(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023104541
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】電動シリンダ装置
(51)【国際特許分類】
B60T 13/138 20060101AFI20230721BHJP
B60T 13/74 20060101ALI20230721BHJP
F04B 9/02 20060101ALI20230721BHJP
F16D 65/16 20060101ALN20230721BHJP
F16D 121/24 20120101ALN20230721BHJP
F16D 125/40 20120101ALN20230721BHJP
【FI】
B60T13/138 A
B60T13/74 E
F04B9/02 C
F16D65/16
F16D121:24
F16D125:40
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022005585
(22)【出願日】2022-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】榊原 優一
(72)【発明者】
【氏名】杉本 成
(72)【発明者】
【氏名】高橋 淳
【テーマコード(参考)】
3D048
3H075
3J058
【Fターム(参考)】
3D048BB45
3D048CC49
3D048CC54
3D048HH18
3D048HH59
3D048PP10
3H075AA02
3H075BB03
3H075CC19
3H075DA03
3H075DA04
3H075DB32
3H075DB48
3J058BA46
3J058CC15
3J058CC62
(57)【要約】
【課題】ピストン、シリンダのセンタ位置のずれによる構成部品の偏摩耗を抑える。
【解決手段】電気モータ14の回転を受けて回転する第3ギア20と、第3ギア20の回転をシリンダ11の内部でのピストン13の直線運動に変換する直動変換機構16と、を有する電動シリンダ装置10において、直動変換機構16の直動部であるナット23とピストン13とをラジアル方向Rへの相対変位を許容した状態で連結するようにした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダの内部に配置されたピストンと、電気モータの回転を受けて回転する回転入力部品と、前記回転入力部品の回転が伝達されて回転する回転部と該回転部の回転に応じて直線運動することで前記ピストンの直線運動に作用する直動部とを含む直動変換機構と、前記シリンダが内部に設けられ、かつ前記ピストン、前記回転入力部品、及び前記直動変換機構を内部に収容したハウジングと、を有する電動シリンダ装置であって、
当該電動シリンダ装置の構成部品のうちの2つである第1構成部品及び第2構成部品は、前記ピストンの軸方向に直交する方向であるラジアル方向の相対変位が許容されており、
かつ前記第1構成部品は、前記第2構成部品に対する前記ラジアル方向の相対変位に応じて前記ピストンを前記シリンダに対して前記ラジアル方向に相対変位させる部品である
電動シリンダ装置。
【請求項2】
前記第1構成部品は前記ピストンであり、前記第2構成部品は前記直動部であり、前記ピストンと前記直動部は前記軸方向において重複する部分を含んでおり、前記重複する部分の前記ラジアル方向における間隙に弾性部品が設けられる請求項1に記載の電動シリンダ装置。
【請求項3】
前記第1構成部品は前記回転部であり、前記第2構成部品は前記回転入力部品であり、前記回転入力部品に設けられた第1凸部又は第1凹部と前記回転部に設けられた第2凹部又は第2凸部とが咬み合うことで前記回転入力部品の回転が前記回転部に伝達されるものであって、前記第1凸部と前記第2凹部の間、又は前記第1凹部と前記第2凸部の間は遊嵌されている請求項1に記載の電動シリンダ装置。
【請求項4】
前記第1構成部品は、前記回転入力部品を回転自在に支持する軸受部品であり、前記第2構成部品は前記ハウジングであり、前記軸受部品と前記ハウジングの間隙に弾性部品が設けられる請求項1に記載の電動シリンダ装置。
【請求項5】
前記ハウジングは、前記シリンダが内部に設けられた第1ハウジング部品と、前記回転入力部品が内部に設置される第2ハウジング部品と、を有しており、前記第1構成部品は前記第2ハウジング部品であり、前記第2構成部品は前記第1ハウジング部品である請求項1に記載の電動シリンダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動シリンダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に見られるような、電気モータの回転を直線運動に変換して出力する電動シリンダ装置が知られている。電動シリンダ装置として、シリンダとその内部に配置されたピストンとを備えており、電気モータの回転を直線運動に変換してシリンダ内でピストンを直動させる装置がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動シリンダ装置の組立時に、センタ位置がずれた状態でシリンダ及びピストンが組付けられると、ピストンがシリンダに片当たりして、ラジアル方向の荷重が発生する。こうしたラジアル方向の荷重が発生した状態で電動シリンダ装置を駆動させると、その荷重により電動シリンダ装置の構成部品が偏摩耗することがある。