(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023104417
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】経費支出適正判定方法、経費支出適正判定プログラム及び経費支出適正判定システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 40/12 20230101AFI20230721BHJP
【FI】
G06Q40/00 400
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022005388
(22)【出願日】2022-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】712005584
【氏名又は名称】株式会社Donuts
(74)【代理人】
【識別番号】230116539
【弁護士】
【氏名又は名称】恩田 俊明
(72)【発明者】
【氏名】西村 啓成
【テーマコード(参考)】
5L055
【Fターム(参考)】
5L055BB63
(57)【要約】
【課題】従来技術では、当該顧客の取引相手(場合によっては実在するか否かも含め)や取引の適否は質問への善意の回答に依存せざるを得ず、経費支出の不正などを捕捉することは難しかった。
【課題を解決するための手段】取引相手を識別する情報である取引相手識別情報を取得する識別情報取得ステップと、取引相手に関連する経費支出に関する情報である経費支出情報を取得する経費支出情報取得ステップと、取得した経費支出情報の全部又は一部を、前記取引相手に対して出力する出力ステップと、出力ステップの出力への応答に応じて経費支出の適否を判定するための判定ステップと、をコンピュータを用いて実行する経費支出適正判定方法などを提案する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
取引相手を識別する情報である取引相手識別情報を取得する識別情報取得ステップと、
取引相手に関連する経費支出に関する情報である経費支出情報を取得する経費支出情報取得ステップと、
取得した経費支出情報の全部又は一部を、前記取引相手に対して出力する出力ステップと、
出力ステップの出力への応答に応じて経費支出の適否を判定するための判定ステップと、
をコンピュータを用いて実行する経費支出適正判定方法。
【請求項2】
識別情報取得ステップは、取引相手から提示された情報に基づいて取引相手識別情報を取得する被提示情報依存サブステップをさらに有する請求項1に記載の経費支出適正判定方法。
【請求項3】
経費支出情報は、経費を支出した日付を含む情報であって、
出力ステップは、経費支出情報とともに、前記日付に応じたメッセージを付加するメッセージ出力サブステップをさらに有する請求項1又は2に記載の経費支出適正判定方法。
【請求項4】
経費支出情報は、経費を支出した担当者を含む情報であって、
判定ステップでの判定結果に応じて、前記担当者に宛てて更なる判定のために必要な情報である補充情報を要求する補充情報要求ステップをさらに有する請求項1から3のいずれか一に記載の経費支出適正判定方法。
【請求項5】
取引相手を識別する情報である取引相手識別情報を取得する識別情報取得ステップと、
取引相手に関連する経費支出に関する情報である経費支出情報を取得する経費支出情報取得ステップと、
取得した経費支出情報の全部又は一部を、前記取引相手に対して出力する出力ステップと、
出力ステップの出力への応答に応じて経費支出の適否を判定するための判定ステップと、
をコンピュータにて実行可能とする経費支出適正判定プログラム。
【請求項6】
取引相手を識別する情報である取引相手識別情報を取得する識別情報取得部と、
取引相手に関連する経費支出に関する情報である経費支出情報を取得する経費支出情報取得部と、
取得した経費支出情報の全部又は一部を、前記取引相手に対して出力する出力部と、
出力ステップの出力への応答に応じて経費支出の適否を判定するための判定部と、
を有する経費支出適正判定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接待交際費をはじめとする経費の適正な支出を判定する方法などに関する。
【背景技術】
【0002】
事業者における会計処理においては、各取引に関する請求書や領収証等の証票を資料として取得し、当該取得内容に基づいた各種処理が行われる。しかし、個々の証票の内容が当該会計処理を行うに足りる内容を含んでいるかの判断や、係る内容が適正なのか、取引担当当事者でない会計担当者では判定が付きかねる場合も多く、その都度担当者に確認をしなければならない場合も少なくないことから、効率的な処理を可能とするための技術が広く知られ、様々な事業領域において用いられてきた。
【0003】
