(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023104354
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】ペースト状接着剤
(51)【国際特許分類】
C09J 201/00 20060101AFI20230721BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20230721BHJP
C09J 1/02 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
C09J201/00
C09J11/04
C09J1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022005285
(22)【出願日】2022-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000149136
【氏名又は名称】日本インシュレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 晴久
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040HA026
4J040HA066
4J040HA311
4J040JA05
4J040KA04
4J040LA01
4J040LA05
4J040MA03
4J040MA04
4J040MB05
4J040NA12
(57)【要約】
【課題】高温で保管しても固化しにくく、長期保管が可能であるペースト状接着剤を提供する。
【解決手段】本発明のペースト状接着材は、ケイ酸カルシウム板を錆止め塗料塗装面に接着するためのペースト状接着剤であって、少なくとも無機繊維(ただし、スラグウールを除く)を含有し、50℃の環境下で4週間保管しても固化しない。本発明に係るペースト状接着剤は、高温で保管しても固化しにくく、長期保管が可能である。しかも、本発明のペースト状接着剤は、塗布後においても液垂れが起こりにくいので、塗布作業性に優れるものであり、それに加えて高い接着性も有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ酸カルシウム板を接着するためのペースト状接着剤であって、
少なくとも無機繊維(ただし、スラグウールを除く)を含有し、
50℃の環境下で4週間保管しても固化しない、ペースト状接着剤。
【請求項2】
前記無機繊維は、炭素繊維及び金属繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載のペースト状接着剤。
【請求項3】
下記測定条件で計測される針入度Dの値が20mm以上である、請求項1又は2に記載の接着剤。
<測定条件>
ペースト状接着剤を密封された状態にて50℃で4週間保管した後、当該ペースト状接着剤を容量650mL、深さ12cmの容器に満たして15~30℃の環境下で水平面上に載置し、容器内の接着剤表面からの高さが500mmである位置から、釘(長さ125mm、直径4.2mm、質量14g)を接着剤表面へ落下させ、釘が接着剤に入り込んだ長さを計測し、この計測値を針入度Dとする。
【請求項4】
水ガラスを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のペースト状接着剤。
【請求項5】
ケイ酸カルシウム板を錆止め塗料塗装面に接着するために用いられる、請求項1~4のいずれか1項に記載のペースト状接着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペースト状接着剤に関するものであり、特にはケイ酸カルシウム板を錆止め塗料塗装面に接着するためのペースト状接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄骨のH形鋼または鋼管柱に、耐火被覆材としてケイ酸カルシウム板を施工することが行われている。この施工においては、レベル出しのために同質のパッキン材が鉄骨に接着される。ケイ酸カルシウム板を接着させるための接着剤としては、ケイ酸カルシウム板がアルカリ性であることを考慮して、水ガラス等のケイ酸ナトリウムを主成分とし、これに無機充填材等の各種添加剤を混練したペースト状接着剤が用いられることが一般的である。
【0003】
