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特開2023-104543繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物、繊維強化プラスチック中間基材、及び前記繊維強化プラスチック中間基材の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023104543
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物、繊維強化プラスチック中間基材、及び前記繊維強化プラスチック中間基材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/04 20060101AFI20230721BHJP
   C08G 18/08 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
C08J5/04
C08G18/08 038
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022005587
(22)【出願日】2022-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000230364
【氏名又は名称】日本ユピカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 博行
(72)【発明者】
【氏名】清水(石根)希望
(72)【発明者】
【氏名】諸岩 哲治
(72)【発明者】
【氏名】相原 宏次
(72)【発明者】
【氏名】大門 宏規
【テーマコード(参考)】
4F072
4J034
【Fターム(参考)】
4F072AB10
4F072AB22
4F072AD09
4F072AG03
4F072AH04
4F072AH21
4F072AL02
4F072AL04
4F072AL11
4F072AL17
4J034BA08
4J034CA04
4J034CA05
4J034CA15
4J034CC07
4J034CC12
4J034CC26
4J034CC45
4J034CC52
4J034CC61
4J034CC62
4J034CC65
4J034CC68
4J034DA01
4J034DB03
4J034DB07
4J034DF01
4J034DF16
4J034DF20
4J034DF21
4J034DF22
4J034DG03
4J034DG04
4J034FB01
4J034FC01
4J034FD01
4J034HA01
4J034HA06
4J034HA07
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC22
4J034HC35
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC63
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034MA01
4J034MA21
4J034MA22
4J034QB14
4J034QB19
4J034RA03
4J034RA10
4J034RA12
(57)【要約】
【課題】
本発明は、繊維材料への含浸性に優れる液状組成物を提供し、かつ複合材料としたときの機械物性に優れる中間材料を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明の液状組成物は、下記(A)と(B)と(C)とを配合してなり、B型粘度計で測定された10~50℃における前記組成物(A)と(B)の混合物である液状組成物の粘度が5~200mPa・sである繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物であって、繊維又は織物上で樹脂形成するための繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物。
2個以上のイソシアネート基を有する化合物(a)を含む組成物(A)、下記(b1)及び(b2)を必須成分とし、さらに(b3)を含むことができる組成物(B)、10時間半減期温度が95℃以下のラジカル重合開始剤(C)
(b1)エチレン性不飽和基含有モノアルコール化合物
(b2)重合禁止剤
(b3)2個以上のイソシアネート反応性基を有する化合物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)と(B)と(C)とを配合してなり、B型粘度計で測定された10~50℃における前記組成物(A)と(B)の混合物である液状組成物の粘度が5~200mPa・sである繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物であって、繊維又は織物上で樹脂形成するための液状組成物。
2個以上のイソシアネート基を有する化合物(a)を含む組成物(A)、下記(b1)及び(b2)を必須成分とし、さらに(b3)を含むことができる組成物(B)、10時間半減期温度が95℃以下のラジカル重合開始剤(C)
(b1)エチレン性不飽和基含有モノアルコール化合物
(b2)重合禁止剤
(b3)2個以上のイソシアネート反応性基を有する化合物。
【請求項2】
前記イソシアネート反応性基を有する化合物が水酸基含有化合物の場合、水酸基当量が30~140g/eqであることを特徴とする請求項1記載の液状組成物。
【請求項3】
ウレタン化触媒(D)が、前記組成物(A)及び/又は(B)に配合された請求項1又は2のいずれか一項に記載の液状組成物。
【請求項4】
さらに、前記組成物(A)中のイソシアネート基モル数に対する前記組成物(B)中のイソシアネート反応性基モル比(B/A)が0.8~1.2である請求項1~3のいずれか一項に記載の液状組成物。
【請求項5】
前記組成物(A)及び/又は(B)がイソシアネート反応性基を含まない重合性単量体(F)を含むことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の液状組成物。
【請求項6】
