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2023-104401情報処理装置、車載仮想表示装置、仮想表示システムおよび仮想体験提供方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023104401
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】情報処理装置、車載仮想表示装置、仮想表示システムおよび仮想体験提供方法
(51)【国際特許分類】
   B60R 11/02 20060101AFI20230721BHJP
   B60R 11/04 20060101ALI20230721BHJP
   G06T 19/00 20110101ALI20230721BHJP
【FI】
B60R11/02 C
B60R11/04
G06T19/00 600
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022005359
(22)【出願日】2022-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大築 ともえ
【テーマコード(参考)】
3D020
5B050
【Fターム(参考)】
3D020BA02
3D020BA04
3D020BA10
3D020BA20
3D020BC01
3D020BC02
3D020BD05
5B050AA03
5B050BA06
5B050BA09
5B050BA11
5B050BA12
5B050BA13
5B050CA08
5B050DA07
5B050EA19
5B050EA26
5B050FA02
(57)【要約】
【課題】使用する車両形態を要因として発生するユーザの不満を低減すること。
【解決手段】実施形態に係る情報処理装置は、車両の車室内に設けられた表示部に画像を表示させる制御部を有する情報処理装置である。制御部は、上記車室よりも大きい車室空間の仮想内装画像を表示部に表示させる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車室内に設けられた表示部に画像を表示させる制御部を有する情報処理装置であって、
前記制御部は、
前記車室よりも大きい車室空間の仮想内装画像を前記表示部に表示させる、
情報処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、
車両周囲の風景画像を前記仮想内装画像の車窓部分に重畳する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、
他地点に存在する実在人物の画像に基づく仮想的な同乗者の画像を、前記仮想内装画像に重畳した仮想同乗画像を前記表示部に表示させる、
請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記仮想的な同乗者の音声を、前記仮想的な同乗者の表示位置に応じて定位させる、
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記車室内のルームミラーに設けられた前記表示部に前記仮想同乗画像を表示させる、
請求項3または4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記制御部は、
他地点の車両の情報処理装置と連携して前記仮想同乗画像を表示する場合、各車両における実在人物と前記仮想的な同乗者の相対位置関係が一致するように前記仮想的な同乗者を表示させる、
請求項3、4または5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記制御部は、
車両周囲の風景画像を前記仮想内装画像の車窓部分に重畳する場合、他地点の車両で表示される風景と同じ風景画像を使用して表示する、
請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
車室内画像を撮影する車室内カメラと、
車両周囲の風景を撮影する風景カメラと、
車室内の音声を取得するマイクと、
車室内に音を出力するスピーカと、
車室内における側方車窓付近に設置された表示部と、
他地点の外部装置との通信を行う通信部と、
各種制御を行う制御部と、を有する車載仮想表示装置であって、
前記制御部は、
前記車室よりも大きい車室空間の仮想内装画像と、前記風景カメラで撮影した車両周囲の風景画像と、前記通信部により受信した前記他地点の外部装置からの当該他地点に存在する実在人物の画像データに基づく仮想的な同乗者の画像とを、重畳して仮想同乗画像を生成し、
生成した前記仮想同乗画像を前記表示部に表示させ、
前記通信部により受信した前記他地点の外部装置からの当該他地点に存在する実在人物の音声データに応じた音声を、前記スピーカから出力させ、
前記マイクで取得した音声に応じた音声データを前記通信部により前記他地点の外部装置に送信させ、
前記車室内カメラでの撮影画像に応じた車室内画像データを前記通信部により前記他地点の外部装置に送信させ、
前記風景カメラでの撮影画像に応じた風景画像データを前記通信部により前記他地点の外部装置に送信させる、
車載仮想表示装置。
【請求項9】
相互通信可能な複数の車載仮想表示装置で構成される仮想表示システムであって、
前記車載仮想表示装置のそれぞれは、
車室内画像を撮影する車室内カメラと、
車両周囲の風景を撮影する風景カメラと、
車室内の音声を取得するマイクと、
車室内に音を出力するスピーカと、
車室内における側方車窓付近に設置された表示部と、
他の車載仮想表示装置との通信を行う通信部と、
各種制御を行う制御部と、を有し、
前記制御部は、
前記車室よりも大きい車室空間の仮想内装画像と、前記風景カメラで撮影した車両周囲の風景画像と、前記通信部により受信した他地点の前記他の車載仮想表示装置からの当該他地点に存在する実在人物の画像データに基づく仮想的な同乗者の画像とを、重畳して仮想同乗画像を生成し、
生成した前記仮想同乗画像を前記表示部に表示させ、
前記通信部により受信した前記他の車載仮想表示装置からの前記他地点に存在する実在人物の音声データに応じた音声を、前記スピーカから出力させ、
前記マイクで取得した音声に応じた音声データを前記通信部により前記他の車載仮想表示装置に送信させ、
前記車室内カメラでの撮影画像に応じた車室内画像データを前記通信部により前記他の車載仮想表示装置に送信させ、
前記風景カメラでの撮影画像に応じた風景画像データを前記通信部により前記他の車載仮想表示装置に送信させる、
仮想表示システム。
【請求項10】
前記制御部は、
前記他の車載仮想表示装置と連携して前記仮想同乗画像を表示する場合、各車両における実在人物と仮想的な同乗者の相対位置関係が一致するように前記仮想的な同乗者を表示させる、
