(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023104407
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】圧迫止血アタッチメント及びそれを用いた超音波止血モニタリングシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 17/00 20060101AFI20230721BHJP
A61B 8/00 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
A61B17/00 500
A61B8/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022005372
(22)【出願日】2022-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】504300181
【氏名又は名称】国立大学法人浜松医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100114605
【弁理士】
【氏名又は名称】渥美 久彦
(72)【発明者】
【氏名】根木 宏明
(72)【発明者】
【氏名】田村 和輝
【テーマコード(参考)】
4C160
4C601
【Fターム(参考)】
4C160DD32
4C601EE11
4C601EE16
4C601GC01
4C601GC03
(57)【要約】
【課題】適切な圧迫圧を容易に把握でき、適切な圧迫圧を人力に依存せずに持続的に付加できる超音波止血モニタリングシステムに好適な圧迫止血アタッチメントを提供する。
【解決手段】本発明は超音波プローブ22に装着される圧迫止血アタッチメント41に関する。アタッチメント41は、基材46、超音波透過部材51、アダプタ部56、被接続部61を備える。超音波透過部材51は、基材46の一部に設けられ、基材46の厚さ方向に超音波を透過させる超音波透過窓47を形成する。アダプタ部56は、基材46の第2面46b側に設けられる。アダプタ部56は、超音波プローブ22の超音波放射面24側を第1面46a側から超音波透過部材51に接触させて超音波プローブ22を保持する。被接続部61は、基材46に設けられ支持装置31に接続される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波プローブに装着される圧迫止血アタッチメントであって、
身体接触側である第1面とその反対側となる第2面とを有する板状の基材と、
前記基材の少なくとも一部に設けられ、前記基材の厚さ方向に超音波を透過させる超音波透過窓を形成する超音波透過部材と、
前記基材の前記第2面側に設けられ、前記超音波プローブの超音波放射面側を前記第2面側から前記超音波透過部材に接触させて前記超音波プローブを保持するアダプタ部と、
前記基材に設けられ、支持装置に接続される被接続部と
を備えたことを特徴とする圧迫止血アタッチメント。
【請求項2】
前記基材は、可撓性を有しない樹脂材料からなるとともに透孔が形成された平板状の基材であり、
前記超音波透過部材は、前記透孔を閉塞するように前記基材の前記第1面側に設けられることで、前記透孔の部分に前記超音波透過窓を形成する
ことを特徴とする請求項1に記載の圧迫止血アタッチメント。
【請求項3】
前記超音波透過部材は、片側面に粘着層を有するとともに、前記第2面に対して貼剥可能な透明樹脂シート材であることを特徴とする請求項2に記載の圧迫止血アタッチメント。
【請求項4】
前記アダプタ部は、前記超音波透過窓を包囲する壁部であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の圧迫止血アタッチメント。
【請求項5】
前記アダプタ部は、可撓性樹脂材料からなるとともに、前記超音波プローブの側面にある凹凸に対して係脱可能な係止部を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の圧迫止血アタッチメント。
【請求項6】
前記超音波透過窓及び前記アダプタ部は、平面視で略十字形状を有していることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の圧迫止血アタッチメント。
【請求項7】
前記超音波透過窓及び前記アダプタ部は、平面視で略T字形状を有していることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の圧迫止血アタッチメント。
