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特開2023-104437チップ部品位置決め装置及びテーピングマシン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023104437
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】チップ部品位置決め装置及びテーピングマシン
(51)【国際特許分類】
   B65B 15/04 20060101AFI20230721BHJP
【FI】
B65B15/04 A
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022005418
(22)【出願日】2022-01-18
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】597168228
【氏名又は名称】日本ファインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100163267
【弁理士】
【氏名又は名称】今中 崇之
(72)【発明者】
【氏名】高田 勉
(72)【発明者】
【氏名】新納 仁
(72)【発明者】
【氏名】杉山 泰英
(72)【発明者】
【氏名】松丸 明夫
(57)【要約】
【課題】位置決めした後のチップ部品の位置ずれを抑制できるチップ部品位置決め装置及びテーピングマシンを提供する。
【解決手段】チップ部品位置決め装置28は、チップ部品Cが受け渡される位置決め台30を備え、該チップ部品Cを予め決められた許容誤差範囲内に位置決めするチップ部品位置決め装置であって、位置決め台30の表面に、チップ部品Cが載る載置面306aが形成された底部306と、底部306から開口側の表面へと至る傾斜面が形成された内周部308と、から少なくとも構成された位置決め穴302が設けられ、内周部308が、載置面306aから高さH1までの範囲にて、載置面306aと第1の傾斜角θ1をなす第1の傾斜面308aと、高さH1から表面までの範囲にて、載置面306aと第2の傾斜角θ2をなす第2の傾斜面308bと、を有し、第1の傾斜角θ1が、第2の傾斜角θ2よりも大きい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップ部品が受け渡される位置決め台を備え、該チップ部品を予め決められた許容誤差範囲内に位置決めするチップ部品位置決め装置であって、
前記位置決め台に、
前記チップ部品が載る載置面が形成された底部と、
前記底部から開口側の前記表面へと至る傾斜面が形成された内周部と、から少なくとも構成された位置決め穴が設けられ、
前記内周部が、前記載置面から高さH1までの範囲にて、前記載置面と第1の傾斜角θ1をなす第1の傾斜面と、
前記高さH1から前記表面までの範囲にて、前記載置面と第2の傾斜角θ2をなす第2の傾斜面と、を有し、
前記第1の傾斜角θ1が、前記第2の傾斜角θ2よりも大きいチップ部品位置決め装置。
【請求項2】
請求項1記載のチップ部品位置決め装置において、
前記載置面の外周に沿って、溝が形成されているチップ部品位置決め装置。
【請求項3】
請求項2記載のチップ部品位置決め装置において、
前記載置面に、前記チップ部品を吸着するための吸着孔が形成されているチップ部品位置決め装置。
【請求項4】
請求項3記載のチップ部品位置決め装置において、
前記表面に、前記位置決め穴から延びる溝が形成されているチップ部品位置決め装置。
【請求項5】
請求項4記載のチップ部品位置決め装置において、
前記位置決め孔に嵌った前記チップ部品の有無を検出するための有無センサを更に備えたチップ部品位置決め装置。
【請求項6】
請求項5記載のチップ部品位置決め装置において、
前記有無センサが、前記チップ部品の有無を検出するための検出光を照射する光電センサであり、
前記検出光が、前記吸着孔を通るチップ部品位置決め装置。
【請求項7】
請求項5記載のチップ部品位置決め装置において、
前記有無センサが、前記吸着孔を流れるエアを検出するための流量センサであるチップ部品位置決め装置。
【請求項8】
チップ部品を吸着する吸着コレットと、
前記吸着コレットから前記チップ部品が受け渡される、請求項1記載のチップ部品位置決め装置と、を備え、
前記吸着コレットが、位置決めされた前記チップ部品を吸着した際に、前記チップ部品の下面の高さ位置が前記高さH1よりも低い範囲にあるテーピングマシン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップ部品位置決め装置及びテーピングマシンに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電子部品を損傷しないように位置決めできる位置決め装置が記載されている。
この位置決め装置は、搬送部によって搬送された電子部品が嵌り、上側が開口したくぼみ部が形成されている位置決め台と、位置決め台を上下方向に振動させる加振部と、を備え、加振部が、超音波振動を発生する超音波振動子と、超音波振動を伝達し、位置決め台が取り付けられる超音波ホーンと、を有し、くぼみ部の形状が、上底の面積が下底の面積よりも大きい四角錐台状であり、平面視した際のくぼみ部の大きさが、電子部品のサイズよりも予め決められた許容誤差分だけ大きく設定されている。
【0003】
特許文献2には、ゲージング台に対するチップ状部品の確実な位置決めを簡単かつ安価な構成により実現することができるチップ状部品ボンディング装置が記載されている。
このチップ状部品ボンディング装置は、チップ状部品が収納される凹部を有するゲージング台と、ゲージング台に回転軸を介して連結され、回転軸を中心としてゲージング台を回転させる回転機構とを備え、回転機構は、凹部にチップ状部品が収納された状態で凹部内にてチップ状部品がずれる程度の衝撃力を発生させるようゲージング台を回転させることを特徴としている。
【0004】
特許文献3には、電子部品に対してストレスを与えずに姿勢を矯正することができる矯正装置が記載されている。