請求項9に記載の仮想表示システム。
【請求項11】
車両の車室内に仮想の同乗者を表示する仮想体験提供方法であって、
前記車室よりも大きい車室空間の仮想内装画像と、通信により得られた他地点に存在する実在人物の画像に基づく仮想的な同乗者の画像とを、重畳した仮想同乗画像を表示する、
仮想体験提供方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、車載仮想表示装置、仮想表示システムおよび仮想体験提供方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両乗車中のユーザを楽しませる装置がいろいろと開発されている。たとえば、従来、車両のウィンドウなどに配置された車室内のディスプレイに、車両の状況に応じた背景画像、たとえば観光地周辺であればかかる観光地の観光スポット画像などを表示することで、車室内で乗員に楽しく時間を過ごさせるための技術が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、近年、小回りが利く、運転が容易である等の利点から、超小型モビリティが普及する兆しがある。超小型モビリティは、1人~2人乗り程度の車両であり、たとえば従来のレンタサイクルのように、旅先での行動のためなどに活用されることが考えられる。
【0004】
ところで、複数人でのグループ旅行で、旅先での行動に超小型モビリティを利用する場合、超小型モビリティは車室が狭いため、グループの各メンバーは個別(あるいは少人数別)に超小型モビリティに乗らなくてはならない。
【0005】
すると、せっかくのグループ旅行にも関わらず、各メンバーは、超小型モビリティに乗車中の間は他のメンバーとコミュニケーションをとることができないため、グループ活動の楽しみが半減してしまうおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-121959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、車両の形態、たとえばサイズ、定員数等による制約により、ユーザがグループ旅行を十分に楽しめない、車内が狭く圧迫感等を感じる等、ユーザが満足できない状況が発生してしまうことがあった。
【0008】
実施形態の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、使用する車両形態を要因として発生するユーザの不満を低減することができる情報処理装置、車載仮想表示装置、仮想表示システムおよび仮想体験提供方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態の一態様に係る情報処理装置は、車両の車室内に設けられた表示部に画像を表示させる制御部を有する情報処理装置である。前記制御部は、前記車室よりも大きい車室空間の仮想内装画像を前記表示部に表示させる。
【発明の効果】
【0010】
実施形態の一態様によれば、使用する車両形態を要因として発生するユーザの不満を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態に係る車両の概要説明図である。
図2図2は、実施形態に係る仮想体験提供方法の概要説明図である。
図3図3は、実施形態に係る仮想体験提供システムの構成例を示す図である。
図4図4は、実施形態に係る車両の構成例を示す平面模式図である。
図5図5は、実施形態に係る車載装置の構成例を示すブロック図である。
図6図6は、レイアウト情報テーブルの一例を示す図である。
図7図7は、内装DBの一例を示す図である。
図8図8は、アバターDBの一例を示す図である。
図9図9は、音声の出力および温度制御の説明図(その1)である。
図10図10は、音声の出力および温度制御の説明図(その2)である。
図11図11は、仮想同乗画像をデジタルルームミラーとして機能するディスプレイに表示させる場合の説明図である。
図12図12は、実施形態に係る車載装置が実行する処理手順を示すフローチャートである。
図13図13は、変形例に係る同乗体験提供システムの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する情報処理装置、車載仮想表示装置、仮想表示システムおよび仮想体験提供方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0013】
また、以下では、実施形態に係る情報処理装置または車載仮想表示装置が、車両Vに搭載される制御装置10であるものとする。また、以下では、実施形態に係る仮想表示システムが、車室内に仮想的な同乗者(以下、適宜「仮想同乗者」という)が存在する状況をユーザに疑似体験させる同乗体験提供システム1であるものとする。
【0014】
また、以下では、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素を同一の符号の後にハイフン付きの異なる数字を付して区別する場合がある。たとえば、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成を、必要に応じて制御装置10-1、制御装置10-2、…のように区別する。ただし、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素の各々を特に区別する必要がない場合、同一の符号のみを付する。たとえば、制御装置10-1、制御装置10-2、…を特に区別する必要がない場合には、単に制御装置10と記載する。
【0015】
また、以下では、実施形態に係る車両Vが、1人乗りの超小型モビリティであるものとする。
【0016】
まず、実施形態に係る仮想体験提供方法の概要について、図1および図2を用いて説明する。図1は、実施形態に係る車両Vの概要説明図である。また、図2は、実施形態に係る仮想体験提供方法の概要説明図である。
【0017】
図1に示すように、実施形態に係る車両Vは、超小型モビリティとして知られる1人乗りの車両である。1人乗りであるため、車席は運転席のみであり、助手席や後部座席は設けられていない。
【0018】
なお、ここでは、1人乗りを想定しているが、本実施形態を適用する際の車両Vの乗員数を限定するものではない。また、車両Vは、電動モータを動力として用いる電動車両であってもよいし、内燃機関等、その他の動力を用いる車両であってもよい。
【0019】
また、図1に示すように、車両Vは、表示装置5と、制御装置10とを備える。表示装置5は、同図に示すように、たとえば車両Vのウィンドウに組み込まれるウィンドウ・ディスプレイである。表示装置5は、液晶表示装置等を用いた非透過型のディスプレイである。なお、表示装置5は、透過型のディスプレイ、白色加工や半反射加工等によりスクリーン機能を持たせたウィンドウに対し画像を投影する投影装置等でも実現できる。
