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特開2023-104429空気調和機及び空気調和機の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023104429
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】空気調和機及び空気調和機の制御方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/65 20180101AFI20230721BHJP
   F24F 11/86 20180101ALI20230721BHJP
   F24F 11/89 20180101ALI20230721BHJP
   F24F 11/61 20180101ALI20230721BHJP
   F25B 49/02 20060101ALI20230721BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
F24F11/65
F24F11/86
F24F11/89
F24F11/61
F25B49/02 510B
F25B1/00 303
F25B1/00 304L
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022005406
(22)【出願日】2022-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】川畑 慶佑
(72)【発明者】
【氏名】藤田 直人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 周平
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AA01
3L260AB02
3L260BA32
3L260CB01
3L260CB06
3L260CB63
3L260DA01
3L260EA07
3L260FA02
3L260FB07
3L260HA02
3L260HA06
(57)【要約】
【課題】ハンチングが生じにくい空気調和機及び空気調和機の制御方法を提供する。
【解決手段】空気調和機は、圧縮機11、室外側熱交換器、膨張弁14および室内側熱交換器を接続して構成された冷媒回路と、室内側熱交換器の温度を検知する温度検知手段26と、冷媒回路を制御する制御手段100と、を備える。制御手段100は、除湿運転時において温度検知手段26により検知された温度が第一温度よりも高い状態から第一温度以下の状態に遷移した回数をカウントし、前記回数に基づいて除湿運転を一時停止させる。または、第一温度よりも高い状態から第一温度以下の状態に遷移し更に再度第一温度よりも高い状態に遷移した回数をカウントし、前記回数に基づいて除湿運転を一時停止させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、室外側熱交換器、膨張弁および室内側熱交換器を接続して構成された冷媒回路と、
前記室内側熱交換器の温度を検知する温度検知手段と、
前記冷媒回路を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、除湿運転時において前記温度検知手段により検知された温度が第一温度よりも高い状態から前記第一温度以下の状態に遷移した回数、または、前記第一温度よりも高い状態から前記第一温度以下の状態に遷移し更に再度前記第一温度よりも高い状態に遷移した回数をカウントし、前記回数に基づいて前記除湿運転を一時停止させることを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
前記制御手段は、前記回数が所定回数に達した場合に前記除湿運転を一時停止させることを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
前記制御手段は、前記除湿運転において、前記室内側熱交換器の一部を蒸発域とし、他部を過熱域とすることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の空気調和機。
【請求項4】
前記制御手段は、前記除湿運転において、前記蒸発域が予定していた領域よりも狭い場合には前記膨張弁の開度を増加させ、前記蒸発域が前記予定していた領域よりも広い場合には前記膨張弁の開度を減少させることを特徴とする請求項3に記載の空気調和機。
【請求項5】
前記制御手段は、前記除湿運転において、前記蒸発域の温度が第二温度以下の場合には前記膨張弁の開度を増加させ、前記蒸発域の温度が前記第二温度よりも高い第三温度以上の場合には前記膨張弁の開度を減少させることを特徴とする請求項3または4のいずれか1項に記載の空気調和機。
【請求項6】
前記温度検知手段は、前記予定していた領域の出口近傍に配置されていることを特徴とする請求項3~5のいずれか1項に記載の空気調和機。
【請求項7】
前記第一温度は露点温度以下に設定されていることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の空気調和機。
【請求項8】
前記制御手段は、前記カウントを一進めた後、次に前記カウントを一進めるまでに第一の時間が経過した場合、または、前記一時停止させた場合、前記カウントした回数をリセットすることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の空気調和機。
【請求項9】
前記制御手段は、前記一時停止を第二の時間継続させることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の空気調和機。
【請求項10】
圧縮機、室外側熱交換器、膨張弁および室内側熱交換器を接続して構成された冷媒回路と、
前記室内側熱交換器の温度を検知する温度検知手段と、
前記冷媒回路を制御する制御手段と、を備えた空気調和機の制御方法であって、
