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特開2023-104432台車用グリップ保護具、手押し棒及び台車
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023104432
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】台車用グリップ保護具、手押し棒及び台車
(51)【国際特許分類】
   B62B 5/06 20060101AFI20230721BHJP
   B62B 3/02 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
B62B5/06 A
B62B3/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022005412
(22)【出願日】2022-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】598022956
【氏名又は名称】株式会社大同機械
(74)【代理人】
【識別番号】100169591
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 浩嗣
(72)【発明者】
【氏名】宮本 幸伯
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 治雄
(72)【発明者】
【氏名】落合 康全
【テーマコード(参考)】
3D050
【Fターム(参考)】
3D050AA01
3D050BB02
3D050DD01
3D050EE09
3D050GG06
(57)【要約】
【課題】台車の隅に立てられた手押し棒に装着されたときに、より高い保護機能を発揮する台車用グリップ保護具を提供する。
【解決手段】本発明は、台車の4隅のうちの少なくとも1箇所に立てられた手押し棒に装着可能なグリップ保護具であって、上部支持部と下部支持部と3本以上の縦梁と1本以上の横梁とを有し、以下のように構成される。上部支持部は手押し棒の上方に取り付けられ、下部支持部は上部支持部よりも手押し棒の下側に取り付けられる。3本以上の縦梁のそれぞれは、上端を上部支持部に、下端を下部支持部にそれぞれ接続され、中央部で手押し棒から離れる方向に張り出している。横梁のそれぞれは、1本の縦梁から他の1本の縦梁まですべて縦梁に接続され、この横梁で接続された前記すべての縦梁1は、手押し棒を上方から見たときに、角度を90°以上として手押し棒から放射状に配置される。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
台車の4隅のうちの少なくとも1箇所に立てられた手押し棒に装着可能なグリップ保護具であって、上部支持部と下部支持部と3本以上の縦梁と1本以上の横梁とを有し、
前記上部支持部は、前記手押し棒の上方に取り付けられ、
前記下部支持部は、前記上部支持部よりも下側の前記手押し棒に取り付けられ、
前記3本以上の縦梁のそれぞれは、上端を前記上部支持部に、下端を前記下部支持部にそれぞれ接続され、中央部で前記手押し棒から離れる方向に張り出し、
前記1本以上の横梁のそれぞれは、1本の縦梁から他の1本の縦梁まですべて縦梁に接続され、
前記1本以上の横梁で接続された前記すべての縦梁1は、前記手押し棒を上方から見たときに、前記横梁の一端が接続された縦梁と前記横梁の他の一端が接続された縦梁との角度を90°以上として前記手押し棒から放射状に配置される、
グリップ保護具。
【請求項2】
請求項1において、前記3本以上の縦梁のそれぞれは、半円または半楕円形である、
グリップ保護具。
【請求項3】
請求項1において、前記手押し棒は単管であり、
前記上部支持部は、前記手押し棒である単管に挿入される内挿部と、前記単管の上端面を覆う天板とを有し、前記3本以上の縦梁のそれぞれの上端は前記天板に接続され、
前記下部支持部は、前記手押し棒である単管の外周面に接する環状である、
グリップ保護具。
【請求項4】
請求項1において、前記手押し棒は単管であり、
前記上部支持部は、前記手押し棒である単管の周囲を覆う外筒部と、前記単管の上端面を覆う天板とを有し、前記3本以上の縦梁のそれぞれの上端は前記天板に接続され、
前記下部支持部は、前記手押し棒である単管の外周面に接する環状である、
グリップ保護具。
【請求項5】
台車の4隅のうちの少なくとも1箇所に立てられた手押し棒が単管であり、
前記手押し棒に、請求項1から請求項4のうちのいずれか1項のグリップ保護具が装着された、
