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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023104440
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】釣竿
(51)【国際特許分類】
   A01K 87/00 20060101AFI20230721BHJP
【FI】
A01K87/00 620A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022005427
(22)【出願日】2022-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(72)【発明者】
【氏名】増渕 祐基
【テーマコード(参考)】
2B019
【Fターム(参考)】
2B019AA01
2B019AA05
2B019AC00
(57)【要約】
【課題】魚のあたりを振動と音によって感知し易くした釣竿を提供する。
【解決手段】中空部7Aを備えた穂先竿杆7を有する釣竿において、穂先竿杆7の先端領域に中空部内に延びる線材10を揺動可能に保持し、穂先竿杆7が振動した際、線材7を中空部の内壁7bに当接させることを特徴とする。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空部を備えた穂先竿杆を有する釣竿において、
前記穂先竿杆の先端領域に前記中空部内に延びる線材を揺動可能に保持し、前記穂先竿杆が振動した際、前記線材を中空部の内壁に当接させることを特徴とする釣竿。
【請求項2】
前記線材は、前記穂先竿杆にスペーサを介在して取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の釣竿。
【請求項3】
前記線材は、前記穂先竿杆に圧入して取り付けられており、穂先竿杆の元側に移行するに従い、縮径するテーパを有することを特徴とする請求項1に記載の釣竿。
【請求項4】
前記線材は、前記穂先竿杆に対して着脱可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の釣竿。
【請求項5】
前記線材は、穂先竿杆の先端に着脱されるキャップ部材に保持されていることを特徴とする請求項4に記載の釣竿。
【請求項6】
前記キャップ部材には、トップガイドが取り付けられていることを特徴とする請求項5に記載の釣竿。
【請求項7】
前記穂先竿杆は、先端側が中実体、基端側が中空体で構成され、前記線材は、前記中実体から連続して前記中空体内に突出していることを特徴とする請求項1に記載の釣竿。
【請求項8】
前記線材は、先端に振動部を有することを特徴とする請求項1に記載の釣竿。
【請求項9】
前記振動部は、魚があたった際の穂先竿杆の振動方向に対して直交する方向に延びる平板状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の釣竿。
【請求項10】
前記線材の軸方向長さは、前記穂先竿杆の長さの10~15%であることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の釣竿。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穂先竿杆部分に特徴を有する釣竿に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、置き竿をした際に、魚のあたりを知らせるように、竿先に鈴を付けることが知られている。しかし、穂先竿杆に別部材である鈴を着脱するのは煩わしく、また、風の影響などによって、実際にはあたりがないにも関わらず報音することがある。
【0003】
このため、特許文献1には、第1穂先部を金属ソリッドで構成し、これを中空の第2穂先部(受節)の内面に直接、接触させた穂先竿杆を有する釣竿か開示されている。このような構成の穂先竿杆は、魚のあたりがあると、金属ソリッドの振動が受節に伝わり、手元で振動を感じ易くすることが可能となる。また、特許文献2には、穂先竿杆の中空部の剛性を急激に変化させた釣竿が開示されている。このような構成の穂先竿杆では、穂先の振幅が大きくなることから、魚のあたりが目視し易いと共に、穂先竿杆で増幅されて手元で振動を感じ易くすることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-178130号