【0020】
本実施形態では、表示装置5が非透過型のディスプレイであり、車両Vの起動中に、図示略の車載カメラによって撮影された車外の風景を、車窓風景画像として車室内に表示可能に設けられているものとする。
【0021】
制御装置10は、表示装置5の表示制御を行い、表示装置5に各種画像を表示させる。
【0022】
また、制御装置10は、ユーザの運転操作に基づく車両Vの手動運転制御や、外部装置からの指示、および、図示略の車載センサ等から取得した外部状況等に基づく車両Vの自動運転制御を行う。
【0023】
このような車両Vを、たとえば、複数人でのグループ旅行で、旅先での行動に利用する場合、車両Vが一人乗りであるため、グループの各メンバーは個別の車両Vに乗らなくてはならない。
【0024】
したがって、各メンバーは、せっかくのグループ旅行にも関わらず、それぞれが車両Vに乗車中の間は、無線等を利用した音声によるコミュニケーション等、簡単なコミュニケーションをとれるだけで、互いにコミュニケーションを十分にとることができない。また、車両Vに単独で乗っているため、各メンバーは孤立感も強く感じる。このため、各メンバーにとっては、グループ活動の楽しみが半減してしまうおそれがある。
【0025】
なお、車両Vが2人乗り等の少人数定員(グループ人数より少ない定員)の場合でも、程度の違いはあるが、同様の課題がある。また、単独行動のユーザにとっても、車両Vのような小型車両の運転は、狭い室内空間による圧迫感が強く、精神的に疲れやすいといった課題もある。
【0026】
そこで、実施形態に係る仮想体験提供方法は、車室内に設けられた表示装置5に、ユーザに適した車室空間を仮想的に提供する画像を表示させることとした。
【0027】
具体的に図2を用いて説明する。なお、以下では、車両V-1の運転席に乗車するメンバーM-1の視点から見た場合を例に挙げて説明する。
【0028】
実施形態に係る仮想体験提供方法は、車室内において、表示装置5に対し、実際の車窓風景画像と、実際には存在しない車室内の内装画像と、他地点のメンバーMの画像とを重畳した仮想同乗画像を表示する。これにより、実施形態に係る仮想体験提供方法は、車室内に仮想同乗者が存在する状況をユーザに疑似体験させる、すなわち仮想的な同乗体験を提供する。
【0029】
具体的には、図2に示すように、実施形態に係る仮想体験提供方法は、車両V-1の表示装置5に対しては、メンバーM-1が運転席から見た実際の車窓風景画像と、たとえば助手席付きの車両の内装画像と、リアルタイムな他地点のメンバーM-2の画像とを重畳して表示させる。すなわち、内装画像は、車両Vよりも大きい車室空間を有する他の車両の内装画像である。
【0030】
これにより、メンバーM-1は、1人乗りの車両V-1であるにも関わらず、車室内に助手席が存在し、その助手席にメンバーM-2が座っていて、車両V-1に同乗しているかのような状況を疑似体験することができる。
【0031】
すなわち、メンバーM-1に対し、現実の車両V-1の形状等に制約されない同乗体験を提供することができる。また、メンバーM-1に対し、実際よりも車室空間を助手席方向に広く感じさせることができるので、乗車中の快適性を向上させることができる。
【0032】
また、実施形態に係る仮想体験提供方法は、画像だけでなく、メンバーM-2が発する音声もリアルタイムで車両V-1の車室内に出力する。このとき、メンバーM-2の画像と音声が同期したものとなるため、まさに仮想同乗者が発話しているような印象をメンバーM-1に与えることができる。
【0033】
また、実施形態に係る仮想体験提供方法は、車載エアコン装置を連携制御して車室内温度の制御、室内空気流の制御を行うことにより、メンバーM-1に仮想同乗者の体温による車室内環境変化を感じさせることができ、さらに高度な仮想体験を提供できる。これら音声の出力や温度制御の具体例については、図9および図10を用いた説明で後述する。
【0034】
また、実施形態に係る仮想体験提供方法では、内装画像については任意の内装形態を設定することが可能である。たとえば、仮想画像の表示対象車両の内装と同等の内装画像(現車室内を違和感なく拡大する)、表示するメンバーM-2が乗車している車両V-2の内装と同等の内装画像(メンバーM-2の乗車している車両V-2に同乗している状態を再現)、高級車等の内装画像(乗ってみたい車種で同乗している状態を再現)を設定することが可能である。また、他地点のメンバーMの画像については、実画像、あるいは任意のアバター(個人の嗜好や、個人情報保護の観点から選択)を設定することが可能である。この点の具体例については、図6図8を用いた説明で後述する。
【0035】
また、実施形態に係る仮想体験提供方法では、同行者であるメンバーMだけでなく、非同行者のメンバーMもまた仮想的に同乗させることが可能である。この点の具体例については、図13を用いた説明で後述する。
【0036】
なお、図2では、車両V-1に乗車するメンバーM-1の視点から見た場合を例に挙げたが、車両V-2に乗車するメンバーM-2の視点から見た場合も同様である。ただし、メンバーM-1とメンバーM-2が共に当該仮想体験提供方法を利用した場合、メンバーM-1とメンバーM-2に対しては、互いに反対方向のウィンドウに設けられた表示部装置に仮想同乗画像を表示することが好ましい。つまり、たとえばメンバーM-1に対しては右側のウィンドウにメンバーM-2の画像を含む仮想同乗画像を表示し、メンバーM-2に対しては左側のウィンドウにメンバーM-1の画像を含む仮想同乗画像を表示する。これにより、現実のメンバーM-1,M-2と、仮想画像のメンバーM-1,M-2の位置・方向関係とが、各々の車室内で一致した状態となり、メンバーM-1,M-2の自然な動きで互いに仮想同乗者と向き合っての会話が可能となる等、違和感なくコミュニケーションを交わすことが可能となる。
【0037】
なお、実施形態では、他車両に乗車しているメンバーM-2の画像を表示してメンバーM-1にメンバーM-2との同乗感を提供しているが、メンバーM-2の画像を省いた画像を表示する(車両Vの仮想内装を表示する)ことにより、メンバーM-1に車室内の拡大感を提供すると言った利用方法も可能である。
【0038】
以下、実施形態に係る仮想体験提供方法を適用した同乗体験提供システム1の構成例について、より具体的に説明する。
【0039】
図3は、実施形態に係る同乗体験提供システム1の構成例を示す図である。ここでは、2台の車両間でコミュニケーションをとる状況での構成例を挙げる。図3に示すように、同乗体験提供システム1は、制御装置10-1と、制御装置10-2とを含む。
【0040】
