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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023104408
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】コレラ毒素の検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/569 20060101AFI20230721BHJP
   C07K 16/12 20060101ALI20230721BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20230721BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20230721BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
G01N33/569 F
C07K16/12 ZNA
C12M1/34 F
G01N33/53 D
G01N33/543 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022005375
(22)【出願日】2022-01-17
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業 「抗体ライブラリーを用いたワクチン・創薬展開と病原性・機能解析」委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】505314022
【氏名又は名称】国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000173692
【氏名又は名称】一般財団法人阪大微生物病研究会
(74)【代理人】
【識別番号】100212255
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 将之
(72)【発明者】
【氏名】國澤 純
(72)【発明者】
【氏名】細見 晃司
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 孝一朗
(72)【発明者】
【氏名】朴 貞玉
【テーマコード(参考)】
4B029
4H045
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029BB02
4B029BB15
4B029CC01
4B029FA12
4B029FA15
4B029GA08
4B029HA05
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045DA76
4H045EA50
4H045FA72
4H045FA74
4H045GA10
4H045GA26
(57)【要約】
【課題】 本発明が解決しようとする課題は、コレラ毒素(CTx)の検出を、簡便、迅速、高感度に行うことである。
【解決手段】コレラ毒素Bサブユニット遺伝子組換えタンパク質(CTxB)とアジュバントを含む抗原液を、BALB/cマウスに接種した。接種後、マウスの脾細胞またはリンパ節細胞とP3U1とを融合させてハイブリドーマを作製し、その中から、CTxに対して高い反応性を示すモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを選抜し、CTxに対して優れた反応性を示す抗体を産生する4つのハイブリドーマを取得することに成功した。次いで、これらのモノクローナル抗体を用いて、イムノクロマトグラフィーによりCTxの検出を行ったところ、高感度でCTxを検出し得る結果を得た。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イムノクロマト法による検体中のコレラ毒素の検出方法であって、下記群から選択される同一または異なる2種の抗体を各々標識抗体および捕捉抗体として用いることを特徴とする、方法:
1)少なくともVH CDR3領域として配列番号9のアミノ酸配列およびVL CDR3領域として配列番号12のアミノ酸配列を有する、抗体;
2)少なくともVH CDR3領域として配列番号19のアミノ酸配列およびVL CDR3領域として配列番号22のアミノ酸配列を有する、抗体;
3)少なくともVH CDR3領域として配列番号29のアミノ酸配列およびVL CDR3領域として配列番号32のアミノ酸配列を有する、抗体;
4)少なくともVH CDR3領域として配列番号39のアミノ酸配列およびVL CDR3領域として配列番号42のアミノ酸配列を有する、抗体;
5)上記1)~4)の抗体の各VH CDR3領域および/またはVL CDR3領域において1または2個のアミノ酸変異を有する、抗体。
【請求項2】
上記抗体が、単離された抗体である、請求項1の方法。
【請求項3】
上記抗体が、モノクローナル抗体である、請求項1または2の方法。
【請求項4】
上記抗体が、コレラ毒素に対して5.0x10-9M以下の平衡解離定数KDを有することを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
上記抗体が、コレラ毒素に対して5.0x10-10M以下の平衡解離定数KDを有することを特徴とする、請求項4の方法。
【請求項6】
上記5)の抗体において、アミノ酸変異が、置換であることを特徴とする、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
上記置換が保存的アミノ酸置換であることを特徴とする、請求項6の方法。
【請求項8】
上記抗体が、さらに下記特徴を有することを特徴とする、請求項1~7のいずれかに記載の方法:
1)少なくともVH CDR1領域として配列番号7のアミノ酸配列、VH CDR2領域として配列番号8のアミノ酸配列、VH CDR3領域として配列番号9のアミノ酸配列、VL CDR1領域として配列番号10のアミノ酸配列、VL CDR2領域として配列番号11のアミノ酸配列およびVL CDR3領域として配列番号12のアミノ酸配列を有する、抗体;
2)少なくともVH CDR1領域として配列番号17のアミノ酸配列、VH CDR2領域として配列番号18のアミノ酸配列、VH CDR3領域として配列番号19のアミノ酸配列、VL CDR1領域として配列番号20のアミノ酸配列、VL CDR2領域として配列番号21のアミノ酸配列およびVL CDR3領域として配列番号22のアミノ酸配列を有する、抗体;
3)少なくともVH CDR1領域として配列番号27のアミノ酸配列、VH CDR2領域として配列番号28のアミノ酸配列、VH CDR3領域として配列番号29のアミノ酸配列、VL CDR1領域として配列番号30のアミノ酸配列、VL CDR2領域として配列番号31のアミノ酸配列およびVL CDR3領域として配列番号32のアミノ酸配列を有する、抗体;
4)少なくともVH CDR1領域として配列番号37のアミノ酸配列、VH CDR2領域として配列番号38のアミノ酸配列、VH CDR3領域として配列番号39のアミノ酸配列、VL CDR1領域として配列番号40のアミノ酸配列、VL CDR2領域として配列番号41のアミノ酸配列およびVL CDR3領域として配列番号42のアミノ酸配列を有する、抗体;
5)上記1)~4)の抗体の各VH CDR1領域、VH CDR2領域、VHCDR3領域、VL CDR1領域、VL CDR2領域および/またはVL CDR3領域において1または2個のアミノ酸変異を有する、抗体。
【請求項9】
上記抗体が、さらに下記特徴を有することを特徴とする、請求項1~8のいずれかに記載の方法:
1)VH領域として配列番号3のアミノ酸配列およびVL領域として配列番号5のアミノ酸配列を有する、抗体;
2)VH領域として配列番号13のアミノ酸配列およびVL領域として配列番号15のアミノ酸配列を有する、抗体;
3)VH領域として配列番号23のアミノ酸配列およびVL領域として配列番号25のアミノ酸配列を有する、抗体;
4)VH領域として配列番号33のアミノ酸配列およびVL領域として配列番号35のアミノ酸配列を有する、抗体;
5)上記1)~4)の抗体と80%以上の配列同一性を有する、抗体。
【請求項10】
上記抗体が、4)の抗体または5)の抗体のうち4)の抗体に由来する抗体どうしの組合せであることを特徴とする、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
コレラ毒素の検出用抗体であって、
1)少なくともVH CDR3領域として配列番号9のアミノ酸配列およびVL CDR3領域として配列番号12のアミノ酸配列を有する、抗体;
2)少なくともVH CDR3領域として配列番号19のアミノ酸配列およびVL CDR3領域として配列番号22のアミノ酸配列を有する、抗体;
3)少なくともVH CDR3領域として配列番号29のアミノ酸配列およびVL CDR3領域として配列番号32のアミノ酸配列を有する、抗体;
4)少なくともVH CDR3領域として配列番号39のアミノ酸配列およびVL CDR3領域として配列番号42のアミノ酸配列を有する、抗体;および
5)上記1)~4)の抗体の各VH CDR3領域および/またはVL CDR3領域において1または2個のアミノ酸変異を有する、抗体
からなる群から選択される1種の抗体または同一または異なる2種以上の抗体の組合せ。
【請求項12】
上記抗体が、単離された抗体である、請求項11の抗体または抗体の組合せ。
【請求項13】
上記抗体が、モノクローナル抗体である、請求項11または12の抗体または抗体の組合せ。
【請求項14】
上記抗体が、コレラ毒素に対して5.0x10-9M以下の平衡解離定数KDを有することを特徴とする、請求項11~13のいずれかに記載の抗体または抗体の組合せ。
【請求項15】
上記抗体が、コレラ毒素に対して5.0x10-10M以下の平衡解離定数KDを有することを特徴とする、請求項14の抗体または抗体の組合せ。
【請求項16】
上記5)の抗体において、アミノ酸変異が、置換であることを特徴とする、請求項11~15のいずれかに記載の抗体または抗体の組合せ。
【請求項17】
上記置換が保存的アミノ酸置換であることを特徴とする、請求項16の抗体または抗体の組合せ。
【請求項18】
上記抗体が、さらに下記特徴を有することを特徴とする、請求項11~17のいずれかに記載の抗体または抗体の組合せ:
1)少なくともVH CDR1領域として配列番号7のアミノ酸配列、VH CDR2領域として配列番号8のアミノ酸配列、VH CDR3領域として配列番号9のアミノ酸配列、VL CDR1領域として配列番号10のアミノ酸配列、VL CDR2領域として配列番号11のアミノ酸配列およびVL CDR3領域として配列番号12のアミノ酸配列を有する、抗体;
2)少なくともVH CDR1領域として配列番号17のアミノ酸配列、VH CDR2領域として配列番号18のアミノ酸配列、VH CDR3領域として配列番号19のアミノ酸配列、VL CDR1領域として配列番号20のアミノ酸配列、VL CDR2領域として配列番号21のアミノ酸配列およびVL CDR3領域として配列番号22のアミノ酸配列を有する、抗体;
3)少なくともVH CDR1領域として配列番号27のアミノ酸配列、VH CDR2領域として配列番号28のアミノ酸配列、VH CDR3領域として配列番号29のアミノ酸配列、VL CDR1領域として配列番号30のアミノ酸配列、VL CDR2領域として配列番号31のアミノ酸配列およびVL CDR3領域として配列番号32のアミノ酸配列を有する、抗体;
4)少なくともVH CDR1領域として配列番号37のアミノ酸配列、VH CDR2領域として配列番号38のアミノ酸配列、VH CDR3領域として配列番号39のアミノ酸配列、VL CDR1領域として配列番号40のアミノ酸配列、VL CDR2領域として配列番号41のアミノ酸配列およびVL CDR3領域として配列番号42のアミノ酸配列を有する、抗体;
5)上記1)~4)の抗体の各VH CDR1領域、VH CDR2領域、VHCDR3領域、VL CDR1領域、VL CDR2領域および/またはVL CDR3領域において1または2個のアミノ酸変異を有する、抗体。
【請求項19】
上記抗体が、さらに下記特徴を有することを特徴とする、請求項11~18のいずれかに記載の抗体または抗体の組合せ:
1)VH領域として配列番号3のアミノ酸配列およびVL領域として配列番号5のアミノ酸配列を有する、抗体;