台車。
【請求項6】
台車の4隅のうちの少なくとも1箇所に立てられる長尺状の手押し棒であって、上部支持部と下部支持部と3本以上の縦梁と1本以上の横梁とを有するグリップ保護部を備え、
前記上部支持部は、前記手押し棒の上方の一部または前記手押し棒の上端に取り付けられる部材であり、
前記下部支持部は、前記上部支持部よりも下方の一部または前記手押し棒に取り付けられる部材であり、
前記3本以上の縦梁のそれぞれは、上端を前記上部支持部に、下端を前記下部支持部にそれぞれ接続され、中央部で前記手押し棒から離れる方向に張り出し、
前記1本以上の横梁のそれぞれは、1本の縦梁から他の1本の縦梁まですべて縦梁に接続され、
前記1本以上の横梁で接続された前記すべての縦梁1は、前記手押し棒を上方から見たときに、前記横梁の一端が接続された縦梁と前記横梁の他の一端が接続された縦梁との角度を90°以上として前記手押し棒から放射状に配置される、
手押し棒。
【請求項7】
請求項6の前記グリップ保護部において、前記3本以上の縦梁のそれぞれは、半円または半楕円形である、
手押し棒。
【請求項8】
請求項6の前記グリップ保護部において、
前記上部支持部は、前記手押し棒の上端面に取り付けられ、前記3本以上の縦梁のそれぞれの上端が接続される略円形もしくは多角形形状の板状であり、
前記下部支持部は、前記手押し棒の外周面に接する環状である、
手押し棒。
【請求項9】
請求項6から請求項8のうちのいずれか1項の手押し棒が装着された、
台車。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、台車用グリップ保護具、手押し棒及び台車に関し、特に建設現場等における貨物の運搬に用いられる台車に装着するグリップに好適に利用できるものである。
【背景技術】
【0002】
建設現場等では、種々の貨物の運搬が必要であり、台車等を使って運搬されている。建設現場等では安全が極めて重視されており、台車を操縦する手を台車と周囲の障害物との間に挟まれないように保護するための技術が種々提案されている。
【0003】
特許文献1に記載される運搬台車では、4隅に垂直に立てられた手押部材に取り付ける保護部材が開示されている。長尺状の手押部材に、手で掴む部分(グリップ部)の上下少なくとも一方に円板状の保護部材を取り付けることにより、グリップ部を掴む手が周囲の障害物と挟まれないように保護している。
【0004】
特許文献2には、資材等運搬用の一輪車において、ハンドル部分の手で掴む箇所を円形に囲む保護具を装着する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-39491号公報
【特許文献2】米国特許公報2015/0054241号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2について本発明者が検討した結果、以下のような新たな課題があることがわかった。即ち、従来の技術は、手の保護が十分ではないことがわかった。
【0007】
特許文献1に記載される保護部材によれば、周囲の障害物が例えば垂直で凹凸のない壁面のように長尺状の手押部材と平行する場合には、適切な保護が機能する。しかしながら、建設現場において台車が通行する場所には、種々の資材が積み上げられ、重機が停められるなど、不規則な凹凸をもった多くの障害物が存在するのが一般的である。特許文献1発明は、円形の保護部材がグリップ部を掴む手よりも先に周囲の障害物に接触することを前提として創作されているが、上述のような不規則な凹凸をもった障害物に対しては、十分な保護機能が働かない。
【0008】
特許文献1に記載される台車の4隅に立てられている手押部材に取り付ける保護部材を、特許文献2に記載されるような、手で掴む箇所を円形に囲む保護具に置き換えることにより、不規則な凹凸をもった障害物に対してもある程度の保護機能を期待することはできる。しかしながらこの場合でも保護機能は十分ではない。例えば、台車を横方向に動かしたときに手押部材と壁の間に挟まれることからは手を保護することができるが、台車を前方向に移動したときには、前方に突き出した障害物からは手を保護することができない。
【0009】
本発明の目的は、台車の隅に立てられた手押し棒に装着されたときに、より高い保護機能を発揮する台車用グリップ保護具を提供することである。
【0010】