制御装置10-1は、車両V-1に搭載される。制御装置10-2は、車両V-2に搭載される。制御装置10-1と、制御装置10-2とは、ネットワークNを介して相互に通信可能に設けられる。ネットワークNは、車々間通信を可能にする通信ネットワークであって、たとえばセルラーV2X(C-V2X:Cellular Vehicle to Everything)通信網や、近距離無線通信網、インターネット等である。
【0041】
次に、図4は、実施形態に係る車両Vの構成例を示す平面模式図である。図4に示すように、車両Vは、カメラ3a,3b,3c,3d,3e,3fと、ディスプレイ5a,5b,5cと、スピーカ6a,6b,6c,6dと、が設置される。
【0042】
カメラ3a,3b,3c,3d,3e,3fは、後述するカメラ部3の一例に相当する。ディスプレイ5a,5b,5cは、前述の表示装置5および後述する表示部7の一例に相当する。スピーカ6a,6b,6c,6dは、後述する音声出力部6の一例に相当する。
【0043】
カメラ3aは、図4における右方向から見たメンバーMを撮影可能に設けられる。カメラ3bは、図4における左方向から見たメンバーMを撮影可能に設けられる。カメラ3cは、前方向から見たメンバーMを撮影可能に設けられる。カメラ3dは、図4における車両Vの左方向に見える風景画像を撮影可能に設けられる。カメラ3eは、図4における車両Vの右方向に見える風景画像を撮影可能に設けられる。カメラ3fは、車両Vの後方(図4下方)の風景画像を撮影可能に設けられる。
【0044】
なお、各カメラの設置位置、撮影方向等の撮影データ、および車両Vの各窓の位置、形状、位置データは記憶されている。そして、これらのデータ、および視点位置データを用いることにより、カメラ3d,3e,3fで撮影した風景画像から、車室内の任意の視点位置から見たウィンドウ越しの車窓風景画像を切り出し生成することができる。
【0045】
また、メンバーMの画像については、カメラ3a,3b,3cの撮影画像から、たとえば人間検出のモデルを用いた画像認識や、動体認識(車両内装はカメラに対して静止、車両周囲風景は車両移動に伴い移動、人は車両移動とは関係なく移動)処理等により、人部分を切り出し、生成することができる。そして、カメラ3a,3b,3cの撮影画像、つまり異なった3方向からのメンバーMの画像が得られるので、これら画像に基づきメンバーMの3D(three-dimensional)画像データを生成することができる。
【0046】
ディスプレイ5aは、右ウィンドウに配置される。ディスプレイ5bは、左ウィンドウに配置される。ディスプレイ5cは、カメラ3cの近傍に配置され、たとえば、カメラ3cの撮影画像を鏡像反転して表示し、デジタルルームミラーとして機能するように設けられる。
【0047】
スピーカ6a,6b,6c,6dは、たとえばフラットスピーカで構成され、車室内の内装(壁面)に埋め込まれる等して設けられる。スピーカ6aは、右ウィンドウの近傍に配置される。スピーカ6bは、左ウィンドウの近傍に配置される。スピーカ6c,6dは、メンバーMの後方、たとえばリアウィンドウの近傍に配置される。
【0048】
次に、図5は、実施形態に係る制御装置10の構成例を示すブロック図である。なお、図5では、本実施形態の特徴を説明するために必要な構成要素のみを表しており、一般的な構成要素についての記載を省略している。
【0049】
また、図5に図示される各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。例えば、各ブロックの分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することが可能である。
【0050】
また、図5を用いた説明では、既に説明済みの構成要素については、説明を簡略するか、省略する場合がある。
【0051】
また、図5には、制御装置10-1を図示しているが、制御装置10-2の構成も同様である。
【0052】
図5に示すように、制御装置10には、操作部2と、カメラ部3と、音声入力部4と、音声出力部6と、表示部7とが接続されている。操作部2は、ユーザ(すなわち、各メンバーM)による操作を受け付ける押し釦、タッチパネル等の操作入力部品で構成される。
【0053】
カメラ部3は、車両Vに搭載される車載カメラであり、前述のカメラ3a,3b,3c,3d,3e,3fに該当する。音声入力部4は、たとえばマイクであって、ステアリングやバックミラー等のユーザ前方に設定され、ユーザの発話した音声を集音する。
【0054】
音声出力部6は、前述のスピーカ6a,6b,6c,6dに該当し、たとえば車室内に仮想同乗者の発話する音声を出力する。
【0055】
表示部7は、たとえば車両Vのウィンドウに組み込まれるウィンドウ・ディスプレイであって、前述のディスプレイ5a,5b,5cに該当する。表示部7は、後述する制御部13による出力制御に基づいて、車室内に仮想同乗画像をはじめとする視覚情報を表示する。
【0056】
また、制御装置10は、通信部11と、記憶部12と、制御部13とを備える。通信部11は、たとえば、NIC(Network Interface Card)等によって実現される。通信部11は、ネットワークNを介して外部装置(制御装置10-1であればたとえば制御装置10-2)と無線で接続され、外部装置との間で各種の情報の送受信を行う。
【0057】
なお、通信部11は、たとえば仮想的な同乗体験の提供機能がオンされるとともに外部装置との間に通信接続を確立し、同提供機能がオフされるとともに外部装置との間の通信接続を切断する。
【0058】
記憶部12は、たとえば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現される。記憶部12には、図5の例では、レイアウト情報12aを記憶するレイアウト情報テーブル12Aと、内装情報12bを記憶する内装DB(Database)12Bと、アバター情報12cを記憶するアバターDB12Cとが設けられる。
【0059】
レイアウト情報12aは、仮想的な同乗体験の提供機能を実行するにあたっての、仮想的な車室空間における仮想同乗者のレイアウト位置等に関する情報である。レイアウト情報12aは、たとえばユーザによる操作部2の操作に基づいて、後述する設定部13aにより設定される。
【0060】
図6は、レイアウト情報テーブル12Aの一例を示す図である。図6に示すように、レイアウト情報12aは、たとえば、「仮想同乗者」項目と、「ネットワーク」項目と、「レイアウト位置」項目と、「内装ID」項目と、「アバターID」項目のデータからなり、これらデータによりレイアウト情報テーブル12Aの1レコードが形成される。
【0061】
なお、説明を分かりやすくするため、上記各項目や種別等(データの種別等を示すもの)に対しては項目名、種別名だけを記載し、当該項目・種別に関するデータ自体については項目名に「データ」を付加した表現とする。たとえば、「仮想同乗者」項目については、「仮想同乗者」と表現し、そのデータ自体に対しては「仮想同乗者データ」と表現する。
