(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023104405
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】リトラクタ及びシートベルト装置
(51)【国際特許分類】
B60R 22/40 20060101AFI20230721BHJP
【FI】
B60R22/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022005370
(22)【出願日】2022-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】318002149
【氏名又は名称】Joyson Safety Systems Japan合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118267
【弁理士】
【氏名又は名称】越前 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】西 喜継
(72)【発明者】
【氏名】金森 靖
【テーマコード(参考)】
3D018
【Fターム(参考)】
3D018HA01
3D018HB05
3D018HC04
3D018HD02
3D018HE04
(57)【要約】
【課題】振動音の発生を低減することができる、リトラクタ及びシートベルト装置を提供する。
【解決手段】第一実施形態に係るリトラクタ1は、乗員を拘束するウェビングを巻き取るスプール2と、スプール2を回転可能に収容するベースフレーム3と、スプール2の回転を規制するロック機構4と、を備え、ロック機構4は、スプール2に対して相対回転可能に同軸上に配置されたロックギア41と、ベースフレーム3と係合可能に配置されたパウル42と、ロックギア41に配置されスプール2とロックギア41との相対回転によりパウル42を移動させるフライホイール43と、フライホイール43とロックギア41との間に配置された弾性力を備えた緩衝部44と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員を拘束するウェビングを巻き取るスプールと、該スプールを回転可能に収容するベースフレームと、前記スプールの回転を規制するロック機構と、を備えたリトラクタにおいて、
前記ロック機構は、前記スプールに対して相対回転可能に同軸上に配置されたロックギアと、前記ベースフレームと係合可能に配置されたパウルと、前記ロックギアに配置され前記スプールと前記ロックギアとの相対回転により前記パウルを移動させるフライホイールと、前記フライホイールと前記ロックギアとの間に配置された弾性力を備えた緩衝部と、を備えている、
ことを特徴とするリトラクタ。
【請求項2】
前記ロック機構は、前記フライホイールを所定の方向に付勢するフックスプリングを備え、前記緩衝部は前記フックスプリングの側部により構成されている、請求項1に記載のリトラクタ。
【請求項3】
前記フライホイールは、前記フックスプリングの軸心を支持する支持軸を備えている、請求項2に記載のリトラクタ。
【請求項4】
前記フライホイールは、前記フックスプリングの前記ロックギアの側部が露出するように前記フックスプリングを収容する凹部又は切り欠き部を備えている、請求項3に記載のリトラクタ。
【請求項5】
前記ロックギアは、前記フライホイールを旋回可能に支持する旋回軸と、該旋回軸の外周に配置された複数の係合爪と、を備え、前記フライホイールは、前記旋回軸に挿通される挿通孔と、前記係合爪を係合させる係合孔と、を備えている、請求項2に記載のリトラクタ。
【請求項6】
前記複数の係合爪は、相対する位置に形成される少なくとも二つの係合爪を含み、前記二つの係合爪の相対する方向と前記フックスプリングの軸心方向とは略垂直に交差するように構成されている、請求項5に記載のリトラクタ。
【請求項7】
前記緩衝部は、前記フライホイールと前記ロックギアとが対峙する面の何れか一方に形成された板バネ構造により構成されている、請求項1に記載のリトラクタ。
【請求項8】
前記緩衝部は、前記フライホイールと前記ロックギアとが対峙する面の何れか一方に配置された弾性体により構成されている、請求項1に記載のリトラクタ。
【請求項9】
前記ロックギアは、前記フライホイールの前記緩衝部が配置された位置と反対側の位置に形成された窪み又は開口部を備えている、請求項1に記載のリトラクタ。
【請求項10】