このような課題を解決するための手段を以下に説明するが、その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、台車の4隅のうちの少なくとも1箇所に立てられた手押し棒に装着可能なグリップ保護具であって、上部支持部と下部支持部と3本以上の縦梁と1本以上の横梁とを有し、以下のように構成される。上部支持部は手押し棒の上方に取り付けられ、下部支持部は上部支持部よりも手押し棒の下側に取り付けられる。3本以上の縦梁のそれぞれは、上端を上部支持部に、下端を下部支持部にそれぞれ接続され、中央部で手押し棒から離れる方向に張り出している。横梁のそれぞれは、1本の縦梁から他の1本の縦梁まですべて縦梁に接続され、この横梁で接続されたすべての縦梁1は、手押し棒を上方から見たときに、角度を90°以上として手押し棒から放射状に配置される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によって得られる効果を簡単に説明すれば下記のとおりである。
【0013】
すなわち、台車の隅に立てられた手押し棒に装着されたときに、より高い保護機能を発揮する台車用グリップ保護具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明のグリップ保護具の第1の構成例を模式的に示す正面図である。
図2図2は、本発明のグリップ保護具の第1の構成例を模式的に示す上面図である。
図3図3は、本発明のグリップ保護具の第1の構成例を模式的に示す背面図である。
図4図4は、本発明のグリップ保護具の第1の構成例を模式的に示す底面図である。
図5図5は、本発明のグリップ保護具の第1の構成例を模式的に示す右側面図である。
図6図6は、本発明のグリップ保護具の第1の構成例を模式的に示す左側面図である。
図7図7は、本発明のグリップ保護具の第1の構成例を模式的に示す斜視図である。
図8図8は、本発明のグリップ保護具を台車に取り付けた使用例を示す説明図である。
図9図9は、本発明のグリップ保護具の第2の構成例を模式的に示す正面図である。
図10図10は、本発明のグリップ保護具の第2の構成例を模式的に示す上面図である。
図11図11は、本発明のグリップ保護具の第2の構成例を模式的に示す背面図である。
図12図12は、本発明のグリップ保護具の第2の構成例を模式的に示す底面図である。
図13図13は、本発明のグリップ保護具の第2の構成例を模式的に示す右側面図である。
図14図14は、本発明のグリップ保護具の第2の構成例を模式的に示す左側面図である。
図15図15は、本発明のグリップ保護具の第3の構成例を模式的に示す正面図である。
図16図16は、本発明のグリップ保護具の第3の構成例を模式的に示す上面図である。
図17図17は、本発明のグリップ保護具の第4の構成例を模式的に示す正面図である。
図18図18は、本発明のグリップ保護具の第4の構成例を模式的に示す上面図である。
図19図19は、本発明のグリップ保護具の第4の構成例を模式的に示す背面図である。
図20図20は、本発明のグリップ保護具の第4の構成例を模式的に示す底面図である。
図21図21は、本発明のグリップ保護具の第4の構成例を模式的に示す右側面図である。
図22図22は、本発明のグリップ保護具の第4の構成例を模式的に示す左側面図である。
図23図23は、本発明のグリップ保護具の第4の構成例を模式的に示す斜視図である。
図24図24は、第4の構成例のグリップ保護具を台車に取り付けた使用例を示す説明図である。
図25図25は、本発明のグリップ保護具の第5の構成例を模式的に示す正面図である。
図26図26は、本発明のグリップ保護具の第5の構成例を模式的に示す上面図である。
図27図27は、本発明のグリップ保護具の第5の構成例を模式的に示す背面図である。
図28図28は、本発明のグリップ保護具の第5の構成例を模式的に示す底面図である。
図29図29は、本発明のグリップ保護具の第5の構成例を模式的に示す右側面図である。
図30図30は、本発明のグリップ保護具の第5の構成例を模式的に示す左側面図である。
図31図31は、本発明のグリップ保護具の第1の構成例の変形例を模式的に示す正面図である。
図32図32は、本発明のグリップ保護具の第1と第4の構成例における上部支持部の変形例を模式的に示す説明図である。
図33図33は、本発明のグリップ保護具の第4の構成例における取付機構の構成例の1つを模式的に示す正面図である。
図34図34は、図33の取付機構を構成するストッパーの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される代表的な実施の形態について概要を説明する。代表的な実施の形態についての概要説明で括弧を付して参照する図面中の参照符号はそれが付された構成要素の概念に含まれるものを例示するに過ぎない。