この矯正装置は、カメラによる電子部品の姿勢の検出結果に基づいて、矯正装置のアライメントポケットを電子部品の姿勢に応じた位置に移動させてアライメントポケットに当該電子部品を収容させた後、この電子部品が所定の姿勢となるようアライメントポケットを移動させることにより、従来のように電子部品を挟み込まなくてよいので、電子部品に対してストレスを与えずに姿勢を矯正することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6368136号公報
【特許文献2】特開平10-256281号公報
【特許文献3】特開2009-286490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、位置決めした後のチップ部品の位置ずれを抑制できるチップ部品位置決め装置及びテーピングマシンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、チップ部品が受け渡される位置決め台を備え、該チップ部品を予め決められた許容誤差範囲内に位置決めするチップ部品位置決め装置であって、前記位置決め台に、前記チップ部品が載る載置面が形成された底部と、前記底部から開口側の前記表面へと至る傾斜面が形成された内周部と、から少なくとも構成された位置決め穴が設けられ、前記内周部が、前記載置面から高さH1までの範囲にて、前記載置面と第1の傾斜角θ1をなす第1の傾斜面と、前記高さH1から前記表面までの範囲にて、前記載置面と第2の傾斜角θ2をなす第2の傾斜面と、を有し、前記第1の傾斜角θ1が、前記第2の傾斜角θ2よりも大きいチップ部品位置決め装置である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載のチップ部品位置決め装置において、前記載置面の外周に沿って、溝が形成されている。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2記載のチップ部品位置決め装置において、前記載置面に、前記チップ部品を吸着するための吸着孔が形成されている。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3記載のチップ部品位置決め装置において、前記表面に、前記位置決め穴から延びる溝が形成されている。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項4記載のチップ部品位置決め装置において、前記位置決め孔に嵌った前記チップ部品の有無を検出するための有無センサを更に備える。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項5記載のチップ部品位置決め装置において、前記有無センサが、前記チップ部品の有無を検出するための検出光を照射する光電センサであり、前記検出光が、前記吸着孔を通る。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項5記載のチップ部品位置決め装置において、前記有無センサが、前記吸着孔を流れるエアを検出するための流量センサである。
【0014】
請求項8に記載の発明は、チップ部品を吸着する吸着コレットと、前記吸着コレットから前記チップ部品が受け渡される、請求項1記載のチップ部品位置決め装置と、を備え、前記吸着コレットが、位置決めされた前記チップ部品を吸着した際に、前記チップ部品の下面の高さ位置が前記高さH1よりも低い範囲にあるテーピングマシンである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、位置決めした後のチップ部品の位置ずれを抑制できるチップ部品位置決め装置及びテーピングマシンを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施の形態に係るチップ部品位置決め装置を備えたテーピングマシンの各部の位置関係を模式的に示した平面図である。
図2】(A)、(B)は、それぞれ、位置決め台の斜視図及び平面図である。
図3】(A)、(B)は、それぞれ、図2(B)のX-X断面図及びY-Y断面図である。
図4図2(B)のX-X断面図に対応する位置決め台の説明図である。
図5】(A)、(B)は、吸着コレットと位置決め台との位置関係を示し、それぞれ、吸着コレットが半導体チップを受け渡す際の説明図及び半導体チップを受け取る際の説明図である。
図6】(A)~(C)は、チップ部品位置決め装置の動作を示し、それぞれ、吸着コレットが下降した際の説明図、半導体チップを受け渡した際の説明図及び半導体チップを受け取った際の説明図である。
図7】比較例となるチップ部品位置決め装置の動作を示す説明図である。
図8】チップ部品位置決め装置の効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。なお、図において、説明に関連しない部分は図示を省略する場合がある。
【0018】
図1に示すテーピングマシン10は、チップ剥離装置20及び処理ユニット120a~120gを備え、半導体チップCをキャリアテープに封入できる。
チップ剥離装置20は、矢印で示す方向に進退する押出部150を有し、ウェハーリング110に固定されたダイシング後のウェハーから半導体チップ(チップ部品の一例)Cを押し出して剥離できる。
【0019】
処理ユニット120a~120gは、それぞれ仕様に応じた処理機能を有するユニットである。
特に処理ユニット120a、120c、120e、120gについて例示すると、処理ユニット120aは、外観検査ユニットであり、半導体チップCの外観及び基準位置からの位置ずれ量を検査できる。
【0020】
処理ユニット120cは、本実施の形態に係るチップ部品位置決め装置であり、受け渡された半導体チップCを予め決められた許容誤差範囲内に位置決めできる。
以下、この処理ユニット120cをチップ部品位置決め装置28として説明する。
【0021】
処理ユニット120eは、ランク分けユニットであり、半導体チップCを品質に応じてランク分けできる。
処理ユニット120gは、強制排出ユニットであり、所定の品質を満たしていない半導体チップCを排出できる。
【0022】
チップ剥離装置20がウェハーから剥離した半導体チップCは、回転テーブル115によって各処理ユニット120a~120gにて所定の検査等の処理がされながら搬送され、テーピングユニット140にてキャリアテープに封入される。
