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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023104391
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】緩衝装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 7/00 20060101AFI20230721BHJP
   F16F 15/04 20060101ALI20230721BHJP
   F16F 3/07 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
F16F7/00 D
F16F15/04 A
F16F3/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022005340
(22)【出願日】2022-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】猫本 善続
(72)【発明者】
【氏名】田原 善行
(72)【発明者】
【氏名】池田 幸一郎
【テーマコード(参考)】
3J048
3J059
3J066
【Fターム(参考)】
3J048AA01
3J048AD05
3J048BA18
3J048BB10
3J048EA36
3J048EA38
3J059AA01
3J059AA03
3J059BA41
3J059BB03
3J059BC06
3J059BC20
3J059GA01
3J059GA42
3J066AA08
3J066AA21
3J066BA01
3J066BB01
3J066BD05
3J066BE06
(57)【要約】
【課題】小荷重および過渡的な大荷重の双方に対して緩衝効果を得ること。
【解決手段】緩衝装置1は、第一部材51に接続される第一緩衝部材2と、第二部材52に接続されると共に第一緩衝部材2に接続され第一緩衝部材2とは特性が異なる第二緩衝部材3と、第一緩衝部材2に形成された係合部4と、係合部4に係合する係合部材5と、第二部材52に接続されて係合部材5が取り付けられる支持部材6と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一部材に接続される第一緩衝部材と、
第二部材に接続されると共に前記第一緩衝部材に接続され前記第一緩衝部材とは特性が異なる第二緩衝部材と、
前記第一緩衝部材に形成された係合部と、
前記係合部に対して係脱可能に設けられる係合部材と、
前記第二部材に接続されて前記係合部材が取り付けられる支持部材と、
を含む、緩衝装置。
【請求項2】
前記係合部は、摩擦面を構成し、
前記係合部材は、前記摩擦面に押し付けられる押付部を構成する、
請求項1に記載の緩衝装置。
【請求項3】
前記押付部の前記摩擦面への押し付け力を調整する押付調整部をさらに含む、請求項2に記載の緩衝装置。
【請求項4】
前記係合部は、凹部を構成し、
前記係合部材は、前記凹部に弾性力を伴って嵌め入れられる凸部を構成する、
請求項1に記載の緩衝装置。
【請求項5】
前記凸部に付与する弾性力を調整する弾性力調整部をさらに含む、請求項4に記載の緩衝装置。
【請求項6】
前記第一緩衝部材が弾性材からなり、前記第二緩衝部材が前記第一緩衝部材よりも剛性の低い弾性材からなる、請求項1から5のいずれか1項に記載の緩衝装置。
【請求項7】
前記第一緩衝部材が弾性材からなり、前記第二緩衝部材が減衰材からなる、請求項1から5のいずれか1項に記載の緩衝装置。
【請求項8】
前記第一緩衝部材と前記第二緩衝部材が前記第一部材と前記第二部材との間で直列配置される、請求項1から7のいずれか1項に記載の緩衝装置。
【請求項9】
前記第一部材が構造躯体からなり、前記第二部材が前記構造躯体に設けられる設置部材からなる、請求項1から8のいずれか1項に記載の緩衝装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、緩衝装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、支持側である地盤と被支持側である建築物との間に弾性材を配置し、支持側から被支持側に入力される加速度を低減する緩衝装置(免振支承)が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3-37435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