前記制御手段は、除湿運転時において前記温度検知手段により検知された温度が第一温度よりも高い状態から前記第一温度以下の状態に遷移した回数、または、前記第一温度よりも高い状態から前記第一温度以下の状態に遷移し更に再度前記第一温度よりも高い状態に遷移した回数をカウントし、前記回数に基づいて前記除湿運転を一時停止させることを特徴とする空気調和機の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気調和機及び空気調和機の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、室内側熱交換器の一部を蒸発域とし他部を過熱域として除湿運転を行う空気調和機が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09-014727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような空気調和機では除湿運転中にハンチングが生じうる。
【0005】
例えば室内側の負荷が小さいなどして室内側熱交換器の蒸発域の出口温度が下がり切らなかった場合は、出口温度を下げるために、膨張弁の開度を減少させる制御が働く。そうすると室内側熱交換器の入口温度が下がるため、今度は入口温度を上げるために、膨張弁の開度を増加させる制御が働く。これにより蒸発域の出口温度は再度上がるため、出口温度を下げるために再度膨張弁の開度を減少させる制御が働く。
【0006】
このように膨張弁の開閉が頻繁に繰り返えされるハンチングが生じると、室内側熱交換器が凍結したり、蒸発域及び過熱域を予定していた領域に維持できなかったりするおそれがある。
本開示は、上記の課題に鑑み、ハンチングが生じにくい空気調和機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る空気調和機は、圧縮機、室外側熱交換器、膨張弁および室内側熱交換器を接続して構成された冷媒回路と、前記室内側熱交換器の温度を検知する温度検知手段と、前記冷媒回路を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、除湿運転時において前記温度検知手段により検知された温度が第一温度よりも高い状態から前記第一温度以下の状態に遷移した回数、または、前記第一温度よりも高い状態から前記第一温度以下の状態に遷移し更に再度前記第一温度よりも高い状態に遷移した回数をカウントし、前記回数に基づいて前記除湿運転を一時停止させることを特徴とする。
【0008】
本開示の一態様に係る空気調和機の制御方法は、圧縮機、室外側熱交換器、膨張弁および室内側熱交換器を接続して構成された冷媒回路と、前記室内側熱交換器の温度を検知する温度検知手段と、前記冷媒回路を制御する制御手段と、を備えた空気調和機の制御方法であって、前記制御手段は、除湿運転時において前記温度検知手段により検知された温度が第一温度よりも高い状態から前記第一温度以下の状態に遷移した回数、または、前記第一温度よりも高い状態から前記第一温度以下の状態に遷移し更に再度前記第一温度よりも高い状態に遷移した回数をカウントし、前記回数に基づいて前記除湿運転を一時停止させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様に係る空気調和機及び空気調和機の制御方法は、温度検知手段により検知された温度が第一温度を超えている状態から前記第一温度以下の状態に遷移した回数をカウントし、前記回数に基づいて前記除湿運転を一時停止させる。または、前記第一温度を超えている状態から前記第一温度以下の状態に遷移し更に再度第一温度を超えている状態に遷移した回数をカウントし、前記回数に基づいて前記除湿運転を一時停止させる。そのため、ハンチングが生じにくい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施の形態に係る空気調和機を示す概略構成図
図2】室内側ユニットを示す断面図
図3】空気制御手段及びそれに接続された装置を示すブロック図
図4】室内側熱交換器の蒸発域及び過熱域を示す概略側面図
図5】除湿運転の制御処理を示すフローチャート
図6】膨張弁制御条件の決定処理を示すフローチャート
図7】目標入口温度テーブルを示す図
図8】目標出口温度テーブルを示す図
図9】ハンチング判定処理を示すフローチャート
図10】除湿運転時における出口温度の経時的変化の一例を示す図
図11】ハンチング判定処理を示すフローチャート
図12】除湿運転の一時停止処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示に係る空気調和機は、室内の温度、湿度、空気清浄等の制御を行う空調設備であり、例えば家庭用のエアコンである。
【0012】
<空気調和機の構成>
(概略構成)
図1は本実施の形態に係る空気調和機を示す概略構成図である。図1に示すように、本実施の形態に係る空気調和機1は、室外側ユニット10と室内側ユニット20とを備えている。
【0013】
室外側ユニット10と室内側ユニット20とは、配管2により接続されている。具体的には、室外側ユニット10が備える圧縮機11、四方弁12、室外側熱交換器13及び膨張弁14、並びに、室内側ユニット20が備える室内側熱交換器21が、配管2により接続されている。そして、圧縮機11、四方弁12、室外側熱交換器13、膨張弁14、室内側熱交換器21及び配管2により、冷凍回路が構成されている。なお、配管2には、四方弁12及び膨張弁14以外の各種弁(不図示)や、ストレーナ(不図示)等も接続されている。
【0014】
(室外側ユニットの構成)
室外側ユニット10は、圧縮機11、四方弁12、室外側熱交換器13、膨張弁14、室外側送風装置15、室外側制御手段101及びアキュームレータ(不図示)等を備えている。
【0015】
圧縮機11は、冷凍回路内の冷媒を圧縮して高温高圧にする。
【0016】
四方弁12は、冷凍回路内の冷媒が凝縮器に送り込まれるように、冷媒の流路を切り替える。具体的には、冷房運転時又は除湿運転時の四方弁12は、凝縮器として機能する室外側熱交換器13に冷媒が送り込まれるように、冷媒の流路を切り替える。一方、暖房運転時の四方弁12は、凝縮器として機能する室内側熱交換器21に冷媒が送り込まれるように、冷媒の流路を切り替える。