前記組成物(A)と(B)の合計重量に対して重合性単量体(E)の含有量が40重量%以下である請求項1~5のいずれか一項に記載の液状組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の液状組成物を繊維材料に含浸してなる繊維強化プラスチック中間基材。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載の液状組成物を任意の組成で繊維材料に含浸させる工程と、前記含浸させて得られた繊維強化プラスチック中間基材を熟成させる工程と、を含むことを特徴とする繊維強化プラスチック中間基材の製造方法。
【請求項9】
前記熟成の温度は、25~80℃である請求項8記載の方法。
【請求項10】
請求項7記載の繊維強化プラスチック中間基材を硬化させてなる繊維強化複合材料。
【請求項11】
請求項10記載の硬化の温度は、70~150℃である繊維強化複合材料。
【請求項12】
繊維強化複合材料の用途が、船舶、航空機、宇宙航空、風車翼、建造物から選択される構造部材、医療用部材、スポーツ用部材、電気電子半導体用部材から選択される成形物であることを特徴とする請求項10又は11に記載の繊維強化複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物、繊維強化プラスチック中間基材、及び前記繊維強化プラスチック中間基材の製造方法に関し、特に硬化性に優れる繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物、繊維強化プラスチック中間基材、及び前記繊維強化プラスチック中間基材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化プラスチック(Fiber reinforced plastic : FRP)は軽量で高強度であることから、様々な構造部材に使用されている。それらの分野は、住宅設備、自動車、船舶、土木、スポーツ用具等多岐にわたるが、近年特に軽量化を要する自動車や輸送関連機器分野でFRPの使用が増加している。
【0003】
FRPの製造には樹脂と繊維が用いられるが、液状の樹脂と繊維(又は織物)を使用して成形する方法とあらかじめ樹脂を繊維に含浸させBステージ化した中間基材(SMC(Sheet molding compound)、プリプレグ)を使用する方法がある。中間基材を用いて成形する方法としてはオートクレーブ成形、シートワインディング成形、オーブン成形、プレス成形などがある。これらの成形においては、中間基材をカットし、目標の厚みまで積層し熱をかけて硬化させる成形法である。
【0004】
一方、ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、炭素繊維との密着性に優れることは従来から知られており、炭素繊維のサイジング剤として用いられている。(例えば、特許文献1)。また、ウレタン(メタ)アクリレート化合物は強化繊維との接着性が良好であるため、強化繊維との接着性の劣る樹脂と混合して用いることが提案されている(例えば、特許文献2)。
【0005】
現在、炭素繊維中間基材を用いた成形は、オートクレーブ成形、シートワインディング成形、プレス成形などが主流であるが、これらは成形に要する成形機や金型が高価であることから設備投資が多額になり、少量多品種には向かないという問題がある。
【0006】
従来の中間基材(特にSMC)は、通常、圧縮成形の温度は130~160℃、圧力は8~10MPa の高温高圧でなされるため、当該成形機には多額の設備投資が必要である。そこで設備投資の低減を目的として、エポキシ樹脂を組成物とするマトリックス樹脂に対して、大気圧下での操作が可能なオーブン成形、また金型の費用がより低減でき、さらに設備投資が安価な樹脂型、石膏型、木型などの使用が可能となる低温(100℃程度)低圧での圧縮成形が提案されている(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11-200252号公報
【特許文献2】特開昭62-292839号公報
【特許文献3】特開2006-160972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上述の特許文献1及び2に記載のウレタン(メタ)アクリレート化合物は、強化繊維との複合材料としたときに十分な機械物性を得ることができないため、実用的な機械的強度を有する成形品を得られないという課題があった。
【0009】
また、プリプレグシートのマトリックス樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂などがあるが、FRP機械物性、硬化性、表面性などをバランスよく満たすマトリックス樹脂が無いのが現状である。例えばエポキシ樹脂をマトリックスとするプリプレグシートは、機械物性に優れる硬化物を与えるが、硬化の際、高温で且つ長時間を要すること、保管を極冷下で行わなければならないことが課題としてあり、ビニルエステル樹脂や不飽和ポリエステル樹脂は、硬化性や保管性に優れるが硬化物の機械物性が不十分であるという課題を有する。
【0010】
さらに、従来の中間基材を用いて成形する方法においては、成形品中のボイドを完全に無くすことができない課題もある。成形品中にボイドが残存すると欠陥部位となり強度低下を招いてしまう。このボイドを極力減らすには積層枚数を減らす、すなわち単位面積重量が大きい中間基材を使用することが解決策となるが、現状の製法には限界がある。Bステージ化の手法としては、粘度の高い半固形の樹脂をホットメルトして高温で繊維に含浸させる方法、粘度の高い半固形の樹脂を溶剤に希釈して、常温で含浸させて溶剤を除去する方法、反応性希釈剤にオリゴマーを溶解させた樹脂に増粘剤を加え、常温で含浸させ化学的に増粘させる方法があるが、いずれの方法も中間基材の単位面積重量に限界がある。反応性希釈剤にオリゴマーを溶解させた樹脂を用いる方法においては、反応性希釈剤の量を増量して含浸時の粘度を低くすることもできるが、硬化収縮が大きくなるため寸法安定性の高いFRPを得ることができない課題がある。
【0011】
従来の中間基材(特にSMC)は高温高圧で成形されるが、より低温低圧のオーブン成形が可能となれば、上記成形機や金型の課題を低減できる。以上のように、低温低圧で圧縮成形が可能な材料が求められている。しかし、現在販売されている材料は、中間基材の保存安定性と製造方法、物性の面から成形温度が130℃以上を推奨しているものがほとんどであり、保存性が良好で低温低圧成形で十分な機械物性を有するFRPを与える中間基材の製造は難しいという課題があった。
【0012】