請求項1~請求項9の何れか一項に記載のリトラクタを備える、ことを特徴とするシートベルト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リトラクタ及びシートベルト装置に関し、特に、振動音の発生を低減することができるリトラクタ及びシートベルト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、一般に、乗員が着座する腰掛部と乗員の背面に位置する背もたれ部とを備えたシートに乗員を拘束するシートベルト装置が設けられている。かかるシートベルト装置は、乗員を拘束するウェビングと、ウェビングの巻き取りを行うリトラクタと、シートの側面に配置されたバックルと、ウェビングに配置されたトングとを含み、トングをバックルに嵌着させることによってウェビングにより乗員をシートに拘束している。
【0003】
かかるリトラクタは、ウェビングを巻き取るスプールと、該スプールを回転可能に収容するベースフレームと、前記スプールに巻き取り力を付与するスプリングユニットと、車両の急減速を検知するビークルセンサと、該ビークルセンサによって作動し前記スプールを前記ベースフレームに係合させるロック機構と、車両衝突時等の緊急時に前記ウェビングの弛みを除去するプリテンショナと、を備えていることが多い。
【0004】
例えば、特許文献1には、ロック機構として制御ディスクを備えたブロック装置の一部が開示されている。制御ディスクには旋回軸を中心に旋回可能に慣性質量体が配置されている。特許文献1に記載された発明では、慣性質量体による騒音(振動音)を低減するために、慣性質量体の外縁に形成された当接面に当接するL字形状の突起を配置している。なお、制御ディスクはロックギアと称し、慣性質量体はフライホイールと称することもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されたように突起と慣性質量体(フライホイール)とを当接した状態にしておくと慣性質量体(フライホイール)の旋回運動を阻害する要因となるため、少なからず隙間を設定しておく必要がある。したがって、この隙間は振動音を発生させる要因となる。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑み創案されたものであり、振動音の発生を低減することができる、リトラクタ及びシートベルト装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、乗員を拘束するウェビングを巻き取るスプールと、該スプールを回転可能に収容するベースフレームと、前記スプールの回転を規制するロック機構と、を備えたリトラクタにおいて、前記ロック機構は、前記スプールに対して相対回転可能に同軸上に配置されたロックギアと、前記ベースフレームと係合可能に配置されたパウルと、前記ロックギアに配置され前記スプールと前記ロックギアとの相対回転により前記パウルを移動させるフライホイールと、前記フライホイールと前記ロックギアとの間に配置された弾性力を備えた緩衝部と、を備えている、ことを特徴とするリトラクタが提供される。
【0009】
前記ロック機構は、前記フライホイールを所定の方向に付勢するフックスプリングを備え、前記緩衝部は前記フックスプリングの側部により構成されていてもよい。
【0010】
前記フライホイールは、前記フックスプリングの軸心を支持する支持軸を備えていてもよい。
【0011】
前記フライホイールは、前記フックスプリングの前記ロックギアの側部が露出するように前記フックスプリングを収容する凹部又は切り欠き部を備えていてもよい。
【0012】
前記ロックギアは、前記フライホイールを旋回可能に支持する旋回軸と、該旋回軸の外周に配置された複数の係合爪と、を備え、前記フライホイールは、前記旋回軸に挿通される挿通孔と、前記係合爪を係合させる係合孔と、を備えていてもよい。
【0013】
前記複数の係合爪は、相対する位置に形成される少なくとも二つの係合爪を含み、前記二つの係合爪の相対する方向と前記フックスプリングの軸心方向とは略垂直に交差するように構成されていてもよい。
【0014】
前記緩衝部は、前記フライホイールと前記ロックギアとが対峙する面の何れか一方に形成された板バネ構造により構成されていてもよい。
【0015】
前記緩衝部は、前記フライホイールと前記ロックギアとが対峙する面の何れか一方に配置された弾性体により構成されていてもよい。
【0016】
前記ロックギアは、前記フライホイールの前記緩衝部が配置された位置と反対側の位置に形成された窪み又は開口部を備えていてもよい。
【0017】
また、本発明によれば、上述した何れかの構成を有するリトラクタを備える、ことを特徴とするシートベルト装置が提供される。
【発明の効果】
【0018】
上述した本発明に係るリトラクタ及びシートベルト装置によれば、フライホイールとロックギアとの間に弾性力を備えた緩衝部を配置したことにより、フライホイールを旋回させるために必要な隙間を極限まで小さくすることができ、フライホイールが振動により傾いた場合であっても緩衝部により当接時に生じる衝撃を吸収することができ、振動音の発生を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第一実施形態に係るリトラクタを示す部品展開図である。
