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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023010438
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】自然発電無線センサー
(51)【国際特許分類】
   G08C 17/00 20060101AFI20230113BHJP
【FI】
G08C17/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021114565
(22)【出願日】2021-07-09
(71)【出願人】
【識別番号】000230216
【氏名又は名称】日本ミクロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小松 隆次
(72)【発明者】
【氏名】野田 達郎
【テーマコード(参考)】
2F073
【Fターム(参考)】
2F073AA02
2F073AA03
2F073AA12
2F073AA19
2F073AA22
2F073AA25
2F073AA40
2F073AB01
2F073AB02
2F073BB01
2F073BC02
2F073CC03
2F073CC12
2F073CD11
2F073DD02
2F073DE02
2F073DE06
2F073DE13
2F073EE01
2F073EE13
2F073EF09
2F073FF01
2F073FG01
2F073FG02
2F073GG01
2F073GG05
(57)【要約】
【課題】バッテリー及び電源配線を必要とせず、半永久的に連続的にセンサーデータを取得し、無線送信できる無線センサーを提供する。
【解決手段】測定対象物11に取り付けられて用いる自然発電無線センサー10であって、測定対象物において自然発生する電力を収集して用いる電源部50を具備する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物に取り付けられて用いる自然発電無線センサーであって、
測定対象物において自然発生する電力を収集して用いる電源部を具備することを特徴とする自然発電無線センサー。
【請求項2】
前記電源部は、
測定対象物において自然発生する電力を整流する機能を有することを特徴とする請求項1記載の自然発電無線センサー。
【請求項3】
前記電源部は、
測定対象物において自然発生する電力を電圧制御する機能を有することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の自然発電無線センサー。
【請求項4】
前記電源部は、
測定対象物において自然発生する電力を蓄電する機能を有することを特徴とする請求項1~請求項3のうちのいずれか1項記載の自然発電無線センサー。
【請求項5】
測定対象物の状態を取得するセンサー部と、
前記センサー部によって得られたデータを外部通信する送受信部と、を具備し、
前記電源部は、
測定対象物において自然発生する電力を収集し、収集した電力を前記センサー部、前記送受信部に供給することを特徴とする請求項1~請求項4のうちのいずれか1項記載の自然発電無線センサー。
【請求項6】
測定対象物の状態を取得するセンサー部と、
前記センサー部によって得られたデータの計算及び全体の動作管理を実行する制御部と、
前記センサー部によって得られたデータを外部通信する送受信部と、を具備し、
前記電源部は、
測定対象物において自然発生する電力を収集し、収集した電力を前記センサー部、前記送受信部及び前記制御部に供給することを特徴とする請求項1~請求項5のうちのいずれか1項記載の自然発電無線センサー。
【請求項7】
前記制御部又は前記送受信部は、
前記センサー部によって得られたデータを個体識別IDで管理することを特徴とする請求項6記載の自然発電無線センサー。
【請求項8】
前記制御部は、
前記センサー部によって得られたデータのデジタル化処理を実行することを特徴とする請求項6又は請求項7記載の自然発電無線センサー。
【請求項9】
測定対象物の表面の導体金属に、接着剤、ビス、ボルト、又は粘着テープで取り付けられることを特徴とする請求項1~請求項8のうちのいずれか1項記載の自然発電無線センサー。
【請求項10】
測定対象物との間、又は測定対象物上に配置された中間導電体を介在させて取り付けられることを特徴とする請求項1~請求項8のうちのいずれか1項記載の自然発電無線センサー。
【請求項11】