本発明は、上記課題を解決し、繊維材料への含浸性に優れる液状組成物を提供し、かつ複合材料としたときの機械物性に優れる中間材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、ラジカル重合性化合物を少なくとも含む組成物について種々の観点から多角的に検討を重ねた結果、本発明の繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物を見出すに至った。
【0014】
すなわち、本発明の繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物は、下記(A)と(B)と(C)とを配合してなり、B型粘度計で測定された10~50℃における前記組成物(A)と(B)の混合物である液状組成物の粘度が5~200mPa・sである繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物であって、繊維又は織物上で樹脂形成するための繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物。
2個以上のイソシアネート基を有する化合物(a)を含む組成物(A)、下記(b1)及び(b2)を必須成分とし、さらに(b3)を含むことができる組成物(B)、10時間半減期温度が95℃以下のラジカル重合開始剤(C)
(b1)エチレン性不飽和基含有モノアルコール化合物
(b2)重合禁止剤
(b3)2個以上のイソシアネート反応性基を有する化合物。
【0015】
また、本発明の繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物の好ましい実施態様において、前記イソシアネート反応性基を有する化合物が水酸基含有化合物の場合、水酸基当量が30~140g/eqであることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物の好ましい実施態様において、ウレタン化触媒(D)が、前記組成物(A)及び/又は(B)に配合されていることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物の好ましい実施態様において、さらに、前記組成物(A)中のイソシアネート基モル数に対する前記組成物(B)中のイソシアネート反応性基モル比(B/A)が0.8~1.2であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物の好ましい実施態様において、前記組成物(A)及び/又は(B)がイソシアネート反応性基を含まない重合性単量体(F)を含むことを特徴とする。
【0019】
また、本発明の繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物の好ましい実施態様において、前記組成物(A)と(B)の合計重量に対して重合性単量体(E)の含有量が40重量%以下であることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の繊維強化プラスチック中間基材は、本発明の液状組成物を繊維材料に含浸してなることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の繊維強化プラスチック中間基材の製造方法は、本発明の液状組成物を任意の組成で繊維材料に含浸させる工程と、前記含浸させて得られた繊維強化プラスチック中間基材を熟成させる工程と、を含むことを特徴とする。
【0022】
また、本発明の繊維強化プラスチック中間基材の製造方法の好ましい実施態様において、前記熟成の温度は、25~80℃であることを特徴とする。
【0023】
また、本発明の繊維強化複合材料は、本発明の繊維強化プラスチック中間基材を硬化させてなることを特徴とする。
【0024】
また、本発明の繊維強化複合材料の好ましい実施態様において、硬化の温度は、70~150℃であることを特徴とする。
【0025】
また、本発明の繊維強化複合材料の好ましい実施態様において、繊維強化複合材料の用途が、船舶、航空機、宇宙航空、風車翼、建造物から選択される構造部材、医療用部材、スポーツ用部材、電気電子半導体用部材から選択される成形物であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明の繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物によれば、前記液状組成物が基材への含浸性に優れ、硬化時の収縮が小さく寸法安定性に優れる中間基材を与えることが可能であるという有利な効果を奏する。
【0027】
また、本発明によれば、低粘度で含浸性に優れた液状組成物を用いる本発明により、単位面積重量の大きい中間基材を製造することができるという有利な効果を奏する。さらに、本発明によれば、単位面積重量の大きい中間基材に関し、積層回数を減らしボイドの極力少ない高強度なFRP、寸法安定性に優れるFRPを提供することが可能であるという有利な効果を奏する。
【0028】
本発明の繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物によれば、得られた中間基材は低温低圧成形が可能であり、且つ機械物性に優れ、ボイドや未含浸部位がほとんど無い信頼性の高い複合材料を与えることが可能であるという有利な効果を奏する。又、本発明の中間基材は硬化性と保管性に優れるという有利な効果も奏する。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、何ら以下の説明に限定されるものではない。本発明において「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」を示す。同様に「(メタ)アクリル酸エステル」は、「アクリル酸エステル」及び「メタクリル酸エステル」を示す。
【0030】
本発明の繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物は、下記(A)と(B)と(C)とを配合してなり、B型粘度計で測定された10~50℃における前記組成物(A)と(B)の混合物である液状組成物の粘度が5~200mPa・sである繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物であって、繊維又は織物上で樹脂形成するための繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物。