弾性材によって柔軟に支持する緩衝装置に荷重が入力した場合、弾性材の剛性と被支持側から構成される振動系では、振動数を低く設定するほど(周期が長いほど)、支持側で生じる振動や衝撃荷重を効果的に低減させることができる。
【0005】
しかし、柔剛性で振動数が低くなれば、比較的小さい荷重で被支持側が大きく揺れてしまうおそれがある。一方、弾性材の剛性を高くすると、過渡的な大きな振動や衝撃荷重が支持側から入力した場合、緩衝装置の効果を十分に得ることができない場合がある。特に、水平方向については、剛性の低い、効果のある装置を構成できるが、鉛直方向では、被支持側の自重も考慮する必要があり、剛性の低い装置を構成することが困難である。
【0006】
本開示は、上述した課題を解決するものであり、小荷重および過渡的な大荷重の双方に対して緩衝効果を得ることのできる緩衝装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、本開示の一態様に係る緩衝装置は、第一部材に接続される第一緩衝部材と、第二部材に接続されると共に前記第一緩衝部材に接続され前記第一緩衝部材とは特性が異なる第二緩衝部材と、前記第一緩衝部材に形成された係合部と、前記係合部に対して係脱可能に設けられる係合部材と、前記第二部材に接続されて前記係合部材が取り付けられる支持部材と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示は、小荷重および過渡的な大荷重の双方に対して緩衝効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態1の緩衝装置の側面図である。
図2図2は、図1におけるA-A断面図である。
図3図3は、実施形態1の緩衝装置の作用を示す側面図である。
図4図4は、衝撃応答と静的応答の比の一例を表す図である。
図5図5は、衝撃荷重の減衰比と最大値の関係の一例を表す図である。
図6図6は、衝撃荷重の作用時間と最大値の関係の一例を表す図である。
図7図7は、衝撃荷重の床周期と最大値の関係の一例を表す図である。
図8図8は、実施形態1の緩衝装置の他の構成例の部分拡大図である。
図9図9は、実施形態2の緩衝装置の側面図である。
図10図10は、図9におけるB-B断面図である。
図11図11は、実施形態2の緩衝装置の作用を示す側面図である。
図12図12は、実施形態2の緩衝装置の他の構成例の部分拡大図である。
図13図13は、実施形態3の緩衝装置の側面図である。
図14図14は、実施形態3の緩衝装置の作用を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの開示が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0011】
[実施形態1]
図1は、実施形態1の緩衝装置の側面図である。図2は、図1におけるA-A断面図である。図3は、実施形態1の緩衝装置の作用を示す側面図である。
【0012】
実施形態1の緩衝装置1は、図1から図3に示すように、第一部材51と第二部材52との間に配置される。ここで、第一部材51は、構造躯体であって、例えば、船舶、列車、車両、コンテナ、建物の基礎などがある。第二部材52は、第一部材51に設けられる設置部材であって、床や機器などがある。緩衝装置1は、通常、第一部材51と第二部材52との間に複数配置される。
【0013】
緩衝装置1は、図1および図2に示すように、第一緩衝部材2と、第二緩衝部材3と、係合部4と、係合部材5と、支持部材6と、を含む。
【0014】
第一緩衝部材2は、第一部材51に接続される。第一緩衝部材2は、弾性材からなる。弾性材としては、柔剛性材である防振ゴムがある。実施形態の第一緩衝部材2は、防振ゴムが円柱形状に形成され、円柱形状の軸方向(長さ方向)の一端2aが、第一部材51に固定される第一取付冶具7に固定される。これにより、第一緩衝部材2は、第一部材51に接続される。
【0015】
