(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023010446
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】水処理システム、制御装置、プログラム及び制御方法
(51)【国際特許分類】
B01D 24/48 20060101AFI20230113BHJP
B01D 29/66 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
B01D29/36 C
B01D29/38 510Z
B01D29/38 520A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021114588
(22)【出願日】2021-07-09
(71)【出願人】
【識別番号】507214083
【氏名又は名称】メタウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 智仁
【テーマコード(参考)】
4D116
【Fターム(参考)】
4D116BB01
4D116FF18B
4D116GG03
4D116KK04
4D116QA24D
4D116QA24G
4D116QA31D
4D116QA31G
4D116QC02A
4D116QC06
4D116QC08D
4D116QC22A
4D116QC23
4D116QC23A
4D116QC23B
4D116QC23D
4D116QC25A
4D116QC26A
4D116QC29A
4D116QC29D
4D116QC32A
4D116QC32D
4D116QC36
4D116RR01
4D116RR05
4D116RR16
4D116VV07
(57)【要約】
【課題】処理液を用いて逆洗浄を行う際に、逆洗浄用の処理液を貯留する逆洗水槽に、適切な逆洗浄が可能な処理液を貯留する。
【解決手段】水処理システム1は、ろ過体32によりろ過された処理液W1を貯留する逆洗水槽50と、ろ過体32により所定時間ろ過した後に、逆洗水槽50に貯留された処理液W1を用いてろ過体32を逆洗する逆洗手段と、を備える。逆洗手段は、処理液W1が逆洗水槽50に貯留される時間がろ過時間より短くなるように、処理液W1の貯留開始タイミングまたは逆洗開始タイミングを設定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ろ過体によりろ過された処理液を貯留する逆洗水槽と、
前記ろ過体により所定時間ろ過した後に、前記逆洗水槽に貯留された処理液を用いて前記ろ過体を逆洗する逆洗手段と、を備え、
前記逆洗手段は、
前記処理液が前記逆洗水槽に貯留される時間がろ過時間より短くなるように、前記処理液の貯留開始タイミングまたは逆洗開始タイミングを設定する
ことを特徴とする、水処理システム。
【請求項2】
前記逆洗手段は、
ろ過を開始してから所定時間が経過したタイミングを、前記処理液の貯留開始タイミングに設定する、請求項1に記載の水処理システム。
【請求項3】
前記逆洗手段は、
予め定められた逆洗開始タイミングの所定時間前を、前記処理液の貯留開始タイミングに設定する、請求項2に記載の水処理システム。
【請求項4】
前記逆洗手段は、
逆洗に必要な前記処理液の水量と被処理液の供給量とに基づいて、前記逆洗水槽に前記処理液を貯留するのに必要な供給時間を算出し、
予め定められた逆洗開始タイミングの当該供給時間前の時点を、前記処理液の貯留開始タイミングに設定する、請求項3に記載の水処理システム。
【請求項5】
前記逆洗手段は、
逆洗に必要な前記処理液の水量と被処理液の供給量とに基づいて、前記逆洗水槽に前記処理液を貯留するのに必要な供給時間を算出し、
前記貯留開始タイミングから当該供給時間が経過して所定時間以内の時点を、前記逆洗開始タイミングに設定する、請求項1~4のいずれか一項に記載の水処理システム。
【請求項6】
前記逆洗手段は、
逆洗に必要な水量の処理液が前記逆洗水槽に貯留されてから所定時間以内の時点を、前記逆洗開始タイミングに設定する、請求項1~4のいずれか一項に記載の水処理システム。
【請求項7】
ろ過体、及び前記ろ過体でろ過された処理液を貯留する逆洗水槽を備えるろ過装置の制御装置であって、
前記ろ過体により所定時間ろ過させた後に、前記逆洗水槽に貯留された処理液を用いて前記ろ過体を逆洗させ、
前記処理液が前記逆洗水槽に貯留される時間がろ過時間より短くなるように、前記処理液の貯留開始タイミングまたは逆洗開始タイミングを設定する
ことを特徴とする、制御装置。