測定対象物との間に絶縁物と導体金属を組み合わせた構成を介在させて取り付けられることを特徴とする請求項1~請求項8のうちのいずれか1項記載の自然発電無線センサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリーや電源配線を不要とする無線センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IoTの機運の高まりから急速にセンサー市場規模が拡大しており、温度、湿度、圧力、振動、加速度、音、光、流速、速度、測距、GPSなど、様々なセンサーを利用し、データの解析・活用をすることがますます求められている。
また、安全確認、自動化などの用途でも、今後の利用は急激に増えていくと考えられる。
【0003】
センサーデバイスとしては、通常、電源配線により給電を行い、マイコンを利用しセンサーの制御及びデータ取得を行った後、信号線でデータを送信するといった、2系統の配線を行った方法が一般的である。
しかし、センサーデバイスへの配線作業は、施工コストがかかる、引き回しや配置換え作業の負担が大きい、クロストーク発生トラブル防止のためシールド線等を用いた対策が必要、といった点が大きな課題となっている。
また、センサー数量が増加した際や、広大なエリアや生産ラインに設置する際などには、上記の課題がさらに大きくなるとともに、配線重量による装置全体の重量化や、断線した際の復旧の困難さや、接触不良・摩耗個所の探索・修正の大変さといった、保全、管理に対する問題も大きくなる。
【0004】
また、IoT対応として、老朽化の進んだ設備に対し、センサーを後から付加することで、最新型の設備に近い性能にする場合や、新しい設備を導入し、入れ替え、配置換えをするといった場合にも、同様にセンサー配線の問題がある。
国内の製造設備の多くは、老朽化が進んでいて最新型ではないため、IoT化のためには様々なセンサーを取り付ける必要があるが、有線によるセンサーでは工程替えなどにおける配線の変更などが困難となっている。このため、IoT化が難しいとも言われており、今後ますます大きな課題となることが考えられる。
【0005】
なお、センサーデバイスに電源供給用の配線を無くすためにバッテリーを搭載したセンサーデバイスもあるが、多量のバッテリー製造・消費により、交換作業に伴うコスト、廃棄コスト、環境負荷といった新たな問題にも直面している。
また、バッテリー交換が必要なため、交換作業の可能なところにしか設置できない、バッテリーサイズが大きく・重いため、センサーデバイス全体のサイズが小型・軽量化できず、取り付け場所が限定されてしまう、といった用途に対する制限もある。
さらに、バッテリー交換時には、データ取得が中断されるため、連続的にデータ取得が必要な、停止困難な設備類などには利用が難しいといった課題もある。
【0006】
電力の無線送信を行う方法も考えられているが、起電力を空間送信する場合の減衰は大きく、センサーデバイスを起動するために、大きな電力を送信する必要がある。そのため、電波障害の恐れがある環境では利用できず、どこでも利用できるといったものにはなっていない。
また、多量のセンサーデバイスを電力の無線送信で起動しようとした場合、空間に電波があふれる状況となり、人体に対する健康被害(電波公害、デジタル毒)といったものも無視できないレベルとなると考えられ、利用上の課題となる。
【0007】
前記問題点の改善策として、自己発電機能を持たせることで、半永久的にセンサーデータの書き込みが可能な、RFIDタグのようなものが知られている(例えば、特許文献1:特開2006-52742号公報)。
また、ベルトコンベヤー異常監視のためのセンサーデータの取得・送信を、圧電素子を利用した振動自己発電装置を用いることで、バッテリー交換を無しに無線送信するものが知られている(例えば、特許文献2:特開2021-1075号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006-52742号公報
【特許文献2】特開2021-1075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記特許文献1の技術では、RFIDタグの読取りに、起電力としてリーダーライター設備から、1Wといった大きな電力を無線送信しなければならず、数台~数千台といった大規模な管理を考えた場合に、電波障害の恐れがある環境では利用できないといった課題がある。また、センサー側の受け取る電力は非常に小さいため、長距離の通信が困難で、広い範囲での管理には向かないといった課題や、データ計算など複雑な処理が出来ない、温湿度以外の電力を大きく使うセンサーの利用は困難といったような課題もある。
【0010】
上記特許文献2の技術では、自己発電電力が微弱で、デバイスの消費電力に対して、センサーデータの送信を行うのに6時間といった、 比較的長時間の蓄電が必要で、連続した計測を行うことが出来ない。そのため、事故やトラブルの検知を行うなど、緊急性や迅速な対応を要求される用途には利用できない。