【0017】
室外側熱交換器13は、冷凍回路内の冷媒と室外側熱交換器13に送り込まれた空気との間の熱交換を行う。
【0018】
膨張弁14は、冷凍回路内の冷媒を減圧により膨張させて低温低圧にする。冷房運転時又は除湿運転時において、低温低圧となった冷媒は、膨張弁14から蒸発器として機能する室内側熱交換器21に送り込まれる。一方、暖房運転時において、低温低圧となった冷媒は、蒸発器として機能する室外側熱交換器13に送り込まれる。
【0019】
室外側送風装置15は、プロペラファン(不図示)を備え、プロペラファンの回転により室外側熱交換器13内を通過する空気の流れを生み出す。これにより、室外側熱交換器13における熱交換の効率が向上する。
【0020】
室外側制御手段101は、室外側ユニット10の動作を制御する。詳細については後述する。
【0021】
(室内側ユニットの構成)
図2は、室内側ユニットを示す断面図である。図1及び図2に示すように、室内側ユニット20は、室内側熱交換器21、室内側送風装置22、吸込口温度検知手段23、湿度検知手段24、入口温度検知手段25、出口温度検知手段26、フィルタ27、上下羽根28、室内側制御手段102、及び、それらを内包する筐体29を備えている。
【0022】
図2に示すように、筐体29の上面には、筐体29内に空気を吸い込むための吸込口29aが設けられている。また、筐体29の下面には、筐体29内の空気を筐体29外に吐き出すための吐出口29bが設けられている。
【0023】
室内側熱交換器21は、3つの主熱交換器21a~21cと、2つの補助熱交換器21d,21eとを備えている。
【0024】
主熱交換器21a~21cは、室内側送風装置22を取り囲むように、室内側送風装置22とフィルタ27との間に、略逆V字形に配置されている。
【0025】
補助熱交換器21d,21eは、室内側送風装置22とフィルタ27との間、且つ、室内側送風装置22に対して主熱交換器21a~21cよりも外側に配置されている。具体的には、補助熱交換器21dは、主熱交換器21aとフィルタ27との間に配置されており、補助熱交換器21eは、主熱交換器21bとフィルタ27との間に配置されている。
【0026】
主熱交換器21a~21c及び補助熱交換器21d,21eは、それぞれ配管(不図示)にフィン(不図示)を取り付けてなる構造である。主熱交換器21a~21c及び補助熱交換器21d,21eは、それぞれの配管内を流れる冷媒と室内側熱交換器21に送り込まれた空気との間の熱交換を行う。
【0027】
室内側送風装置22は、室内側熱交換器21に送り込まれる空気の流れ31,32を生み出す。具体的には、吸込口29aから吸い込まれ、フィルタ27、室内側熱交換器21及び室内側送風装置22を通過し、吐出口29bから吐き出される空気の流れ31,32を生み出す。これにより、室内側熱交換器21における熱交換の効率が向上する。
【0028】
空気の流れ31,32において、補助熱交換器21d,21eは、主熱交換器21a~21cよりも風上に配置されている。具体的には、空気の流れ31において補助熱交換器21dは主熱交換器21aよりも風上に配置されており、空気の流れ32において補助熱交換器21eは主熱交換器21bよりも風上に配置されている。
【0029】
図1に戻って、吸込口温度検知手段23は、筐体29内における吸込口29a近傍に配置されている。吸込口温度検知手段23は、吸込口29aから筐体29内に吸い込まれたのち室内側熱交換器21によって熱交換される前の空気の温度を検知する。以下では、吸込口温度検知手段23が検知する温度を「吸込口温度」と称する。
【0030】
湿度検知手段24は、筐体29内における吸込口29a近傍に配置されている。湿度検知手段24は、吸込口29aから筐体29内に吸い込まれたのち室内側熱交換器21によって熱交換される前の空気の湿度を検知する。
【0031】
入口温度検知手段25は、室内側熱交換器21の蒸発域(後述する)における冷媒の入口近傍の温度を検知する。以下では、入口温度検知手段25が検知する温度を「入口温度T1」と称する。
【0032】
出口温度検知手段26は、室内側熱交換器21の蒸発域における冷媒の出口近傍の温度を検知する。以下では、出口温度検知手段26が検知する温度を「出口温度T2」と称する。
【0033】
フィルタ27は、筐体29内の吸込口29a近傍に吸込口29aを塞ぐように配置されており、吸込口29aから筐体29内へ吸い込まれる空気中の埃や塵を除去する。
【0034】
上下羽根28は、筐体29の吐出口29b近傍に回動自在に設けられており、空気調和機1の運転時においては、吐出口29bから吐き出される空気の向きを調整する。また、上下羽根28は、空気調和機1の非運転時においては、吐出口29bを塞いでいる。
【0035】
室内側制御手段102は、室内側ユニット20の動作を制御する。詳細については後述する。
【0036】
(空気制御手段の構成)
図1に示すように、室外側ユニット10の室外側制御手段101と、室内側ユニット20の室内側制御手段102とで、制御手段100が構成されている。空気調和機1の運転は、制御手段100によって制御される。
【0037】
図3は、空気制御手段及びそれに接続された装置を示すブロック図である。図3に示すように、制御手段100は、取得部103、記憶部104、演算部105及び駆動部106を備えている。演算部105は、取得部103、記憶部104及び駆動部106のそれぞれと接続している。
【0038】
取得部103は、吸込口温度検知手段23、湿度検知手段24、入口温度検知手段25及び出口温度検知手段26と接続されている。取得部103は、吸込口温度検知手段23が検知した吸込口温度、湿度検知手段24が検知した湿度、入口温度検知手段25が検知した入口温度T1、出口温度検知手段26が検知した出口温度T2を取得する。
【0039】
記憶部104は、演算部105が温度テーブルを作成するための設定値を記憶している。
【0040】
演算部105は、取得部103及び記憶部104のそれぞれから情報を受け取り、それら情報に基づいて演算を行う。
【0041】
駆動部106は、圧縮機11及び膨張弁14と接続されている。駆動部106は、演算部105による演算の結果に基づいて、圧縮機11及び膨張弁14を駆動させるための指示信号を、圧縮機11及び膨張弁14に送信する。
