbは、それぞれ1種を単独で使用しても良く、分子量や構造が異なる2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0054】
反応に付す反応性ポリマーaと反応性ポリマーbのモル比(前者/後者)は、例えば50/50~90/10、好ましくは60/40~85/15、更に好ましくは65/35~85/15、特に好ましくは70/30~85/15、最も好ましくは75/25~85/15である。前記モル比を調整することで、得られる星形ポリマーの親水性ポリマーアームAと疎水性ポリマーアームBのモル比をコントロールすることができる。
【0055】
前記架橋剤としては、リビング重合(リビングラジカル重合)の際に通常用いられる架橋剤を使用することができ、例えば、エチレングリコールジメタクリレート等の多官能(メタ)アクリレートなどのジビニル化合物が挙げられる。
【0056】
反応性ポリマーaと反応性ポリマーbの合計使用量に対する前記架橋剤の使用量の比[[架橋剤]/([反応性ポリマーa]+[反応性ポリマーb]):モル比]は、例えば1~100、好ましくは3~50、更に好ましくは5~30、特に好ましくは5~20、最も好ましくは8~15である。
【0057】
前記ラジカル重合開始剤及び溶剤としては、工程1と同様の例が挙げられる。また、反応温度・反応雰囲気も工程1と同様である。
【0058】
前記ラジカル重合開始剤の使用量は、反応性ポリマーaと反応性ポリマーbの合計使用量の0.5モル倍以下である。前記ラジカル重合開始剤の使用量の下限値は、架橋剤中に含まれる重合禁止剤や不純物の影響を受けずにラジカル重合が開始される量が下限値となるが、反応性ポリマーaと反応性ポリマーbの合計使用量の、例えば0.01モル倍である。
【0059】
前記溶媒の使用量としては、反応性ポリマーaと反応性ポリマーbと架橋剤の総和に対して、例えば0.1~99重量倍である。
【0060】
この反応終了後、得られた反応生成物は、一般的な、沈殿・洗浄・濾過により分離精製できる。この工程を経て星形ポリマーが得られる。
【0061】
(他の成分)
前記分散剤は星形ポリマー以外にも他の成分を含有していてもよい。
【0062】
他の成分としては、例えば、溶媒、界面活性剤、増粘剤、紫外線吸収剤、粉体、抗菌剤などが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて含有することができる。
【0063】
前記溶媒としては、星形ポリマーが有する親水性ポリマーアームA及び疎水性ポリマーアームBの種類によって適宜選択することができ、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素;メタノール、エタノール等のアルコール;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル;アセトン、エチルメチルケトン等のケトン;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル;水;これらの混合溶媒などが挙げられる。
【0064】
前記分散剤に含まれる不揮発分全量(100重量%)において、星形ポリマーの占める割合は、例えば50重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、更に好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上、最も好ましくは95重量%以上である。前記割合の上限値は100重量%である。
【0065】
前記分散剤に含まれる星形ポリマーの濃度は、用途に応じて適宜設定でき、例えば10重量%以上、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上、特に好ましくは70重量%以上である。前記濃度の上限値は100重量%である。
【0066】
前記分散媒は、後述の優れた親水性のポリマーアームAと疎水性ポリマーアームBを備える星形ポリマーを含有する。そのため、疎水性粒子を含む水性媒体に前記分散媒を添加すると、星形ポリマーの疎水性ポリマーアームBが疎水性粒子の表面に密着或いは吸着することにより、親水性ポリマーアームAは疎水性粒子の表面を覆い、親水性層を形成することができる。これにより、疎水性粒子が互いに近づき、凝集するのを防止することができる。従って、前記分散剤は、疎水性粒子を水性媒体中に分散させるための分散剤(特に、疎水性の強い粒子の分散剤)として有用である。前記疎水性粒子とは表面が疎水性の粒子のことであり、水性媒体中では凝集して沈殿し易い。