2)VH領域として配列番号13のアミノ酸配列およびVL領域として配列番号15のアミノ酸配列を有する、抗体;
3)VH領域として配列番号23のアミノ酸配列およびVL領域として配列番号25のアミノ酸配列を有する、抗体;
4)VH領域として配列番号33のアミノ酸配列およびVL領域として配列番号35のアミノ酸配列を有する、抗体;
5)上記1)~4)の抗体と80%以上の配列同一性を有する、抗体。
【請求項20】
請求項11~19のいずれかに記載の抗体または抗体の組合せを含むことを特徴とする、コレラ毒素検出用イムノクロマトキット。
【請求項21】
上記抗体の組合せが、4)の抗体どうしの組合せであって、4)の抗体が金コロイドと感作して標識抗体をなしており、4)の抗体が固層上に線状に固定されて捕捉抗体をなしていることを特徴とする、請求項20のキット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コレラ毒素の検出方法、当該方法に使用する抗体および当該方法に使用するためのキットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
コレラ菌(Vibrio cholerae)は、ビブリオ科ビブリオ属のグラム陰性桿菌である。表面抗原(O抗原)により多くの血清型に分類されるが、そのうち「O1」か「O139」の血清型のいずれかを示し、さらにコレラ毒素を産生する菌のみが、コレラと診断されている。コレラは、患者や保菌者の便中のコレラ菌に汚染された食物や水による経口感染によって感染する。血清型O1のコレラは、1817年以降7回の世界的な大流行を繰り返してきている。その多くは、インド、東南アジア、その他の流行国への渡航者による輸入感染症として発症している。しかし、衛生環境が改善してきた地域での発生は減少している。先進国の患者発生報告の大部分は、今もコレラの流行がある途上国への渡航者、あるいは途上国から持ち込まれた飲食物を介しての感染となっている。日本におけるコレラの報告数は年々減少してきており、2000年代前半は年間50~100人程度の発生があったが、近年は年間10人以下となることが多くなっている。
【0003】
コレラ毒素(コレラトキシン、CTとも)は、分子量約84kDaのオリゴマータンパク質で、分子量約27kDaのAサブユニット1分子と分子量約11.6kDaのBサブユニット5分子からなる。コレラ毒素のアミノ酸配列や作用機序等の詳細は、既に研究されている(特許文献1、非特許文献1)。
【0004】
コレラの確定診断のためには、便培養によってコレラ菌を分離して、その血清型がO1かO139であることを確認したうえ、さらに、毒素産生か毒素遺伝子を証明することが必要である。コレラ菌の検出のためのキットとしては、例えばデンカ株式会社製のコレラ菌AD「生研」が市販されている。また、コレラ菌の検出方法として、分離培養検査、PCR検査といった一般的な菌体検出方法のほか、抗コレラ菌モノクローナル抗体(特許文献2~4)やコレラ菌検出用のオリゴヌクレオチド(特許文献5および6)を用いた方法がある。しかし、分離培養検査には、特殊な検査室が必要であり、手法が煩雑で、培養や外部委託に時間がかかるといった問題がある。さらに、PCR法は、特殊な機器が必要であるため手法が煩雑で外部委託に時間がかかるといった問題がある。
【0005】
コレラ毒素の検出のためのキットとしては、例えばデンカ株式会社製のVET-RPLA「生研」が市販されている。コレラ毒素の検出のための方法としては、上記VET-RPLA「生研」も利用している毒素産生性試験(Reversed Passive Latex Agglutination Test :RPLA法)が一般的であるが、培養菌からのコレラ毒素を検出するため、試験時間に1日を要し、最小検出感度は1~2ng/mLであるといった問題がある。また、上記VET-RPLA「生研」の添付文書でも述べられているが、コレラ毒素の相同因子である大腸菌易熱性エンテロトキシン(LT)も同感度で検出されるという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭58-222033号公報
【特許文献2】特開昭62-265993号公報
【特許文献3】特開昭62-265994号公報
【特許文献4】特開昭62-265998号公報
【特許文献5】特開平5-276996号公報
【特許文献6】特開平7-8279号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】R.-G. Zhang, D. L. Scott, M. L. Westbrook, S. Nance, B. D. Spangler, G. G. Shipley and E. M. Westbrook. 1995 The three-dimensional crystal structure of cholera toxin. Journal of Molecular Biology 251563-573
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、医療現場、食品汚染現場、検査室内など様々な場面で必要とされるコレラ毒素(CT)の検出を、簡便、迅速、高感度に行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を行った。まず、コレラ毒素のBサブユニット(CTxB)とアジュバントを含む抗原液を、BALB/cマウスに接種した。接種後、マウスの脾細胞またはリンパ節細胞とP3U1とを融合させてハイブリドーマを作製し、その中から、CTxBに対して高い反応性を示すモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを選抜し、CTxBに対して優れた反応性を示す抗体を産生する4つのハイブリドーマを取得することに成功した。
【0010】
次いで、これらのモノクローナル抗体を用いて、イムノクロマトグラフィーによりCTxBおよび全長コレラ毒素(CTx)の検出をそれぞれ行ったところ、高感度でCTxBおよびCTxを検出し得る結果を得た。
【0011】
そこで、第一の態様において、本発明は、イムノクロマト法による検体中のコレラ毒素の検出方法(以下、本発明の検出方法と略す)であって、下記群(以下、本発明の抗体群と略す)から選択される同一または異なる2種の抗体を各々標識抗体および捕捉抗体として用いることを特徴とする、方法を提供する:
1)少なくともVH CDR3領域として配列番号9のアミノ酸配列およびVL CDR3領域として配列番号12のアミノ酸配列を有する、2G6抗体;
2)少なくともVH CDR3領域として配列番号19のアミノ酸配列およびVL CDR3領域として配列番号22のアミノ酸配列を有する、3F7抗体;
3)少なくともVH CDR3領域として配列番号29のアミノ酸配列およびVL CDR3領域として配列番号32のアミノ酸配列を有する、4E6抗体;
4)少なくともVH CDR3領域として配列番号39のアミノ酸配列およびVL CDR3領域として配列番号42のアミノ酸配列を有する、8A5抗体;および
5)上記1)~4)の抗体の各VH CDR3領域および/またはVL CDR3領域において1または2個のアミノ酸変異を有する、抗体。
【0012】
本発明の抗体群に属する抗体は、好ましくは、単離された抗体である。本発明の抗体群に属する抗体は、いずれもポリクローナル抗体でもモノクローナル抗体でもよいが、非特異的反応による誤検出を防止する観点から好ましくはモノクローナル抗体である。
【0013】
より好ましくは、本発明の抗体群に属する抗体は、コレラ毒素に対して5.0x10-9M以下、より好ましくは1.0x10-9M以下、さらに好ましくは5.0x10-10M以下の平衡解離定数KDを有する。
【0014】
上記5)の抗体において、アミノ酸変異は、アミノ酸残基の置換、欠失、挿入のいずれであってもよいが、好ましくは置換、免疫学的特異性維持の観点からとりわけ好ましくは保存的アミノ酸置換である。
【0015】
さらに好ましい態様において、本発明の抗体群は、下記特徴を有する:
1)少なくともVH CDR1領域として配列番号7のアミノ酸配列、VH CDR2領域として配列番号8のアミノ酸配列、VH CDR3領域として配列番号9のアミノ酸配列、VL CDR1領域として配列番号10のアミノ酸配列、VL CDR2領域として配列番号11のアミノ酸配列およびVL CDR3領域として配列番号12のアミノ酸配列を有する、2G6抗体;
2)少なくともVH CDR1領域として配列番号17のアミノ酸配列、VH CDR2領域として配列番号18のアミノ酸配列、VH CDR3領域として配列番号19のアミノ酸配列、VL CDR1領域として配列番号20のアミノ酸配列、VL CDR2領域として配列番号21のアミノ酸配列およびVL CDR3領域として配列番号22のアミノ酸配列を有する、3F7抗体;
3)少なくともVH CDR1領域として配列番号27のアミノ酸配列、VH CDR2領域として配列番号28のアミノ酸配列、VH CDR3領域として配列番号29のアミノ酸配列、VL CDR1領域として配列番号30のアミノ酸配列、VL CDR2領域として配列番号31のアミノ酸配列およびVL CDR3領域として配列番号32のアミノ酸配列を有する、4E6抗体;
4)少なくともVH CDR1領域として配列番号37のアミノ酸配列、VH CDR2領域として配列番号38のアミノ酸配列、VH CDR3領域として配列番号39のアミノ酸配列、VL CDR1領域として配列番号40のアミノ酸配列、VL CDR2領域として配列番号41のアミノ酸配列およびVL CDR3領域として配列番号42のアミノ酸配列を有する、8A5抗体;および
5)上記1)~4)の抗体の各VH CDR1領域、VH CDR2領域、VHCDR3領域、VL CDR1領域、VL CDR2領域および/またはVL CDR3領域において1または2個のアミノ酸変異を有する、抗体。
【0016】
より好ましい態様において、本発明の抗体群は、下記特徴を有する:
1)VH領域として配列番号3のアミノ酸配列およびVL領域として配列番号5のアミノ酸配列を有する、2G6抗体;
2)VH領域として配列番号13のアミノ酸配列およびVL領域として配列番号15のアミノ酸配列を有する、3F7抗体;
3)VH領域として配列番号23のアミノ酸配列およびVL領域として配列番号25のアミノ酸配列を有する、4E6抗体;
4)VH領域として配列番号33のアミノ酸配列およびVL領域として配列番号35のアミノ酸配列を有する、8A5抗体;および
5)上記1)~4)の抗体と80%以上の配列同一性を有する、抗体。
【0017】
第二の態様において、本発明は、コレラ毒素の検出用抗体であって、上記本発明の抗体群から選択されるいずれか1種の抗体または同一または異なる2種以上の抗体の組合せを提供する。当該抗体の組合せは、例えば、イムノクロマト法によるコレラ毒素の検出用抗体としての同一または異なる2種の抗体の組合せである。より好ましくは、上記4)の8A5抗体または5)の抗体のうち4)の8A5抗体に由来する抗体の同一の抗体の組合せ、最も好ましくは上記4)の8A5抗体の同一の抗体の組合せである。
【0018】
第三の態様において、本発明は、上記本発明の抗体群から選択されるいずれかの抗体または抗体の組合せを含むことを特徴とする、コレラ毒素検出用イムノクロマトキットを提供する。当該キットは、例えば、4)の8A5抗体を含んでおり、かつ、4)の8A5抗体が金コロイドと感作して標識抗体をなしており、4)の8A5抗体が固層上に線状に固定されて捕捉抗体をなしている。
【発明の効果】
【0019】
本発明を用いることで、医療現場でも食中毒原因コレラ毒素を簡便(例えばキット化することで特別な検査室を必要としない)、迅速(試験時間:1時間未満、好ましくは30分未満、例えば15分)、そして高感度(検出感度:~1ng/mL、好ましくは~0.25ng/mL)に検出できる。さらに、本発明の抗体群に属する抗体は、コレラ毒素の相同因子である大腸菌易熱性エンテロトキシンのBサブユニット(LTB)については100ng/mLの高濃度条件でのみ検出することから、コレラ毒素検出の特異度は高いと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の抗体群を得るためのハイブリドーマ作成法のスキームを示す。
図2】候補抗体10種のCTxB反応性を示す。左の棒が抗原であるCTxB、右の棒がネガティブコントロールである腸内細菌死菌体のELISAでのOD450を示す。
