(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023104428
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】空気調和機及び空気調和機の制御方法
(51)【国際特許分類】
F24F 11/43 20180101AFI20230721BHJP
F24F 11/41 20180101ALI20230721BHJP
F24F 11/86 20180101ALI20230721BHJP
F24F 11/89 20180101ALI20230721BHJP
F24F 1/0063 20190101ALI20230721BHJP
F24F 13/30 20060101ALI20230721BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20230721BHJP
F25B 49/02 20060101ALI20230721BHJP
F25B 5/04 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
F24F11/43
F24F11/41 110
F24F11/41 120
F24F11/86
F24F11/89
F24F1/0063
F24F13/30
F25B1/00 304L
F25B1/00 371B
F25B49/02 510B
F25B5/04 Z
F25B1/00 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022005405
(22)【出願日】2022-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】藤田 直人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 周平
(72)【発明者】
【氏名】武田 雄次
【テーマコード(参考)】
3L051
3L260
【Fターム(参考)】
3L051BE05
3L260AA01
3L260AB02
3L260BA36
3L260CB06
3L260DA01
3L260DA09
3L260FB04
3L260FB07
3L260HA02
(57)【要約】
【課題】室内側熱交換器が凍結による目詰まりが発生しにくい空気調和機を提供することを目的とする。
【解決手段】空気調和機1は、圧縮機11、室外側熱交換器13、膨張弁14及び室内側熱交換器21を接続して構成された冷媒回路と、室内側熱交換器21の温度を検知する温度検知手段25と、冷媒回路を制御する制御手段100と、を備える。制御手段100は、温度検知手段25により検知された温度が第1温度以下の範囲において第1時間が経過した第1条件、または第1温度未満である第2温度以下の範囲において第1時間よりも短い第2時間を経過した第2条件の少なくとも一方の条件を満たしたとき、室内側熱交換器21が凍結すると判定し、判定結果に基づく冷媒回路の制御を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、室外側熱交換器、膨張弁及び室内側熱交換器を接続して構成された冷媒回路と、前記室内側熱交換器の温度を検知する温度検知手段と、前記冷媒回路を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記温度検知手段により検知された温度が第1温度以下の範囲において第1の時間が経過した第1条件、または前記第1温度未満である第2温度以下の範囲において第1時間よりも短い第2時間を経過した第2条件の少なくとも一方の条件を満たしたとき、前記室内側熱交換器が凍結すると判定し、判定結果に基づく前記冷媒回路の制御を行うことを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
前記制御手段は、前記室内側熱交換器の一部を蒸発域とし、他の部分を過熱域とする除湿運転を実行することを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
前記室内側熱交換器は、主熱交換器と前記主熱交換器の風上側に配置された補助熱交換器とで構成され、前記補助熱交換器近傍に前記室内側熱交換器の温度を検知する前記温度検知手段が配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか一項に記載の空気調和機。
【請求項4】
前記制御手段は、前記判定結果に基づく前記冷媒回路の制御として、前記圧縮機の運転周波数を減少させる凍結解除運転を実行することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の空気調和機。
【請求項5】
前記制御手段は、前記判定結果に基づく前記冷媒回路の制御として、前記膨張弁の開度を増加させる凍結解除運転を実行することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の空気調和機。
【請求項6】
前記制御手段は前記凍結解除運転を実行したのち、前記温度検知手段が検出した温度が前記第1の温度以上になった場合に前記凍結解除運転を解除することを特徴とする請求項4または請求項5のいずれか一項に記載の空気調和機。
【請求項7】
前記温度検知手段は、前記室内側熱交換器が蒸発器として機能している時の前記室内側熱交換器における冷媒の入口近傍に設けられていることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の空気調和機。