【0067】
[分散液]
本開示の分散液は、疎水性粒子が、前記分散剤の共存下で水性媒体中に分散している構成を有する。
【0068】
前記疎水性粒子は表面が疎水性の粒子である。前記疎水性粒子には有機微粒子及び無機微粒子が含まれる。
【0069】
前記有機微粒子としては、例えば、ポリマー微粒子が挙げられる。前記ポリマーとして、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等の(メタ)アクリル酸エステルの重合体、ポリスチレン等のスチレン系モノマーの重合体、シリコーン樹脂、ポリアミド(ナイロン)、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、酢酸セルロース等のセルロース系ポリマーなどの熱可塑性樹脂;フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂;有機顔料(ラメ剤を含む);染料などが挙げられる。
【0070】
前記無機微粒子は無機物の微粒子である。前記無機物としては、例えば、シリカ、アルミナ、マグネシア、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化クロム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化亜鉛、ジルコニア、酸化モリブデン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化タングステン、タルク、カオリン、クレー等の無機酸化物(複合酸化物を含む);窒化ホウ素等の窒化物;アルミニウム、鉄、ステンレス、金、銀、銅、亜鉛、スズ等の金属(合金を含む);炭酸カルシウム、硫酸バリウム、塩化カルシウム等の無機塩;ガラス、雲母、セメント、石炭、カーボン、顔料(パール剤を含む)などが挙げられる。
【0071】
前記疎水性粒子のなかでも、特に疎水性が強い粒子[例えば、シリコーン樹脂、ナイロン、顔料(例えば、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン等の金属酸化物)等の微粉末]が、良好な分散性を示す観点から好ましい。
【0072】
前記疎水性粒子の平均粒径は、例えば0.001~500μmである。前記平均粒径の下限値は、好ましくは0.1μm、特に好ましくは0.5μm、最も好ましくは1μmである。前記平均粒径の上限値は、好ましくは100μm、特に好ましくは50μm、最も好ましくは20μm、とりわけ好ましくは10μmである。
【0073】
前記水性媒体には、水、水と混和する有機溶剤、及びこれらの混合物が含まれる。
【0074】
前記水と混和する有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;グリセリン、ジグリセリン、マルチトール、1,3-ブチレングリコール、イソプレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ペンタエリスリトール、ネオペンチルグリコール、ソルビトール、ソルビタン、トレハロース、1,2-プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等の多価アルコールが挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて含有することができる。
【0075】
前記水性媒体は、少なくとも水を含有することが好ましく、水の含有量は、水性媒体全量(100重量%)の、例えば50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。
【0076】
前記分散液中の前記星形ポリマーの含有量は、疎水性粒子の種類により適宜調整することができるが、疎水性粒子10重量部に対して、例えば5重量部以下である。前記星形ポリマーの含有量の上限値は、好ましくは3.0重量部、特に好ましくは2.5重量部、最も好ましくは2.0重量部、とりわけ好ましくは1.5重量部である。前記星形ポリマーの含有量の下限値は、例えば0.1重量部、好ましくは0.5重量部、特に好ましくは0.7重量部、最も好ましくは1.0重量部である。
【0077】
また、前記分散液中の前記星形ポリマーの含有量は、水性媒体の種類により適宜調整することができるが、水性媒体100重量部に対して、例えば3重量部以下である。前記星形ポリマーの含有量の上限値は、好ましくは2重量部、特に好ましくは1.5重量部、最も好ましくは1重量部である。前記星形ポリマーの含有量の下限値は、例えば0.05重量部、好ましくは0.1重量部、特に好ましくは0.2重量部である。