【0062】
レイアウト情報テーブル12Aにおいて、仮想同乗者には、仮想同乗者候補のメンバーMの識別子データが設定される。なお、かかる仮想同乗者には、同行者以外の非同行者のデータも設定することが可能である。また、仮想同乗者は、レイアウト情報12aの主キーとなっており、同一レコードの各データはこの主キーデータである仮想同乗者データに紐付けられて記憶されている。つまり、この仮想同乗者データが示す人物に、ネットワーク、レイアウト位置等のデータ(当該データが示す特徴等)が紐付いていると言うことになる。
【0063】
ネットワークには、仮想同乗者との間の通信接続を確立するために必要なネットワークに関する情報、たとえば通信種別、IP(Internet Protocol)アドレス等が設定される。
【0064】
レイアウト位置には、仮想的な車室空間における仮想同乗者のレイアウト位置データが設定される。なお、図6の例では、仮想同乗者としてのメンバーM-2は助手席に、メンバーM-3は右後部座席に、それぞれレイアウトされることを示している。
【0065】
内装IDには、仮想的な車室空間の内装画像の識別情報である内装IDデータが設定される。ここで、内装DB12Bの一例について説明しておく。図7は、内装DB12Bの一例を示す図である。
【0066】
図7に示すように、内装DB12Bは、前述の内装IDデータごとに紐付けられた内装画像に関するデータが設定される。つまり、内装IDデータを主キーデータとして、内装画像データと当該画像の説明データが紐付けられて設定されている。図7の例では、たとえば内装ID「I011」に紐付けられた内装画像データは「高級車助手席」、説明データは「高級車の助手席方向の実写画像」であることを示している。同様に、内装ID「I012」に紐付けられた内装画像は「高級車後部座席」、説明データは「高級車の後部座席方向の実写画像」であることを示している。
【0067】
なお、内装画像データは、実写画像データに限らなくともよい。たとえば、図7の例では、内装ID「I021」に紐付けられた内装画像データは、「宇宙船助手席」の画像データで、コンピュータグラフィックス手法等により生成されたコンピュータグラフィックス画像のデータであることを示している。同様に、内装ID「I022」に紐付けられた内装画像データは、「宇宙船後部座席」の画像データで、コンピュータグラフィックス画像のデータであることを示している。
【0068】
図6の説明に戻る。アバターIDには、仮想同乗者の表示にアバターを使用したい場合の、使用するアバターの識別情報であるアバターIDデータが設定される。
【0069】
ここで、アバターDB12Cの一例について説明しておく。図8は、アバターDB12Cの一例を示す図である。図8に示すように、アバターDB12Cは、前述のアバターIDデータごとに紐付けられたアバター画像に関するデータが設定される。つまり、アバターIDデータを主キーデータとして、アバター画像データと当該アバター画像データの説明データが紐付けられて設定されている。
【0070】
かかるアバター画像データは、たとえば、アバターID「A001」のアバター画像データのように、現実に存在する俳優等の実写画像であってもよいし、アバターID「A002」のアバター画像データのように、現実には存在しない、アニメの登場キャラクタ等のコンピュータグラフィックス画像であってもよい。これにより、現実に存在するまたは存在しないを問わず、ユーザ好みのアバターを仮想同乗者として同乗させることができる。
【0071】
また、図7および図8に示した各内装画像データおよび各アバター画像データは、3D表示ならびに動画再生表示が可能な画像データである。
【0072】
図6の説明に戻る。なお、レイアウト情報テーブル12AのアバターIDにアバターIDデータが設定されていれば、仮想同乗者は、設定されたアバターIDデータに該当するアバター画像データを用いたアバターに置き換えられる。アバターIDにアバターIDデータが設定されていなければ、仮想同乗者は、アバターに置き換えられることなく、実際の本人実写画像が用いられる。
【0073】
図5の説明に戻る。制御部13は、コントローラ(controller)であり、たとえば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等によって、記憶部12に記憶されている図示略の各種プログラムがRAMを作業領域として実行されることにより実現される。また、制御部13は、たとえば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現することができる。
【0074】
制御部13は、設定部13aと、取得部13bと、生成部13cと、出力制御部13dと、送信部13eとを有し、以下に説明する情報処理の機能や作用を実現または実行する。
【0075】
設定部13aは、ユーザによる操作部2の操作に基づいて、仮想的な同乗体験の提供機能に関する各情報、すなわち当該機能実現のために使用するレイアウト情報12aや、内装情報12bや、アバター情報12cなどを選択し、制御用のデータとして設定する。
【0076】
取得部13bは、カメラ部3によって撮影された車窓風景画像データを取得する。また、取得部13bは、仮想同乗者となる各メンバーMの画像データおよび音声データを取得する。
【0077】
たとえば、制御装置10-1が搭載された車両V-1で制御装置10-2のメンバーM-2を仮想同乗者とする場合、制御装置10-1の取得部13bは、通信部11を介し、制御装置10-2において撮影されたメンバーM-2の画像データと、制御装置10-2において集音されたメンバーM-2の音声データとを取得する。
【0078】
また、取得部13bは、カメラ部3によって撮影されたメンバーMの画像データを取得し、かかるメンバーMを仮想同乗者としたい他の制御装置10へ向けて送信部13eに送信させる。また、取得部13bは、音声入力部4によって集音されたメンバーMの音声データを取得し、かかるメンバーMを仮想同乗者としたい他の制御装置10へ向けて送信部13eに送信させる。
【0079】
生成部13cは、取得部13bによって取得された車窓風景画像データと、レイアウト情報12aに応じた内装画像データと、仮想同乗者となるメンバーMの画像データとを、各メンバーMのレイアウト位置、運転者(仮想画像を表示する車両の搭乗者)の位置(視点位置)に応じて加工処理して(当該視点位置から見える画像に視点位置変換、切り出し処理等を行う)、それら加工画像を重畳して仮想同乗画像を生成する。このとき、生成部13cは、車窓風景画像データに対し内装画像データを重畳し、さらに内装画像データに対しメンバーMの画像データを重畳して、仮想同乗画像を生成する。
【0080】