【請求項8】
圧縮機、室外側熱交換器、膨張弁及び室内側熱交換器を接続して構成された冷媒回路と、前記室内側熱交換器の温度を検知する温度検知手段と、前記冷媒回路を制御する制御手段と、を備えた空気調和機の制御方法であって、
前記制御手段は、前記温度検知手段により検知された温度が第1の温度以下の範囲において第1の時間が経過した第1の条件、または前記第1の温度未満である第2の温度以下の範囲において第1の時間よりも短い第2の時間を経過した第2の条件の少なくとも一方の条件を満たしたとき、前記室内側熱交換器が凍結すると判定し、判定結果に基づく前記冷媒回路の制御を行うことを特徴とする空気調和機の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気調和機及び空気調和機の制御方法
【背景技術】
【0002】
従来から、室内側熱交換器の一部を蒸発域とし他部を過熱域として除湿運転を行う空気調和機が存在する。そのような空気調和機では、蒸発域の温度を温度検知手段により検知し、その検知結果に基づいて室内側熱交換器の凍結を判定している。具体的には、検知した温度が所定値以下の状態が一定時間継続したときに、室内側熱交換器が凍結すると判定している。そして、室内側熱交換器が凍結するとの判定に至った場合は、凍結解除運転を開始し、室内側熱交換器の凍結による目詰まりを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記判定方法では、蒸発域の温度がどんなに低い温度であったとしても、所定値以下の状態が一定時間継続しなければ、室内側熱交換器が凍結するとの判定に至らない。そのため、蒸発域の温度が非常に低かった場合は、凍結解除運転を開始する前に室内側熱交換器の凍結による目詰まりが発生するおそれがある。
【0005】
本開示は、上記の課題に鑑み、室内側熱交換器が凍結による目詰まりが発生しにくい空気調和機及び空気調和機の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る空気調和機は、圧縮機、室外側熱交換器、膨張弁及び室内側熱交換器を接続して構成された冷媒回路と、前記室内側熱交換器の温度を検知する温度検知手段と、前記冷媒回路を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記温度検知手段により検知された温度が第1温度以下の範囲において第1時間が経過した第1条件、または前記第1温度未満である第2温度以下の範囲において第1時間よりも短い第2時間を経過した第2条件の少なくとも一方の条件を満たしたとき、前記室内側熱交換器が凍結すると判定し、判定結果に基づく前記冷媒回路の制御を行うことを特徴とする。
【0007】
本開示の一態様に係る空気調和機の制御方法は、圧縮機、室外側熱交換器、膨張弁及び室内側熱交換器を接続して構成された冷媒回路と、前記室内側熱交換器の温度を検知する温度検知手段と、前記冷媒回路を制御する制御手段と、を備えた空気調和機の制御方法であって、前記制御手段は、前記温度検知手段により検知された温度が第1の温度以下の範囲において第1の時間が経過した第1の条件、または前記第1の温度未満である第2の温度以下の範囲において第1の時間よりも短い第2の時間を経過した第2の条件の少なくとも一方の条件を満たしたとき、前記室内側熱交換器が凍結すると判定し、判定結果に基づく前記冷媒回路の制御を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様に係る空気調和機及び空気調和機の制御方法は、第1条件または第2条件の少なくとも一方の条件を満たしたとき、室内側熱交換器が凍結すると判定する。そのため、室内熱交換器が凍結により目詰まりしにくい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施の形態に係る空気調和機を示す概略構成図
【
図3】空気制御手段及びそれに接続された装置を示すブロック図
【
図4】室内側熱交換器の蒸発域及び過熱域を示す概略側面図
【
図6】膨張弁制御条件の決定処理を示すフローチャート
【
図10】圧縮機を用いた凍結解除運転の制御処理を示すフローチャート
【
図11】膨張弁を用いた凍結解除運転の制御処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示に係る空気調和機は、室内の温度、湿度、空気清浄等の制御を行う空調設備であり、例えば家庭用のエアコンである。
【0011】
<空気調和機の構成>
(概略構成)
図1は本実施の形態に係る空気調和機を示す概略構成図である。
図1に示すように、本実施の形態に係る空気調和機1は、室外側ユニット10と室内側ユニット20とを備えている。
【0012】
室外側ユニット10と室内側ユニット20とは、配管2により接続されている。具体的には、室外側ユニット10が備える圧縮機11、四方弁12、室外側熱交換器13及び膨張弁14、並びに、室内側ユニット20が備える室内側熱交換器21が、配管2により接続されている。そして、圧縮機11、四方弁12、室外側熱交換器13、膨張弁14、室内側熱交換器21及び配管2により、冷凍回路が構成されている。なお、配管2には、四方弁12及び膨張弁14以外の各種弁(不図示)や、ストレーナ(不図示)等も接続されている。
【0013】
(室外側ユニットの構成)