【0011】
なお、従来知られている環境発電技術として、太陽光発電は光の当たらない環境では利用できない、熱電発電は熱源のある環境でしか利用できない、振動発電は発電量が小さく、大きな電力を得ようとすると比例してサイズが大型化してしまうなどの、利用上の課題を抱えている。
【0012】
本発明者等は、測定対象物の導体金属表面には、センサーデバイスで利用できる十分な電力が自然発生していることを見出し、これに基づいて上記課題を解決できる構成の無線センサーを開発するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち本発明は、上記の課題を解決すべくなされたもので、様々な環境で測定対象物のセンサーデータを、バッテリー及び電源配線を必要としない無線センサーの提供を目的とする。
【0014】
本発明にかかる自然発電無線センサーによれば、測定対象物に取り付けられて用いる自然発電無線センサーであって、測定対象物において自然発生する電力を収集して用いる電源部を具備することを特徴としている。
この構成を採用することによって、測定対象物において自然発生する電力を用いるため、バッテリー及び電源配線を必要としない無線センサーを提供できる。
【0015】
また、前記電源部は、測定対象物において自然発生する電力を整流する機能を有することを特徴としてもよい。
この構成によれば、測定対象物の表面の導体金属に発生する高周波電力を直流電力に整流して用いることができる。
【0016】
また、前記電源部は、測定対象物において自然発生する電力を電圧制御する機能を有することを特徴としてもよい。
この構成によれば、収集した電力を所定の電圧値に制御して用いることができる。
【0017】
また、前記電源部は、測定対象物において自然発生する電力を蓄電する機能を有することを特徴としてもよい。
この構成によれば、測定対象物において自然発生した電力値に変動があったとしても安定した電力供給を行える。
【0018】
また、測定対象物の状態を取得するセンサー部と、前記センサー部によって得られたデータを外部通信する送受信部と、を具備し、前記電源部は、測定対象物において自然発生する電力を収集し、収集した電力を前記センサー部、前記送受信部に供給することを特徴としてもよい。
この構成によれば、バッテリー及び電源配線を必要とせず、半永久的に連続的にセンサーデータを取得し、無線送信することができる。
【0019】
また、測定対象物の状態を取得するセンサー部と、前記センサー部によって得られたデータの計算及び全体の動作管理を実行する制御部と、前記センサー部によって得られたデータを外部通信する送受信部と、を具備し、前記電源部は、測定対象物において自然発生する電力を収集し、収集した電力を前記センサー部、前記送受信部及び前記制御部に供給することを特徴としてもよい。
この構成によれば、バッテリー及び電源配線を必要とせず、半永久的に連続的にセンサーデータを取得し、無線送信することができる。
【0020】
また、前記制御部又は前記送受信部は、前記センサー部によって得られたデータを個体識別IDで管理することを特徴としてもよい。
この構成によれば、多数の自然発電無線センサーを利用する場合、混乱せずにセンサーデータの紐付け行うことができる。
【0021】
また、前記制御部は、前記センサー部によって得られたデータのデジタル化処理を実行することを特徴としてもよい。
【0022】
また、測定対象物の表面の導体金属に、接着剤、ビス、ボルト、又は粘着テープで取り付けられることを特徴としてもよい。
【0023】
また、測定対象物との間、又は測定対象物上に配置された中間導電体を介在させて取り付けられることを特徴としてもよい。
この構成を採用することによって、測定対象物の表面の導体金属が塗装などされて絶縁されている場合であっても中間導電体により発生する電力を使用して動作させることができる。
【0024】
また、測定対象物との間に絶縁物と導体金属を組み合わせた構成を介在させて取り付けられることを特徴としてもよい。
この構成を採用することによって、測定対象物の導体金属の表面と無線センサーとの間でコンデンサ作用を構成することができ、導体金属の表面に発生する高周波電力を取り込むことができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、バッテリー及び電源配線を必要としない無線センサーとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】自然発電無線センサーの内部構成を示すブロック図である。
図2】自然発電無線センサーを測定対象物に取り付けたところを示す概略説明図である。
図3】接着テープ又は接着剤によって自然発電無線センサーを測定対象物に取り付けた例を示す概略説明図である。