【請求項8】
前記被接続部は、前記基材の前記第2面に突設され、前記支持装置によって把持される棒状部材であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の圧迫止血アタッチメント。
【請求項9】
超音波プローブ及び表示装置を有する超音波診断装置と、
前記超音波プローブに装着される請求項1に記載の圧迫止血アタッチメントと、
前記圧迫止血アタッチメントの前記被接続部に接続され、圧迫止血中に前記圧迫止血アタッチメントを止血位置から位置ずれ不能に保持する支持装置と
を備え、圧迫止血中の血管形状及び血流状態を示す超音波画像を前記表示装置に表示する超音波止血モニタリングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波プローブに装着して使用される圧迫止血アタッチメント及びそれを用いた超音波止血モニタリングシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、脳血管内治療や循環器領域その他の血管内治療が広く実施されている。この種の治療の手技では、まず血管内へ機器を穿刺する工程を行い、血管から機器を抜去して止血する工程を必ず最後に行う。
【0003】
血管内治療における止血の方法としては、人力に依存した用手圧迫が一般的であるが、最近では止血用押圧器具のような用手圧迫止血の代替え器具が用いられることがある(例えば、特許文献1~3を参照)。また、コラーゲン使用吸収性局所止血材、非吸収性縫合糸セット、吸収性局所止血剤のようなコラーゲンや縫合糸を用いた止血器具などが用いられることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-57386号公報
【特許文献2】特開平7-178104号公報
【特許文献3】特開平8-71077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の止血方法には以下のような問題点がある。例えば、用手圧迫や止血用押圧器具による止血を行う場合、止血に必要とされる適切な圧迫圧を判断し、その圧迫圧を持続的に加える必要がある。しかしながら、圧迫圧は感覚に頼る部分が大きく、適切な圧迫圧を客観的かつ正確に把握することは極めて困難である。よって、安定した止血のためには手技の習熟が必要になるという問題がある。また、用手圧迫を行う際の術者の疲労が大きいという問題もある。さらに、止血には凝固因子等が寄与するため、ある程度血管内に血流が必要となる。それゆえ、過度な圧迫圧を加えると止血が完成しない。その一方で、加える圧迫圧が弱いと、血管外へ血液が漏出してしまい血腫が形成されてしまう。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、適切な圧迫圧を容易に把握できるとともに、その適切な圧迫圧を人力に依存せずに持続的に付加することができる超音波止血モニタリングシステムを提供することにある。本発明の別の目的は、上記の優れた超音波止血モニタリングシステムに用いるのに好適な圧迫止血アタッチメントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段を下記[1]~[9]に列挙する。
【0008】
[1]超音波プローブに装着される圧迫止血アタッチメントであって、身体接触側である第1面とその反対側となる第2面とを有する板状の基材と、前記基材の少なくとも一部に設けられ、前記基材の厚さ方向に超音波を透過させる超音波透過窓を形成する超音波透過部材と、前記基材の前記第2面側に設けられ、前記超音波プローブの超音波放射面側を前記第2面側から前記超音波透過部材に接触させて前記超音波プローブを保持するアダプタ部と、前記基材に設けられ、支持装置に接続される被接続部とを備えたことを特徴とする圧迫止血アタッチメント。従って、手段1に記載の発明によると、アダプタ部に超音波プローブを保持させることにより、超音波プローブの超音波放射面側が超音波透過部材に接触した状態で配置される。その結果、超音波プローブの発する超音波が超音波透過窓を通過して身体接触側である第1面側から外部へ放射可能となる。また、被接続部を支持装置に接続することにより、基材が支持装置に支持される。その結果、基材の第1面を身体における止血部位に接触させて圧迫圧を付加して止血を行うあいだ中、基材が止血決定位置から位置ずれ不能に保持されるとともに、適切な圧迫圧が人力に依存せずに持続的に付加される。
