(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023104369
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】気体分離膜、気体分離膜モジュール、それらの製造方法およびそれらを使用した気体分離方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/22 20060101AFI20230721BHJP
B01D 69/08 20060101ALI20230721BHJP
B01D 69/12 20060101ALI20230721BHJP
B01D 71/08 20060101ALI20230721BHJP
B01D 71/38 20060101ALI20230721BHJP
B01D 71/42 20060101ALI20230721BHJP
B01D 71/44 20060101ALI20230721BHJP
B01D 71/52 20060101ALI20230721BHJP
B01D 71/60 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
B01D53/22
B01D69/08
B01D69/12
B01D71/08
B01D71/38
B01D71/42
B01D71/44
B01D71/52
B01D71/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022005301
(22)【出願日】2022-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】504255685
【氏名又は名称】国立大学法人京都工芸繊維大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(72)【発明者】
【氏名】谷口 育雄
(72)【発明者】
【氏名】衣笠 佳恵
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA41
4D006HA18
4D006HA19
4D006JA15Z
4D006JA18Z
4D006JA25Z
4D006MA01
4D006MA06
4D006MA09
4D006MA31
4D006MB03
4D006MB04
4D006MB11
4D006MC01
4D006MC03
4D006MC05
4D006MC07X
4D006MC10
4D006MC12
4D006MC18
4D006MC22
4D006MC29
4D006MC30
4D006MC33X
4D006MC36
4D006MC39
4D006MC40
4D006MC48
4D006MC54
4D006MC60
4D006MC62
4D006MC63
4D006MC65
4D006MC69
4D006NA46
4D006NA64
4D006PA01
4D006PA02
4D006PB18
4D006PB64
4D006PC80
(57)【要約】 (修正有)
【課題】気体分離膜の劣化を抑制することで、長い期間使用可能でメンテナンスの容易な気体分離膜および気体分離膜モジュール、これらの製造方法、ならびに気体分離膜を使用した気体分離方法を提供すること。
【解決手段】多孔質の支持膜に、機能層と、保護層とを有する、気体分離膜であって、該多孔質の支持膜の一の面に、シロキサン類の架橋体またはシロキサン類とポリオレフィンとの混合架橋体を含む該保護層を有し、該多孔質の支持膜の他の面に、水溶性高分子と、水溶性のアルカノールアミン類より選択される少なくとも1種のアミン化合物とを含有する該機能層を有する、前記気体分離膜を提供する。さらに気体分離膜を利用した気体分離膜モジュールを提供し、気体分離膜および気体分離膜の製造方法を提供する。気体分離膜および気体分離膜モジュールを使用して、混合気体から二酸化炭素を分離することができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質の支持膜に、機能層と、保護層とを有する、気体分離膜であって、
該多孔質の支持膜の一の面に、シロキサン類の架橋体またはシロキサン類とポリオレフィンとの混合架橋体を含む該保護層を有し、
該多孔質の支持膜の他の面に、水溶性高分子と、水溶性のアルカノールアミン類より選択される少なくとも1種のアミン化合物とを含有する該機能層を有する、前記気体分離膜。
【請求項2】
該水溶性高分子が、ポリビニルアルコール類、ポリアクリル酸類、ポリエチレングリコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアミン類、多糖類、およびこれらの共重合体からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の気体分離膜。
【請求項3】
該シロキサン類が、以下の式(1):
【化1】
(式中、R
1およびR
2は、各々独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のフルオロアルキル基、またはフェニル基を表す。)で表される少なくとも1種を構成単位とする重合体または共重合体である、請求項1または2に記載の気体分離膜。
【請求項4】
該多孔質の支持膜が、中空糸膜である、請求項1~3のいずれか一項に記載の気体分離膜。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の気体分離膜の、該保護層を有する一の面に、少なくとも二酸化炭素を含む混合気体を接触させて、該気体分離膜内に二酸化炭素を選択的に通過させ、
該機能層を有する他の面から二酸化炭素を取り出す、
気体分離方法。
【請求項6】
多孔質の支持膜に、機能層と、保護層とを有する、気体分離膜の製造方法であって、
該多孔質の支持膜の一の面に、シロキサン類と、場合によりポリオレフィンと、架橋剤とを含む混合物を塗布し、加熱して、該保護層を形成し、次いで
該多孔質の支持膜の他の面に、水溶性高分子と、水溶性のアルカノールアミン類より選択される少なくとも1種のアミン化合物と、水とを含む水溶液を塗布し、乾燥して、機能層を形成する
各工程を含む、前記気体分離膜の製造方法。
【請求項7】
該水溶性高分子が、ポリビニルアルコール類、ポリアクリル酸類、ポリエチレングリコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアミン類、多糖類、およびこれらの共重合体からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項6に記載の気体分離膜の製造方法。
【請求項8】
該シロキサン類が、以下の式(1):
【化2】
(式中、R
1およびR
2は、各々独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のフルオロアルキル基、またはフェニル基を表す。)で表される少なくとも1種を構成単位とする重合体または共重合体である、請求項6または7に記載の気体分離膜の製造方法。
【請求項9】
該多孔質の支持膜が、中空糸膜である、請求項6~8のいずれか一項に記載の気体分離膜の製造方法。
【請求項10】
少なくとも二酸化炭素を含む混合気体を導入する、混合気体入口と、
該混合気体から分離された二酸化炭素を排出する、二酸化炭素排出口と、
該混合気体から二酸化炭素が分離された分離混合気体を排出する、分離気体排出口と、
を備えたモジュール容器の内部に、気体分離膜を1つ以上配置した、気体分離膜モジュールであって、該気体分離膜が、
中空糸膜の一の面に、シロキサン類の架橋体またはシロキサン類とポリオレフィンとの混合架橋体を含んだ、保護層を有し、
該中空糸膜の二の面に、水溶性高分子と、水溶性のアルカノールアミン類より選択される少なくとも1種のアミン化合物とを含有する機能層を有することを特徴とする、前記気体分離膜モジュール。
【請求項11】
該水溶性高分子が、ポリビニルアルコール類、ポリアクリル酸類、ポリエチレングリコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアミン類、多糖類、およびこれらの共重合体からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項10に記載の気体分離膜モジュール。
【請求項12】
該シロキサン類が、以下の式(1):
【化3】
(式中、R
1およびR
2は、各々独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のフルオロアルキル基、またはフェニル基を表す。)で表される少なくとも1種を構成単位とする重合体または共重合体である、請求項10または11に記載の気体分離膜モジュール。
【請求項13】
請求項10~12のいずれか一項に記載の気体分離膜モジュールの、該混合気体入口から、少なくとも二酸化炭素を含む混合気体を導入し、
該気体分離膜の一の面に、該混合気体を接触させて、該気体分離膜内に二酸化炭素を選択的に通過させ、
該気体分離膜の二の面から二酸化炭素を取り出し、
取り出した二酸化炭素を該二酸化炭素排出口から排出し、
該混合気体から二酸化炭素が分離された分離混合気体を該分離気体排出口から排出する
各工程を含む、混合気体から二酸化炭素を分離する方法。
【請求項14】
少なくとも二酸化炭素を含む混合気体を導入する、混合気体入口と、
該混合気体から分離された二酸化炭素を排出する、二酸化炭素排出口と、
該混合気体から二酸化炭素が分離された分離混合気体を排出する、分離気体排出口と、
を備えたモジュール容器内部に、
中空糸膜の一の面に、保護層を有し、
該中空糸膜の二の面に、機能層を有する気体分離膜を、1つ以上配置した、気体分離膜モジュールの製造方法であって、
該モジュール容器内部に、該中空糸膜を1つ以上配置し、