図4】接着テープ又は接着剤によって自然発電無線センサーを測定対象物に取り付けた他の例を示す概略説明図である。
図5】ビス又はボルトによって自然発電無線センサーを測定対象物に取り付けた例を示す概略説明図である。
図6】中間導電体を介して自然発電無線センサーを測定対象物に取り付けたところを示す概略説明図である。
図7】中間導電体を、自然発電無線センサーと離れた位置に設置した例を示す概略説明図である。
図8】絶縁物を介して自然発電無線センサーを測定対象物に取り付けたところを示す概略説明図である。
図9】測定対象物の表面の1つの導体金属に複数の自然発電無線センサーを取り付けたところを示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(全体構成)
以下、図面に基づいて本実施形態における自然発電無線センサーについて説明する。なお、本発明の自然発電無線センサーは下記の実施形態に限定されるものではない。
図1に自然発電無線センサーの内部構成のブロック図を示し、図2に自然発電無線センサーの測定対象物11への取り付けについて示す。
【0028】
本実施形態における自然発電無線センサー10(以下、単に無線センサーと称する場合がある)は、様々な環境における測定対象物11を測定したセンサーデータを、測定対象物11において自然発生する電力を利用することでバッテリー及び電源配線を必要とせず、半永久的に連続的に取得でき、取得したセンサーデータを無線でデータ送信できるというものである。
【0029】
無線センサー10は、測定対象物11の状態を取得するセンサー部20と、センサー部20によって得られたセンサーデータの計算・記録・デジタル化と、動作管理を行う制御部30と、得られたセンサーデータを外部通信する送受信部40と、センサー部20、制御部30、送受信部40に動作電力を与える電源部50と、を備えている。
ただし、無線センサー10に制御部30を設けない構成であってもよい。この場合において、センサーデータの記憶用メモリなどを設けてもよい。
【0030】
(センサー部)
センサー部20は、温度変化を計測する温度センサー、加速度変化を計測する加速度センサー、湿度変化を計測する湿度センサー、圧力変化を計測する圧力センサー、磁気変化を計測する磁気センサー、光量変化を計測する光量センサー、音を計測する音量センサー、距離を測定する測距センサー、液体や気体の流量を計測する流量センサー、角速度を計測するジャイロセンサー、赤外線を測定する赤外線センサー、振動を計測する振動センサー等のセンサー類の少なくとも1つ以上とすることができる。ただし、センサー部20の種類としては、これらのセンサーに限定するものではない。
【0031】
センサー部20は、無線センサー10の内部に内蔵することで、信頼性を高めた使い方が出来るが、センサーのみ離れた場所から接続したいなどの要望に応じて、外部接続してもよい。
【0032】
(制御部)
制御部30は、センサー部20からのセンサーデータを計算処理する機能と、無線センサー10全体の動作制御を実行する機能を有する。また、制御部30内の記憶領域にセンサー部20からのセンサーデータを記憶させておくこともできる。記憶させるセンサーデータは制御部30内でデジタル化処理したデータである。なお、センサーデータを記憶させる記憶領域としては制御部30内の記憶領域に限定するものではなく、データ送受信部40に記憶領域を設けたり、その他記憶用メモリを設けてもよい。
【0033】
制御部30は、センサー部20から入力されたセンサーデータをデジタル処理し、デジタル処理したセンサーデータを送受信部40へ出力する。また制御部30は、センサー部20及び送受信部40それぞれの動作時間を管理し、適切に間欠動作させるように制御することができる。これにより無線センサー10の効率的で省電力な動作を実現できる。これにより、測定対象物に自然発生する電気が微弱であっても、微小電力を利用した連続したセンシング動作が可能となる。
【0034】
無線センサー10は、個体識別用の識別IDを備えている。これにより、数千個といった多量の無線センサー10を利用する場合、混乱せずにセンサーデータの紐付け行うことができる。
識別IDは制御部30、及び/又は送受信部40で保持されるが、それ以外の外部メモリなどを利用して識別IDを保持しても良い。予め識別IDを持つパッシブ通信方式、又はアクティブ通信方式の場合は、それを利用し、その他の通信方式を利用する場合は、別途識別IDを付加することで、個体識別を可能とすることができる。
【0035】
(送受信部)
送受信部40は、無線通信用の半導体と、外部通信用のアンテナと、設定を記憶するメモリを有している。
送受信部40は、920MHzのUHF帯通信、2.4GHz帯通信を用いることが出来るが、前記以外の周波数帯を用いた通信でもよい。