【0009】
[2]前記基材は、可撓性を有しない樹脂材料からなるとともに透孔が形成された平板状の基材であり、前記超音波透過部材は、前記透孔を閉塞するように前記基材の前記第1面側に設けられることで、前記透孔の部分に前記超音波透過窓を形成することを特徴とする手段1に記載の圧迫止血アタッチメント。
【0010】
[3]前記超音波透過部材は、片側面に粘着層を有するとともに、前記第2面に対して貼剥可能な透明樹脂シート材であることを特徴とする手段2に記載の圧迫止血アタッチメント。
【0011】
[4]前記アダプタ部は、前記超音波透過窓を包囲する壁部であることを特徴とする手段1乃至3のいずれか1項に記載の圧迫止血アタッチメント。
【0012】
[5]前記アダプタ部は、可撓性樹脂材料からなるとともに、前記超音波プローブの側面にある凹凸に対して係脱可能な係止部を有することを特徴とする手段1乃至4のいずれか1項に記載の圧迫止血アタッチメント。
【0013】
[6]前記超音波透過窓及び前記アダプタ部は、平面視で略十字形状を有していることを特徴とする手段1乃至5のいずれか1項に記載の圧迫止血アタッチメント。
【0014】
[7]前記超音波透過窓及び前記アダプタ部は、平面視で略T字形状を有していることを特徴とする手段1乃至5のいずれか1項に記載の圧迫止血アタッチメント。
【0015】
[8]前記被接続部は、前記基材の前記第2面に突設され、前記支持装置によって把持される棒状部材であることを特徴とする手段1乃至7のいずれか1項に記載の圧迫止血アタッチメント。
【0016】
[9]超音波プローブ及び表示装置を有する超音波診断装置と、前記超音波プローブに装着される手段1に記載の圧迫止血アタッチメントと、前記圧迫止血アタッチメントの前記被接続部に接続され、圧迫止血中に前記圧迫止血アタッチメントを止血位置から位置ずれ不能に保持する支持装置とを備え、圧迫止血中の血管形状及び血流状態を示す超音波画像を前記表示装置に表示する超音波止血モニタリングシステム。従って、手段9に記載の発明によると、手段1の作用効果に加えて、以下の作用効果を奏する。即ち本発明では、超音波プローブが止血部位からの超音波の反射波を受信するとともに、その受信結果に基づいて圧迫止血中の血管形状及び血流状態が可視化され、超音波画像として表示装置に表示される。このため、適切な圧迫圧を視覚を通じて容易に把握することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
以上詳述したように、請求項9に記載の発明によると、適切な圧迫圧を容易に把握できるとともに、その適切な圧迫圧を人力に依存せずに持続的に付加することができる超音波止血モニタリングシステムを提供することができる。また、請求項1~8に記載の発明によると、上記の優れた超音波止血モニタリングシステムに用いるのに好適な圧迫止血アタッチメントを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明を具体化した実施形態の超音波止血モニタリングシステムを示す概略図。
【
図2】(a)は実施形態の超音波止血モニタリングシステムにおける圧迫止血アタッチメントを示す平面図、(b)はその側面図、(c)はA-A線断面図、(d)はB-B線断面図。
【
図3】(a)は上記圧迫止血アタッチメントを超音波プローブに取り付ける前の断面図、(b)は同アタッチメントを超音波プローブに取り付けた状態の断面図。
【
図4】超音波止血モニタリングシステムの使用方法を説明するための断面図。
【
図5】別の実施形態の圧迫止血アタッチメントを示す平面図。
【
図6】別の実施形態の圧迫止血アタッチメントを示す平面図。
【
図7】別の実施形態の圧迫止血アタッチメントを示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した実施形態の超音波止血モニタリングシステムを
図1~
図4に基づき詳細に説明する。
【0020】
図1に示すように、本実施形態の超音波止血モニタリングシステム11は、超音波診断装置21と、支持装置31と、圧迫止血アタッチメント41とによって構成されている。
【0021】
圧迫止血アタッチメント41は、超音波プローブ22に装着される器具であって、止血の際にその一部を身体S1に接触させた状態で使用される。この圧迫止血アタッチメント41は、板状の基材46、超音波透過部材51、アダプタ部としての壁部56及び被接続部としての棒状部材61を備えている。
【0022】
図2、