該中空糸膜の一の面に、シロキサン類と、場合によりポリオレフィンと、架橋剤とを含む混合物を塗布し、加熱して、該保護層を形成し、次いで
該中空糸膜の二の面に、水溶性高分子と、水溶性のアルカノールアミン類より選択される少なくとも1種のアミン化合物と、水とを含む水溶液を塗布し、乾燥して、該機能層を形成する、
各工程を含む、前記気体分離膜モジュールの製造方法。
【請求項15】
該水溶性高分子が、ポリビニルアルコール類、ポリアクリル酸類、ポリエチレングリコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアミン類、多糖類、およびこれらの共重合体からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項14に記載の気体分離膜モジュールの製造方法。
【請求項16】
該シロキサン類が、以下の式(1):
【化4】
(式中、R
1およびR
2は、各々独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のフルオロアルキル基、またはフェニル基を表す。)で表される少なくとも1種を構成単位とする重合体または共重合体である、請求項14または15に記載の気体分離膜モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体分離膜および気体分離膜モジュール、ならびにそれらの製造方法に関する。さらに本発明は気体分離膜および気体分離膜モジュールを使用した気体分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた種々の取り組みが日本においてなされているが、中でも主要な目標として2025年までに温室効果ガス排出を実質ゼロとし、いわゆるカーボンニュートラルの実現を目指すことが掲げられている。温室効果ガスとは、主に人間活動により増加した気体であり、二酸化炭素、メタン、フロンガス、一酸化炭素等を挙げることができる。中でも二酸化炭素は地球温暖化に及ぼす影響が最も大きい温室効果ガスであるとされている。そこで、産業界で排出される種々の混合気体から二酸化炭素を分離して、これを大気中に排出しないように制御することができれば、カーボンニュートラルの実現に大きく貢献することができると考えられる。
【0003】
一方、高分子化合物からなる材料は、材料ごとに特有の気体透過性を有していることが知られている。特定の高分子化合物からなる膜に、所望の気体成分を含有する混合気体を透過させて、所望の気体を分離して得ることができる。このような膜は、気体分離膜あるいはガス分離膜と呼ばれ、産業上の利用が試みられている。特に、火力発電所、製鉄所高炉、各種工場等から発生する排ガスは、二酸化炭素を多量に含有しており、これらの施設は、大規模な二酸化炭素発生源となっている。そこで、これらの施設の内外において、排ガスから二酸化炭素を分離回収することが盛んに検討されている。この際、気体分離膜による所望の気体成分の分離は、投下するエネルギー量が比較的少ない、簡便な操作で行うことができるため、環境問題を解決することができる手段として大いに注目されている。
特許文献1には、多孔質層を含む支持体、ポリイミド層およびセルロース層をこの順で有し、セルロース層には特定のセルロース化合物を用いた、ガス分離膜が開示されている。特許文献1には、保護層、セルロース層、ポリイミド層、樹脂層、支持体の順で積層されたガス分離膜が開示され、このうち保護層にはシリコーン樹脂やポリイミド、セルロース樹脂、ポリエチレンオキサイド等を用いることが好ましく、支持体はポリイミド層側に多孔質層を有しており、特定のセルロース層と特定のポリイミド層を用いることにより分離選択性能の高いガス分離膜を得ることができることが開示されている。
特許文献2には、水溶性高分子と、特定のアミン化合物およびポリエチレンアミン類からなる群より選ばれるアミン化合物とを含む高分子膜から構成されたガス分離膜が開示されている。特許文献2は、特定のアミン化合物で二酸化炭素を吸着および脱着することにより高い選択性を持って二酸化炭素を他のガスから分離することができることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-12089号公報
【特許文献2】特開2018-144022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のガス分離膜は、ガス分離における分離選択性とガス透過性を考慮してポリイミド層と特定のセルロース層を選択したことに特徴がある。一方、特許文献2は、水溶性高分子によるマトリクスに特定のアミン化合物やポリエチレンポリアミン類を含有させた高分子膜にガス分離機能があることを開示している。特許文献1および特許文献2は、これらのガス分離膜や高分子膜を使用してガス分離を行ううちに、ガス分離膜や高分子膜が劣化してくるという現象には気付いておらず、したがってこれらのガス分離膜や高分子膜の寿命に関しては触れられていない。ところが先述の通り、気体分離膜は、火力発電所、製鉄所高炉、各種工場等のように産業上温室効果ガスを含む混合排ガスが多量に発生しうる施設において長期にわたり使用することを想定しているものである。そこで気体分離膜は、優れた分離選択性と透過性とを兼ね備えることを大前提として、これらの施設において可能な限り長く使用できるという特性をも備えていることが重要である。
【0006】
本発明者らは、特許文献1や特許文献2に開示されたガス分離膜や高分子膜に代表される従来の気体分離膜が、気体分離に際して比較的早期に劣化してしまう現象に着目した。本発明は、気体分離膜の劣化を抑制することで、長い期間使用可能でメンテナンスの容易な気体分離膜および気体分離膜モジュール、これらの製造方法、ならびに気体分離膜を使用した気体分離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、多孔質の支持膜に、機能層と、保護層とを有する、気体分離膜である。気体分離膜において、該多孔質の支持膜の一の面に、シロキサン類の架橋体またはシロキサン類とポリオレフィンとの混合架橋体を含む該保護層を有し、該多孔質の支持膜の他の面に、水溶性高分子と、水溶性のアルカノールアミン類より選択される少なくとも1種のアミン化合物とを含有する該機能層を有することを特徴とする。
該水溶性高分子は、ポリビニルアルコール類、ポリアクリル酸類、ポリエチレングリコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアミン類、多糖類、およびこれらの共重合体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
また、該シロキサン類は、以下の式(1):
【化1】
(式中、R
1およびR
2は、各々独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のフルオロアルキル基、またはフェニル基を表す。)で表される少なくとも1種を構成単位とする重合体または共重合体であることが好ましい。
さらに、該多孔質の支持膜は、中空糸膜であることが好ましい。
【0008】
さらに本発明は、上記の本発明の気体分離膜の該保護層を有する一の面に、少なくとも二酸化炭素を含む混合気体を接触させて、該気体分離膜内に二酸化炭素を選択的に通過させ、該機能層を有する他の面から二酸化炭素を取り出す気体分離方法である。
【0009】
本発明は、多孔質の支持膜に、機能層と、保護層とを有する、気体分離膜の製造方法である。気体分離膜の製造方法において、該多孔質の支持膜の一の面に、シロキサン類と、場合によりポリオレフィンと、架橋剤とを含む混合物を塗布し、加熱して、該保護層を形成し、次いで該多孔質の支持膜の他の面に、水溶性高分子と、水溶性のアルカノールアミン類より選択される少なくとも1種のアミン化合物と、水とを含む水溶液を塗布し、乾燥して、機能層を形成する各工程を含むことを特徴とする。
該水溶性高分子は、ポリビニルアルコール類、ポリアクリル酸類、ポリエチレングリコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアミン類、多糖類、およびこれらの共重合体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
該シロキサン類は、以下の式(1):
【化2】
(式中、R
1およびR
2は、各々独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のフルオロアルキル基、またはフェニル基を表す。)で表される少なくとも1種を構成単位とする重合体または共重合体であることが好ましい。
さらに、該多孔質の支持膜は、中空糸膜であることが好ましい。
【0010】
本発明は、少なくとも二酸化炭素を含む混合気体を導入する、混合気体入口と、
該混合気体から分離された二酸化炭素を排出する、二酸化炭素排出口と、
該混合気体から二酸化炭素が分離された分離混合気体を排出する、分離気体排出口と、
を備えたモジュール容器の内部に、気体分離膜を1つ以上配置した、気体分離膜モジュールである。気体分離膜モジュールにおいて、該気体分離膜は、中空糸膜の一の面に、水溶性高分子と、水溶性のアルカノールアミン類より選択される少なくとも1種のアミン化合物とを含有する機能層を有し、該中空糸膜の二の面に、シロキサン類の架橋体またはシロキサン類とポリオレフィンとの混合架橋体を含んだ保護層を有することを特徴とする。
該水溶性高分子が、ポリビニルアルコール類、ポリアクリル酸類、ポリエチレングリコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアミン類、多糖類、およびこれらの共重合体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
該シロキサン類は、以下の式(1):