そのため、電動シリンダ装置の構成部品の組付には高い精度が必要とされており、それが電動シリンダ装置の生産性を低下させる要因となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する電動シリンダ装置は、シリンダの内部に配置されたピストンと、電気モータの回転を受けて回転する回転入力部品と、回転入力部品の回転が伝達されて回転する回転部と該回転部の回転に応じて直線運動することでピストンの直線運動に作用する直動部とを含む直動変換機構と、シリンダが内部に設けられ、かつピストン、回転入力部品、及び直動変換機構を内部に収容したハウジングと、を有する。また、同電動シリンダ装置の構成部品のうちの2つである第1構成部品及び第2構成部品は、ピストンの軸方向に直交する方向であるラジアル方向の相対変位が許容されている。なお、第1構成部品は、第2構成部品に対するラジアル方向の相対変位に応じてピストンをシリンダに対してラジアル方向に相対変位させる部品である。
【0006】
上記のように構成された電動シリンダ装置のピストンは、シリンダに対するラジアル方向への相対変位が許容されている。一方、ピストンとシリンダとの間に作用するラジアル方向の荷重は、それらのラジアル方向の相対変位により緩和される。そのため、上記電動シリンダ装置では、ピストン、シリンダのセンタ位置のずれによる電動シリンダ装置の構成部品の偏摩耗が生じ難い。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態の電動シリンダ装置の断面図である。
【
図2】
図1の電動シリンダ装置のピストン及びその周辺の断面図である。
【
図3】
図1の電動シリンダ装置の変更例におけるピストン及びナットの連結部分の断面図である。
【
図4】
図1の電動シリンダ装置の変更例のピストン及びその周辺の断面図である。
【
図5】
図1の電動シリンダ装置の変更例のピストン及びその周辺の断面図である。
【
図6】
図1の電動シリンダ装置の変更例のピストン及びその周辺の断面図である。
【
図7】
図1の電動シリンダ装置の変更例のピストン及びその周辺の断面図である。
【
図8】
図1の電動シリンダ装置の変更例のピストン及びその周辺の断面図である。
【
図9】第2実施形態の電動シリンダ装置の断面図である。
【
図10】
図9の電動シリンダ装置におけるねじ軸及び入力ギアの連結部分の断面図である。
【
図12】
図9の電動シリンダ装置の変更例におけるねじ軸及び入力ギアの連結部分の断面図である。
【
図14】第3実施形態の電動シリンダ装置の断面図である。
【
図15】第4実施形態の電動シリンダ装置の断面図である。
【
図16】
図15の電動シリンダ装置の変更例における軸受及びその周辺の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1実施形態)
以下、電動シリンダ装置を具体化した第1実施形態を、
図1及び
図2に従って説明する。本実施形態の電動シリンダ装置10は、車両の制動力を発生するための液圧を発生する装置として構成されている。
【0009】
<電動シリンダ装置10の構成>
図1に示すように、本実施形態の電動シリンダ装置10は、シリンダ11が内部に設けられたハウジング12と、シリンダ11の内部に軸方向に直線運動自在に配置されたピストン13と、を備えている。また、電動シリンダ装置10は、電気モータ14、回転伝達機構15、及び直動変換機構16を備えている。ハウジング12の内部には、ピストン13、回転伝達機構15、及び直動変換機構16が設置されている。本実施形態の電動シリンダ装置10では、電気モータ14は、ハウジング12の外周に取り付けられている。回転伝達機構15及び直動変換機構16は、シリンダ11と繋がるハウジング12の内部空間に収容されている。
【0010】
回転伝達機構15は、電気モータ14の回転を直動変換機構16に伝達する機構である。本実施形態の電動シリンダ装置10は、3つのギアからなるギア機構を回転伝達機構15として備えている。すなわち、電気モータ14の出力軸であるモータ軸17に連結された第1ギア18と、直動変換機構16に連結された第3ギア20と、第1ギア18と第3ギア20との間に介設された第2ギア19と、の3つのギアである。なお、第3ギア20は、第1ギア18よりも歯数の多いギアとされている。よって、電気モータ14の回転は、減速されて直動変換機構16に伝達される。なお、第3ギア20は、軸受部品21により回転自在に軸支された状態でハウジング12の内部に設置されている。本実施形態では、第3ギア20が、電気モータ14の回転を受けて回転する回転入力部品に対応する。
【0011】
直動変換機構16は、回転伝達機構15を介して伝達された電気モータ14の回転を、シリンダ11の内部でのピストン13の直線運動に変換する機構である。本実施形態の電動シリンダ装置10は、ねじ軸22とナット23とを有する送りねじ機構を直動変換機構16として備えている。ねじ軸22は、第3ギア20に一体となって回転するように連結されている。また、ナット23は、ピストン13に連結されている。ピストン13とナット23との連結構造の詳細については後述する。ナット23は、ねじ軸22の回転に応じてその回転軸Oの延伸方向、すなわちピストン13の軸方向に直線運動する。そして、ナット23は、直線運動することで、ピストン13の直線運動に作用する。本実施形態の電動シリンダ装置10では、ねじ軸22が直動変換機構16の回転部に、ナット23が直動変換機構16の直動部に、それぞれ対応する。