出力制御部13dは、生成部13cによって生成された仮想同乗画像を表示部7に対し表示させる。また、出力制御部13dは、取得部13bによって取得された仮想同乗者となるメンバーMの音声データを、仮想同乗者が発話しているように出力させる。つまり、音声を出力するスピーカ6a,6b,6c,6dを選択する、各スピーカから出力する音声のレベルや位相を調整する等の音像定位制御を行い、各仮想同乗者のレイアウトに応じた定位感で発話音声を出力する。また、出力制御部13dは、仮想同乗者の体温が感じられるように、各仮想同乗者のレイアウトに応じてエアコンの温度制御等の空調制御をあわせて行う。
【0081】
かかる音声の出力および温度制御の具体例について、図9および図10を用いて説明する。図9は、音声の出力および温度制御の説明図(その1)である。また、図10は、音声の出力および温度制御の説明図(その2)である。
【0082】
出力制御部13dは、図9に示すように、たとえば表示装置5に組み込まれたスピーカ6bにより、仮想同乗者であるメンバーM-2が発話しているように音声を出力させる。つまり、仮想同乗者方向のスピーカ6bから音声を出力して、仮想同乗者が音声を発している状態を模擬する。このとき、スピーカ6bは、仮想同乗者の口元に相当する位置(方向)の近傍に配置されていることが好ましい。
【0083】
また、出力制御部13dは、同図に示すように、たとえば表示装置5付近に組み込まれた熱源8を制御することによって、仮想同乗者の体温が感じられるように温度制御を行う。このとき、熱源8は、仮想同乗者の体に相当する位置の近傍に配置されていることが好ましい。なお、熱源8としては、赤外線ヒータ、車載用エアコン(温風吹き出し口を表示装置5付近に設置)等を用いればよい。
【0084】
なお、出力制御部13dは、音声の出力に関し、たとえば図10に示すように、音声出力部6に対する音像定位制御を行う(各スピーカ6a,6b,6c,6dから出力する仮想同乗者(仮想同乗者に対応する遠隔地にいる人)の音声の位相、音量を、各スピーカ6a,6b,6c,6dの位置と狙いとする音像定位位置に応じて調整することにより音像定位制御を行う)ことによって、仮想同乗者の口元に相当する位置に音像を定位させるようにしてもよい。かかる場合、音声出力部6の各スピーカ6a,6b,6c,6dは、必ずしも表示装置5に組み込まれる必要がなく、通常の音響再生装置用の車載スピーカを用いることができる。
【0085】
図5の説明に戻る。送信部13eは、カメラ部3によって撮影されたメンバーMの画像データ、および、音声入力部4によって集音されたメンバーMの音声データを、通信部11を介し、他の制御装置10へ向けて送信する。
【0086】
ところで、これまでは、車両Vに乗車中のメンバーMの左方または右方に配置された表示装置5に仮想同乗画像を表示させる場合を例に挙げたが、前述のデジタルルームミラーとして機能するディスプレイ5cに対し、仮想同乗画像を表示させてもよい。
【0087】
かかる場合の例について、図11を用いて説明する。図11は、仮想同乗画像をデジタルルームミラーとして機能するディスプレイ5cに表示させる場合の説明図である。なお、図11を用いた説明でも、これまでと同様に、車両V-1に乗車するメンバーM-1の視点から見た場合を例に挙げる。
【0088】
かかる場合、生成部13cは、図11に示すように、メンバーM-1が運転席から見た実際のルームミラー画像(カメラ3cの撮影画像)と、メンバーM-1が選択した車両の内装画像、たとえば後部座席付きの車両の内装画像と、他地点のメンバーMの画像とを重畳して表示装置5に表示させる。他地点のメンバーMの画像は、ここでは、車両V-2に乗車中のメンバーM-2の画像および他のメンバーM-3の画像である。
【0089】
このとき、生成部13cは、ルームミラー画像に対し内装画像を重畳し、さらに内装画像に対し各メンバーMの画像を重畳して、仮想同乗画像を生成する。
【0090】
これにより、メンバーM-1は、1人乗りの車両V-1であるにも関わらず、車室内に後部座席が存在し、その後部座席にメンバーM-2,M-3が座っていて、車両V-1に同乗しているかのような状況を疑似体験することができる。すなわち、メンバーM-1に対し、現実の車両V-1に制約されない同乗体験を提供することができる。また、メンバーM-1に対し、実際よりも車室空間を後部座席方向に広く感じさせることができるので、乗車中の快適性を向上させることができる。
【0091】
なお、図11の例の場合、各メンバーMの音声については、出力制御部13dは、たとえばメンバーM-2の音声は図4に示したスピーカ6dから、メンバーM-3の音声は同じく図4に示したスピーカ6cから、それぞれ出力させることとなる。あるいは、複数のスピーカ6a,6b,6c,6dを用いた音像定位処理を行なってもよい。
【0092】
また、前述の図2で示した助手席の仮想同乗画像と図11で示した後部座席の仮想同乗画像の表示を併用することも可能で、その場合は4人が同乗した状態を疑似体験できる。この場合、車両V-1の制御装置10-1が、関係車両等の制御装置10間の音声信号を中継伝送することにより、各メンバーMが相互に会話できるようになる。
【0093】
次に、制御装置10が実行する処理手順について図12を用いて説明する。図12は、実施形態に係る制御装置10が実行する処理手順を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は車両起動中に繰り返し実行される。
【0094】
図12に示すように、まず制御部13は、仮想的な同乗体験の提供機能がオンされたか否かを判定する(ステップS101)。
【0095】
同機能がオンされていない場合(ステップS101,No)、制御部13は、処理を終了する。同機能がオンされた場合(ステップS101,Yes)、制御部13は、事前にユーザによる操作部2の操作に基づいて設定された、仮想的な同乗体験の提供機能に関する各情報を読み込む(ステップS102)。そして、通信部11が、レイアウト情報12aに基づき、仮想同乗者となるメンバーMとの間の通信接続を確立する(ステップS103)。
【0096】
通信接続を確立後、制御部13は、レイアウト情報12aに基づき必要となる各メンバーMの画像および音声を取得する(ステップS104)。そして、制御部13は、実際の車窓風景画像、内装画像および各メンバーMの画像を重畳して仮想同乗画像を生成する(ステップS105)。
【0097】
そして、制御部13は、生成した各仮想同乗画像を仮想同乗者ごとに表示先として決定した(方向の)表示部7へ表示させる(ステップS106)。また、制御部13は、仮想同乗者が発話しているように出力するスピーカを仮想同乗者ごとに決定し(あるいは、音像定位処理における各制御パラメータを設定し)、各メンバーMの音声を出力させる(ステップS107)。
【0098】