【0078】
また、前記分散液中の前記星形ポリマーの含有量は、水100重量部に対して、例えば3重量部以下である。前記星形ポリマーの含有量の上限値は、好ましくは2重量部、特に好ましくは1.5重量部、最も好ましくは1重量部である。前記星形ポリマーの含有量の下限値は、例えば0.05重量部、好ましくは0.1重量部、特に好ましくは0.2重量部である。
【0079】
前記分散液は、前記星形ポリマーを含有するため、水性媒体中において疎水性粒子は凝集が抑制され、高分散した状態を長期に亘って安定的に維持することができる。更に、前記分散液は、前記分散剤の添加量が非常に少なくても、良好な分散性を示す。そのため、前記分散剤の添加により分散液が増粘することも抑制することができ、用途に応じて分散液の粘度を最適に設計することができる。従って、前記分散液は化粧品等への使用に好適である。
【0080】
[組成物]
本開示の組成物は、上記分散剤を含む。
【0081】
前記組成物は、水性媒体中に分散した疎水性粒子を含む組成物であり、その用途には特に制限がなく、例えば、化粧品、化粧品材料、塗料、インク、コーティング剤等が含まれる。
【0082】
前記化粧品には、例えば、化粧水、乳液、クリーム、ジェル等の基礎化粧品;リップグロス、マニキュア(ベースコート、トップコートを含む)等のメイクアップ化粧品;サンスクリーン剤等の日焼け止め化粧料;シャンプー、リンス、育毛剤等の頭髪化粧品等が含まれる。
【0083】
また、前記組成物は、剤形にも特に制限がなく、例えば、液状製剤、乳状製剤、ジェル状製剤、クリーム状製剤、泡状製剤等が含まれる。
【0084】
前記組成物全量における上記星形ポリマーの含有割合は、用途に応じて適宜調整することができるが、例えば0.001重量%以上(好ましくは、0.01~10重量%)である。
【0085】
前記組成物は上記分散剤(或いは、上記星形ポリマー)以外にも用途に応じた他の成分を1種又は2種以上含有することができる。
【0086】
前記組成物が化粧品或いは化粧品材料である場合、前記組成物は他の成分として、例えば、油剤、増粘剤、多価アルコール等の保湿剤、水、紫外線防御剤、抗酸化剤、消炎剤、防腐剤、顔料、染料、色材、香料、樹脂粉末、被膜剤、金属石けん等を含有することができる。
【0087】
前記組成物が塗料である場合、前記組成物は他の成分として、例えば、顔料、消泡剤、レベリング剤、湿潤剤、粘弾性調整剤等を含有することができる。
【0088】
前記組成物は、疎水性粒子が前記星形ポリマーによって水性媒体中に高分散された構成を有するため、分散安定性に優れ、長期に亘って疎水性粒子の凝集を抑制することができる。そのため、前記組成物が化粧品や塗料である場合は使用性に優れ、肌や基材等に塗布した場合に、均一な被膜を形成することができる。
【0089】
以上、本開示の各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲において、適宜、構成の付加、省略、置換、及び変更が可能である。また、本開示は、実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲の記載によってのみ限定される。
【実施例0090】
以下、実施例により本開示をより具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0091】
[調製例1](反応性ポリマー(a1)の合成)
窒素雰囲気下、四つ口フラスコに、式(a)で表される化合物としてポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノメタクリレート(PEGPPGMA)(26mmol、10.0g)[ポリオキシプロピレン部分の重合度:平均2.5、ポリオキシエチレン部分の重合度:平均3.5、RAFT剤として4-シアノ-4-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタン酸(0.52mmol、210mg)、アゾビスイソブチロニトリル(0.26mmol、42.7mg)を1-メトキシ-2-プロピルアセテート(301mmol、39.8g)に溶解し、30分間窒素でバブリングした。70℃で8時間反応させた後、氷冷して反応を停止し、20重量%の反応性ポリマー(a1)(PEGPPGMAを構成単位とし、末端に前記RAFT剤が結合しているポリマー、Mn=22000、Mw/Mn=1.52、転化率84%)溶液を得た。