2個以上のイソシアネート基を有する化合物(a)を含む組成物(A)、下記(b1)及び(b2)を必須成分とし、さらに(b3)を含むことができる組成物(B)、10時間半減期温度が95℃以下のラジカル重合開始剤(C)
(b1)エチレン性不飽和基含有モノアルコール化合物
(b2)重合禁止剤
(b3)2個以上のイソシアネート反応性基を有する化合物。
【0031】
まず、組成物(A)について記載する。組成物(A)は、2個以上のイソシアネート基を有する化合物(a)を含む組成物である。
【0032】
本発明に適用できる2個以上のイソシアネート基を有する化合物(a)としては、例えば、1,3-キシリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、m-テトラメチルキシレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート化合物、水添キシリレンジイソシアネート(1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン)、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水添メチレンビスフェニレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、等の脂環族イソシアネート化合物、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート化合物、2官能イソシアネート化合物が3量化されたイソシアヌレート環を有する3官能イソシアネートを挙げることができる。これらのイソシアネート化合物は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0033】
2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族系イソシアネートを使用する場合であって、2個以上のイソシアネート反応性基を有する化合物(b3)を用いる場合には、組成物(B)に配合される2個以上のイソシアネート反応性基を有する化合物(b3)の反応基が2級、3級であることが好ましい。2級又は3級の反応性基有する化合物として、アルコール類としてはプロピレングリコール、ジプロピレングリコール又はそれらのアルコールを用いたプレポリマー、ポリエステルポリオールなどが挙げられる。芳香族系イソシアネートを使用する場合、組成物(B)中の2個以上のイソシアネート反応性基を有する化合物(b3)全てに1級水酸基を有するアルコールやアミノ化合物を用いると、混合後の反応が速すぎて増粘が一気に起こり、液状組成物が十分に含浸した単位面積重量の大きい中間基材が得られない虞がある。
【0034】
組成物(A)と(B)を混合後の増粘が速すぎる場合は、反応速度を遅くするために、後述するようにウレタン化触媒(D)の配合量を減らしたり、無くしたりすることや、該液状組成物粘度が範囲を超えない程度の低温で中間基材を製造するのが好ましい。
【0035】
次いで組成物(B)について記載する。組成物(B)は、エチレン性不飽和基含有モノアルコール化合物(b1)、重合禁止剤(b2)と2個以上のイソシアネート反応性基を有する化合物(b3)を任意の割合で含むことができる組成物である。組成物(B)は、エチレン性不飽和基含有モノアルコール化合物(b1)と重合禁止剤(b2)が必須成分であり、2個以上のイソシアネート反応性基を有する化合物(b3)は必要に応じて配合することができる。
【0036】
また、本発明の繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物の好ましい実施態様において、前記イソシアネート反応性基を有する化合物が水酸基含有化合物の場合、低粘度化合物であり含浸性に優れるという観点から、水酸基当量が30~140g/eqであることを特徴とする。また、組成物(B)に配合されるエチレン性不飽和基含有モノアルコール化合物(b1)、必要に応じて配合可能な2個以上のイソシアネート反応性基を有する化合物(b3)は繊維への含浸温度(10~60℃の範囲で任意の温度)で液状のものが好ましいが、組成物(B)として該液状組成物となるのであれば固形の材料を用いてもよい。
【0037】
エチレン性不飽和基含有モノアルコール化合物(b1)とは水酸基を含有する(メタ)アクリル酸エステルのことであり、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジアクリル化イソシアヌレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチル-フタル酸などが挙げられる。
【0038】
これらのエチレン性不飽和基含有モノアルコール化合物(b1)は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。又、これらエチレン性不飽和基含有モノアルコール化合物(b1)のうち、液状組成物の粘度や硬化物の機械物性の点から2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましい。又、耐熱性を必要とする場合は、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0039】
重合禁止剤(b2)としては、例えば、ハイドロキノン、パラベンゾキノン、メチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、トルハイドロキノン等の公知の多価フェノール系重合禁止剤が使用できる。
【0040】
2個以上のイソシアネート反応性基を有する化合物(b3)としては、脂肪族アルコール、エーテル化ジフェノール、及びポリエステルポリオール、アミノ基含有化合物等が挙げられる。
【0041】