室外側ユニット10は、圧縮機11、四方弁12、室外側熱交換器13、膨張弁14、室外側送風装置15、室外側制御手段101及びアキュームレータ(不図示)等を備えている。
【0014】
圧縮機11は、冷凍回路内の冷媒を圧縮して高温高圧にする。
【0015】
四方弁12は、冷凍回路内の冷媒が凝縮器に送り込まれるように、冷媒の流路を切り替える。具体的には、冷房運転時又は除湿運転時の四方弁12は、凝縮器として機能する室外側熱交換器13に冷媒が送り込まれるように、冷媒の流路を切り替える。一方、暖房運転時の四方弁12は、凝縮器として機能する室内側熱交換器21に冷媒が送り込まれるように、冷媒の流路を切り替える。
【0016】
室外側熱交換器13は、冷凍回路内の冷媒と室外側熱交換器13に送り込まれた空気との間の熱交換を行う。
【0017】
膨張弁14は、冷凍回路内の冷媒を減圧により膨張させて低温低圧にする。冷房運転時又は除湿運転時において、低温低圧となった冷媒は、膨張弁14から蒸発器として機能する室内側熱交換器21に送り込まれる。一方、暖房運転時において、低温低圧となった冷媒は、蒸発器として機能する室外側熱交換器13に送り込まれる。
【0018】
室外側送風装置15は、プロペラファン(不図示)を備え、プロペラファンの回転により室外側熱交換器13内を通過する空気の流れを生み出す。これにより、室外側熱交換器13における熱交換の効率が向上する。
【0019】
室外側制御手段101は、室外側ユニット10の動作を制御する。詳細については後述する。
【0020】
(室内側ユニットの構成)
図2は、室内側ユニットを示す断面図である。
図1及び
図2に示すように、室内側ユニット20は、室内側熱交換器21、室内側送風装置22、吸込口温度検知手段23、湿度検知手段24、入口温度検知手段25、出口温度検知手段26、フィルタ27、上下羽根28、室内側制御手段102、及び、それらを内包する筐体29を備えている。
【0021】
図2に示すように、筐体29の上面には、筐体29内に空気を吸い込むための吸込口29aが設けられている。また、筐体29の下面には、筐体29内の吸い込んだ空気を筐体29外に吐き出すための吐出口29bが設けられている。
【0022】
室内側熱交換器21は、3つの主熱交換器21a~21cと、2つの補助熱交換器21d,21eとを備えている。
【0023】
主熱交換器21a~21cは、室内側送風装置22を取り囲むように、室内側送風装置22とフィルタ27との間に、略逆V字形に配置されている。
【0024】
補助熱交換器21d,21eは、室内側送風装置22とフィルタ27との間、且つ、室内側送風装置22に対して主熱交換器21a~21cよりも外側に配置されている。具体的には、補助熱交換器21dは、主熱交換器21aとフィルタ27との間に配置されており、補助熱交換器21eは、主熱交換器21bとフィルタ27との間に配置されている。
【0025】
主熱交換器21a~21c及び補助熱交換器21d,21eは、それぞれ配管(不図示)にフィン(不図示)を取り付けてなる構造である。主熱交換器21a~21c及び補助熱交換器21d,21eは、それぞれの配管内を流れる冷媒と室内側熱交換器21に送り込まれた空気との間の熱交換を行う。
【0026】
室内側送風装置22は、室内側熱交換器21に送り込まれる空気の流れ31,32を生み出す。具体的には、吸込口29aから吸い込まれ、フィルタ27、室内側熱交換器21及び室内側送風装置22を通過し、吐出口29bから吐き出される空気の流れ31,32を生み出す。これにより、室内側熱交換器21における熱交換の効率が向上する。
【0027】
空気の流れ31,32において、補助熱交換器21d,21eは、主熱交換器21a~21cよりも風上に配置されている。具体的には、空気の流れ31において補助熱交換器21dは主熱交換器21aよりも風上に配置されており、空気の流れ32において補助熱交換器21eは主熱交換器21bよりも風上に配置されている。
【0028】
図1に戻って、吸込口温度検知手段23は、筐体29内における吸込口29a近傍に配置されている。吸込口温度検知手段23は、吸込口29aから筐体29内に吸い込まれたのち室内側熱交換器21によって熱交換される前の空気の温度を検知する。以下では、吸込口温度検知手段23が検知する温度を「吸込口温度」と称する。
【0029】
湿度検知手段24は、筐体29内における吸込口29a近傍に配置されている。湿度検知手段24は、吸込口29aから筐体29内に吸い込まれたのち室内側熱交換器21によって熱交換される前の空気の湿度を検知する。
【0030】
入口温度検知手段25は、室内側熱交換器21の蒸発域(後述する)における冷媒の入口近傍の温度を検知する。以下では、入口温度検知手段25が検知する温度を「入口温度T1」と称する。
【0031】
出口温度検知手段26は、後述する室内側熱交換器21の蒸発域における冷媒の出口近傍の温度を検知する。以下では、出口温度検知手段26が検知する温度を「出口温度T2」と称する。
【0032】
フィルタ27は、筐体29内の吸込口29a近傍に吸込口29aを塞ぐように配置されており、吸込口29aから筐体29内へ吸い込まれる空気中の埃や塵を除去する。
【0033】
上下羽根28は、筐体29の吐出口29b近傍に回動自在に設けられており、空気調和機1の運転時においては、吐出口29bから吐き出される空気の向きを調整する。また、上下羽根28は、空気調和機1の非運転時においては、吐出口29bを塞いでいる。
【0034】
室内側制御手段102は、室内側ユニット20の動作を制御する。詳細については後述する。