斯かる接着剤には、例えば、接着剤を補強すると共に塗布作業性を向上させるべく、繊維状材料が添加されることが一般的である。例えば、特許文献1には、水ガラスを主成分とし、これに補強材としてスラグウールが添加されたペースト状接着剤に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように、ケイ酸ナトリウム及びスラグウールを含むペースト状接着剤の場合、ケイ酸ナトリウムとスラグウールとは、いわゆるスラグ-アルカリ反応によって固化するので、これにより、ペースト状接着剤を長期間保管することが難しいという問題があった。加えて、接着剤に対して熱負荷が作用すると、前記スラグ-アルカリ反応が促進するので、これが原因で、特に夏季は1週間以上の保管が難しくなることもある。このような観点から、ケイ酸カルシウム板を接着するための接着剤に対しては、高温で保管しても固化しにくく、長期保管が可能であることが望まれていた。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、高温で保管しても固化しにくく、長期保管が可能であるペースト状接着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の無機繊維を含有させることにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、例えば、以下の項に記載の主題を包含する。
項1
ケイ酸カルシウム板を接着するためのペースト状接着剤であって、
少なくとも無機繊維(ただし、スラグウールを除く)を含有し、
50℃の環境下で4週間保管しても固化しない、ペースト状接着剤。
項2
前記無機繊維は、炭素繊維及び金属繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種である、項1に記載のペースト状接着剤。
項3
下記測定条件で計測される針入度Dの値が20mm以上である、項1又は2に記載の接着剤。
<測定条件>
ペースト状接着剤を密封された状態にて50℃で4週間保管した後、当該ペースト状接着剤を容量650mL、深さ12cmの容器に満たして15~30℃の環境下で水平面上に載置し、容器内の接着剤表面からの高さが500mmである位置から、釘(長さ125mm、直径4.2mm、質量14g)を接着剤表面へ落下させ、釘が接着剤に入り込んだ長さを計測し、この計測値を針入度Dとする。
項4
水ガラスを含む、項1~3のいずれか1項に記載のペースト状接着剤。
項5
ケイ酸カルシウム板を錆止め塗料塗装面に接着するために用いられる、項1~4のいずれか1項に記載のペースト状接着剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明のペースト状接着剤は、高温で保管しても固化しにくく、長期保管が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0011】
本発明のペースト状接着剤は、ケイ酸カルシウム板を接着するために使用される。特に本発明のペースト状接着剤は、少なくとも無機繊維(ただし、スラグウールを除く)を含有し、50℃の環境下で4週間保管しても固化しない。
【0012】
本発明のペースト状接着剤は、無機繊維を含有するので、高温で保管しても固化しにくく、長期保管が可能である。しかも、本発明のペースト状接着剤は、塗布後においても液垂れが起こりにくいので、塗布作業性に優れるものであり、それに加えて高い接着性も有する。従って、本発明のペースト状接着剤は、ケイ酸カルシウム板用として好適に使用することができ、中でも、錆止め塗料塗装面への接着用として特に好適である。
【0013】
本発明のペースト状接着剤は、無機繊維(ただし、スラグウールを除く)を含む限りは特に限定されず、例えば、ケイ酸カルシウム板を接着するために使用される接着剤と同様の成分を含むことができる。例えば、本発明のペースト状接着剤は、無機質バインダーとして水溶性ケイ酸塩を含むことができ、特にはアルカリケイ酸塩やコロイダルシリカを挙げることができ、中でも、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウム等の水ガラスであることが好ましい。ペースト状接着剤が水ガラスを含むことで、ケイ酸カルシウム板への接着が良好となりやすい。水ガラスは、ナトリウム水ガラスであることが特に好ましい。
【0014】
水溶性ケイ酸塩の製造方法は特に限定されず、例えば、公知の方法で製造された水溶性ケイ酸塩を本発明のペースト状接着剤に適用することができる。また、水溶性ケイ酸塩は、市販品等から入手することもできる。
【0015】
本発明のペースト状接着剤に含まれる無機繊維は、スラグウールを除き、かつ、本発明の効果が阻害されない限りは、種々の無機繊維を選択することができ、中でも、炭素繊維及び金属繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。この場合、本発明のペースト状接着剤は高温で保管しても固化がより起こりにくく、また、塗布後においても液垂れがより起こりにくくなる。無機繊維は、炭素繊維であることが特に好ましい。
【0016】