そして、制御部13は、仮想的な同乗体験の提供機能がオフされたか否かを判定する(ステップS108)。
【0099】
同機能がオフされていない場合(ステップS108,No)、制御部13は、ステップS104からの処理を繰り返す。同機能がオフされた場合(ステップS108,Yes)、通信部11が、仮想同乗者となるメンバーMとの間の通信接続を切断する(ステップS109)。そして、処理を終了する。
【0100】
ところで、これまでは、制御装置10の間の車々間通信に基づいて、制御装置10のそれぞれで仮想的な同乗体験の提供機能を実行する場合を例に挙げたが、制御装置10を取りまとめるサーバ装置100が統合的に同機能を実行するようにしてもよい。
【0101】
図13は、変形例に係る同乗体験提供システム1Aの構成例を示す図である。図13に示すように、同乗体験提供システム1Aは、サーバ装置100をさらに含む。
【0102】
サーバ装置100は、ネットワークNを介して制御装置10のそれぞれと通信可能に設けられており、制御装置10から仮想的な同乗体験の提供機能の要求を受け付けた場合に、同乗体験の対象車両となっている車両の制御装置10のそれぞれから車窓風景画像、各メンバーMの画像および音声を取得する。
【0103】
また、サーバ装置100は、統合的なレイアウト情報テーブル12A、内装DB12BおよびアバターDB12Cを保持しており、これらの情報に基づいて各制御装置10へ向けた仮想同乗画像ならびに音声を生成する。
【0104】
そして、サーバ装置100は、生成した仮想同乗画像ならびに音声を各制御装置10へ送信し、各制御装置10に出力させることとなる。
【0105】
また、既に述べた通り、同行者であるメンバーMだけでなく、非同行者のメンバーMもまた仮想的に同乗させることが可能である。かかる場合、図13に示すように、同乗体験提供システム1Aは、非同行者装置30をさらに含む。
【0106】
非同行者装置30は、たとえば旅行には同行していないが、車両Vを利用するメンバーM-1,M-2とともにグループ活動を楽しみたいメンバーM-3が利用する自宅等に設定された装置である。
【0107】
非同行者装置30は、制御装置10と同様に、カメラ部3と、音声入力部4と、表示装置5と、音声出力部6とを有しており、少なくとも制御装置10と同等の設定処理、取得処理、生成処理、出力制御処理および送信処理を実行可能に設けられる。なお、非同行者装置30におけるカメラ部3、音声出力部6の設置位置はユーザがマニュアル等で指定された所定位置に設置する、あるいは設置条件(位置、向き等)をユーザが非同行者装置30に入力し、非同行者装置30がこれらで規定されるカメラ部3、音声出力部6の設置条件に基づき画像処理(視点変換処理等)、音声処理(定位感調整処理)を行うようにすれば、より臨場感の高い同乗体験が実現できる。
【0108】
そして、非同行者装置30は、サーバ装置100に対し、メンバーM-3の画像および音声を送信し、サーバ装置100にかかるメンバーM-3を仮想同乗者として含めた制御装置10向けの仮想同乗画像ならびに音声を生成させる。また、サーバ装置100は、非同行者装置30に向けては、メンバーM-1やメンバーM-2を仮想同乗者として含めた仮想同乗画像ならびに音声を生成する。
【0109】
そして、非同行者装置30は、サーバ装置100から非同行者装置30向けの仮想同乗画像ならびに音声を取得し、表示装置5および音声出力部6に出力させることとなる。
【0110】
これにより、たとえば遠隔地間においても、仮想的な同乗体験をグループのメンバーMの間で共有することが可能となる。
【0111】
なお、同じグループのメンバーMの間では、メンバーM-3のような非同行者を含む場合などは特に、車窓風景画像については同一の画像が仮想同乗画像において重畳されることが好ましい。
【0112】
また、前方車窓(フロントガラス)の風景画像については、運転の妨げとなるので上記実施形態では表示を行わなかったが、家屋内等に居る非同行者や、運転の必要のない自動運転車両の搭乗者に対する場合は、家屋内のディスプレイや自動運転車両のフロントガラスに設置されたディスプレイに前方車窓の風景画像(カメラを設置して撮影)を表示するようにしてもよい。
【0113】
これにより、各メンバーMは、たとえば同一の車窓風景画像に基づく共通の話題でコミュニケーションをとることが容易となり、円滑にグループ活動を進めることが可能となる。
【0114】
また、これまでは、表示装置5が非透過型のディスプレイであることとしたが、表示装置5は透過型のディスプレイであってもよい。かかる場合、制御部13は、車窓風景画像については重畳せずに、ディスプレイ越しの実際の車窓風景に対し、内装画像と、仮想同乗者となるメンバーMの画像とを重畳するようにしてもよい。
【0115】
また、これまでは、表示装置5がウィンドウやルームミラーに設けられるディスプレイであることとしたが、ウィンドウやルームミラーに限らず、表示装置5は、ウィンドウを含む車室内の壁面を表示スクリーンとしたディスプレイであってもよい。
【0116】
上述してきたように、実施形態に係る制御装置10(「情報処理装置」の一例に相当)は、車両Vの車室内に設けられた表示部7に画像を表示させる制御部13を有する情報処理装置である。制御部13は、上記車室よりも大きい車室空間の仮想内装画像を表示部7に表示させる。
【0117】
したがって、実施形態に係る制御装置10によれば、使用する車両形態を要因として発生するユーザの不満を低減することができる。
【0118】
また、制御部13は、車両周囲の風景画像を上記仮想内装画像の車窓部分に重畳する。
【0119】
したがって、実施形態に係る制御装置10によれば、車両周囲の風景画像を上記仮想内装画像内に反映することができる。
【0120】
また、制御部13は、他地点に存在する実在人物の画像に基づく仮想同乗者(「仮想的な同乗者」の一例に相当)の画像を、上記仮想内装画像に重畳した仮想同乗画像を表示部7に表示させる。
【0121】
したがって、実施形態に係る制御装置10によれば、他地点に存在する実在人物が仮想的に同乗する仮想体験を提供することができる。
【0122】
また、制御部13は、仮想同乗者の音声を、仮想同乗者の表示位置に応じて定位させる。
【0123】
したがって、実施形態に係る制御装置10によれば、仮想同乗者となるメンバーMの音声を、まさに仮想同乗者が発話しているように出力させることができる。
【0124】
また、制御部13は、車室内のルームミラーに設けられた表示部7に対し、仮想同乗画像を表示させる。
【0125】
したがって、実施形態に係る制御装置10によれば、各メンバーMは、1人乗りの車両Vであるにも関わらず、車室内に後部座席が存在し、その後部座席に他のメンバーMが座っていて、同乗しているかのような状況を疑似体験することができる。すなわち、各メンバーMに対し、現実の車両Vに制約されない同乗体験を提供することができる。また、各メンバーMに対し、実際よりも車室空間を後部座席方向に広く感じさせることができるので、乗車中の快適性を向上させることができる。