なお、半導体チップCの長さは例えば0.4~1.0mmであり、幅は例えば0.2~0.7mmであり、厚みは例えば0.05~0.2mmである。
【0023】
次に、チップ部品位置決め装置28(図4参照)について説明する。
チップ部品位置決め装置28は、位置決め台30(図2(A)及び図2(B)参照)と、有無センサ34(図4参照)と、を有している。
【0024】
位置決め台30は、半導体チップCを吸着して搬送する吸着コレット40から半導体チップCが受け渡される。
位置決め台30は、図2(A)に示すように直方体状の部材であり、円柱状の基部32の先端に設けられている。
位置決め台30の上面には、半導体チップCが嵌る位置決め穴302と、平面視して位置決め穴302からの延びるエア抜き溝304と、が形成されている。
【0025】
位置決め穴302は、図3(A)及び図3(B)に示すように、底部306と、内周部308と、から少なくとも構成されている。
底部306には、半導体チップCが載る載置面306aが形成されている。載置面306aは、平面視して矩形状であり、位置決めする半導体チップCのサイズに対応して形成されている。
載置面306aの中央部には、半導体チップCを吸着するための吸着孔HL1が設けられている。
載置面306aの周囲には、載置面306aの外周に沿った溝306bが形成されている。溝306bが形成されることにより、形成されていない場合と比較して、半導体チップCを位置決めするための寸法がより高い精度で確保される。付言すると、溝306bが形成されていない場合は、載置面306aと第1の傾斜面308aとの境界部分に曲面が形成されてしまう。
【0026】
内周部308には、底部306から開口側の上面(位置決め台30の上面)へと至る傾斜面が形成されている。詳細には、内周部308は、図4に示すように、載置面306aから高さH1までの範囲にて、載置面306aと第1の傾斜角θ1をなす第1の傾斜面308aと、高さH1から位置決め台30の上面までの範囲にて、載置面306aと第2の傾斜角θ2をなす第2の傾斜面308bと、を有している。第1の傾斜角θ1は、第2の傾斜角θ2よりも大きくなるように設定されている。
【0027】
ここで、図4に示す高さH1、H2、傾斜角θ1、θ2は、それぞれ次のように設定される。
【0028】
高さH1は、図5(B)に示すように、載置面306aから第1の傾斜面308aの上端縁(第2の傾斜面308bの下端縁)までの距離である。
高さH1は、吸着コレット40が載置面306aに載った半導体チップCを吸着して受け取った際、載置面306aから半導体チップCの下面までの高さg2よりも大きくなるように設定される。
【0029】
高さH2は、図5(A)に示すように、載置面306aから位置決め穴302の開口端(位置決め台30の上面)までの距離であり、位置決め穴302の深さでもある。
高さH2は、吸着コレット40が下降し、吸着した半導体チップCを受け渡す際、載置面306aから半導体チップCの下面までの高さg1よりも大きくなるように設定される。
【0030】
傾斜角θ1は、吸着コレット40によって吸着された半導体チップCの位置が、予め決められた許容誤差以下となるように設定される。傾斜角θ1は、少なくとも90度未満であり、例えば70度以上であることが好ましい。
半導体チップCは、吸着コレット40によって吸着される際に、位置決めされた状態を保ったまま上昇するのではなく、並進方向及び回転方向に位置ずれしながら上昇する。このような半導体チップCの挙動を抑制するため、傾斜角θ1は、大きいほうが好ましい。しかしながら、傾斜角θ1が大きければ大きいほど、半導体チップCが接触した第1の傾斜面308aから大きな力(抵抗力)を受けやすくなり、吸着コレット40(図5(B)参照)の吸着動作が阻害されやすくなる。
従って、傾斜角θ1は、大きい値であると吸着コレット40が受け取りに失敗する可能性が大きくなり、小さい値であると受け取り後の位置ずれ量が大きくなり位置精度が悪化する。
【0031】
傾斜角θ2は、図5(A)に示すように、吸着コレット40が半導体チップCを位置決め台30に受け渡す位置(吸着された半導体チップCの下面の位置が載置面306aから高さg1となる位置)まで下降した際に、半導体チップCと第2の傾斜面308bとの接触が回避される水平方向の隙間Lmが確保されるように設定される。傾斜角θ2は、少なくとも90度未満であり、例えば45度以上であることが好ましい。ただし、前述の通り、第1の傾斜角θ1は、第2の傾斜角θ2よりも大きくなるように設定される。
なお、傾斜角θ2は、小さく設定されるに従って、半導体チップCが吸着コレット40から落下した後の姿勢が悪化する傾向にある。
【0032】
エア抜き溝304は、図3(A)に示すように、断面が矩形状の溝であり、図2に示すように、平面視して位置決め穴302と交差するように、位置決め台30の上面の一方の縁から他方の縁まで延びて形成されている。
エア抜き溝304の幅Wgは、図3(A)に示すように、載置面306aの幅よりも小さくなるように設定されている。幅Wgは、吸着孔HL1の直径以下となるように設定されることが好ましい。
エア抜き溝304の深さDgは、位置決め穴302の深さ(高さH2)以上の寸法となるように設定されている。
エア抜き溝304は、吸着コレット40が吸着していた半導体チップCを受け渡すために、吸着圧力を負圧から正圧にした際に排出されるエアを逃がすことができる。
【0033】
有無センサ34(図4参照)は、載置面306aに半導体チップCが載っていることを検出するための光電センサである。この光電センサは、吸着孔HL1の内部を通る検出光を照射し、その反射光を検出することで、半導体チップCの有無を検出できる。
有無センサは、載置面306aに半導体チップCが載っていることを検出するためのセンサであれば光電センサに限定されるものではなく、有無センサ34に代えて、吸着孔HL1を流れるエアを検出するための流量センサを有無センサとしてもよい。流量センサがエアの流れを検出することにより、半導体チップCの有無が検出される。
【0034】
チップ部品位置決め装置28は、位置決め台30に超音波振動を加える超音波発振器(不図示)を更に有していてもよい。
超音波により位置決め台30を加振することにより、吸着コレット40が受け渡した半導体チップCが載置面306aに載らない可能性が低減される。