【請求項8】
ろ過体、及び前記ろ過体でろ過された処理液を貯留する逆洗水槽を備えるろ過装置の制御方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記ろ過体により所定時間ろ過した後に、前記逆洗水槽に貯留された処理液を用いて前記ろ過体を逆洗する逆洗ステップを、
コンピュータに実行させ、
前記逆洗ステップにおいては、
前記処理液が前記逆洗水槽に貯留される時間がろ過時間より短くなるように、前記処理液の貯留開始タイミングまたは逆洗開始タイミングを設定する
ことを特徴とする、プログラム。
【請求項9】
ろ過体、及び前記ろ過体でろ過された処理液を貯留する逆洗水槽を備えるろ過装置の制御方法であって、
前記ろ過体により所定時間ろ過した後に、前記逆洗水槽に貯留された処理液を用いて前記ろ過体を逆洗する逆洗ステップを、含み、
前記逆洗ステップにおいては、
前記処理液が前記逆洗水槽に貯留される時間がろ過時間より短くなるように、前記処理液の貯留開始タイミングまたは逆洗開始タイミングを設定する
ことを特徴とする、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理システム、制御装置、プログラム及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ろ過装置は、ろ過体に蓄積した固形成分を除去するために、ろ過体を逆洗浄する場合がある。例えば特許文献1には、ろ過装置でろ過した処理液を逆洗水槽に貯留してろ過体の二次側に供給して、ろ過体を逆洗浄する旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えばろ過初期の処理液(ろ過液)を逆洗水槽に貯留して、その処理液を用いて逆洗浄すると、除去対象成分が十分除去されていない処理液が二次側に供給されてしまい、二次側に除去対象成分が残ってしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、処理液を用いて逆洗浄を行う際に、逆洗浄用の処理液を貯留する逆洗水槽に、適切な逆洗浄が可能な処理液を貯留できる制御装置、ろ過システム及び制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示の水処理システムは、ろ過体によりろ過された処理液を貯留する逆洗水槽と、前記ろ過体により所定時間ろ過した後に、前記逆洗水槽に貯留された処理液を用いて前記ろ過体を逆洗する逆洗手段と、を備え、前記逆洗手段は、前記処理液が前記逆洗水槽に貯留される時間がろ過時間より短くなるように、前記処理液の貯留開始タイミングまたは逆洗開始タイミングを設定する。
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示の制御装置は、ろ過体、及び前記ろ過体でろ過された処理液を貯留する逆洗水槽を備えるろ過装置の制御装置であって、前記ろ過体により所定時間ろ過した後に、前記逆洗水槽に貯留された処理液を用いて前記ろ過体を逆洗し、前記処理液が前記逆洗水槽に貯留される時間がろ過時間より短くなるように、前記処理液の貯留開始タイミングまたは逆洗開始タイミングを設定することを特徴とする。
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示のプログラムは、ろ過体、及び前記ろ過体でろ過された処理液を貯留する逆洗水槽を備えるろ過装置の制御方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、前記ろ過体により所定時間ろ過した後に、前記逆洗水槽に貯留された処理液を用いて前記ろ過体を逆洗する逆洗ステップを、コンピュータに実行させ、前記逆洗ステップにおいては、前記処理液が前記逆洗水槽に貯留される時間がろ過時間より短くなるように、前記処理液の貯留開始タイミングまたは逆洗開始タイミングを設定することを特徴とする。
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示の制御方法は、ろ過体、及び前記ろ過体でろ過された処理液を貯留する逆洗水槽を備えるろ過装置の制御方法であって、前記ろ過体により所定時間ろ過した後に、前記逆洗水槽に貯留された処理液を用いて前記ろ過体を逆洗する逆洗ステップを、含み、前記逆洗ステップにおいては、前記処理液が前記逆洗水槽に貯留される時間がろ過時間より短くなるように、前記処理液の貯留開始タイミングまたは逆洗開始タイミングを設定する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、処理液を用いて逆洗浄を行う際に、逆洗浄用の処理液を貯留する逆洗水槽に、適切な逆洗浄が可能な処理液を貯留することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る水処理システムの模式図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る制御装置の模式的なブロック図である。