炭素繊維の種類は特に限定されず、例えば、公知の炭素繊維を広く挙げることができる。炭素繊維としては、例えば、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、セルロース系炭素繊維、ポリアクリロニトリル系炭素繊維、気相成長系炭素繊維、黒鉛化繊維等を挙げることができる。
【0017】
炭素繊維の構造は特に限定されず、例えば、繊維径は10~25μm、平均繊維長は2~10mm、アスペクト比は150~450とすることができる。
【0018】
金属素繊維の種類は特に限定されず、例えば、公知の金属繊維を広く挙げることができる。金属繊維としては、例えば、鉄等の各種金属で形成された繊維材料を挙げることができ、例えば、スチールウール、銅ウール、黄銅ウールが挙げられる。
【0019】
金属繊維の構造は特に限定されず、例えば、繊維径は20~300μm、平均繊維長は1~10mm、アスペクト比は100~300とすることができる。
【0020】
無機繊維の製造方法は特に限定されず、例えば、公知の方法で製造された無機繊維を本発明のペースト状接着剤に適用することができる。また、無機繊維は、市販品等から入手することもできる。
【0021】
本発明のペースト状接着剤は、さらに他の成分を含むことができる。他の成分としては、例えば、従来の無機系接着剤(特にケイ酸カルシウム板を接着するために使用される接着剤)に含まれ得る成分を挙げることができる。他の成分としては、具体的に、粘土(クレイ)、ワラストナイト、無機粒子等の充填剤等を挙げることができ、その他、光安定剤、酸化防止剤、防腐剤、難燃剤、顔料、着色剤、防カビ剤、滑剤等が挙げられる。これらの添加剤は1種又は2種以上がペースト状接着剤に含まれていてもよい。中でも、良好な接着性と塗布性をもたらしやすいという観点で、本発明のペースト状接着剤に含まれる他の成分は、粘土(クレイ)及びワラストナイトの一方又は両方を含むことが好ましい。本発明のペースト状接着剤は、実質的に前記無機繊維、前記水溶性ケイ酸塩(例えば水ガラス)、粘土(クレイ)及びワラストナイトのみからなるものであってもよく、前記無機繊維、水溶性ケイ酸塩(例えば水ガラス)、粘土(クレイ)及びワラストナイトのみからなるものであってもよい。
【0022】
本発明のペースト状接着剤は、高温での固化及び塗布後の液垂れがより起こりにくくなるという点で、樹脂を含まないことが好ましく、特に有機材料を含まないことがより好ましい。本発明のペースト状接着剤が樹脂又は有機材料を含むにしても、その含有割合は、ペースト状接着剤の全質量に対し、5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることがさらに好ましく、0質量%であることが特に好ましい。
【0023】
また、本発明のペースト状接着剤は、高温での固化及び塗布後の液垂れがより起こりにくくなるという点で、リン酸及びその塩を含まないことも好ましい。本発明のペースト状接着剤がリン酸及びその塩を含むにしても、その含有割合は、ペースト状接着剤の全質量に対し、5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0,1質量%以下であることがさらに好ましく、0質量%であることが特に好ましい。
【0024】
本発明のペースト状接着剤において、各成分の含有割合は特に限定されない。例えば、高温での固化及び塗布後の液垂れがより起こりにくくなるという点で、ペースト状接着剤の全質量に対する無機繊維の含有割合は0.05質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましく、0.2質量%以上であることがさらに好ましく、0.3質量%以上であることが特に好ましい。同様の理由により、ペースト状接着剤の全質量に対する無機繊維の含有割合は10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましく、2質量%以下であることが特に好ましい。
【0025】
また、高温での固化及び塗布後の液垂れがより起こりにくくなるという点で、ペースト状接着剤の全質量に対する水溶性ケイ酸塩(例えば、水ガラス)の含有割合は30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、45質量%以上であることがさらに好ましく、50質量%以上であることが特に好ましい。同様の理由により、ペースト状接着剤の全質量に対する水溶性ケイ酸塩(例えば、水ガラス)の含有割合は80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることがさらに好ましく、55質量%以下であることが特に好ましい。
【0026】
本発明のペースト状接着剤は、水溶性ケイ酸塩(例えば、水ガラス)及び無機繊維を含み、残部を前述のその他成分とすることができ、例えば、残部を粘土(クレイ)及び/又はワラストナイトとすることができる。