【化3】
(式中、R
1およびR
2は、各々独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のフルオロアルキル基、またはフェニル基を表す。)で表される少なくとも1種を構成単位とする重合体または共重合体であることが好ましい。
【0011】
さらに本発明は、上記の本発明の気体分離膜モジュールの、該混合気体入口から、少なくとも二酸化炭素を含む混合気体を導入し、
該気体分離膜の二の面に、該混合気体を接触させて、該気体分離膜内に二酸化炭素を選択的に通過させ、
該気体分離膜の一の面から二酸化炭素を取り出し、
取り出した二酸化炭素を該二酸化炭素排出口から排出し、
該混合気体から二酸化炭素が分離された分離混合気体を該分離気体排出口から排出する
各工程を含む、混合気体から二酸化炭素を分離する方法である。
【0012】
本発明は、少なくとも二酸化炭素を含む混合気体を導入する、混合気体入口と、
該混合気体から分離された二酸化炭素を排出する、二酸化炭素排出口と、
該混合気体から二酸化炭素が分離された分離混合気体を排出する、分離気体排出口と、
を備えたモジュール容器内部に、
中空糸膜の一の面に、機能層を有し、
該中空糸膜の二の面に、保護層を有する気体分離膜を、1つ以上配置した、気体分離膜モジュールの製造方法である。気体分離膜モジュールの製造方法において、該モジュール容器内部に、該中空糸膜を1つ以上配置し、該中空糸膜の二の面に、シロキサン類と、場合によりポリオレフィンと、架橋剤とを含む混合物を塗布し、加熱して、該保護層を形成し、次いで該中空糸膜の一の面に、水溶性高分子と、水溶性のアルカノールアミン類より選択される少なくとも1種のアミン化合物と、水とを含む水溶液を塗布し、乾燥して、該機能層を形成する、各工程を含むことを特徴とする。
該水溶性高分子は、ポリビニルアルコール類、ポリアクリル酸類、ポリエチレングリコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアミン類、多糖類、およびこれらの共重合体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
該シロキサン類は、以下の式(1):
【化4】
(式中、R
1およびR
2は、各々独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のフルオロアルキル基、またはフェニル基を表す。)で表される少なくとも1種を構成単位とする重合体または共重合体であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、高い気体分離選択性と透過性とを兼ね備え、かつ気体分離操作中に劣化が少なく寿命の長い気体分離膜ならびに気体分離膜モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の気体分離膜の製造工程の一例である。
【
図2】
図2は、本発明の気体分離膜モジュールの一例を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明で用いられる気体分離膜の一例の断面図である。
【
図4】
図4は、二酸化硫黄30ppmを含有する混合気体から二酸化炭素を分離したときの二酸化炭素透過流束の経時変化を示すグラフである(実施例および比較例)。
【
図5】
図5は、二酸化硫黄30ppmを含有する混合気体から二酸化炭素を分離したときの二酸化炭素選択性の経時変化を示すグラフである(実施例および比較例)。
【
図6】
図6は、二酸化硫黄300ppmを含有する混合気体から二酸化炭素を分離したときの二酸化炭素透過流束の経時変化を示すグラフである(実施例および比較例)。
【
図7】
図7は、二酸化硫黄300ppmを含有する混合気体から二酸化炭素を分離したときの二酸化炭素選択性の経時変化を示すグラフである(実施例および比較例)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態について、さらに詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態にのみ限定されるものではない。
【0016】
本発明の一の実施形態は、多孔質の支持膜に、機能層と、保護層とを有する、気体分離膜である。気体分離膜において、該多孔質の支持膜の一の面に、シロキサン類の架橋体またはシロキサン類とポリオレフィンとの混合架橋体を含む該保護層を有し、該多孔質の支持膜の他の面に、水溶性高分子と、水溶性のアルカノールアミン類より選択される少なくとも1種のアミン化合物とを含有する該機能層を有することを特徴とする。
【0017】
本実施形態において、気体分離膜とは、少なくとも2種の気体成分を含有する混合気体から所望の気体成分を取り出すことを目的とする膜のことである。本明細書では、気体分離膜のことをガス分離膜と呼ぶこともあり、両者は同じ意味で用いられる。気体分離膜は、固体や液体を含有する混合気体から該固体や液体を濾過(濾別)する機能を備えていても良い。実施形態の気体分離膜は、少なくとも以下の3つの構成要素:多孔質の支持膜、機能層、および保護層を有する。
【0018】
実施形態の気体分離膜は、その構成要素として多孔質の支持膜を備える。実施形態において、多孔質とは、構造物に複数の穴(孔)が空いている性質のことを指し、好ましくは多数の細孔が空いている性質のことを云う。多孔質材料は、細孔の大きさに応じて、ミクロポーラス材料、メソポーラス材料、マクロポーラス材料があり、本実施形態の多孔質の支持膜としていずれの材料を用いても良い。多孔質材料として、いかなる材料のものを用いても良く、たとえば、活性炭、ゼオライト、メソポーラスシリカ、軽石のほか、天然繊維(綿、麻、毛等)、化学繊維(ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、アセテート、プロミックス、レーヨン、アラミド、ポリアクリロニトリル等)、およびその他の熱可塑性樹脂(ポリビニルアルコール、ポリスルホン、ポリフッ化ビニリデン等)を用いることができる。実施形態において、多孔質の支持膜は、後述する機能層と保護層とを付着あるいは担持させるための支持部材である。支持膜は、特定の面積を有する板状の硬質または軟質の膜を指すが、本実施形態においては、支持膜の形状は、板状に限らず、板状の膜を丸めた、球状や筒状等の形状であっても良く、本実施形態の気体分離膜の使用の形態に応じて自由に形成することができる。支持膜は、実施形態の気体分離膜の使用の形態に応じて、マイクロメートルからミリメートルオーダーまでの種々の厚さとすることができる。支持膜の厚さは、好ましくは50μm~1cm、さらに好ましくは100μm~5mm、特に好ましくは300μm~1mmである。
【0019】
多孔質の支持膜として、特に、壁面に微細孔を有する中空形状(ストロー形状)の中空糸膜を用いると、容積あたりの膜面積を大きくすることができて好適である。中空形状の中空糸膜は、内側の面と外側の面の二面を有している。実施形態における多孔質の支持膜として、限外濾過(UF)用中空糸膜や精密濾過用(MF)中空糸膜を用いることができる。中空糸膜の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、酢酸セルロース、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレン等を挙げることができる。このようなUF中空糸膜や、MF中空糸膜は、市販のものを適宜入手可能である。
【0020】
実施形態の気体分離膜は、その構成要素として機能層と保護層とを備える。機能層は、実施形態の気体分離膜を気体分離膜たらしめる構成要素であり、所望の気体を含む混合気体から所望の気体を選択的に透過させて(あるいは透過させずに)これを分離する機能、あるいは、反対に、所望ではない気体を選択的に透過させて(あるいは透過させずに)これを分離する機能(気体分離機能)を有する層のことである。一方、保護層は、機能層の気体分離機能を低下させるような気体の透過を防止したり抑制したりする機能を有する層であることが好ましい。ここで特定の気体が機能層の気体分離機能を低下させる形態は種々考えられ、たとえば、気体が機能層を構造的に劣化させること、気体が機能層の表面に物理的に付着して混合気体と機能層との接触を妨げること、あるいは、気体が機能層を構成する物質と化学的に反応して機能層の気体分離機能を失わせること、を挙げることができる。実施形態において保護層とは、上記のような機能層の気体分離機能を低下または失活させるような気体を透過させない、または透過を抑制することができる層のことが好ましい。実施形態の気体分離膜において、多孔質の支持膜の一の面に保護層が設けられており、多孔質の支持膜の他の面に機能層が設けられている。ここで多孔質の支持膜の一の面とは、膜のもっとも広い二面のうちの一方の面であり、多孔質の支持膜の他の面とは、一の面に対向する面のことである。実施形態において、保護層と機能層とが接触して積層されておらず、多孔質の支持膜を介してそれぞれ別の面に設けられていることが好ましい。
【0021】
実施形態において、保護層は、シロキサン類の架橋体またはシロキサン類とポリオレフィンとの混合架橋体を含むことが好ましい。ここでシロキサン類とは、シロキサン結合を繰り返して有する化合物のことを意味し、オリゴマー、あるいはポリマーであって良い。
ここで、シロキサン類は、以下の式(1):
【化5】
(式中、R
1およびR