【0012】
シリンダ11の内部には、ブレーキ液が導入される液室24がピストン13により区画形成されている。液室24の容積は、シリンダ11内でのピストン13の移動位置により変化する。以下の説明では、シリンダ11内でのピストン13の直線運動の方向、すなわち同ピストン13の直動方向Sのうち、液室24の容積が減少する側の方向を電動シリンダ装置10の前方とする。また、直動方向Sのうち、液室24の容積が増加する側の方向を電動シリンダ装置10の後方とする。さらに、シリンダ11内での前方へのピストン13の直線運動を同ピストン13の前進、後方へのピストン13の直線運動を同ピストン13の後退と記載する。シリンダ11内での直動範囲内で最も後退したときのピストン13の移動位置を同ピストン13の最後退位置と記載する。
【0013】
ハウジング12には、シリンダ11に連通する2つのポートが設けられている。すなわち、液室24にブレーキ液を導入するための入力ポート25と、液室24からブレーキ液の吐出するための出力ポート26と、である。シリンダ11の内壁における入力ポート25の開口よりも後方の部分、及び同開口よりも前方の部分にはそれぞれ、シール部品27,28が設置されている。シール部品27,28は、シリンダ11、ピストン13間のクリアランスを通じた液室24からのブレーキ液の漏洩を防止するための部品である。入力ポート25は、ピストン13が最後退位置に位置しているときには、液室24に連通した状態となっている。ピストン13が最後退位置から一定の量だけ前進すると、シリンダ11への入力ポート25の開口がピストン13により塞がれる。そして、これにより、入力ポート25と液室24との連通が遮断される。一方、出力ポート26は、ピストン13の移動位置に拘わらず、液室24との連通が維持される。
【0014】
こうした電動シリンダ装置10では、直動変換機構16が回転伝達機構15を通じて伝えられた電気モータ14の回転を、直動に変換してピストン13に伝えることで、シリンダ11内でピストン13を移動させている。シリンダ11への入力ポート25の開口をピストン13が塞いだ状態にあるときの液室24には、出力ポート26のみが連通している。この状態でピストン13が前進すると、液室24内のブレーキ液がピストン13により押圧されて出力ポート26から吐出する。こうした電動シリンダ装置10が設けられた制動装置は、出力ポート26から吐出されるブレーキ液を介してピストン13の押圧を摩擦部材に伝達して車両の制動力を発生する。
【0015】
<ピストン13、ナット23の連結構造>
次に、
図2を併せ参照して、ピストン13、ナット23の連結構造の詳細を説明する。なお、以下の説明では、シリンダ11内でのピストン13の直動方向Sに直交する方向をラジアル方向Rと記載する。
【0016】
図2に示すように、ピストン13の後端部には、ナット23の前端部が挿入される凹部29が設けられている。凹部29は、ナット23の外径よりも大きい内径を有している。すなわち、ピストン13の後端部とナット23の前端部とは、直動方向Sにおいて重複している。そして、ラジアル方向Rにおける凹部29とナット23との間隙には、弾性部品としてのシールリング30が挟み込まれている。
【0017】
また、凹部29は、前方に向うほど、ラジアル方向Rの内側に向うように傾斜したテーパ面31を有している。一方、ナット23の前端は、凸球面32に形成されている。そして、ピストン13とナット23とは、ナット23の凸球面32が凹部29のテーパ面31に線接触した状態で組付けられている。本実施形態では、テーパ面31が、直動方向Sにおける直動部の端面に接する接触面に対応している。また、ナット23の凸球面32が、上記直動部の端面に対応している。さらに、本実施形態では、ピストン13が第1構成部品に、直動変換機構16の直動部であるナット23が第2構成部品にそれぞれ対応する。
【0018】
<第1実施形態の作用効果>
本実施形態の作用及び効果について説明する。
こうした電動シリンダ装置10では、組立時に、シリンダ11とのセンタ位置のずれが生じた状態で第3ギア20や直動変換機構16がハウジング12に組付けられる可能性がある。なお、ここでのセンタ位置のずれは、第3ギア20及び直動変換機構16の回転軸Oが、シリンダ11の中心軸に対して平行にずれることを言う。このとき、シリンダ11に対するピストン13のラジアル方向Rに相対変位が全く許容されていなければ、シリンダ11とピストン13との間にラジアル方向Rの荷重が作用する。そして、その荷重により、シリンダ11、ピストン13、ねじ軸22、ナット23のような電動シリンダ装置10の構成部品に偏摩耗が生じる場合がある。
【0019】
これに対して本実施形態の電動シリンダ装置10のピストン13は、シールリング30の弾性変形を通じてラジアル方向Rの相対変位が許容された状態でナット23に連結されている。一方、ナット23は、ねじ軸22、第3ギア20、軸受部品21を介して、シリンダ11が設けられたハウジング12に組付けられている。こうした電動シリンダ装置10では、ピストン13は、シリンダ11に対するラジアル方向Rの相対変位が許容された状態で電動シリンダ装置10に組付けられている。そのため、上記のようなセンタ位置のずれが生じても、シリンダ11に対してピストン13がラジアル方向Rに相対変位することで、シリンダ11とピストン13との間に作用するラジアル方向Rの荷重が緩和される。そのため、本実施形態の電動シリンダ装置10には、ピストン13及びシリンダ11のセンタ位置のずれによる構成部品の偏摩耗を抑える効果がある。