【
図3】
図3は、逆洗水槽への処理液の貯留を説明する図である。
【
図4】
図4は、ろ過体の逆洗浄を説明する図である。
【
図5】
図5は、ろ過工程、貯留工程、及び逆洗浄工程のタイミングの例を説明する図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係る制御装置によるろ過装置の制御フローを説明するフローチャートである。
【
図7】
図7は、第2実施形態に係る水処理システムの模式図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態でのろ過体の逆洗浄を説明する図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態に係る制御装置によるろ過装置の制御フローを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0013】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る水処理システムの模式図である。
図1に示すように、第1実施形態に係る水処理システム1は、ろ過装置10と制御装置12とを備える。ろ過装置10は、処理液貯留槽20と、ろ過部30と、供給機構40と、逆洗水槽50と、気体供給部60と、濃縮液貯留槽70と、配管L1、L2、L3と、ポンプPと、バルブV1、V2、V3、V4、V5、V6とを含む。
【0014】
処理液貯留槽20は、ろ過装置10でのろ過の対象となる被処理液W0(原水)が貯留される水槽である。ろ過部30は、ろ過体32と、ろ過体32を収容する筐体34とを含む。ろ過体32は、セラミック製のろ過体である。ろ過体32に用いられるセラミックとしては、例えば、アルミナ、チタニア、ジルコニア、シリカ、ムライト、スピネル、或いは、これらの混合物などが挙げられる。ろ過体32は、一方の端部32Aから他方の端部32Bまで延在する複数の孔が設けられている。ろ過部30は、デッドエンド方式で膜ろ過を実行する構成となっているが、ろ過方式は任意である。ろ過部30の構造も、以上の説明に限られず任意であってよい。ろ過体32の材料も、セラミックに限られず、任意の材料で形成されてもよい。
【0015】
配管L1は、処理液貯留槽20と、ろ過体32の一次側である端部32Aとに接続されている。配管L1には、ポンプPとバルブV1が設けられている。なお、配管L1を流れる被処理液W0に凝集剤を添加する凝集剤添加機構を、配管L1に接続してもよい。この場合、配管L1には、凝集剤添加機構の接続箇所と端部32Aの接続箇所との間に、凝集剤を撹拌するインラインミキサが設けられてもよい。
【0016】
配管L2は、バルブV2が設けられており、筐体34の側面34Aと、供給機構40とに接続されている。筐体34の側面34Aは、ろ過体32の二次側である側面(外周面)32Cに対向しているため、配管L2は、ろ過体32の二次側に接続されているともいえる。供給機構40は、配管L2を流れる処理液W1が供給される機構であり、例えば水槽であるが、水槽に限られず任意の構成であってよい。また、配管L2には、逆洗水槽50も接続されている。逆洗水槽50は、供給機構40との接続ラインに対して、分岐して(並列に)配管L2に接続されている。逆洗水槽50は、配管L2を流れる処理液W1の一部を貯留する。逆洗水槽50には、気体供給部60が接続されている。気体供給部60は、例えば空気などの気体が貯留されるタンクであり、逆洗水槽50内の処理液W1の液面に向けて気体を供給する。逆洗水槽50と配管L2との間には、バルブV3が設けられており、逆洗水槽50と気体供給部60との間には、バルブV5が設けられる。また、逆洗水槽50には、逆洗水槽50内の圧力を逃がすバルブV4も設けられる。
【0017】
配管L3は、配管L1(すなわちろ過体32の一次側)と濃縮液貯留槽70とに接続されている。濃縮液貯留槽70は、ろ過体32の逆洗浄により生成された濃縮液W2を貯留する。配管L3には、バルブV6が設けられている。
【0018】
