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特開2023-104500ブルーライトによるミトコンドリアダメージの抑制剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023104500
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】ブルーライトによるミトコンドリアダメージの抑制剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20230721BHJP
   A61K 36/65 20060101ALI20230721BHJP
   A61K 36/732 20060101ALI20230721BHJP
   A61K 36/756 20060101ALI20230721BHJP
   A61K 36/752 20060101ALI20230721BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230721BHJP
   A61K 36/04 20060101ALI20230721BHJP
   A61K 31/7048 20060101ALI20230721BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61K36/65
A61K36/732
A61K36/756
A61K36/752
A61P17/00
A61K36/04
A61K31/7048
A61Q17/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022005521
(22)【出願日】2022-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】391045554
【氏名又は名称】株式会社クラブコスメチックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】重山 佳太
(72)【発明者】
【氏名】坂口 育代
【テーマコード(参考)】
4C083
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083CC02
4C083EE12
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA11
4C086GA17
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA63
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA89
4C088AA14
4C088AB53
4C088AB58
4C088AB62
4C088AC06
4C088AC11
4C088BA13
4C088BA23
4C088BA32
4C088CA08
4C088MA07
4C088MA63
4C088NA05
4C088NA14
4C088ZA89
(57)【要約】
【課題】ブルーライトによるミトコンドリアダメージ抑制剤を提供する。
【解決手段】ボタン科のシャクヤクの根から抽出された抽出物およびバラ科のカリンの果実から抽出された抽出物の少なくともいずれかを有効成分として含む、ブルーライトによるミトコンドリアダメージの抑制剤。1.0E-03~3.0E+04μg/mLの濃度のペオニフロリンを有効成分として含む、ブルーライトによるミトコンドリアダメージ抑制剤。1.0E-04~3.0E+03μg/mLの濃度のアルビフロリンを有効成分として含む、ブルーライトによるミトコンドリアダメージ抑制剤。1.0E-03~1.0E-00μg/mLの濃度のペオニフロリンおよび1.0E-04~1.0E-01μg/mLの濃度のアルビフロリンを有効成分として含む、ブルーライトによるミトコンドリアダメージ抑制剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボタン科のシャクヤクの根から抽出された抽出物およびバラ科のカリンの果実から抽出された抽出物の少なくともいずれかを有効成分として含む、ブルーライトによるミトコンドリアダメージ抑制剤。
【請求項2】