【0035】
次に、チップ部品位置決め装置28の動作について、図6に基づいて説明する。半導体チップCの位置決め装置28は、次のステップS1~S7に従って、半導体チップCを予め設定された許容誤差範囲内に位置決めできる。
【0036】
(ステップS1)
半導体チップCを吸着した吸着コレット40が、処理ユニット120a、120b(図1参照)を経て位置決め台30の上方に移動する。この吸着コレット40に吸着された半導体チップCは、予め設定された許容誤差範囲内に位置決めされていない状態である。
【0037】
(ステップS2)
吸着コレット40が下降し、図6(A)に示すように、載置面306aから半導体チップCの下面までの距離がg1となる位置(先端面の位置が載置面306aから高さHpとなる位置)にて静止する。この状態において、高さg1は、図5(A)に示すように、高さH1を超えかつ高さH2以下の範囲にある。
吸着コレット40が吸着する半導体チップCは、図6(A)に示すように位置ずれしている場合であっても、隙間Lm(図5(A)参照)が確保されているため、第2の傾斜面308bとの接触は回避される。
【0038】
(ステップS3)
吸着圧力が負圧から正圧に変化し、吸着コレット40によって吸着されていた半導体チップCが解放され、解放された半導体チップCは自然落下する。
吸着圧力が負圧から正圧に変化する際に、吸着コレット40の吸着孔HL2からエアが排出される。吸着孔HL2から出たエアは、主としてエア抜き溝304を通って排出されるため、位置決め穴302の内部に半導体チップCを巻き上げるような気流を発生することが抑制される。
【0039】
(ステップS4)
位置決め台30の吸着孔HL1の圧力が負圧となり、図6(B)に示すように、半導体チップCが載置面306aに吸着される。その際、二点鎖線で示すような、位置ずれしていたり挙動が乱れたりした半導体チップCは、第2の傾斜面308b及び第1の傾斜面308aに倣い載置面306aに載る。
載置面306aに載った半導体チップCは、予め設定された許容誤差範囲内に位置決めされ、有無センサ34によって検出される。有無センサ34によって、半導体チップCが載置面306aに載っていないことが検出された場合には、アラームが出力される。
【0040】
(ステップS5)
吸着コレット40が図6(B)に示す状態から更に下降し、図5(B)に示すように、半導体チップCの上面から先端面までの距離がg2となる位置(吸着コレット40の先端面の位置が載置面306aから高さHgとなる位置)にて静止する。
【0041】
(ステップS6)
吸着孔HL1の圧力が負圧から正圧に変化し、位置決め台30が半導体チップCを解放する一方で、吸着コレット40の吸着孔HL2の圧力が負圧となる。その結果、図6(C)に示すように、半導体チップCは、載置面306aから高さg2だけ浮き上がり、吸着コレット40に吸着される。
半導体チップCは、図5(B)に示すように、下面の高さ位置が第1の傾斜面308aの上端の高さ位置H1よりも低い範囲にて位置決め台30から吸着コレット40に吸着されるため、半導体チップCの挙動は、第1の傾斜面308aによって規制される。
従って、位置決め台30によって位置決めされた半導体チップCが、吸着コレット40に受け渡される際に発生する位置ずれが抑制され、半導体チップCの位置は、予め設定された許容誤差範囲内に維持される。
【0042】
(ステップS7)
吸着コレット40が上昇し、吸着した半導体チップCを次の処理ユニット120dに搬送する。
【0043】
以降、ステップS1~S7が繰り返されることにより、半導体チップCが順次位置決めされる。
【0044】
次に、位置決め装置28の位置決め性能を評価するための評価試験について説明する。
発明者は、本実施の形態に係る位置決め台30及び比較例に係る位置決め台30aを使用し、それぞれ半導体チップCを位置決めした後、吸着コレット40が吸着した状態における半導体チップCの位置ずれ量を画像処理用カメラを用いて測定した。
比較例となる位置決め台30aは、図7(A)及び図7(B)に示すように、位置決め穴302aの形状が、傾斜角が一定の傾斜面が形成された四角錐台状である。
位置決め穴302、302aの寸法は、それぞれ、吸着コレット40の半導体チップCの受け渡し時の高さ(載置面から半導体チップCの下面までの距離)が高さg1、受け取り時の高さ(載置面から半導体チップCの下面までの距離)が高さg2となる同一条件の下で設定されている。
高さg1は例えば0.1~0.2mmであり、高さg2は例えば0.03~0.08mmである。
使用した半導体チップCは、1005サイズのミラーチップであり、厚みが85μmである。
【0045】
300個のミラーチップについて測定した結果、図8(A)及び図8(B)に示すように、位置決め台30によって位置決めされた後に吸着コレット40が受け取ったミラーチップは、比較例に示す位置決め台30aを使用した場合と比較して、厚み方向(上下方向)に延びる軸回りの回転ずれ量(位置ずれ量)である角度θmが抑制されていることが明らかとなった。
【0046】
以上説明したように、チップ部品位置決め装置28によれば、位置決めした後の半導体チップCが、離れた位置にある吸着コレット40に吸着される際の位置ずれが抑制される。
【0047】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
チップ部品位置決め装置28が位置決めする対象は、半導体チップCに限定されるものではなく、任意のチップ部品であってもよい。このチップ部品として、例えば、チップ抵抗、チップコンデンサその他のチップ状の電子部品が挙げられ、そのサイズは、例えば0402サイズや0603サイズである。
また、位置決め穴302の形状は、図2(B)のX-X断面又はY-Y断面が左右対称となるように形成されていることに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0048】
10 テーピングマシン
20 チップ剥離装置
28 チップ部品位置決め装置
30、30a 位置決め台
34 有無センサ
40 吸着コレット
110 ウェハーリング
115 回転テーブル
120a~120e 処理ユニット
140 テーピングユニット