図2は、本実施形態に係る制御装置の模式的なブロック図である。制御装置12は、ろ過装置10を制御する装置、ここではコンピュータであり、
図2に示すように、制御部80と記憶部90とを含む。制御部80は、CPU(Central Processing Unit)である。制御部80は、記憶部90からプログラム(ソフトウェア)を読み出して実行することで、後述の処理を実行する。なお、制御部80は、1つのCPUによってこれらの処理を実行してもよいし、複数のCPUを備えて、それらの複数のCPUで、これらの処理を実行してもよい。また、後述の処理を、ハードウェア回路などで実現してもよい。
【0019】
図1は、ろ過装置10がろ過を実行している状態、すなわちろ過工程を示している。ろ過を実行する際には、制御装置12は、ポンプPを駆動し、バルブV1、V2、V4を開き、バルブV3、V5、V6を閉じる。これにより、処理液貯留槽20に貯留された被処理液W0が、配管L1を通って、ろ過体32の一次側である端部32Aに供給される。被処理液W0は、端部32Aから、ろ過体32の孔に浸入し、膜ろ過される。被処理液W0は、ろ過体32の孔で膜ろ過されて、ろ過体32の二次側である側面32Cから、ろ過後の処理液W1として排出される。側面32Cから排出された処理液W1は、配管L2を通って、供給機構40に供給される。なお、凝集剤添加機構がある場合、制御装置12は、ろ過を実行している際に、凝集剤添加機構を制御して、ろ過される前の被処理液W0に凝集剤を添加してよい。
【0020】
図3は、逆洗水槽への処理液の貯留を説明する図である。
図3に示すように、逆洗水槽50に逆洗浄用の処理液W1を貯留する際、すなわち貯留工程の際には、制御装置12は、ポンプPを駆動したままとし、バルブV1、V3、V4を開き、バルブV2、V5、V6を閉じる。これにより、ろ過体32での被処理液W0のろ過は続けられ、側面32Cから排出された処理液W1は、配管L2から逆洗水槽50内に供給される。逆洗水槽50には、供給された処理液W1が貯留される。なお、制御装置12は、貯留工程の際に、バルブV3を閉じなくてもよく、バルブV2及びバルブV3の両方を開いて、逆洗水槽50と供給機構40との両方に処理液W1を供給してもよい。
【0021】
図4は、ろ過体の逆洗浄を説明する図である。水処理システム1は、逆洗手段により、以降で説明する逆洗浄工程を実行する。逆洗手段は、水処理システム1において、逆洗浄工程を実行する主体であり、制御装置12、バルブV1からV5、及び気体供給部60などによって実現される。
図4に示すように、ろ過体32を逆洗浄する際、すなわち逆洗浄工程の際には、制御装置12は、ポンプPを停止し、バルブV3、V5、V6を開き、バルブV1、V2、V4を閉じ、気体供給部60を制御して、逆洗水槽50内の処理液W1の液面に向けて気体Aを供給する。これにより、ろ過体32でのろ過は停止され、逆洗水槽50内に貯留されていた処理液W1は、気体Aによって加圧されて、配管L2を通ってろ過体32の二次側に供給され、ろ過体32に詰まったウイルスや固形成分などの異物と共に、濃縮液W2として配管L3に排出される。濃縮液W2は、配管L3を通って、濃縮液貯留槽70に供給される。
【0022】
このように、制御装置12は、逆洗水槽50に貯留された処理液W1をろ過体32の二次側に供給させて、ろ過体32の逆洗浄を行わせている。ここで、ろ過装置10は、ろ過初期にはウイルスや固形成分などの異物の除去率が低くなる傾向にあり、例えばろ過初期の処理液W1を用いて逆洗浄すると、異物が十分除去されていない処理液W1がろ過体32の二次側に供給されてしまい、二次側に異物が残ってしまうおそれがある。そのため、適切な逆洗浄が可能な処理液W1を、逆洗水槽50に貯留する。それに対応して、本実施形態に係る水処理システム1は、逆洗手段により、ろ過体32により所定時間ろ過した後に、逆洗水槽50に貯留された処理液W1を用いてろ過体を逆洗することで、所定時間経過以降にろ過された、適切な逆洗浄が可能な処理液W1を、逆洗水槽50に貯留することを可能としている。以下、制御装置12の制御について具体的に説明する。
【0023】