第二緩衝部材3は、第二部材52に接続されると共に第一緩衝部材2に接続される。第二緩衝部材3は、第一緩衝部材2とは特性が異なる。実施形態の第二緩衝部材3は、弾性材からなり、弾性材として第一緩衝部材2と比較して剛性の低い高柔軟材である空気バネがある。即ち、第二緩衝部材3の高柔軟材とは、第一緩衝部材2の柔剛性材と比較して特性が異なるように剛性が低い弾性材であることを意味する。第二緩衝部材3の空気バネは、ゴムおよび布によって中空でベローズ構造の円柱形状に形成されて内部に圧縮空気が充填される。この第二緩衝部材3の空気バネは、円柱形状の軸方向(長さ方向)の一端3aが、第二部材52に固定される第二取付冶具8に固定され、他端3bが第一緩衝部材2の他端2bに取り付けられる。これにより、第二緩衝部材3は、第二部材52に接続されると共に第一緩衝部材2に接続される。そして、第一緩衝部材2と第二緩衝部材3とは、第一部材51と第二部材52との間で直列配置される。
【0016】
係合部4は、第一緩衝部材2に形成される。係合部4は、第一緩衝部材2の外面であって円柱形状の周面2cに形成される。実施形態の係合部4は、金属板などが第一緩衝部材2の円柱形状の周面2cに配置された外面に摩擦面4aを構成する。また、実施形態の係合部4は、第一緩衝部材2の周面2cの円周方向の4個所に均等に設けられる。
【0017】
係合部材5は、係合部4に係合する。係合部材5は、係合部4の摩擦面4aに押し付けられるピン形状の押付部5aを構成する。すなわち、係合部材5は、押付部5aが摩擦面4aに押し付けられて係合部4に係合する。実施形態の係合部材5は、係合部4の配置に合わせて第一緩衝部材2の周面2cの円周方向に沿って4個所に均等に設けられる。
【0018】
支持部材6は、第二部材52に接続され、係合部材5が取り付けられる。支持部材6は、第二部材52に固定される第二取付冶具8に固定されることで第二部材52に接続される。支持部材6は、第一緩衝部材2および第二緩衝部材3の周りを囲む円筒形状に形成され、第一緩衝部材2および第二緩衝部材3を挿通した形態で第二取付冶具8に固定される。また、支持部材6は、係合部4の摩擦面4a周りを囲む部分において、係合部材5が取り付けられる。係合部材5が摩擦面4aに押し付けられる押付力は、係合部材5の押付部5aと摩擦面4aとの間の摩擦力を生じさせ、この摩擦力は、支持部材6と摩擦面4aとの距離と、押付部5aの支持部材6と摩擦面4aとの間の長さによって決められる。
【0019】
このように構成された実施形態1の緩衝装置1は、第一部材51である船舶、列車、車両、コンテナに過渡的な外力が与えられていない通常時、または第一部材51である建物に地震の外力が与えられていない通常時において、図1に示すように、係合部材5が係合部4に摩擦力を介して接触することで係合している。このため、緩衝装置1は、通常時において第二部材52である床に人が歩き機器が作動する荷重が、第二部材52から第二取付冶具8、支持部材6、係合部材5、係合部4、第一緩衝部材2、第一取付冶具7を介して第一部材51に伝達される。従って、この荷重は、第一緩衝部材2によって受ける。第一緩衝部材2は、比較的剛性の高い弾性材であるため、第二部材52である床に人が歩き機器が作動する荷重を低減し、第二部材52である床が大きく揺れることを防ぐ。
【0020】
一方、第一部材51である船舶、列車、車両、コンテナに過渡的な外力が与えられた異常時、または第一部材51である建物に地震の外力が与えられた異常時において、第一部材51に過大な振動や衝撃荷重が生じた場合、当該荷重が係合部材5と係合部4との摩擦力を超える。このとき、緩衝装置1は、図3に示すように、係合部材5が係合部4との係合から外れて離脱する。このため、緩衝装置1は、第一部材51に生じた荷重が、第一部材51から第一取付冶具7、第一緩衝部材2、第二緩衝部材3、第二取付冶具8を介して第二部材52に伝達される。従って、この荷重は、第一緩衝部材2および第二緩衝部材3が受ける。第一緩衝部材2は比較的剛性の高い弾性材であり、第二緩衝部材3は比較的剛性の低い弾性材であるため、第一部材51に生じた過渡的な荷重を第二緩衝部材3が低減し、第二部材52の振動数を大きく低下させる。このため、緩衝装置1は、第二部材52に伝達される過大な振動や衝撃荷重を大きく低減させる。
【0021】
ここで、図4は、衝撃応答と静的応答の比の一例を表す図であり、図5は、衝撃荷重の減衰比と最大値の関係の一例を表す図であり、図6は、衝撃荷重の作用時間と最大値の関係の一例を表す図であり、図7は、衝撃荷重の床周期と最大値の関係の一例を表す図である。