302、302a 位置決め穴
304 エア抜き溝
306 底部
306a 載置面
306b 溝
308 内周部
308a 第1の傾斜面
308b 第2の傾斜面
C 半導体チップ
HL1、HL2 吸着孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2022-05-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着コレットから受け渡されたチップ部品を予め決められた許容誤差範囲内に位置決めする位置決め台を備えたチップ部品位置決め装置であって、
前記位置決め台の表面に、
前記チップ部品が載る載置面が形成された底部と、
前記底部から開口側の前記表面へと至る傾斜面が形成された内周部と、から少なくとも構成された位置決め穴が設けられ、
前記内周部が、前記載置面から高さH1までの範囲にて、載置面と第1の傾斜角θ1をなし、前記底部から立ち上がる第1の傾斜面と、
前記高さH1から前記表面までの範囲にて、前記載置面と第2の傾斜角θ2をなす第2の傾斜面と、を有し、
前記第1の傾斜角θ1が、前記第2の傾斜角θ2よりも大きく、
前記高さH1が、位置決めされた前記チップ部品を前記吸着コレットが受け取った際に、前記載置面から該チップ部品の下面までの高さよりも大きくなるように設定されているチップ部品位置決め装置。
【請求項2】
請求項1記載のチップ部品位置決め装置において、
前記載置面の外周に沿って、溝が形成されているチップ部品位置決め装置。
【請求項3】
請求項2記載のチップ部品位置決め装置において、
前記載置面に、前記チップ部品を吸着するための吸着孔が形成されているチップ部品位置決め装置。
【請求項4】
請求項3記載のチップ部品位置決め装置において、
前記表面に、前記位置決め穴から延びる溝が形成されているチップ部品位置決め装置。
【請求項5】
請求項4記載のチップ部品位置決め装置において、
前記位置決め孔に嵌った前記チップ部品の有無を検出するための有無センサを更に備えたチップ部品位置決め装置。
【請求項6】
請求項5記載のチップ部品位置決め装置において、
前記有無センサが、前記チップ部品の有無を検出するための検出光を照射する光電センサであり、
前記検出光が、前記吸着孔を通るチップ部品位置決め装置。
【請求項7】
請求項5記載のチップ部品位置決め装置において、
前記有無センサが、前記吸着孔を流れるエアを検出するための流量センサであるチップ部品位置決め装置。
【請求項8】
チップ部品を吸着する吸着コレットと、
前記吸着コレットから受け渡された前記チップ部品を予め決められた許容誤差範囲内に位置決めする位置決め台を有するチップ部品位置と、を備えたテーピングマシンであって、
前記位置決め台の表面に、
前記チップ部品が載る載置面が形成された底部と、
前記底部から開口側の前記表面へと至る傾斜面が形成された内周部と、から少なくとも構成された位置決め穴が設けられ、
前記内周部が、前記載置面から高さH1までの範囲にて、該載置面と第1の傾斜角θ1をなし、前記底部から立ち上がる第1の傾斜面と、
前記高さH1から前記表面までの範囲にて、前記載置面と第2の傾斜角θ2をなす第2の傾斜面と、を有し、
前記第1の傾斜角θ1が、前記第2の傾斜角θ2よりも大きく、
前記高さH1が、位置決めされた前記チップ部品を前記吸着コレットが受け取った際に、前記載置面から該チップ部品の下面までの高さよりも大きくなるように設定されているテーピングマシン。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップ部品位置決め装置及びテーピングマシンに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電子部品を損傷しないように位置決めできる位置決め装置が記載されている。
この位置決め装置は、搬送部によって搬送された電子部品が嵌り、上側が開口したくぼみ部が形成されている位置決め台と、位置決め台を上下方向に振動させる加振部と、を備え、加振部が、超音波振動を発生する超音波振動子と、超音波振動を伝達し、位置決め台が取り付けられる超音波ホーンと、を有し、くぼみ部の形状が、上底の面積が下底の面積よりも大きい四角錐台状であり、平面視した際のくぼみ部の大きさが、電子部品のサイズよりも予め決められた許容誤差分だけ大きく設定されている。
【0003】
特許文献2には、ゲージング台に対するチップ状部品の確実な位置決めを簡単かつ安価な構成により実現することができるチップ状部品ボンディング装置が記載されている。
このチップ状部品ボンディング装置は、チップ状部品が収納される凹部を有するゲージング台と、ゲージング台に回転軸を介して連結され、回転軸を中心としてゲージング台を回転させる回転機構とを備え、回転機構は、凹部にチップ状部品が収納された状態で凹部内にてチップ状部品がずれる程度の衝撃力を発生させるようゲージング台を回転させることを特徴としている。
【0004】
特許文献3には、電子部品に対してストレスを与えずに姿勢を矯正することができる矯正装置が記載されている。
この矯正装置は、カメラによる電子部品の姿勢の検出結果に基づいて、矯正装置のアライメントポケットを電子部品の姿勢に応じた位置に移動させてアライメントポケットに当該電子部品を収容させた後、この電子部品が所定の姿勢となるようアライメントポケットを移動させることにより、従来のように電子部品を挟み込まなくてよいので、電子部品に対してストレスを与えずに姿勢を矯正することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6368136号公報
【特許文献2】特開平10-256281号公報