【0092】
[調製例2](反応性ポリマー(b1)の合成)
窒素雰囲気下、四つ口フラスコに、式(b)で表される化合物としてメチルメタクリレート(MMA)(100mmol、10.0g)、RAFT剤として4-シアノ-4-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタン酸(1.00mmol、403mg)、アゾビスイソブチロニトリル(0.50mmol、82.1mg)を1-メトキシ-2-プロピルアセテート(172mmol、22.8g)に溶解し、30分間窒素でバブリングした。70℃で8時間反応させた後、氷冷して反応を停止した。反応液を大量のヘキサンに滴下し、沈殿精製することで反応性ポリマー(b1)(MMAを構成単位とし、末端に前記RAFT剤が結合しているポリマー、Mn=8600、Mw/Mn=1.24)を得た。
【0093】
[比較調製例1](反応性ポリマー(c)の合成)
窒素雰囲気下、四つ口フラスコに、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート(PEGMA)(20mmol、10.0g)[ポリ(エチレングリコール)部分の重合度:平均9]、RAFT剤として4-シアノ-4-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタン酸(0.98mmol、400mg)、アゾビスイソブチロニトリル(0.50mmol、81.1mg)を1-メトキシ-2-プロピルアセテート(173mmol、22.8g)に溶解し、30分間窒素でバブリングした。70℃で8時間反応させた後、氷冷して反応を停止し、反応液を大量のヘキサンに滴下し、沈殿精製することで反応性ポリマー(c)(PEGMAを構成単位とし、末端に前記RAFT剤が結合しているポリマー、Mn=8800、Mw/Mn=1.20、転化率89%)溶液を得た。
【0094】
[実施例1](星形ポリマー(1)を含む分散剤の合成)
窒素雰囲気下、四つ口フラスコに、調製例1で得られた反応性ポリマー(a1)(20重量%1-メトキシ-2-プロピルアセテート溶液、0.073mmol、8.0g)、調製例2で得られた反応性ポリマー(b1)(0.049mmol、0.421g)、エチレングリコールジメタクリレート(1.22mmol、0.242g)、アゾビスイソブチロニトリル(0.06mmol、9.9mg)、1-メトキシ-2-プロピルアセテート(16.2mmol、2.15g)を加え、30分間窒素でバブリングし、70℃で8時間反応させた後、氷冷して反応を停止した。反応液を大量のヘキサンに滴下し、沈殿精製することで星形ポリマー(1)[PEGPPGMA/MMA(仕込みモル比)=60/40、Mn=61000(分子量は高分子量体のピークのみで算出)、Mw/Mn=1.33、転化率93%]を得た。これを分散剤1とする。
【0095】
[実施例2](星形ポリマー(2)を含む分散剤の合成)
窒素雰囲気下、四つ口フラスコに、調製例1で得られた反応性ポリマー(a1)(20重量%1-メトキシ-2-プロピルアセテート溶液、0.097mmol、10.7g)、調製例2で得られた反応性ポリマー(b1)(0.024mmol、0.206g)、エチレングリコールジメタクリレート(1.22mmol、0.242g)、アゾビスイソブチロニトリル(0.06mmol、9.9mg)、1-メトキシ-2-プロピルアセテート(7.16mmol、0.95g)を加え、30分間窒素でバブリングし、70℃で8時間反応させた後、氷冷して反応を停止した。反応液を大量のヘキサンに滴下し、沈殿精製することで星形ポリマー(2)[PEGPPGMA/MMA(仕込みモル比)=80/20、Mn=63000(分子量は高分子量体のピークのみで算出)、Mw/Mn=1.48、転化率98%]を得た。これを分散剤2とする。
【0096】
[実施例3](星形ポリマー(3)を含む分散剤の合成)
窒素雰囲気下、四つ口フラスコに、調製例1で得られた反応性ポリマー(a1)(20重量%1-メトキシ-2-プロピルアセテート溶液、0.085mmol、9.4g)、調製例2で得られた反応性ポリマー(b1)(0.037mmol、0.318g)、エチレングリコールジメタクリレート(1.22mmol、0.242g)、アゾビスイソブチロニトリル(0.06mmol、9.9mg)、1-メトキシ-2-プロピルアセテート(11.7mmol、1.55g)を加え、30分間窒素でバブリングし、70℃で8時間反応させた後、氷冷して反応を停止した。反応液を大量のヘキサンに滴下し、沈殿精製することで星形ポリマー(3)[PEGPPGMA/MMA(仕込みモル比)=70/30、Mn=59000(分子量は高分子量体のピークのみで算出)、Mw/Mn=1.41、転化率95%]を得た。これを分散剤3とする。