脂肪族アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,4-ブテンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-2-メチルプロパン-1,3-ジオール、2-ブチル-2-エチルプロパン-1,3-ジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,4-ジメチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,7-へプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。環状脂肪族アルコールとしては、水添ビスフェノールA、トリシクロデカンジメタノール、スピログリコールなどが挙げられる。このうち、液状組成物の粘度や増粘性、硬化物の機械物性の点からエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、トリシクロデカンジメタノール、トリメチロールプロパンを使用することが好ましい。
【0042】
エーテル化ジフェノールとしては、例えばビスフェノールAとアルキレンオキサイドを付加反応させて得られるジオール、ビスフェノールAとアルキレンオキサイドの付加物を臭素化させて得られるジオールなどが挙げられる。該アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドであり、該アルキレンオキサイドの平均付加モル数がビスフェノールAの1モルに対して2~16モルであるものが好ましい。
【0043】
ポリエステルポリオールとしては、不飽和及び又は飽和酸と、前述の脂肪族アルコール、及びエーテル化ジフェノールとを重縮合させたものが挙げられる。不飽和酸としては、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸が挙げられる。飽和酸としては、オルソフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、コハク酸、セバシン酸、アルキルコハク酸、アルケニルコハク酸、イタコン酸、ビフェニルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、5-tert-ブチル-1,3-ベンゼンジカルボン酸及びこれらの酸無水物、低級アルキルエステル、酸ハロゲン化物などのようなエステル形成性誘導体が挙げられる。樹脂粘度と硬化物の機械物性の点から、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸及びそれらのエステル形成性誘導体から選ばれる1種以上とエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、トリシクロデカンジメタノール、トリメチロールプロパンから選ばれる1種以上との重縮合により得られるポリエステルポリオールが特に好ましい。
【0044】
アミノ基含有化合物としては、アルカノールアミン、ポリアミンが挙げられる。アルカノールアミンとしては、炭素数2~20のジ-及びトリ-アルカノールアミンが挙げられ、具体的にはジエタノールアミン、トリエタノールアミン及びイソプロパノールアミンなどが挙げられる。ポリアミンとしては、脂肪族アミンとして、炭素数2~6のアルキレンジアミンや炭素数4~20のポリアルキレンポリアミンが挙げられ、具体的には、エチレンジアミン、プロピレンジアミン及びヘキサメチレンジアミン、アルキレン基の炭素数が2~6のジアルキレントリアミン~ヘキサアルキレンヘプタミン、例えば、ジエチレントリアミン及びトリエチレンテトラミンなどが挙げられる。又、炭素数6~20の芳香族ポリアミンとして、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、メチレンジアニリン及びジフェニルエーテルジアミン、炭素数4~20の脂環式ポリアミンとして、イソホロンジアミン、シクロヘキシレンジアミン及びジシクロヘキシルメタンジアミン、炭素数4~20の複素環式ポリアミンとしてピペラジン及びアミノエチルピペラジンなども挙げられる。
【0045】
これら2個以上のイソシアネート反応性基を有する化合物(b3)として、脂肪族アルコール、エーテル化ジフェノール、及びポリエステルポリオール、アミノ基含有化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0046】
重合開始剤(C)は、後述する繊維強化複合材料化において、ラジカル重合により中間基材を硬化させる際の必須成分とすることができる。
【0047】
10時間半減期温度が95℃以下の重合開始剤(C)としては有機過酸化物系が挙げられ、例えば、ビス (2-エチルヘキシルl) ペルオキシジカルボナートなどのパーオキシジカーボネート系、ジベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド系、tert-ブチル=2-エチルペルオキシヘキサノアートなどのパーオキシエステル系、クミルペルオキシネオデカノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチル=ネオデカンペルオキシアートなどのペルオキシネオデカノエート系、t-アミルぺルオキシピバレートなどのぺルオキシピバレート系、t-ブチル(2-エチルブチリル)ペルオキシド、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)等が挙げられるが、これに限定しない。
【0048】
その他の重合開始剤(C)としては有機過酸化物系が挙げられ、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド系、ベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド系、t-ブチルパーオキシベンゾエートなどのパーオキシエステル系、クメンハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド系、ジクミルパーオキサイドなどジアルキルパーオキサイド系、ビス(4-ターシャリーブチロイルヘキシル)パーオキシジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート系などが挙げられるがこれに限定しない。
【0049】
10時間半減期温度が95℃以下の重合開始剤は、単独又は2種以上混合して使用することができる。また、10時間半減期温度が95℃以下の重合開始剤が含まれていれば、10時間半減期温度に関わらず2種以上を混合して使用することができる。熟成については10時間半減期温度が高いほうが有利であるが、10時間半減期温度が95℃以下の重合開始剤が含まれていれば、10時間半減期温度が95℃を超える重合開始剤を含んでいてもよい。