【特許文献3】特開2009-286490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、位置決めした後のチップ部品の位置ずれを抑制できるチップ部品位置決め装置及びテーピングマシンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、吸着コレットから受け渡されたチップ部品を予め決められた許容誤差範囲内に位置決めする位置決め台を備えたチップ部品位置決め装置であって、前記位置決め台の表面に、前記チップ部品が載る載置面が形成された底部と、前記底部から開口側の前記表面へと至る傾斜面が形成された内周部と、から少なくとも構成された位置決め穴が設けられ、前記内周部が、前記載置面から高さH1までの範囲にて、載置面と第1の傾斜角θ1をなし、前記底部から立ち上がる第1の傾斜面と、前記高さH1から前記表面までの範囲にて、前記載置面と第2の傾斜角θ2をなす第2の傾斜面と、を有し、前記第1の傾斜角θ1が、前記第2の傾斜角θ2よりも大きく、前記高さH1が、位置決めされた前記チップ部品を前記吸着コレットが受け取った際に、前記載置面から該チップ部品の下面までの高さよりも大きくなるように設定されているチップ部品位置決め装置である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載のチップ部品位置決め装置において、前記載置面の外周に沿って、溝が形成されている。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2記載のチップ部品位置決め装置において、前記載置面に、前記チップ部品を吸着するための吸着孔が形成されている。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3記載のチップ部品位置決め装置において、前記表面に、前記位置決め穴から延びる溝が形成されている。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項4記載のチップ部品位置決め装置において、前記位置決め孔に嵌った前記チップ部品の有無を検出するための有無センサを更に備える。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項5記載のチップ部品位置決め装置において、前記有無センサが、前記チップ部品の有無を検出するための検出光を照射する光電センサであり、前記検出光が、前記吸着孔を通る。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項5記載のチップ部品位置決め装置において、前記有無センサが、前記吸着孔を流れるエアを検出するための流量センサである。
【0014】
請求項8に記載の発明は、チップ部品を吸着する吸着コレットと、前記吸着コレットから受け渡された前記チップ部品を予め決められた許容誤差範囲内に位置決めする位置決め台を有するチップ部品位置と、を備えたテーピングマシンであって、前記位置決め台の表面に、前記チップ部品が載る載置面が形成された底部と、前記底部から開口側の前記表面へと至る傾斜面が形成された内周部と、から少なくとも構成された位置決め穴が設けられ、前記内周部が、前記載置面から高さH1までの範囲にて、該載置面と第1の傾斜角θ1をなし、前記底部から立ち上がる第1の傾斜面と、前記高さH1から前記表面までの範囲にて、前記載置面と第2の傾斜角θ2をなす第2の傾斜面と、を有し、前記第1の傾斜角θ1が、前記第2の傾斜角θ2よりも大きく、前記高さH1が、位置決めされた前記チップ部品を前記吸着コレットが受け取った際に、前記載置面から該チップ部品の下面までの高さよりも大きくなるように設定されているテーピングマシンである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、位置決めした後のチップ部品の位置ずれを抑制できるチップ部品位置決め装置及びテーピングマシンを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施の形態に係るチップ部品位置決め装置を備えたテーピングマシンの各部の位置関係を模式的に示した平面図である。
図2】(A)、(B)は、それぞれ、位置決め台の斜視図及び平面図である。
図3】(A)、(B)は、それぞれ、図2(B)のX-X断面図及びY-Y断面図である。
図4図2(B)のX-X断面図に対応する位置決め台の説明図である。
図5】(A)、(B)は、吸着コレットと位置決め台との位置関係を示し、それぞれ、吸着コレットが半導体チップを受け渡す際の説明図及び半導体チップを受け取る際の説明図である。
図6】(A)~(C)は、チップ部品位置決め装置の動作を示し、それぞれ、吸着コレットが下降した際の説明図、半導体チップを受け渡した際の説明図及び半導体チップを受け取った際の説明図である。
図7】比較例となるチップ部品位置決め装置の動作を示す説明図である。
図8】チップ部品位置決め装置の効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。なお、図において、説明に関連しない部分は図示を省略する場合がある。
【0018】
図1に示すテーピングマシン10は、チップ剥離装置20及び処理ユニット120a~120gを備え、半導体チップCをキャリアテープに封入できる。
チップ剥離装置20は、矢印で示す方向に進退する押出部150を有し、ウェハーリング110に固定されたダイシング後のウェハーから半導体チップ(チップ部品の一例)Cを押し出して剥離できる。
【0019】
処理ユニット120a~120gは、それぞれ仕様に応じた処理機能を有するユニットである。
特に処理ユニット120a、120c、120e、120gについて例示すると、処理ユニット120aは、外観検査ユニットであり、半導体チップCの外観及び基準位置からの位置ずれ量を検査できる。
【0020】
処理ユニット120cは、本実施の形態に係るチップ部品位置決め装置であり、受け渡された半導体チップCを予め決められた許容誤差範囲内に位置決めできる。
以下、この処理ユニット120cをチップ部品位置決め装置28として説明する。
【0021】
処理ユニット120eは、ランク分けユニットであり、半導体チップCを品質に応じてランク分けできる。
処理ユニット120gは、強制排出ユニットであり、所定の品質を満たしていない半導体チップCを排出できる。
【0022】
チップ剥離装置20がウェハーから剥離した半導体チップCは、回転テーブル115によって各処理ユニット120a~120gにて所定の検査等の処理がされながら搬送され、テーピングユニット140にてキャリアテープに封入される。
なお、半導体チップCの長さは例えば0.4~1.0mmであり、幅は例えば0.2~0.7mmであり、厚みは例えば0.05~0.2mmである。
【0023】