また、送受信部40の通信の方式として、測定対象物に自然発生する電力が小さい場合にはセミパッシブ通信方式を採用することが好ましく、電力に余裕がある場合にはアクティブ通信方式を採用することができる。これにより、通信距離を延ばすことができ、通信の自由度を高めることも可能となる。
【0036】
(電源部)
電源部50は、機械、生産ライン、鉄骨等の建築物、モーター、ヒーター、コントロールボックス等の制御設備、乗り物などの測定対象物11において自然発生した電力を効率よく収集し、電力化する。
電源部50は、測定対象物11において自然発生した電力をセンサー部20、制御部30、送受信部40の各構成要素に供給する。ただし、測定対象物11としては上記のものに限定するものではない。
【0037】
電源部50は、測定対象物11において自然発生した電力を収集し、使用可能な電力化するものであって電源部50自身が発電するものではない。また、電源部50は、電力の安定化と、大きな電力を必要とする用途のために、測定対象物11において自然発生した電力を一時的に蓄電する機能を有する。
このため、バッテリー切れの問題がなく、無線センサー10は測定対象物に取り付けたまま半永久的に使用できるものである。
測定対象物11の表面の導体金属から得られる電力は、交流電力であり、その周波数は、高周波(kHz帯~MHz帯)である。これは、測定対象物の振動の周波数とは一致しない。
【0038】
また、無線センサー10を取り付ける測定対象物の表面は金属等の導体である。測定対象物11の表面の導体には高周波が自然発生している。測定対象物11の表面の導体金属を流れる高周波電力は、1秒あたり0.数μW~数万μWのオーダーであり、電源部50は、この高周波電力を収集して使用できるように、入力端子が測定対象物11の表面の導体に接触可能となるように設けられている。ただし、電源部50における電力の収集は、測定対象物11の表面の導体に接触していることが効率的に好ましいが、非接触であってもよい。
【0039】
測定対象物11において高周波が自然発生する原理に関しては、測定対象物11における振動する導体金属と、測定対象物11の周囲の電界(電場)及び磁界(磁場)との電磁誘導により発生していると考えられる。金属は振動の伝搬速度が速く、振動が伝わりやすいため、反射や共振などで複雑な振動が生まれる。その結果、振動により電界(電場)、磁界(磁場)の中で導体金属が運動することになり、高周波が発生するものと考えられる。
また、発生する高周波電力は、周波数が高いため、電力の大部分は導体表面を複雑に伝搬していると考えられる。
【0040】
測定対象物11の周囲の電界(電場)及び磁界(磁場)の発生は、測定対象物11を動作させた際に生じるものであることも考慮すると、機械、設備、生産ライン、モーターなど電源を入れて駆動する測定対象物11に対して電源をオンにして振動が大きくなり、且つ電界(電場)及び磁界(磁場)が発生することで、より大きな電力を収集できると考えられる。
また、測定対象物11として、ヒーター若しくはコントロールボックス等の制御設備、又は鉄骨の建造物などの静止状態のものであっても、測定対象物11の周囲に電界(電場)及び磁界(磁場)が存在していれば、この電界(電場)及び磁界(磁場)に基づいて発生する電力を利用することができる。この場合、振動している測定対象物11と比較すると得られる電力は小さくなるが、後述する蓄電部56において蓄電することで利用可能である。また、静止状態の測定対象物11の周囲に到達する電波によっても電力が発生するが、この場合に発生する電力は極めて微小である。
【0041】
電源部50は、高周波電力を整流し利用可能な直流電力に変えるAC/DCコンバーター52を備えている。
また、電源部50は、AC/DCコンバーター52によって変換された直流電力の電圧変換するDC/DCコンバーター54を備えることもできる。DC/DCコンバーター54は、測定対象物に自然発生した電力を、センサー部20、制御部30、送受信部40のそれぞれに利用可能な電圧に昇圧可能である。
また、電源部50は、収集した電力を、蓄電する蓄電部56を備える。このため、測定対象物11において自然発生した電力値に変動があったとしても安定した電力供給を行える。
【0042】
AC/DCコンバーター52を通し得られる電力量は、取り付ける設備の大きさや、設備で使用される電力量によって大きく変動し、1秒あたり0.数μW~数万μWとなり、100μW以上と大きく取れる場合が多い。
そのため、無線センサー10は、センシングから、データ計算・記録、デジタル化処理、無線送受信といった複雑な複数の動作が可能な電力を得ることができる。また、無線センサー10に表示機能としてのLEDを設け、LEDを点灯させるようなことも出来る。さらに、無線センサー10に、例えば警報を出す機能を持たせることもできる。さらに、GNSS受信装置を設けて位置の特定ができるようにすることもできる。