【0016】
〔1〕手押し棒に装着するグリップ保護具
本願において開示される代表的な実施の形態は、台車(20)の4隅のうちの少なくとも1箇所に立てられた手押し棒(11)に装着可能なグリップ保護具(10)であって、上部支持部(3)と下部支持部(5)と3本以上の縦梁(1)と1本以上の横梁(2)とを有し、以下のように構成される。ここで、手押し棒は、台車の荷台から概ね垂直に立ち上がる柱状の長尺部材、例えば単管である。
【0017】
前記上部支持部は、前記手押し棒の上方に取り付けられる。ここで、手押し棒の上方とは、上端部でもよいし中間でも良い。
前記下部支持部は、前記上部支持部よりも下側の前記手押し棒に取り付けられる。
前記3本以上の縦梁のそれぞれは、上端を前記上部支持部に、下端を前記下部支持部にそれぞれ接続され、中央部で前記手押し棒から離れる方向に張り出す。
前記1本以上の横梁のそれぞれは、1本の縦梁から他の1本の縦梁まですべて縦梁に接続される。
前記1本以上の横梁で接続された前記すべての縦梁1は、前記手押し棒を上方から見たときに、前記横梁の一端が接続された縦梁と前記横梁の他の一端が接続された縦梁との角度(θ)を90°以上として前記手押し棒を中心として放射状に配置される。
【0018】
これにより、本発明のグリップ保護具は、台車の隅に立てられた手押し棒に装着されたときに、より高い保護機能を発揮する。グリップ保護具(10)は、作業者が上部支持部(3)と下部支持部(5)間で手押し棒(11)を掴んで台車(20)を操作するときに、台車(20)の進行方向である前方と側面を3本以上の縦梁(1)と1本以上の横梁(2)とで掴んだ作業者の手を覆うことができ、高い保護機能を発揮する。角度は、台車の前方と側面を覆うために90°以上とすることが望ましく、90°以上270°以下であるとよい。角度が大きいほど保護の性能が高くなるが、手押し棒(11)を掴むために手を出し入れする残りの開放部分の角度が小さくなるため作業性が低下する。保護性能と作業性のバランスを考慮して適切に設計されると良い。また、縦梁(1)と横梁(2)の数や太さ(幅)は、保護性能を考慮して適切に設計されるとよい。数を増やし、また太さ(幅)を大きくすることによって、手を保護する性能は向上するが、使用する部材の量が増えてコストが増加し、また全体の重量も大きくなる。
【0019】
〔2〕縦梁は半円または半楕円
〔1〕のグリップ保護具において、前記3本以上の縦梁のそれぞれは、半円または半楕円形である。
【0020】
これにより、縦梁が周囲の障害物に接触したときに外から加わる力が、概ね均等に分散して吸収され、強度のある縦梁が実現できる。縦梁の形状は、〔1〕のとおり上端を上部支持部に、下端を下部支持部にそれぞれ接続され、中央部で手押し棒から離れる方向に張り出す構造であれば、如何なる形状であってもよい。例えば、正6角形の半分を構成する3辺のような折れ線の構造でもよい。その中でも〔2〕に規定するように、縦梁の形状を半円または半楕円形とすることにより、外から加わる力を均等に分散して吸収する作用が効果的に発揮され、最も好適である。
【0021】
〔3〕単管に着脱が容易なグリップ保護具
〔1〕において、前記手押し棒は単管であり、グリップ保護具の前記上部支持部は、前記手押し棒である単管に挿入される内挿部(4)と、前記単管の上端面を覆う天板(3)とを有し、前記3本以上の縦梁のそれぞれの上端は前記天板に接続され、前記下部支持部は、前記手押し棒である単管の外周面に接する環状である。
【0022】
これにより、本実施形態のグリップ保護具は、手押し棒への着脱が容易となる。
【0023】
〔4〕手で握る部分(外筒部)(図31
〔1〕において、前記手押し棒は単管であり、グリップ保護具の前記上部支持部は、前記手押し棒である単管の周囲を覆う外筒部(6)と、前記単管の上端面を覆う天板とを有し、前記3本以上の縦梁のそれぞれの上端は前記天板に接続され、前記下部支持部は、前記手押し棒である単管の外周面に接する環状である。
【0024】
これにより、本実施形態のグリップ保護具は、手押し棒への着脱が容易となる。
【0025】
〔5〕グリップ保護具が装着された台車(図8図24
本願において開示される代表的な実施の形態は、台車であって、その台車の4隅のうちの少なくとも1箇所に立てられた手押し棒が単管であり、その手押し棒に、〔1〕から〔4〕のうちのいずれか1項のグリップ保護具が装着されている。
【0026】
これにより、隅に立てられた手押し棒を操作するときにより安全な台車を提供することができる。
【0027】
〔6〕グリップ保護部を備える手押し棒