例えば特許文献1には、仕訳処理を行うのに必要な質問を複数提示し、当該複数への回答を受け付けることにより複式簿記の仕訳処理を行う技術が開示されている。取引担当者の回答内容を用いるこのような技術により、初心者であっても容易に仕訳処理に携わることができたり、会計の知識がある者であっても、例外的な処理を要する場合の担当者とのコミュニケーションの円滑化及び問題解決の迅速化を実現したりすることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ただ、このような従来技術はあくまで会計事務所で用いられるものであり、質問に回答するのは顧客である事業者であるため、当該顧客の取引相手(場合によっては実在するか否かも含め)や取引の適否は質問への善意の回答に依存せざるを得ず、経費支出の不正などを捕捉することは難しかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上のような課題を解決すべく、本発明は、取引相手を識別する情報である取引相手識別情報を取得する識別情報取得ステップと、取引相手に関連する経費支出に関する情報である経費支出情報を取得する経費支出情報取得ステップと、取得した経費支出情報の全部又は一部を、前記取引相手に対して出力する出力ステップと、出力ステップの出力への応答に応じて経費支出の適否を判定するための判定ステップと、をコンピュータを用いて実行する経費支出適正判定方法などを提案する。
【0007】
また上記発明に関連して、識別情報取得ステップが、取引相手から提示された情報に基づいて取引相手識別情報を取得する被提示情報依存サブステップをさらに有する経費支出適正判定方法なども提案する。
【0008】
また上記各発明に関連して、経費支出情報が経費を支出した日付を含む情報であって、出力ステップが、経費支出情報とともに、前記日付に応じたメッセージを付加するメッセージ出力サブステップをさらに有する経費支出適正判定方法なども提案する。
【0009】
また上記各発明に関連して、経費支出情報が、経費を支出した担当者を含む情報であって、判定ステップでの判定結果に応じて、前記担当者に宛てて更なる判定のために必要な情報である補充情報を要求する補充情報要求ステップをさらに有する経費支出適正判定方法なども提案する。
【0010】
さらに、上記各方法に関連したプログラムやシステムなどに関する発明も提案する。
【発明の効果】
【0011】
主に以上のような構成をとる本発明によって、経費支出の不正などを抑止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】実施形態1のシステムの機能ブロックの一例を示す図
【
図3】実施形態1のシステムの機能的な各構成をまとめて一のハードウェアとして実現した際の構成の一例を示す概略図
【
図4】実施形態1のシステムにおける処理の流れの一例を示す図
【
図5】実施形態2のシステムの機能ブロックの一例を示す図
【
図6】実施形態2のシステムにおける処理の流れの一例を示す図
【
図7】実施形態3のシステムの機能ブロックの一例を示す図
【
図8】実施形態3のシステムにおける処理の流れの一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
まず
図1を示す。
図1は本発明の概要を示す図である。同図に示されているように、本発 明は、一又は複数のサービスサーバ0101、0102と、所定の事業者において取引相手識別情報や経費支出情報の取得元となる端末である事業者端末0111、0112、サービスサーバにおける判定処理結果を前記事業者側において取得する端末である管理者端末0121,0122、あるいは当該各処理を確認する会計士等の外部専門家の管理する端末である外部専門家端末0131、あるいは取引相手の管理する端末である取引先端末0141,0142などとの間で行われるネットワークを介した情報の送受信を通じて実現されうる。
【0014】
なお、さきに述べたとおり、本発明は一又は複数のサービスサーバ0101、0102により実現されうる。複数のサービスサーバを用いる場合の具体例を上げると、事業者端末0111,0112から取得した取引相手識別情報を保持するクライアントデータサーバや、経費支出情報や経費支出適否の判定結果を保持する経費支出データサーバ、取引相手との情報の送受信や当該通信内容を踏まえた判定処理や当該判定の精度を向上させるための種々の処理を行うための判定サーバなどを相互にオンライン又はオフラインのネットワークを介して接続することで用いることが考えられる。
【0015】
次に、事業者端末や管理者端末については、その種別を特に限定することはなく、例えば、パソコン0111やスキャナ0112、スマートフォン0121、タブレット0122などが考えられ、その他にもスマートペンなどが考えられる。
【0016】
なお、ここまでは
図1を用いて、各種サービスサーバが管理者端末とは別個に構成され、ネットワークを介しクラウドコンピューティングの形式にて提供されているケースを想定した説明を行ったが、本発明はかかる使用形態に限られるものではない。すなわち、本発明の機能を実行可能なプログラムを管理者端末にインストールすることにより、本発明において提供可能な機能の全部又は一部の処理を管理者端末において実行する、いわゆるオンプレミス型の形態にて提供されてももちろんよい。また、ここで述べたようなプログラムが格納された記録媒体を用いることによっても実現可能である。