図5は、ろ過工程、貯留工程、及び逆洗浄工程のタイミングの例を説明する図である。本実施形態に係る水処理システム1は、ろ過開始タイミングT0で、ろ過工程を開始する。その後、ろ過を開始してから所定時間が経過したタイミングである貯留開始タイミングT1で、貯留工程を開始する。ろ過開始タイミングT0から貯留開始タイミングT1まで(ΔT0A)においては、逆洗水槽50に処理液W1を貯留させずに、ろ過体32によるろ過が実行される。そして、逆洗開始タイミングT2に到達したら、逆洗浄工程を開始する。貯留開始タイミングT1から逆洗開始タイミングT2まで(ΔT1の時間)においては、ろ過体32によりろ過された処理液W1が逆洗水槽50に貯留され、逆洗開始タイミングT2以降においては、ろ過体32によるろ過が停止されて、逆洗水槽50に貯留された処理液W1による逆洗浄が実行される。本実施形態に係る水処理システム1は、処理液W1が逆洗水槽に貯留される時間(ΔT1)がろ過時間(ΔT0AまたはΔT0B)より短くなるように、貯留開始タイミングT1または逆洗開始タイミングT2が設定される。
【0024】
(1.貯留開始タイミングの設定)
貯留開始タイミングT1を設定する場合の例を説明する。制御装置12は、予め定められた所定のろ過時間に基づいて、ろ過を開始してから所定時間が経過したタイミングを、貯留開始タイミングT1として設定する。貯留開始タイミングT1は、例えば、所定のろ過時間(
図5におけるΔT0B)より予め定められた逆洗開始タイミングT2に基づいて設定してもよく、あるいは、所定のろ過時間(
図5におけるΔT0A)に基づいて設定してもよい。なお、貯留開始タイミングT1は、ろ過開始タイミングT0から、ろ過体32による異物の除去率の低下が十分に解消される程度の時間が経過した以降のタイミングとされることが好ましい。例えば、貯留開始タイミングT1は、ろ過開始タイミングT0から貯留開始タイミングT1までの時間ΔT0Aが、ろ過開始タイミングT0から逆洗開始タイミングT2までの時間ΔT0Bに対して、70%以上98.7%以下であるように設定されることが好ましく、さらに言えば、貯留開始タイミングT1は、逆洗開始タイミングT2の直前に設定されることがより好ましい。ただし、貯留開始タイミングT1の設定方法は以上に限られず、任意に設定してよい。
【0025】
(1-1.所定のろ過時間ΔT0Bに基づいて設定する場合)
この場合には、所定のろ過時間ΔT0Bが経過した時点が、逆洗開始タイミングT2として予め設定されている。そこで、制御装置12は、この逆洗開始タイミングT2の所定時間前を、貯留開始タイミングT1として設定する。具体的には、制御装置12は、単位時間当たりにろ過体32に供給される被処理液W0の流量である供給流量と、逆洗浄に必要な処理液W1の流量である必要流量とを取得して、貯留に必要な時間である供給時間を算出する。制御装置12は、取得した必要流量を供給流量で除することで、逆洗水槽50に処理液W1を供給する供給時間を算出する。制御装置12は、算出された供給時間に基づいて、逆洗開始タイミングT2より供給時間の前である貯留開始タイミングT1を設定する。なお、供給時間にバッファを設け、逆洗開始タイミングT2から供給時間とバッファ分を遡ったタイミングを、貯留開始タイミングT1にしてもよい。
【0026】
ここで、必要流量は、予め設定されており、制御装置12は、記憶部90から必要流量を読み出してよい。また、供給流量は、予め設定された値を、記憶部90から読み出してよい。あるいは、ろ過装置10に設けられたセンサ(流量計)により、ろ過体32に供給される被処理液W0の流量を検出して、供給流量としてもよい。
【0027】
(1-2.所定のろ過時間ΔT0Aに基づいて設定する場合)
この場合には、所定のろ過時間ΔT0Aが、必要流量に基づいて設定されている。制御装置12は、所定のろ過時間ΔT0Aが経過した時点を、貯留開始タイミングT1として設定する。
【0028】
(2.逆洗開始タイミングの設定)
所定の貯留開始タイミングT1から、逆洗水槽50に処理液W1が貯留される。制御装置12は、逆洗開始タイミングT2を設定する。逆洗開始タイミングT2は、例えば、供給時間に基づいて設定してもよく、あるいは、必要流量に基づいて設定してもよい。
【0029】
(2-1.供給時間に基づいて設定する場合)
この場合には、貯留開始タイミングT1が設定されている。制御装置12は、貯留開始タイミングT1の所定時間後を、逆洗開始タイミングT2として設定する。具体的には、制御装置12は、供給流量と必要流量とに基づき、処理液W1の貯留に必要な供給時間を算出し、貯留開始タイミングT1と供給時間とに基づき、逆洗開始タイミングT2を設定する。制御装置12は、貯留開始タイミングT1より供給時間だけ後のタイミングを逆洗開始タイミングT2としてもよいし、供給時間にバッファを設け、貯留開始タイミングT1より供給時間とバッファ分だけ後のタイミングを逆洗開始タイミングT2にしてもよい。
【0030】
(2-2.必要流量に基づいて設定する場合)