本願において開示される代表的な実施の形態は、台車(20)の4隅のうちの少なくとも1箇所に立てられる長尺状の手押し棒(11)であって、上部支持部(3)と下部支持部(5)と3本以上の縦梁(1)と1本以上の横梁(2)とを有するグリップ保護部(10)を備え、以下のように構成される。
【0028】
前記上部支持部は、前記手押し棒の上方の一部または前記手押し棒の上端に取り付けられる部材であり、前記下部支持部は、前記上部支持部よりも下方の一部または前記手押し棒に取り付けられる部材である。
前記3本以上の縦梁のそれぞれは、上端を前記上部支持部に、下端を前記下部支持部にそれぞれ接続され、中央部で前記手押し棒から離れる方向に張り出している。
前記1本以上の横梁のそれぞれは、1本の縦梁から他の1本の縦梁まですべて縦梁に接続され、前記1本以上の横梁で接続された前記すべての縦梁1は、前記手押し棒を上方から見たときに、前記横梁の一端が接続された縦梁と前記横梁の他の一端が接続された縦梁との角度(θ)を90°以上として前記手押し棒を中心として放射状に配置される。
【0029】
これにより、台車の隅に立てられ台車を操作するときに、より高い保護機能を発揮するグリップ保護部を備えた手押し棒を提供することができる。グリップ保護部は手押し棒と一体に構成されてもよいし、着脱可能とされても良い。グリップ保護具(10)の縦梁(1)の角度及び縦梁(1)と横梁(2)の数や太さ(幅)については〔1〕に上述したのと同様である。
【0030】
〔7〕縦梁は半円または半楕円
〔6〕の前記グリップ保護部において、前記3本以上の縦梁のそれぞれは、半円または半楕円形である。
【0031】
これにより、縦梁が周囲の障害物に接触したときの外力が概ね均等に分散して吸収され、強度のある縦梁が実現できる。
【0032】
〔8〕単管に着脱が容易なグリップ保護具
〔6〕の前記グリップ保護部において、前記上部支持部は、前記手押し棒の上端面に取り付けられ、前記3本以上の縦梁のそれぞれの上端が接続される略円形もしくは多角形形状の板状であり、前記下部支持部は、前記手押し棒の外周面に接する環状である。
【0033】
これにより、着脱が容易なグリップ保護具を備える手押し棒を提供することができる。上部支持部の形状は任意であるが、略円形もしくは多角形形状の板状とするのが好適である。
【0034】
〔9〕グリップ保護具を有する手押し棒を備える台車(図8図24
本願において開示される代表的な実施の形態は、〔6〕から〔8〕のうちのいずれか1項の手押し棒が装着された台車(20)である。
【0035】
これにより、隅に立てられた手押し棒を操作するときにより安全な台車を提供することができる。
【0036】
2.実施の形態の詳細
実施の形態について更に詳述する。
【0037】
〔実施形態1〕
図1図6は、本発明のグリップ保護具の第1の構成例を模式的に示す6面図である。図1は正面図、図2は上面図、図3は背面図、図4は底面図、図5は右側面図、図6は左側面図である。さらに、図7はこの第1の構成例を模式的に示す斜視図であり、図8はこのグリップ保護具を台車に取り付けた使用例を示す説明図である。
【0038】
実施形態1として示す本発明のグリップ保護具10の第1の構成例は、台車20の4隅のうちの少なくとも1箇所に立てられた手押し棒11に装着可能なグリップ保護具10である(図8参照)。台車20は、車輪(キャスター)19の付いた荷台18の4隅に、手押し棒11が概ね垂直に立てられるように構成されている。例えば、手押し棒11を挿入することができるように、荷台18の4隅に孔が設けられている。貨物の大きさや形状に応じて、任意の本数の手押し棒11を取り付けることができる。また手押し棒11は、台車20の品種ごとに個別設計されてもよいし、汎用品、例えば、標準的な径の鉄パイプを任意の長さに切り揃えた単管とすることもできる。手押し棒11の長さは、例えば、80cm、90cm、100cm、120cm等、任意であり、また、その高さによって積載できる貨物の最大の高さの目安とすることができる。本発明のグリップ保護具10は、図8に示すように、例えば短辺方向の2本の手押し棒11に取り付けられる。作業者はこのグリップ保護具10が取り付けられた2本の手押し棒11を掴んで、台車20を操作することができる。
【0039】
グリップ保護具10は、上部支持部3と下部支持部5と3本以上の縦梁1と1本以上の横梁2とを有し、以下のように構成される(図1図7参照)。図1図7は、縦梁1を3本、横梁2を1本とし、単管である手押し棒11の上端部に着脱自在に取り付けられた例である。
【0040】