ボタン科のシャクヤクの根から抽出された抽出物を1.0E-02~1.0E+03μg/mLの濃度で含む、請求項1に記載の抑制剤。
【請求項3】
抽出溶媒が水と1,3-ブチレングリコールとの混合物である、請求項2に記載の抑制剤。
【請求項4】
バラ科のカリンの果実から抽出された抽出物を1.0E-01~2.0E+03μg/mLの濃度で含む、請求項1に記載の抑制剤。
【請求項5】
抽出溶媒が水と1,3-ブチレングリコールとの混合物である、請求項4に記載の抑制剤。
【請求項6】
バラ科のカリンの果実から抽出された抽出物を有効成分として含み、さらに、ミカン科のキハダの樹皮からの抽出物およびミカン科のタチバナの果皮からの抽出物の少なくともいずれかを含む、請求項1に記載の抑制剤。
【請求項7】
ボタン科のシャクヤクの根から抽出された抽出物を有効成分として含み、さらに、バラ科のカリンの果実から抽出された抽出物およびフノリ科のフノリから抽出された抽出物の少なくともいずれかを含む、請求項1に記載の抑制剤。
【請求項8】
1.0E-03~3.0E+04μg/mLの濃度のペオニフロリンを有効成分として含む、ブルーライトによるミトコンドリアダメージ抑制剤。
【請求項9】
1.0E-04~3.0E+03μg/mLの濃度のアルビフロリンを有効成分として含む、ブルーライトによるミトコンドリアダメージ抑制剤。
【請求項10】
1.0E-03~1.0E-00μg/mLの濃度のペオニフロリンおよび1.0E-04~1.0E-01μg/mLの濃度のアルビフロリンを有効成分として含む、ブルーライトによるミトコンドリアダメージ抑制剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブルーライトによるミトコンドリアダメージの抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ミトコンドリアは、生体内のエネルギーであるATPの産生を担う細胞内小器官であり、他にも酸化ストレスやカルシウム濃度の調節、細胞死の制御、糖・脂肪酸・アミノ酸の代謝などに関与する細胞の恒常性維持に重要な器官である。ミトコンドリアには、外膜と内膜の2つの膜があり、内膜に囲まれた領域はマトリックスと呼ばれる。ミトコンドリアは、ATPを産生するために、外膜と内膜の膜間腔に水素イオンの濃度勾配を形成し、ミトコンドリア内外膜に電位差を生じさせる。その後、ミトコンドリア内膜上のATP合成酵素が、ミトコンドリア内外膜の電位差を利用して、膜間腔の水素イオンをマトリックスに取り込み、ATPを産生している。
【0003】
近年、スマートフォンなどに使用されているLEDが発するブルーライトによって肌や細胞の機能が低下し、肌荒れなどの原因となる可能性が報告されている(たとえば、Joerg Liebmann et al.,「Blue-Light Irradiation Regulates Proliferation and Differentiation in Human Skin Cells」,The Journal of Investigative Dermatology,130(1), 259-269, 2010(非特許文献1)を参照)。ブルーライトとは人の目で見ることのできる可視光であり、波長が400nm~500nmの光のことを指している。ブルーライトによる肌へのダメージは、細胞のミトコンドリア内で一重項酸素量が増加することで生じる(たとえば、Yuya Nakashima et al.,「Blue light-induced oxidative stress in live skin」, Free Radical Biology and Medicine, 108, 300-310, 2017(非特許文献2)を参照)。ミトコンドリア一重項酸素量の増加は、ミトコンドリア内外膜やミトコンドリアDNAにダメージを与える。また、ダメージを受けたミトコンドリアは生体内で分解されるため、ミトコンドリアの総量が減少し、ミトコンドリアの産生するATP量も低下する(たとえば、上述した非特許文献2、Deirdre Edge et al.,「FLUORESCENT LIGHT ENERGY:The Future for Treating Inflammatory Skin Conditions?」,The Journal of Clinical and Aesthetic Dermatology, 12(5), E61-E68, 2019(非特許文献3)、河井 一明ら.,「酸化的ストレスによる8-OH-dGの生成と修復酵素の応答」,Environmental mutagen research communication, 26, 143-148, 2004(非特許文献4)を参照)。このことから、ブルーライトによるミトコンドリアの総量および機能の低下(ミトコンドリアダメージ)は、肌に様々な影響を及ぼしていると考えられる。