【0027】
本発明のペースト状接着剤が粘土(クレイ)を含む場合、その含有割合は、ペースト状接着剤の全質量に対して15質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、25質量%以上であることがさらに好ましく、30質量%以上であることが特に好ましい。また、本発明のペースト状接着剤が粘土(クレイ)を含む場合、その含有割合は、ペースト状接着剤の全質量に対して50質量%以下であることが好ましく、45質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることがさらに好ましい。
【0028】
本発明のペースト状接着剤がワラストナイトを含む場合、その含有割合は、ペースト状接着剤の全質量に対して5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。また、本発明のペースト状接着剤がワラストナイトを含む場合、その含有割合は、ペースト状接着剤の全質量に対して30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましい。
【0029】
本発明のペースト状接着剤は、上記のように構成されることで、密封された状態にて50℃の環境下で4週間保管しても固化しない。具体的には、ペースト状接着剤1500gを1000mL容器に密閉した状態にて、50℃環境下に4週間保管した後であっても固化しない。
【0030】
本発明のペースト状接着剤は、下記測定条件で計測される針入度Dの値が20mm以上であることが好ましい。
<測定条件>
ペースト状接着剤を密封された状態にて50℃で4週間保管した後、当該ペースト状接着剤を容量650mL、深さ12cmの容器に満たして15~30℃の環境下で水平面上に載置し、容器内の接着剤表面からの高さが500mmである位置から、釘(長さ125mm、直径4.2mm、質量14g)を接着剤表面へ落下させ、釘が接着剤に入り込んだ長さを計測し、この計測値を針入度Dとする。
【0031】
上記測定条件において、釘の落下は尖っている方が接着剤表面に突き刺さるように行う。落下により、釘全体が接着剤に埋没しても良い。ここで、「ペースト状接着剤を密封された状態にて50℃で4週間保管」は、通常、製造直後のペースト状接着剤又は製造直後から5日以内のペースト状接着剤1500gを、1000mL容量の容器に密封収容し、この容器を50℃の環境で4週間保存することで行うことができる。ただし、ペースト状接着剤が製造直後から50℃未満の環境下において密閉状態で保管されている場合にあっては、「ペースト状接着剤を密封された状態にて50℃で4週間保管」は、製造直後から3か月以内のペースト状接着剤1500gを、1000mL容量の容器に密封収容し、この容器を50℃の環境で4週間保存することで行うことができる。
【0032】
針入度Dの値は、高温での固化及び塗布後の液垂れがより起こりにくくなるという点で、40mm以上であることが好ましく、また、70mm以下であることが好ましい。
【0033】
本発明のペースト状接着剤は、上記のようにペースト状接着剤を密封された状態にて50℃で4週間保管した後であっても、針入度Dの値が20mm以上であることにより、高温で保管しても固化しにくく、長期保管が可能である。しかも、本発明のペースト状接着剤は、塗布後においても液垂れが起こりにくいので、塗布作業性に優れるものであり、それに加えて高い接着性も有する。
【0034】
本発明のペースト状接着剤は、例えば、ケイ酸カルシウム板に当該接着剤11cm3を塗布すると、35000mm2以上塗り広げることができ、約40000mm2以上塗り広げることができる場合もあり、塗布作業性に優れるものである。本発明のペースト状接着剤は、例えば、下側アクリル板の上に当該接着剤11cm3を取り出し、当該接着剤の上から上側アクリル板(下側アクリル板と同種)を被せて、この上側アクリル板上に500gの分銅を載せて1分間載置した場合に、接着剤の押し広がり面積が2000mm2以上に広がることが好ましい。この場合も本発明のペースト状接着剤は、塗布作業性に優れるものである。
【0035】
また、本発明のペースト状接着剤は液垂れが生じにくいものであり、例えば、ケイ酸カルシウム板に5mm以上の厚みで塗布したとしても液垂れが起こりにくいものである。
【0036】
本発明のペースト状接着剤は、ケイ酸カルシウム板用の接着剤として使用することができ、特に、ケイ酸カルシウム板を錆止め塗料塗装面への接着に特に好適である。ケイ酸カルシウム及び錆止め塗料塗装面は特に限定されず、本発明のペースト状接着剤は、公知のケイ酸カルシウム及び錆止め塗料塗装面に広く適用可能である。
【0037】
本発明のペースト状接着剤の製造方法は特に限定されず、例えば、公知のペースト状接着剤の製造方法を広く採用することができる。