【特許文献2】特開2015-208265号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した特許文献1及び2に開示された釣竿は、魚のあたりを、手感度と目感度によって報知するようにしている。しかし、目感度は、釣り人の腕で左右され易く、穂先を明るい色にして視認性を向上する必要があり、常に穂先部分を目視する必要がある。特に、夜釣りでは、蛍光体のような発光部材を取着しないと、魚のあたりを把握することができなくなる。また、手感度は材料特性に依存し、振動があっても、材料と調子がマッチしていないと感度を出すことができず、金属ソリッドが常時、受節に接触した構成では、振動が伝達し難くなる。更に、手感度では、常時、釣竿を握持していないと、あたりを感知することができず、置き竿にすることができなくなる。
【0006】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、魚のあたりを振動と音によって感知し易くした釣竿を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明は、中空部を備えた穂先竿杆を有する釣竿において、前記穂先竿杆の先端領域に前記中空部内に延びる線材を揺動可能に保持し、前記穂先竿杆が振動した際、前記線材を中空部の内壁に当接させることを特徴とする。
【0008】
上記した構成の釣竿によれば、魚が掛かって穂先竿杆が振動した際、その振動によって中空部に延びる線材が中空部の内壁に当接する。このように、魚のあたりによる振動によって線材が内壁に当接することで、その振動は増幅されて、手元竿杆を握持している手で感じ易くすることができる。また、線材が中空部の内壁に当接することで音が発生するため、置き竿にする等、釣竿から目を離している場合、或いは、周囲が暗い場合でも、魚のあたりを音で感知することが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、魚のあたりが感知し易い釣竿が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る釣竿の一実施形態を示す図。
図2】(a)~(c)は、図1に示す釣竿の穂先竿杆の構成、及び、穂先竿杆に保持される線材の構成を示す図。
図3】魚があたった際の線材の作用を説明する図。
図4】線材の第2の実施形態を示す図であり、魚があたった際の線材の作用を説明する図。
図5】線材の第3の実施形態を示す図であり、(a)は、線材を取り付けた状態の穂先竿杆を示す図、(b)は、穂先竿杆に取り付けられるキャップ部材の構成を示す図。
図6】キャップ部材の変形例を示す図であり、(a)は、キャップ部材に対して線材を取り外す状態を示す図、(b)は、キャップ部材に対して別の線材を取り付けた状態を示す図。
図7】穂先竿杆の変形例を示す図。
図8】線材の第4の実施形態を示す図。
図9図8に示す線材を軸方向から見た図。
図10】線材の第5の実施形態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明に係る釣竿の一実施形態を示す図である。
本実施形態に係る釣竿1は、元竿杆3、中竿杆5、及び穂先竿杆7の3本の竿杆を並継式で継合した構成となっている。
前記元竿杆3には、魚釣用リールRを固定するリールシート3Aが設けられている。また、中竿杆5及び穂先竿杆7には、魚釣用リールRから繰り出される釣糸を挿通させる複数の釣糸ガイド8A~8Fが設けられており、穂先竿杆7の先端には、トップガイド9が固定されている。この場合、各竿杆に配設される釣糸ガイドの位置、個数、構成については任意であり、元竿杆3にも釣糸ガイドを配設しても良い。
【0012】
なお、釣竿は、振出式の釣竿であっても良く、その継合本数については任意であり、1本竿であっても良い。また、各竿杆に装着される釣糸ガイドの構成については、遊動式のものが配置されていても良い。さらに、釣竿は、魚釣用リールRを取り付けない構成であっても良い。
【0013】
前記元竿杆3及び中竿杆5は、繊維強化樹脂製の管状体(中空体)で形成されており、例えば、強化繊維(主に炭素繊維やガラス繊維等)に、エポキシ樹脂等の合成樹脂を含浸した繊維強化樹脂プリプレグ(プリプレグシート)を芯金に巻回し加熱工程を経た後、脱芯する等、定法に従って形成されている。また、前記穂先竿杆7は、元竿杆及び中竿杆と同様、管状体で構成しても良いし、先端側を中実体とし基端側を管状体(穂持ち竿杆であり、受節とも称する)で連結した構成にしても良い。
【0014】