【0017】
以下、本発明の各実施形態について図面とともに説明する。まず実施形態と請求項の相互の関係は、以下のとおりである。まず、実施形態1は主に請求項1、2,5,6などに対応する。実施形態2は主に請求項3などに対応する。実施形態3は主に請求項4などに対応する。
【0018】
なお、本発明はこれらの実施形態に何ら限定されるものではなく、技術常識に従って特許請求の範囲の各請求項に記載の技術的思想を有し、その要旨を逸脱しない範囲内において、様々な態様で実施し得る。
【0019】
<<実施形態1>>
<概要>
図2は、本実施形態の経費支出適正判定システムの機能ブロックの一例を示す図である。同図において示されているように、本実施形態の「経費支出適正判定システム」0200は、「識別情報取得部」0201と、「経費支出情報取得部」0202と、「出力部」0203と、「判定部」0204と、を有する。
【0020】
なお、以下で詳しく説明する経費支出適正判定システムは、その機能の一又は複数の機能を複数の装置にて実現するようにも構成され得るものであって、その機能ブロックは、いずれもハードウェア又はソフトウェアとして実現され得る。コンピュータを用いるものを例にすれば、CPUやメインメモリ、GPU、TPU、画像メモリ、バス、二次記憶装置(ハードディスクや不揮発性メモリ)、キーボードやマイク、タッチパネル、タッチパネルをタッチするための電子ペンなどの各種入力デバイス、スピーカ、ディスプレイその他各種出力デバイス、その他の外部周辺装置などのハードウェア構成部、またその外部周辺装置用のインタフェース、通信用インタフェース、それらのハードウェアを制御するためのドライバプログラムやその他のアプリケーションプログラムなどが挙げられる。
【0021】
そしてメインメモリ上に展開したプログラムに従った演算処理によって、入力デバイスやその他インタフェースなどから入力されメモリやハードウェア上に保持されているデータなどが加工、蓄積されたり、前記各ハードウェアやソフトウェアを制御するための命令が作成されたりする。ここで、上記プログラムは、モジュール化された複数のプログラムとして実現されてもよいし、2以上のプログラムをクラウドコンピューティングその他の方法により組み合わせて一のプログラムとして実現されても良い。
【0022】
<機能的構成>
「識別情報取得部」0201は、取引相手を識別する情報である取引相手識別情報を取得するように構成される。取引相手を識別するための情報としては種々のものが考えられ、取引先の事業者名や部署、所在地、役職、職位、業務内容、過去の取引実績の有無やその取引日時及び内容、など取引相手を特定可能に識別する情報である場合のほか、業種、業態、事業規模、地域など取引相手を相対的に識別可能な情報である場合もある。そしてこれらの情報が、当該取引相手の連絡先となる情報(例えば、住所、電話番号、メールアドレス、SNSその他共通利用可能なシステムのアカウントIDなど)とともに識別情報として取得の対象となる。これらの情報を取得することで、日々の取引と、その取引相手とを紐付けて連絡可能な状態で記録することが可能になる。
【0023】
なお、取得する取引相手識別情報は、法人や組織に関する情報ではなく、取引担当者個人に関する情報である。企業間や法人間での取引であっても、日々の取引実務を担うのは担当者を始めとする個人である。そこで、個人を識別するための情報である取引相手識別情報を取得する構成を採用することにより、後述する経費支出の適正判断を支出対象の個人レベルで検証可能とすることができる。
【0024】
取引相手識別情報は、事業者の組織内において取引を担当する従業者による端末操作を通じて取得する構成が考えられ、当該取得にあたっては、端末操作を行った従業者を識別する従業者IDを紐付けて取得することが考えられる。当該構成を採用することにより、実態と異なる(場合によっては実在しない)取引先の取引相手識別情報の入力といった不正を抑止することが可能となる。
【0025】
ここで取引相手識別情報取得のさらなる具体例について説明する。ここでは、取引相手の経歴に関する情報として記録される経歴情報に基づいて取引相手識別情報を取得する。経歴情報は予め別の機会に取得されていることがあってもよく、より具体的には、名刺やメール、郵便物その他当該取引相手から交付又は提示された情報に基づき直接又は間接的に取引相手識別情報を取得する。名刺や郵便物のように紙面に印刷された文字情報からOCRその他の読取手段を用いて取得する場合のほか、それら読取処理の結果得られた情報やデジタル情報の連絡等を通じて取得した情報を取引相手識別情報として取得するような場合が想定される。これらの多様な仕組みに対応可能とすることにより、取引相手からの多様な情報提供の機会を効率的に活用し、識別情報取得の端緒とすることが可能となる。