【0042】
<空気調和機の動作>
(冷凍回路内の冷媒の流れ)
冷房運転時又は除湿運転時における冷凍回路内の冷媒の流れを説明する。
【0043】
冷房運転時又は除湿運転時において、冷凍回路内の気体状態の冷媒は、圧縮機11で圧縮されて高温高圧になる。高温高圧になった冷媒は、四方弁12を介して室外側熱交換器13に送り込まれる。室外側熱交換器13に送り込まれた冷媒は、室外側熱交換器13を通過する空気と熱交換を行う。この熱交換により気体状態の冷媒は凝縮し、液体状態の冷媒へと変化する。液体状態へと変化した冷媒は、膨張弁14を通過することにより低温低圧になり、これによって気液二相状態の冷媒となって、室内側熱交換器21に送り込まれる。
【0044】
室内側熱交換器21に送り込まれた気液二相状態の冷媒は、室内側熱交換器21を通過する空気と熱交換を行う。この熱交換により気液二相状態の冷媒は気体状態の冷媒へと変化する。気体状態へと変化した冷媒は、再度圧縮機11へ送り込まれる。
【0045】
以上のように、冷房運転時又は除湿運転時の冷媒は、圧縮機11、四方弁12、室外側熱交換器13、膨張弁14、室内側熱交換器21の順で、冷凍回路内を循環する。一方、暖房運転時の冷媒は、冷房運転時又は除湿運転時とは逆回転で冷凍回路内を循環する。
【0046】
(室内側熱交換器の蒸発域及び過熱域)
空気調和機1は、室内側熱交換器21の一部を蒸発域とする除湿運転と、室内側熱交換器21の全部を蒸発域とする除湿運転とを、選択的に行うことができる。使用者は、いずれの除湿運転を行うのかを、リモートコントローラー(不図示)等を操作することにより選択することができる。以下では、室内側熱交換器21の一部を蒸発域とする除湿運転時における室内側熱交換器21について詳細に説明する。なお、空気調和機1は、室内側熱交換器21の一部を蒸発域とする除湿運転のみが行え、室内側熱交換器21の全部を蒸発域とする除湿運転は行えない仕様であってもよく、冷房運転時若しくは室内側熱交換器21の全部を蒸発域とする除湿運転時に、ある条件(例えば室内外が所定の温度、室内が所定の湿度、圧縮機11が所定の稼働時間に達した時)を満たした際に室内側熱交換器21の一部を蒸発域とする除湿運転を行う仕様であってもよい。
【0047】
図4は、室内側熱交換器の蒸発域及び過熱域を示す概略側面図である。除湿運転時における室内側熱交換器21は、例えば図4に示すようにして蒸発域と過熱域とに分かれる。図4において円内に「×」が記入された部分が蒸発域であり、円内に「〇」が記入された部分が過熱域である。すなわち、主熱交換器21aは全てが過熱域である。主熱交換器21b及び主熱交換器21cのそれぞれは一部が蒸発域であり他部が過熱域である。補助熱交換器21d,21eのそれぞれは全てが蒸発域である。
【0048】
主熱交換器21a~21c及び補助熱交換器21d,21eは、配管50~60によって接続されている。具体的には、膨張弁14(図4においては不図示)は補助熱交換器21dと配管50で接続されている。補助熱交換器21dは補助熱交換器21eと配管51で接続されている。補助熱交換器21eは主熱交換器21bの蒸発域と配管52で接続されている。主熱交換器21bの蒸発域は主熱交換器21cの蒸発域と配管53で接続されている。そして、補助熱交換器21dと、補助熱交換器21eと、主熱交換器21bの蒸発域と、主熱交換器21cの蒸発域とによって、室内側熱交換器21の蒸発域が構成されている。
【0049】
主熱交換器21cの蒸発域は主熱交換器21aと配管54及び配管55で接続されている。主熱交換器21aは主熱交換器21bの過熱域の一部と配管56で接続されている。主熱交換器21bの過熱域の一部は圧縮機11(図4においては不図示)と配管57で接続されている。そして、主熱交換器21aと、主熱交換器21bの過熱域の一部とによって、室内側熱交換器21の第1過熱域が構成されている。
【0050】
主熱交換器21cの蒸発域は主熱交換器21bの過熱域の他部とも配管54及び配管58で接続されている。主熱交換器21bの過熱域の他部は主熱交換器21cの過熱域と配管59で接続されている。主熱交換器21cの過熱域は圧縮機11(図4においては不図示)と配管60で接続されている。そして、主熱交換器21bの過熱域の他部と、主熱交換器21cの過熱域とによって、室内側熱交換器21の第2過熱域が構成されている。
【0051】
以上のように説明した蒸発域及び過熱域は、厳密には、蒸発域及び過熱域となるよう予定している領域であって、実際には、蒸発域及び過熱域は予定していた領域よりも狭くなったり広くなったりしうる。より具体的には、蒸発域の入口の位置と過熱域の出口の位置とは変動しないが、蒸発域の出口の位置と過熱域の入口の位置とは変動しうる。すなわち、蒸発域と過熱域とは、蒸発域が狭くなると過熱域が広くなり、蒸発域が広くなると過熱域が狭くなる関係である。そこで、蒸発域及び過熱域を予定していた領域に維持するために、制御手段100によって膨張弁14の開閉が制御される。これについての詳細は後述する。
【0052】
膨張弁14から送り込まれた冷媒は、まず室内側熱交換器21における蒸発域へ流入し、次に分岐して第1過熱域及び第2過熱域を通過し、それら過熱域から流出して圧縮機11に送り込まれる。具体的には、膨張弁14から送り込まれた冷媒は、配管50から補助熱交換器21dに流入し、配管51、補助熱交換器21e、配管52、主熱交換器21bの蒸発域、配管53、主熱交換器21cの蒸発域を通過する。次に、配管54が配管55と配管58に分岐するため、主熱交換器21a、配管56、主熱交換器21bの過熱域の一部で構成されるルート、又は、主熱交換器21bの過熱域の他部、配管59、主熱交換器21cの過熱域で構成されるルートを通過し、配管57又は配管60から流出して圧縮機11に送り込まれる。
【0053】
入口温度検知手段25は、室内側熱交換器21の蒸発域の入口近傍に設けられている。より具体的には、入口温度検知手段25は、補助熱交換器21d近傍に設けられている。上述したとおり、室内側熱交換器21の蒸発域は、補助熱交換器21dと、補助熱交換器21eと、主熱交換器21bの蒸発域と、主熱交換器21cの蒸発域とによって構成されており、それらのうち最も上流は補助熱交換器21dである。したがって、最も上流の補助熱交換器21dに接続された配管50が蒸発域の入口近傍に該当する。したがって、入口温度検知手段25は、配管50に設けられている。