次に、図2及び図3を参照して、上記した釣竿1の穂先竿杆7について説明する。
なお、これらの図に示す穂先竿杆7は、図1で示した釣糸ガイド8B~8F、及び、トップガイド9を省略してある。
【0015】
穂先竿杆7は、上記した製造方法によって管状体として形成されており、その内部に軸方向に延在する中空部7Aを備えた構成となっている。この穂先竿杆7の先端開口7aからは線材10が挿入されており、線材10は、穂先竿杆の中空部7Aを規定する内壁7bに対して全周に亘って一定の隙間を介在した状態で保持されている。前記線材10は、内壁7bに当接した際に音が生じるように、カーボン、ガラス、金属等によって構成されており、穂先竿杆7の先端領域に揺動可能に保持される。
【0016】
本実施形態では、穂先竿杆7の先端開口7aに圧入される円柱形状のスペーサ10Aに線材10を固定しており、これにより、線材10は、穂先竿杆の内壁7bに対して軸方向に垂れ下がった状態で揺動可能に固定されている。このような円柱形状のスペーサ10Aの中心位置に線材10を固定することで、360°に亘って穂先竿杆の内壁7bに対して一定の隙間を維持することができ、穂先竿杆7が振動した際、確実に線材を内壁7bに当接させることが可能となる。
【0017】
なお、前記スペーサ10Aについては、例えば、ゴム、シリコン、樹脂等によって形成され、穂先竿杆7の先端開口7aに圧入して接着固定しても良いし、図2(c)及び図3に示すように、摘み易いように突出状態で圧入し着脱可能に構成しても良い。すなわち、線材10を交換可能にすることで、対象魚、釣法、釣場の状況などに応じて、最適な線材10を取り付けることが可能となる。
【0018】
上記した構成の釣竿によれば、魚が掛かって穂先竿杆7が振動した際、図3に示すように、その振動によって中空部7Aに延びる線材10、特に先端側が内壁7bに当接するようになる。このように、魚のあたりによる振動で線材10が内壁7bに当接するように構成すると、その振動が増幅されて手元側に伝わり、手元竿杆3を握持している手で感じ易くすることができる。また、線材10が内壁7bに当接することで音が発生するため、置き竿にするなど、釣竿から目を離している状況下、周囲が暗い状況下、釣竿を握持していない状況下等においても、魚のあたりを音で感知することが可能となる。
【0019】
以上のように、本発明に係る釣竿は、魚のあたりを手の振動、及び、音によって感知できるため、釣り人は、常に穂先竿杆7の先端を目視している必要がなく、夜釣りにおいても、穂先部分に発光部材を取着しなくても魚のあたりを感知することが可能となる。また、鈴のような別部材を着脱する手間がないとともに、風の影響を受けることもなく、確実に魚のあたりを感知することが可能となる。さらに、必要に応じて、線材10の材料を変更することも可能であり、穂先竿杆7の調子にマッチした線材10を配設することが可能となる。
【0020】
図4は、線材の第2の実施形態を示す図であり、魚があたった際の線材の作用を説明する図である。
本実施形態では、線材20を穂先竿杆7に圧入して取り付けるように構成している。このため、線材20は、穂先竿杆7の先端開口7aに圧入される基部20aと、基部20aから穂先竿杆7の元側に移行するに従い、縮径するテーパ20bを有しており、穂先竿杆が振動した際、先端側が揺動して当接するようになる。
【0021】
このような構成では、線材20にスペーサを設けておく必要が無く、コストを低減することが可能となる。なお、線材20は、先端開口に圧入して固定しても良いし、基部20aを突出させて、着脱できるように構成しても良い。
【0022】
図5は、線材の第3の実施形態を示す図であり、(a)は、線材を取り付けた状態の穂先竿杆を示す図、(b)は、穂先竿杆に取り付けられる線材付のキャップ部材の構成を示す図である。
【0023】
穂先竿杆7の先端開口7aに圧入される線材については、別部材を用いた着脱構造によって交換できるようにしても良い。図5に示す構成では、穂先竿杆7の先端部分に外嵌されるキャップ部材30の底面30aの中央部分に凹所30bを形成し、ここに線材20の基部20aが保持(圧入、固定)されている。また、キャップ部材30には、トップガイド9を取り付けておいても良い。このトップガイド9は、キャップ部材30に対して、接着、圧入、糸止め等によって固定することが可能である。
【0024】
なお、前記キャップ部材30については、穂先竿杆の先端部分に対して、例えば、圧入構造、或いは、ネジなどの螺合構造によって着脱できるようにすることで、最適な線材を選択することができると共に、トップガイド9についても、最適な構成を選択することが可能となる。