【0043】
(測定対象物への取り付け)
なお、無線センサー10を取り付ける測定対象物11としては、電界(電場)及び磁界(磁場)の発生が多い機械、設備、生産ライン、モーターなどの設備に限定するものではなく、ヒーター、コントロールボックス等の制御設備、あるいは鉄骨の建造物などでも利用することができる。
【0044】
測定対象物11における無線センサー10を取り付ける対象の導体金属は、銅、アルミ、チタン、ステンレス、鉄といった材質を用いることが出来るが、これらの材質に限定するものではない。また、測定対象物11における導体金属は、サイズが大きい方が電力発生面で効率が良いが、小さいサイズのものも用いることが出来る。
また、測定対象物11における導体金属の形状は、板状、円柱形、円筒形、ブロック状、棒状のものを用いることが出来るが、これらの形状に限定するものではない。
【0045】
無線センサー10を測定対象物11の表面の導体金属に取り付ける場合には、電源部50の入力端子が測定対象物の表面の導体金属と導通するように取り付けるが、取り付け方法としては接着テープのようなものを用いることもできるし、接着剤、ビス、ボルト等の固定手段を用いることもできる。
【0046】
図3に、接着テープ又は接着剤により無線センサーを測定対象物に取り付けた例を示す。
この例では、接着テープ又は接着剤25を、無線センサー10の測定対象物11の表面に対向する面である取り付け面全体に貼り付け又は塗布して、無線センサー10を測定対象物11の表面の導体金属に取り付けている。
接着テープ又は接着剤25は、絶縁材料で構成されており、無線センサー10は、絶縁材料を介して測定対象物11の表面の導体金属に取り付けられることとなる。
このため、測定対象物11の導体金属と無線センサー10との間でコンデンサ作用を構成することができ、測定対象物11の導体金属の表面に発生する高周波電力を取り込むことができる。
【0047】
図4に、接着テープ又は接着剤により無線センサーを測定対象物に取り付けた他の例を示す。
この例では、接着テープ又は接着剤25を、無線センサー10の測定対象物11の表面に対向する面である取り付け面の一部に貼り付け又は塗布しており、接着テープ又は接着剤25が存在しない箇所には電力収集用端子26が設けられている。
電力収集用端子26は、接着テープ又は接着剤25の厚さ分だけ無線センサー10の取り付け面において突出するように形成されて、測定対象物11の表面の導体金属と電気的に接続する。これにより、電力収集用端子26が測定対象物11の導体金属の表面に発生する高周波電力を取り込むことができる。
なお、電力収集用端子26の位置としては、図4に示した位置に限定するものではなく、測定対象物11の表面の導体金属と電気的に接続できればどのような位置に設けてもよい。
【0048】
図5に、ビス又はボルトにより無線センサーを測定対象物に取り付けた例を示す。
測定対象物11の表面の導体金属には、予め固定用のビス又はボルト28と螺合するようなネジ溝を形成しておく。また、無線センサー10にも、ビス又はボルト28が挿通可能な径の貫通孔35を上面から取り付け面に向けて貫通するように形成する。
図5の例では、ビス又はボルト28の頭部33の下面と接触する位置に電力収集用端子34を設けており、測定対象物11の表面の導体金属に自然発生した高周波電力を、ビス又はボルト28を通じて電力収集用端子34から収集している。
なお、ビス又はボルト28の位置は、図5に示した位置に限定するものではなく、測定対象物11の表面の金属導体に取り付けできればどのような位置に設けてもよい。
【0049】
また、図6に示すように、測定対象物11の表面の導体金属と、無線センサー10との間には、中間導電体15を介在させてもよい。中間導電体15としては、板状の形状が効率が良いため好適であるが、形状は板状には限定しない。
中間導電体15の材質としては、銅、アルミ、チタン、ステンレス、鉄といった材質を採用することができる。ただし、中間導電体15としてはこれらの材質に限定するものではない。また、中間導電体15は、測定対象物11の表面の導体金属との間に両面テープによって固定することができる。なお、中間導電体15の固定方法としては、両面テープに限定するものではなく、例えば無線センサー10と、測定対象物11の表面の導体金属との間をボルト等で固定し、その間に挟み込むようにして固定してもよい。
また、図7に示すように、中間導電体15は、無線センサー10と離れた位置に設置し、電気的な接続ができる導線38を介して中間導電体15と電力収集用端子26とを接続しても良い。これにより、振動が大きいなどの電力収集効率が良い場所に、中間導電体15を設置し、電力収集することができる。