【0054】
このように蒸発域に冷媒が流入する配管50に入口温度検知手段25が設けられているため、室内側熱交換器21の蒸発域の入口近傍の温度を正確に測定することができる。したがって、室内側熱交換器21の凍結による目詰まりを抑制する制御や、凍結解除運転を行う際に、効率よく温度制御することができる。
【0055】
出口温度検知手段26は、室内側熱交換器21の蒸発域の出口近傍に設けられている。繰り返しになるが、室内側熱交換器21の蒸発域は、補助熱交換器21dと、補助熱交換器21eと、主熱交換器21bの蒸発域と、主熱交換器21cの蒸発域とによって構成されているため、それらのうち最も下流は主熱交換器21cの蒸発域である。したがって、最も下流の主熱交換器21cの蒸発域に接続された配管54が蒸発域の出口近傍に該当する。したがって、出口温度検知手段26は、配管54に設けられている。
【0056】
なお、出口温度検知手段26が設けられる蒸発域の出口近傍とは、厳密には、蒸発域となるよう予定していた領域の出口近傍を意味する。上述したとおり、除湿運転中の蒸発域は狭くなったり広くなったりしうる。また、除湿運転中の蒸発域の出口の位置は変動しうる。そのため、出口温度検知手段26は、蒸発域となるよう予定していた領域の出口近傍に設けられる。具体的には出口近傍とは、例えば、主熱交換器21cの蒸発域、配管54、配管55、配管58が該当し、本実施の形態において出口温度検知手段26は配管54に設けられている。
【0057】
このように蒸発域から冷媒が流出する配管54に出口温度検知手段26が設けられているため、室内側熱交換器21の蒸発域の出口近傍の温度を正確に測定することができる。したがって、出口温度検知手段26で検知した室内側熱交換器21の蒸発域の出口近傍の温度と吸込口温度検知手段23で検知した吸込口温度とが略同一である場合には蒸発が終了したことが検知できる。
【0058】
なお、入口温度検知手段25及び出口温度検知手段26を設ける箇所は上記に限定されない。入口温度検知手段25は、配管50の上流、つまり膨張弁14近傍に設けられてもよい。この配置により、冷媒の温度が最も低下する温度を検知することができる。さらに、入口温度検知手段25は、蒸発域の配管に設けられてもよく、例えば配管51、配管52、配管53に設けられてもよい。
【0059】
出口温度検知手段26は、配管54から分岐した配管55及び配管58に設けられていてもよい。この配置により出口温度検知手段26は、分岐後の冷媒が流れる配管の温度を検知することができる。さらに、出口温度検知手段26は、配管55及び配管58の下流側、つまり主熱交換器21a及び/又は主熱交換器21bの近傍に設けられてもよい。この配置により、主熱交換器21a及び/又は主熱交換器21bの過熱域となる温度をより正確に検知することができる。
【0060】
<空気調和機の制御方法>
(除湿運転の制御処理)
図5は、除湿運転の制御処理を示すフローチャートである。図5に示すように、使用者により第1除湿運転ボタンが押されるなどによって除湿運転が開始されると、制御手段100は、膨張弁制御条件の決定処理を行う(ステップS101)。なお、膨張弁制御条件の決定処理の詳細については後述する。
【0061】
膨張弁制御条件の決定処理が終了すると、制御手段100は、入口温度T1が上限温度(第三温度)以上か否かを判定する(ステップS102)。なお、上限温度とは、後述する膨張弁制御条件の決定処理で決定される温度である。
【0062】
入口温度T1が上限温度以上であれば(ステップS102で「Yes」)、制御手段100は、駆動部106に膨張弁14の開度を減少させる指示信号を送信し、駆動部106が膨張弁14の開度を減少させる(ステップS107)。
【0063】
膨張弁14の開度が減少すると、制御手段100は、除湿運転が停止しているか否かを判断し(S109)、除湿運転が停止していれば(ステップS109で「Yes」)、除湿運転の制御処理を終了する。除湿運転が停止していなければ(ステップS109で「No」)、膨張弁制御条件の決定処理を再度行う(ステップS101)。
【0064】
ステップS102に戻って、入口温度T1が上限温度(第三温度)以上でなければ(ステップS102で「No」)、制御手段100は、加熱温度T3が上限温度以上か否かを判定する(ステップS103)。加熱温度T3が上限温度以上であれば(ステップS103で「Yes」)、制御手段100は、駆動部106に膨張弁14の開度を減少させる指示信号を送信し、駆動部106が膨張弁14の開度を減少させる(ステップS107)。膨張弁14の開度が減少した後の処理は上述のとおりである。
【0065】
ステップS103に戻って、加熱温度T3が上限温度以上でなければ(ステップS103で「No」)、制御手段100は、入口温度T1が下限温度(第二温度)以下か否かを判定する(ステップS104)。なお、下限温度とは、後述する膨張弁制御条件の決定処理で決定される温度である。
【0066】
入口温度T1が下限温度以下であれば(ステップS104で「Yes」)、制御手段100は、駆動部106に膨張弁14の開度を増加させる指示信号を送信し、駆動部106が膨張弁14の開度を増加させる(ステップS108)。
【0067】
膨張弁14の開度が増加すると、制御手段100は、除湿運転が停止しているか否かを判断し(S109)、除湿運転が停止していれば(ステップS109で「Yes」)、除湿運転の制御処理を終了する。除湿運転が停止していなければ(ステップS109で「Yes」)、膨張弁制御条件の決定処理を再度行う(ステップS101)。
【0068】
一方、ステップS104に戻って、入口温度T1が下限温度(第二温度)以下でなければ(ステップS104で「No」)、制御手段100は、加熱温度T3が下限温度以下か否かを判定する(ステップS105)。加熱温度T3が下限温度以下であれば(ステップS105で「Yes」)、制御手段100は、駆動部106に膨張弁14の開度を増加させる指示信号を送信し、駆動部106が膨張弁14の開度を増加させる(ステップS108)。膨張弁14の開度が増加した後の処理は上述のとおりである。