【0025】
図6は、キャップ部材の変形例を示す図であり、(a)は、キャップ部材に対して線材を取り外す状態を示す図、(b)は、キャップ部材に対して別の線材を取り付けた状態を示す図である。
【0026】
この変形例では、図5に示したキャップ部材30に対して、線材を交換できるように構成したものである。すなわち、(a)に示すように、キャップ部材30の底面30aに形成された凹所30bに圧入されている線材20を軸方向に引き出すことで、線材20の基部20aを凹所30bから外すことが可能となっている。そして、凹所30bに、別の線材22の基部22aを圧入することで、最適な線材に変更することができる。
このように、1つのキャップ部材30に対して、線材のみを交換できるようにしても良い。
【0027】
図7は、穂先竿杆の変形例を示す図である。
上記した図5及び図6に示す構成では、トップガイド9をキャップ部材30に対して固定したが、穂先竿杆7の先端側にトップガイド9Aを固定しても良い。トップガイド9Aの固定方法は、従来と同様、穂先竿杆の先端部に圧入、接着、糸止め等によって固定することが可能である。
【0028】
図8は、線材の第4の実施形態を示す図であり、図9は、図8に示す線材を軸方向から見た図である。
本実施形態で示すように、例えば、図2図3に示した線材10の先端に、振動部10Bを取り付けても良い。振動部は、線材の先端側を大きく撓ませる機能を備えたものであれば良く、線材10と共に一体形成、或いは、別体を取着することで構成可能である。この振動部10Bは、例えば、線材10よりも比重が大きい材料(高比重材)で構成することが可能であり、それ以外にも、線材10よりも変位し易い低剛性部材で構成することが可能である。
【0029】
線材10の先端に、このような振動部10Bを取り付けておくことで、線材10が大きく振動し易くなり、内壁7bに当接した際、手元側で振動を感知し易くなると共に、内壁7bに強く当接して大きな発音が得られ、魚のあたりをより把握し易くすることが可能となる。
【0030】
なお、図9に示すように、前記振動部10Bは、魚があたった際の穂先竿杆7の振動方向(矢印で示す上下方向)に対して直交する方向(水平方向)に延出する平板状に形成しておくことが好ましい。
このような構成では、横風等が吹いて穂先竿杆が横方向に振れても、線材10の内壁7bに対する当接が弱いことから、横風などの影響を受け難くすることが可能となる。
【0031】
図10は、線材の第5の実施形態を示す図である。
本実施形態の穂先竿杆は、先端側を中実体40、基端側を中空体(管状体;穂持ち竿杆)7´で構成している。前記中空体7´の中空部7Aに延出する線材は、中実体40で構成することができ、中空体7´の先端開口7aから嵌合部40aを圧入し、そのまま連続して中空体7´内に突出させることができる。
【0032】
このような構成によれば、先端を中実体にして細径化を図ることができるので、微妙な魚のあたりでも中実体が振動するようになり、手元でその振動を感知し易くすることができる。
【0033】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されることはなく、種々、変形することが可能である。
上記した構成において、前記線材の軸方向長さについては、穂先竿杆7の全体長さLの10~15%にすることが好ましい。これは、線材は長い方が振れ易く、内壁7bに対する当接力が大きくなって、あたりが感知し易くなるが、15%を超えると、線材の重さが増加して持ち重りを感じ易くなることから、15%以下に抑えることが好ましい。また、線材の長さが10%未満にあると、振動による当接力が十分ではなく、音が感知し難く、振動の伝達効果が十分に得られないことから、10%以上にすることが好ましい。
【0034】
また、前記線材については、穂先竿杆の内壁7bに対してフリーとなるように保持されていれば良く、その太さや断面形状、素材については限定されることはなく、穂先竿杆7に対する保持の構造についても適宜、変形することが可能である。
また、線材については、穂先竿杆7に対して外嵌させても良いし、内嵌させても良く、ネジ構造による螺合構造で穂先竿杆に対して直接、着脱できるようにしても良い。
【符号の説明】
【0035】
1 釣竿
7 穂先竿杆
7A 中空部
7a 内壁
10,20 線材
10A スペーサ
10B 振動部
30 キャップ部材
40 中実体(線材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10