【0035】
(空気制御手段の構成)
図1に示すように、室外側ユニット10の室外側制御手段101と、室内側ユニット20の室内側制御手段102とで、制御手段100が構成されている。空気調和機1の運転は、制御手段100によって制御される。
【0036】
図3は、空気制御手段及びそれに接続された装置を示すブロック図である。
図3に示すように、制御手段100は、取得部103、記憶部104、演算部105及び駆動部106を備えている。演算部105は、取得部103、記憶部104及び駆動部106のそれぞれと接続している。
【0037】
取得部103は、吸込口温度検知手段23、湿度検知手段24、入口温度検知手段25及び出口温度検知手段26と接続されている。取得部103は、吸込口温度検知手段23が検知した吸込口温度、湿度検知手段24が検知した湿度、入口温度検知手段25が検知した入口温度T1、出口温度検知手段26が検知した出口温度T2を取得する。
【0038】
記憶部104は、演算部105が温度テーブルを作成するための設定値を記憶している。
【0039】
演算部105は、取得部103及び記憶部104のそれぞれから情報を受け取り、それら情報に基づいて演算を行う。
【0040】
駆動部106は、圧縮機11及び膨張弁14と接続されている。駆動部106は、演算部105による演算の結果に基づいて、圧縮機11及び膨張弁14を駆動させるための指示信号を、圧縮機11及び膨張弁14に送信する。
【0041】
<空気調和機の動作>
(冷凍回路内の冷媒の流れ)
冷房運転時又は除湿運転時における冷凍回路内の冷媒の流れを説明する。
【0042】
冷房運転時又は除湿運転時において、冷凍回路内の気体状態の冷媒は、圧縮機11で圧縮されて高温高圧になる。高温高圧になった冷媒は、四方弁12を介して室外側熱交換器13に送り込まれる。室外側熱交換器13に送り込まれた冷媒は、室外側熱交換器13を通過する空気と熱交換を行う。この熱交換により気体状態の冷媒は凝縮し、液体状態の冷媒へと変化する。液体状態へと変化した冷媒は、膨張弁14を通過することにより低温低圧になり、これによって気液二相状態の冷媒となって、室内側熱交換器21に送り込まれる。
【0043】
室内側熱交換器21に送り込まれた気液二相状態の冷媒は、室内側熱交換器21を通過する空気と熱交換を行う。この熱交換により気液二相状態の冷媒は気体状態の冷媒へと変化する。気体状態へと変化した冷媒は、再び圧縮機11へ送り込まれる。
【0044】
以上のように、冷房運転時又は除湿運転時の冷媒は、圧縮機11、四方弁12、室外側熱交換器13、膨張弁14、室内側熱交換器21の順で、冷凍回路内を循環する。一方、暖房運転時の冷媒は、冷房運転時又は除湿運転時とは逆回転で冷凍回路内を循環する。
【0045】
(室内側熱交換器の蒸発域及び過熱域)
空気調和機1は、室内側熱交換器21の一部を蒸発域とする除湿運転と、室内側熱交換器21の全部を蒸発域とする除湿運転とを、選択的に行うことができる。使用者は、いずれの除湿運転を行うのかを、リモートコントローラー(不図示)等を操作することにより選択することができる。以下では、室内側熱交換器21の一部を蒸発域とする除湿運転時における室内側熱交換器21について詳細に説明する。なお、空気調和機1は、室内側熱交換器21の一部を蒸発域とする除湿運転のみが行え、室内側熱交換器21の全部を蒸発域とする除湿運転は行えない仕様であってもよく、冷房運転時若しくは室内側熱交換器21の全部を蒸発域とする除湿運転時に、ある条件(例えば室内外が所定の温度、室内が所定の湿度、圧縮機11が所定の稼働時間に達した時)を満たした際に室内側熱交換器21の一部を蒸発域とする除湿運転を行う仕様であってもよい。
【0046】
図4は、室内側熱交換器の蒸発域及び過熱域を示す概略側面図である。除湿運転時における室内側熱交換器21は、例えば
図4に示すようにして蒸発域と過熱域とに分かれる。
図4において円内に「×」が記入された部分が蒸発域であり、円内に「〇」が記入された部分が過熱域である。すなわち、主熱交換器21aは全てが過熱域である。主熱交換器21b及び主熱交換器21cのそれぞれは一部が蒸発域であり他部が過熱域である。補助熱交換器21d,21eのそれぞれは全てが蒸発域である。
主熱交換器21a~21c及び補助熱交換器21d,21eは、配管50~60によって接続されている。
【0047】
具体的には、膨張弁14(
図4においては不図示)は補助熱交換器21dと配管50で接続されている。補助熱交換器21dは補助熱交換器21eと配管51で接続されている。補助熱交換器21eは主熱交換器21bの蒸発域と配管52で接続されている。主熱交換器21bの蒸発域は主熱交換器21cの蒸発域と配管53で接続されている。そして、補助熱交換器21dと、補助熱交換器21eと、主熱交換器21bの蒸発域と、主熱交換器21cの蒸発域とによって、室内側熱交換器21の蒸発域が構成されている。
【0048】
主熱交換器21cの蒸発域は主熱交換器21aと配管54及び配管55で接続されている。主熱交換器21aは主熱交換器21bの過熱域の一部と配管56で接続されている。主熱交換器21bの過熱域の一部は圧縮機11(
図4においては不図示)と配管57で接続されている。そして、主熱交換器21aと、主熱交換器21bの過熱域の一部とによって、室内側熱交換器21の第1過熱域が構成されている。
【0049】
主熱交換器21cの蒸発域は主熱交換器21bの過熱域の他部とも配管54及び配管58で接続されている。主熱交換器21bの過熱域の他部は主熱交換器21cの過熱域と配管59で接続されている。主熱交換器21cの過熱域は圧縮機11(