【0020】
また、電動シリンダ装置10の組立時に、シリンダ11の中心軸に対して回転軸Oが傾いた状態で第3ギア20や直動変換機構16がハウジング12に組付けられる可能性もある。こうしたシリンダ11の中心軸に対する回転軸Oの傾きによっても、シリンダ11とピストン13との間にラジアル方向Rの荷重が発生して、電動シリンダ装置10の構成部品が偏摩耗することがある。その点、本実施形態では、直動方向Sにおけるナット23及びピストン13の接触が、テーパ面31と凸球面32との線接触となっている。これにより、ナット23に対するピストン13の傾動が許容される。そのため、本実施形態の電動シリンダ装置10には、シリンダ11の中心軸に対する回転軸Oの傾きによる構成部品の偏摩耗を抑える効果もある。
【0021】
ところで、電動シリンダ装置10では、シリンダ11内でのピストン13の前進時には、液室24内のブレーキ液の圧縮反力がピストン13に加わる。そのため、ピストン13の前進時には、後退時よりも大きい推力が必要となる。本実施形態では、ピストン13は、直動方向Sにおけるナット23の端面である凸球面32に接するテーパ面31を有している。さらに、ラジアル方向Rにおけるピストン13とナット23との間隙には、弾性部品であるシールリング30が介設されている。こうした本実施形態では、ピストン13の前進時には、ナット23の凸球面32がピストン13のテーパ面31に直接押圧を加えることで、ナット23からピストン13に推力が伝えられる。これに対して、後方へのピストン13の直動時には、ナット23及びピストン13とシールリング30との摩擦を通じて、ナット23からピストン13に推力が伝えられる。こうしたシールリング30の摩擦を通じた伝達では、ナット23からピストン13に伝達可能な推力は前進時よりも小さくなる。ただし、上記のように後退時には前進時ほど大きな推力を必要としないため、シールリング30の摩擦を通じても、ピストン13の後退に必要な推力は十分に伝達できる。なお、こうした場合には、外周にシールリング30を取り付けたナット23の前端部をピストン13の凹部29に挿入するだけで、ピストン13をナット23に連結できる。そのため、電動シリンダ装置10の組立時のピストン13とナット23との連結作業が容易となる。
【0022】
<第1実施形態の変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0023】
・上記実施形態では、ナット23の凸球面32へのピストン13の接触面をテーパ面31としていた。凸球面32へのピストン13の接触面の形状を変更してもよい。例えば、凸球面32へのピストン13の接触面を、凸球面32よりも曲率の小さい凹球面としたり、直動方向Sに直交する平面としたり、してもよい。これらの場合には、直動方向Sにおけるナット23及びピストン13の接触は、線接触となる。よって、こうした場合にも、ピストン13及びシリンダ11のセンタ位置のずれ、及びシリンダ11の中心軸に対する回転軸Oの傾きの双方による構成部品の偏摩耗を抑えられる。
【0024】
・ナット23の凸球面32に対するピストン13の接触面を凸球面32と同じ曲率の凹球面としてもよい。さらに、ナット23及びピストン13の双方の接触面を、直動方向Sに直交する平面としてもよい。これらの場合には、直動方向Sにおけるナット23及びピストン13の接触は、面接触となる。よって、こうした場合にも、ピストン13及びシリンダ11のセンタ位置のずれによる構成部品の偏摩耗を抑えられる。
【0025】
・
図3に示すように、直動方向Sにおけるナット23とピストン13との間に隙間が介在するようにナット23及びピストン13を配置する。そして、その隙間の部分、すなわちラジアル方向Rにおけるナット23及びピストン13の間隙に、上記シールリング30とは別の弾性部品33を挟み込むようにしてもよい。この場合の弾性部品33は、ナット23に対するピストン13の傾動を弾性変形により許容する。そのため、ピストン13及びシリンダ11のセンタ位置のずれ、及びシリンダ11の中心軸に対する回転軸Oの傾きの双方による構成部品の偏摩耗を抑えられる。
【0026】
・
図4に示すように、ナット23とピストン13との間に、直動方向S及びラジアル方向Rの双方に挟み込まれた状態で弾性部品34を設置するようにしてもよい。この場合の弾性部品34は、ナット23に対するピストン13の傾動を弾性変形により許容する。そのため、ピストン13及びシリンダ11のセンタ位置のずれ、及びシリンダ11の中心軸に対する回転軸Oの傾きの双方による構成部品の偏摩耗を抑えられる。また、弾性部品34は、上記実施形態のシールリング30の機能も兼ね備える。すなわち、弾性部品34は、後方へのピストン13の直動時に、摩擦を通じてナット23からピストン13に推力を伝える。そのため、単一の弾性部品34だけで、
図3の場合と同様の効果が得られる。
【0027】
・
図5に示すように、前端が半球形状となったキャップ部品35をナット23に固定して、そのキャップ部品35がピストン13に接触するようにしてもよい。この場合、キャップ部品35はピストン13と点接触する。こうした場合にも、ナット23に対するピストン13の傾きが許容される。そのため、ピストン13及びシリンダ11のセンタ位置のずれ、及びシリンダ11の中心軸に対する回転軸Oの傾きの双方による構成部品の偏摩耗を抑えられる。
図5に実線で示すように、キャップ部品35に対するピストン13の接触面を、直動方向Sに直交する平面としてもよい。また、