【0026】
ちなみに、ここでいう取引相手とは、事業者外の個人であるとは限らず、事業者組織の内部の個人も取引相手に含まれうる。すなわち、「取引」とは経費支出の対象となる者に関連して金銭の支出を伴うものを広く意味する。当該構成を採用することで、事業者組織内部の個人に対する費用支出の適正をも確認することが可能になる。
【0027】
「経費支出情報取得部」0202は、取引相手に関連する経費支出に関する情報である経費支出情報を取得するように構成される。取引相手に関連する経費支出の一例としては、当該取引相手を対象とした接待交際費や、当該取引相手を取引相手とする備品購入費や旅費交通費、事業者組織内部の個人を対象とした福利厚生費などが考えられる。経費支出情報の内容としてはそれらの費用支出の事実に加え、支出した金額や費目の内訳、支出日時、支出先(取引相手の場合もあれば、取引相手に対する接待交際費における飲食店等取引相手以外の場合もある)、支出した事業者組織内担当者などの情報が含まれうる。
【0028】
経費支出情報の取得は、事業内組織の個人のうち当該経費を支出した者や当該個人から経費申請を受けた経理担当者などが管理する端末の操作を通じて行われる。具体的には、領収証やレシートその他取引内容が把握可能な証憑に記載された情報をOCRその他の読取手段を用いて取得する方法のほか、クレジットカードや電子現金、ポイント、オンライン決済その他オンライン上で確認可能な取引履歴に関する情報を種々の手段により取得する方法などが考えられる。多様な取得手段に対応可能な構成とすることにより、多様な決済手段に対応し、より経費支出の真正や適正を把握可能とすることができる。
【0029】
なお、経費支出情報を取得するにあたっては、当該経費支出が特定の取引相手と関連付けられていることが必要である。ここでいう関連付けとは、経費支出情報取得にあたり、識別情報取得部にて取得した取引相手識別情報のなかから、当該経費費出の相手となった取引相手の選択を受付る方法が考えられ、当該経費支出の態様に応じ複数の取引相手が選択される場合があってももちろんよい。経費支出情報の内容として取引相手の属性や人数等の情報を取得することにより、当該経費支出の適正判断を実態に即して柔軟に行うことが可能となる。
【0030】
「出力部」0203は、取得した経費支出情報の全部又は一部を、前記取引相手に対して出力するように構成される。ここでいう経費支出情報の一部とは、例えば、費用支出の事実や、支出された日時、支出先となった飲食店等の場所、支出した事業者組織内担当者などの情報のうち一部である場合もあれば、上記日時のうち一部のみを出力したり、飲食店の名称の一部のみをいわば虫食い状態で出力したりするような場合も考えられる。このような構成を採用することで、出力先の取引相手に対し、当該支出時の記憶喚起を促すこととなり、より実効的な回答を得ることが可能になる。
【0031】
なお、経費支出情報の出力先となるのは、前記経費支出情報において経費支出と関連付けられた取引相手である。出力手段は、当該取引相手に関連付けて取得されている取引相手識別情報のうちメールアドレス等の連絡先となる情報に応じて選択可能に設定することができる。複数の取引相手が関連付けられている場合には、それらの取引相手のうち出力先の選択を受け付けるように構成されてもよい。取引相手の属性や日頃の連絡頻度に応じて情報出力先を選択可能とする構成を採用することにより、当該出力に対する応答を得やすくすることが可能になる。
【0032】
ここで経費支出情報の出力処理は、当該経費支出情報における取得元となる個人以外の者が管理する端末を通じて行われることが望ましい。例えば、現に経費支出をした者から経費支出情報を取得した場合には、経理担当者や当該費用支出の決裁担当者が管理する端末を通じて行われることが考えられる。経費支出に直接利害関係を有する個人を介在させない構成をとることで、経費支出適正確認手続きの客観性を担保することが可能となる。
【0033】
このほか、経費支出情報の出力態様を制御するような構成も考えられ、具体的には、出力日時や出力内容を制御することが一例として挙げられる。日時の制御の一例としては、出力先の稼働時間内に出力したりすることが考えられるほか、出力内容の制御の一例としては、取引内容に応じた定型文を挿入して出力するようなことが考えられる。より具体的にいえば、経費支出情報の内容が接待交際費支出に関するものの場合には、「先日はご挨拶の機会をいただきありがとうございました」などのように交際の事実に対する御礼に関する定型文を挿入したり、備品購入費支出に関するものの場合には、「毎度迅速な対応をありがとうございます」などのような円滑な取引に対する御礼に関する定型文を挿入したりするような事が考えられる。これらの制御を行うことで、出力先が当該情報に接したときの心理的な負担を軽減させ、ひいては、当該通知に対する応答をしやすくする環境を提供可能となる。いっぽうで、経費支出の有無を直截的に尋ねる出力内容とすることも可能であり、そのような構成を採用することで、出力先によるごまかしや不確実な回答を許容せず、ひいては当該回答を迫られる事実を通じて、出力先によるいわば口裏合わせのような事態を抑止することも可能となる。