中間導電体15を設けることにより、測定対象物11の表面の導体金属が塗装されて絶縁されているような場合であっても、中間導電体15において電力の発生が考えられ、これにより、電気的に絶縁された金属柱のような構造体からも電力を得ることが可能となる。
このため、中間導電体15のサイズはある程度大きい方が効率的に好ましいが、小さいものを用いることもできる。
【0050】
また、図8に示すように、測定対象物11の表面の導体金属と、無線センサー10との間には、絶縁物22と導体金属24を貼り合わせて構成した中間部材18を配置してもよい。中間部材18を設けることによって、測定対象物11の表面の導体金属と無線センサー10との間、及び/又は、測定対象物11の表面の導体金属と、中間部材18の導体金属24との間にコンデンサ作用を構成し、導体金属の表面に発生する高周波電力を取り込むことができる。
導体金属24としては、銅、アルミ、チタン、ステンレス、鉄等の材質を採用することができる。
絶縁物22としては、プリント配線板材料であるフェノール樹脂、エポキシ樹脂等を採用することができるが、これらに限定するものではなく、その他の樹脂又は樹脂以外の絶縁材料を採用してもよい。
中間部材18のサイズはある程度大きい方が効率的に好ましいが、小さいものを用いることもできる。
【0051】
本発明の無線センサー10では、十分な電力量が得られる結果、利用可能なセンサーの種類と数量を増やすといったことも可能となる。
また、自然発電する電力を利用することにより、リーダー設備から大きな起電力送信を必要とせずに、無線センサーの起動が可能となる。これにより、工場内で数千個のような多量のセンサーを、複数のリーダー設備で管理する際も、電波障害を起こす可能性があるといった従来の課題を解決しながら、安全に利用することができる。
【0052】
さらに、図9に示すように、無線センサー10を測定対象物11の表面の導体金属に取り付ける場合、1つの導体金属上に複数個取り付けることもできる。
このように、測定対象物11の1つの導体金属上に複数個の無線センサー10を取り付けることによって、特に大型の装置、設備、生産ライン等において細かくセンシングすることが可能となる。
【符号の説明】
【0053】
10 自然発電無線センサー(無線センサー)
11 測定対象物
15 中間導電体
18 中間部材
20 センサー部
22 絶縁物
24 導体金属
25 接着テープ又は接着剤
26 電力収集用端子
28 ビス又はボルト
30 制御部
33 ビス又はボルトの頭部
34 電力収集用端子
35 貫通孔
38 導線
40 送受信部
50 電源部
52 AC/DCコンバーター
54 DC/DCコンバーター
56 蓄電部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2022-12-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
本発明にかかる自然発電無線センサーによれば、表面が金属等の導体である測定対象物に取り付けられて用いる自然発電無線センサーであって、表面が金属等の導体であり、振動する測定対象物において、周囲の電界及び磁界との電磁誘導により自然発生する高周波電力を収集して用いる電源部を具備することを特徴としている。
この構成を採用することによって、測定対象物において自然発生する高周波電力を用いるため、バッテリー及び電源配線を必要としない無線センサーを提供できる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
また、前記電源部は、表面が金属等の導体であり、振動する測定対象物において、周囲の電界及び磁界との電磁誘導により自然発生する高周波電力を整流する機能を有することを特徴としてもよい。
この構成によれば、測定対象物の表面の導体金属に発生する高周波電力を直流電力に整流して用いることができる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
また、前記電源部は、表面が金属等の導体であり、振動する測定対象物において、周囲の電界及び磁界との電磁誘導により自然発生する高周波電力を電圧制御する機能を有することを特徴としてもよい。
この構成によれば、収集した高周波電力を所定の電圧値に制御して用いることができる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
また、前記電源部は、表面が金属等の導体であり、振動する測定対象物において、周囲の電界及び磁界との電磁誘導により自然発生する高周波電力を蓄電する機能を有することを特徴としてもよい。