図4においては不図示)と配管60で接続されている。そして、主熱交換器21bの過熱域の他部と、主熱交換器21cの過熱域とによって、室内側熱交換器21の第2過熱域が構成されている。
【0050】
膨張弁14から送り込まれた冷媒は、まず室内側熱交換器21における蒸発域へ流入し、次に分岐して第1過熱域及び第2過熱域を通過し、それら過熱域から流出して圧縮機11に送り込まれる。具体的には、膨張弁14から送り込まれた冷媒は、配管50から補助熱交換器21dに流入し、配管51、補助熱交換器21e、配管52、主熱交換器21bの蒸発域、配管53、主熱交換器21cの蒸発域を通過する。次に、配管54が配管55と配管58に分岐するため、主熱交換器21a、配管56、主熱交換器21bの過熱域の一部で構成されるルート、又は、主熱交換器21bの過熱域の他部、配管59、主熱交換器21cの過熱域で構成されるルートを通過し、配管57又は配管60から流出して圧縮機11に送り込まれる。
【0051】
入口温度検知手段25は、室内側熱交換器21の蒸発域の入口近傍に設けられている。より具体的には、入口温度検知手段25は、補助熱交換器21d近傍に設けられている。上述したとおり、室内側熱交換器21の蒸発域は、補助熱交換器21dと、補助熱交換器21eと、主熱交換器21bの蒸発域と、主熱交換器21cの蒸発域とによって構成されており、それらのうち最も上流は補助熱交換器21dである。したがって、最も上流の補助熱交換器21dに接続された配管50が蒸発域の入口近傍に該当する。したがって、入口温度検知手段25は、配管50に設けられている。
【0052】
このように蒸発域に冷媒が流入する配管50に入口温度検知手段25が設けられているため、室内側熱交換器21の蒸発域の入口近傍の温度を正確に測定することができる。したがって、室内側熱交換器21の凍結による目詰まりを抑制する制御や、凍結解除運転を行う際に、効率よく温度制御することができる。
【0053】
出口温度検知手段26は、室内側熱交換器21の蒸発域の出口に設けられている。繰り返しになるが、室内側熱交換器21の蒸発域は、補助熱交換器21dと、補助熱交換器21eと、主熱交換器21bの蒸発域と、主熱交換器21cの蒸発域とによって構成されているため、それらのうち最も下流は主熱交換器21cの蒸発域である。したがって、最も下流の主熱交換器21cの蒸発域に接続された配管54が蒸発域の出口に該当する。したがって、出口温度検知手段26は、配管54に設けられている。
【0054】
このように蒸発域から冷媒が流出する配管54に出口温度検知手段26が設けられているため、室内側熱交換器21の蒸発域の出口近傍の温度を正確に測定することができる。したがって、出口温度検知手段26で検知した室内側熱交換器21の蒸発域の出口近傍の温度と吸込口温度検知手段23で検知した吸込口温度とが略同一である場合には蒸発が終了したことが検知できる。
なお、入口温度検知手段25及び出口温度検知手段26を設ける箇所は上記に限定されない。入口温度検知手段25は、配管50の上流、つまり膨張弁14近傍に設けられてもよい。この配置により、冷媒の温度が最も低下する温度を検知することができる。さらに、入口温度検知手段25は、蒸発域内の配管に設けられてもよく、例えば配管51、配管52、配管53に設けられてもよい。
【0055】
出口温度検知手段26は、配管54から分岐した配管55及び配管58に設けられていてもよい。この配置により出口温度検知手段26は、分岐後の冷媒が流れる配管の温度を検知することができる。さらに、出口温度検知手段26は、配管55及び配管58の下流側、つまり主熱交換器21a及び/又は主熱交換器21bの近傍に設けられてもよい。この配置により、主熱交換器21a及び/又は主熱交換器21bの過熱域となる温度をより正確に検知することができる。
【0056】
<空気調和機の制御方法>
(除湿運転の制御処理)
図5は、除湿運転の制御処理を示すフローチャートである。
図5に示すように、使用者により第1除湿運転ボタンが押されるなどによって除湿運転が開始されると、制御手段100は、膨張弁制御条件の決定処理を行う(ステップS101)。なお、膨張弁制御条件の決定処理の詳細については後述する。
【0057】
膨張弁制御条件の決定処理が終了すると、制御手段100は、入口温度T1が上限温度以上か否かを判定する(ステップS102)。なお、上限温度とは、後述する膨張弁制御条件の決定処理で決定される温度である。
【0058】
入口温度T1が上限温度以上であれば(ステップS102で「Yes」)、制御手段100は、駆動部106に膨張弁14の開度を減少させる指示信号を送信し、駆動部106が膨張弁14の開度を減少させる(ステップS107)。
【0059】
膨張弁14の開度が減少すると、制御手段100は、除湿運転が停止しているか否かを判断し(S109)、除湿運転が停止していれば(ステップS109で「Yes」)、除湿運転の制御処理を終了する。除湿運転が停止していなければ(ステップS109で「No」)、膨張弁制御条件の決定処理を再度行う(ステップS101)。
【0060】
ステップS102に戻って、入口温度T1が上限温度以上でなければ(ステップS102で「No」)、制御手段100は、加熱温度T3が上限温度以上か否かを判定する(ステップS103)。加熱温度T3が上限温度以上であれば(ステップS103で「Yes」)、制御手段100は、駆動部106に膨張弁14の開度を減少させる指示信号を送信し、駆動部106が膨張弁14の開度を減少させる(ステップS107)。膨張弁14の開度が減少した後の処理は上述のとおりである。