【0022】
第一部材51と第二部材52の間に第一緩衝部材2のみを配置した場合の第一部材51から第二部材52への衝撃荷重を正弦半波入力と仮定する。正弦半波入力に対する衝撃応答について、図4において、減衰有(減衰比ζ=0.1)の時の衝撃応答と静的応答の比(X/Xst)の時刻歴波形を示す。Xは第二部材52の応答であり、Xstは衝撃荷重が静的に作用した場合の応答である。なお、基本パラメータとして、第二部材52の振動数を1Hz、衝撃荷重の作用時間を5mcec(100Hz)、減衰比を10%とする。図4に矢印で示す最初の応答が最大衝撃応答である。この衝撃応答は、図5に示すように過渡応答であり応答低減への減衰効果は小さい。衝撃エネルギーは、荷重と作用時間の力積で表され、図6に示すように作用時間の増大に比例して応答が増大する。応答は、第二部材52の振動数と衝撃の作用時間の比に大きく影響され、仮に応答を1/5にするためには、図7に示すように第二部材52の周期(床周期)を5倍程度に増大させる必要がある。このため、実施形態の緩衝装置1は、第二緩衝部材3の周期を第二部材52の5倍程度に設定することで、第二部材52に伝達される過大な振動や衝撃荷重を大きく低減させることができる。
【0023】
図8は、実施形態1の緩衝装置の他の構成例の部分拡大図である。
【0024】
図8に示すように、緩衝装置1は、押付調整部9をさらに含む。押付調整部9は、押付部5aの摩擦面4aへの押し付け力を調整するものである。押付調整部9は、押付部5aのピンをボルト9aとして構成し、当該ボルト9aを支持部材6に設けたナット(ボルト穴)9bに捩じ込む。この押付調整部9は、ナット9bに対するボルト9aの捩じ込む量を変化させ、ボルト9aの摩擦面4aへの押し付け力を調整する。このように、押付調整部9によって押付部5aの摩擦面4aへの押し付け力を調整することで、係合部材5の係合部4との係合力(摩擦力)を調整でき、第一部材51に過大な振動や衝撃荷重が生じた場合に係合部4から係合部材5が離脱するための衝撃荷重のレベル設定を変更できる。
【0025】
このように、実施形態1の緩衝装置1は、第一部材51に接続される第一緩衝部材2と、第二部材52に接続されると共に第一緩衝部材2に接続され第一緩衝部材2とは特性が異なる第二緩衝部材3と、第一緩衝部材2に形成された係合部4と、係合部4に係合する係合部材5と、第二部材52に接続されて係合部材5が取り付けられる支持部材6と、を含む。
【0026】
この実施形態1の緩衝装置1によれば、通常時に第二部材52に生じる荷重は第一緩衝部材2で低減する一方で、第一部材51に過大な振動や衝撃荷重が生じた場合に係合部材5が係合部4との係合から離脱して当該荷重を第二緩衝部材3で低減する。この結果、実施形態1の緩衝装置1は、小荷重および過渡的な大荷重の双方に対して緩衝効果を得ることができる。
【0027】
また、実施形態1の緩衝装置1では、係合部4は、摩擦面4aを構成し、係合部材5は、摩擦面4aに押し付けられる押付部5aを構成する。従って、実施形態1の緩衝装置1は、荷重に対する係合部4との係合部材5の係脱を実施できる。
【0028】
また、実施形態1の緩衝装置1では、押付部5aの摩擦面4aへの押し付け力を調整する押付調整部9をさらに含む。従って、実施形態1の緩衝装置1は、第一部材51に過大な振動や衝撃荷重が生じた場合に係合部4から係合部材5が離脱するための衝撃荷重のレベル設定を変更できる。
【0029】
また、実施形態1の緩衝装置1では、第一緩衝部材2が弾性材からなり、第二緩衝部材3が第一緩衝部材2よりも剛性の低い弾性材からなる。従って、実施形態1の緩衝装置1は、第二部材52側の小荷重、および第一部材51側の過渡的な大荷重の双方に対して緩衝効果を得ることができる。
【0030】
また、実施形態1の緩衝装置1では、第一緩衝部材2と第二緩衝部材3が第一部材51と第二部材52との間で直列配置される。従って、実施形態1の緩衝装置1は、第二部材52側の荷重、および第一部材51側の荷重の双方に対して緩衝効果を得ることができる。
【0031】
また、実施形態1の緩衝装置1では、第一部材51が構造躯体からなり、第二部材52が構造躯体に設けられる設置部材からなる。従って、実施形態1の緩衝装置1は、設置部材側の小荷重、および構造躯体側の過渡的な大荷重の双方に対して緩衝効果を得ることができる。