図3】精製済みの候補抗体6種のCTxBに対する反応性を示す。左の棒が抗原であるCTxBの濃度1.0μg/mL、右の棒が0.1μg/mLのELISAでのOD450を示す。
図4】精製済みの候補抗体6種のCTxに対する反応性を示す。左の棒が抗原であるCTxの濃度1.0μg/mL、右の棒が0.1μg/mLのELISAでのOD450を示す。
図5】表面プラズモン共鳴法による精製済みの候補抗体6種のCTxBに対するアフィニティを示す。
図6】金コロイド感作させた候補抗体とテストラインに用いる候補抗体の各組合せで、水、PBSのみあるいはCTxB 0.1、1、10および100ng/mLのイムノクロマトグラフを示す。
図7】金コロイド感作させた候補抗体とテストラインに用いる候補抗体の各組合せで、1%PBSのみ、CTxB 10ng/mLおよびLTB 10ng/mLのイムノクロマトグラフを示す。
図8】CTx(0、0.25、0.5、1.0または10ng/mL)、CTxB(0、0.25、0.5、1.0または10ng/mL)またはLTB(0、0.25、0.5、1.0、10または100ng/mL)を展開液1%NP40-PBSに調製懸濁させ、金コロイド感作:8A5、テストライン:8A5のイムノクロマト試薬に展開したイムノクロマトグラフを示す。
図9】CTx(0、1.0または10ng/mL)、CTxB(0、1.0または10ng/mL)またはLTB(0、1.0、10または100ng/mL)を健常人便に懸濁した展開液1%NP40-PBSに調製懸濁させ、金コロイド感作:8A5、テストライン:8A5のイムノクロマト試薬に展開したイムノクロマトグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の詳細な説明をするが、本明細書において用いられる用語は、微生物学、生化学、分子生物学、医学及び薬学分野における一般的な定義に従って理解される。ただし、本明細書において特に説明または定義されている用語については、本明細書における説明または定義が優先する。また、本明細書中に引用されている文献については、参照により本明細書の一部とする。
【0022】
第一の態様において、本発明は、上記の通り、イムノクロマト法による検体中のコレラ毒素の検出方法を提供する。イムノクロマト法は、標識抗体と捕捉抗体を用いて抗原を検出する免疫測定法として理解されている。典型的には、イムノクロマト法の工程は、検体と標識抗体とを接触させ、固層の検体適用部分に検体を適用し、検体中の標識抗体―抗原結合体を展開させ、判定部分に固着させた捕捉抗体によって標識抗体-抗原結合体を捕捉して、標識抗体-抗原-捕捉抗体結合体を形成させてこれを目視ないし適切な測定装置によって判定するという工程である。したがって、本発明の検出方法は、典型的には、1)検体と標識抗体とを接触させる工程、2)標識抗体と接触させた検体を、捕捉抗体を固着させた判定部分を有する固層上で展開させる工程、3)判定部分を確認する工程を含む。
【0023】
本発明の検出方法において、検体は、糞便、汚水、飲料品、食品等の食中毒検査に用いられるどのような検体であってもよく、水や緩衝液等で希釈または懸濁した検体であってもよい。また、検体なる表現には、検体または検体の希釈液もしくは懸濁液だけでなく、それらと標識抗体の混合物も含意される。
【0024】
本発明の検出方法において、標識抗体は、本発明の抗体群から選択されるいずれかの抗体を標識化したものである。標識化の手段は、当該技術分野において通常用いられるどのような手段であってもよく、典型的には、抗体に金属コロイド、蛍光色素、磁性ラテックスビーズ等を結合させる手段、例えば抗体に金属コロイドとして金コロイド粒子を感作させることが含まれるが、これらに限定されない。
【0025】
本発明の検出方法において、捕捉抗体は、標識抗体と同一の抗原、すなわちコレラ毒素に結合する抗体である。典型的には捕捉抗体は検体を展開する固層上に固着して使用する。かかる捕捉抗体によって、標識抗体と結合した抗原、すなわち標識抗体結合コレラ毒素を固層上に捕捉する。典型的には、捕捉抗体は、固層の一部に、例えば泳動方向と直交する線状に固着されて判定部分を形成する。
【0026】
本発明の検出方法において、固層は、イムノクロマトアッセイにおいて通常用いられるどのような固層であってもよく、例えばガラス繊維、ナイロン、ニトロセルロース、ポリビニリデンジフルオライド、セルロースアセテートなどの微多孔質物質からなる固層を用いることができるが、これらに限定されない。さらに、当該固層は、機能的に説明すれば、検体適用部分、泳動部分および判定部分を含む。
【0027】
本発明の検出方法において、検体の展開方法は、固層に応じて適宜選択される。例えば展開は、固層の毛細管現象によるものであっても、電気などの外力を加えた泳動であってもよい。必要な装置が少なくすむという簡便さのため、固層の毛細管現象を利用した泳動が好ましい。
【0028】
本発明の検出方法において、判定ないし判定部分の確認は、標識抗体に応じて適宜選択される。例えばかかる判定ないし判定部分の確認には、目視のほか、蛍光測定装置などを利用した測定が含まれる。必要な装置が少なくすむという簡便さのため目視が好ましいが、蛍光測定を用いる場合には蛍光強度による定量的測定が可能という利点もある。
【0029】
本発明の検出方法の検出対象であるコレラ毒素は、配列番号1で表わされるアミノ酸からなるAサブユニットと、5個の配列番号2で表わされるアミノ酸からなるBサブユニットとが、組み合わさって成る。コレラ毒素の詳細な構造は、公知のデータベース(GenBankなど)に登録されている。コレラ毒素のAサブユニットとBサブユニットのアミノ酸配列を以下に具体的に示す。コレラ毒素はCTと略され、単にコレラ毒素と記述する場合にはその全長と断片、例えばサブユニットの両方を含意する。特にコレラ毒素の全長をCTx、AサブユニットをCTxA、BサブユニットをCTxBと称する。なお、すべてのアミノ酸配列において、1文字表記と3文字表記が相互に一義的に変換可能であることは当然に理解される。
【0030】
CTxAのアミノ酸配列(配列番号1):
MVKIIFVFFIFLSSFSYANDDKLYRADSRPPDEIKQSGGLMPRGQSEYFDRGTQMNINLYDHARGTQTGFVRHDDGYVSTSISLRSAHLVGQTILSGHSTYYIYVIATAPNMFNVNDVLGAYSPHPDEQEVSALGGIPYSQIYGWYRVHFGVLDEQLHRNRGYRDRYYSNLDIAPAADGYGLAGFPPEHRAWREEPWIHHAPPGCGNAPRSSMSNTCDEKTQSLGVKFLDEYQSKVKRQIFSGYQSDIDTHNRIKDEL
【0031】
CTxBのアミノ酸配列(配列番号2):
MIKLKFGVFFTVLLSSAYAHGTPQNITDLCAEYHNTQIYTLNDKIFSYTESLAGKREMAIITFKNGAIFQVEVPGSQHIDSQKKAIERMKDTLRIAYLTEAKVEKLCVWNNKTPHAIAAISMAN
【0032】
本発明において、抗体は、いわゆる完全な抗体の他に、様々な構造、例えば、抗体断片、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、ミニボディ、ドメイン抗体、合成抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、抗体融合物、及びそれぞれの断片などであってよいが、これらに限定されない。
【0033】
抗体は、典型的には軽鎖と重鎖のペア2つからなる4量体であり、各鎖のアミノ末端部分には、抗原認識に主に関与する可変領域が含まれる。可変領域では3つのループが重鎖及び軽鎖の各Vドメイン(重鎖についてVH、軽鎖についてVLとも称する)について集合しており、抗原結合部位を形成する。各ループは、相補性決定領域とも称され(以下、「CDR」とも称する)、この部分におけるアミノ酸配列の変異が最も顕著である。「可変」とは、可変領域の特定のセグメントが、抗体の配列において広範囲に異なるという事実を意味する。可変領域内の可変性は、均一に分布していない。代わりに、Vドメインは、それぞれ9~15アミノ酸長以上の「超可変領域」と称される極度に可変性の短い領域により区分される15~30アミノ酸のフレームワーク領域(FR)と称される比較的不変の構造からなる。各VH及びVLは、3つの超可変領域(「相補性決定領域」、「CDR」とも)と4つのFRからなり、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4の順序でアミノ末端からカルボキシ末端へ配置される。CDRの中でもとりわけCDR3が相補性の決定に重要なセグメントであり、次いで他のCDRが相補性の決定に寄与する。FRは、相補性の決定において、ほとんどまたは全く寄与しない。このため、抗原との結合特異性という観点において抗体を特定する場合には、抗体の全アミノ酸配列を特定するのではなく、CDR配列、例えばCDR2のアミノ酸配列のみ、あるいはCDR1~3のアミノ酸配列を特定することによって、十分に抗体を特定できる。
【0034】
一実施態様において、抗体は抗体断片である。具体的な抗体断片としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:(i)VL、VH、CL及びCH1ドメインからなるFab断片;(ii)VH及びCH1ドメインからなるFd断片;(iii)単一抗体のVL及びVHドメインからなるFv断片;(iv)単一の可変領域からなるdAb断片(Ward et al.,1989,Nature 341:544-546、参照により全体を援用する);(v)単離されたCDR領域;(vi)2つの結合したFab断片を含む二価の断片であるF(ab’)2断片;(vii)単鎖Fv分子(scFv)であって、VHドメイン及びVLドメインが、2つのドメインが会合して抗原結合部位を形成することができるペプチドリンカーにより結合されているもの(Bird et al.,1988,Science 242:423-426、Huston et al.,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:5879-5883、参照によりその全体が援用される);(viii)二重特異性単鎖Fv(WO03/11161、参照により本明細書に援用される);及び(ix)遺伝子融合により構築された多価または多重特異性(multispecific)断片である「ダイアボディ」または「トリアボディ」(Tomlinson et. al.,2000,Methods Enzymol.326:461-479;WO94/13804;Holliger et al.,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90:6444-6448、参照により全て、その全体が援用される)。
【0035】
いくつかの実施態様において、抗体は異なる種由来の混合物であってよく、例えば、キメラ抗体及び/またはヒト化抗体などであってよい。すなわち、本発明において、CDRセットは、本明細書において配列により具体的に記載されるもの以外のフレームワーク及び定常領域とともに使用されてよい。
【0036】
一般に、「キメラ抗体」及び「ヒト化抗体」はともに、2以上の種由来の領域を組み合わせた抗体を意味する。例えば、「キメラ抗体」は、従来、マウス(またはいくつかの場合ではラット)由来の可変領域(1つ以上)とヒト由来の定常領域(1つ以上)とを含む。「ヒト化抗体」は、通常、ヒト抗体で見られる配列と交換された可変ドメインフレームワーク領域を有している非ヒト抗体を意味する。一般に、ヒト化抗体においては、CDRを除く抗体全体は、ヒト起源のポリヌクレオチドによりコードされるか、またはそのCDR内を除いてそのような抗体と同一である。CDRは、そのいくつかまたは全てが非ヒト生物由来の核酸によりコードされ、ヒト抗体可変領域のβシートフレームワークへとグラフトされて抗体を作っており、その特異性はグラフトされたCDRにより決定される。このような抗体の作製は、例えば、WO92/11018、Jones,1986,Nature 321:522-525、Verhoeyen et al.,1988,Science 239:1534-1536などに記載されており、これらは全て、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0037】