【0004】
このため、ブルーライトによるミトコンドリアダメージの抑制剤は、肌や細胞の機能を維持・改善するために重要であると考えられる。これまで、ブルーライトによる細胞ダメージ改善剤としてはビルベリー抽出物が報告されている(たとえば、特開2015-044773号公報(特許文献1)を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-044773号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Joerg Liebmann et al.,「Blue-Light Irradiation Regulates Proliferation and Differentiation in Human Skin Cells」,The Journal of Investigative Dermatology,130(1), 259-269, 2010
【非特許文献2】Yuya Nakashima et al.,「Blue light-induced oxidative stress in live skin」, Free Radical Biology and Medicine, 108, 300-310, 2017
【非特許文献3】Deirdre Edge et al.,「FLUORESCENT LIGHT ENERGY:The Future for Treating Inflammatory Skin Conditions?」,The Journal of Clinical and Aesthetic Dermatology, 12(5), E61-E68, 2019
【非特許文献4】河井 一明ら.,「酸化的ストレスによる8-OH-dGの生成と修復酵素の応答」,Environmental mutagen research communication, 26, 143-148, 2004
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、ブルーライトによるミトコンドリアダメージ抑制剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のブルーライトによるミトコンドリアダメージ抑制剤は、ボタン科のシャクヤクの根から抽出された抽出物およびバラ科のカリンの果実から抽出された抽出物の少なくともいずれかを有効成分として含む(以下、ボタン科のシャクヤクの根から抽出された抽出物およびバラ科のカリンの果実から抽出された抽出物の少なくともいずれかを有効成分として含むブルーライトによるミトコンドリアダメージ抑制剤を「第1の抑制剤」と呼称する。)。
【0009】
本発明の第1の抑制剤は、ボタン科のシャクヤクの根から抽出された抽出物を1.0E-02~1.0E+03μg/mLの濃度で含むことが好ましい。この場合、水と1,3-ブチレングリコールとの混合物を抽出溶媒として用いることが好ましい。
【0010】
本発明の第1の抑制剤は、バラ科のカリンの果実から抽出された抽出物を1.0E-01~2.0E+03μg/mLの濃度で含むことが好ましい。この場合、水と1,3-ブチレングリコールとの混合物を抽出溶媒として用いることが好ましい。
【0011】
本発明の第1の抑制剤は、バラ科のカリンの果実から抽出された抽出物を有効成分として含み、さらに、ミカン科のキハダの樹皮からの抽出物およびミカン科のタチバナの果皮からの抽出物の少なくともいずれかを含むことが好ましい。
【0012】
また本発明の第1の抑制剤は、ボタン科のシャクヤクの根から抽出された抽出物を有効成分として含み、さらに、バラ科のカリンの果実から抽出された抽出物およびフノリ科のフノリから抽出された抽出物の少なくともいずれかを含むことが好ましい。
【0013】