【0034】
また、出力態様の一例としては、主に文字情報による出力が想定されるものの、他にも例えば、所定の電話番号に対する自動音声による音声出力のような構成があってもよい。当該構成のもと、出力先にてプッシュボタンの押下などの簡易な方法により応答が可能な構成を採用することにより、出力先による応答負担を軽減することが可能となる。
【0035】
ちなみに、経費支出情報を出力する際には、当該情報に対する応答を返信可能な態様で出力することが考えられる。具体的に言えば、上記一例であげた音声出力に対応したプッシュボタンの押下のような手段のほか、文字情報の出力に対応した任意の文字入力や「はい」「いいえ」などの選択肢の選択入力などを応答として受付可能とすることが考えられる。更にはそれらの応答に制限時間を設け、当該時間内の応答を促すようなメッセージを定期的に出力するような構成があってもよい。様々な態様での応答が可能な構成を採用することで、出力先の応答負担を軽減するとともに、応答獲得の実効性を担保することができる。
【0036】
ここで、出力への応答としてどのような態様を受付可能とするかは適宜設定されてもよい。出力される経費支出情報の内容に応じて要求される応答の態様を変更する構成があってもよく、例えば、支出された費用の金額の高底に応じて、応答すべき項目又は応答方法の難易を制御したり、取引頻度の多い取引相手に対しては、相対的に簡易な態様での応答が可能なように制御するようなことが考えられる。すなわち、この場合には、過去の取引実績なども制御のための判断要素として利用する。取引内容や取引相手に応じて好適な応答手段を適宜設定ないし制御可能とすることにより、応答獲得の実効性を担保することができる。
【0037】
「判定部」0204は、出力部の出力への応答に応じて経費支出の適否を判定するための構成を備えている。ここで出力部の出力への応答に応じて、とあるが、これは必ずしも応答があった場合に対応した処理のことに限定されず、応答がなかった場合にも当該事実に応じた処理がなされうることを意味する。具体的に言えば、応答がなかった場合には、当該経費支出を不適と判定する、といった判定処理を行うことも可能である。
【0038】
なお、上述のように、ここで得られる応答には種々の態様のものがあり、判定部においては、それらの応答に応じた処理がなされる。例えば、経費支出の事実を認める内容の応答があれば当該経費支出が適切であると判定したり、支出の有無の記憶がない又は確認ができないとの内容の応答であれば当該経費支出は不適切であると判定したり、といった具合である。これらの処理は、予め判定のためのルールを判定ルールとしてシステムの内部で保持し当該判定ルールに従って行われる場合のほか、過去の取引実績の学習結果に基づいて生成される学習済みモデルを用いて行われることなどが考えられる。
【0039】
ちなみに、判定部では、単に適切か不適切かのみを判定する処理のほか、最終的に適否を判断するための情報を判定結果として出力するような処理が行われても良い。具体的には、応答内容として、取引金額が出力された金額とは異なるとの内容であったり、当該日時に会食はしたが会食場所が出力内容とは異なっているといった内容であったりするような場合には、最終的な適否確認には本人から再度確認が必要である旨の判定結果が出力されるような場合である。すなわち、最終的な適否の判断が留保される判定処理が行われる場合ももちろんあってよい。処理結果が適否判断を留保する内容であっても、当該処理結果に接した経理担当者や決裁担当者にとっては、当該内容を踏まえて自ら経費支出の適否判断をするための参考情報とすることができる以上、当該判定結果を有用な情報として取り扱う事が可能である。
【0040】
このように、判定部における判定結果は、経理担当者や決裁担当者など経費支出をした事業者内個人以外の者が管理する端末に対して通知出力されることが望ましい。当該構成を採用することで、通知結果を受けた事業者内個人が、当該通知結果を隠匿したり、改ざんしたりして不適切な経費支出の事実や内容を伏せる事態の回避が可能となる。
【0041】
<具体的な構成>
ここで
図3を示す。同図は本実施形態の経費支出適正判定システムの機能的な各構成をまとめて一のハードウェアとして実現した際の構成の一例を示す概略図である。各装置はいずれも、それぞれ各種演算処理を実行するための「CPU」0301と、「記憶装置(記憶媒体)」0302と、「メインメモリ」0303と、「入出力インタフェース」0304、「ネットワークインタフェース」0305と、を備え、入出力インタフェースを介して、例えば「ディスプレイ」0306、「スキャナ」0307などの外部周辺装置と情報の送受信を行う。
【0042】