図3に示されるように、基材46は、身体接触側である第1面46aとその反対側となる第2面46bとを有する平板状の基材であって、圧迫止血アタッチメント41における主体部分を構成している。基材46は、ある程度剛性のある材料を用いて形成され、例えば可撓性を有しないリジッドな樹脂材料などによって形成されている。なお、可撓性を有しないリジッドな樹脂材料からなる基材46であると、止血時に身体S1に接触させて押し付けたときでも、圧迫止血アタッチメント41が撓まず、圧迫圧を効率よく付与して確実に止血を行うことができるからである。また、基材46に用いられる樹脂材料は耐熱性樹脂であることがよく、このような樹脂材料であると高温での滅菌が可能となり、圧迫止血アタッチメント41を繰り返し使用することが可能となる。なお、耐熱性を持つ樹脂材料であれば特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)樹脂、ポリアミド(PA)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリフェニレンスルファイド(PPS)樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂、ポリスルフォン(PSF)樹脂、フッ素樹脂、ポリアミドイミド(PAI)樹脂、フェノール(PF)樹脂などが使用可能である。
【0023】
基材46の寸法及び形状は特に限定されないが、例えば厚さが2mm~10mm程度、一辺の長さが50mm~150mm程度である平面視矩形状の基材46が使用される。上記範囲の厚さとする理由は、圧迫止血アタッチメント41に好適な重量及び剛性が付与されるからである。上記範囲の長さとする理由は、止血のために必要な面積が付与されるとともに、術者が把持しやすくて取り扱いやすいものとするためである。特に本実施形態では、厚さが5mm、長辺の長さが100mm、短辺の長さが70mmである平面視矩形状の基材46を選択している。この基材46における4つの角部は、患者の身体S1に当たっても痛くないように、丸く面取り加工が施されている。
【0024】
この基材46の中央部には、超音波透過窓47の形成部位に対応して透孔48が形成されている。透孔48は、超音波止血モニタリングシステム11に適用される超音波プローブ22の超音波放射面24の形状及び寸法に基づいて決定される。例えば、超音波放射面24が20mm×50mmの平面視長方形状である場合には、それとほぼ同じ形状及び寸法の透孔48が形成される。
【0025】
基材46の第1面46a側の全体には、平板状の超音波透過部材51が接着剤等を用いて接合固定されている。超音波透過部材51は、基材46の厚さ方向に超音波を透過させる超音波透過窓47を形成するための部材であり、透孔48を第1面46a側から閉塞している。超音波透過部材51は、基材46を形成している樹脂材料よりも超音波を透過させやすい樹脂材料を用いて形成されている。超音波透過部材51は、超音波を透過させやすくするために、基材46よりも肉薄に形成されている。また、超音波透過部材51の色は特に限定されないが、透明であることがよい。透明であると、超音波透過部材51の直下の状況が視認可能となり、出血の有無を確認しやすくなるからである。そして本実施形態では、厚さ約1mmのPS(ポリスチレン)樹脂製の透明樹脂板が超音波透過部材51として使用されている。
【0026】
アダプタ部は、基材46の第2面46b側に設けられている。アダプタ部は、超音波プローブ22の超音波放射面24側を第2面46b側から超音波透過部材51に接触させて超音波プローブ22を保持する役割を果たしている。本実施形態のアダプタ部は、超音波透過窓47を全周にわたって包囲する壁部56であり、この壁部56は上部が開口した凹部形状を有している。壁部56は可撓性樹脂材料からなり、平面視で超音波透過窓47及び透孔48とほぼ同じ寸法及び形状となるように形成されている。そして、凹部形状を有するこの壁部56には、超音波プローブ22の先端部側が差し込まれて保持されるようになっている。超音波透過窓47の面積を基準とした場合、基材46はその2倍~3倍程度の面積を有していることが好ましい。基材46と身体S1との位置ずれを防止して止血を確実に行うためには、基材46にある程度大きな面積(圧迫面)が確保されていることが好ましいからである。
【0027】
壁部56は、開口縁に一対の係止部58を有している。一対の係止部58は壁部56と一体的に形成されており、互いに対向して配置されている。これら一対の係止部58は、突片状に形成されるとともに、超音波プローブ22の側面にある凹凸22aに対して係脱可能な凸部58aを有している。このため、一対の係止部58は、超音波プローブ22に対して両側から係止することで、超音波プローブ22を確実に保持できるようになっている(