制御装置12は、逆洗水槽50内に貯留された処理液W1の流量が必要流量に達したタイミングに基づき、逆洗開始タイミングT2を設定する。この場合、逆洗水槽50には、処理液W1の流量を検出するセンサが設けられている。このセンサは、逆洗水槽50内の処理液W1の水位を計測する水位計でもよいし、単位時間当たりの逆洗水槽50への処理液W1の流入量を計測する流量計でもよい。制御装置12は、貯留開始タイミングT1から、逆洗水槽50への処理液W1の貯留を開始させつつ、このセンサの検出値を逐次取得して、逆洗水槽50内に貯留された処理液W1の流量が、必要流量に達したかを判断する。制御装置12は、逆洗水槽50内の処理液W1の流量が必要流量に達したタイミングを逆洗開始タイミングT2としてもよいし、バッファを設け、逆洗水槽50内の処理液W1の流量が必要流量に達してからバッファ分だけ後のタイミングを逆洗開始タイミングT2としてもよい。
【0031】
なお、以上の説明では、逆洗開始タイミングT2において、ろ過体32によるろ過を停止して逆洗浄を開始しているが、それに限られず、逆洗浄を開始するタイミングを、ろ過体32によるろ過を停止するタイミング(逆洗水槽50への貯留を停止するタイミング)より遅らせてもよい。この場合、ろ過を停止するタイミング(逆洗水槽50への貯留を停止するタイミング)と逆洗浄を開始するタイミングとの間の時間は、短く設定されていることが好ましく、ろ過を停止してから(逆洗水槽50への貯留を停止してから)所定時間以内を、逆洗浄を開始するタイミングに設定することが好ましいといえる。
【0032】
なお、貯留開始タイミングT1の設定と、逆洗開始タイミングT2の設定とは、どちらかのみを行ってもよいし、両方を行ってもよい。
【0033】
以上説明したろ過工程、貯留工程、及び逆洗浄工程のフローを、フローチャートに基づき説明する。
図6は、第1実施形態に係る制御装置によるろ過装置の制御フローを説明するフローチャートである。
図6に示すように、制御装置12は、ろ過開始タイミングT0から、ろ過装置10にろ過工程を実行させる(ステップS10)。制御装置12は、ろ過工程を実行させつつ、貯留開始タイミングT1に到達したかを判断し(ステップS12)、貯留開始タイミングT1に到達していない場合(ステップS12;No)、ろ過工程を続ける。一方、供給開始タイミングに到達した場合(ステップS12;Yes)、制御装置12は、貯留工程を実行させて(ステップS14)、逆洗水槽50への処理液W1の貯留を開始させる。制御装置12は、貯留工程を実行させつつ、逆洗開始タイミングT2に到達したかを判断し(ステップS16)、逆洗開始タイミングT2に到達していない場合(ステップS16;No)、貯留工程を続ける。一方、逆洗開始タイミングT2に到達した場合(ステップS16;Yes)、制御装置12は、ろ過体32によるろ過を停止させて、逆洗浄工程を実行させる(ステップS18)。制御装置12は、逆洗浄工程が終了したら、ろ過を再開するかを判断し(ステップS20)、再開する場合(ステップS20;Yes)は、ステップS10に戻り、再開しない場合(ステップS20;No)、本処理を終了する。
【0034】
水処理システム1によると、異物が十分除去されていないろ過初期の処理液W1がろ過体32の二次側に供給されることが抑制され、逆洗水槽50に、適切な逆洗浄が可能な処理液W1を貯留することが可能となる。また例えば、被処理液W0が高温であった場合、処理液W1の貯留時間が長くなるに従って処理液W1が冷却され、被処理液W0と逆洗浄用の処理液W1との温度差が大きくなり、逆洗浄時に処理液W1によってろ過体32を急冷して、ろ過体32にダメージを与える可能性も考えられる。従来技術のように、ろ過初期の処理液W1を逆洗水槽50に貯留する場合には、逆洗水槽50に貯留される時間はろ過時間とほぼ同一となるが、水処理システム1によると、逆洗水槽50に貯留される時間がろ過時間より短くなるように貯留開始タイミングT1や逆洗開始タイミングT2が設定されているため、処理液W1の冷却が進む前に逆洗浄を実施して、急冷によるろ過体32へのダメージを抑制できる。
【0035】
また、逆洗手段は、ろ過を開始してから所定時間が経過したタイミングを、処理液W1の貯留開始タイミングT1に設定する。この水処理システム1によると、所定時間が経過してから逆洗水槽50に処理液W1の貯留を開始させるため、ろ過開始から十分に時間経過した処理液W1を用いた逆洗浄が可能となり、逆洗浄を適切に実施できる。
【0036】