【
図2】
図1に示したリトラクタの部分拡大図であり、(A)はロックギアにフライホイールを組み付けた状態、(B)はフライホイールの背面、を示している。
【
図3】
図2(A)におけるA-A矢視断面図であり、(A)はフライホイールが平衡の状態、(B)はフライホイールが傾いた状態、を示している。
【
図4】フライホイールの変形例を示す図であり、(A)はフライホイールの背面、(B)はフライホイールを含む断面、を示している。
【
図5】
図2(A)におけるB-B断面図であり、(A)は第一実施形態、(B)は第一変形例、(C)は第二変形例、を示している。
【
図6】本発明の第二実施形態に係るリトラクタを示す部分拡大図であり、(A)はロックギアにフライホイールを組み付けた状態、(B)は
図6(A)におけるB-B矢視断面図、を示している。
【
図7】本発明の第三実施形態に係るリトラクタを示す部分拡大図であり、(A)はロックギアにフライホイールを組み付けた状態、(B)は
図7(A)におけるB-B矢視断面図、を示している。
【
図8】本発明の一実施形態に係るシートベルト装置を示す全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について
図1~
図8を用いて説明する。ここで、
図1は、本発明の第一実施形態に係るリトラクタを示す部品展開図である。
図2は、
図1に示したリトラクタの部分拡大図であり、(A)はロックギアにフライホイールを組み付けた状態、(B)はフライホイールの背面、を示している。なお、
図1において、説明の便宜上、ウェビングの図を省略してある。
【0021】
本発明の第一実施形態に係るリトラクタ1は、
図1に示したように、乗員を拘束するウェビングを巻き取るスプール2と、スプール2を回転可能に収容するベースフレーム3と、スプール2の回転を規制するロック機構4と、を備え、ロック機構4は、スプール2に対して相対回転可能に同軸上に配置されたロックギア41と、ベースフレーム3と係合可能に配置されたパウル42と、ロックギア41に配置されスプール2とロックギア41との相対回転によりパウル42を移動させるフライホイール43と、フライホイール43とロックギア41との間に配置された弾性力を備えた緩衝部44と、スプール2とロックギア41との間に配置されたロッキングベース45と、を備えている。
【0022】
スプール2は、ウェビングを巻き取る巻胴であり、例えば、一端はスプリングユニット5に回転可能に支持されており、他端はロッキングベース45に接続されている。ロッキングベース45は、キャップ46(軸受)を介してリテーナカバー6に回転可能に支持されている。
【0023】
スプリングユニット5は、スプール2を巻き取り方向に付勢する部品であり、ゼンマイバネを内蔵している。リテーナカバー6は、ロック機構4やビークルセンサ47を収容する部品である。なお、スプリングユニット5及びリテーナカバー6は、直接的又は間接的にベースフレーム3に固定される。
【0024】
また、リトラクタ1は、車両衝突時等の緊急時にウェビングの弛みを除去するプリテンショナ(図示省略)を有していてもよい。プリテンショナは、例えば、ロッキングベース45に隣接するベースフレーム3の内側に配置される。なお、プリテンショナは、ロッキングベース45に隣接するベースフレーム3の外側に配置されていてもよいし、スプリングユニット5の内側に配置されていてもよい。
【0025】
ベースフレーム3は、例えば、略角型U字形状の断面を有するフレーム構造体であり、背面を構成する壁部材の両端に側面を構成する一対の壁部材が形成されている。この側面を構成する一対の壁部材にスプール2の端部(ロッキングベース45を含む)を挿通する開口部が形成されており、内周面には係合歯31が形成されている。また、側面を構成する一対の壁部材の先端には、正面を構成するタイプレートが接続されていてもよい。
【0026】
ロック機構4は、車両衝突時等の緊急時にウェビングの引き出しを規制する機構である。ロック機構4は、例えば、ロックギア41、パウル42、フライホイール43、ロッキングベース45、キャップ46、ビークルセンサ47等の部品により構成される。なお、ロック機構4は、図示した構成に限定されるものではない。
【0027】
ロッキングベース45は、スプール2の端部に接続される略円盤形状の部品である。ロッキングベース45は、ベースフレーム3の開口部に挿通され、外周部が係合歯31と対峙するように配置される。ロッキングベース45は、パウル42を収容可能な厚さを有し、外周の一部にパウル42を収容可能な空間をする収容部45aが形成されている。また、ロッキングベース45は、スプール2の回転軸を構成する軸部45bを有している。
【0028】