2は、各々独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のフルオロアルキル基、またはフェニル基を表す。)で表される少なくとも1種を構成単位とする重合体または共重合体であることが好ましい。このようなシロキサン類として、たとえば、ポリジメチルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン、ポリメチル(3,3,3-トリフロオロプロピル)シロキサン、ポリ(1-トリメチルシリル-1-プロピン)、ポリジ(トリフルオロプロピル)シロキサンおよびこれらの混合物を挙げることができる。保護層は、これらのシロキサン類を架橋した、シロキサン類の架橋体を含む。保護層は、シロキサン類と場合によりポリオレフィンとの混合架橋体を含んでいても良く、本明細書でシロキサン類の架橋体という場合は、シロキサン類とポリオレフィンとの混合架橋体を含むものとする。なお、ポリオレフィンとは、オレフィンやアルケンを重合させたオリゴマーまたはポリマーのことを云い、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1ヘキセン、ポリ1-オクテン、ポリ酢酸ビニル、ポリ4-メチル-1-ペンテンのほか、これらの混合物あるいはこれらの共重合体を挙げることができる。
【0022】
先記の通り、保護層は、機能層の機能を低下させるあるいは失活させるような気体の透過を防止したり抑制したりする機能を有する層であることが好ましい。硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)等の気体が含まれた混合気体について、従来の気体分離膜を用いて気体分離操作を行うと、気体分離膜の機能層における気体分離性能が早急に低下するという現象が見られた。このような気体分離機能の低下を防止または抑制するために、本実施形態においては、保護層を多孔質の支持膜を介して機能層と反対側の面に設ける。本実施形態の気体分離膜において、保護層が設けられている側の面から混合気体を透過させた場合に、機能層の気体分離機能を低下させるような気体(たとえばSOxやNOx)の透過が防止され、もって、これらの気体が機能層に接触しないようになる。保護層にこのような機能を発揮させるためには、保護層の厚さを0.1μm~数100μm程度、たとえば0.5μm~500μm、好ましくは1μm~200μm、さらに好ましくは10μm~100μmとすることができる。保護層の厚さが厚すぎると、混合気体の透過性が低下して、効率の良い気体分離が困難になることがあり、他方、保護層の厚さが薄すぎると、多孔質の支持膜の面を均一にムラなく保護層にて覆うことが難しくなる。
【0023】
実施形態において、機能層は、水溶性高分子と、水溶性のアルカノールアミン類より選択される少なくとも1種のアミン化合物とを含有することが好ましい。水溶性高分子とは、水に溶解性または易溶性の高分子化合物のことである。本実施形態では、水溶性高分子として、ポリビニルアルコール類、ポリアクリル酸類、ポリエチレングリコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアミン類、多糖類、およびこれらの共重合体からなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0024】
一方、アルカノールアミン類とは、アルカン骨格にヒドロキシ基とアミノ基とを有する化合物である。本実施形態で用いるアルカノールアミン類は、水溶性であることが好ましい。このような水溶性のアルカノールアミン類として、メタノールアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、ヘプタミノール、ジメチルエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N-(2-アミノエチル)エタノールアミン、N-[2-(ジメチルアミノ)エチル]、N-メチルエタノールアミン、N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]エタノールアミン、N-(1,2-ジヒドロキシ-n-プロピル)ピペラジン、N-[(1-ヒドロキシメチル、2-ヒドロキシ)-n-プロピル]ピペラジン、N-[(1-ヒドロキシ、2-ヒドロキシメチル)-n-プロピル]ピペラジン、N-(1,2-ジヒドロキシ-n-プロピル)-N’-メチル-ピペラジン、N-[1,2-ビス(ヒドロキシメチル)-n-プロピル]ピペラジン、N-[1,2-ビス(ヒドロキシメチル)-n-プロピル]-N’-メチル-ピペラジン、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、およびペンタエチレンヘキサミン(PEHA)等を挙げることができる。
【0025】
本実施形態において水溶性高分子と水溶性のアルカノールアミン類を用いるのは、機能層の形成時に、水溶性高分子と水溶性アルカノールアミン類とを水に溶解し、これを多孔質の支持膜の面に塗布して乾燥させて、水溶性高分子のマトリクス内にアルカノールアミン類が分散した機能層を得るためである。本実施形態において、水溶性アルカノールアミン類が水溶性高分子マトリクス内に分散した機能層は、特に二酸化炭素の分離機能を示す。すなわち、水溶性アルカノールアミン類が水溶性高分子マトリクス内に分散した機能層は、二酸化炭素を選択的に透過させる働きをする。ここで水溶性アルカノールアミン類は、水溶性高分子マトリクス内に1重量%~90重量%含まれていれば良く、二酸化炭素の分離機能をより効果的に発揮させるためには、水溶性アルカノールアミン類は水溶性高分子マトリクス内に10重量%~80重量%、好ましくは30重量%~70重量%、さらに好ましくは40重量%~60重量%含まれている。機能層の厚さは、0.001μm~1000μm、好ましくは0.1μm~100μm、さらに好ましくは0.3μm~5μmとすることができる。機能層の厚さが厚すぎると、気体の透過性が減少し、他方、機能層の厚さが薄すぎると、機能層に欠陥が生じやすくなる。
本実施形態において、多孔質の支持膜と、保護層と、機能層とが、上記の順で積層されていることは重要な技術的特徴である。本実施形態の気体分離膜を使用して、混合気体から所望の気体を分離するためには、混合気体をまず保護層に接触させ、保護層にて機能層の気体分離機能を低下させる気体をブロックし、混合気体を多孔質の支持膜を通過させ、最後に機能層で所望でない気体を分離して、機能層の側の面から所望の気体を得る、ように使用するので、本実施形態の気体分離膜の各層の積層順序は重要である。
【0026】
本発明の二の実施形態は、本発明の一の実施形態の気体分離膜の該保護層を有する一の面に、少なくとも二酸化炭素を含む混合気体を接触させて、該気体分離膜内に二酸化炭素を選択的に通過させ、該機能層を有する他の面から二酸化炭素を取り出す気体分離方法である。実施形態の気体分離方法は、上記の一の実施形態の気体分離膜を用いて行うことが好ましい。上記の通り、一の実施形態の気体分離膜は、多孔質の支持膜の一の面に保護層を有し、他の面に機能層を有する。この保護層を有する一の面に、少なくとも二酸化炭素を含む混合気体を接触させると、混合気体中に含まれた、保護層を透過することができない気体が保護層でその透過を防止され、保護層を透過しにくい気体が保護層でその透過を抑制される。このような気体は、機能層の気体分離機能を低下させる気体である場合がある。このような気体を保護層でブロックし、混合気体からは除かれて、それら以外の混合気体が多孔質の支持膜を透過する。多孔質の支持膜を透過した混合気体は機能層に到達する。機能層には、二酸化炭素の分離機能(二酸化炭素の選択的透過機能)を発揮するアルカノールアミン類が含まれており、機能層に到達した混合気体のうち二酸化炭素のみが機能層を透過する。こうして一の実施形態の気体分離膜の他の面から二酸化炭素を取り出すことができる。本実施形態の気体分離方法は、低温(たとえば0℃)から高温(たとえば100℃)までの広い温度域にて行うことができる。
本実施形態の気体分離方法により、二酸化炭素を含む混合気体から優れた分離能をもって二酸化炭素を分離することが可能となる。一の実施形態の気体分離膜には、好ましくは機能層の機能を低下させるような気体の透過を防止または抑制する保護層が存在しているので、機能層の機能の劣化や失活が起こりにくく、大量の混合気体の処理と長期間にわたる混合気体の処理が可能となる。
【0027】
本発明の三の実施形態は、多孔質の支持膜に、機能層と、保護層とを有する、気体分離膜の製造方法である。気体分離膜の製造方法において、該多孔質の支持膜の一の面に、シロキサン類と、場合によりポリオレフィンと、架橋剤とを含む混合物を塗布し、加熱して、該保護層を形成し、次いで該多孔質の支持膜の他の面に、水溶性高分子と、水溶性のアルカノールアミン類より選択される少なくとも1種のアミン化合物と、水とを含む水溶液を塗布し、乾燥して、機能層を形成する各工程を含むことを特徴とする。三の実施形態により製造する気体分離膜は、多孔質の支持膜に、機能層と、保護層とを有する。本実施形態は、まず、多孔質の支持膜の一の面に、シロキサン類と、場合によりポリオレフィンと、架橋剤とを含む混合物を塗布し、加熱して、該保護層を形成する工程を有する。ここで、多孔質とは、構造物に複数の穴(孔)が空いている性質のことを指し、好ましくは多数の細孔が空いている性質のことを云う。多孔質材料は、細孔の大きさに応じて、ミクロポーラス材料、メソポーラス材料、マクロポーラス材料があり、本実施形態の多孔質の支持膜としていずれの材料を用いても良い。多孔質材料として、いかなる材料のものを用いても良く、たとえば、活性炭、ゼオライト、メソポーラスシリカ、軽石のほか、天然繊維(綿、麻、毛等)、化学繊維(ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、アセテート、プロミックス、レーヨン、アラミド、ポリアクリロニトリル等)、およびその他の熱可塑性樹脂(ポリビニルアルコール、ポリスルホン、ポリフッ化ビニリデン等)を用いることができる。実施形態において、多孔質の支持膜は、後述する保護層と機能層とを付着あるいは担持させるための支持部材である。支持膜は、特定の面積を有する板状の硬質または軟質の膜を指すが、実施形態において支持膜の形状は、板状に限らず、板状の膜を丸めた、球状や筒状等の形状であっても良く、本実施形態の気体分離膜の使用の形態に応じて自由に形成することができる。支持膜は、実施形態の気体分離膜の使用の形態に応じて、マイクロメートルからミリメートルオーダーまでの種々の厚さとすることができる。支持膜の厚さは、好ましくは50μm~1cm、さらに好ましくは100μm~5mm、特に好ましくは300μm~1mmである。多孔質の支持膜として、特に、壁面に微細孔を有する中空形状(ストロー形状)の中空糸膜を用いると、容積あたりの膜面積を大きくすることができて好適である。中空形状の中空糸膜は、内側の面と外側の面の二面を有している。多孔質の支持膜として、限外濾過用(UF)中空糸膜や精密濾過用(MF)中空糸膜を用いることができる。中空糸膜の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、酢酸セルロース、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレン等を挙げることができる。このようなUF中空糸膜や、MF中空糸膜は、市販のものを適宜入手可能である。