この構成によれば、測定対象物において自然発生した電力値に変動があったとしても安定した電力供給を行える。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
また、測定対象物の状態を取得するセンサー部と、前記センサー部によって得られたデータを外部通信する送受信部と、を具備し、前記電源部は、表面が金属等の導体であり、振動する測定対象物において、周囲の電界及び磁界との電磁誘導により自然発生する高周波電力を収集し、収集した高周波電力を前記センサー部、前記送受信部に供給することを特徴としてもよい。
この構成によれば、バッテリー及び電源配線を必要とせず、半永久的に連続的にセンサーデータを取得し、無線送信することができる。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0019】
また、測定対象物の状態を取得するセンサー部と、前記センサー部によって得られたデータの計算及び全体の動作管理を実行する制御部と、前記センサー部によって得られたデータを外部通信する送受信部と、を具備し、前記電源部は、表面が金属等の導体であり、振動する測定対象物において、周囲の電界及び磁界との電磁誘導により自然発生する高周波電力を収集し、収集した高周波電力を前記センサー部、前記送受信部及び前記制御部に供給することを特徴としてもよい。
この構成によれば、バッテリー及び電源配線を必要とせず、半永久的に連続的にセンサーデータを取得し、無線送信することができる。
【手続補正7】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面が金属等の導体である測定対象物に取り付けられて用いる自然発電無線センサーであって、
表面が金属等の導体であり、振動する測定対象物において、周囲の電界及び磁界との電磁誘導により自然発生する高周波電力を収集して用いる電源部を具備することを特徴とする自然発電無線センサー。
【請求項2】
前記電源部は、
表面が金属等の導体であり、振動する測定対象物において、周囲の電界及び磁界との電磁誘導により自然発生する高周波電力を整流する機能を有することを特徴とする請求項1記載の自然発電無線センサー。
【請求項3】
前記電源部は、
表面が金属等の導体であり、振動する測定対象物において、周囲の電界及び磁界との電磁誘導により自然発生する高周波電力を電圧制御する機能を有することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の自然発電無線センサー。
【請求項4】
前記電源部は、
表面が金属等の導体であり、振動する測定対象物において、周囲の電界及び磁界との電磁誘導により自然発生する高周波電力を蓄電する機能を有することを特徴とする請求項1~請求項3のうちのいずれか1項記載の自然発電無線センサー。
【請求項5】
測定対象物の状態を取得するセンサー部と、
前記センサー部によって得られたデータを外部通信する送受信部と、を具備し、
前記電源部は、
表面が金属等の導体であり、振動する測定対象物において、周囲の電界及び磁界との電磁誘導により自然発生する高周波電力を収集し、収集した高周波電力を前記センサー部、前記送受信部に供給することを特徴とする請求項1~請求項4のうちのいずれか1項記載の自然発電無線センサー。
【請求項6】
測定対象物の状態を取得するセンサー部と、
前記センサー部によって得られたデータの計算及び全体の動作管理を実行する制御部と、
前記センサー部によって得られたデータを外部通信する送受信部と、を具備し、
前記電源部は、
表面が金属等の導体であり、振動する測定対象物において、周囲の電界及び磁界との電磁誘導により自然発生する高周波電力を収集し、収集した高周波電力を前記センサー部、前記送受信部及び前記制御部に供給することを特徴とする請求項1~請求項5のうちのいずれか1項記載の自然発電無線センサー。
【請求項7】
前記制御部又は前記送受信部は、
前記センサー部によって得られたデータを個体識別IDで管理することを特徴とする請求項6記載の自然発電無線センサー。
【請求項8】
前記制御部は、
前記センサー部によって得られたデータのデジタル化処理を実行することを特徴とする請求項6又は請求項7記載の自然発電無線センサー。
【請求項9】
測定対象物の表面の導体金属に、接着剤、ビス、ボルト、又は粘着テープで取り付けられることを特徴とする請求項1~請求項8のうちのいずれか1項記載の自然発電無線センサー。
【請求項10】
測定対象物との間、又は測定対象物上に配置された中間導電体を介在させて取り付けられることを特徴とする請求項1~請求項8のうちのいずれか1項記載の自然発電無線センサー。
【請求項11】
測定対象物との間に絶縁物と導体金属を組み合わせた構成を介在させて取り付けられることを特徴とする請求項1~請求項8のうちのいずれか1項記載の自然発電無線センサー。