本発明は、1.0E-03~3.0E+04μg/mLの濃度のペオニフロリンを有効成分として含む、ブルーライトによるミトコンドリアダメージ抑制剤についても提供する(以下、1.0E-03~3.0E+04μg/mLの濃度のペオニフロリンを有効成分として含む、ブルーライトによるミトコンドリアダメージ抑制剤を「第2の抑制剤」と呼称する)。
【0014】
本発明はまた、1.0E-04~3.0E+03μg/mLの濃度のアルビフロリンを有効成分として含む、ブルーライトによるミトコンドリアダメージ抑制剤についても提供する(以下、1.0E-04~3.0E+03μg/mLの濃度のアルビフロリンを有効成分として含む、ブルーライトによるミトコンドリアダメージ抑制剤を「第3の抑制剤」と呼称する)。
【0015】
本発明はさらに、1.0E-03~1.0E-00μg/mLの濃度のペオニフロリンおよび1.0E-04~1.0E-01μg/mLの濃度のアルビフロリンを有効成分として含む、ブルーライトによるミトコンドリアダメージ抑制剤についても提供する(以下、1.0E-03~1.0E-00μg/mLの濃度のペオニフロリンおよび1.0E-04~1.0E-01μg/mLの濃度のアルビフロリンを有効成分として含む、ブルーライトによるミトコンドリアダメージ抑制剤を「第4の抑制剤」と呼称する)。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ブルーライトによるミトコンドリアダメージ抑制剤、化粧品および皮膚外用剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の抑制剤)
本発明の第1の抑制剤は、ボタン科のシャクヤク(PAEONIALACTIFLORA PALLAS)の根(シャクヤク)から抽出された抽出物(シャクヤク抽出物)およびバラ科のカリン(PSEUDOCYDONIA SINENSIS)の果実(カリン)から抽出された抽出物(カリン抽出物)の少なくともいずれかを有効成分として含む。
【0018】
本発明の第1の抑制剤において、シャクヤク根抽出物、カリン抽出物は、一般的な抽出方法により得ることができ、たとえばそれぞれを抽出溶媒と共に浸漬または加熱還流した後、濾過し、濃縮して得ることができる。
【0019】
抽出溶媒としては一般的に抽出に用いられる溶媒であれば任意に用いることができ、極性溶剤、非極性溶剤のいずれも使用することができる。たとえば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコールなどのアルコール類(多価アルコール類を含む)、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどの鎖状および環状エーテル類、ポリエチレングリコールなどのポリエーテル類、スクワラン、ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテルなどの炭化水素類および超臨界二酸化炭素、ピリジン類、油脂、ワックスなどその他オイル類などの有機溶剤、ならびにこれらの混合物が挙げられる。好ましくは、水、アルコール類、アルコール類と水との混合物、炭化水素類が挙げられ、アルコール類と水との混合物、炭化水素類がより好ましい。アルコール類として好ましくは1,3-ブチレングリコールまたはエタノールが挙げられる。
【0020】
シャクヤクの根から抽出する場合、残留した場合の問題を考慮し、上述した中でも、水、多価アルコール、および水と多価アルコールとの混合物から選ばれるいずれかを抽出溶媒として用いることが好ましく、水と多価アルコールとの混合物を抽出溶媒として用いることがより好ましく、水と1,3-ブチレングリコールとの混合物(好適には20:80~80:20の混合物)を抽出溶媒として用いることが特に好ましい。
【0021】
またカリンの果実から抽出する場合、残留した場合の問題を考慮し、上述した中でも、水、多価アルコール、および水と多価アルコールとの混合物から選ばれるいずれかを抽出溶媒として用いることが好ましく、水と多価アルコールとの混合物を抽出溶媒として用いることがより好ましく、水と1,3-ブチレングリコールとの混合物(好適には20:80~80:20の混合物)を抽出溶媒として用いることが特に好ましい。
【0022】