【0032】
[実施形態2]
図9は、実施形態2の緩衝装置の側面図である。図10は、図9におけるB-B断面図である。図11は、実施形態2の緩衝装置の作用を示す側面図である。
【0033】
実施形態2の緩衝装置11は、上述した実施形態1の緩衝装置1の係合部4および係合部材5に対して形態の異なる係合部14および係合部材15を含む。そして、実施形態2の緩衝装置11は、その他の構成は実施形態1の緩衝装置1と同等である。よって、実施形態2の緩衝装置11において、実施形態1の緩衝装置1と同等部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0034】
係合部14は、第一緩衝部材2に形成される。係合部14は、第一緩衝部材2の外面であって円柱形状の周面2cに形成される。実施形態の係合部14は、金属板などが第一緩衝部材2の円柱形状の周面2cに配置された外面に凹部14aを構成する。また、実施形態の係合部14は、第一緩衝部材2の周面2cの円周方向の4個所に均等に設けられる。
【0035】
係合部材15は、係合部14に係合する。係合部材15は、係合部14の凹部14aに嵌る凸部15aと、この凸部15aを凹部14aに押し付ける弾性力を付与する弾性部材15bと、凸部15aおよび弾性部材15bを収容する筒状の保持部15cと、を含む。凸部15aは、球状に形成され、筒状の保持部15cの長さ方向に移動可能に設けられ、保持部15cの長さ方向の一端から突出可能に設けられる。弾性部材15bは、圧縮バネとして構成され、保持部15cの長さ方向に弾性力を生じ、凸部15aを保持部15cの一端から突出するように押圧する。保持部15cは、その他端が支持部材6に固定される。実施形態の係合部材15は、係合部14の配置に合わせて第一緩衝部材2の周面2cの円周方向に沿って4個所に均等に設けられる。
【0036】
このように構成された実施形態2の緩衝装置11は、第一部材51である船舶、列車、車両、コンテナに過渡的な外力が与えられていない通常時、または第一部材51である建物に地震の外力が与えられていない通常時において、図9に示すように、係合部材15が係合部14に対し、凸部15aが凹部14aに嵌ることで係合している。このため、緩衝装置11は、通常時において第二部材52である床に人が歩き機器が作動する荷重が、第二部材52から第二取付冶具8、支持部材6、係合部材15、係合部14、第一緩衝部材2、第一取付冶具7を介して第一部材51に伝達される。従って、この荷重は、第一緩衝部材2によって受ける。第一緩衝部材2は、比較的剛性の高い弾性材であるため、第二部材52である床に人が歩き機器が作動する荷重を低減し、第二部材52である床が大きく揺れることを防ぐ。
【0037】
一方、第一部材51である船舶、列車、車両、コンテナに過渡的な外力が与えられた異常時、または第一部材51である建物に地震の外力が与えられた異常時において、第一部材51に過大な振動や衝撃荷重が生じた場合、当該荷重が係合部材15と係合部14との嵌合力を超える。このとき、緩衝装置11は、図11に示すように、係合部材15が係合部14との係合から外れて離脱する。このため、緩衝装置11は、第一部材51に生じた荷重が、第一部材51から第一取付冶具7、第一緩衝部材2、第二緩衝部材3、第二取付冶具8を介して第二部材52に伝達される。従って、この荷重は、第一緩衝部材2および第二緩衝部材3が受ける。第一緩衝部材2は比較的剛性の高い弾性材であり、第二緩衝部材3は比較的剛性の低い弾性材であるため、第一部材51に生じた過渡的な荷重を第二緩衝部材3が低減し、第二部材52の振動数を大きく低下させる。このため、緩衝装置11は、第二部材52に伝達される過大な振動や衝撃荷重を大きく低減させる。
【0038】
図12は、実施形態2の緩衝装置の他の構成例の部分拡大図である。
【0039】
図12に示すように、緩衝装置11は、弾性力調整部19をさらに含む。弾性力調整部19は、凸部15aに付与する弾性部材15bの弾性力を調整するものである。弾性力調整部19は、保持部15cの筒状内に他端から挿通されるボルト19aを、支持部材6に設けたナット(ボルト穴)19bに捩じ込んで構成される。この弾性力調整部19は、ナット19bに対するボルト19aの捩じ込む量を変化させ、ボルト19aの弾性部材15bへの押し付け力を調整する。このように、弾性力調整部19によって弾性部材15bへの押し付け力を調整することで、凸部15aの凹部14aとの係合力(弾性力)を調整でき、第一部材51に過大な振動や衝撃荷重が生じた場合に係合部14から係合部材15が離脱するための衝撃荷重のレベル設定を変更できる。