また、逆洗手段は、予め定められた逆洗開始タイミングT2の所定時間前を、処理液W1の貯留開始タイミングT1に設定する。この水処理システム1によると、ろ過初期の処理液W1を貯留せず、逆洗開始タイミングT2の所定時間前から処理液W1を貯留させるため、ろ過開始から十分に時間経過した処理液W1を用いた逆洗浄が可能となり、逆洗浄を適切に実施できる。
【0037】
また、逆洗手段は、ろ過体32への被処理液W0の供給流量と、逆洗浄に必要な処理液W1の必要流量とに基づいて、逆洗水槽50に処理液W1を貯留するのに必要な供給時間を算出する。逆洗手段は、予め定められた逆洗開始タイミングT2の供給時間前の時点を、処理液W1の貯留開始タイミングT1に設定する。この水処理システム1によると、このように貯留開始タイミングT1を設定するため、ろ過開始から十分に時間経過した処理液W1を用いることが可能となり、逆洗浄を適切に実施できる。
【0038】
また、逆洗手段は、逆洗に必要な処理液W1の必要流量と被処理液W0の供給量とに基づいて、逆洗水槽50に処理液W1を貯留するのに必要な供給時間を算出する。逆洗手段は、貯留開始タイミングT1から当該供給時間が経過して所定時間以内の時点を、逆洗開始タイミングT2に設定する。この水処理システム1によると、このように逆洗開始タイミングT2を設定するため、ろ過開始から十分に時間経過した処理液W1を用いることが可能となり、逆洗浄を適切に実施できる。
【0039】
また、逆洗手段は、逆洗に必要な水量の処理液W1が逆洗水槽50に貯留されてから所定時間以内の時点を、逆洗開始タイミングT2に設定する。この水処理システム1によると、逆洗に必要な水量の処理液W1が逆洗水槽50に貯留されてからすぐに逆洗浄を開始するため、処理液W1の冷却が進む前に逆洗浄を実施して、急冷によるろ過体32へのダメージを抑制できる。
【0040】
また、制御装置12は、ろ過体32により所定時間ろ過させた後に、逆洗水槽50に貯留された処理液W1を用いてろ過体32を逆洗する。制御装置12は、処理液W1が逆洗水槽50に貯留される時間がろ過時間より短くなるように、処理液W1の貯留開始タイミングT1または逆洗開始タイミングT2を設定する。この制御装置12によると、ろ過開始から十分に時間経過した処理液W1を用いた逆洗浄が可能となり、逆洗浄を適切に実施できる。
【0041】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態においては、ろ過装置10の構造が第1実施形態とは異なる。第2実施形態において、第1実施形態と構成が共通する箇所は、説明を省略する。
【0042】
図7は、第2実施形態に係る水処理システムの模式図である。
図7に示すように、第2実施形態に係るろ過装置10aは、逆洗水槽50aとろ過体32の二次側(筐体34の側面34A)とに、配管L2a1が接続されている。配管L2a1には、バルブV3が設けられる。そして、逆洗水槽50aと供給機構40との間には、配管L2a2が接続される。配管L2a2には、バルブV2が設けられる。すなわち、第1実施形態においては、逆洗水槽50aと供給機構40とが、ろ過体32の二次側に並列に接続されていたのに対し、第2実施形態においては、逆洗水槽50aと供給機構40とが、ろ過体32の二次側に直列に接続されている。逆洗水槽50aは、内部に供給された処理液W1を、供給機構40に排出可能に構成されている。
【0043】
図7は、ろ過工程を示している。第2実施形態においては、ろ過体32からの処理液W1を逆洗水槽50aに貯留させ、逆洗水槽50aから流出された処理液W1を、供給機構40に排出している。このように、第2実施形態のろ過工程では、逆洗水槽50aへの貯留も行っているため、第1実施形態の、逆洗水槽50aに貯留させずに処理液W1を排出するろ過工程と、逆洗水槽50aに貯留させる貯留工程とを、同時に実行しているともいえる。ろ過工程を実行する際には、制御装置12は、
図7に示すように、ポンプPを駆動し、バルブV1、V2、V3、V4を開き、バルブV5、V6を閉じる。これにより、ろ過体32でろ過された処理液W1は、配管L2a1を通って、逆洗水槽50aに供給される。また、バルブV2が開いているため、逆洗水槽50aに供給された処理液W1は、逆洗水槽50a内に貯留されつつ、一部が配管L2a2を介して、供給機構40に排出される。逆洗水槽50aに供給された処理液W1は、所定の滞留時間だけ逆洗水槽50a内に貯留された後、供給機構40に排出されるといえる。
【0044】
図8は、第2実施形態でのろ過体の逆洗浄を説明する図である。