【0028】
多孔質の支持膜の一の面に設ける保護層は、シロキサン類の架橋体またはシロキサン類とポリオレフィンとの混合架橋体を含むことが好ましい。そこで、まずシロキサン結合を繰り返して有する化合物(オリゴマーまたはポリマー)であるシロキサン類と、架橋剤とを含む混合物を作製し、これを多孔質の支持膜の一の面に塗布し、加熱してシロキサン類を架橋させ、シロキサン類の架橋体を含む保護層を形成することができる。保護層を形成する際に、シロキサン類と架橋剤の他にポリオレフィンを含んだ混合物を塗布しても良い。多孔質の支持膜の一の面に、シロキサン類とポリオレフィンと架橋剤とを含む混合物を塗布して加熱した場合は、シロキサン類とポリオレフィンとの混合架橋体を含む保護層が形成される。多孔質の支持膜の一の面にシロキサン類と架橋剤の混合物を塗布する方法は、スプレー噴霧法、キャスト法、ディップ法、スクリーン印刷法、ドクターブレード法、スピンコーティング法等の従来から行われている公知の方法により行うことができる。シロキサン類(および場合によりポリオレフィン)を架橋させるための加熱は、オーブン、乾燥機等の従来から公知の加熱手段を適宜用いて行うことができる。
【0029】
実施形態で用いるシロキサン類として、以下の式(1):
【化6】
(式中、R
1およびR
2は、各々独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のフルオロアルキル基、またはフェニル基を表す。)で表される少なくとも1種を構成単位とする重合体または共重合体が挙げられる。このようなシロキサン類として、たとえば、ポリジメチルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン、ポリメチル(3,3,3-トリフロオロプロピル)シロキサン、ポリ(1-トリメチルシリル-1-プロピン)、ポリジ(トリフルオロプロピル)シロキサンおよびこれらの混合物を挙げることができる。またシロキサン類の架橋剤として、白金、スズ、チタン等の金属触媒、ジクミルパーオキサイド、1、1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、ジ(4-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド等の、アシル系またはアルキル系有機過酸化物等を用いることができる。
【0030】
この工程で形成される保護層は、機能層の機能を低下させるあるいは失活させるような気体の透過を防止したり抑制したりする機能を有する層であることが好ましい。気体分離を行う混合気体中に、特に硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)等の気体が含まれている場合、気体分離膜の機能層における気体分離性能が早急に低下するという現象を防ぐために、多孔質の支持膜の一の面に保護層を設ける。本実施形態で製造される気体分離膜において、保護層が設けられている側の面から混合気体を透過させた場合に、機能層の気体分離機能を低下させるような気体(たとえばSOxやNOx)の透過が防止され、もって、これらの気体が機能層に到達しないようになる。なお、本実施形態において保護層の厚さは0.1μm~数100μm程度、たとえば0.55μm~500μm、好ましくは1μm~200μm、さらに好ましくは10μm~100μmとすることができる。
【0031】
本実施形態は、次いで、多孔質の支持膜の他の面に、水溶性高分子と、水溶性のアルカノールアミン類より選択される少なくとも1種のアミン化合物と、水とを含む水溶液を塗布し、乾燥して、機能層を形成する工程を有する。ここで水溶性高分子とは、水に溶解性または易溶性の高分子化合物のことである。本実施形態では、水溶性高分子として、ポリビニルアルコール類、ポリアクリル酸類、ポリエチレングリコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアミン類、多糖類、およびこれらの共重合体からなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0032】
一方、アルカノールアミン類とは、アルカン骨格にヒドロキシ基とアミノ基とを有する化合物である。本実施形態で用いるアルカノールアミン類は、水溶性であることが好ましい。このような水溶性のアルカノールアミン類として、メタノールアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、ヘプタミノール、ジメチルエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N-(2-アミノエチル)エタノールアミン、N-[2-(ジメチルアミノ)エチル]、N-メチルエタノールアミン、N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]エタノールアミン、N-(1,2-ジヒドロキシ-n-プロピル)ピペラジン、N-[(1-ヒドロキシメチル、2-ヒドロキシ)-n-プロピル]ピペラジン、N-[(1-ヒドロキシ、2-ヒドロキシメチル)-n-プロピル]ピペラジン、N-(1,2-ジヒドロキシ-n-プロピル)-N’-メチル-ピペラジン、N-[1,2-ビス(ヒドロキシメチル)-n-プロピル]ピペラジン、N-[1,2-ビス(ヒドロキシメチル)-n-プロピル]-N’-メチル-ピペラジン、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、およびペンタエチレンヘキサミン(PEHA)等を挙げることができる。
【0033】
水溶性アルカノールアミン類は、水溶性高分子マトリクス内に1重量%~90重量%含まれていれば良く、二酸化炭素気体の分離機能をより効果的に発揮するためには、10重量%~80重量%、好ましくは30重量%~70重量%、さらに好ましくは40重量%~60重量%含まれている。そこで、このような機能層を形成するために、水の重量に対して0.1%-50%、好ましくは1%-30%の水溶性アルカノールアミンと、0.01%-20%、好ましくは0.1%-10%の水溶性高分子とを溶解させて、この混合水溶液を多孔質の支持膜の他の面に塗布することができる。
【0034】
ここで水溶性高分子と水溶性アルカノールアミンを溶解させる溶媒は、主成分として水を含んでいれば、たとえば、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフランおよびこれらの1以上の混合物を含んでいても良い。本明細書で、水溶性高分子と水溶性アルカノールアミンを溶解させる「水」という場合、主成分である水の他に、上記の成分を含有する場合を含むものとする。水溶性高分子と水溶性アルカノールアミン類とを水に溶解し、好ましくはこの混合物を公知の方法(たとえば撹拌子、スターラーによる撹拌、撹拌羽根による撹拌、振盪機による撹拌、超音波による撹拌)によりよく撹拌し、概ね均一な混合水溶液を得、この混合水溶液を多孔質の支持膜の面に塗布して乾燥させて、水溶性高分子のマトリクス内にアルカノールアミン類が分散した機能層を形成することができる。この際、多孔質の支持膜上への混合水溶液の塗布は、スプレー噴霧法、キャスト法、ディップ法、スクリーン印刷法、ドクターブレード法、スピンコーティング法等の従来から行われている公知の方法により行うことができる。塗布した混合水溶液を乾燥させる方法は、大気下での放置や、各種オーブンやドライヤーによる乾燥等の公知の方法により行えば良く、ヘリウム、アルゴン、窒素等の不活性気体下にて乾燥を行うこともできる。こうして形成した機能層の厚さは、0.001μm~1000μm、好ましくは0.1μm~100μm、さらに好ましくは0.3μm~5μmとすることができる。本実施形態において、水溶性のアルカノールアミン類が水溶性高分子マトリクス内に分散した機能層は、特に二酸化炭素気体の分離機能(二酸化炭素の選択的透過機能)を発揮することができる。
【0035】
本実施形態において、まず多孔質の支持膜の一の面に保護層を形成し、次いで多孔質の支持膜の他の面に機能層を形成することが重要である。このような順序で多孔質の支持膜の両面に保護層と機能層とを形成することにより、ムラ等のない安定した両層を設けることができる。
なお、
図1には、本実施形態の気体分離膜の製造方法の各工程と順序を示す。
【0036】
本発明の四の実施形態は、少なくとも二酸化炭素を含む混合気体を導入する、混合気体入口と、
該混合気体から分離された二酸化炭素を排出する、二酸化炭素排出口と、
該混合気体から二酸化炭素が分離された分離混合気体を排出する、分離気体排出口と、