ビークルセンサ47は、例えば、球形の質量体47aと、質量体47aの移動によって揺動されるセンサレバー47bと、質量体47a及びセンサレバー47bを収容するセンサカバー47cと、を備えている。かかるビークルセンサ47は、車体に所定値以上の減速や傾きが生じると、質量体47aの釣り合いが崩れてセンサレバー47bが上方に押し上げられ、センサレバー47bの先端がロックギア41に係合し、ロックギア41の回転を規制する。
【0029】
パウル42は、ロッキングベース45に形成された突起に回動可能に配置される第一端部42aと、第一端部42aを中心に旋回可能に構成された第二端部42bと、を備えている。第二端部42bは、ロックギア41に形成された案内溝41dに挿通されるピン42cと、ベースフレーム3の係合歯31に係合可能な係合爪42dと、を備えている。
【0030】
パウル42は、ロックギア41がスプール2(ロッキングベース45)に対して相対回転すると案内溝41dに沿ってピン42cが移動し、第二端部42bがロッキングベース45の側面から径方向に押し出され、係合爪42dがベースフレーム3の係合歯31に係合する。この係合によりスプール2の回転がロックされウェビングの引き出しが規制される。
【0031】
なお、パウル42の第二端部42bは、係合爪42dがロッキングベース45の側面から径方向外方に飛び出さないように、パウルスプリング42eにより径方向内方に付勢されている。
【0032】
ロックギア41は、例えば、ロッキングベース45に対面するように配置される円盤部41aと、円盤部41aの外縁に沿って外側に向かって立設された外周壁41bと、ロッキングベース45の軸部45bに挿通される中心部41cと、を備えている。円盤部41aと外周壁41bとにより形成された空間にはフライホイール43が配置される。
【0033】
円盤部41aには、パウル42のピン42cを案内する案内溝41d、フライホイール43を旋回可能に支持する旋回軸41e、旋回軸41eの外周に配置された複数の係合爪41k、フライホイール43の先端部の位置決めを行う突起部41f等が形成されている。外周壁41bの外周面には、ビークルセンサ47のセンサレバー47bと係合可能な係合歯41gが形成されている。
【0034】
フライホイール43は、ロックギア41の円盤部41a、外周壁41b及び中心部41cに囲まれた空間に挿入可能な形状に湾曲又は屈曲した形状を有し、相対回転方向Rの上流側に位置する第一端部43aと、相対回転方向Rの下流側に位置する第二端部43bとを有している。フライホイール43の第一端部43aには、フライホイール43を相対回転方向Rと反対方向に付勢するフックスプリング48が配置されている。
【0035】
また、フライホイール43は、第一端部43aと第二端部43bとの中間部に形成されロックギア41の旋回軸41eに挿通される挿通孔43cと、挿通孔43cの外周に沿って配置されロックギア41の係合爪41kを係合させる複数の係合孔43dと、を備えている。係合孔43dは、係合爪41kと係合したときに、係合爪41kの軸方向の移動を規制し、係合爪41kの旋回方向の移動を許容するように構成されている。
【0036】
係合爪41kは、例えば、
図2(A)に示したように、相対する位置に形成される二つの係合爪41k,41kを備え、二つの係合爪41k,41kの相対する方向L1とフックスプリング48の軸心方向L2とは通常状態(相対回転前の状態)で略垂直に交差するように構成されている。かかる構成により、フライホイール43の姿勢を安定させることができる。
【0037】
なお、係合爪41kの個数や配置は、フライホイール43の形状や重心の位置等の条件によって設定されるものであり、図示した構成に限定されるものではない。例えば、係合爪41kは三つ以上であってもよい。また、係合孔43dは、各係合爪41kに対応する位置に形成されていてもよいし、複数の係合爪41kを纏めて係合させるように幅広に形成されていてもよい。
【0038】
また、フライホイール43は、
図2(A)及び
図2(B)に示したように、フックスプリング48の軸心を支持する支持軸43eと、フックスプリング48のロックギア41側の側部が露出するようにフックスプリング48を収容する凹部43fと、を備えている。なお、
図2(A)では説明の便宜上、フライホイール43の本体部によって隠れた支持軸43e及びフックスプリング48を点線で図示してある。
【0039】
フックスプリング48の一端は支持軸43eに挿通されて支持され、他端はロックギア41の円盤部41aに形成されたストッパ41hによって支持される。ストッパ41hにはフックスプリング48の軸心に挿入される支持軸を備えている。このようにフックスプリング48の両端を支持軸43e及びストッパ41hで支持することにより、フライホイール43は、相対回転方向Rと反対方向に付勢される。
【0040】
ここで、
図3は、
図2(A)におけるA-A矢視断面図であり、(A)はフライホイールが平衡の状態、(B)はフライホイールが傾いた状態、を示している。なお、
図3(A)及び
図3(B)では、説明の便宜上、フックスプリング48を点線で図示してある。