図8に示すように、逆洗浄工程の際には、制御装置12は、ポンプPを停止し、バルブV3、V5、V6を開き、バルブV1、V2、V4を閉じ、気体供給部60を制御して、逆洗水槽50a内の処理液W1の液面に向けて気体Aを供給する。これにより、ろ過体32でのろ過は停止され、逆洗水槽50a内に貯留されていた処理液W1は、気体Aによって加圧されて、配管L2を通ってろ過体32の二次側に供給され、ろ過体32に詰まった異物と共に、濃縮液W2として配管L3に排出される。濃縮液W2は、配管L3を通って、濃縮液貯留槽70に供給される。
【0045】
図9は、第2実施形態に係る制御装置によるろ過装置の制御フローを説明するフローチャートである。
図9に示すように、制御装置12は、ろ過開始タイミングT0からろ過装置10にろ過工程を実行させる(ステップS30)。制御装置12は、ろ過工程を実行しつつ、逆洗開始タイミングT2に到達したかを判断し(ステップS32)、逆洗開始タイミングT2に到達していない場合(ステップS32;No)、ろ過工程を続ける。一方、逆洗開始タイミングT2に到達した場合(ステップS32;Yes)、制御装置12は、逆洗浄工程を実行させる(ステップS34)。第2実施形態においては、ろ過時間が、予め設定されており、ろ過開始タイミングT0からろ過時間が経過したタイミングが、逆洗開始タイミングT2となる。制御装置12は、逆洗浄工程が終了したら、ろ過を再開するかを判断し(ステップS36)、再開する場合(ステップS36;Yes)は、ステップS30に戻り、再開しない場合(ステップS36;No)、本処理を終了する。
【0046】
このように、第2実施形態においては、ろ過工程から貯留工程に切り替える貯留開始タイミングT1を設定することなく、ろ過開始タイミングT0から逆洗開始タイミングT2まで、逆洗水槽50aに処理液W1を供給し続けている。そして、逆洗開始タイミングT2において、逆洗水槽50aへの処理液W1の供給を停止して、逆洗浄を実行する。逆洗開始タイミングT2においては、逆洗水槽50aには、逆洗水槽50aに供給されてから滞留時間が経過する前の、ろ過開始タイミングから所定時間経過後にろ過された処理液W1が、貯留されている。そのため、逆洗開始タイミングT2においては、逆洗水槽50aには、ろ過を開始してから所定時間が経過した後にろ過された処理液W1が含まれるため、逆洗浄用に用いられる処理液W1には、ろ過を開始してから所定時間が経過した後に逆洗水槽50に貯留された処理液W1が含まれるといえる。また、処理液W1の滞留時間は、ろ過時間(ここではろ過開始タイミングT0から逆洗開始タイミングT2までの時間)よりも短い。処理液W1の滞留時間は、処理液W1が逆洗水槽50aに貯留される時間に対応するため、第2実施形態においても、処理液W1が逆洗水槽50aに貯留される時間が、ろ過時間よりも短くなるように、逆洗開始タイミングT2が設定されているといえる。
【0047】
以上説明したように、第2実施形態においては、逆洗水槽50aは、内部に供給された処理液W1を、処理液W1が供給される供給機構40に排出可能に構成されている。逆洗手段は、逆洗水槽50aに、ろ過の開始時から処理液W1を供給しつつ、逆洗水槽50a内の一部の処理液W1を供給機構40に排出させる。逆洗手段は、所定のろ過時間が経過したら、逆洗浄を開始する。第2実施形態においても、逆洗手段は、所定時間ろ過した後に、逆洗水槽50aに貯留された処理液W1を用いてろ過体32を逆洗し、処理液W1が逆洗水槽50aに貯留される時間がろ過時間より短くなるように、逆洗開始タイミングT2を設定する。そのため、第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、ろ過開始から十分に時間経過した処理液W1を用いて逆洗浄を適切に実行できると共に、処理液W1の冷却が抑えられ、急冷によるろ過体32へのダメージを抑制できる。なお、第2実施形態においては、ろ過の開始から、逆洗水槽50aへの処理液W1の供給を始めるため、逆洗浄用の処理液W1を確実に確保できる利点がある。一方、第1実施形態においては、ろ過の開始から所定時間が経過してから、逆洗水槽50への処理液W1の貯留を始めるため、異物の混入をより好適に抑制できる利点がある。
【0048】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これら実施形態等の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態等の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0049】
1 水処理システム
10 ろ過装置
12 制御装置
32 ろ過体
50 逆洗水槽
W0 被処理液
W1 処理液