本発明の第1の抑制剤において、シャクヤク抽出物を有効成分とする場合、シャクヤク抽出物の濃度は特に制限されないが、より顕著にブルーライトによるミトコンドリアダメージ抑制作用を奏することから、1.0E-02~1.0E+03μg/mLの範囲内であることが好ましい。
【0023】
本発明の第1の抑制剤において、シャクヤク抽出物を有効成分とする場合、バラ科のカリンの果実から抽出された抽出物およびフノリ科のフノリ(ENDOCLADIACEAE)から抽出された抽出物(フノリ抽出物)の少なくともいずれかをさらに含むことが好ましい(後述する実験例2を参照)。
【0024】
シャクヤク抽出物を有効成分とし、カリン抽出物をさらに含む場合、カリン抽出物の濃度は特に制限されないが、より顕著にブルーライトによるミトコンドリアダメージ抑制作用を奏することから、1.0E-01~3.0E+01μg/mLの範囲内であることが好ましい。
【0025】
シャクヤク抽出物を有効成分とし、フノリ抽出物をさらに含む場合、フノリ抽出物の濃度は特に制限されないが、より顕著にブルーライトによるミトコンドリアダメージ抑制作用を奏することから、1.0E-01~1.0E+03μg/mLの範囲内であることが好ましい。
【0026】
本発明の第1の抑制剤において、カリン抽出物を有効成分とする場合、カリン抽出物の濃度は特に制限されないが、より顕著にブルーライトによるミトコンドリアダメージ抑制作用を奏することから、1.0E-01~2.0E+03μg/mLの範囲内であることが好ましい。
【0027】
本発明の第1の抑制剤において、カリン抽出物を有効成分とする場合、ミカン科のキハダ(PHELLODENDRON AMURENSE RUPRECHT)の樹皮(オウバク)から抽出された抽出物(オウバク抽出物)およびミカン科のタチバナ(CITRUS TACHIBANA TANAKA)の果皮(チンピ)から抽出された抽出物(チンピ抽出物)の少なくともいずれかをさらに含むことが好ましい(後述する実験例2を参照)。
【0028】
カリン抽出物を有効成分とし、オウバク抽出物をさらに含む場合、オウバク抽出物の濃度は特に制限されないが、より顕著にブルーライトによるミトコンドリアダメージ抑制作用を奏することから、1.0E-01~1.0E+03μg/mLの範囲内であることが好ましい。
【0029】
カリン抽出物を有効成分とし、チンピ抽出物をさらに含む場合、チンピ抽出物の濃度は特に制限されないが、より顕著にブルーライトによるミトコンドリアダメージ抑制作用を奏することから、1.0E-01~1.0E+03μg/mLの範囲内であることが好ましい。
【0030】
なお、上述したフノリ抽出物、オウバク抽出物およびチンピ抽出物の抽出方法、抽出溶媒は特に制限されるものではなく、上述したシャクヤク抽出物、カリン抽出物と同様にすればよい。
【0031】
本発明の第1の抑制剤は、シャクヤク根抽出物、カリン抽出物をそのまま用いることもできるが、通例、各種の担体などとともに組成物として用いられ、化粧品、皮膚外用剤(医薬品、医薬部外品)として提供できる。本発明はこのように、本発明の第1の抑制剤を含む化粧品、皮膚外用剤についても提供する。本発明の化粧品、皮膚外用剤において、その剤形も制限されるものではなく、皮膚に適用可能な剤形であればよく、液剤、軟膏剤、硬膏剤、乳液、ローション剤、パック剤などが例示される。その配合量は、シャクヤク抽出物の場合には、通常、製剤中1.0E-03%(w/w)以上、好ましくは1.0E-02~2.0E+01%(w/w)、カリン抽出物の場合には、通常、製剤中1.0E-03%(w/w)以上、好ましくは1.0E-02~2.0E+01%(w/w)である。また、本発明の第1の抑制剤は、他の効果をもつ原料、たとえば保湿剤、美白剤、紫外線防御剤などと併用することが可能である。
【0032】
(第2の抑制剤)
上述の第1の抑制剤において有効成分の1つとして含まれるシャクヤク抽出物には、その成分としてペオニフロリンが含まれると考えられる。後述する実験例1で立証するように、1.0E-03~3.0E+04μg/mLの濃度のペオニフロリンを有効成分として含む場合に、ブルーライトによるミトコンドリアダメージを抑制できることを見出した。すなわち、本発明の第2の抑制剤は、1.0E-03~3.0E+04μg/mLの濃度のペオニフロリンを有効成分として含むことを特徴とする。
【0033】