図5に破線で示すように、キャップ部品35に対するピストン13の接触面を、キャップ部品35の前端部よりも曲率の小さい凹球面としてもよい。凹球面とした場合には、平面とした場合よりも、ピストン13の強度が高くなる。
【0028】
・
図6に示すように、前端に球状突起36を有するキャップ部品37をナット23に固定するようにしてもよい。この場合にも、キャップ部品37の球状突起36はピストン13と点接触するため、ナット23に対するピストン13の傾きが許容される。よって、こうした場合にも、ピストン13及びシリンダ11のセンタ位置のずれ、及びシリンダ11の中心軸に対する回転軸Oの傾きの双方による構成部品の偏摩耗を抑えられる。なお、
図6の場合、球状突起36に対するピストン13の接触面は、球状突起36よりも曲率の小さい球面としているが、直動方向Sに直交する平面としてもよい。
【0029】
・
図7に示すように、直動方向Sにおけるナット23とピストン13との間に挟み込まれた状態で弾性部品38を設置する。そして、弾性部品38をナット23及びピストン13の双方に接着等で固定するようにしてもよい。この場合の弾性部品38は、ナット23に対するピストン13のラジアル方向Rの相対変位、及び傾きを弾性変形により許容する。よって、こうした場合にも、ピストン13及びシリンダ11のセンタ位置のずれ、及びシリンダ11の中心軸に対する回転軸Oの傾きの双方による構成部品の偏摩耗を抑えられる。また、ナット23及びピストン13の双方に弾性部品38が固定されているため、前方、後方のいずれの直動時にも、ナット23からピストン13に推力を伝達できる。
【0030】
・
図8に示すような連結部品39を、シールリング30の代わりに設けるようにしてもよい。連結部品39は、ナット23の外周に設けられた取付溝40内に設置されている。連結部品39は、取付溝40からラジアル方向Rの外側に突出可能な突起41を有している。連結部品39は、突起41に対してラジアル方向Rの内側に押圧を加えると、取付溝40からの突起41の突出量が縮小するように弾性変形する。一方、ピストン13の内周には、突起41が係合可能な係合溝42が形成されている。そして、連結部品39の突起41が係合溝42に係合した状態で、ナット23とピストン13とが連結されている。この場合、ピストン13の後退時には、連結部品39を通じてナット23からピストン13に推力が伝達される。なお、電動シリンダ装置10の組立時には、連結部品39を取り付けたナット23の先端部をピストン13の凹部29に挿入することで、スナップフィット係合によりピストン13とナット23とが連結される。そのため、電動シリンダ装置10の組立時におけるナット23とピストン13との連結作業が容易となる。
【0031】
(第2実施形態)
次に、電動シリンダ装置の第2実施形態を、
図9~
図11を併せ参照して詳細に説明する。なお本実施形態にあって、上記実施形態と共通する構成については、同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0032】
<第2実施形態の電動シリンダ装置110の構成>
図9に、第2実施形態の電動シリンダ装置110の断面図を示す。なお、
図9の断面には表されていないが、本実施形態の電動シリンダ装置110は、
図1の電動シリンダ装置10と同様に、電気モータ14、第1ギア18、第2ギア19、入力ポート25、及び出力ポート26を備えている。また、電動シリンダ装置110は、ナット123と一体に連結されたピストン113を備えている。すなわち、電動シリンダ装置110のピストン113は、ナット123に対するラジアル方向Rへの相対変位を許容しない状態で、同ナット123に連結されている。一方、本実施形態の電動シリンダ装置110では、ラジアル方向Rへの相対変位、及び回転軸Oの傾動が許容された状態で、第3ギア120とねじ軸122とが連結されている。
【0033】
図10に、第3ギア120とねじ軸122との連結部の断面図を示す。また、
図11には、
図10の11-11線に沿った同連結部の断面図を示す。
図10に示すように、ねじ軸122の後端部には、他の部位よりも小径となった挿入軸140が設けられている。ねじ軸122の挿入軸140と他の部位との段差部141は、凸球面となっている。また、ねじ軸122には、挿入軸140からラジアル方向Rの外側に突出す突起142が設けられている。なお、
図11には4つの突起142が示されているが、突起142の数は1つ以上であればよい。
【0034】
一方、第3ギア120には、後方に向うにつれてラジアル方向Rの内側に向うように傾斜したテーパ面143が設けられている。また、第3ギア120には、その後方の端面からテーパ面143へと抜ける挿入孔144が設けられている。挿入孔144は、挿入軸140の外径よりも大きい内径を有している。挿入孔144の周囲には、ねじ軸122の突起142の数と同数の係合溝145が、ラジアル方向Rの外側に向って放射状に延びるように設けられている。
【0035】
第3ギア120とねじ軸122との連結に際しては、段差部141がテーパ面143に接するまで、挿入軸140を挿入孔144に挿入する。なお、段差部141は凸球面であるため、段差部141とテーパ面143との接触は線接触となる。また、このときの挿入軸140の先端は、第3ギア120の後方に突出した状態となる。そして、挿入軸140における第3ギア120の後方に突出した部分に、第3ギア120からのねじ軸122の抜けを防止するためのスナップリング146を取り付けることで、第3ギア120及びねじ軸122が連結されている。なお、