【0050】
重合開始剤(C)の添加量は、物性および外観が良好な成形物を得るという観点から、液状組成物100重量部に対して、0.05~5重量部とすることができる。
【0051】
また、本発明の繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物の好ましい実施態様において、ウレタン化触媒(D)が、前記組成物(A)及び/又は(B)に配合されていることを特徴とする。すなわち、ウレタン化触媒(D)は、前記組成物(A)のみに配合することができ、又は前記組成物(B)のみに配合することもでき、組成物(A)及び(B)の両方に配合してもよい。なお、ウレタン化触媒(D)はいずれに配合されていても良いが、組成物(B)に含まれていたほうが好ましい。これは、ウレタン触媒を組成物(A)に添加すると、組成物(A)中に含まれているイソシアネート基の活性が上がり空気中の水分と反応し、組成物(A)自体の安定性が悪くなる虞があるためである。
【0052】
また、本発明の繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物の好ましい実施態様において、前記組成物(A)及び/又は(B)がイソシアネート反応性基を含まない重合性単量体(F)を含むことを特徴とする。すなわち、前記組成物(A)、又は(B)の少なくともいずれか一方にイソシアネート反応性基を含まない重合性単量体(E)を含んでいれば良く、組成物(A)及び(B)の両方にイソシアネート反応性基を含まない重合性単量体(E)を含んでいてもよい。
【0053】
次に、ウレタン化触媒(D)及びイソシアネートを含まない重合性単量体(E)について記載する。これらの成分はそれぞれ必要に応じて配合することができ、組成物(A)又は(B)のいずれにも配合することができ、組成物(A)及び(B)の両方にも配合することができる。
【0054】
ウレタン化触媒(D)には酸性触媒、塩基性触媒が使用できるが、活性の高いジブチル錫ジラウレートやジブチル錫ジアセテートなどのスズ化合物が好ましい。触媒の添加量は、選択する他の原料によって異なるが、熟成時の発熱及びウレタンアクリレート形成の速度、中間基材の貯蔵安定性、硬化物の機械物性の観点から、液状組成物重量に対して、0~800ppmとすることができる。
【0055】
イソシアネート反応性基を含まない重合性単量体(E)としては、イソシアネート基と常温で反応しないものが好ましく、イソシアネート基と常温で反応しない重合性単量体(E)としては、ビニルモノマーや単官能(メタ)アクリル酸エステル、多官能(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。イソシアネート基と反応する重合性単量体を(A)に配合すると保管時に反応して粘度が上昇し作業性が悪くなる虞や十分な機械物性を得ることができない虞がある。
【0056】
ビニルモノマーとしては、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、酢酸ビニルなどが挙げられ、又、単官能(メタ)アクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、ベンジル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレートなど、多官能(メタ)アクリル酸エステルとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレンジ(メタ)アクリレート、ノルボルネンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレートなどが挙げられる。これらの重合性単量体(E)は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。中間基材としてのタック性や臭気、その硬化物の機械物性の点からジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレンジ(メタ)アクリレート、ベンジルメタクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートの適用が好ましい。
【0057】
また、本発明の繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物の好ましい実施態様において、前記組成物(A)と(B)の合計重量に対して重合性単量体(E)の含有量が40重量%以下であることを特徴とする。すなわち、重合性単量体(E)の配合量は、中間基材として目標とする粘度特性やタック性に対し、熟成で得られるウレタンアクリレートに合わせて、液状組成物中に0~40重量%の範囲で調整することができる。重合性単量体(E)の配合量は、中間基材の硬化収縮を小さくする観点からすると、0~20重量%がより好ましい。
【0058】
また、本発明の繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物の好ましい実施態様において、優れたFRP機械物性を与えるという観点から、さらに、前記組成物(A)中のイソシアネート基モル数に対する前記組成物(B)中のイソシアネート反応性基モル比(B/A)が0.8~1.2、好ましくは、0.9~1.1であることを特徴とする。
【0059】
また、本発明の繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物の好ましい実施態様において、B型粘度計で測定された10~50℃における前記組成物(A)と(B)の混合物である液状組成物の粘度が5~200mPa・sであることを特徴とする。すなわち、本発明の液状組成物の粘度は、前記組成物(A)と(B)を混合した時点で、10~50℃で5~200mPa・sが好ましく、目的とする中間基材の単位面積重量にもよるが、特に5~100mPa・sが好ましい。粘度が200mPa・sを越えると単位面積重量の大きい基材への含浸が悪くなり、未含浸部位ができてしまう虞がある。
【0060】
本発明の液状組成物は熟成により、ウレタン(メタ)アクリレートへと変化するが、重合性単量体(E)を除く、ウレタンアクリレートのエチレン性不飽和基当量は200~1000g/eqが好ましく、より好ましくは300~800g/eqとすることができる。200g/eq未満となると硬化物の機械物性のバランスが悪くなる虞があり、1000g/eqを越えると耐熱性の低下が起こる虞がある。