【0069】
ステップS105に戻って、加熱温度T3が下限温度以下でなければステップS105で「No」)、制御手段100は、入口温度T1及び加熱温度T3が安定領域内に収まっていると判断し、膨張弁14の開度を維持する(ステップS106)。さらに、制御手段100は、除湿運転が停止しているか否かを判断し(S109)、除湿運転が停止していれば(ステップS109で「Yes」)、除湿運転の制御処理を終了する。除湿運転が停止していなければ(ステップS109で「Yes」)、膨張弁制御条件の決定処理を再度行う(ステップS101)。
【0070】
以上のように、入口温度T1及び加熱温度T3の少なくとも一方が上限温度以上の場合は膨張弁14の開度を減少させ、入口温度T1及び加熱温度T3の少なくとも一方が下限温度以下の場合は膨張弁14の開度を増加させる。そして、それ以外の場合は膨張弁14の開度を維持する。
【0071】
(膨張弁制御条件の決定処理)
図6は、膨張弁制御条件の決定処理を示すフローチャートである。図6に示すように、膨張弁制御条件の決定処理において、取得部103は、吸込口温度検知手段23が検知した吸込口温度に関する情報(吸込口温度情報)を吸込口温度検知手段23から取得する(ステップS201)。また、取得部103は、湿度検知手段24が検知した湿度に関する情報(湿度情報)を湿度検知手段24から取得する(ステップS202)。なお、吸込口温度情報の取得と湿度情報の取得は、どちらが先であってもよいし、両方同時であってもよい。
【0072】
次に、演算部105は、取得部103が取得した吸込口温度情報及び湿度情報と、記憶部104に予め記憶させておいた設定値に基づいて、露点温度の決定を行う(ステップS203)。
【0073】
次に、演算部105は、露点温度と記憶部104の情報に基づいて目標入口温度テーブルを決定する(ステップS204)。ここで、目標入口温度テーブルとは、入口温度検知手段25によって検知された入口温度T1が安定領域内に収まるように膨張弁14の開度を制御することを目標とした温度テーブルである。目標入口温度テーブルの決定する方法の詳細は後述する。
【0074】
次に、演算部105は、露点温度と記憶部104の情報に基づいて目標出口温度テーブルを決定する(ステップS205)。ここで、目標出口温度テーブルとは、吸込口温度から出口温度検知手段26によって検知された出口温度T2を差し引いて求めた温度(以下、「加熱温度T3」と称する)が安定領域内に収まるように膨張弁14の開度を制御することを目標とした温度テーブルである。目標出口温度テーブルの決定する方法の詳細は後述する。
【0075】
なお、目標入口温度テーブルの決定と目標出口温度テーブルの決定とは、どちらが先であってもよいし、両方同時であってもよい。
【0076】
(目標入口温度テーブル)
図7は、目標入口温度テーブルを示す図である。図7に示すように、本実施形態において、目標入口温度テーブルは温度が高い順に開度減少領域A、開度減少領域B、安定領域、開度増加領域B、開度増加領域Aの5つの領域帯が決定される。開度増加領域A及び開度増加領域Bは、膨張弁14の開度を増加させる領域であり、開度減少領域A及び開度減少領域Bは、膨張弁14の開度を減少させる領域である。ここで安定領域時の膨張弁14の開度を基準としたときに、開度の増加する大きさは開度増加領域A>開度増加領域Bであり、開度の減少する大きさは開度減少領域A>開度減少領域Bである。
【0077】
このように領域帯を決定することで、入口温度T1が開度減少領域A及び開度減少領域Bのような安定領域よりも高い温度帯(第三温度以上)にあったとしても、膨張弁14の開度を減少させることで、入口温度T1を安定領域まで低下させることができ、室内側熱交換器21を通過する室内の空気を露点温度以下に低下させ、除湿を行うことができる。また、入口温度T1が開度増加領域A及び開度増加領域Bのような安定領域よりも低い温度帯(第二温度以下)にあったとしても、膨張弁14の開度を増加させることで、室内側熱交換器21の入口近傍の凍結を抑制することができ、凍結で目詰まりすることなく安定した除湿を行うことができる。
【0078】
これらの領域帯はTI1、TI2、TI3、TI4、TI1+1、TI2+1、TI3+1、TI4+1の8つの温度により分けられる。このうち、TI1、TI2、TI1+1、TI2+1は、除湿運転の制御処理において膨張弁14の開度を減少させる判断の基準となる上限温度(第三温度)を示す。また、TI3、TI4、TI3+1、TI4+1は、除湿運転の制御処理において膨張弁14の開度を増加させる判断の基準となる下限温度(第二温度)を示す。
【0079】
さらに、別の角度から8つの温度を説明すると、TI1、TI2、TI3、TI4は、入口温度T1が低下時の境界温度を示し、TI1+1、TI2+1、TI3+1、TI4+1は、入口温度T1が上昇時の境界温度を示す。入口温度T1が上昇時の境界温度は、入口温度T1が低下時の境界温度よりも1℃高く設定される。なお、1℃に限られず、運転を正常に実施できる1℃以外の固定の値であってもよい。また固定の値ではなく、外部環境等により変化する可変の値であってもよい。
【0080】
例えば、入口温度T1が開度減少領域Aの範囲内の温度である時、開度減少領域Bへの境界温度はTI1であり、開度減少領域Bから安定領域に減少するときの境界線はTI2である。一方、入口温度T1が安定領域の範囲の温度である時、開度減少領域Bへの境界温度はTI2+1であり、開度減少領域Bから開度減少領域Aへの境界温度はTI1+1である。
【0081】
(目標出口温度テーブル)
図8は目標出口温度テーブルを示す図である。図8に示すように、本実施形態において、目標出口温度テーブルは温度が高い順に開度減少領域C、開度減少領域D、安定領域、開度増加領域D、開度増加領域Cの5つの領域帯が決定される。
【0082】
開度増加領域C及び開度増加領域Dは、膨張弁14の開度を増加させる領域であり、開度減少領域C及び開度減少領域Dは、膨張弁14の開度を減少させる領域である。ここで安定領域時の膨張弁14の開度を基準としたときに、開度の増加する大きさは開度増加領域C>開度増加領域Dであり、開度の減少する大きさは開度減少領域C>開度減少領域Dである。