【0040】
このように、実施形態2の緩衝装置11は、第一部材51に接続される第一緩衝部材2と、第二部材52に接続されると共に第一緩衝部材2に接続され第一緩衝部材2とは特性が異なる第二緩衝部材3と、第一緩衝部材2に形成された係合部14と、係合部14に係合する係合部材15と、第二部材52に接続されて係合部材15が取り付けられる支持部材6と、を含む。
【0041】
この実施形態2の緩衝装置11によれば、通常時に第二部材52に生じる荷重は第一緩衝部材2で低減する一方で、第一部材51に過大な振動や衝撃荷重が生じた場合に係合部材15が係合部14との係合から離脱して当該荷重を第二緩衝部材3で低減する。この結果、実施形態2の緩衝装置11は、小荷重および過渡的な大荷重の双方に対して緩衝効果を得ることができる。
【0042】
また、実施形態2の緩衝装置11では、係合部14は、凹部14aを構成し、係合部材15は、凹部14aに弾性力を伴って嵌め入れられる凸部15a構成する。従って、実施形態2の緩衝装置11は、荷重に対する係合部14との係合部材15の係脱を実施できる。
【0043】
また、実施形態2の緩衝装置11では、凸部15aに付与する弾性力を調整する弾性力調整部19をさらに含む。従って、実施形態2の緩衝装置11は、第一部材51に過大な振動や衝撃荷重が生じた場合に係合部14から係合部材15が離脱するための衝撃荷重のレベル設定を変更できる。
【0044】
また、実施形態2の緩衝装置11では、第一緩衝部材2が弾性材からなり、第二緩衝部材3が第一緩衝部材2よりも剛性の低い弾性材からなる。従って、実施形態2の緩衝装置11は、第二部材52側の小荷重、および第一部材51側の過渡的な大荷重の双方に対して緩衝効果を得ることができる。
【0045】
また、実施形態2の緩衝装置11では、第一緩衝部材2と第二緩衝部材3が第一部材51と第二部材52との間で直列配置される。従って、実施形態2の緩衝装置11は、第二部材52側の荷重、および第一部材51側の荷重の双方に対して緩衝効果を得ることができる。
【0046】
また、実施形態2の緩衝装置11では、第一部材51が構造躯体からなり、第二部材52が構造躯体に設けられる設置部材からなる。従って、実施形態2の緩衝装置11は、設置部材側の小荷重、および構造躯体側の過渡的な大荷重の双方に対して緩衝効果を得ることができる。
【0047】
[実施形態3]
図13は、実施形態3の緩衝装置の側面図である。図14は、実施形態3の緩衝装置の作用を示す側面図である。
【0048】
実施形態3の緩衝装置21は、上述した実施形態1の緩衝装置1の第二緩衝部材3に対して形態の異なる第二緩衝部材23を含む。そして、実施形態3の緩衝装置21は、その他の構成は実施形態1の緩衝装置1と同等である。よって、実施形態3の緩衝装置21において、実施形態1の緩衝装置1と同等部分には同一の符号を付して説明を省略する。なお、実施形態3の緩衝装置21は、図13および図14において、押付調整部9を含むが、押付調整部9を含まなくてもよい。
【0049】
第二緩衝部材23は、第二部材52に接続されると共に第一緩衝部材2に接続される。
第二緩衝部材23は、第一緩衝部材2とは特性が異なる。実施形態の第二緩衝部材23は、減衰材からなり、第一緩衝部材2と比較して高い減衰性能を有する高減衰材として構成される。第二緩衝部材23の減衰材は、粘性体、弾塑性体、ハニカム構造などのエネルギー吸収材で構成される。この第二緩衝部材23の減衰材は、円柱形状の軸方向(長さ方向)の一端23aが、第二部材52に固定される第二取付冶具8に固定され、他端23bが第一緩衝部材2の他端2bに取り付けられる。これにより、第二緩衝部材23は、第二部材52に接続されると共に第一緩衝部材2に接続される。そして、第一緩衝部材2と第二緩衝部材23とは、第一部材51と第二部材52との間で直列配置される。
【0050】