【0061】
本発明の液状組成物には、粘弾性の調整や機械物性の向上を目的に無機粒子やゴム粒子を配合してもよい。無機粒子としては、特に限定されないが炭酸カルシウム、アルミナ、タルク、酸化チタン、シリカ等が挙げられる。ゴム成分としては、特に限定されないが架橋ゴム粒子、ゴム成分が架橋ポリマーに包まれたコアシェルゴム粒子が挙げられる。これらの配合量は液状樹脂組成物の粘度にもよるが2~80重量%、好ましくは2~75重量%とすることができる。
【0062】
更に本発明の液状組成物には、FRPのさらなる機械強度、衝撃性向上のためにカーボンナノチューブを配合することができる。カーボンナノチューブは液状組成物の粘度、塗工性の観点から単層のカーボンナノチューブが好適で、その配合量はFRP中の単層カーボンナノチューブが0.05~0.5重量%となるようにするのが好ましい。。
【0063】
更に本発明の液状組成物には必要に応じて低収縮剤、内部離型剤、成分分散剤などを配合することができる。これらの配合物は、溶解性の観点から液状のものが好ましいが、熱を加えて組成物に溶解すれば固形でも良い。
【0064】
また、本発明の繊維強化プラスチック中間基材は、本発明の繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物を繊維材料に含浸してなることを特徴とする。
【0065】
本発明の中間基材に用いられる繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ザイロン繊維、ボロン繊維、バサルト繊維、セルロース等が挙げられるが、これらには限定されない。又、強化繊維含有率は10~90重量%、機械特性と成形性の面から、好ましくは30~80重量%が望ましい。強化繊維の表面処理剤については限定がない。また、織物としては上記で挙げた繊維を用いた一方向、クロス、NCF、不織布等が挙げられるが、これらには限定されない。又、繊維基材と繊維基材の間にコア材を挟み込むことも可能である。コア材の例としては、発泡不織布、ハニカムコアマットなどが挙げられる。
【0066】
また、本発明の繊維強化プラスチック中間基材の製造方法は、本発明の液状組成物を任意の組成で繊維材料に含浸させる工程と、前記含浸させて得られた繊維強化プラスチック中間基材を熟成させる工程と、を含むことを特徴とする。本発明において、特に限定されないが、例えば、10~60℃までの温度で前記液状組成物を任意の組成で繊維材料に含浸させることができる。樹脂が含浸した繊維材料はそのままロールに巻き取っても良いし、フィルムで挟み、ロール状、又は綴ら状にすることができる。その後同材料を熟成させ中間基材を得る。従来においては、合成したウレタンアクリレート樹脂を加熱したり、溶剤に希釈したりして、繊維や織物に含浸させ中間基材を作製していたが、驚くべきことに、本発明においては、繊維又は織物に含浸した液状組成物が熟成を経て、合成して得られるウレタンアクリレートと同様の樹脂を形成することを見出した。これにより、本発明においては、液状組成物と繊維とをより強固に結合させることが可能となり、後述する実施例により明らかなように、より良好な含浸性、硬化性、及び硬化物の機械物性等を発揮し得るという有利な効果を奏するものである。
【0067】
また、本発明の繊維強化プラスチック中間基材の製造方法の好ましい実施態様において、ウレタンアクリレート化の促進とラジカル重合反応抑制の観点から、前記熟成の温度は、25~80℃とすることができ、より好ましくは25~60℃とすることができ、さらに好ましくは30~45℃とすることができる。このように、液状組成物をフィルム上に塗工し、その塗工面に繊維又は織物をのせ更にフィルムで挟み、ローラーで圧力をかけ液状組成物を繊維又は織物に含浸させることができる。なお、塗工場所から塗布物が繊維又は織物に接触するまでは、塗布物が一定の幅を保つために防波堤状の冶具があるのが好ましい。もしくは、繊維又は織物に液状組成物を滴下又は噴霧し更にフィルムで挟み、ローラーで圧力をかけ液状組成物を繊維又は織物に含浸させることができる。これらの方法で含浸させたものをロール状、又は綴ら状にし、炉(例えば、25~60℃)にて熟成させて中間基材を得ることができる。
【0068】
また、本発明の繊維強化複合材料は、本発明の繊維強化プラスチック中間基材を硬化させてなることを特徴とする。また、本発明の繊維強化複合材料の好ましい実施態様において、硬化の温度は、70~150℃であることを特徴とする。
【0069】
ウレタンアクリレートが繊維上に形成された本発明の中間基材の硬化物は、熱と圧力を加えて加熱硬化させることにより得られることができる。すなわち、ラジカル重合による硬化を行うことが可能である。熱と圧力を加える成形方法としては、オートクレーブ成形、オーブン成形、シートワインディング成形、プレス成形等がある。液状組成物中の重合開始剤の種類にもよるが成形温度は、70~150℃、好ましくは80~130℃、より好ましくは80~100℃で、成形時間は3~60分であることが好ましく、圧力は0.05~10MPaが好ましい。
【0070】
また、本発明の繊維強化複合材料の好ましい実態において、本発明の繊維強化複合材料の用途は、船舶、航空機、宇宙航空、風車翼、建造物から選択される構造部材、医療用部材、スポーツ用部材、電気電子半導体用部材から選択される成形物であることを特徴とする。
【実施例0071】
以下、実施例により本発明の一実施態様についてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。特に断りのない限り「部」は「質量部」を「%」は「質量%」を意味する。
【0072】
〔液状組成物の調製〕
今回の例において使用した液状組成物の各成分の略号を表1に示した。実施例E1~7および比較例C-1~4において、表1に示した化合物を使用した。
【0073】
【表1】
【0074】
<比較例に用いる樹脂の合成および調整>
ウレタンアクリレートの合成