図11に示すように、第3ギア120とねじ軸122とは、挿入軸140及び突起142と挿入孔144及び係合溝145との間に、ラジアル方向Rの間隙を有した状態で遊嵌されている。
【0036】
<第2実施形態の作用効果>
本実施形態の電動シリンダ装置110では、ラジアル方向Rの間隙を有した状態で第3ギア120とねじ軸122とが連結されている。すなわち、ねじ軸122は、ラジアル方向Rへの相対変位を許容した状態で第3ギア120に連結されている。第3ギア120は、軸受部品21を介して、シリンダ11が設けられたハウジング12に組付けられている。また、ねじ軸122は、ナット123を介してピストン113に連結されている。よって、電動シリンダ装置110では、第3ギア120に対するラジアル方向Rへのねじ軸122の相対変位を通じて、シリンダ11に対するピストン113のラジアル方向Rへの相対変位が許容されている。また、突起142が係合溝145に噛み合うことで、第3ギア120の回転がねじ軸122に伝達される。そのため、本実施形態の電動シリンダ装置110には、ピストン113及びシリンダ11のセンタ位置のずれによる構成部品の偏摩耗を抑える効果がある。加えて電動シリンダ装置110には、回転入力部品である第3ギア120から回転部であるねじ軸122に回転を伝達する機能を両立できるという効果がある。こうした本実施形態の電動シリンダ装置110では、直動変換機構16の回転部であるねじ軸122が第1構成部品に、回転入力部品である第3ギア20が第2構成部品に、それぞれ対応する。さらに、回転入力部である第3ギア120に設けられた係合溝145が第1凹部に、直動変換機構16の回転部であるねじ軸122に設けられた突起142が第2凸部に、それぞれ対応する。
【0037】
また、第3ギア120とねじ軸122とは、凸球面とされた段差部141とテーパ面143とが線接触した状態で連結されている。これにより、第3ギア120の回転軸に対するねじ軸122の回転軸との傾動が許容される。そして、両回転軸の傾動によりシリンダ11の中心軸に対する回転軸Oの傾きが許容される。そのため、本実施形態の電動シリンダ装置110には、シリンダ11の中心軸に対する回転軸Oの傾きによる構成部品の偏摩耗を抑える効果がある。
【0038】
<第2実施形態の変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0039】
・
図12及び
図13に示すように、第3ギア220に挿入軸221を、ねじ軸222に挿入孔223を、それぞれ設けるようにしてもよい。
図12の第3ギア220には、回転軸Oに沿って前方に突出する挿入軸221が一体となって回転するように連結されている。挿入軸221は、その後端部が第3ギア220の後方に突出した状態で第3ギア220に固定されている。そして、挿入軸140における第3ギア220の後方に突出した部分には、第3ギア220からの挿入軸221の抜けを防止するためのスナップリング224が取り付けられている。また、挿入軸221の前端には、凸球面225が設けられている。また、挿入軸221の側面には、ラジアル方向Rの外側に向って放射状に突出すように複数の突起226が設けられている。なお、
図13には4つの突起226が示されているが、突起226の数は1つ以上であればよい。一方、ねじ軸222には、その後端から前方に延びる挿入孔223が設けられている。挿入孔223は、挿入軸221の外径よりも大きい内径を有している。また、ねじ軸222における挿入孔223の周囲には、挿入軸221に設けられた突起226の数と同数の係合溝227が、ラジアル方向Rの外側に向って放射状に延びるように設けられている。そして、突起226が係合溝227に噛み合うことで第3ギア220の回転がねじ軸222に伝達される。なお、突起226、係合溝227間は遊嵌されている。また、挿入孔223の前端には、前方に向うにつれてラジアル方向Rの内側に向うように傾斜したテーパ面228が設けられている。そして、挿入軸221の凸球面225が挿入孔223のテーパ面228に接した状態で、第3ギア220とねじ軸222とが連結されている。なお、凸球面225とテーパ面228との接触は線接触となる。こうして連結された第3ギア220とねじ軸222とは、第3ギア220に対するラジアル方向Rへのねじ軸222の相対変位が許容される。よって、こうした場合にも、ピストン113及びシリンダ11のセンタ位置のずれによる構成部品の偏摩耗を抑える効果がある。また、第3ギア220とねじ軸222とが線接触した状態で連結されており、第3ギア220の回転軸に対するねじ軸222の回転軸との傾動が許容されている。そのため、こうした場合にも、シリンダ11の中心軸に対する回転軸Oの傾きによる構成部品の偏摩耗を抑えられる。なお、こうした変更例では、第3ギア220に設けられた突起226が第1凸部に、ねじ軸222に設けられた係合溝227が第2凹部に、それぞれ対応する。
【0040】
・第3ギア120,220からのねじ軸122,222の抜け止めを、スナップリング224以外の方法で行うようにしてもよい。
・第3ギア120,220とねじ軸122,222とを、面接触した状態で連結してもよい。こうした場合にも、第3ギア120,220に対するラジアル方向Rへのねじ軸122,222の相対変位が許容されていれば、ピストン113及びシリンダ11のセンタ位置のずれによる構成部品の偏摩耗を抑えられる。
【0041】
(第3実施形態)
次に、電動シリンダ装置の第3実施形態を、