また、本実施形態の経費支出適正判定システムは、ネットワークインタフェースを介して複数の「事業者端末」0308や「取引相手端末」0309、あるいは外部サービスを運営する「外部サーバ」0310などの外部装置と情報の送受信を行いうる。このネットワークインタフェースの具体的な態様は有線、無線を問わず、また通信の方法も、両端末間で直接、間接なされるかを問わない。よって特定の外部装置ないし同装置の利用者と紐づけられた第三者の管理するサーバとの間で情報の送受信を行ういわゆるクラウドコンピューティングの形式を採用することも可能である。
【0043】
記憶装置には以下で説明するような各種プログラムが格納されており、CPUはこれら各種プログラムをメインメモリのワーク領域内に読み出して展開、実行する。なお、これらの構成は、「システムバス」0399などのデータ通信経路によって相互に接続され、情報の送受信や処理を行う(以上の構成の基本的な構成は、以下で説明する他の装置のいずれについても同様である。
【0044】
(識別情報取得部の具体的な構成)
識別情報取得部は、コンピュータプログラムとコンピュータハードウェアにより構成され、具体的には、CPUが記憶装置から「識別情報取得プログラム」0320をメインメモリに読み出して実行し、事業者端末やスキャナ等の光学読取措置から取引相手を識別する情報である取引相手識別情報を取得し、メインメモリの所定のアドレスに格納する。
【0045】
(経費支出情報取得部の具体的な構成)
経費支出情報取得部は、コンピュータプログラムとコンピュータハードウェアにより構成され、具体的には、CPUが記憶装置から「経費支出情報取得プログラム」0330をメインメモリに読み出して実行し、経費を支出した個人や当該個人から経費申請を受けた経理担当者などが管理する事業者端末やスキャナ等の光学読取措置から前記取引相手に関連する経費支出に関する情報である経費支出情報を取得し、メインメモリの所定アドレスに格納する。
【0046】
(出力部の具体的な構成)
出力部は、コンピュータプログラムとコンピュータハードウェアにより構成され、具体的には、CPUが記憶装置から「出力プログラム」0340をメインメモリに読み出して実行し、経費支出情報取得プログラムの実行により取得した経費支出情報の全部又は一部を、当該情報において関連付けられている取引相手に対して出力する処理を行う。
【0047】
(判定部の具体的な構成)
判定部は、コンピュータプログラムとコンピュータハードウェアにより構成され、具体的には、CPUが記憶装置から「判定プログラム」0350をメインメモリに読み出して実行し、出力プログラムの実行による出力先からの応答に応じて、当該経費支出の適否を判定するための処理を行う。
【0048】
<処理の流れ>
図4は、本実施形態の経費支出適正判定システムにおける処理の流れの一例を示す図である。同図の処理の流れは以下のステップからなる。最初にステップS0401では、取引相手を識別する情報である取引相手識別情報を取得する(識別情報取得ステップ)。
【0049】
その後ステップS0402にて、取引相手に関連する経費支出に関する情報である経費支出情報を取得する(経費支出情報取得ステップ)と、ステップS0403では、取得した経費支出情報の全部又は一部を、前記取引相手に対して出力する(出力ステップ)。その後ステップS0404にて当該出力結果に対応する応答があったか、所定時間の応答時間が経過したかを判断する。ここでの判断結果が応答あり又は応答時間経過との内容である場合には、ステップS0405の処理に移行し、それ以外の判断結果である場合には、かかる判断結果が変わるまで同処理を繰り返す。
【0050】
そしてステップS0405では、ステップS0404で取得した応答又は応答時間経過との事実に応じて経費支出の適否を判定するための処理を行う(判定ステップ)。
【0051】
<効果>
以上の構成を採用する経費支出適正判定システムを利用することにより、経費支出の不正などを抑止することが可能となる。
【0052】
<<実施形態2>>
<概要>
本実施形態の経費支出適正判定システムは、基本的には実施形態1に記載の経費支出適正判定システムの技術的特徴と同様であるが、経費支出情報が、経費を支出した日付を含む情報であって、取引相手に対し、経費支出情報とともに、前記日付に応じたメッセージを付加する点において更なる特徴を有している。
【0053】
<機能的構成>
図5は、本実施形態の経費支出適正判定システムの機能ブロックの一例を示す図である。同図において示されているように、本実施形態の「経費支出適正判定システム」0500は、「識別情報取得部」0501と、「経費支出情報取得部」0502と、「出力部」0503と、「判定部」0504と、を有し、出力部は、「メッセージ出力手段」0513をさらに有する。基本的な構成は、実施形態1の
図2を用いて説明した経費支出適正判定システムと共通するため、以下では相違点である「メッセージ出力手段」0513の機能について説明する。
【0054】
なおここで、本実施形態の経費支出適正判定システムにおいて利用される経費支出情報には、経費を支出した日付の情報が含まれることが必要となる。そのほか日時や当該支出をした通算回数もしくは前回同様の取引で経費支出してからの時間間隔など、経費支出をした日付と関連する時的要素に関する情報が含まれていてもよく、それらの情報が利用可能に取得される構成を採用することにより、後述するメッセージ出力手段において多様なメッセージを出力することが可能となる。