【0083】
このように領域帯を設定することで、加熱温度T3が開度減少領域C及び開度減少領域Dのような安定領域よりも高い温度帯にあったとしても、膨張弁14の開度を減少させることで、加熱温度T3を安定領域まで低下させることができ、蒸発域の面積が所定範囲になるように制御できる。さらに、除湿された空気は過熱域に通ることで、温められ室温に近い空気を室内に排出することができる。また、加熱温度T3が開度増加領域C及び開度増加領域Dのような安定領域をよりも低い温度帯にあったとしても、膨張弁14の開度を増加させることで、加熱温度T3の温度を安定領域まで上昇でき、過熱域の面積が広くなることでの除湿性能の低下を抑制することができる。
【0084】
それ故、加熱温度T3に基づいて、蒸発域が予定していた領域よりも狭い場合には膨張弁14の開度を増加し、蒸発域が予定していた領域よりも広い場合には膨張弁14の開度を減少し、蒸発域を予定していた領域に維持するための制御を行う。
【0085】
これらの領域帯はTO1、TO2、TO3、TO4、TO1+1、TO2+1、TO3+1、TO4+1の8つの温度により分けられる。このうち、TO1、TO2、TO1+1、TO2+1は、除湿運転の制御処理において膨張弁14の開度を減少させる判断の基準となる上限温度を示す。また、TO3、TO4、TO3+1、TO4+1は、除湿運転の制御処理において膨張弁14の開度を増加させる判断の基準となる下限温度を示す。
【0086】
さらに、別の角度から8つの温度を説明すると、TO1、TO2、TO3、TO4は加熱温度T3が低下時の境界温度を示し、TO1+1、TO2+1、TO3+1、TO4+1は加熱温度T3が上昇時の境界温度を示す。加熱温度T3が上昇時の境界温度は、加熱温度T3が低下時の境界温度よりも1℃高く設定される。なお、1℃に限られず、運転を正常に実施できる1℃以外の固定の値であってもよい。また固定の値ではなく、外部環境等により変化する可変の値であってもよい。
【0087】
例えば、加熱温度T3が開度減少領域Cの範囲内の温度である時、開度減少領域Dへの境界温度はTO1であり、開度減少領域Dから安定領域に減少するときの境界温度はTO2である。一方、加熱温度T3が安定領域内の温度である時、開度減少領域Dへの境界温度はTO2+1であり、開度減少領域Dから開度減少領域Cへの境界温度はTO1+1である。
【0088】
ところで、目標入口温度テーブル及び目標出口温度テーブルに関しては、出口側と入口側で異なる制御の指令を出す場合が想定される。そのため、空気調和機1では、入口側「膨張弁開度減少」>出口側「膨張弁開度減少」>入口側「膨張弁開度増加」>出口側「膨張弁開度増加」という優先順位を設定する。
【0089】
(ハンチング判定処理)
空気調和機1では、ハンチングを防止すべく、出口温度T2に基づいてハンチングを判定する制御を行う。具体的には、出口温度T2が第一温度(露点温度以下の温度であり、例えば「吸込口温度-5℃」)よりも高い状態から、第一温度以下の状態に遷移した回数をカウントし、その回数に基づいて除湿運転を一時停止させる制御を行う。
【0090】
図9は、ハンチング判定処理を示すフローチャートである。図9に示すように、除湿運転が開始すると、制御手段100は、出口温度T2が第一温度よりも高いか否か判定する(ステップS301)。
【0091】
ここで第一温度は、図5のステップS103における加熱温度T3の上限温度に相関する値に設定されている。従って、出口温度T2が第一温度以下になると、加熱温度T3が上限温度よりも高くなるので、制御手段100により膨張弁14の開度は減少し、出口温度T2は上昇する。なお、本実施の形態において第一温度を露点温度以下、例えば吸込口温度-5℃に設定することで、過度にハンチングを判定せず、安定した除湿運転を実行することができる。
【0092】
出口温度T2が第一温度よりも高くない場合(ステップS301で「No」)、出口温度T2と第一温度とを比較し続ける。一方、出口温度T2が第一温度よりも高い場合(ステップS301で「Yes」)、出口温度T2が第一温度以下であるか否かを判定する(ステップS302)。
出口温度T2が第一温度以下ではない場合(ステップS302で「No」)、出口温度T2が第一温度以下になるまで比較し続ける。一方、出口温度T2が第一温度以下である場合(ステップS302で「Yes」)、カウントした回数が0でないか否かを判定する(ステップS303)。
【0093】
カウントした回数が0ある場合(ステップS303で「No」)、カウントを一進める(ステップS306)。
【0094】
カウントを一進めた後は第一の時間の計測を開始する(ステップS307)。
【0095】
次にカウントした回数が所定回数(例えば3回)に到達しているか否か判定する。(ステップS308)。
【0096】
次にカウントした回数が所定回数に到達していなければ(ステップS308で「No」)、カウントした回数を記憶したまま、出口温度T2が第一温度よりも高いか否か判定を行う(ステップS301)。
【0097】
ステップS303に戻って、カウントした回数が0でない場合(ステップS303で「Yes」)、ステップS307で計測開始した時間が第一の時間(例えば10分)を経過しているか否か判定する(ステップS304)。
【0098】
第一の時間を経過していなければ(ステップS304で「No」)、カウントを一進める(ステップS306)。一方、第一の時間を経過していれば(ステップS304で「Yes」)、カウントしていた回数をリセットし(ステップS305)、カウントを一進める(ステップS306)。
このようにカウントを一進めた後、次にカウントを一進めるまでに第一の時間が経過した場合にはカウントした回数をリセットすることにより、ハンチングを正確に判定することができる。
【0099】
ステップS308に戻って、カウントした回数が所定回数(例えば3回)に到達した場合(ステップS308で「Yes」)、ハンチングしたと判定し、制御手段100は後述する除湿運転の一時停止を行う(ステップS309)。
【0100】