図3(a)、(b)参照)。
【0028】
被接続部である棒状部材61は、基材46の第2面42bにおいて基材46に対して垂直な方向に突設されている。この棒状部材61は、支持装置31の把持部33によって把持されて支持装置31に接続される部分である。例えば、基材46の一部を掴んで保持することも一応可能であるが、棒状部材61のような専用の被接続部があったほうが安定的かつ確実に保持されるというメリットがある。また、この棒状部材61は、支持装置31の把持部33が掴みやすいように、円柱状を呈したものとなっている。また、把持部33が掴む際に壁部56が邪魔にならないように、棒状部材61は、基材46の外周部に配置され、かつ壁部56よりも突出量が大きくなるように設けられている。
【0029】
図1に示されるように、超音波診断装置21は、超音波プローブ22及び表示装置23を有している。超音波プローブ22は、術者によって把持可能な形状及び大きさを呈しており、先端部の内部には図示しない複数の超音波振動子がアレイ状に設けられている。なお、本実施形態では、超音波プローブ22の超音波放射面24が平面視で略長方形状をなしている。そして複数の超音波振動子は、超音波放射面24の長手方向に沿って1列配設されている。超音波プローブ22の基端部にはケーブル25が設けられており、そのケーブル25の先端は超音波診断装置21の装置本体26における接続端子27に対して接続されている。なお、本実施形態では超音波プローブ22と装置本体26との間を有線接続する例を示したが、無線接続されていてもよい。
【0030】
装置本体26は、CPU、ROM、RAM等からなる図示しないコンピュータを内部に備えるとともに、前面に上記表示装置23を備えている。表示装置23としては特に限定されないが、例えばカラー液晶ディスプレイ、カラーLEDディスプレイ、カラープラズマディスプレイ等を使用することができる。コンピュータは、超音波プローブ22から超音波を送信させるとともに、身体S1からの反射波信号を受信させる制御を行う。またコンピュータは、超音波プローブ22が取得した受信信号を処理(即ちBモード処理及びカラードップラ処理)して、Bモード像にカラードップラ像を重畳した超音波画像を生成し、それを表示装置23に表示させる制御を行う。つまり、この超音波診断装置21は、圧迫止血中の血管形状及び血流状態を示す超音波画像を表示装置23に表示するように構成されている。
【0031】
図1に示されるように、支持装置31は、X,Y,Z方向に自在に動かすことができる多関節のアーム32を有する支持アーム装置であって、圧迫止血中に圧迫止血アタッチメント41を止血位置P1から位置ずれ不能に保持するために使用される。このアーム32は、複数のロッドを関節で繋いだ多関節アームとなっている。本実施形態では、例えば1箇所を固定することで全ての関節が同時に固定可能な多関節アームを使用しているが、これに限定されるわけではない。即ち、種々の構造を有する多関節アームを支持装置31として使用することが許容される。また、このアーム32は、先端部に把持部33を備えており、基端部が支柱35の上端部に対して連結支持されている。アーム32の基端部には、超音波プローブ22及びアーム32自身の重量と釣り合うカウンタウェイト34が接続されている。支柱35の下端部には取付金具36が設けられており、この取付金具36を用いて固定物T1に支柱35が支持固定されている。なお、ここで言う固定物T1とは、床面や壁面自体、あるいはそれらに載置または固定されている構造物を広く指している。例えば、移動可能な車輪等を有する台車のようなものであっても、一時的に停止固定できる構造を備えていれば、固定物T1として取り扱う。
【0032】
次に、上記のように構成された超音波止血モニタリングシステム11の使用方法を説明する。
【0033】
この超音波止血モニタリングシステム11を使用するにあたり、固定物T1であるベットサイドのカートまたは超音波診断装置21のカートにあらかじめ支持装置31を固定しておく(
図1参照)。また、