温度計、撹拌機、気体導入管、及び還流冷却器を備えた5つ口フラスコに、IPDI( エボニック社製)516.8部、1、3―PDО(デュポン社製)を94.9部、2-HEMA(三菱ガス化学社製)248.6 部、DEGDMA(新中村化学社製、NKエステル2G) 139.9部、THQ0.1部、及びBHT0.4部、DBTDL0.2部を仕込み、乾燥空気流下(0.2L/min)、温度108~112 ℃ で反応させた。反応は、IRにて追跡し、イソシアネート基の吸収(2270cm-1付近)が一定になったところを終点とした。反応には3時間を要した。(液状組成物中のイソシアネート基モル数に対するイソシアネート反応基モル数の割合は1.0、ウレタン(メタ)アクリレートの理論エチレン性不飽和基当量は450g/eq、粘度は80℃ で約6P a・s)。
【0075】
ウレタンアクリレートの調整(C―2)
上記ウレタンメタクリレートを983.3部,PR-CBZ 04(日本ユピカ社製専用促進剤)2.0部、P―E9.9部を80℃で調製し、均一溶液になるまで撹拌し、樹脂組成物(C-2) を得た。P―EをP-HОに変更したものは、調整の途中で硬化が始まり組成液が得られなかったため断念した。
【0076】
エポキシ組成物の調製(C―3)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂ブレンド品(ジャパンエポキシレジン製エピコート#
1001/828=50/50)917.4部にジシアンジアミド45.9部、尿素誘導体36.7部を配合し、均一溶液になるまで撹拌し、樹脂組成物(C-3)を得た。
【0077】
<液状組成物評価>
実施例に用いる液状組成物E―1~5と比較例に用いる液状組成物 C-1を表2に示す配合で常温常圧下、均一溶液になるまで撹拌し、各液状組成物を得た。さらに上記に示す方法で調整した比較例に用いる樹脂C―2~3を用いた。
【0078】
<繊維への含浸性評価>
液状組成物および樹脂の含浸性評価を目的として、表2で示した実施例に用いる液状組成物E-1~6および比較例に用いる液状組成物C―1~3を、10cm角の炭素繊維(TОRAYCA CО6343) 1枚に常温で繊維状にスポイトで5滴滴下し、常圧で裏面まで含浸する時間を測定した。試験結果を表2に示した。
【0079】
(含浸性評価判定判定方法)
○ 10秒以下
△ 30秒以下
× 30秒以上
【0080】
表2は、組成液配合および含浸性試験結果を示す。
【0081】
【表2】
【0082】
なお、表2中、「←」の表示は、左側の値と同じことを意味する。(以下の表においても同様。)
【0083】
<中間材料の作製、成形および評価>
C-SMC作製
ポリエチレン製フィルム(DIC製DIFAREN)の上に30cm×30cmの型枠を置き、25mmに切断した炭素繊維(三菱ケミカル社製 炭素繊維トウPYROFIL TR50S12L:フィラメント数12000本)143.1gをランダムに分散した。前記調製した液状組成物E―1~5およびC―1をそれぞれ126.9g均一に回しかけ、ポリエチレン製保護フィルムで挟み、駆動式脱泡ロール(東海精機(株)社製)にて脱泡した。その後、40℃のオーブンで7日間熟成させC-SMC(E―1~5 S、C-1 S)を得た。
【0084】
C-2および3に関しては、常温での含浸が不可能であったため、先にホットメルト法でトウプリプレグを作製した後、作製したトウプリプレグを長さ25mmにカットして均一に分散させ、C-SMC(C―2 SおよびC-3 S)を得た。
【0085】
C-SMC評価
前記作製したC-SMCを成形し、含浸状態及び力学物性を評価した。結果を表3に示した。含浸状態評価は、得られた成形体をダイヤモンドカッターにて切削し、小口面(10cm×2mm)を拡大鏡(150倍)で観察し、ボイド数を数えた。曲げ特性はASTM D 790、層間せん断特性はJIS K 7078に準拠した。
【0086】
【表3】
【0087】
プリプレグ作製
ポリエチレン製フィルムに3K綾織炭素繊維(三菱ケミカル社製TR3523MS)50cm×100cmを置き、前記調製した液状組成物E―1~5およびC―1をそれぞれ161.5g均一に回しかけ、ポリエチレン製保護フィルム(DIC製DIFAREN)で挟み、駆動式脱泡ロール(東海精機(株)社製)にて脱泡した。その後40℃のオーブンで7日間熟成させプリプレグ(E―1~5 PおよびC-1 P)を得た。C-2および3に関しては、上記常温での含浸が不可能であったためホットメルト法で(C―2 PおよびC-3 P)を得た。
【0088】
プリプレグ評価
前記作製したプリプレグを成形し、含浸状態及び力学物性を評価した。結果を表4に示した。含浸状態評価は、得られた成形体をダイヤモンドカッターにて切削し、小口面(10cm×2mm)を拡大鏡(150倍)で観察し、ボイド数を数えた。曲げ特性はJIS K 7074、層間せん断特性はJIS K 7078に準拠した。
【0089】
【表4】
【0090】
オーブン成形評価
E―6,7と比較例C-4を表5に示す配合で常温常圧下、均一溶液になるまで撹拌し、各液状組成液を得た。ポリエチレン製フィルム(DIC製DIFAREN)の上に30cm×30cmの型枠を置き、25mmに切断した炭素繊維(三菱ケミカル社製 炭素繊維トウPYROFIL TR50S12L:フィラメント数12000本)143.1gをランダムに分散した。前記調製した液状組成物E―6,7およびC―4をそれぞれ126.9g均一に回しかけ、ポリエチレン製保護フィルムで挟み、駆動式脱泡ロール(東海精機(株)社製)にて脱泡した。その後、40℃のオーブンで7日間熟成させC-SMC(E―6,7 S、C-4 S)を得た。得られたC―SMC(E―6,7 S、C-4 S)を減圧(0.1MPa)下、各条件でオーブンにて硬化させ、各成形体を得た。
【0091】
力学物性評価
得られた成形体に関し、含浸状態及び及び力学特性として曲げ特性と層間せん断特性を測定した。含浸状態評価は、得られた成形体をダイヤモンドカッターにて切削し、小口面(10cm×2mm)を拡大鏡(150倍)で観察し、ボイド数を数えた。曲げ特性はASTM D 790、層間せん断特性はJIS K 7078に準拠した。結果を表6に示した。
【0092】
【表5】
【0093】
【表6】
【0094】
<評価結果>
表2から表6より、本発明の液状組成物繊維材料への含浸性に優れる液状組成物を提供すること、低温低圧で成形可能でかつ複合材料としたときの力学特性に優れる中間材料を提供することが示された。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明のラジカル重合性樹脂組成物及び中間材料は、軽量で高強度であるため、輸送機器や産業資材、土木補強材、スポーツ用具など、応用範囲はこれらに限られるものではなく、多岐に渡り使用できる。