上部支持部3は手押し棒11の上端に、下部支持部5は上部支持部3よりも下側に、それぞれ取り付けられる。3本の縦梁1のそれぞれは、上端を上部支持部3に下端を下部支持部5にそれぞれ接続され、中央部で手押し棒11から離れる方向に張り出している。1本以上の横梁2のそれぞれは、1本の縦梁1から他の1本の縦梁1まですべて縦梁1に接続される。この例では、横梁2は、3本の縦梁1に概ね中央部で横方向に接続されている。1本以上の横梁2で接続されたすべての縦梁1は、手押し棒11を上方から見たときに、横梁2の一端が接続された縦梁1と他の一端が接続された縦梁1との角度(θ)を90°以上として手押し棒11を中心として放射状に配置される。この例では、横梁2の両端に接続される3本の縦梁1は約180°開く放射状に配置されている(図2参照)。
【0041】
この実施形態の縦梁1のそれぞれは、半円または半楕円形である。これにより、縦梁1が周囲の障害物に接触したときに外から加わる力(接触の外力)が概ね均等に分散して吸収され、強度のある縦梁1が実現できる。実施形態では、これに加えて横梁2も半円形である。周囲の障害物が中央の縦梁1と横梁2が交差する部分に接触した場合には、接触の外力が上下左右に概ね均等に分散され、強度をさらに増すことができる。
【0042】
本実施形態において、手押し棒11は単管であり、グリップ保護具10の上部支持部3は、手押し棒11である単管に挿入される内挿部4と、その単管の上端面を覆う天板3とを有する。上部支持部とその天板とは同じ符号3で示されているが、上部支持部が天板と内挿部で構成されると理解されても、板状の上部支持部である天板に内挿部4が付加されていると理解されてもよい。3本以上の縦梁1のそれぞれの上端は天板3に接続され、下部支持部5は、手押し棒11である単管の外周面に接する環状である。
【0043】
これにより、グリップ保護具10の手押し棒11への着脱が容易となる。また手押し棒11が単管、即ち円形のパイプであるため、グリップ保護具10は手押し棒11の上端部で自由に回転することができる。このため手押し棒11を掴む手を挿入する方向や進行方向に合わせて適切に調整することができる。
【0044】
上部支持部3を、天板に内挿部4を取り付ける構造に代えて、単管である手押し棒11の外周面を囲むことができる外筒部6を天板に取り付ける構成に変更することができる。図31は、本発明のグリップ保護具の第1の構成例の変形例を模式的に示す正面図である。外筒部6は、単管である手押し棒11の外周面よりも若干大きい内径とし、グリップ保護部10全体が手押し棒11の上端部で自由に回転することができるように構成されてもよいし、または外筒部6は、単管である手押し棒11に嵌め込まれ、グリップ保護部10全体が手押し棒11の上端部に固定されるように構成されてもよい。また、外筒部6は、図示されるように上部支持部3と下部支持部5の両方に接続されるように構成されてもよいし、上部支持部3に接続され下部支持部5には接続されてもよい。さらに、外筒部6は、上部支持部3と下部支持部5の両方に接続されるように構成されたときに、平坦な表面としてもよく、周囲を取り囲む溝または突起部を複数本設けて滑り止めとしてもよく、手で握ったときに掌に接する部分は平坦なまま指に接する面に指に沿った凹凸を設けることによって、握るべき方向をガイドするように構成してもよい。このとき、作業者は握った感触によって正しい方向で握っていることを感じ取ることができ、そのときに握る手を保護する縦梁1と横梁2の方向が手を適切に保護するように構成することができる。
【0045】
グリップ保護具10を構成する各部材には、種々の材料を用いることができる。例えば、すべての部材をプラスチックで一体成形して形成することができ、すべてまたは一部の部材を硬質ゴムで形成することができ、または、全体を金属とし溶接して構成することもできる。また、すべてまたは一部の部材を硬質ゴムで形成するときに、金属ワイヤを芯とすることによって強度を増すことができ、芯を形成する代わりに、縦梁1と横梁2の一方または両方の断面を、箱形、コの字型、コの字型でリブを形成するなど形状を工夫して強度を増すことができる。
【0046】
〔実施形態2〕
図9図14は、本発明のグリップ保護具の第2の構成例を模式的に示す6面図である。図9は正面図、図10は上面図、図11は背面図、図12は底面図、図13は右側面図、図14は左側面図である。図1図6を引用して説明した第1の構成例(実施形態1)と比較して、縦梁1を幅広とした点が相違する。他の構成は実施形態1と同様であるので、詳しい説明を省略する。
【0047】