【0126】
また、制御部13は、他地点の車両Vの制御装置10と連携して上記仮想同乗画像を表示する場合、各車両Vにおける実在人物と仮想同乗者の相対位置関係が一致するように仮想同乗者を表示させる。
【0127】
したがって、実施形態に係る制御装置10によれば、現実の各メンバーMと、仮想画像の各メンバーMの位置・方向関係とが、各々の車室内で一致した状態となり、各メンバーMの自然な動きで互いに仮想同乗者と向き合っての会話が可能となる等、違和感なくコミュニケーションを交わすことが可能となる。
【0128】
また、制御部13は、車両周囲の風景画像を上記仮想内装画像の車窓部分に重畳する場合、他地点の車両Vで表示される風景と同じ風景画像を使用して表示する。
【0129】
したがって、実施形態に係る制御装置10によれば、他地点に存在するメンバーMと車窓風景を共有する仮想体験を提供することができる。
【0130】
また、実施形態に係る制御装置10は、車室内画像を撮影するカメラ3a,3b,3c(「車室内カメラ」の一例に相当)と、車両周囲の風景を撮影するカメラ3d,3e,3f(「風景カメラ」の一例に相当)と、車室内の音声を取得する音声入力部4(「マイク」の一例に相当)と、車室内に音を出力するスピーカ6a,6b,6c,6dと、車室内における側方車窓付近に設置された表示部7と、他地点の外部装置との通信を行う通信部11と、各種制御を行う制御部13と、を有する車載仮想表示装置である。
【0131】
制御部13は、車室よりも大きい車室空間の仮想内装画像と、カメラ3d,3e,3fで撮影した車両周囲の風景画像と、通信部11により受信した他地点の外部装置からの当該他地点に存在する実在人物の画像データに基づく仮想的な同乗者の画像とを、重畳して仮想同乗画像を生成する。また、制御部13は、生成した上記仮想同乗画像を表示部7に表示させる。また、制御部13は、通信部11により受信した他地点の外部装置からの当該他地点に存在する実在人物の音声データに応じた音声を、スピーカ6a,6b,6c,6dから出力させる。また、制御部13は、音声入力部4で取得した音声に応じた音声データを通信部11により他地点の外部装置に送信させる。また、制御部13は、カメラ3a,3b,3cでの撮影画像に応じた車室内画像データを通信部11により他地点の外部装置に送信させる。また、制御部13は、カメラ5d,5e,5fでの撮影画像に応じた風景画像データを通信部11により他地点の外部装置に送信させる。
【0132】
したがって、実施形態に係る制御装置10によれば、他地点の外部装置との間で連携しつつ、使用する車両形態を要因として発生するユーザの不満を低減することができる。
【0133】
また、実施形態に係る同乗体験提供システム1は、相互通信可能な複数の制御装置10で構成される仮想表示システムである。制御装置10のそれぞれは、車室内画像を撮影するカメラ3a,3b,3cと、車両周囲の風景を撮影するカメラ3d,3e,3fと、車室内の音声を取得する音声入力部4と、車室内に音を出力するスピーカ6a,6b,6c,6dと、車室内における側方車窓付近に設置された表示部7と、他の制御装置10との通信を行う通信部11と、各種制御を行う制御部13と、を有する。
【0134】
制御部13は、車室よりも大きい車室空間の仮想内装画像と、カメラ3d,3e,3fで撮影した車両周囲の風景画像と、通信部11により受信した他地点の他の制御装置10からの当該他地点に存在する実在人物の画像データに基づく仮想的な同乗者の画像とを、重畳して仮想同乗画像を生成する。また、制御部13は、生成した上記仮想同乗画像を表示部7に表示させる。また、制御部13は、通信部11により受信した上記他地点の他の制御装置10からの上記他地点に存在する実在人物の音声データに応じた音声を、スピーカ6a,6b,6c,6dから出力させる。また、制御部13は、音声入力部4で取得した音声に応じた音声データを通信部11により上記他の制御装置10に送信させる。また、制御部13は、カメラ3a,3b,3cでの撮影画像に応じた車室内画像データを通信部11により上記他の制御装置10に送信させる。また、制御部13は、カメラ5d,5e,5fでの撮影画像に応じた風景画像データを通信部11により上記他の制御装置10に送信させる。
【0135】
したがって、実施形態に係る制御装置10によれば、他地点の他の制御装置10との間で連携しつつ、使用する車両形態を要因として発生するユーザの不満を低減することができる。
【0136】
また、制御部13は、上記他の制御装置10と連携して上記仮想同乗画像を表示する場合、各車両Vにおける実在人物と仮想同乗者の相対位置関係が一致するように仮想同乗者を表示させる。
【0137】
したがって、実施形態に係る同乗体験提供システム1によれば、現実の各メンバーMと、仮想画像の各メンバーMの位置・方向関係とが、各々の車室内で一致した状態となり、各メンバーMの自然な動きで互いに仮想同乗者と向き合っての会話が可能となる等、違和感なくコミュニケーションを交わすことが可能となる。
【0138】
また、実施形態に係る仮想体験提供方法は、車両Vの車室内に仮想の同乗者を表示する仮想体験提供方法であって、車室よりも大きい車室空間の仮想内装画像と、通信により得られた他地点に存在する実在人物の画像に基づく仮想的な同乗者の画像とを、重畳した仮想同乗画像を表示する。
【0139】
したがって、実施形態に係る仮想体験提供方法によれば、使用する車両形態を要因として発生するユーザの不満を低減することができる。
【0140】
なお、上述した実施形態では、車両Vが超小型モビリティであることとしたが、車両Vは、超小型モビリティに限定されない。たとえば車両Vは、2人以上が乗車可能であってもよい。車両Vが、このように2人以上が乗車可能であっても、より広い車室空間の内装画像を利用することで、かかる車両Vの乗員に対し、より広い車内空間に仮想同乗者が同乗している状況を疑似体験させることができる。
【0141】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0142】
1,1A 同乗体験提供システム
2 操作部
3 カメラ部
4 音声入力部
5 表示装置
6 音声出力部
7 表示部
8 熱源
10 車載装置
11 通信部
12 記憶部
12A レイアウト情報テーブル
12B 内装DB
12C アバターDB
13 制御部
13a 設定部
13b 取得部
13c 生成部
13d 出力制御部
13e 送信部
30 非同行者装置
100 サーバ装置
V 車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13