一実施態様において、抗体はミニボディである。ミニボディは、CH3ドメインと連結されたscFvを含む最小化抗体様タンパク質である(Hu et al.,1996,Cancer Res.56:3055-3061、参照によりその全体が援用される)。いくつかの場合において、scFvはFc領域と連結されてよく、ヒンジ領域のいくつかまたは全体を含んでよい。
【0038】
本発明の抗体は、通常、単離されるか、または組換えられる。「単離される」とは、本明細書で開示する様々なポリペプチドを記載するために使用する場合、ポリペプチドが発現される細胞または細胞培養物から同定され且つ分離され、且つ/または回収されたポリペプチドを意味する。通常、単離されたポリペプチドは、少なくとも1つの精製工程により調製される。「単離された抗体」とは、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を意味する。例えば、コレラ毒素と特異的に結合する単離された抗体は、コレラ毒素以外の抗原と特異的に結合する抗体を実質的に含まない。
【0039】
複数の単離されたモノクローナル抗体は、本発明の検出方法において、組み合わせて、例えばイムノクロマト法による場合には、一方を標識化することで標識抗体をなし他方を固層に固着させることで捕捉抗体をなして、使用することができる。
【0040】
本発明の抗体群から選択される抗体は、コレラ毒素と特異的に結合する。「特異的結合」または「特異的に結合する」、または特定の抗原若しくは抗原断片に「特異的」であるとは、非特異的相互作用と測定可能な程度に異なる結合を意味する。特異的結合は、例えば、コントロール分子の結合と比較して、分子の結合を決定することにより測定でき、コントロール分子は、通常、結合活性を有さない類似構造の分子である。例えば、特異的結合は、標的と類似するコントロール分子との競合により決定され得る。
【0041】
特定の抗原または抗原断片に対する特異的結合は、例えば、少なくとも約1.0x10-1、少なくとも約5.0x10-2または好ましくは少なくとも約1.0x10-2の抗原または抗原断片に対するKd(1/s)を有する抗体により示される。ここで、Kdとは、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度定数を意味する。典型的には、抗原に特異的に結合する抗体は、抗原または抗原断片に対するコントロール分子について20~、50~、100~、500~、1000~、5,000~倍以上のKdを有する。
【0042】
さらに、特定の抗原または抗原断片に対する特異的結合は、例えば、コントロールに対する抗原または抗原断片について少なくとも20~、50~、100~、500~、1000~、5,000~倍以上の抗原または抗原断片に対する結合速度定数Ka(1/Ms)を有する抗体により示され、ここで、Kaは、特定の抗体-抗原相互作用の結合速度を意味する。
【0043】
さらに、特定の抗体と当該抗体と特異的に結合する抗原または抗原断片との結合特性は、平衡解離定数KD(M)として、Kd/Ksにより求められる。平衡解離定数はあるいはアフィニティとも呼ばれる。高い結合特性は、低いKD値として表現され、例えば本発明の検出方法において使用される抗体は、コレラ毒素に対して25℃で5.0x10-9M以下、より好ましくは1.0x10-9M以下、さらに好ましくは5.0x10-10M以下のKDを有し、37℃で1.0x10-9M以下、より好ましくは5.0x10-10M以下、さらに好ましくは1.0x10-10M以下のKDを有する。
【0044】
抗体と抗原との結合速度定数、解離速度定数および平行解離定数は、いずれも、当該技術分野において既知の手法によって容易に求めることができる。かかる手法としては、例えば、抗原架橋法、抗体架橋法およびキャプチャー法等を含むいわゆる表面プラズモン共鳴法がしばしば用いられるが、これらに限定されない。
【0045】
本発明の第2の態様において、本発明は、コレラ毒素と特異的に結合する抗体群を提供する。本発明の抗体群に含まれる抗体は、単独で、または2種以上の組合せで使用することができる。また、本発明の抗体群から選択されるいずれか1種の抗体と、本発明の抗体群の他の抗体、例えばコレラ毒素と結合する他の抗体とを、組合せて使用することもできる。
【0046】
最も好ましい態様において、本発明の抗体1)2G6は、そのVHが配列番号3で表わされるアミノ酸配列を有し、そのVLが配列番号5で表わされるアミノ酸配列を有する。また、抗体1)のVHをコードする遺伝子は配列番号4で表わされる塩基配列を有し、抗体1)のVLをコードする遺伝子は配列番号6で表わされる。抗体1)のアミノ酸配列及びこれをコードする遺伝子の塩基配列を以下に具体的に示す。
【0047】
抗体1)のVHのアミノ酸配列(配列番号3):
EGQLQESGAELAKPGASVKMSCKASGYTFTSYWMHWVKQRPGQGLEWIGFINPYTGFTEYSQKFKDKATLTADKSSSTAYIQLNSLTSEDSAVYYCSRRFNYGSAYFDFWGQGTTLTVSS
【0048】
抗体1)のVHをコードする遺伝子の塩基配列(配列番号4):
gaggggcagc ttcaggagtc tggggctgaa ctggcaaaac ctggggcctc agtgaagatg tcctgcaagg cttctggcta cacctttact agctactgga tgcactgggt aaaacagagg cctggacagg gtctggaatg gattggattc attaatcctt acactggttt tactgagtac agtcagaagt tcaaggacaa ggccacattg actgcagaca aatcctccag tacagcctac atacaactga acagcctgac atctgaggac tctgcagtct attactgttc aagaaggttt aactacggta gtgcctactt tgacttctgg ggccaaggca ccactctcac agtctcctca
【0049】
抗体1)のVLのアミノ酸配列(配列番号5):
DILLTQSPALMAASPGEKVTITCSVSSSISSSNLHWYQQKSETSPKPWIYGTSNLASGVPVRFSGSGSGTSYSLTISSMEAEDAATYYCQQWSNYPLTFGGGTKLEVK
【0050】
抗体1)のVLをコードする遺伝子の塩基配列(配列番号6):
gacattttgc tcactcagtc tccagcactc atggctgcat ctccagggga gaaggtcacc atcacctgta gtgtcagctc aagtataagt tccagcaact tgcactggta ccagcagaag tcagaaacct cccccaaacc ctggatttat ggcacatcca acctggcttc tggagtccct gttcgcttca gtggcagtgg atctgggacc tcttattctc tcacaatcag cagcatggag gctgaagatg ctgccactta ttactgtcaa cagtggagta attacccact cacgttcgga ggggggacca agctggaggt aaaa
【0051】
さらに抗体1)を詳細に分析して、VHおよびVLのCDR1~3を各々特定した。本発明の抗体1)は、そのVH CDR1が配列番号7で、VH CDR2が配列番号8で、VH CDR3が配列番号9で表わされるアミノ酸配列を有し、そのVL CDR1が配列番号10で、VL CDR2が配列番号11で、VL CDR3が配列番号12で表わされるアミノ酸配列を有する。VHおよびVLのCDR1~3のアミノ酸配列を以下に具体的に示す。
【0052】
抗体1)のVH CDR1アミノ酸配列(配列番号7):
GYTFTSYWMH
抗体1)のVH CDR2アミノ酸配列(配列番号8):
FINPYTGFTEYSQKFKD
抗体1)のVH CDR3アミノ酸配列(配列番号9):
RFNYGSAYFDF
抗体1)のVL CDR1アミノ酸配列(配列番号10):
SVSSSISSSNLH
抗体1)のVL CDR2アミノ酸配列(配列番号11):
GTSNLAS
抗体1)のVL CDR3アミノ酸配列(配列番号12):
QQWSNYPLT
【0053】
最も好ましい態様において、本発明の抗体2)3F7は、そのVHが配列番号13で表わされるアミノ酸配列を有し、そのVLが配列番号15で表わされるアミノ酸配列を有する。また、抗体2)のVHをコードする遺伝子は配列番号14で表わされる塩基配列を有し、抗体2)のVLをコードする遺伝子は配列番号16で表わされる。抗体2)のアミノ酸配列及びこれをコードする遺伝子の塩基配列を以下に具体的に示す。
【0054】
抗体2)のVHのアミノ酸配列(配列番号13):
QAYLQQSGPELMKPGASVKISCKASGYSFTSYYMHWVRQRHGKSLEWIGYIDPFNGDTRYNQKFKGKATLTVDKSSSTAYMHLSSLTSEDSAVHYCARWAYYDSYYFDYWGQGTTLTVSS
【0055】
抗体2)のVHをコードする遺伝子の塩基配列(配列番号14):
caggcttatc tgcagcagtc tggacctgag ctgatgaagc ctggggcttc agtgaagata tcctgcaagg cttccggtta ctctttcact agctactaca tgcactgggt gaggcagaga catggaaaga gccttgagtg gattggatat attgatcctt tcaatggtga tactaggtac aaccagaaat tcaagggcaa ggccacattg actgtagaca aatcttccag cacagcctac atgcatctca gcagcctgac atctgaggac tctgcagtcc attactgtgc aagatgggct tactacgata gttattattt tgactactgg ggccaaggca ccactctcac agtctcctca
【0056】
抗体2)のVLのアミノ酸配列(配列番号15):
DVVVTQTPLSLPVSLGEQASISCRSSQGFVHSNGNTYLEWYLQKPGQSPKLLIYKVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDLGVYYCLQGSHVPLTFGAGTKLELK
【0057】
抗体2)のVLをコードする遺伝子の塩基配列(配列番号16):
gatgttgtgg tgacccaaac tccactctcc ctgcctgtca gtcttggaga gcaagcctcc atctcttgca gatctagtca gggctttgta catagtaatg gaaacaccta tttagaatgg tacctgcaga aaccaggcca gtctccaaag ctcctgatct acaaagtttc caaccgattt tctggggtcc cagacaggtt cagtggcagt ggatcaggga cagatttcac actcaagatc agcagagtgg aggctgagga tctgggagtt tattactgtc ttcaaggttc acatgttccg ctcacgttcg gtgctgggac caagctggag ctgaaa
【0058】
さらに抗体2)を詳細に分析して、VHおよびVLのCDR1~3を各々特定した。本発明の抗体2)は、そのVH CDR1が配列番号17で、VH CDR2が配列番号18で、VH CDR3が配列番号19で表わされるアミノ酸配列を有し、そのVL CDR1が配列番号20で、VL CDR2が配列番号21で、VL CDR3が配列番号22で表わされるアミノ酸配列を有する。VHおよびVLのCDR1~3のアミノ酸配列を以下に具体的に示す。
【0059】
抗体2)のVH CDR1アミノ酸配列(配列番号17):
GYSFTSYYMH
抗体2)のVH CDR2アミノ酸配列(配列番号18):
YIDPFNGDTRYNQKFKG
抗体2)のVH CDR3アミノ酸配列(配列番号19):
WAYYDSYYFDY
抗体2)のVL CDR1アミノ酸配列(配列番号20):
RSSQGFVHSNGNTYLE
抗体2)のVL CDR2アミノ酸配列(配列番号21):
KVSNRFS
抗体2)のVL CDR3アミノ酸配列(配列番号22):
LQGSHVPLT
【0060】
最も好ましい態様において、本発明の抗体3)4E6は、そのVHが配列番号23で表わされるアミノ酸配列を有し、そのVLが配列番号25で表わされるアミノ酸配列を有する。また、抗体3)のVHをコードする遺伝子は配列番号24で表わされる塩基配列を有し、抗体3)のVLをコードする遺伝子は配列番号26で表わされる。抗体3)のアミノ酸配列及びこれをコードする遺伝子の塩基配列を以下に具体的に示す。