を備えたモジュール容器の内部に、気体分離膜を1つ以上配置した、気体分離膜モジュールである。本実施形態の気体分離膜モジュールにおいて、該気体分離膜は、中空糸膜の一の面に、シロキサン類の架橋体またはシロキサン類とポリオレフィンとの混合架橋体を含んだ保護層を有し、該中空糸膜の二の面に、水溶性高分子と、水溶性のアルカノールアミン類より選択される少なくとも1種のアミン化合物とを含有する機能層を有することを特徴とする。本発明の四の実施形態の気体分離膜モジュールは、少なくとも二酸化炭素を含む混合気体を導入する、混合気体入口と、混合気体から分離された二酸化炭素を排出する、二酸化炭素排出口と、混合気体から二酸化炭素が分離された分離混合気体を排出する、分離気体排出口と、を備えたモジュール容器を構成要素として備える。モジュール容器は、その内部に、後述する気体分離膜を1つ以上配置することができるような筐体である。モジュール容器の形状は、直方体や立方体等の角柱体や、円柱体、球体等のいかなる形状であっても良く、モジュール容器の材質は、金属、プラスチック、樹脂等であって良い。モジュール容器は、少なくとも二酸化炭素を含む混合気体を導入するための混合気体入口と、混合気体から分離された二酸化炭素を排出するための二酸化炭素排出口と、混合気体から二酸化炭素が分離された分離混合気体を排出するための分離気体排出口と、を備える。混合気体入口からモジュール容器内部に導入された混合気体は、後述する、モジュール容器の内部に配置された1つ以上の気体分離膜を透過し、ここで二酸化炭素と、二酸化炭素が分離された分離気体とに分けられ、二酸化炭素は二酸化炭素排出口から排出され、分離気体は分離気体排出口から排出される。
図2には、本実施形態の気体分離膜モジュールの例を示す。
図2中、1は気体分離膜モジュール;2はモジュール容器、21は混合気体入口;22は二酸化炭素排出口;23は分離気体排出口;24はスイープガス導入口である。
【0037】
ここで、モジュール容器内部に配置される気体分離膜は、中空糸膜の一の面に、シロキサン類の架橋体またはシロキサン類とポリオレフィンとの混合架橋体を含んだ保護層を有し、該中空糸膜の二の面に、水溶性高分子と、水溶性のアルカノールアミン類より選択される少なくとも1種のアミン化合物とを含有する機能層を有する。気体分離膜の支持体として用いられる中空糸膜は、壁面に微細孔を有する中空形状(ストロー形状)の膜である。中空形状の中空糸膜は、内側の面と外側の面の二面を有している。中空糸膜の厚さは、マイクロメートルからミリメートルオーダーまでの種々のものを使用することができ、たとえば、10μm~1mm、好ましくは30μm~800μm、さらに好ましくは50μm~500μmとすることができる。なお、中空糸膜として、限外濾過用(UF)中空糸膜や精密濾過用(MF)中空糸膜を用いることができる。中空糸膜の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、酢酸セルロース、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレン等を挙げることができる。このようなUF中空糸膜や、MF中空糸膜は、市販のものを適宜入手可能である。
【0038】
本実施形態において用いられる気体分離膜は、中空糸膜の一の面に、シロキサン類の架橋体またはシロキサン類とポリオレフィンとの混合架橋体を含んだ保護層を有する。保護層は、機能層の気体分離機能を低下させるような気体の透過を防止したり抑制したりする機能を有する層であることが好ましい。実施形態において、保護層は、シロキサン類の架橋体またはシロキサン類とポリオレフィンとの混合架橋体を含むことが好ましい。ここでシロキサン類とは、シロキサン結合を繰り返して有する化合物のことを意味し、オリゴマー、あるいはポリマーであって良い。ここでシロキサン類は、以下の式(1):
【化7】
(式中、R
1およびR
2は、各々独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のフルオロアルキル基、またはフェニル基を表す。)で表される少なくとも1種を構成単位とする重合体または共重合体であることが好ましい。このようなシロキサン類として、たとえば、ポリジメチルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン、ポリメチル(3,3,3-トリフロオロプロピル)シロキサン、ポリ(1-トリメチルシリル-1-プロピン)、ポリジ(トリフルオロプロピル)シロキサンおよびこれらの混合物を挙げることができる。また、シロキサン類の架橋剤として、白金、スズ、チタン等の金属触媒、ジクミルパーオキサイド、1、1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、ジ(4-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド等の、アシル系またはアルキル系有機過酸化物等を用いることができる。保護層は、これらのシロキサン類を架橋した、シロキサン類の架橋体を含む。保護層は、シロキサン類と場合によりポリオレフィンとの混合架橋体を含んでいても良い。
【0039】
一方、本実施形態において用いられる気体分離膜は、中空糸膜の二の面に、水溶性高分子と、水溶性のアルカノールアミン類より選択される少なくとも1種のアミン化合物とを含有する機能層を有する。機能層は、所望の気体を含む混合気体から所望の気体を分離する機能、あるいは、反対に、所望ではない気体を分離する機能(気体分離機能)を有する層である。ここで水溶性高分子とは、水に溶解性または易溶性の高分子化合物のことであり、本実施形態では、水溶性高分子として、ポリビニルアルコール類、ポリアクリル酸類、ポリエチレングリコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアミン類、多糖類、およびこれらの共重合体からなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0040】
一方、アルカノールアミン類とは、アルカン骨格にヒドロキシ基とアミノ基とを有する化合物であり、本実施形態で用いるアルカノールアミン類は、水溶性であることが好ましい。このような水溶性のアルカノールアミン類として、メタノールアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、ヘプタミノール、ジメチルエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N-(2-アミノエチル)エタノールアミン、N-[2-(ジメチルアミノ)エチル]、N-メチルエタノールアミン、N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]エタノールアミン、N-(1,2-ジヒドロキシ-n-プロピル)ピペラジン、N-[(1-ヒドロキシメチル、2-ヒドロキシ)-n-プロピル]ピペラジン、N-[(1-ヒドロキシ、2-ヒドロキシメチル)-n-プロピル]ピペラジン、N-(1,2-ジヒドロキシ-n-プロピル)-N’-メチル-ピペラジン、N-[1,2-ビス(ヒドロキシメチル)-n-プロピル]ピペラジン、N-[1,2-ビス(ヒドロキシメチル)-n-プロピル]-N’-メチル-ピペラジン、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、およびペンタエチレンヘキサミン(PEHA)等を挙げることができる。
【0041】
本実施形態において、機能層は、水溶性のアルカノールアミン類が水溶性高分子マトリクス内に分散した層となっている。このような機能層は、特に二酸化炭素気体の分離機能を発揮することができる。水溶性アルカノールアミン類は、水溶性高分子マトリクス内に1重量%-90重量%含まれていれば良く、二酸化炭素気体の分離機能をより効果的に発揮するためには、10重量%~80重量%、好ましくは30重量%~70重量%、さらに好ましくは40重量%~60重量%含まれている。機能層の厚さは、0.001μm~1000μm、好ましくは0.1μm~100μm、さらに好ましくは0.3μm~5μmとすることができる。
本実施形態において、中空糸膜の一の面に保護層が形成され、二の面に機能層が形成されている構造は、重要な技術的特徴である。本実施形態の気体分離膜モジュールは、内部に配置されている気体分離膜の保護層にまず混合気体を接触させ、保護層にて機能層の気体分離機能を低下させる気体をブロックし、混合気体を中空糸膜を通過させ、最後に機能層で所望でない気体を分離して、機能層の側の面から所望の気体を得る、ように使用するので、本実施形態に使用されている気体分離膜の各層の構成順序は重要である。なお、本実施形態において、中空糸膜の内側の面に機能層が形成され、外側の面に保護層が形成されていることが特に好ましいが、気体分離膜モジュールの使用に態様に応じて、中空糸膜の外側の面に機能層が設けられ、内側の面に保護層が形成されていても良い。
図3は、本実施形態において用いられる気体分離膜の例である。
図3には、中空糸膜の内側の面に機能層が形成され、外側の面に保護層が形成されている気体分離膜の断面図が示されている。
図3の気体分離膜において、二酸化炭素、窒素、二酸化硫黄等を含む硫黄酸化物あるいは窒素酸化物が含まれた混合気体をまず気体分離膜の保護層の側に接触させる。保護層は、機能層の気体分離機能を低下させる気体(硫黄酸化物、窒素酸化物等)をブロックし、その他の気体は中空糸膜を通過する。次いで機能層では所望の気体(二酸化炭素)以外の気体(窒素等)を分離して、機能層の側から二酸化炭素を得ることができる。
【0042】
このような中空糸膜を利用した気体分離膜の1つ以上が、モジュール容器内部に配置されている。気体分離膜はモジュール容器内部にどのように配置しても良く、規則的に並列させたり、円形に配列したり、モジュール容器内部に隙間をあけて、あるいは隙間をあけずに配置させたりすることができる。