【実施例0038】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の態様に限定されるものではない。
【0039】
(実施例1)
表1に示す配合でペースト状接着剤を調製した。具体的に、水溶性ケイ酸塩としてナトリウム水ガラス51.5質量部と、炭素繊維として大阪ガスケミカル社製「S-231」(繊維径13μm、平均繊維長3.3mm、アスペクト比250)0.5質量部と、粘土(クレイ)34.9質量部と、ワラストナイト13.1質量部とを混合することで、ケイ酸ナトリウム系のペースト状接着剤を得た。
【0040】
(実施例2)
表1に示す配合でペースト状接着剤を調製した。具体的に、水溶性ケイ酸塩としてナトリウム水ガラス51.0質量部と、金属繊維としてボンスターから入手した品番「BS-0」(太さ0.3mm以下、長さ10mm以下)であるスチールウール1.0質量部と、粘土(クレイ)34.9質量部と、ワラストナイト13.1質量部とを混合することで、ケイ酸ナトリウム系のペースト状接着剤を得た。
【0041】
(比較例1)
表1に示す配合でペースト状接着剤を調製した。具体的に、水溶性ケイ酸塩としてナトリウム水ガラス52.9質量部、スラグウール1.9質量部と、粘土(クレイ)34.7質量部と、ワラストナイト10.0質量部とを混合することで、ケイ酸ナトリウム系のペースト状接着剤を得た。
【0042】
【0043】
表2には、各実施例及び比較例で得られたペースト状接着剤それぞれについて、高温保存安定性(50℃、4週間)、接着剤の押し広がり面積(塗布作業性)、液垂れ性及び接着性を評価した結果を示している。
【0044】
【0045】
各評価については下記の方法で行った。
【0046】
(高温保存安定性)
ペースト状接着剤1500gを1000mL容器に密閉した状態で、50℃環境下に4週間保管した後の固化の有無を目視で判断し、固化が視認されない場合は「〇」、固化が視認された場合は「×」として高温保存安定性を評価した。
【0047】
(接着剤の押し広がり面積(塗布作業性))
実施例1、実施例2及び比較例1の接着剤を全て50℃で5日間保管した後、アクリル板(27cm×27cm×厚0.5cm)の上にペースト状接着剤11cm3を取り出し、ペースト接着剤の上から上面側アクリル板(320g、27cm×27cm=729cm2)を被せた。前記上面側アクリル板の上に500gの分銅を1分間載置した後、ペースト状接着剤が押し広がった面積を計測した。
【0048】
(液垂れ性)
ペースト状接着剤を、断面積20cm2のケイ酸カルシウム板に所定の厚さで塗布した後に塗布面を鉛直に立て、厚塗りした接着剤が液垂れするか否かを評価した。厚塗りした厚さは,3mm、5mm及び10mmとし、それぞれの厚さで液垂れの有無を確かめた。
【0049】
(接着性)
ケイ酸カルシウム板(4cm×4cm×厚さ4cm)にペースト状接着剤を1000g/m2の量で塗布し、そこへ錆止め塗料を塗布した鉄板(7cm×7cm×厚さ0.3cm)を貼り合わせて接着させた。次いで、前記ケイ酸カルシウム板の、ペースト状接着剤を塗布していない側の面にエポキシ系接着剤(商品名:アラルダイト,ハンツマン・ジャパン製)を用いて鉄製治具を接着させて試験体を制作した。万能試験機により、前記試験体の鉄製治具を引っ張ることで接着力を測定し、その接着力が0.098N/mm2以上の場合を「〇」、0.098N/mm2未満の場合を「×」とした。
【0050】
表3は、各実施例及び比較例で調製したペースト状接着剤を下記測定条件で計測した針入度Dの値を測定した結果を示している。あわせて、各ペースト状接着剤をかき混ぜが可能であるかどうかについて調べた結果も表3に示している。
<測定条件>
各実施例及び比較例で調製したペースト状接着剤をそれぞれ密封された状態にて50℃で4週間保管した後、当該ペースト状接着剤を容量650mL、深さ12cmの容器を15~30℃の環境下で水平面上に載置し、容器内の接着剤表面からの高さが500mmである位置から、釘(長さ125mm、直径4.2mm、質量14g)を接着剤表面へ落下させた。このとき釘が接着剤に入り込んだ長さを計測し、この計測値を針入度Dとした。なお、この測定において、釘の落下は尖っている方が接着剤表面に突き刺さるように行った。
【0051】
なお、表3には参考として、製造直後から1週間、2週間及び3週間経過した後のペースト状接着剤のD値の測定結果も示している。
【0052】
【0053】
表2及び表3の結果から、実施例で得られたペースト状接着剤は、50℃で4週間保管しても固化しにくく、長期保管が可能であることがわかった。これに対し、比較例で得られたペースト状接着剤は、50℃で4週間保管すると固化が見られた。また、実施例で得られたペースト状接着剤は、接着剤11cm3の押し広がり面積の値からも塗布作業性に優れたものであり、塗布後においても液垂れが起こりにくく、高い接着性も有していた。