【0055】
「メッセージ出力手段」0213は、出力部において、経費支出情報とともに、前記日付に応じたメッセージを付加するように構成されている。日付に応じたメッセージの具体例としては、メッセージを出力する日付が経費支出日の翌日であった場合には、「昨日は」ではじまる直近での経費支出に対応したメッセージを付加出力するような構成が考えられ、2日以上が経過しているような場合には、「先日は」ではじまる一定期間の期間経過を前提にしたメッセージを付加出力するような構成が考えられる。また、経費支出日から所定期間(例えば1週間)以上が経過していた場合には、「時間が経過してしまい申し訳ありませんが」などのように、所定期間経過後の応答を求めることについてのお詫びの意を表すお詫びメッセージを付加するように構成されることも考えられる。
【0056】
そしてこれらのメッセージは、必ずしも経費支出の適否を直接問う内容である必要はなく、単に取引内容や日頃の付き合いに対する反応取得する目的で付される内容のものであってもよい。例えば、「昨日の会食はお楽しみいただけたでしょうか?」や「先日の商品購入の際には、迅速に対応いただきありがとうございました。今後も同様の対応をお願いした場合でも、ご対応いただくことは可能でしょうか?」などのように、費用支出に関連すると思われる質問形式のメッセージを出力することで、当該質問形式のメッセージへの応答を促すような処理が行われても良い。このようなメッセージであっても、適正な費用支出の事実そのものが架空のものであった場合、費用支出を認める応答を受け取る可能性はほとんどなく、当該応答を受けて経費支出の適正判定を行うことも可能だからである。むしろ、費用支出の適否を直截に尋ねるメッセージを出力することのほうが取引先との関係性に悪影響を与える場合もあるため、当該構成を採用することにより、安定した関係性を維持しつつ、費用支出の適正確認を行うことが可能となる。
【0057】
これらのメッセージはいずれも予めメッセージテンプレートとして保持されており、経費支出日付とともに経費支出情報を取得すると、当該日付に応じたテンプレートを取得したうえ、付加すべきメッセージとして出力対象とする。当該構成を採用することにより、事業者端末にて逐一メッセージを考案しながら入力する手間を排除し、取引相手に対し、時宜にあったタイミングで経費支出の適正判定のための応答を促す事が可能になる。
【0058】
<具体的な構成>
本実施形態の経費支出適正判定システムを構成する各装置のハードウェア構成は、基本的には、
図3を用いて説明した実施形態1の経費支出適正判定システムにおけるハードウェア構成と同様である。そこで以下については、これまで説明していない「メッセージ出力手段」の具体的な処理について説明する。
【0059】
(メッセージ出力手段の具体的な構成)
メッセージ出力手段は、具体的にはコンピュータプログラムとコンピュータハードウェアにより構成され、出力プログラムの実行に際し、CPUが記憶装置から「メッセージ出力サブプログラム」をメインメモリに読み出して実行し、経費支出情報とともに、当該情報のうち日付に応じたメッセージを読み出して付加したうえで出力する。
【0060】
<処理の流れ>
図6は、本実施形態の経費支出適正判定システムにおける処理の流れの一例を示す図である。同図の処理の流れは、以下のステップからなる。最初にステップS0601では、取引相手を識別する情報である取引相手識別情報を取得する(識別情報取得ステップ)。
【0061】
その後ステップS0602にて、取引相手に関連する経費支出に関する情報である経費支出情報を取得する(経費支出情報取得ステップ)と、ステップS0603では、取得した経費支出情報の全部又は経費を支出した日付を含む一部を、前記取引相手に対して出力する(出力ステップ)。その後ステップS0604にて当該出力結果に対応する応答があったか、所定時間の応答時間が経過したかを判断する。ここでの判断結果が応答あり又は応答時間経過との内容である場合には、ステップS0605の処理に移行し、それ以外の判断結果である場合には、かかる判断結果が変わるまで同処理を繰り返す。
【0062】
そしてステップS0605では、ステップS0604で取得した応答又は応答時間経過との事実に応じて経費支出の適否を判定するための処理を行う(判定ステップ)。
【0063】
<効果>
本実施形態の経費支出適正判定システムを用いることにより、実施形態1の経費支出適正判定システムを用いる場合に比べて、より取引相手からの応答を取得しやすくすることができる。
【0064】
<<実施形態3>>
<概要>
本実施形態の経費支出適正判定システムは、基本的には実施形態1や2に記載の経費支出適正判定システムの技術的特徴と同様であるが、経費支出情報が、経費を支出した担当者を含む情報であって、判定部での判定結果に応じて、前記担当者に宛てて更なる判定のために必要な情報である補充情報を要求する点を更なる特徴として備えている。