【0043】
本発明の五の実施形態は、上記の四の実施形態の気体分離膜モジュールの、該混合気体入口から、少なくとも二酸化炭素を含む混合気体を導入し、該気体分離膜の一の面に、該混合気体を接触させて、該気体分離膜内に二酸化炭素を選択的に通過させ、該気体分離膜の二の面から二酸化炭素を取り出し、取り出した二酸化炭素を該二酸化炭素排出口から排出し、該混合気体から二酸化炭素が分離された分離混合気体を該分離気体排出口から排出する各工程を含む、混合気体から二酸化炭素を分離する方法である。まず、四の実施形態の気体分離膜モジュールの混合気体入口から、少なくとも二酸化炭素を含む混合気体をモジュール容器内に導入する。導入された混合気体を気体分離膜の一の面、すなわち保護層が形成された面に接触させて混合気体を気体分離膜に透過させる。ここで保護層に接触した混合気体のうち、保護層にて透過を防止または抑制された気体は中空糸膜を透過することができずに分離気体となる。一方、保護層を透過した気体は中空糸膜を透過して気体分離膜の二の面、すなわち機能層に到達する。機能層に到達した混合気体のうち、二酸化炭素のみが機能層を透過して、その他の気体は透過することができずに分離気体となる。こうして機能層が形成された面から二酸化炭素が取り出される。こうして取り出した二酸化炭素は二酸化炭素排出口から二酸化炭素を排出し、混合気体から二酸化炭素を分離した残りの分離気体は分離気体排出口から排出する。こうして四の実施形態の気体分離膜モジュールを利用して、混合気体から二酸化炭素を選択的に分離することができる。本実施形態の気体分離方法は、低温(たとえば0℃)から高温(たとえば100℃)までの広い温度域にて行うことができる。
【0044】
本発明の六の実施形態は、少なくとも二酸化炭素を含む混合気体を導入する、混合気体入口と、
該混合気体から分離された二酸化炭素を排出する、二酸化炭素排出口と、
該混合気体から二酸化炭素が分離された分離混合気体を排出する、分離気体排出口と、
を備えたモジュール容器内部に、
中空糸膜の一面に、保護層を有し、
該中空糸膜の二の面に、機能層を有する気体分離膜を、1つ以上配置した、気体分離膜モジュールの製造方法である。本実施形態において、まずモジュール容器内部に、中空糸膜を1つ以上配置する工程を有する。ここでモジュール容器は、その内部に、中空糸膜を1つ以上配置することができるような筐体である。モジュール容器の形状は、直方体や立方体等の角柱体や、円柱体、球体等のいかなる形状であっても良く、モジュール容器の材質は、金属、プラスチック、樹脂等であって良い。モジュール容器は、少なくとも二酸化炭素を含む混合気体を導入するための混合気体入口と、混合気体から分離された二酸化炭素を排出するための二酸化炭素排出口と、混合気体から二酸化炭素が分離された分離混合気体を排出するための分離気体排出口と、を備えるものである。このようなモジュール容器内部に、中空糸膜を1つ以上配置する。ここで中空糸膜は、壁面に微細孔を有する中空形状(ストロー形状)の膜である。中空形状の中空糸膜は、内側の面と外側の面の二面を有している。中空糸膜の厚さは、マイクロメートルからミリメートルオーダーまでの種々のものを使用することができ、たとえば、10μm~1mm、好ましくは30μm~800μm、さらに好ましくは50μm~500μmとすることができる。なお、中空糸膜として、限外濾過用(UF)中空糸膜や精密濾過用(MF)中空糸膜を用いることができる。中空糸膜の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、酢酸セルロース、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレン等を挙げることができる。このようなUF中空糸膜や、MF中空糸膜は、市販のものを適宜入手可能である。中空糸膜は、モジュール容器内部にどのように配置しても良く、たとえば規則的に並列させたり、円形に配列したり、モジュール容器内部に隙間をあけて、あるいは隙間をあけずに配置させたりすることができる。
【0045】
本実施形態は、次いで、モジュール容器内部に配置した中空糸膜の一の面に、シロキサン類と、場合によりポリオレフィンと、架橋剤とを含む混合物を塗布し、加熱して、保護層を形成する工程を有する。シロキサン結合を繰り返して有する化合物(オリゴマーまたはポリマー)であるシロキサン類と、架橋剤とを含む混合物を塗布し、加熱してシロキサン類を架橋させ、シロキサン類の架橋体を含む保護層を形成することができる。保護層を形成する際に、シロキサン類と架橋剤の他にポリオレフィンを含んだ混合物を塗布しても良い。中空糸膜の一の面に、シロキサン類とポリオレフィンと架橋剤とを含む混合物を塗布して加熱した場合は、シロキサン類とポリオレフィンとの混合架橋体を含む保護層が形成される。中空糸膜の一の面にシロキサン類と架橋剤の混合物を塗布する方法は、スプレー噴霧法、キャスト法、ディップ法、スクリーン印刷法、ドクターブレード法、スピンコーティング法等の従来から行われている公知の方法により行うことができる。シロキサン類(および場合によりポリオレフィン)を架橋させるための加熱は、オーブン、乾燥機等の従来から公知の加熱手段を適宜用いて行うことができる。実施形態で用いるシロキサン類として、以下の式(1):
【化8】
(式中、R
1およびR
2は、各々独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のフルオロアルキル基、またはフェニル基を表す。)で表される少なくとも1種を構成単位とする重合体または共重合体が挙げられる。このようなシロキサン類として、たとえば、ポリジメチルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン、ポリメチル(3,3,3-トリフロオロプロピル)シロキサン、ポリ(1-トリメチルシリル-1-プロピン)、ポリジ(トリフルオロプロピル)シロキサンおよびこれらの混合物を挙げることができる。また、シロキサン類の架橋剤として、白金、スズ、チタン等の金属触媒、ジクミルパーオキサイド、1、1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、ジ(4-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド等の、アシル系またはアルキル系有機過酸化物等を用いることができる。この工程で形成される保護層は、機能層の機能を低下させるあるいは失活させるような気体の透過を防止したり抑制したりする機能を有する層であることが好ましい。気体分離を行う混合気体中に、特に硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)等の気体が含まれている場合、気体分離膜の機能層における気体分離性能が早急に低下するという現象を防ぐために、まず中空糸膜の外側の面に保護層を設ける。本実施形態の中空糸膜に保護層が設けられていることにより、保護層が設けられている側の面から混合気体を透過させた場合に、機能層の気体分離機能を低下させるような気体(たとえばSOxやNOx)の透過が防止され、もって、これらの気体が機能層に接触しないようになる。なお、本実施形態において保護層の厚さは0.1μm~数100μm程度、たとえば0.5μm~500μm、好ましくは1μm~200μm、さらに好ましくは10μm~100μmとすることができる。
【0046】
本実施形態は、次いで、中空糸膜の二の面に、水溶性高分子と、水溶性のアルカノールアミン類より選択される少なくとも1種のアミン化合物と、水とを含む水溶液を塗布し、乾燥して、該機能層を形成する工程を有する。ここで水溶性高分子とは、水に溶解性または易溶性の高分子化合物のことである。本実施形態では、水溶性高分子として、ポリビニルアルコール類、ポリアクリル酸類、ポリエチレングリコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアミン類、多糖類、およびこれらの共重合体からなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0047】
一方、アルカノールアミン類とは、アルカン骨格にヒドロキシ基とアミノ基とを有する化合物である。本実施形態で用いるアルカノールアミン類は、水溶性であることが好ましい。このような水溶性のアルカノールアミン類として、メタノールアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、ヘプタミノール、ジメチルエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N-(2-アミノエチル)エタノールアミン、N-[2-(ジメチルアミノ)エチル]、N-メチルエタノールアミン、N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]エタノールアミン、N-(1,2-ジヒドロキシ-n-プロピル)ピペラジン、N-[(1-ヒドロキシメチル、2-ヒドロキシ)-n-プロピル]ピペラジン、N-[(1-ヒドロキシ、2-ヒドロキシメチル)-n-プロピル]ピペラジン、N-(1,2-ジヒドロキシ-n-プロピル)-N’-メチル-ピペラジン、N-[1,2-ビス(ヒドロキシメチル)-n-プロピル]ピペラジン、N-[1,2-ビス(ヒドロキシメチル)-n-プロピル]-N’-メチル-ピペラジン、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、およびペンタエチレンヘキサミン(PEHA)等を挙げることができる。水溶性アルカノールアミン類は、水溶性高分子マトリクス内に1重量%~90重量%含まれていれば良く、二酸化炭素気体の分離機能をより効果的に発揮するためには、10重量%~80重量%、好ましくは30重量%~70重量%、さらに好ましくは40重量%~60重量%含まれている。そこで、このような機能層を形成するために、水の重量に対して0.1%-50%、好ましくは1%-30%の水溶性アルカノールアミンと、0.01%-20%、好ましくは0.1%-10%の水溶性高分子とを溶解させて、この混合水溶液を中空糸膜の二の面に塗布することができる。