本発明の第2の抑制剤は、ペオニフロリンをそのまま用いることもできるが、通例、各種の担体などとともに組成物として用いられ、化粧品、皮膚外用剤(医薬品、医薬部外品)として提供できる。本発明はこのように、本発明の第2の抑制剤を含む化粧品、皮膚外用剤についても提供する。本発明の化粧品、皮膚外用剤において、その剤形も制限されるものではなく、皮膚に適用可能な剤形であればよく、液剤、軟膏剤、硬膏剤、乳液、ローション剤、パック剤などが例示される。その配合量は、通常、製剤中5.0E-05%(w/w)以上、好ましくは5.0E-04~1.0E-02%(w/w)である。また、本発明の第2の抑制剤は、他の効果をもつ原料、たとえば保湿剤、美白剤、紫外線防御剤などと併用することが可能である。
【0034】
(第3の抑制剤)
また、上述の第1の抑制剤において有効成分の1つとして含まれるシャクヤク抽出物には、その成分としてアルビフロリンが含まれると考えられる。後述する実験例1で立証するように、1.0E-04~3.0E+03μg/mLの濃度のアルビフロリンを有効成分として含む場合に、ブルーライトによるミトコンドリアダメージを抑制できることを見出した。すなわち、本発明の第3の抑制剤は、1.0E-04~3.0E+03μg/mLの濃度のアルビフロリンを有効成分として含むことを特徴とする。
【0035】
本発明の第3の抑制剤は、アルビフロリンをそのまま用いることもできるが、通例、各種の担体などとともに組成物として用いられ、化粧品、皮膚外用剤(医薬品、医薬部外品)として提供できる。本発明はこのように、本発明の第3の抑制剤を含む化粧品、皮膚外用剤についても提供する。本発明の化粧品、皮膚外用剤において、その剤形も制限されるものではなく、皮膚に適用可能な剤形であればよく、液剤、軟膏剤、硬膏剤、乳液、ローション剤、パック剤などが例示される。その配合量は、通常、製剤中5.0E-04%(w/w)以上、好ましくは5.0E-04~1.0E-03%(w/w)である。また、本発明の第3の抑制剤は、他の効果をもつ原料、たとえば保湿剤、美白剤、紫外線防御剤などと併用することが可能である。
【0036】
(第4の抑制剤)
後述する実験例3で立証するように、本発明者らは、ペオニフロリンおよびアルビフロリンの両方を有効成分として含む場合、それぞれが第2の抑制剤、第3の抑制剤よりも低い濃度であっても、ブルーライトによるミトコンドリアダメージを抑制できることを見出した。すなわち、本発明の第4の抑制剤は、1.0E-03~1.0E+00μg/mLの濃度のペオニフロリンおよび1.0E-04μg/mL~1.0E-01μg/mLの濃度のアルビフロリンを有効成分として含むことを特徴とする。
【0037】
本発明の第4の抑制剤は、ペオニフロリンおよびアルビフロリンをそのまま用いることもできるが、通例、各種の担体などとともに組成物として用いられ、化粧品、皮膚外用剤(医薬品、医薬部外品)として提供できる。本発明はこのように、本発明の第4の抑制剤を含む化粧品、皮膚外用剤についても提供する。本発明の化粧品、皮膚外用剤において、その剤形も制限されるものではなく、皮膚に適用可能な剤形であればよく、液剤、軟膏剤、硬膏剤、乳液、ローション剤、パック剤などが例示される。その配合量は、ペオニフロリンについては、通常、製剤中1.0E-05%(w/w)以上、好ましくは5.0E-05~1.0E-03%(w/w)、アルビフロリンについては、通常、製剤中1.0E-06%(w/w)以上、好ましくは5.0E-06~1.0E-04%(w/w)である。また、本発明の第4の抑制剤は、他の効果をもつ原料、たとえば保湿剤、美白剤、紫外線防御剤などと併用することが可能である。
【0038】
以下に実験例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0039】
<実験例1>
サンプル単独でのミトコンドリアダメージ抑制効果を確認するために、表1のサンプルを評価した。
【0040】
(試料の調製)
採取したバラ科のカリンの果実から、抽出溶媒として1,3-ブチレングリコール水溶液を用いて抽出した。カリン抽出物は、Dulbecco’s Modified Eagle Medium(DMEM)培地を用いて調製し、90μg/mLのカリン抽出物(実施例1)、170μg/mLのカリン抽出物(実施例2)を得た。
【0041】