【0041】
図3(A)に示したように、支持軸43eにフックスプリング48を挿通し凹部43fにフックスプリング48を配置した状態で、フックスプリング48の側部はロックギア41側に露出している。フックスプリング48は、フライホイール43の第一端部43aの他の部分よりもロックギア41の円盤部41aに接近した位置となるように配置されている。
【0042】
したがって、
図3(B)に示したように、フライホイール43が傾いたときにフックスプリング48の側部が最初にロックギア41の円盤部41aに当接する。また、支持軸43eのロックギア41の側の部分には平面部43gが形成されており、平面部43gにより形成される隙間によってフックスプリング48の側部に弾性力が付与される。すなわち、本実施形態では、緩衝部44はフックスプリング48の側部によって構成されている。
【0043】
本実施形態に係るリトラクタ1では、フライホイール43を旋回させるために必要な隙間を極限まで小さくすることができ、フライホイール43の振動により傾いた場合であってもフックスプリング48の撓みにより当接時に生じる衝撃を吸収することができ、振動音の発生を低減することができる。
【0044】
ここで、
図4は、フライホイールの変形例を示す図であり、(A)はフライホイールの背面、(B)はフライホイールを含む断面、を示している。なお、
図4(A)は
図2(B)に相当する図であり、
図4(B)は
図3(A)に相当する図である。
【0045】
図4(A)及び
図4(B)に示したように、フライホイール43は、第一端部43a側にフックスプリング48を収容する空間を形成する切り欠き部43jを備えていてもよい。かかるフライホイール43の変形例は、
図2(B)及び
図3(A)に示した凹部43fを省略したものである。
【0046】
このように、フライホイール43は、フックスプリング48のロックギア41側の側部が露出するように形成され、フライホイール43が傾いたときにフックスプリング48の側部が最初にロックギア41の円盤部41aに当接するように支持軸43eが形成されていれば、凹部43fの有無や形状は任意に設計することができる。
【0047】
ここで、
図5は、
図2(A)におけるB-B断面図であり、(A)は第一実施形態、(B)は第一変形例、(C)は第二変形例、を示している。
図2(A)及び
図5(A)に示したように、フライホイール43の第二端部43bの対峙するロックギア41の円盤部41aには窪み41iが形成されている。
【0048】
すなわち、ロックギア41は、フライホイール43の緩衝部44が配置された位置と反対側の位置に形成された窪み41iを有している。かかる構成により、フライホイール43が第二端部43b側に傾いた場合であっても第二端部43bとロックギア41との接触を回避することができ、振動音の発生をより低減することができる。
【0049】
図5(B)に示した第一変形例のように、窪み41iに替えて円盤部41aに開口部41jを形成してもよい。また、フライホイール43の第二端部43b側への傾きが小さい場合には、
図5(C)に示した第二変形例のように、窪み41iや開口部41jを省略してもよい。
【0050】
次に、本発明の第二実施形態に係るリトラクタ1について、
図6(A)及び
図6(B)を参照しつつ説明する。ここで、
図6は、本発明の第二実施形態に係るリトラクタを示す部分拡大図であり、(A)はロックギアにフライホイールを組み付けた状態、(B)は
図6(A)におけるB-B矢視断面図、を示している。なお、上述した第一実施形態と同じ構成部品については、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0051】
図6(A)及び
図6(B)に示した第二実施形態は、緩衝部44をフライホイール43とロックギア41とが対峙する面の何れか一方に形成された板バネ構造により構成したものである。なお、第二実施形態では、フックスプリング48のロックギア41側の側部は露出されていない。
【0052】
フライホイール43は、例えば、外縁部の一部に形成された切り欠き部43hと、切り欠き部43hの側面からロックギア41の円盤部41aの面に沿って延出するように形成された板バネ部43iと、を備えている。板バネ部43iの先端には円盤部41aに当接する突起が形成されている。
【0053】
このようにフライホイール43の一部(図では二箇所)に弾性力を有する板バネ部43iを形成することにより、緩衝部44を構成することができ、フライホイール43の傾きによる振動音の発生を低減することができる。なお、板バネ部43iの個数、配置及び構成は図示したものに限定されるものではない。また、板バネ構造をロックギア41の円盤部41a側に形成してもよい。
【0054】
次に、本発明の第三実施形態に係るリトラクタ1について、
図7(A)及び
図7(B)を参照しつつ説明する。ここで、