次に、チップ部品位置決め装置28(図4参照)について説明する。
チップ部品位置決め装置28は、位置決め台30(図2(A)及び図2(B)参照)と、有無センサ34(図4参照)と、を有している。
【0024】
位置決め台30は、半導体チップCを吸着して搬送する吸着コレット40から半導体チップCが受け渡される。
位置決め台30は、図2(A)に示すように直方体状の部材であり、円柱状の基部32の先端に設けられている。
位置決め台30の上面には、半導体チップCが嵌る位置決め穴302と、平面視して位置決め穴302からの延びるエア抜き溝304と、が形成されている。
【0025】
位置決め穴302は、図3(A)及び図3(B)に示すように、底部306と、内周部308と、から少なくとも構成されている。
底部306には、半導体チップCが載る載置面306aが形成されている。載置面306aは、平面視して矩形状であり、位置決めする半導体チップCのサイズに対応して形成されている。
載置面306aの中央部には、半導体チップCを吸着するための吸着孔HL1が設けられている。
載置面306aの周囲には、載置面306aの外周に沿った溝306bが形成されている。溝306bが形成されることにより、形成されていない場合と比較して、半導体チップCを位置決めするための寸法がより高い精度で確保される。付言すると、溝306bが形成されていない場合は、載置面306aと第1の傾斜面308aとの境界部分に曲面が形成されてしまう。
【0026】
内周部308には、底部306から開口側の上面(位置決め台30の上面)へと至る傾斜面が形成されている。詳細には、内周部308は、図4に示すように、載置面306aから高さH1までの範囲にて、載置面306aと第1の傾斜角θ1をなす第1の傾斜面308aと、高さH1から位置決め台30の上面までの範囲にて、載置面306aと第2の傾斜角θ2をなす第2の傾斜面308bと、を有している。第1の傾斜角θ1は、第2の傾斜角θ2よりも大きくなるように設定されている。
【0027】
ここで、図4に示す高さH1、H2、傾斜角θ1、θ2は、それぞれ次のように設定される。
【0028】
高さH1は、図5(B)に示すように、載置面306aから第1の傾斜面308aの上端縁(第2の傾斜面308bの下端縁)までの距離である。
高さH1は、吸着コレット40が載置面306aに載った半導体チップCを吸着して受け取った際、載置面306aから半導体チップCの下面までの高さg2よりも大きくなるように設定される。
【0029】
高さH2は、図5(A)に示すように、載置面306aから位置決め穴302の開口端(位置決め台30の上面)までの距離であり、位置決め穴302の深さでもある。
高さH2は、吸着コレット40が下降し、吸着した半導体チップCを受け渡す際、載置面306aから半導体チップCの下面までの高さg1よりも大きくなるように設定される。
【0030】
傾斜角θ1は、吸着コレット40によって吸着された半導体チップCの位置が、予め決められた許容誤差以下となるように設定される。傾斜角θ1は、少なくとも90度未満であり、例えば70度以上であることが好ましい。
半導体チップCは、吸着コレット40によって吸着される際に、位置決めされた状態を保ったまま上昇するのではなく、並進方向及び回転方向に位置ずれしながら上昇する。このような半導体チップCの挙動を抑制するため、傾斜角θ1は、大きいほうが好ましい。しかしながら、傾斜角θ1が大きければ大きいほど、半導体チップCが接触した第1の傾斜面308aから大きな力(抵抗力)を受けやすくなり、吸着コレット40(図5(B)参照)の吸着動作が阻害されやすくなる。
従って、傾斜角θ1は、大きい値であると吸着コレット40が受け取りに失敗する可能性が大きくなり、小さい値であると受け取り後の位置ずれ量が大きくなり位置精度が悪化する。
【0031】
傾斜角θ2は、図5(A)に示すように、吸着コレット40が半導体チップCを位置決め台30に受け渡す位置(吸着された半導体チップCの下面の位置が載置面306aから高さg1となる位置)まで下降した際に、半導体チップCと第2の傾斜面308bとの接触が回避される水平方向の隙間Lmが確保されるように設定される。傾斜角θ2は、少なくとも90度未満であり、例えば45度以上であることが好ましい。ただし、前述の通り、第1の傾斜角θ1は、第2の傾斜角θ2よりも大きくなるように設定される。
なお、傾斜角θ2は、小さく設定されるに従って、半導体チップCが吸着コレット40から落下した後の姿勢が悪化する傾向にある。
【0032】
エア抜き溝304は、図3(A)に示すように、断面が矩形状の溝であり、図2に示すように、平面視して位置決め穴302と交差するように、位置決め台30の上面の一方の縁から他方の縁まで延びて形成されている。
エア抜き溝304の幅Wgは、図3(A)に示すように、載置面306aの幅よりも小さくなるように設定されている。幅Wgは、吸着孔HL1の直径以下となるように設定されることが好ましい。
エア抜き溝304の深さDgは、位置決め穴302の深さ(高さH2)以上の寸法となるように設定されている。
エア抜き溝304は、吸着コレット40が吸着していた半導体チップCを受け渡すために、吸着圧力を負圧から正圧にした際に排出されるエアを逃がすことができる。
【0033】
有無センサ34(図4参照)は、載置面306aに半導体チップCが載っていることを検出するための光電センサである。この光電センサは、吸着孔HL1の内部を通る検出光を照射し、その反射光を検出することで、半導体チップCの有無を検出できる。
有無センサは、載置面306aに半導体チップCが載っていることを検出するためのセンサであれば光電センサに限定されるものではなく、有無センサ34に代えて、吸着孔HL1を流れるエアを検出するための流量センサを有無センサとしてもよい。流量センサがエアの流れを検出することにより、半導体チップCの有無が検出される。
【0034】
チップ部品位置決め装置28は、位置決め台30に超音波振動を加える超音波発振器(不図示)を更に有していてもよい。
超音波により位置決め台30を加振することにより、吸着コレット40が受け渡した半導体チップCが載置面306aに載らない可能性が低減される。
【0035】
次に、チップ部品位置決め装置28の動作について、図6に基づいて説明する。半導体チップCの位置決め装置28は、次のステップS1~S7に従って、半導体チップCを予め設定された許容誤差範囲内に位置決めできる。