【0065】
<機能的構成>
図7は、本実施形態の経費支出適正判定システムの機能ブロックの一例を示す図である。同図において示されているように、本実施形態の「経費支出適正判定システム」0700は、「識別情報取得部」0701と、「経費支出情報取得部」0702と、「出力部」0703と、「判定部」0704と、「補充情報要求部」0705と、を有する。基本的な構成は、実施形態1の
図2を用いて説明した経費支出適正判定システムと共通するため、以下では相違点である「補充情報要求部」0705の機能について説明する。
【0066】
なおここで、本実施形態の経費支出適正判定システムにおいて利用される経費支出情報は、経費を支出した担当者を含む情報であることが必要となる。具体的には、当該担当者IDや連絡先の情報が含まれていることが必要となる。
【0067】
「補充情報要求部」0705は、判定ステップでの判定結果に応じて、前記担当者に宛てて更なる判定のために必要な情報である補充情報を要求するように構成されている。ここでいう「更なる判定」とは、必ずしも従前の判定が不十分な内容であることを意味せず、いったん行われた判定処理の結果を再確認するために再度の判定を行うような場合も含まれうる。
【0068】
ここで取得が求められる補充情報の具体的な内容は特に制限がなく、例えば、前記判定ステップにおける判定結果を当該担当者宛に出力し、当該判定結果に対する意見を補充情報として求める内容としてもよい。すなわち、補充情報はあくまで「更なる判定のために」用いられるような情報であればよく、その具体的な内容に制限はない。対象者としては、補充情報を要求される際に、自らが支出した経費に関し、取引先から積極的又は消極的であれ何らかの応答があったことが把握可能となり、当該事実に何らかの説明が求められている事実を認識せざるを得なくなるからである。そういった仕組み自体が制度上機能しうることそれ自体が担当者にとっては不正な経費支出を行う心理的なハードルとなることか、当該仕組みを設けることによって、一定の不正経費支出を抑制することが可能となる。
【0069】
なお、補充情報要求部による要求に応じて、前記担当者から補充情報を取得した場合には、当該情報に基づいて経費支出の適否を再度判定する再判定処理を行う構成が考えられる。ただし、煩雑な手続きを行うことを避けるため、同一取引につき複数回にわたり補充情報を要求する構成は避け、補充情報が再度必要と判断されるような場合には、経費支出を不適切と判定することが望ましい。当該構成を採用することで、経費支出の効率的な適否判断を実現することが可能となる。
【0070】
<具体的な構成>
本実施形態の経費支出適正判定システムを構成する各装置のハードウェア構成は、基本的には、
図3を用いて説明した実施形態1の経費支出適正判定システムにおけるハードウェア構成と同様である。そこで以下については、これまで説明していない「補充情報要求部」の具体的な処理について説明する。
【0071】
(補充情報要求部の具体的な構成)
補充情報要求部は、具体的にはコンピュータプログラムとコンピュータハードウェアにより構成され、CPUが記憶装置から「補充情報要求プログラム」をメインメモリに読み出して実行し、判定ステップでの判定結果に応じて、前記担当者に宛てて更なる判定のために必要な情報である補充情報を要求する。
【0072】
<処理の流れ>
図8は、本実施形態の経費支出適正判定システムにおける処理の流れの一例を示す図である。同図の処理の流れは以下のステップからなる。最初にステップS0801では、取引相手を識別する情報である取引相手識別情報を取得する(識別情報取得ステップ)。
【0073】
その後ステップS0802にて、取引相手に関連する経費支出に関する情報である経費支出情報を取得する(経費支出情報取得ステップ)と、ステップS0803では、取得した経費支出情報の全部又は経費支出をした担当者に関する情報を含む一部を、前記取引相手に対して出力する(出力ステップ)。その後ステップS0804にて当該出力結果に対応する応答があったか、所定時間の応答時間が経過したかを判断する。ここでの判断結果が応答あり又は応答時間経過との内容である場合には、ステップS0805の処理に移行し、それ以外の判断結果である場合には、かかる判断結果が変わるまで同処理を繰り返す。
【0074】
そしてステップS0805では、ステップS0804で取得した応答又は応答時間経過との事実に応じて経費支出の適否を判定するための処理を行う(判定ステップ)。その後ステップS0806では、ステップS0805の判定結果に応じて、前記担当者に宛てて更なる判定のために必要な情報である補充情報を要求する(補充情報要求ステップ)。
【0075】
<効果>
本実施形態の経費支出適正判定システムを用いることにより、実施形態1や2の経費支出適正判定システムを用いる場合に比べて、不正な経費支出を抑制することが可能となる。
【符号の説明】
【0076】
0200・・・経費支出適正判定システム、0201・・・識別情報取得部、0202・・・経費支出情報取得部、0203・・・出力部、0204・・・判定部