採取したボタン科のシャクヤクの根から、抽出溶媒として1,3-ブチレングリコール水溶液を用いて抽出した。シャクヤク抽出物は、DMEM培地を用いて調製し、35μg/mLのシャクヤク抽出物(実施例3)、70μg/mLのシャクヤク抽出物(実施例4)を得た。
【0042】
アルビフロリンは、市販されているものを用いた。アルビフロリンは、DMEM培地終濃度0.1%に調製したジメチルスルホキシドを用いて調製し、0.3μg/mLのアルビフロリン(実施例5)、3μg/mLのアルビフロリン(実施例6)を得た。
【0043】
ペオニフロリンは、市販されているものを用いた。ペオニフロリンは、DMEM培地終濃度0.1%に調製したジメチルスルホキシドを用いて調製し、3μg/mLのペオニフロリン(実施例7)、30μg/mLのペオニフロリン(実施例8)を得た。
【0044】
線維芽細胞をチャンバースライドに播種し、24時間培養後、DMEM培地を用いて、上述の実施例1~8のサンプルをそれぞれ添加して培養した。その後、細胞に400nm~500nmのブルーライトを照射した。ブルーライト照射後、ミトコンドリア局在観察試薬およびミトコンドリア膜電位観察試薬を添加して染色した。その後、ミトコンドリア量およびミトコンドリア膜電位を指標に、ブルーライトによるミトコンドリアダメージ抑制効果を評価した。なお、ブルーライト未照射はアルミホイルでブルーライトを遮光し、同様に染色した。
【0045】
なお、比較対照としてブルーライト未照射を比較例1、ブルーライトを照射し、実施例1~8のサンプルを添加しなかったものを比較例2とした。結果を表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
ブルーライトを照射した比較例2は、ブルーライト未照射(比較例1)よりも有意にミトコンドリア量とミトコンドリア膜電位が低下しており、ブルーライトによるミトコンドリアダメージが生じたことが確認された。次に、サンプルについて評価した結果、カリン抽出物(実施例1、2)、シャクヤク抽出物(実施例3、4)、アルビフロリン(実施例5、6)およびペオニフロリン(実施例7、8)は、ブルーライトによるミトコンドリア量およびミトコンドリア膜電位の低下を改善する効果がみられ、優れたミトコンドリアダメージ抑制作用を有すると考えられた。
【0048】
<実験例2>
カリン抽出物またはシャクヤク抽出物を有効成分とした抑制剤によるミトコンドリアダメージ抑制効果を実験例1と同様にして評価した。各抑制剤を表2に、結果を表3にそれぞれ示す。
【0049】
採取したミカン科のキハダの樹皮から、抽出溶媒として1,3-ブチレングリコール水溶液を用いて抽出したものを用いて得たオウバク抽出物をDMEM培地を用いて調製した。
【0050】
採取したミカン科のタチバナの果皮から、抽出溶媒として1,3-ブチレングリコール水溶液を用いて抽出したものを用いて得たチンピ抽出物をDMEM培地を用いて調製した。
【0051】
採取したフノリ科のフノリから、抽出溶媒として1,3-ブチレングリコール水溶液を用いて抽出したものを用いて得たフノリ抽出物をDMEM培地を用いて調製した。
【0052】
【表2】
【0053】
【表3】
【0054】
表3に示したように、実施例9~12は、ブルーライトによるミトコンドリア量および膜電位の低下を改善する効果がみられ、優れたミトコンドリアダメージ抑制作用を有すると考えられた。また、各抽出物のみの比較例3~7ではミトコンドリアダメージ抑制作用はみられず、カリン抽出物、シャクヤク抽出物、オウバク抽出物、チンピ抽出物またはフノリ抽出物を組み合わせることでミトコンドリアダメージ抑制効果が向上することが判明した。
【0055】
<実験例3>
シャクヤク抽出物の含有成分を組合せ、抑制剤によるミトコンドリアダメージ抑制効果を評価した。試験は、試験例1と同様に実施した。各抑制剤を表4に、結果を表5にそれぞれ示した。
【0056】
【表4】
【0057】
【表5】
【0058】
表5に示したように、実施例13は、ブルーライトによるミトコンドリア量および膜電位の低下を改善する効果がみられ、優れたミトコンドリアダメージ抑制効果を有すると考えられた。また、低い濃度の各含有成分のみの比較例8、9ではミトコンドリアダメージ抑制効果はみられず、低い濃度のアルビフロリンおよびペオニフロリンを組み合わせることでミトコンドリアダメージ抑制効果が向上することが判明した。