図14を併せ参照して詳細に説明する。なお本実施形態にあって、上記実施形態と共通する構成については、同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0042】
<第3実施形態の電動シリンダ装置310の構成>
図14に、第3実施形態の電動シリンダ装置310の断面図を示す。なお、
図14の断面には表されていないが、本実施形態の電動シリンダ装置310は、
図1の電動シリンダ装置10と同様に、電気モータ14、第1ギア18、第2ギア19、入力ポート25、及び出力ポート26を備えている。また、電動シリンダ装置310は、
図9の電動シリンダ装置110と同様に、ナット123と一体に連結されたピストン113を備えている。さらに、電動シリンダ装置310は、
図1の電動シリンダ装置10と同様に、ねじ軸22と一体に連結された第3ギア20を備えている。
【0043】
図14の電動シリンダ装置310のハウジングは、内部にシリンダ11が設けられた第1ハウジング部品311と、内部に第3ギア20が設置される第2ハウジング部品312と、を有している。第1ハウジング部品311及び第2ハウジング部品312は、直動方向Sに直交する面同士を互いに付き合せた状態で、ラジアル方向Rに相対変位可能に連結されている。
【0044】
図14の場合、第1ハウジング部品311及び第2ハウジング部品312は、複数のボルト313を用いて連結されている。第1ハウジング部品311及び第2ハウジング部品312の外周には、ラジアル方向Rの外側に突出したフランジ314,315がそれぞれ設けられている。第1ハウジング部品311のフランジ314には、同フランジ314を直動方向Sに貫通する貫通孔316が設けられている。貫通孔316は、ボルト313の軸径よりも大きい内径を有している。一方、第2ハウジング部品312のフランジ315には、直動方向Sに延びるねじ穴317が設けられている。ねじ穴317の内周には、ボルト313をねじ止めするための雌ねじが形成されている。ボルト313は、同ボルト313の頭部とフランジ314との間にスプリングワッシャ318を挟み込んだ状態で、貫通孔316を通してねじ穴317にねじ止めされている。
【0045】
また、第1ハウジング部品311及び第2ハウジング部品312の突き合せ面間には、弾性材料からなるリング状のシールリング319が介設されている。シールリング319は、シリンダ11のラジアル方向Rの外側を囲むように設置されている。
【0046】
<第3実施形態の作用効果>
本実施形態の電動シリンダ装置310では、第1ハウジング部品311と第2ハウジング部品312とがラジアル方向Rへの相対変位を許容した状態で連結されている。第1ハウジング部品311の内部にはシリンダ11が設けられている。また、第2ハウジング部品312の内部には、直動変換機構16を介してピストン113が連結された第3ギア20が取り付けられている。そのため、電動シリンダ装置310では、第1ハウジング部品311及び第2ハウジング部品312のラジアル方向Rへの相対変位を通じて、シリンダ11に対するピストン113のラジアル方向Rへの相対変位が許容されている。そのため、本実施形態の電動シリンダ装置310には、ピストン113及びシリンダ11のセンタ位置のずれによる構成部品の偏摩耗を抑える効果がある。加えて、本実施形態は、ハウジングを分割するだけであり、ハウジング内部の構造は従来のものを維持できるため、変更規模が小さいというメリットがある。こうした本実施形態の電動シリンダ装置310では、第2ハウジング部品312が第1構成部品に、第1ハウジング部品311が第2構成部品に、それぞれ対応する。
【0047】
<第3実施形態の変更例>
第1ハウジング部品311及び第2ハウジング部品312のラジアル方向Rへの相対変位が許容されているのであれば、それらを次のように連結してもよい。
【0048】
・ボルト締結以外の方法で、第1ハウジング部品311と第2ハウジング部品312とを連結する。
・シールリング319を割愛してもよい。
【0049】
・ゴム等の弾性材料からなるシートを突き合せ面間に挟み込んだ状態で第1ハウジング部品311と第2ハウジング部品312とを連結する。
(第4実施形態)
次に、電動シリンダ装置の第4実施形態を、
図15を併せ参照して詳細に説明する。なお本実施形態にあって、上記実施形態と共通する構成については、同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0050】
<第4実施形態の電動シリンダ装置410の構成>
図15に、第4実施形態の電動シリンダ装置410の断面図を示す。なお、
図15の断面には表されていないが、本実施形態の電動シリンダ装置410は、
図1の電動シリンダ装置10と同様に、電気モータ14、第1ギア18、第2ギア19、入力ポート25、及び出力ポート26を備えている。また、電動シリンダ装置410は、
図9の電動シリンダ装置110と同様に、ナット123と一体に連結されたピストン113を備えている。さらに、電動シリンダ装置410は、
図1の電動シリンダ装置10と同様に、ねじ軸22と一体に連結された第3ギア20を備えている。
【0051】