【0061】
抗体3)のVHのアミノ酸配列(配列番号23):
EVRLQQSGPELVRPGASMKISCKASGYSFTGYTMNWVKQSHGKNLDWIGLIHPYNGRTTYNQKFKGKATLTVDKSSSTAYMELLSLTSEDSAVYYCAKEYDWYFDVWGAGTTVTVSS
【0062】
抗体3)のVHをコードする遺伝子の塩基配列(配列番号24):
gaggttcggc tgcaacagtc tggacctgag ctggtgaggc ctggagcttc aatgaagata tcctgcaagg cttctggtta ctcattcact ggctacacca tgaactgggt gaaacagagc catggaaaga accttgactg gattggactt attcatcctt acaatggtcg tactacctac aaccagaagt tcaagggcaa ggccacatta actgtagaca agtcatccag cacagcctac atggagctcc tcagtctgac atctgaggac tctgcagtct attactgtgc aaaagagtac gactggtact tcgatgtctg gggcgcaggg accacggtca ccgtctcctc a
【0063】
抗体3)のVLのアミノ酸配列(配列番号25):
DIQMTQSPSSLSASLGDTITITCHASQNINIWLSWYQQKPGNIPKLLIYQASNLHTGVPSRFSGSGSGTGFKLTIRSLQPEDIATYYCQQGQSYPRTFGGGTKLEIK
【0064】
抗体3)のVLをコードする遺伝子の塩基配列(配列番号26):
gacatccaga tgacacagtc tccatccagt ctgtctgcat cccttggaga cacaattacc atcacttgcc atgccagtca gaacattaat atttggttaa gctggtacca gcagaaacca ggaaatattc ctaaactatt gatctatcag gcttccaact tgcacacagg cgtcccatca aggtttagtg gcagtggatc tggaacaggt ttcaaattaa ccatccgcag cctgcagcct gaagacattg ccacttacta ctgtcaacag ggtcaaagtt atcctcggac gttcggtgga ggcaccaagc tggaaatcaa a
【0065】
さらに抗体3)を詳細に分析して、VHおよびVLのCDR1~3を各々特定した。本発明の抗体3)は、そのVH CDR1が配列番号27で、VH CDR2が配列番号28で、VH CDR3が配列番号29で表わされるアミノ酸配列を有し、そのVL CDR1が配列番号30で、VL CDR2が配列番号31で、VL CDR3が配列番号32で表わされるアミノ酸配列を有する。VHおよびVLのCDR1~3のアミノ酸配列を以下に具体的に示す。
【0066】
抗体3)のVH CDR1アミノ酸配列(配列番号27):
GYSFTGYTMN
抗体3)のVH CDR2アミノ酸配列(配列番号28):
LIHPYNGRTTYNQKF
抗体3)のVH CDR3アミノ酸配列(配列番号29):
EYDWYFDV
抗体3)のVL CDR1アミノ酸配列(配列番号30):
HASQNINIWLS
抗体3)のVL CDR2アミノ酸配列(配列番号31):
QASNLHT
抗体3)のVL CDR3アミノ酸配列(配列番号32):
QQGQSYPRT
【0067】
最も好ましい態様において、本発明の抗体4)8A5は、そのVHが配列番号33で表わされるアミノ酸配列を有し、そのVLが配列番号35で表わされるアミノ酸配列を有する。また、抗体4)のVHをコードする遺伝子は配列番号34で表わされる塩基配列を有し、抗体4)のVLをコードする遺伝子は配列番号36で表わされる。抗体4)のアミノ酸配列及びこれをコードする遺伝子の塩基配列を以下に具体的に示す。
【0068】
抗体4)のVHのアミノ酸配列(配列番号33):
QVQLQQSAAELARPGASVKMSCKASGFTFTSYTLHWVKQRPGQGLEWIGYINPRGYTEYHQKFKDKTTLTADKSSSTAYIQLNSLTSEDSAVYYCARYDGFFLYALDYWGQGTSVTVSS
【0069】
抗体4)のVHをコードする遺伝子の塩基配列(配列番号34):
caggtccaac tgcagcagtc tgcagctgaa ctggcaagac ctggggcctc agtgaagatg tcctgcaagg cttctggctt cacctttact agctacacgt tacactgggt aaaacagagg cctggacagg gtctggaatg gattggatac attaatcccc gtggatatac tgagtaccat cagaagttca aggacaagac cacattgact gcagacaaat cctccagcac agcctacata caactgaaca gcctgacatc tgaggactct gcggtctatt actgtgcaag atatgatggt ttcttcctct atgctttgga ctattggggt caaggaacct cagtcaccgt ctcctca
【0070】
抗体4)のVLのアミノ酸配列(配列番号35):
DIQMTQSPSSMYASLGERVTITCKASQDINSNLSWFQQKPGKSPKTLIYRASRLVHGVPSRFSGSGSGQDYSLTISSLEYEDMGIYSCLQYDEFPYTFGGGTKLEIK
【0071】
抗体4)のVLをコードする遺伝子の塩基配列(配列番号36):
gacatccaga tgacacagtc tccatcttcc atgtatgcat ctctaggaga gagagtcact atcacttgca aggcgagtca ggacattaat agcaatttaa gctggttcca gcagaaacca gggaaatctc ctaagaccct gatctatcgt gcaagcagat tggtacatgg ggtcccatca aggttcagtg gcagtggatc tgggcaagat tattctctca ccatcagcag cctggagtat gaagatatgg gaatttattc ttgtctacag tatgatgagt ttccgtacac gttcggaggg gggaccaagc tggaaataaa a
【0072】
さらに抗体4)を詳細に分析して、VHおよびVLのCDR1~3を各々特定した。本発明の抗体4)は、そのVH CDR1が配列番号37で、VH CDR2が配列番号38で、VH CDR3が配列番号39で表わされるアミノ酸配列を有し、そのVL CDR1が配列番号40で、VL CDR2が配列番号41で、VL CDR3が配列番号42で表わされるアミノ酸配列を有する。VHおよびVLのCDR1~3のアミノ酸配列を以下に具体的に示す。
【0073】
抗体4)のVH CDR1アミノ酸配列(配列番号37):
GFTFTSYTLH
抗体4)のVH CDR2アミノ酸配列(配列番号38):
YINPRGYTEYHQKFKD
抗体4)のVH CDR3アミノ酸配列(配列番号39):
YDGFFLYALDY
抗体4)のVL CDR1アミノ酸配列(配列番号40):
KASQDINSNLS
抗体4)のVL CDR2アミノ酸配列(配列番号41):
RASRLVH
抗体4)のVL CDR3アミノ酸配列(配列番号42):
LQYDEFPYT
【0074】
本発明は、さらに変異抗体も提供する。すなわち、本発明の抗体は多数の修飾がなされてよく、これには、CDRにおけるアミノ酸修飾(親和性成熟)、Fc領域におけるアミノ酸修飾、グリコシル化変異体、他のタイプの共有結合修飾などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0075】
本明細書において「変異体(variant)」とは、少なくとも1つのアミノ酸修飾によって親ポリペプチドのものと異なるポリペプチド配列を意味する。アミノ酸修飾には、置換、挿入および欠失が含まれてよく、多くの場合、置換、とりわけ保存的置換が好ましい。
【0076】
一般に、本明細書に記載するとおり、抗体の機能が依然として存在する限り、変異体には任意数の修飾が含まれてよい。すなわち、本発明の抗体群のいずれかのCDRで作製されたアミノ酸変異体の場合、例えば、抗体は、CTxに依然として、特異的に結合すべきである。
【0077】
しかしながら、一般に、多くの場合、そのゴールは最小数の修飾で機能を変更することであるので、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換が通常利用される。いくつかの場合において、1~5個修飾が存在し、多くの実施態様においては、1~2、1~3、及び1~4個の修飾の使用も認められる。
【0078】
アミノ酸修飾の数は、機能的ドメインの範囲内であってよいことに留意すべきである:例えば、野生型または改変タンパク質のFc領域では1~5個の修飾、例えばFv領域では1~5個の修飾を有することが望ましい場合がある。変異ポリペプチド配列は、親配列(例えば、本発明の抗体群から選択されるいずれかの抗体の可変領域、定常領域、並びに/または重鎖及び軽鎖配列など)と少なくとも約80%、85%、90%、95%または最大で98若しくは99%の同一性を有することが好ましい。配列サイズにもよるが、同一性の割合は、アミノ酸の数によって決まることに留意すべきである。
【0079】
本明細書において「アミノ酸置換」または「置換」とは、親ポリペプチド配列の特定の位置のアミノ酸を別のアミノ酸と交換することを意味する。例えば、置換S100Aとは、100位のセリンをアラニンと交換した変異ポリペプチドをいう。本明細書で使用する場合、「アミノ酸挿入」または「挿入」とは、親ポリペプチド配列の特定の位置のアミノ酸の付加を意味する。本明細書で使用する場合に、「アミノ酸欠失」または「欠失」とは、親ポリペプチド配列における特定の位置のアミノ酸の除去を意味する。
【0080】
本明細書で使用する場合、「親ポリペプチド」、「親タンパク質」、「前駆体ポリペプチド」または「前駆体タンパク質」とは、変異体を作製するためにその後修飾される、非修飾のポリペプチドを意味する。通常、本明細書における親ポリペプチドは本発明の抗体群から選択されるいずれかの抗体である。親ポリペプチドは、ポリペプチド自体、親ポリペプチドを含む組成物、またはそれをコードするアミノ酸配列をいうこともある。従って、本明細書で使用する場合、「親Fcポリペプチド」とは、変異体を作製するために修飾されるFcポリペプチドを意味し、本明細書で使用する場合、「親抗体」とは、変異抗体を作製するために修飾される抗体を意味する。
【0081】
本明細書において「野生型」または「WT」または「天然」とは、アレル変異を含む、天然で発見されるアミノ酸配列またはヌクレオチド配列を意味する。WTタンパク質、ポリペプチド、抗体、免疫グロブリン、IgGなどは、意図的に修飾されていないアミノ酸配列またはヌクレオチド配列を有する。
【0082】
本明細書において「変異Fc領域」とは、少なくとも1つのアミノ酸修飾によって、野生型Fc配列のものとは異なるFc配列を意味する。Fc変異体は、Fcポリペプチド自体、Fc変異体ポリペプチドを含む組成物、またはアミノ酸配列をいうこともある。
【0083】
いくつかの実施態様において、1つ以上のアミノ酸修飾が、抗体の1つ以上のCDRにおいてなされる。一般に、1または2個のアミノ酸のみが、いずれかの単一のCDRにおいて置換され、通常は3、4、5、6、7、8、9または10個以上の変化はCDRのセット内ではなされない。しかしながら、任意のCDRにおいて、置換されないか、1個または2個、あるいは3個以上の置換のいずれかの組合せが、任意の他の置換と、独立して任意選択で組み合わされ得る。
【0084】
いくつかの場合において、CDRにおけるアミノ酸修飾は、「親和性成熟」と称される。「親和性成熟された」抗体は、1つ以上のCDRにおいて1つ以上の変更を有するものであり、その結果、これらの変更を有さない親抗体と比較して、抗原に対する抗体の親和性が改善される。いくつかの場合において、稀ではあるが、その抗原に対する抗体の親和性を低下させることが望ましい場合があるが、通常、これは好ましくない。