図3(a)、(b)に示されるように、圧迫止血アタッチメント41を超音波プローブ22の先端部に取り付ける。このとき、一対の係止部58が超音波プローブ22に対して両側から係止することで、超音波プローブ22が壁部56に確実に保持される。なお、壁部56により包囲された超音波透過窓47の上面には、ゲル状のカップリング材(いわゆるエコージェル)があらかじめ塗布される。このカップリング材により、凸面状の超音波放射面24と平坦な超音波透過部材51との隙間が埋められ、第1面46a側に超音波が伝達可能な状態となる。ちなみに、超音波透過窓47を全周にわたり包囲する壁部56があることにより、超音波透過窓47上に塗布されたカップリング材が外部に漏れ出さずに確実に保持される。
【0034】
次に、
図1、
図4に示されるように、このようなプローブ保持状態の圧迫止血アタッチメント41の第1面46a側を、身体S1(例えば上腕動脈)の表面における止血部位P1に接触させる。その際、患者は上腕を図示しない水平な支持台の上に置くようにする。なお、患者は臥位であってもよいが座位であってもよい。そして、超音波診断装置21を作動させて超音波画像を表示した状態にする。術者は、その超音波画像を確認しながら圧迫止血アタッチメント41の位置を決定する作業を行う。通常、止血部位P1が超音波透過窓47の中央部の直下にくるように、圧迫止血アタッチメント41の位置を調整する。
図1の超音波診断装置21の表示装置23には、血管の超音波断層画像が表示されている。図中の血管断層像において破線白丸で囲った部分は、止血を要する穿刺部(つまり止血部位P1)を示している。術者は、このような血管断層像を見て穿刺部を特定したうえで圧迫圧を適宜調整する。そして、穿刺部付近の血管内腔にある程度血流が確保されていること、及び穿刺部から血管外部へ血液が漏出していないことを確認したら、圧迫圧を決定する。上記のように、適切な止血位置及び適度な圧迫圧が決定したら、支持装置31のアーム32の関節を各固定して、圧迫止血アタッチメント41の位置を確定する。これにより、アーム32の固定時の位置ずれや、経時的な位置ずれのリスクが低減される。
【0035】
止血手技中において、術者は止血部位P1の超音波画像を超音波診断装置21によって、血管形状及び血流状態をリアルタイムでモニタリングすることができる。適切な止血状況が維持されていれば、術者は基本的に圧迫止血アタッチメント41を操作する必要はない。止血部位P1の超音波画像は常時表示装置23上に表示されているため、例えば体動などにより位置ずれが発生した場合には、術者は患者から離れた場所からその事実を把握することができる。よって、迅速に位置ずれを修正して適切な止血状況に戻すことが可能となる。
【0036】
従って、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0037】
(1)本実施形態の圧迫止血アタッチメント41及びそれを使用した超音波止血モニタリングシステム11によると、アダプタ部である壁部56に超音波プローブ22を保持させることにより、超音波プローブ22の超音波放射面24側が超音波透過部材51に接触した状態で配置される。その結果、超音波プローブ22の発する超音波が超音波透過窓47を通過して身体接触側である第1面46a側から外部へ放射可能となる。また、被接続部である棒状部材61を支持装置31に接続することにより、基材46が支持装置31に支持される。その結果、基材46の第1面46aを身体S1における止血部位P1に接触させて圧迫圧を付加して止血を行うあいだ中、基材46を止血位置から位置ずれ不能に保持することができ、同時に適切な圧迫圧を人力に依存せずに持続的に付加することができる。従って、止血を行う術者の負担を確実に軽減することができる。さらに、本実施形態によると、超音波プローブ22が止血部位P1からの超音波の反射波を受信するとともに、その受信結果に基づいて圧迫止血中の血管形状及び血流状態が可視化され、超音波画像として表示装置23に表示される。このため、適切な圧迫圧を視覚を通じて容易に把握することが可能となる。つまり、従来では血流を確保しながら圧迫圧の度合いを調整するには、十分な経験を必要としていた。これに対し本実施形態によれば、超音波画像を確認しながら圧迫止血アタッチメント41の位置決め及び圧迫圧の決定を行うことができる。ゆえに、初心者であっても経験者と同様のレベルで確実に止血を行うことができるようになる。
【0038】
なお、本発明の実施形態は一例であって、発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更してもよい。
【0039】
・上記実施形態では、アダプタ部である壁部56は平面視で略矩形状(略I字形状)を有していたが、これに限定されない。例えば、
図5に示す別の実施形態の圧迫止血アタッチメント41Aのように、平面視で略十字形状の壁部56Aを形成してもよい。また、