縦梁1を幅広としたことにより、手押し棒11を掴む手を覆う面積が広くなり、保護性能が強化される。梁1の厚さは実施形態1と同等レベルに抑えることができ、その場合には手押し棒11から周囲へ張り出す量は変わらないので、グリップ保護具10が通行の妨げとなる可能性は、実施形態1と同程度に抑えられる。一方、幅広とすることにより、縦梁1の強度を増すために縦梁1の断面形状を工夫する余地が広がる。例えば、単純なコの字型に代えてコの字型の内側にリブを形成し、またはハニカム構造とすることによって、構造的に強化することができる。
【0048】
本実施形態2は縦梁1のみを幅広としたが、これと合わせて、またはこれに代えて、横梁2を幅広とすることもできる。上述と同様に横梁2によって覆われる面積を拡げ、さらに構造的な強化を施すこともできる。
【0049】
〔実施形態3〕
上述の実施形態1及び2は、縦梁1の本数を3本、横梁2の一端が接続された縦梁1と他の一端が接続された縦梁1との角度(θ)を180°とした構成例である。本実施形態3では、縦梁1を5本、角度(θ)を240°とした第3の構成例について説明する。
【0050】
図15及び図16は、本発明のグリップ保護具の第3の構成例を模式的に示す正面図及び上面図である。底面図、背面図、左右の側面図については、自明であるので省略する。
【0051】
上部支持部3は手押し棒11の上端に、下部支持部5は上部支持部3よりも下側に、それぞれ取り付けられる。5本の縦梁1のそれぞれは、上端を上部支持部3に、下端を下部支持部5にそれぞれ接続され、中央部で手押し棒11から離れる方向に張り出している。図15には半円径もしくは半楕円形の例が示すが、これに限定されるわけではない。5本の縦梁1は、上から見たときに手押し棒11を中心として240°に開いて均等の放射状に配置され、中央部で横梁2に接続されている。他の構成は実施形態1と同様であるので、詳しい説明を省略する。
【0052】
この実施形態のグリップ保護具10は、縦梁1が5本に増やされまた角度も大きくなって、広い範囲をきめ細かく覆うことができるので、保護性能がより高められる。
【0053】
また、梁の幅や太さ、材質、断面構造などを、種々選択できることは、実施形態1と同様である。
【0054】
〔実施形態4〕
本発明のグリップ保護具10は、手押し棒11の上端部ではなく、中間の任意の位置に取り付けてもよい。
【0055】
図17図22は、本発明のグリップ保護具の第4の構成例を模式的に示す6面図である。図17は正面図、図18は上面図、図19は背面図、図20は底面図、図21は右側面図、図22は左側面図である。さらに、図23はこの第4の構成例を模式的に示す斜視図であり、図24はこのグリップ保護具を台車に取り付けた使用例を示す説明図である。
【0056】
この実施形態4として示す本発明のグリップ保護具10の第4の構成例は、実施形態1と同様に、台車20の4隅のうちの少なくとも1箇所に立てられた手押し棒11に装着可能なグリップ保護具10であるが、手押し棒11の長さが特に長い場合の例である(図24参照)。手押し棒11には、台車20を操作するために掴む以外に、貨物を規制する機能もあるため、積載する貨物の大きさや積載の高さによっては、例えば長さ150cm、180cmなど非常に長い単管を台車20の荷台18に立てて用いる場合がある。このような場合には、台車20の操作には、単管である手押し棒11の上端ではなく中間部分を掴むのが自然である。本実施形態4のグリップ保護具10は、このような使用形態にも対応することができるように、手押し棒11の中間部分に取り付けることができるように構成されている。
【0057】
本実施形態4のグリップ保護具10は、上部支持部3は、天板ではなく下部支持部5と同様に環状とされ、内挿部4は備えない。図32に示すように、上部支持部3から内挿部4を取り外すことができるように構成することもできる。この例のグリップ保護具10は、内挿部4を取り付けた状態では上述した実施形態1として使用し、内挿部4を取り外した状態では、本実施形態4として使用することができる。図32に例示するように、上部支持部3の天板に相当する部分に内挿部4が下側から嵌め込まれて、上方向に固定されるとよい。上部支持部3の天板に相当する部分には、単管である手押し棒11を貫通させることができる開口部を設け、内挿部4にはその開口部に嵌め込まれる部分(上部)と手押し棒11の内側に挿入される部分(下部)とを設けておく。内挿部4の上部に外側に張り出す部分を設け、上部支持部3の開口部にはその張り出した部分が嵌め込まれる窪みを設ける。これにより、別の部品を使用することなく、上部支持部3に対して着脱自在の内挿部4を構成することができる。
【0058】
上部支持部3と下部支持部5は、以下に示すような種々の方法によって、手押し棒11に取り付けることが可能である。