【0085】
親和性成熟は、「親」抗体と比較して、少なくとも約10%~50~100~150%以上、または1~5倍、抗原に対する抗体の結合親和性を増加させるためになされ得る。好ましい親和性成熟抗体は、標的抗原に対して、ナノモル、またはさらにはピコモルオーダーの親和性を有する。親和性成熟抗体は、既知の手順により製造される。例えば、重鎖可変(VH)ドメイン及び軽鎖可変(VL)ドメインシャッフリングによる親和性成熟を記載したMarks et al.,1992,Biotechnology 10:779-783を参照されたい。CDR及び/またはフレームワーク残基のランダム変異導入法は、以下に記載される:例えば、Barbas,et al.1994,Proc.Nat.Acad.Sci,USA 91:3809-3813;Shier et al.,1995,Gene 169:147-155;Yelton et al.,1995,J.Immunol.155:1994-2004;Jackson et al.,1995,J.Immunol.154(7):3310-9;及びHawkins et al,1992,J.Mol.Biol.226:889-896など。
【0086】
あるいは、アミノ酸修飾は、「サイレント」、あるいは「保存的」である、例えば、抗原に対する抗体の親和性を有意に変更しない、本発明の抗体の1つ以上のCDRでなされ得る。これらは、発現を最適化する(本発明の抗体をコードする核酸についてなし得る)ことを含む様々な理由でなされ得る。
【0087】
あるアミノ酸を、同様の疎水性指数を有する他のアミノ酸により置換して、そして依然として同様の生物学的機能を有するタンパク質(例えば、酵素活性において等価なタンパク質。以下、「生物学的等価体」)を生じさせ得ることは当該分野で周知である。このようなアミノ酸置換において、疎水性指数が±2以内であることが好ましく、±1以内であることがより好ましく、±0.5以内であることがさらにより好ましい。疎水性に基づくこのようなアミノ酸の置換は効率的であることが当該分野において理解される。親水性指標もまた、生物学的等価体の作製において考慮される。米国特許第4、554、101号に記載されるように、以下の親水性指数がアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0±1);グルタミン酸(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);スレオニン(-0.4);プロリン(-0.5±1);アラニン(-0.5);ヒスチジン(-0.5);システイン(-1.0);メチオニン(-1.3);バリン(-1.5);ロイシン(-1.8);イソロイシン(-1.8);チロシン(-2.3);フェニルアラニン(-2.5);トリプトファン(-3.4)。このようなアミノ酸置換において、親水性指数が±2以内であることが好ましく、±1以内であることがより好ましく、±0.5以内であることがさらに好ましい。
【0088】
したがって、本発明において、ポリペプチドは変異導入や保存的置換をされていてもよい。かかる変異は、置換、挿入、欠失のいずれの変異であってもよい。かかる変異導入の方法は、当該技術分野において周知であり、特定の方法に縛られない。保存的置換とは、元のアミノ酸と置換されるアミノ酸との親水性指数及び/又は疎水性指数が上記のように類似している置換をいい、サイレントな修飾の典型例である。かかる保存的置換の例は、当業者に周知であり、例えば、次の各グループ内での置換:アルギニンとリジン;グルタミン酸とアスパラギン酸;セリンとスレオニン;グルタミンとアスパラギン;バリン、ロイシン、及びイソロイシン、などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0089】
従って、変異CDR及び抗体は、本発明のCDR及び抗体の定義内に含まれる;すなわち、本発明の抗体は、1つ以上のCDRにおいて、アミノ酸修飾を含み得る。さらに、以下で概説するとおり、アミノ酸修飾は、CDR外の任意の領域(フレームワーク及び定常領域を含む)において、独立して任意選択でなされ得る。
【0090】
いくつかの実施態様において、CTxに対して特異的な変異抗体を記載する。この抗体は6つのCDRからなり、ここで、この抗体の各CDRは、それぞれ独立して、上記の各アミノ酸配列と0、1または2個のアミノ酸置換により異なり得る。翻ってFR領域においては、そのアミノ酸配列が比較的抗体の結合特異性に影響しないことから、より広範な変異、例えば親FR領域配列と約80%、85%あるいは90%の同一性となる変異を導入することができる。
【0091】
上記で概説する修飾に加えて、他の修飾がなされ得る。例えば、分子は、VHドメインとVLドメインを連結するジスルフィド架橋の組込みにより安定化され得る(Reiter et al.,1996,Nature Biotech.14:1239-1245、参照によりその全体が援用される)。さらに、以下で概説するようになされ得る抗体の様々な共有結合修飾が存在する。
【0092】
抗体の共有結合修飾は、本発明の範囲内に含まれ、常にではないが通常は、翻訳後に行われる。例えば、選択された側鎖またはN末端若しくはC末端残基と反応可能な有機誘導体化剤を抗体の特定のアミノ酸残基と反応させることにより、複数のタイプの抗体共有結合修飾が分子に導入される。
【0093】
最も一般的には、システイニル残基が、クロロ酢酸またはクロロアセトアミドなどのα-ハロアセテート(及び対応するアミン)と反応して、カルボキシメチルまたはカルボキシアミドメチル誘導体を生成する。システイニル残基はまた、ブロモトリフルオロアセトン、α-ブロモ-β-(5-イミドゾイル)プロピオン酸、クロロアセチルホスフェート、N-アルキルマレイミド、3-ニトロ-2-ピリジルジスルフィド、メチル 2-ピリジルジスルフィド、p-クロロメルクリベンゾアート、2-クロロメルクリ-4-ニトロフェノール、またはクロロ-7-ニトロベンゾ-2-オキサ-1,3-ジアゾールなどとの反応により、誘導体化されてよい。
【0094】
ヒスチジル残基は、ジエチルピロカーボネートとpH5.5~7.0で反応させることにより誘導体化される。なぜなら、この薬剤は、ヒスチジル側鎖に対して比較的特異的だからである。パラ-ブロモフェナシルブロミドも有用である;反応は、pH6.0の0.1Mカコジル酸ナトリウム中で実施されることが好ましい。
【0095】
リジニル(lysinyl)及びアミノ末端残基は、コハク酸または他のカルボン酸無水物と反応する。この薬剤を用いた誘導体化は、リジニル残基の電荷を逆転させる効果を有
する。α-アミノ含有残基を誘導体化するために適した他の薬剤は、メチルピコリンイミデートなどのイミドエステル;ピリドキサールホスフェート;ピリドキサール;クロロボロヒドリド;トリニトロベンゼンスルホン酸;O-メチルイソウレア;2,4-ペンタンジオン;及びグリオキシル酸とのアミノ基転移酵素触媒反応が挙げられる。
【0096】
アルギニル残基は、1つまたは複数の従来の試薬との反応により修飾され、これらのなかには、フェニルグリオキサール、2,3-ブタンジオン、1,2-シクロヘキサンジオン、及びニンヒドリンがある。アルギニン残基の誘導体化は、グアニジン官能基の高いpKaにより、反応がアルカリ条件で実施されることを必要とする。さらに、これらの試薬は、リジンの基、及びアルギニンイプシロンアミノ基と反応してよい。
【0097】
チロシル残基の特定の修飾は、チロシル残基にスペクトル標識を導入することに特に関心がある場合には、芳香族ジオゾニウム化合物またはテトラニトロメタンと反応させることによりなされてよい。最も一般的には、N-アセチルイミドゾール及びテトラニトロメタンを用いて、それぞれ、O-アセチルチロシル種及び3-ニトロ誘導体を形成する。チロシル残基は、125Iまたは131Iを用いてヨウ素化して、ラジオイムノアッセイ、クロラミンT法(適しているとして上記に記載したもの)で使用するための標識されたタンパク質を調製する。
【0098】
カルボキシル側鎖基(アスパルチルまたはグルタミル)は、カルボジイミド(R’-N=C=N-R’)[式中、R及びR’は、任意選択で異なるアルキル基である]との反応により選択的に修飾され、例えば、1-シクロヘキシル-3-(2-モルホリニル-4-エチル)カルボジイミド、1-エチル-3-(4-アゾニア-4,4-ジメチルペンチル)カルボジイミドなどである。さらに、アスパルチル及びグルタミル残基は、アンモニウムイオンとの反応によりアスパラギニル及びグルタミニル残基に変換される。
【0099】
二官能性剤を用いた誘導体化は、以下に記載の方法に加えて様々な方法で使用するため、水不溶性のサポートマトリックスまたは表面への抗体の架橋に有用である。一般的に使用される架橋剤としては、例えば、1,1-ビス(ジアゾアセチル)-2-フェニルエタン、グルタルアルデヒド、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、例えば、4-アジドサリチル酸とのエステル、ホモ二官能性イミドエステル(3,3’-ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)などのジスクシンイミジルエステルを含む)及び二官能性マレイミド(ビス-N-マレイミド-1,8-オクタンなど)が挙げられる。メチル-3-[(p-アジドフェニル)ジチオ]プロピオイミデートなどの誘導体化剤は、光の存在下で架橋を形成できる光活性化可能(photoactivatable)な中間体を生成する。あるいは、サイノモルガソジェン(cynomolgusogen)ブロミド活性化炭水化物などの反応性水不溶性マトリックス及び反応性基質(U.S.特許No.3,969,287;3,691,016;4,195,128;4,247,642;4,229,537;及び4,330,440(全て参照により援用される)に記載のもの)がタンパク質固定化に用いられる。
【0100】
グルタミニル及びアスパラギニル残基は、それぞれ、対応するグルタミル及びアスパルチル残基に頻繁に脱アミノ化される。あるいは、これらの残基は、中程度の酸性条件下で脱アミド化される。これらの残基のいずれの形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【0101】
他の修飾として、プロリン及びリジンのヒドロキシル化、セリルまたはスレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リジン、アルギニン及びヒスチジン側鎖のα-アミノ基のメチル化(T.E.Creighton、Proteins:Structure and Molecular Properties,W.H.Freeman&Co.,San Francisco,pp.79-86[1983]、参照によりその全体が援用される)、N-末端アミンのアセチル化、及びC末端カルボキシル基のアミド化が挙げられる。
【0102】
さらに、当業者に理解されるように、標識化(蛍光、酵素、磁気、放射性などを含む)は全て抗体(及び本発明の他の組成物)に追加され得る。
【0103】
本発明は、それぞれ特定のCDRセット(上記で概説するように、いくつかのアミノ酸置換を含む)を有する多数の抗体を提供する。上記で概説するように、抗体は、6つのCDRのセット、可変領域、または全長の重鎖及び軽鎖(定常領域を含む)により定義され得る。さらに、上記で概説するように、アミノ酸置換がなされてもよい。一般に、CDR内の変化との関連で、アミノ酸修飾は、CDRの長さが比較的短いことに起因して、なされ得るアミノ酸修飾の数に関して通常記載される。これは、可変、定常または全長配列に導入され得るアミノ酸修飾の数の議論にも適用できる一方、変化の数に加えて、「%同一性」に関してこれらの変化を定義することも適切である。従って、本明細書に記載されるように、本発明内に含まれる抗体は、本明細書に列挙した配列番号に記載の配列と80、85、90、95、98または99%同一である。
【0104】
本発明は、本発明の抗体群から選択される任意の抗体の製造方法をさらに提供する。これらの方法は、本発明の抗体をコードする、1つ以上の単離された核酸を含む宿主細胞を培養する工程を含む。当業者に理解されるように、これは、抗体の特性に応じて、様々な方法で実施され得る。いくつかの実施態様において、本発明の抗体が全長の従来の抗体である場合、例えば、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域である場合には、例えば、抗体が製造され、単離可能な条件下で実施される。