【0061】
ステップS103に戻って、加熱温度T3が上限温度以上でなければ(ステップS103で「No」)、制御手段100は、入口温度T1が下限温度以下か否かを判定する(ステップS104)。なお、下限温度とは、後述する膨張弁制御条件の決定処理で決定される温度である。
【0062】
入口温度T1が下限温度以下であれば(ステップS104で「Yes」)、制御手段100は、駆動部106に膨張弁14の開度を増加させる指示信号を送信し、駆動部106が膨張弁14の開度を増加させる(ステップS108)。
【0063】
膨張弁14の開度が増加すると、制御手段100は、除湿運転が停止しているか否かを判断し(S109)、除湿運転が停止していれば(ステップS109で「Yes」)、除湿運転の制御処理を終了する。除湿運転が停止していなければ(ステップS109で「Yes」)、膨張弁制御条件の決定処理を再度行う(ステップS101)。
【0064】
一方、ステップS104に戻って、入口温度T1が下限温度以下でなければ(ステップS104で「No」)、制御手段100は、加熱温度T3が下限温度以下か否かを判定する(ステップS105)。加熱温度T3が下限温度以下であれば(ステップS105で「Yes」)、制御手段100は、駆動部106に膨張弁14の開度を増加させる指示信号を送信し、駆動部106が膨張弁14の開度を増加させる(ステップS108)。膨張弁14の開度が増加した後の処理は上述のとおりである。
【0065】
ステップS105に戻って、加熱温度T3が下限温度以下でなければステップS105で「No」)、制御手段100は、入口温度T1及び加熱温度T3が安定領域内に収まっていると判断し、膨張弁14の開度を維持する(ステップS106)。さらに、制御手段100は、除湿運転が停止しているか否かを判断し(S109)、除湿運転が停止していれば(ステップS109で「Yes」)、除湿運転の制御処理を終了する。除湿運転が停止していなければ(ステップS109で「Yes」)、膨張弁制御条件の決定処理を再度行う(ステップS101)。
【0066】
以上のように、入口温度T1及び加熱温度T3の少なくとも一方が上限温度以上の場合は膨張弁14の開度を減少させ、入口温度T1及び加熱温度T3の少なくとも一方が下限温度以下の場合は膨張弁14の開度を増加させる。そして、それ以外の場合は膨張弁14の開度を維持する。
【0067】
しかし、室内側熱交換器21の一部を蒸発域とする除湿運転では、入口温度T1が急激に低下することが想定される。さらに、空気調和機1では、膨張弁14を絞る制御を優先させるため、室内側熱交換器21の蒸発域の凍結による目詰まりが発生するおそれがある。そこで、空気調和機1では、室内側熱交換器21の蒸発域の凍結を防止すべく、凍結を判定する温度に応じた凍結を判定する時間を設定している。具体的には、入口温度T1が第1温度(例えば0℃)以下であるときは、その状態が第1時間(例えば10分)を継続したとき凍結すると判定する。また、出口温度T2が第2温度(例えば-5℃)以下であるときは第2時間(例えば3分)を継続したときに凍結すると判定する。なお、前述した温度設定が好ましいが、第2温度は少なくとも第1温度よりも低い温度であればよく、第2時間は少なくとも第1時間よりも短い時間であればよい。
【0068】
(膨張弁制御条件の決定処理)
図6は、膨張弁制御条件の決定処理を示すフローチャートである。
図6に示すように、膨張弁制御条件の決定処理において、取得部103は、吸込口温度検知手段23が検知した吸込口温度に関する情報(吸込口温度情報)を吸込口温度検知手段23から取得する(ステップS201)。また、取得部103は、湿度検知手段24が検知した湿度に関する情報(湿度情報)を湿度検知手段24から取得する(ステップS202)。なお、吸込口温度情報の取得と湿度情報の取得は、どちらが先であってもよいし、両方同時であってもよい。
【0069】
次に、演算部105は、取得部103が取得した吸込口温度情報及び湿度情報と、記憶部104に予め記憶させておいた設定値に基づいて、露点温度の決定を行う(ステップS203)。
【0070】
次に、演算部105は、露点温度と記憶部104の情報に基づいて目標入口温度テーブルを決定する(ステップS204)。ここで、目標入口温度テーブルとは、入口温度検知手段25によって検知された入口温度T1が安定領域内に収まるように膨張弁14の開度を制御することを目標とした温度テーブルである。目標入口温度テーブルの決定する方法の詳細は後述する。
【0071】
次に、演算部105は、露点温度と記憶部104の情報に基づいて目標出口温度テーブルを決定する(ステップS205)。ここで、目標出口温度テーブルとは、吸込口温度から出口温度検知手段26によって検知された出口温度T2を差し引いて求めた温度(以下、「加熱温度T3」と称する)が安定領域内に収まるように膨張弁14の開度を制御することを目標とした温度テーブルである。目標出口温度テーブルの決定する方法の詳細は後述する。
【0072】
なお、目標入口温度テーブルの決定と目標出口温度テーブルの決定とは、どちらが先であってもよいし、両方同時であってもよい。
【0073】
(目標入口温度テーブル)
図7は、目標入口温度テーブルを示す図である。