図15に示すように、電動シリンダ装置410は、第3ギア20を回転自在に支持する軸受部品として、内輪411と外輪412との間に転動体413が介設された転がり軸受414を備えている。転がり軸受414の内輪411は第3ギア20に、外輪412はハウジング12の内壁にそれぞれ固定されている。内輪411は、その内周面及び前方側面が第3ギア20に接触した状態で、同第3ギア20に取り付けられている。外輪412は、その後方側面がハウジング12の内壁に接触した状態で、ハウジング12に取り付けられている。さらに、外輪412の外周面とハウジング12の内壁との間には、弾性部品であるシールリング415が介設されている。すなわち、転がり軸受414は、シールリング415の弾性変形により、ラジアル方向Rへの相対変位が許容された状態でハウジング12に取り付けられている。そして、直動変換機構16を介してピストン113が連結された第3ギア20が、そうした転がり軸受414を介してハウジング12の内壁に連結されている。そのため、こうした電動シリンダ装置410では、内部にシリンダ11が設けられたハウジング12に対するラジアル方向Rへの相対変位が許容された状態でピストン113が設置されている。
【0052】
<第4実施形態の作用効果>
本実施形態の電動シリンダ装置410では、ハウジング12に対するラジアル方向Rへの転がり軸受414の相対変位を通じて、シリンダ11に対するピストン113のラジアル方向Rへの相対変位が許容されている。そのため、本実施形態の電動シリンダ装置410には、ピストン113及びシリンダ11のセンタ位置のずれによる構成部品の偏摩耗を抑える効果がある。加えて、本実施形態は、ピストン113の先端から遠い場所の相対変位が許容されるため、偏摩耗を効果的に抑えることができる。なお、転がり軸受414が自由動きすぎると軸のがたつきが大きくなる。そのため、転がり軸受414とハウジング12の間に弾性部品を設けることで、調心機能を持たせることが好ましい。こうした本実施形態の電動シリンダ装置410では、転がり軸受414が第1構成部品に、ハウジング12が第2構成部品に、それぞれ対応する。
【0053】
<第4実施形態の変形例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0054】
・
図16に示すように、転がり軸受414の外輪412の後方側面とハウジング12の内壁との間に、弾性部品416を介設するようにしてもよい。こうした場合、弾性部品416の弾性変形を通じて、ハウジング12に対する第3ギア20の回転軸の傾動が許容される。そのため、シリンダ11の中心軸に対する回転軸Oの傾きによる構成部品の偏摩耗を抑えられる。
【0055】
・転がり軸受414の内輪411の内周面と第3ギア20との間にシールリング415を介設するようにしてもよい。こうした場合にも、シールリング415の弾性変形により、シリンダ11に対するピストン113のラジアル方向Rへの相対変位が許容される。そのため、こうした場合にも、ピストン113及びシリンダ11のセンタ位置のずれによる構成部品の偏摩耗を抑えられる。
【0056】
(各実施形態の変形例)
上記各実施形態は、更に以下のように変更して実施することができる。上記各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0057】
・回転伝達機構15を構成するギアの数を変更してもよい。
・
図1に示したギア機構以外の機構を回転伝達機構15として採用してもよい。回転伝達機構15として採用できる機構としては、例えば巻き掛け伝動機構や遊星ギア機構がある。その場合には、その回転伝達機構15における直動変換機構16の回転部に連結される回転部品が、回転入力部品に対応する部品となる。
【0058】
・回転伝達機構15を設けずに、電気モータ14を直動変換機構16に直結するようにしてもよい。その場合、モータ軸17が回転入力部品に対応する部品となる。
・ナットの回転に応じてねじ軸が直動する機構を、すなわちナットを回転部、ねじ軸を直動部とする機構を、直動変換機構16に採用してもよい。その場合、ナットが回転入力部品に、ねじ軸がピストン13,113にそれぞれ連結される。第1実施形態及びその変形例におけるナット23及びピストン13の連結構造は、その場合のねじ軸とピストン13との連結構造として採用できる。
【0059】
・上記各実施形態及びその変形例の電動シリンダ装置を、ピストンが外部に直接押圧を加えるように変更して、ピストンの押圧を摩擦部材に直接伝達して制動力を発生するドライ式の制動装置用の電動シリンダ装置としてもよい。また、上記各実施形態及び変更例の電動シリンダ装置を制動装置以外の用途に用いるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0060】
10,110,310,410…電動シリンダ装置
11…シリンダ
12…ハウジング
13,113…ピストン
14…電気モータ
15…回転伝達機構
16…直動変換機構
17…モータ軸
18…第1ギア
19…第2ギア
20,120,220…第3ギア
21…軸受部品
22,122,222…ねじ軸
23,123…ナット
24…液室
25…入力ポート
26…出力ポート
27,28…シール部品
29…凹部
30,319,415…シールリング
31,143,228…テーパ面
32,225…凸球面
33,34,38,416…弾性部品
35,37…キャップ部品
36…球状突起
39…連結部品
40…取付溝
41,142,226…突起
42,145,227…係合溝
140,221…挿入軸
144,223…挿入孔
146,224…スナップリング
311…第1ハウジング部品
312…第2ハウジング部品
313…ボルト
314,315…フランジ
316…貫通孔
317…ねじ穴
318…スプリングワッシャ
411…内輪
412…外輪
413…転動体
414…転がり軸受