次にユーザーの操作等による除湿運転の停止信号を受信しているか否か判定し(ステップS310)、受信している場合(ステップS310で「Yes」)、ハンチング判定処理を終了する。一方、受信していない場合(ステップS310で「No」)、再度出口温度T2が第一温度よりも高いか否かを判定する(ステップS301)。
【0101】
図10は、除湿運転時における出口温度と経過時間との関係を示す図である。図10に示す例では、除湿運転が開始された後、出口温度T2が第一温度以下になると、カウントを一進めている(カウント1回)。次に、第一の時間未満である8分経過後に出口温度T2が再度第一温度以下になると、カウントを更に一進めている(カウント2回)。次に、第一の時間以上である11分を経過後に出口温度T2が再度第一温度以下になると、カウントした回数を一度リセットした後でカウントを一進めている(カウント1回)。次に、第一の時間未満である8分経過後に出口温度T2が再度第一温度以下になると、カウントを更に一進めている(カウント2回)。次に、第一の時間未満である9分経過後に出口温度T2が再度第一温度以下になると、カウントを更に一進めている(カウント3回)。このようにしてカウントした回数が所定回数(3回)に到達した場合に、制御手段100はハンチングしたと判定する。
【0102】
なお、上記の制御では第一温度以下の状態に遷移した回数をカウントし、その回数に基づいて除湿運転を一時停止させる制御を行っているが、第一温度よりも高い状態から第一温度以下の状態に遷移し更に再度第一温度よりも高い状態に遷移した回数をカウントし、その回数に基づいて前記除湿運転を一時停止させてもよい。次に、その場合のハンチング判定処理について説明する。
【0103】
図11はハンチング判定処理を示すフローチャート図である。図11に示すハンチング判定処理の場合も、図9に示すハンチング判定処理と同様に、除湿運転が開始すると、制御手段100は、出口温度T2が第一温度よりも高いか否か判定する(ステップS301)。
【0104】
出口温度T2が第一温度よりも高くない場合(ステップS301で「No」)、出口温度T2と第一温度とを比較し続ける。一方、出口温度T2が第一温度よりも高い場合(ステップS301で「Yes」)、出口温度T2が第一温度以下であるか否かを判定する(ステップS302)。
【0105】
出口温度T2が第一温度以下ではない場合(ステップS302で「No」)、出口温度T2が第一温度以下になるまで比較し続ける。一方、出口温度T2が第一温度以下である場合(ステップS302で「Yes」)、再度出口温度T2が第一温度よりも高いか否かを判定する(ステップS501)。
【0106】
出口温度T2が第一温度よりも高くない場合(ステップS501で「No」)、出口温度T2と第一温度とを比較し続ける。一方、出口温度T2が第一温度よりも高い場合(ステップS501で「Yes」)、カウントした回数が0でないか否かを判定する(ステップS303)。以下、ステップS303~ステップS310については図9に示すハンチング判定処理と同様である。
【0107】
以上のように室内側熱交換器21の一部を蒸発域とする除湿運転において、ハンチングを判定する制御について説明したが、各条件は上記に限定されない。例えば、本実施の形態においてハンチングを判定する所定回数を3回、第一の時間を10分としたが、これらの値に限られず、ハンチングを正しく判定できる回数と時間の組み合わせであればよい。
【0108】
また、本実施の形態において、第一温度を露点温度以下としたが、露点温度以上であってもよい。第一温度を露点温度以上に設定した場合、出口温度T2が露点温度以下の状態になるとカウントが進みハンチングしたと判定されるため、過熱域では除湿効果が生じない。したがって、過熱域において除湿された空気を効率よく暖めることができる。
【0109】
また、本実施の形態において、カウントをリセットするタイミング(ステップS304、ステップS305)を、出口温度T2が第一温度以下の状態になった後(ステップ302)に設定しているが、これに限られない。例えば、出口温度T2が第一温度以下の状態になる(ステップS302)前に第一の時間を経過しているか否か判定し、第一の時間を経過していればカウントをリセットしてもよい。
【0110】
また、本実施の形態において、ステップS301では第一温度と出口温度T2を比較しているが、第一温度の代わりに第一温度より高い温度である第四温度と出口温度T2を比較してもよい。これにより、除湿運転の制御が安定しない場合に、出口温度T2が第一温度付近で上下し、ハンチングしたと判定してしまうことを防止できる。
【0111】
以下に、出口温度T2が第一温度よりも高い状態から、第一温度以下の状態に遷移した回数、または出口温度T2が第一温度よりも高い状態から前記第一温度以下の状態に遷移し更に再度前記第一温度よりも高い状態に遷移した回数をカウントし、その回数に基づいて除湿運転を一時停止させる制御の詳細について説明する。
【0112】
(除湿運転の一時停止処理)
図12は、除湿運転の一時停止処理を示すフローチャートである。図12に示すように、制御手段100は、ハンチングしたと判定すると、正常な運転に戻すために除湿運転の停止を行う(ステップS401)。
【0113】
次に、制御手段100は、停止時間が第二の時間を経過しているか否か判定し(ステップS402)、経過してなければ(ステップS402で「No」)、第二の時間が経過するまで除湿運転の停止を継続させる。
【0114】
一方、停止時間が第二の時間を経過すれば(ステップS402で「Yes」)、制御手段100は除湿運転を再開させ(ステップS401)、除湿運転の一時停止を終了する。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本開示の一態様に係る空気調和機及び空気調和機の制御方法は、一般家庭で使用される空気調和機をはじめとして様々な空気調和機に広く適用できる。
【符号の説明】
【0116】
1 空気調和機
11 圧縮機
13 室外側熱交換器
14 膨張弁
21 室内側熱交換器
26 温度検知手段(出口温度検知手段)
100 制御手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12