図7に示すように、本実施形態において、目標入口温度テーブルは温度が高い順に開度減少領域A、開度減少領域B、安定領域、開度増加領域B、開度増加領域Aの5つの領域帯が決定される。開度増加領域A及び開度増加領域Bは、膨張弁14の開度を増加させる領域であり、開度減少領域A及び開度減少領域Bは、膨張弁14の開度を減少させる領域である。ここで安定領域時の膨張弁14の開度を基準としたときに、開度の増加する大きさは開度増加領域A>開度増加領域Bであり、開度の減少する大きさは開度減少領域A>開度減少領域Bである。
【0074】
このように領域帯を決定することで、入口温度T1が開度減少領域A及び開度減少領域Bのような安定領域よりも高い温度帯にあったとしても、膨張弁14の開度を減少させることで、入口温度T1を安定領域まで低下させることができ、室内側熱交換器21を通過する室内の空気を露点温度以下に低下させ、除湿を行うことができる。また、入口温度T1が開度増加領域A及び開度増加領域Bのような安定領域よりも低い温度帯にあったとしても、膨張弁14の開度を増加させることで、室内側熱交換器21の入口近傍の凍結を抑制することができ、凍結で目詰まりすることなく安定した除湿を行うことができる。
【0075】
これらの領域帯はTI1、TI2、TI3、TI4、TI1+1、TI2+1、TI3+1、TI4+1の8つの温度により分けられる。このうち、TI1、TI2、TI1+1、TI2+1は、除湿運転の制御処理において膨張弁14の開度を減少させる判断の基準となる上限温度を示す。また、TI3、TI4、TI3+1、TI4+1は、除湿運転の制御処理において膨張弁14の開度を増加させる判断の基準となる下限温度を示す。
【0076】
さらに、別の角度から8つの温度を説明すると、TI1、TI2、TI3、TI4は、入口温度T1が低下時の境界温度を示し、TI1+1、TI2+1、TI3+1、TI4+1は、入口温度T1が上昇時の境界温度を示す。入口温度T1が上昇時の境界温度は、入口温度T1が低下時の境界温度よりも1℃高く設定される。なお、1℃に限られず、運転を正常に実施できる1℃以外の固定の値であってもよい。また固定の値ではなく、外部環境等により変化する可変の値であってもよい。
【0077】
例えば、入口温度T1が開度減少領域Aの範囲内の温度である時、開度減少領域Bへの境界温度はTI1であり、開度減少領域Bから安定領域に減少するときの境界線はTI2である。一方、入口温度T1が安定領域の範囲の温度である時、開度減少領域Bへの境界温度はTI2+1であり、開度減少領域Bから開度減少領域Aへの境界温度はTI1+1である。
【0078】
(目標出口温度テーブル)
図8は目標出口温度テーブルを示す図である。
図8に示すように、本実施形態において、目標出口温度テーブルは温度が高い順に開度減少領域C、開度減少領域D、安定領域、開度増加領域D、開度増加領域Cの5つの領域帯が決定される。
【0079】
開度増加領域C及び開度増加領域Dは、膨張弁14の開度を増加させる領域であり、開度減少領域C及び開度減少領域Dは、膨張弁14の開度を減少させる領域である。ここで安定領域時の膨張弁14の開度を基準としたときに、開度の増加する大きさは開度増加領域C>開度増加領域Dであり、開度の減少する大きさは開度減少領域C>開度減少領域Dである。
【0080】
このように領域帯を設定することで、加熱温度T3が開度減少領域C及び開度減少領域Dのような安定領域よりも高い温度帯にあったとしても、膨張弁14の開度を減少させることで、加熱温度T3を安定領域まで低下させることができ、蒸発域の面積が所定範囲になるように制御できる。さらに、除湿された空気は過熱域に通ることで、温められ室温に近い空気を室内に排出することができる。また、加熱温度T3が開度増加領域C及び開度増加領域Dのような安定領域をよりも低い温度帯にあったとしても、膨張弁14の開度を増加させることで、加熱温度T3の温度を安定領域まで上昇でき、過熱域の面積が広くなることでの除湿性能の低下を抑制することができる。
【0081】
これらの領域帯はTO1、TO2、TO3、TO4、TO1+1、TO2+1、TO3+1、TO4+1の8つの温度により分けられる。このうち、TO1、TO2、TO1+1、TO2+1は、除湿運転の制御処理において膨張弁14の開度を減少させる判断の基準となる上限温度を示す。また、TO3、TO4、TO3+1、TO4+1は、除湿運転の制御処理において膨張弁14の開度を増加させる判断の基準となる下限温度を示す。
【0082】
さらに、別の角度から8つの温度を説明すると、TO1、TO2、TO3、TO4は加熱温度T3が低下時の境界温度を示し、TO1+1、TO2+1、TO3+1、TO4+1は加熱温度T3が上昇時の境界温度を示す。加熱温度T3が上昇時の境界温度は、加熱温度T3が低下時の境界温度よりも1℃高く設定される。なお、1℃に限られず、運転を正常に実施できる1℃以外の固定の値であってもよい。また固定の値ではなく、外部環境等により変化する可変の値であってもよい。
【0083】
例えば、加熱温度T3が開度減少領域Cの範囲内の温度である時、開度減少領域Dへの境界温度はTO1であり、開度減少領域Dから安定領域に減少するときの境界温度はTO2である。一方、加熱温度T3が安定領域内の温度である時、開度減少領域Dへの境界温度はTO2+1であり、開度減少領域Dから開度減少領域Cへの境界温度はTO1+1である。
【0084】
ところで、目標入口温度テーブル及び目標出口温度テーブルに関しては、出口側と入口側で異なる制御の指令を出す場合が想定される。そのため、空気調和機1では、入口側「膨張弁開度減少」>出口側「膨張弁開度減少」>入口側「膨張弁開度増加」>出口側「膨張弁開度増加」という優先順位を設定する。