【0048】
ここで水溶性高分子と水溶性アルカノールアミンを溶解させる溶媒は、主成分として水を含んでいれば、たとえば、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフランおよびこれらの1以上の混合物を含んでいても良い。水溶性高分子と水溶性アルカノールアミン類とを水に溶解し、好ましくはこの混合物を公知の方法(たとえば撹拌子、スターラーによる撹拌、撹拌羽根による撹拌、振盪機による撹拌、超音波による撹拌)によりよく撹拌し、概ね均一な混合水溶液を得、この混合水溶液を中空糸膜の二の面に塗布して乾燥させて、水溶性高分子のマトリクス内にアルカノールアミン類が分散した機能層を形成することができる。この際、多孔質の支持膜上への混合水溶液の塗布は、スプレー噴霧法、キャスト法、ディップ法、スクリーン印刷法、ドクターブレード法、スピンコーティング法等の従来から行われている公知の方法により行うことができる。塗布した混合水溶液を乾燥させる方法は、大気下での放置や、各種オーブンやドライヤーによる乾燥等の公知の方法により行えば良く、ヘリウム、アルゴン、窒素等の不活性気体下にて乾燥を行うこともできる。こうして形成した機能層の厚さは、0.001μm~1000μm、好ましくは0.1μm~100μm、さらに好ましくは0.3μm~5μmとすることができる。
【0049】
本実施形態において、まず中空糸膜の一の面に保護層を形成し、次いで中空糸膜の二の面に機能層を形成することが重要である。このような順序で中空糸膜の内外の面に保護層と機能層とを形成することにより、ムラ等のない安定した両層を設けることができる。なお、本実施形態において、中空糸膜の内側の面に機能層が形成され、外側の面に保護層が形成されていることが特に好ましいが、製造された気体分離膜モジュールの使用に態様に応じて、中空糸膜の外側の面に機能層が設けられ、内側の面に保護層が形成されていても良い。
【0050】
本実施形態の気体分離膜は、多孔質の支持膜の一の面に、好ましくは機能層の機能を低下させる気体の透過を防止または抑制する保護層を有するため、混合気体に含まれ得る、機能層の機能を低下させる気体による機能層の劣化を防止または最小限に抑制することが可能となる。これにより、気体分離膜による大量の混合気体の処理が可能となり、気体分離膜の寿命が延長される。実施形態の気体分離膜を用いて気体分離膜モジュールを得ることも可能である。気体分離膜ならびに気体分離膜モジュールは、比較的工程数の少ない製造方法にて製造可能である。気体分離膜ならびに気体分離膜モジュールを用いた気体分離方法により、所望の気体を選択的に、かつ効率的に分離することが可能である。
【実施例0051】
以下に本発明の実施形態を具体的に説明する。本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0052】
[製造例1:気体分離膜と気体分離膜モジュール]
【0053】
ポリジメチルシロキサン(SYLGARD184、東レ・ダウコーニング株式会社)のベース剤10gと、触媒(架橋剤)1gとを混合した。この混合液体を、内孔径1.4mmの中空糸膜(商品名:マイクローザLP-1053、旭化成株式会社、有効面積は4.4cm2)の外側の面に塗布した。この中空糸膜をオーブンに入れ、温度を80℃に上昇させて、ポリジメチルシロキサンを架橋させた保護層(厚さ:10μm)を形成した。
続いて、ポリビニルアルコール(重量平均分子量:60,000、和光純薬工業株式会社)2gを水198gに溶解させ、ここにN-(2-アミノエチル)-エタノールアミン1gを添加して撹拌し、混合水溶液を得た。得られた混合水溶液を、保護層が形成された中空糸膜の内側に流して接触させ、室温大気下で12時間静置して乾燥させ、機能層(厚さ:0.8μm)を形成した。なお、機能層中のN-(2-アミノエチル)-エタノールアミンの含有量は、ポリビニルアルコールの重量に対して50%であった。こうして、中空糸膜型の気体分離膜を得た。
得られた気体分離膜1本を、混合気体入口と分離気体排出口と二酸化炭素排出口と、さらに気体分離膜を透過した二酸化炭素をスイープするスイープガスを供給する導入口とを備えたステンレス製モジュール容器の内部に配置して、気体分離膜モジュールを得た。
【0054】
[実施例1:混合気体の分離]
二酸化炭素、窒素、および二酸化硫黄(SO2)の各気体のボンベを用意し、これらを、適宜流量計等の機材を介して、気体分離膜モジュールに導入される直前で混合されるように接続した。マスフローコントローラを使用して、二酸化炭素10%と窒素90%とを含み、二酸化硫黄(SO2)30ppmを含有する混合気体となるように調整した。この混合気体を、設定温度40℃、供給量約50mL/分で、気体分離膜モジュールの混合気体入口に導入し、同時にヘリウム(スイープガス)を導入し、混合気体を気体分離膜の外側の面(供給側)に接触させた。気体分離膜の内側の面(透過側)から排出される二酸化炭素を二酸化炭素排出口から排出させ、分離気体は分離気体排出口から排出させた。各排出口から排出された気体の流量を流量計で測定し、ガスクロマトグラフィにて気体成分を分析して、各気体の透過流束および二酸化炭素選択性を算出した。
なお、気体分離の条件は以下の通り:
混合気体供給量:約50mL/分
設定温度:40℃
混合気体:二酸化炭素/窒素=10/90(vol/vol)に、30ppmのSO2を含有させたもの
透過側スイープガス:ヘリウム
相対湿度:90%
圧力:供給側:155kPa、透過側:105kPa
また、透過流束Q(二酸化炭素)とQ(窒素)(単位はGPU[1×10-6cm3(STP)/(s・cm2・cmHg)])を算出する式ならびに二酸化炭素選択性を算出する式は以下の通り:
【0055】
【0056】
(式中、Q:透過流束、n:気体体積、A:中空糸膜面積、t:時間、Δp:供給側(中空糸膜外側)分圧と透過側(中空糸膜内側)分圧の差を表す。)
【0057】
【数2】
(式中、α(CO
2/N
2):二酸化炭素の選択係数、Q
(CO2):二酸化炭素の透過流束、Q
(N2):窒素の透過流束を表す。)
【0058】
ガスクロマトグラフィの分析条件は以下の通り:
供給側:TCD検出器 GC7870A(Agilent Technology社)、
カラム:HayeSep Q×0.5m MS5A×6フィート HayeSep Q×6フィート MS5A×6フィート、
透過側:PDHID検出器 GC7870A(Agilent Technology社)、
カラム:SHINCARBON×4m HayeSep Q×0.5m、
Heスイープガス量:10mL/分
【0059】
二酸化炭素透過流束の経時変化を
図4に、二酸化炭素選択性(二酸化炭素透過性/窒素透過性)の経時変化を
図5に、それぞれ示す。
【0060】
さらに実施例1の気体分離膜モジュールを用いて、二酸化炭素10%と窒素90%とを含み、二酸化硫黄(SO
2)300ppmを含有する混合気体を分離した。混合気体を、気体分離膜モジュールの混合気体入口に導入し、気体分離膜の外側の面に接触させた。気体分離膜の内側の面から排出される二酸化炭素を二酸化炭素排出口から排出させ、分離気体は分離気体排出口から排出させた。気体分離の条件は上記のとおりである。二酸化炭素透過流束の経時変化を
図3に、二酸化炭素選択性(二酸化炭素透過性/窒素透過性)の経時変化を
図4に、それぞれ示す。
【0061】
[比較製造例1:保護層のない気体分離膜と気体分離膜モジュール]
実施例1において、保護層を形成しなかったこと以外は実施例1を繰り返し、機能層のみを形成した気体分離膜を得た。この気体分離膜を用いて実施例1と同様に気体分離膜モジュールを作製し、実施例1と同条件にて気体分離を行った。実施例1と同様に、透過流束と二酸化炭素選択性を算出した。二酸化炭素透過流束の経時変化を
図4に、二酸化炭素選択性の経時変化を
図5に、それぞれ示す。
【0062】
[比較例1:混合気体の分離]
さらに比較例1の気体分離膜モジュールを用いて、二酸化炭素10%と窒素90%とを含み、二酸化硫黄(SO
2)300ppmを含有する混合気体を分離した。二酸化炭素透過流束の経時変化を
図6に、二酸化炭素選択性(二酸化炭素透過性/窒素透過性)の経時変化を
図7に、それぞれ示す。
【0063】
本発明の気体分離膜およびこれを用いた気体分離膜モジュールにより、二酸化炭素を含む混合気体から選択的に二酸化炭素を分離することができた。実施例ならびに比較例で使用したSO
2を30ppm含有するモデル混合気体は、工場等の施設から排出される排気ガスとしては最高レベルの濃度のSO
2を含んだものであるが、このような混合気体を本発明の気体分離膜(気体分離膜モジュール)に接触させても、二酸化炭素透過流束ならびに選択性は長期間失われなかった(
図4、
図5)。これに対し比較製造例の気体分離膜(気体分離膜モジュール)は、二酸化炭素の透過流束が時間とともに逐次低下していき、二酸化炭素の選択性も使用時間200時間を超えた時点から急激に低下した(
図4、
図5)。なお、SO
2を300ppm含有するモデル混合気体を使用して行った気体分離は、いわゆる加速試験であり、本発明の気体分離膜(気体分離膜モジュール)は加速試験においても二酸化炭素の透過流束ならびに選択性の低下が見られなかった(
図6、
図7)。これは、本発明の気体分離膜(気体分離膜モジュール)の長時間にわたる気体分離性能の維持を示唆する結果となっている。
本発明の多孔質の支持膜の一の面に保護層を有し、他の面に機能層を有する気体分離膜は、被分離混合気体中に機能層の気体分離性能を低下させるような気体が含まれていても、その気体分離性能を長期にわたり維持し、長い寿命を有する。