【0105】
一般に、本発明の抗体をコードする核酸を提供する。このようなポリヌクレオチドは、重鎖及び軽鎖それぞれの可変領域及び定常領域の両方をコードするものであるが、本明細書に記載の組成物に従って、他の組合せも本発明により企図される。本発明は、開示するポリヌクレオチド由来のオリゴヌクレオチド断片、及びこれらのポリヌクレオチドと相補的な核酸配列も意図する。
【0106】
ポリヌクレオチドはRNAの形態であってもDNAの形態であってもよい。DNA、cDNA、ゲノムDNA、核酸アナログ及び合成DNAの形態であるポリヌクレオチドは、本発明の範囲内である。DNAは二本鎖であっても一本鎖であってもよく、一本鎖の場合には、コーディング(センス)鎖または非コーディング(アンチセンス)鎖であってよい。ポリペプチドをコードするコーディング配列は、本明細書で提供するコーディング配列と同一であってもよく、または異なるコーディング配列であって、遺伝コードの冗長性または縮重の結果として、本明細書で提供するDNAと同一のポリペプチドをコードする配列であってもよい。
【0107】
いくつかの実施態様において、本発明の抗体をコードする1つ以上の核酸は、発現ベクターに組み込まれ、当該発現ベクターは、導入される宿主細胞の染色体外であるか、またはそのゲノム中にインテグレートされるよう設計され得る。発現ベクターは、任意数の適切な制御配列(転写及び翻訳調節配列、プロモーター、リボソーム結合部位、エンハンサー、複製起点などが挙げられるが、これらに限定されない)または他の要素(選択遺伝子など)を含むことができ、これらは全て、当分野でよく知られるように操作可能に連結される。いくつかの場合、2つの核酸を用いて、それぞれを異なる発現ベクターに入れるか(例えば、第一の発現ベクターに重鎖、第二の発現ベクターに軽鎖)、あるいはそれらを同一の発現ベクターにいれることができる。制御配列の選択を含む、1つ以上の発現ベクターの設計は、宿主細胞の選択、所望するタンパク質の発現レベルなどの因子によって決まり得ることが当業者に理解されるだろう。
【0108】
一般に、選択される宿主細胞に適した任意の方法(例えば、トランスフォーメーション、トランスフェクション、エレクトロポレーション、インフェクションなど)を用いて、1つ以上の核酸が1つ以上の発現調節要素に操作可能に連結されるように(例えば、ベクターにおいて、細胞でのプロセスにより作出される構築物において、宿主細胞のゲノムにインテグレートされて)、核酸及び/または発現が適した宿主細胞に導入され、組換え宿主細胞が作出される。得られた組換え宿主細胞は、発現に適した条件下(例えば、インデューサーの存在下、適した非ヒト動物中、適した塩、増殖因子、抗生物質、栄養補助剤などを添加した培地など)で維持でき、それによりコードされた1つ以上のポリペプチドが製造される。いくつかの場合において、重鎖が1つの細胞で製造され、軽鎖が別の細胞で製造される。
【0109】
発現のための宿主として利用可能な哺乳動物細胞株は当分野で既知であり、American Type Culture Collection(ATCC),Manassas,VAから入手可能な多くの不死化細胞株が含まれ、これには、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HEK 293細胞、NSO細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞ガン細胞(例えば、Hep G2)、及び多数の他の細胞株が挙げられるが、これらに限定されない。細菌、酵母、昆虫及び植物を含む(これらに限定されない)非哺乳動物細胞を用いて、組換え抗体を発現させることもできる。いくつかの実施態様において、抗体は、ウシやニワトリなどのトランスジェニック動物において製造することができる。
【0110】
抗体分子生物学、発現、精製及びスクリーニングの一般的な方法は、例えば、Kontermann & Dubelにより編集されたAntibody Engineering,Springer,Heidelberg,2001 and 2010 Hayhurst & Georgiou,2001,Curr Opin Chem Biol 5:683-689;Maynard & Georgiou,2000,Annu Rev Biomed Eng 2:339-76;及びMorrison,S.(1985)Science 229:1202に記載される。
【0111】
さらに本発明は、本発明の抗体群から選択されるいずれか1種の抗体または抗体の組合せを含む、コレラ毒素検出用イムノクロマトキットを提供する。かかるキットの一態様について説明すると、ニトロセルロース膜のような多孔性素材からなるマトリックス上に、捕捉抗体を線状に固相化した検出部分と、その上流側に、標識した検出抗体(標識抗体)を担持した標識試薬ゾーンを含む。通常、標識試薬ゾーンは、標識した検出用抗体を担持した多孔性のパッドにより構成される。マトリックスの上流端には、展開液を貯蔵した展開液槽が設けられている。さらに、通常、上記検出ゾーンの下流に、標識抗体の展開を確認するために抗標識抗体をライン状に固相化した展開確認部分と、さらにその下流に、展開液を吸収するための多孔性の吸収パッドが設けられた展開液吸収部分が設けられている。さらに、標識が酵素標識である場合には、標識試薬ゾーンよりも上流に、標識酵素の基質を担持した基質ゾーンが設けられる。
【0112】
使用時には、検体を標識試薬ゾーンに添加し、押し込み部を加圧して突起部を移動させることにより、展開液パッドを展開液槽に挿入し、展開液パッドを通じて展開液をマトリックスに供給する。展開液が基質ゾーンを通過する際に基質が展開液中に溶出され、基質を含む展開液が流動する。展開液が標識試薬ゾーンを通過する際に、標識抗体と検体とが展開液中に溶出され、基質、標識抗体及び検体を含む展開液が流動する。検体中にCTXが含まれる場合には、CTXと標識抗体とが、抗原抗体反応により結合し、これらが検出ゾーンに到達すると、検出ゾーンにおいて、固相化抗体とCTXとが抗原抗体反応により結合する。その結果、CTXを介して標識抗体が検出ゾーンに固定される。こうして検出ゾーンにおける標識を測定することにより、CTXが検出されることになる。検体中にCTXが含まれていない場合には、標識抗体は検出ゾーンに固定されず、さらに下流に移動するため、検出ゾーンにおいて標識は検出されない。なお、検出ゾーンの下流の展開液確認部には、抗標識抗体が固相化されているため、標識抗体は展開液確認部に固定されることになる。よって、展開液確認部に標識が検出された場合、展開液が正しく展開されたことを意味する。展開液は、最終的に、その下流の吸収パッドに吸収される。
【0113】
また、本発明は、上記本発明の方法に用いるためのキットを提供する。本発明のキットは、少なくとも本発明のモノクローナル抗体又はその組み合わせを含む。
【0114】
サンドイッチ法を検出原理とする方法を利用する場合には、固相化した抗原捕捉用抗体と検出用抗体の少なくとも一方、好ましくは両方の抗体が、本発明のモノクローナル抗体である。さらに、標準検体試薬(各濃度) 、対照試薬、試料の希釈液、希釈用カートリッジ、洗浄液などを組み合わせることができる。酵素標識を利用した場合には、標識の検出に必要な基質や反応停止液などを含めることができる。検出用抗体を標識しない場合には、例えば、当該検出用抗体に結合する物質を標識したものをキットに含めることができる。
【0115】
サンドイッチ法として、イムノクロマトグラフィーを採用する場合には、抗原捕捉用抗体が検出ゾーンに固定化された膜担体と標識された検出用抗体を担持しているパッドとを備えたデバイスをキットに含めることができる。当該デバイスは、展開液パッドや吸収パッドなど、イムノクロマトグラフィーに適したその他の構成要素を備えることができる。
【0116】
本発明のキットには、さらに、当該キットの使用説明書を含めることができる。
【実施例0117】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0118】
1.抗体の作製
下記培地を用いた:
FBS(-)培地:DMEM(ナカライ)500 mL、100mM ピルビン酸ナトリウム 5mL、MEM非必須アミノ酸溶液(NEAA)(ナカライ) 5mL、2-メルカプトエタノール 0.5mL、ペニシリンストレプトマイシン混合溶液(ナカライ)5mL
FBS(+)培地:FBS(-)培地に10% FBS(Invitrogen)を添加;
HAT培地:FBS(+)培地 250 mL、HAT(×50 conc. MPバイオ)5 mL、IL-6(PeproTech 組換えマウスIL-6)10 ng/mL;
HT D-MEM培地:DMEM(ナカライ、高グルコース)500 mL、100mM ピルビン酸ナトリウム 5mL、MEM非必須アミノ酸溶液(NEAA)(ナカライ)5 mL、2-メルカプトエタノール0.5 mL、FBS(Invitrogen)50 mL、IL-6 もしくはBM Condimed H 5 mL、HT(×50 conc. MPバイオ)5 mL、ペニシリンストレプトマイシン混合溶液(ナカライ)5 mL
HyColne LM,ADCF Mab:HyColne LM ADCF MAb 1000mL、ペニシリンストレプトマイシン混合溶液(ナカライ)10.1mL(100×)
【0119】
1-1.細胞融合
コレラトキシンBサブユニットCTxBをSigma Adjuvant systemと1:1の比率で混合した抗原液をBALB/cマウスの足蹠に2週間間隔で2回接種して、マウスを免疫した(図1)。FBS(+)培地にマウスから採取したリンパ節・脾臓を添加した。5mLのFBS(+)培地が入った5cm径のシャーレに組織を入れ、組織についている脂肪を除去した後、100μmセルストレイナーとディスポシリンジのピストンで脾細胞またはリンパ節を濾し出した。脾細胞またはリンパ節細胞とマウス骨髄腫細胞P3U1を混合し、融合細胞をHAT培地に希釈し、96ウェルプレートに200μL/ウェルで播種した。10% CO 37℃で培養し、2~3日おきにHAT培地を100μLずつ交換してコロニーが出現、増殖するまで培養して、ハイブリドーマ10種を得た。10種のハイブリドーマについて、2G6、3C3、3F3、3F7、4E6、5F2、8A5、8B3、10B8、19F5と呼称し、それぞれのハイブリドーマ得られた抗体も同じ呼称を用いた。スキームを図1に示す。
【0120】
1-2.一次スクリーニング(ELISA)
抗原であるCTxBをPBSで濃度調製し、ネガティブコントロールである凍結乾燥したマウス腸内細菌を炭酸-重炭酸緩衝液で溶解した(マウス腸内細菌死菌体:1.0mg/mL、CTxB:5.0μg/mL)。抗原とマウス腸内細菌死菌体をそれぞれ96ウェルプレートに100μL/ウェルずつ添加し、4℃で一晩静置し、固層化した。これらに1%BSA-PBSを170μL/ウェルずつ添加し、室温で2時間静置して、ブロッキングした後、250μL PBS-Tで3回洗浄した。これらに、各ハイブリドーマ培養上清を50μL/ウェルずつ添加し、室温で2時間静置した後、250μL PBS-Tで3回洗浄した。さらに、1%BSA-PBS-Tで希釈した抗マウスIgG (全分子)-HRP(1031-05, Southern biotech)を100μL/ウェルずつ添加し37℃で1時間静置し、250μL PBS-Tで3回洗浄した。その後、TMB(KPL 50-76-03 TMB Microwell Peroxidase Substrate System)を100μL/ウェルずつ添加し、室温で正確に2分後に0.5N HClを50μL/ウェルで播種したものを、分光光度計を用いて450nmの吸光度を測定した。結果を図2に示す。各ハイブリドーマについて、左の棒がCTxB、右の棒が腸内細菌死菌体の吸光度を示す。腸内細菌死菌体と比較して、CTxBに対する極めて高い反応性を示した抗体は、2G6、3F7、4E6、5F2および8A5の5種であり、19F5を次点で陽性とした。
【0121】
1-3.クローニング(限界希釈法)
6種のハイブリドーマ株を限界希釈法でクローニングし、0.5、1、2細胞/200μL/ウェルとなるようにHAT培地で希釈して96ウェルプレートに播種した。上清(100μL/ウェル)を利用してスクリーニング(ELISA)を行った。スクリーニング陽性のウェルがシングルコロニーだった場合は、HT培地でスケールアップして凍結ストックを作製し、必要に応じて培養上清もしくはマウス腹水で抗体を大量調製し、シングルコロニーでなかった場合はクローニングを繰り返した。