図6に示す別の実施形態の圧迫止血アタッチメント41Bのように、平面視で略T字形状の壁部56Bを形成してもよい。平面視で略十字形状であると、取り付け方向を90°変更することができる。従って、直交する2方向(即ち血管に対して平行な方向及び直交する方向)の超音波画像を見ることができ、止血の状況を確実にかつ簡単に確認することができる。また、平面視で略T字形状であると、直交する2方向に超音波振動子が配列された、いわゆるT型プローブを装着することが可能となる。よって、短軸方向及び長軸方向の超音波画像を同時に見ることができ、止血の状況を確実にかつ簡単に確認することができる。
【0040】
・上記実施形態では、基材46の第2面46b全体に超音波透過部材51であるPS製の透明樹脂板を接着したが、これに限定されない。例えば、基材46の第2面46bの中央部のみにこの種の透明樹脂板を接着した構成としても勿論よい。また、上記実施形態では、基材46と超音波透過部材51とが異なる樹脂材料を用いて別体で形成されていたが、基材46と超音波透過部材51とを同じ樹脂材料を用いて一体形成してもよい。この場合において具体的には、基材46における超音波透過部材51の部分を相対的に肉薄に形成し、超音波透過部材51以外の部分を相対的に肉厚に形成してもよい。
【0041】
・上記実施形態では、超音波透過部材51が基材46から分離不能に取り付けられていたが、これに限定されない。例えば、
図7に示す別の実施形態の圧迫止血アタッチメント41Cでは、透明樹脂シート材を超音波透過部材51Aとして用いている。透明樹脂シート材の片側面において超音波透過窓47の対応箇所以外の領域には、第2面46bに対して貼剥可能な粘着層71が形成されている。従って、使用時には透明樹脂シート材の粘着層71側を第2面46bに対して貼り付けることで、透明樹脂シート材を基材46に固定することができる。そして、身体接触側であるこの透明樹脂シート材は、使用後に剥離して基材46から除去され、別の新しいものと交換されることができる。つまり、このような構成であれば、圧迫止血アタッチメント41Cにおける透明樹脂シート材以外の部分を繰り返し使用することが可能となる。
【0042】
・上記実施形態では、超音波透過窓47を全周にわたって包囲する壁部56をアダプタ部の構造として採用したが、これに限定されることはなく、超音波透過窓47を部分的に包囲する壁部であってもよい。なお、アダプタ部の構造として壁部56以外の構造を採用してもよい。また、超音波プローブ22を保持するアダプタ部は、超音波プローブ22の先端部を保持するものに限らず、側面や基端部を保持するものであってもよい。
【0043】
・上記実施形態では、アダプタ部が超音波プローブ22の側面にある凹凸22aに対して係脱可能な係止部58を有していたが、係止部58は必須の構成ではないため、省略してもよい。
【0044】
・上記実施形態では、円柱状の棒状部材61を被接続部として採用したが、これに限定されない。例えば角柱状の棒状部材を採用してもよいほか、棒状ではない部材(例えば突片状部材など)を採用してもよい。この場合、被接続部は基材46の第2面46bに突設されていなくてもよく、例えば、基材46の側面から張り出すように突設されていてもよい。
【0045】
・上記実施形態では、支持装置31としてカウンタウェイト34を備えた支持アーム装置を用いたが、カウンタウェイト34を備えていない支持アーム装置を用いてもよい。また、上記実施形態では支持装置31の基端側をカートに固定したが、カート以外の固定物T1に固定しても勿論よい。なお、支持装置31は必ずしもアームを備えたものでなくてもよく、圧迫止血アタッチメント41~41C及び超音波プローブ22を位置ずれ不能に保持できて止血部位P1に一定の圧迫圧を付加できるものであれば、どのようなものでも構わない。
【0046】
・上記実施形態では、本発明を上腕動脈の止血に適用する例を挙げて説明したが、本発明は身体S1における別の部位、例えば前腕の橈骨動脈や、そけい部の大腿動脈の止血に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0047】
11…超音波止血モニタリングシステム
21…超音波診断装置
22…超音波プローブ
23…表示装置
24…超音波放射面
31…支持装置
41…圧迫止血アタッチメント
46…基材
46a…第1面
46b…第2面
47…超音波透過窓
48…透孔
51…超音波透過部材
56…アダプタ部としての壁部
58…係止部
61…被接続部としての棒状部材
71…粘着層