【0036】
(ステップS1)
半導体チップCを吸着した吸着コレット40が、処理ユニット120a、120b(図1参照)を経て位置決め台30の上方に移動する。この吸着コレット40に吸着された半導体チップCは、予め設定された許容誤差範囲内に位置決めされていない状態である。
【0037】
(ステップS2)
吸着コレット40が下降し、図6(A)に示すように、載置面306aから半導体チップCの下面までの距離がg1となる位置(先端面の位置が載置面306aから高さHpとなる位置)にて静止する。この状態において、高さg1は、図5(A)に示すように、高さH1を超えかつ高さH2以下の範囲にある。
吸着コレット40が吸着する半導体チップCは、図6(A)に示すように位置ずれしている場合であっても、隙間Lm(図5(A)参照)が確保されているため、第2の傾斜面308bとの接触は回避される。
【0038】
(ステップS3)
吸着圧力が負圧から正圧に変化し、吸着コレット40によって吸着されていた半導体チップCが解放され、解放された半導体チップCは自然落下する。
吸着圧力が負圧から正圧に変化する際に、吸着コレット40の吸着孔HL2からエアが排出される。吸着孔HL2から出たエアは、主としてエア抜き溝304を通って排出されるため、位置決め穴302の内部に半導体チップCを巻き上げるような気流を発生することが抑制される。
【0039】
(ステップS4)
位置決め台30の吸着孔HL1の圧力が負圧となり、図6(B)に示すように、半導体チップCが載置面306aに吸着される。その際、二点鎖線で示すような、位置ずれしていたり挙動が乱れたりした半導体チップCは、第2の傾斜面308b及び第1の傾斜面308aに倣い載置面306aに載る。
載置面306aに載った半導体チップCは、予め設定された許容誤差範囲内に位置決めされ、有無センサ34によって検出される。有無センサ34によって、半導体チップCが載置面306aに載っていないことが検出された場合には、アラームが出力される。
【0040】
(ステップS5)
吸着コレット40が図6(B)に示す状態から更に下降し、図5(B)に示すように、半導体チップCの上面から先端面までの距離がg2となる位置(吸着コレット40の先端面の位置が載置面306aから高さHgとなる位置)にて静止する。
【0041】
(ステップS6)
吸着孔HL1の圧力が負圧から正圧に変化し、位置決め台30が半導体チップCを解放する一方で、吸着コレット40の吸着孔HL2の圧力が負圧となる。その結果、図6(C)に示すように、半導体チップCは、載置面306aから高さg2だけ浮き上がり、吸着コレット40に吸着される。
半導体チップCは、図5(B)に示すように、下面の高さ位置が第1の傾斜面308aの上端の高さ位置H1よりも低い範囲にて位置決め台30から吸着コレット40に吸着されるため、半導体チップCの挙動は、第1の傾斜面308aによって規制される。
従って、位置決め台30によって位置決めされた半導体チップCが、吸着コレット40に受け渡される際に発生する位置ずれが抑制され、半導体チップCの位置は、予め設定された許容誤差範囲内に維持される。
【0042】
(ステップS7)
吸着コレット40が上昇し、吸着した半導体チップCを次の処理ユニット120dに搬送する。
【0043】
以降、ステップS1~S7が繰り返されることにより、半導体チップCが順次位置決めされる。
【0044】
次に、位置決め装置28の位置決め性能を評価するための評価試験について説明する。
発明者は、本実施の形態に係る位置決め台30及び比較例に係る位置決め台30aを使用し、それぞれ半導体チップCを位置決めした後、吸着コレット40が吸着した状態における半導体チップCの位置ずれ量を画像処理用カメラを用いて測定した。
比較例となる位置決め台30aは、図7(A)及び図7(B)に示すように、位置決め穴302aの形状が、傾斜角が一定の傾斜面が形成された四角錐台状である。
位置決め穴302、302aの寸法は、それぞれ、吸着コレット40の半導体チップCの受け渡し時の高さ(載置面から半導体チップCの下面までの距離)が高さg1、受け取り時の高さ(載置面から半導体チップCの下面までの距離)が高さg2となる同一条件の下で設定されている。
高さg1は例えば0.1~0.2mmであり、高さg2は例えば0.03~0.08mmである。
使用した半導体チップCは、1005サイズのミラーチップであり、厚みが85μmである。
【0045】
300個のミラーチップについて測定した結果、図8(A)及び図8(B)に示すように、位置決め台30によって位置決めされた後に吸着コレット40が受け取ったミラーチップは、比較例に示す位置決め台30aを使用した場合と比較して、厚み方向(上下方向)に延びる軸回りの回転ずれ量(位置ずれ量)である角度θmが抑制されていることが明らかとなった。
【0046】
以上説明したように、チップ部品位置決め装置28によれば、位置決めした後の半導体チップCが、離れた位置にある吸着コレット40に吸着される際の位置ずれが抑制される。
【0047】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
チップ部品位置決め装置28が位置決めする対象は、半導体チップCに限定されるものではなく、任意のチップ部品であってもよい。このチップ部品として、例えば、チップ抵抗、チップコンデンサその他のチップ状の電子部品が挙げられ、そのサイズは、例えば0402サイズや0603サイズである。
また、位置決め穴302の形状は、図2(B)のX-X断面又はY-Y断面が左右対称となるように形成されていることに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0048】
10 テーピングマシン
20 チップ剥離装置
28 チップ部品位置決め装置
30、30a 位置決め台
34 有無センサ
40 吸着コレット
110 ウェハーリング
115 回転テーブル
120a~120e 処理ユニット
140 テーピングユニット
302、302a 位置決め穴
304 エア抜き溝
306 底部
306a 載置面
306b 溝
308 内周部
308a 第1の傾斜面
308b 第2の傾斜面
C 半導体チップ
HL1、HL2 吸着孔