このように構成された実施形態3の緩衝装置21は、第一部材51である船舶、列車、車両、コンテナに過渡的な外力が与えられていない通常時、または第一部材51である建物に地震の外力が与えられていない通常時において、図13に示すように、係合部材5が係合部4に摩擦力を介して接触することで係合している。このため、緩衝装置21は、通常時において第二部材52である床に人が歩き機器が作動する荷重が、第二部材52から第二取付冶具8、支持部材6、係合部材5、係合部4、第一緩衝部材2、第一取付冶具7を介して第一部材51に伝達される。従って、この荷重は、第一緩衝部材2によって受ける。第一緩衝部材2は、比較的剛性の高い弾性材であるため、第二部材52である床に人が歩き機器が作動する荷重を低減し、第二部材52である床が大きく揺れることを防ぐ。
【0051】
一方、第一部材51である船舶、列車、車両、コンテナに過渡的な外力が与えられた異常時、または第一部材51である建物に地震の外力が与えられた異常時において、第一部材51に過大な振動や衝撃荷重が生じた場合、当該荷重が係合部材5と係合部4との摩擦力を超える。このとき、緩衝装置21は、図14に示すように、係合部材5が係合部4との係合から外れて離脱する。このため、緩衝装置21は、第一部材51に生じた荷重が、第一部材51から第一取付冶具7、第一緩衝部材2、第二緩衝部材23、第二取付冶具8を介して第二部材52に伝達される。従って、この荷重は、第一緩衝部材2および第二緩衝部材23が受ける。第一緩衝部材2は比較的剛性の高い弾性材であり、第二緩衝部材23は減衰材であるため、第一部材51に生じた過渡的な荷重を減衰によって第二緩衝部材23が低減し、第二部材52の振動数を大きく低下させる。このため、緩衝装置21は、第二部材52に伝達される過大な振動や衝撃荷重を大きく低減させる。
【0052】
このように、実施形態3の緩衝装置21は、第一部材51に接続される第一緩衝部材2と、第二部材52に接続されると共に第一緩衝部材2に接続され第一緩衝部材2とは特性が異なる第二緩衝部材23と、第一緩衝部材2に形成された係合部4と、係合部4に係合する係合部材5と、第二部材52に接続されて係合部材5が取り付けられる支持部材6と、を含む。
【0053】
この実施形態3の緩衝装置21によれば、通常時に第二部材52に生じる荷重は第一緩衝部材2で低減する一方で、第一部材51に過大な振動や衝撃荷重が生じた場合に係合部材5が係合部4との係合から離脱して当該荷重を第二緩衝部材23で低減する。この結果、実施形態3の緩衝装置21は、小荷重および過渡的な大荷重の双方に対して緩衝効果を得ることができる。
【0054】
また、実施形態3の緩衝装置21では、係合部4は、摩擦面4aを構成し、係合部材5は、摩擦面4aに押し付けられる押付部5aを構成する。従って、実施形態3の緩衝装置21は、荷重に対する係合部4との係合部材5の係脱を実施できる。
【0055】
また、実施形態3の緩衝装置21では、押付部5aの摩擦面4aへの押し付け力を調整する押付調整部9をさらに含む。従って、実施形態3の緩衝装置21は、第一部材51に過大な振動や衝撃荷重が生じた場合に係合部4から係合部材5が離脱するための衝撃荷重のレベル設定を変更できる。
【0056】
また、実施形態3の緩衝装置21では、第一緩衝部材2が弾性材からなり、第二緩衝部材23が減衰材からなる。従って、実施形態3の緩衝装置21は、第二部材52側の小荷重、および第一部材51側の過渡的な大荷重の双方に対して緩衝効果を得ることができる。
【0057】
また、実施形態3の緩衝装置21では、第一緩衝部材2と第二緩衝部材23が第一部材51と第二部材52との間で直列配置される。従って、実施形態3の緩衝装置21は、第二部材52側の荷重、および第一部材51側の荷重の双方に対して緩衝効果を得ることができる。
【0058】
また、実施形態3の緩衝装置21では、第一部材51が構造躯体からなり、第二部材52が構造躯体に設けられる設置部材からなる。従って、実施形態3の緩衝装置21は、設置部材側の小荷重、および構造躯体側の過渡的な大荷重の双方に対して緩衝効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0059】
1,11,21 緩衝装置
2 第一緩衝部材
3,23 第二緩衝部材
4,14 係合部
4a 摩擦面
14a 凹部
5,15 係合部材
5a 押付部
15a 凸部
6 支持部材
9 押付調整部
19 弾性力調整部
51 第一部材
52 第二部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
図13
図14