【0059】
例えば、手押し棒1にストッパー7を取り付けることができる。図33は取付機構のこの構成例を模式的に示す正面図であり、図34はこの取付機構を構成するストッパー7の説明図である。図33に示すように、手押し棒11の、下部支持部5の下側の位置に、ストッパー7を取り付けることによって、グリップ保護具10が自重によってずり落ちないように固定しながらも取付位置を人力で移動できる程度に構成される。このときのストッパー7は、硬質ゴムなどの弾性材で構成し、例えば図34に示すように、単管である手押し棒11の外径よりも小さい開口部を有する円筒形とすることができる。このようなストッパー7は、押し棒11に嵌め込んだときに手押し棒11の外周面に強く密着して固定され、グリップ保護具10が自重によってずり落ちないように支持することができる。
【0060】
また例えば、上部支持部3と下部支持部5の少なくとも一方は、硬質ゴムなどの弾性材料で、手押し棒11の外径よりも僅かに小さく形成されることにより、手押し棒11の外周面に密着してグリップ保護具10が自重によってずり落ちないように固定しながらも取付位置を人力で移動できる程度に構成される。
【0061】
また、上部支持部3と下部支持部5の内径を、手押し棒11の外径よりも大きく形成し、取付機構(図示を省略)によって手押し棒11に固定してもよい。取付機構としては、種々の機構が採用され得る。例えば、手押し棒11に取り付けてグリップ保護具10を下から支える機構を取付機構とすることができる。また、上部支持部3と下部支持部5の外周から内周に向かってネジを設け、ねじ込むことによって先端を手押し棒11の外周面に圧迫して固定する機構を取付機構とすることができる。
【0062】
上部支持部3、下部支持部5、内挿部4及び取付機構以外の構成は実施形態1と同様であるので、詳しい説明を省略する。また、縦梁と横梁の数や角度、幅、太さ、材質、断面構造などを、種々選択できることは、実施形態1と同様である。
【0063】
これにより手押し棒11の長さによらず、自由な高さにグリップ保護具10を取り付けることができる。またグリップ保護具10を取り付ける位置は、積載する貨物の高さを測る目安としても機能させることができる。例えば、積載高さや手押し棒を掴む位置の高さに何らかのルールが設けられている現場では、このグリップ保護具10の取付位置によってその目安とすることができる。
【0064】
〔実施形態5〕
本発明のグリップ保護具10は、手押し棒11に直接取り付けてもよい。手押し棒11と一体となるので、グリップ保護部10と呼んでも良い。本明細書では、手押し棒11と一体に構成された形態をグリップ保護部と呼ぶことを原則とするが、同じ符号10を用い、用語としても一部で混用される。また、手押し棒11の上端部に限られず任意の位置に取り付けることができる。手押し棒11自体が、回転できるように構成することにより、グリップ保護部10の手を挿入する方向と手を保護する方向を、調整することができる。
【0065】
図25図30は、本発明のグリップ保護部10の第5の構成例を模式的に示す6面図である。図25図30は、手押し棒11を単管としてその上端部周辺を含めて描かれている。図25は正面図、図26は上面図、図27は背面図、図28は底面図、図29は右側面図、図30は左側面図である。
【0066】
本実施形態5のグリップ保護部10では、縦梁1の上端部と下端部がそれぞれ手押し棒11の外周面に取り付けられており、上部支持部3と下部支持部5はその接続部分を指している。また、内挿部4は備えない。取付(接続)手段は任意である。例えば、縦梁1及び横梁2をすべて鉄などの金属として、鉄製の単管である手押し棒11に溶接する。
【0067】
手押し棒11と一体としまた鉄製とすることにより、高い強度を持たせることができる。上部支持部3、下部支持部5、内挿部4及び取付機構以外の構成は実施形態1と同様であるので、詳しい説明を省略する。また、梁の数や角度、幅、太さ、材質、断面構造などを、種々選択できることは、実施形態1と同様である。
【0068】
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0069】
1 縦梁
2 横梁
3 上部支持部(天板)
4 内挿部
5 下部支持部
6 外筒部
7 ストッパー
10 グリップ保護具(グリップ保護部)
11 手押し棒
18 荷台
19 車輪
20 台車




図1
図2
図3
図4
図5
図6
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