【0097】
[比較例1](星形ポリマー(4)を含む分散剤の合成)
窒素雰囲気下、四つ口フラスコに、比較調製例1で得られた反応性ポリマー(c)(0.17mmol、1.500g)、調製例2で得られた反応性ポリマー(b1)(0.040mmol、0.344g)、エチレングリコールジメタクリレート(1.65mmol、0.327g)、アゾビスイソブチロニトリル(0.07mmol、11.5mg)、1-メトキシ-2-プロピルアセテート(43.9mmol、5.80g)を加え、30分間窒素でバブリングし、70℃で8時間反応させた後、氷冷して反応を停止した。反応液を大量のヘキサンに滴下し、沈殿精製することで星形ポリマー(4)[PEGMA/MMA(仕込みモル比)=80/20、Mn=117000、Mw/Mn=1.58]を得た。これを分散剤4とする。
【0098】
<試薬>
MMA:メチルメタクリレート、(株)TCI製
PEGPPGMA:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノメタクリレート、商品名「ブレンマー50PEP-300」、(株)日油製
PEGMA:ポリエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート、(株)TCI製
エチレングリコールジメタクリレート:富士フイルム和光純薬(株)製
4-シアノ-4-(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニルペンタン酸:富士フイルム和光純薬(株)製
アゾビスイソブチロニトリル:富士フイルム和光純薬(株)製
1-メトキシ-2-プロピルアセテート:富士フイルム和光純薬(株)製
【0099】
<NMR測定>
測定装置:JEOL ECA500
測定溶剤:重クロロホルム
化学シフト:TMSを規準とした
【0100】
<GPC測定>
ポンプ:「LC-20AD」、(株)島津製作所製
検出器(RI):「RID-10A」、(株)島津製作所製
検出器(UV300nm):「SPD-20A」、(株)島津製作所製
カラムオーブン:「CTO-20A」、(株)島津製作所製
溶剤:THF
カラム:Shodex K-806L×3
流速:0.8mL/min
温度:40℃
試料濃度:0.5重量%
標準ポリスチレン換算
【0101】
【0102】
※表中の略号を以下に説明する。
PA-Aは反応性ポリマーaを示す。
PA-Bは反応性ポリマーbを示す。
[CL]は架橋剤のモル濃度を示す。
[PA-A]は反応性ポリマーaのモル濃度を示す。
[PA-B]は反応性ポリマーbのモル濃度を示す。
[PA-A+PA-B]は反応性ポリマーaと反応性ポリマーbのモル濃度の総和を示す。
【0103】
実施例4
実施例1で得られた分散剤1の10%エタノール溶液4重量部、及び純水93重量部をガラス容器に入れ、スターラーで撹拌した。そこに、疎水粒子としてナイロンパウダー(SP-500、平均粒径5μm、東レ(株)製)を3重量部添加してスターラーで撹拌した。これにより、分散液を得た。
【0104】
実施例5~9、比較例2
下記表2に記載の通り、処方を変更した以外は実施例4と同様にして、分散液を得た。
【0105】
得られた分散液について、分散液中の疎水粒子の分散状態を目視で観察し、下記基準で分散性を評価した。結果を下記表2に示す。
<評価基準>
◎:1時間の撹拌で均一に分散した
○:均一に分散したが、撹拌時間は1時間を超えた
×:撹拌しても均一に分散しなかった
【0106】
【0107】
実施例10~15、比較例3
下記表3に記載の通り、処方を変更した以外は実施例4と同様にして、分散液を得た。尚、シリコーンパウダーとしては、KSP-100(平均粒径5μm、信越化学工業(株)製)を用いた。
【0108】
得られた分散液について、上記と同様に分散性を評価した。結果を下記表3に示す。
【0109】
【0110】
実施例16~19
下記表4に記載の通り、処方を変更した以外は実施例4と同様にして、分散液を得た。尚、酸化鉄としては、R516P(形状:針状、チタン工業(株)製)を用いた。
【0111】
得られた分散液について、上記と同様に分散性を評価した。結果を下記表4に示す。
【0112】