図7は、本発明の第三実施形態に係るリトラクタを示す部分拡大図であり、(A)はロックギアにフライホイールを組み付けた状態、(B)は
図7(A)におけるB-B矢視断面図、を示している。なお、上述した第一実施形態と同じ構成部品については、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0055】
図7(A)及び
図7(B)に示した第三実施形態は、緩衝部44をフライホイール43とロックギア41とが対峙する面の何れか一方に形成された弾性体49により構成したものである。なお、第三実施形態では、フックスプリング48のロックギア41側の側部は露出されていない。
【0056】
弾性体49は、例えば、巻き数の少ないスプリングであり、フライホイール43の外縁部と対峙する円盤部41aに配置される。なお、弾性体49の個数、配置及び構成は図示したものに限定されるものではない。また、弾性体49は、フライホイール43側に配置されてもよい。
【0057】
このようにフライホイール43とロックギア41との間に弾性力を有する弾性体49を配置することにより、緩衝部44を構成することができ、フライホイール43の傾きによる振動音の発生を低減することができる。
【0058】
また、図示しないが、上述した第二実施形態及び第三実施形態において、フライホイール43の第二端部43bと対峙するロックギア41の円盤部41aに、
図5(A)に示した窪み41i又は
図5(B)に示した開口部41jを形成してもよい。
【0059】
次に、本発明の一実施形態に係るシートベルト装置について、
図8を参照しつつ説明する。ここで、
図8は、本発明の一実施形態に係るシートベルト装置を示す全体構成図である。なお、
図8において、説明の便宜上、シートベルト装置以外の部品については、一点鎖線で図示している。
【0060】
図8に示した本実施形態に係るシートベルト装置100は、乗員を拘束するウェビングWと、ウェビングWの巻き取りを行うリトラクタ1と、車体側に設けられウェビングWを案内するガイドアンカー101と、ウェビングWを車体側に固定するベルトアンカー102と、乗員が着座するシートSの側面に配置されたバックル103と、ウェビングWに配置されたトング104と、を備え、リトラクタ1は、例えば、
図1に示した構成を有している。
【0061】
以下、リトラクタ1以外の構成部品について簡単に説明する。シートSは、例えば、乗員が着座する腰掛部S1と、乗員の背面に位置する背もたれ部S2と、乗員の頭部を支持するヘッドレスト部S3と、を備えている。リトラクタ1は、例えば、車体のBピラーPに内蔵される。
【0062】
また、一般に、バックル103は腰掛部S1の側面に配置されることが多く、ベルトアンカー102は腰掛部S1の下面に配置されることが多い。また、ガイドアンカー101は、BピラーPに配置されることが多い。そして、ウェビングWは、一端がベルトアンカー102に接続され、他端がガイドアンカー101を介してリトラクタ1に接続されている。
【0063】
したがって、トング104をバックル103に嵌着させる場合、ウェビングWはガイドアンカー101の挿通孔を摺動しながらリトラクタ1から引き出されることとなる。また、乗員がシートベルトを装着した場合や降車時にシートベルトを解除した場合には、リトラクタ1のスプリングユニット5の作用により、ウェビングWは一定の負荷がかかるまで巻き取られる。
【0064】
上述したシートベルト装置100は、車両の前部座席に配置されたシートSに適用した場合について説明しているが、シートベルト装置100は後部座席に配置されたシートSに適用するようにしてもよい。また、シートベルト装置100は、車両以外の乗物に使用されるシートベルト装置に適用してもよい。
【0065】
本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0066】
1 リトラクタ
2 スプール
3 ベースフレーム
4 ロック機構
5 スプリングユニット
6 リテーナカバー
31 係合歯
41 ロックギア
41a 円盤部
41b 外周壁
41c 中心部
41d 案内溝
41e 旋回軸
41f 突起部
41g 係合歯
41h ストッパ
41i 窪み
41j 開口部
41k 係合爪
42 パウル
42a 第一端部
42b 第二端部
42c ピン
42d 係合爪
42e パウルスプリング
43 フライホイール
43a 第一端部
43b 第二端部
43c 挿通孔
43d 係合孔
43e 支持軸
43f 凹部
43g 平面部
43h 切り欠き部
43i 板バネ部
43j 切り欠き部
44 緩衝部
45 ロッキングベース
45a 収容部
45b 軸部
46 キャップ
47 ビークルセンサ
47a 質量体
47b センサレバー
47c センサカバー
48 フックスプリング
49 弾性体
100 シートベルト装置
101 ガイドアンカー
102 ベルトアンカー
103 バックル
104 トング