【0085】
(凍結判定処理)
図9は、凍結判定処理を示すフローチャートである。
図9に示すように、除湿運転が開始すると、制御手段100は、入口温度T1が第1温度未満か否かを判定する(ステップS301)。
【0086】
入口温度T1が第1温度以下である場合(ステップS301で「Yes」)、その状態が第1時間継続しているか否かを判定する(ステップS302)。そして、継続していれば(ステップS302で「Yes」)、制御手段100は、室内側熱交換器21が凍結すると判定する(ステップS305)。
【0087】
一方、入口温度T1が第1温度未満でない場合(ステップS301で「No」)、入口温度T1と第1温度とを比較し続ける。
【0088】
継続していなければ、次に入口温度T1が第2温度未満であるか否かについて判定する(ステップS303)。第2温度未満であれば、その状態が第2時間継続しているか否かを判定し(ステップS304)、継続していれば凍結であると判定する(ステップS305)。このように二つの温度値でそれぞれ時間継続を判定することにより、効率よく凍結を判定することができる。
【0089】
(凍結解除運転)
次に、凍結解除運転について説明する。制御手段100は、室内側熱交換器21が凍結すると判定すると、凍結を解除するための凍結解除運転を行う。以下では、凍結解除運転の一例として、圧縮機11を用いた凍結解除運転と、膨張弁14を用いた凍結解除運転とについて説明する。
【0090】
まず、圧縮機を用いた凍結解除運転について説明する。
【0091】
図10は、圧縮機を用いた凍結解除運転の制御処理を示すフローチャートである。
図10に示すように、室内側熱交換器21が凍結するとの判定に至った場合は、制御手段100が圧縮機11の運転周波数を減少させる(ステップS401)。具体的には、制御手段100の演算部105が駆動部106に圧縮機11の運転周波数を減少させる指示信号を送信し、駆動部106がその指示信号に基づいて圧縮機11を制御する。これにより、圧縮機11の運転周波数が減少し、室内側熱交換器21の温度が上昇して、凍結の解除が始まる。
【0092】
なお、運転周波数の減少量は例えば2Hzである。ただし、運転周波数の減少量は2Hzに限定されず、凍結を解除できる値であればよい。
【0093】
次に、制御手段100は、入口温度T1が第1温度以上か否かを判断する(ステップS402)。そして、入口温度T1が第1温度以上になるまでは、圧縮機11の運転周波数を減少させる制御が継続される(ステップS402で「No」)。
【0094】
一方、入口温度T1が第1温度以上になれば(ステップS402で「Yes」)、制御手段100が圧縮機11の運転周波数を増加させる(ステップS403)。具体的には、制御手段100の演算部105が駆動部106に圧縮機11の運転周波数を元に戻す指示信号を送信し、駆動部106がその指示信号に基づいて圧縮機11を制御する。これにより、圧縮機11の運転周波数が増加し、室内側熱交換器21の温度が低下する。すなわち、凍結解除運転が終了して除湿運転が再開される。
【0095】
図11は、膨張弁を用いた凍結解除運転の制御処理を示すフローチャートである。
図11に示すように、室内側熱交換器21が凍結するとの判定に至った場合は、制御手段100が膨張弁14の開度を増加させる(ステップS501)。具体的には、制御手段100の演算部105が駆動部106に膨張弁14の開度を増加させる指示信号を送信し、駆動部106がその指示信号に基づいて膨張弁14を制御する。これにより、膨張弁14の開度が増加し、室内側熱交換器21の温度が上昇して、凍結の解除が始まる。
【0096】
なお、膨張弁14の開度の増加量は例えば10plsである。ただし、膨張弁14の開度の増加量は10plsに限定されず、凍結を解除できる値であればよい。
【0097】
次に、制御手段100は、入口温度T1が第1温度以上か否かを判断する(ステップS502)。そして、入口温度T1が第1温度以上になるまでは、膨張弁14の開度を増加させる制御が継続される(ステップS502で「No」)。
【0098】
一方、入口温度T1が第1温度以上になれば(ステップS502で「Yes」)、制御手段100が膨張弁14の開度の減少させる(ステップS503)。具体的には、制御手段100の演算部105が駆動部106に膨張弁14の開度を元に戻す指示信号を送信し、駆動部106がその指示信号に基づいて膨張弁14を制御する。これにより、膨張弁14の開度が減少し、室内側熱交換器21の温度が低下する。すなわち、凍結解除運転が終了して除湿運転が再開される。
【0099】
以上のように凍結解除運転を説明したが、圧縮機11及び膨張弁14を用いた凍結解除運転は同時に実行してもよく、片方のみを実行してもよい。なお、凍結解除運転として、冷房運転又は暖房運転又は室内側熱交換器21の全てを蒸発域とする除湿運転のいずれかを行ってもよい。また、圧縮機11及び膨張弁14を用いた凍結解除運転と組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本開示の一態様に係る空気調和機及び空気調和機の制御方法は、一般家庭で使用される空気調和機をはじめとして様々な空気調和機に広く適用できる。
【符号の説明】
【0101】
1 空気調和機
11 圧縮機
13 室外側熱交換器
14 膨張弁
21 室内側熱交換器
21a,21b,21c 主熱交換器
21d,21e 補助熱交換器
25 温度検知手段(入口温度検知手段)
26 温度検知手段(出口温度検知手段)
100 制御手段