【0122】
1-4.モノクローナル抗体精製
HT D-MEM培地を恒温槽で37℃に温め、凍結したハイブリドーマを37℃恒温槽で融解した。融解したハイブリドーマを10mLのHT D-MEM培地に添加した。遠心分離(1,200 rpm, 3分)をした後、上清を除去し、ペレットをほぐし、10mLのHT D-MEM培地にて懸濁した。10cmセルディッシュに細胞懸濁液を添加し、37℃で培養した。ハイブリドーマの増殖を確認後、細胞を懸濁し、10mLのHT D-MEM培地が添加されているフラスコに細胞懸濁液を添加して、37℃で培養した。ハイブリドーマの増殖を確認後、細胞を懸濁し、40mLのHT D-MEM培地が添加されているフラスコに細胞懸濁液を10mL添加し、37℃で培養した。ハイブリドーマの増殖を確認後、上清を除去し、15mLのPBSで2回洗浄した後、50mLのADCF MAbを添加し、37℃で培養した。培養2日後の上清を回収し、50mLのADCF MAbを添加後、37℃で培養した。回収した上清は4℃で保存した。
【0123】
培養液を遠心(1,200 rpm, 5分)して上清を回収し、0.45μmフィルターを用いてろ過した。Protein G Sepharoseによるアフィニティークロマトグラフィにて抗体を精製して、単離した。精製抗体の溶出フラクション液の吸光度(A280)を超微量分光光度計(NanoDrop(商標) Lite 、Thermo Fisher Scientific)で測定した。プールした回収フラクションをAmicon Ultra-15 30K(UFC903024, Merck)に添加し、PBSを4~5mL添加し濃縮遠心した後、吸光度(A280)を同様に測定して、濃度を算出した。
【0124】
1-5.精製抗体の反応性確認試験(ELISA)
抗原としてCTxBおよびCTxを炭酸-重炭酸緩衝液で溶解し、濃度調製した(CTxB:0.1、1.0 μg/mL、CTx:0.1、1.0 μg/mL)。抗原溶液をそれぞれ96ウェルプレートに100μL/ウェル添加し、4 ℃で一晩静置して固相化した。溶液を廃棄し、1%BSA-PBSを96ウェルプレートに170μL/ウェル添加し、室温で2時間静置し、ブロッキングした。PBS-Tで洗浄した後、ハイブリドーマ培養上清を50μL/ウェル添加し、室温で2時間静置した後、PBS-Tで洗浄した。1%BSA-PBS-Tで希釈した抗マウスIgG(全分子)-HRP(1031-05, Southern biotech)を100μL/ウェル添加し37℃で1時間静置し、PBS-Tで洗浄した。TMB(KPL 50-76-03 TMB Microwell Peroxidase Substrate System)を100μL/ウェル添加し、室温で正確に2分後に0.5N HClを50μL/ウェルで播種し、分光光度計を用いて450nmの吸光度を測定した。結果を図3(CTxB)および図4(CTx)に示す。各抗体について、左の棒が1.0μg/mL、右の棒が0.1μg/mLの吸光度を示す。いずれの抗体もCTxBに対しては高濃度で高い反応性を示したが、低濃度では全体的に反応性が低下し、特に19F5は低濃度でほとんどCTxBに対する反応性が認められなかった。また、CTxに対しては、とりわけ19F5の反応性の低さが顕著であった。
【0125】
1-6.交差性試験(ELISA)
下記の各熱死菌体を作製し(60℃、60分)、凍結乾燥した。
C.jejuni, P.aeruginosa, S.liquefaciens, E.coli DH5α, S.Enteritidis, B.vulgatus, L.gasseri, P.mirabilis, C.freundii, E.freundii, K.pneumoniae, K.aerogenes, E.cloacae, E.faecalis
抗原ならびに凍結乾燥した各熱死菌体を炭酸-重炭酸緩衝液で溶解・濃度調製した(CTxB:1.0μg/mL、CTx:1.0μg/mL、各種細菌死菌体:1.0mg/mL)。96ウェルプレートに100μL/ウェル添加し、4 ℃で一晩静置して固相化した。溶液を廃棄し、1%BSA-PBSを96ウェルプレートに170μL/ウェル添加し、室温で2時間静置し、ブロッキングした。PBS-Tで洗浄した後、ハイブリドーマ培養上清を50μL/ウェル添加し、室温で2時間静置した後、PBS-Tで洗浄した。1%BSA-PBS-Tで希釈した抗マウスIgG(全分子)-HRP(1031-05, Southern biotech)を100μL/ウェル添加し37℃で1時間静置し、PBS-Tで洗浄した。TMB(KPL 50-76-03 TMB Microwell Peroxidase Substrate System)を100μL/ウェル添加し、室温で正確に2分後に0.5N HClを50μL/ウェルで播種し、分光光度計を用いて450nmの吸光度を測定した。抗原であるCTxBおよびCTxでは反応があったが、上記いずれの菌体でも反応性は認められなかった。
【0126】
1-7.サンドイッチELISA
上記1-4で得られた6種の陽性抗体(2G6、3F7、4E6、5F2、8A5および19F5)の様々な組み合わせを用いてCTxBを検出するサンドイッチELISA試験を行った。まず、抗体の標識化を行った。HRP Conjugation Kit(abcam AB102890-300)中のModifier溶液をモノクローナル抗体(>1mg/mLF)溶液に添加し混合した(1μL modifier/10μL抗体)。前記Modifier溶液が添加されたモノクローナル抗体をHRPミックスに添加し混合した。抗体-HRPミックス溶液を、遮光、20~25℃、3時間~一晩静置し、反応させた。Quencher溶液を添加し、遮光、20~25℃で、30分反応させた(1μL quencher/10μL抗体)。
【0127】
次いで、捕捉抗体の固層化し、標識抗体の反応を調べた。モノクローナル抗体を炭酸-重炭酸緩衝液で2.0μg/mL濃度になるように調製した。96ウェルプレートに100μL/ウェル添加し、4℃で一晩静置した。300μL PBS-Tで3回洗浄し、捕捉抗体溶液を取り除いた。1%BSA-PBSを96ウェルプレートに200μL/ウェル添加し、室温で2時間、または4℃で一晩静置した。1%BSA-PBSTで希釈調製した抗原CTxB(0.1μg/mL)溶液を100μL/ウェル添加し、37℃で90分反応させた。液を取り除いた後、300μL PBS-Tで3回洗浄した。1%BSA-PBSTで希釈調製した0.5μg/mLのHRP標識の標識抗体溶液を100 μL/ウェル添加し、室温で2時間静置し反応させた。液を取り除いた後、300μL PBS-Tで3回洗浄した。TMBを100μL/ウェル添加し、室温で正確に2分後に0.5N HClを50μL/ウェル添加し、分光光度計を用いて450nmの吸光度を測定した。
【0128】
標識抗体として5F2-HRPと19F5-HRPを用いた場合には、固層化抗体が何であれ、抗原は検出できなかった。また、固層化抗体として5F2を用いた場合とネガティブコントロールでは、標識化抗体が何であれ、抗原は全く検出できなかった。固層化抗体として19F5を用いた場合には、標識抗体として3F7-HRPまたは8A5-HRPを用いた場合には抗原が検出できたが、その他の標識抗体では抗原が検出できなかった。2G6、3F7、4E6および8A5の間では、標識抗体と固層化抗体とが同一抗体である場合も含め、すべての組合せで抗原を検出可能であった。
【0129】
2.抗体アフィニティ解析
Biacore T200(Cytiva)を用いて表面プラズモン共鳴法により抗体のアフィニティを測定した。Mouse Antibody Capture Kit(Cytiva)を用いてCM5チップに抗マウスIgG抗体を固相化し、各種抗CTxモノクローナル抗体を捕捉した。CTxBを含むランニング緩衝液(0.1M HEPES、1.5M NaCl、 30mM EDTA、0.5% v/v Surfactant P 20)を30μL/分の流速で添加し(アソシエーションフェーズ)、センサーチップにランニング緩衝液を流入した(ディソシエーションフェーズ)。結合速度定数(Ka)、解離速度定数(Kd)、平行解離定数(KD)はBIAEvaluation 3.1により算出した。結果を図5に示す。2G6、3F7、4E6および8A5の4種の抗体はいずれも極めて低いKDを示した。
【0130】
3.イムノクロマト
3-1.イムノクロマトキットの作成
2G6、3F7、4E6および8A5の4種の抗体について、決定した被覆タンパク量の濃度に調製した。至適pHのKHPOを分注し、直径40nmの金コロイド溶液(B.B.International)を加え撹拌し静置した。1% PEG20,000と10% BSAを加えた後、遠心分離して上清を取り除き、沈殿を超音波で分散させた。これに、金コロイド保存バッファーを添加し、遠心分離をする操作を繰り返し行い、抗体感作金コロイド溶液を得た。
【0131】
テストラインに用いる抗体として2G6、3F7、4E6および8A5の4種を調製し、それぞれニトロセルロースのメンブレン(150CNPH -N-SS40)へ塗布した。塗布後、50℃で30分間熱乾燥した。乾燥終了後、ブロッキング及び安定化処理を行い乾燥して、抗体固相化メンブレンを得た。次いで、抗体感作金コロイド溶液、DWおよび金コロイド塗布バッファーを1:1:2の割合で混合した。Glass Fiber Diagnostic Pad(MILLIPORE)に、混合液を均等に塗布し、デシケーターにて減圧乾燥を行って、コンジュゲートパッドを得た。
【0132】
試作品(フルストリップ)へ水のみあるいはCTxB 0.1、1、10および100ng/mL水溶液を100μLずつ滴下して、約20分後のライン発色を確認した。結果を図6に示す。いずれのフルストリップでも、10~100ng/mLで明瞭な発色が確認でき、1ng/mLでもわずかに発色が確認できた。
【0133】
3-2.CTxBおよびLTBを利用したイムノクロマトの検証
1%NP40-PBSにCTxBおよび大腸菌易熱性エンテロトキシンBサブユニット(LTB)をそれぞれ10ng/mLになるよう調製懸濁し、上記イムノクロマトキットの作成で得られたフルストリップへ100μLずつ滴下して、約20分後のライン発色を確認した。結果を図7に示す。いずれのフルストリップでも、CTxBは検出できたが、LTBは検出されなかった。
【0134】
3-3.展開液の検証
展開液1%NP40-PBSにCTxB、CTxおよびLTBを各種濃度となるように調製懸濁し、イムノクロマト試薬(金コロイド:8A5, テストライン:8A5)にそれぞれ100μL展開し、20分後に判定を行った。結果を図8に示す。また、健常人便を1%NP40-PBSに懸濁し、CTxB、CTxおよびLTBを各種濃度となるように調製懸濁した疑似検体を利用して、イムノクロマト試薬(金コロイド:8A5、テストライン:8A5)に100μL展開し、20分後に判定を行った。結果を図9に示す。テストラインおよびコントロールのいずれにもバンドが確認できたので、問題なく展開が行われたと判断した。
【0135】
3-3.イムノクロマト試薬交差性試験
下記菌について、1%NP40-PBSにてMcFarland=0.5(約1.0x10cfu/mL)に調製し、イムノクロマト試薬(金コロイド:8A5、テストライン:8A5)に100μL展開し、20分後に判定を行い、交差反応性を検証した。いずれの菌にも、イムノクロマト試薬(金コロイド:8A5、テストライン:8A5)は交差反応性を示さなかった。
C. jejuni, C. coli, S. typhimurium, C. difficile, P. mirabilis, P. aeruginosa B. cereus, C. freundii, S. aureus, K. pneumonia, K. aerogenes, S. liquefaciens, E. cloacae, E. faecalis, E hermannii, S. epidermidis, E coli O114, C tetani
【0136】
4.アミノ酸および遺伝子配列解析
各種ハイブリドーマ(10細胞)よりRNAを抽出後、cDNAの合成を行った。cDNAを鋳型として縮重プライマーによるVH、VLの増幅・クローニングを実施し、VH、VLの遺伝子配列解析を行った。結果は各配列表に示す通りである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
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