IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 学校法人五島育英会の特許一覧 ▶ 東急建設株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-飛行体 図1
  • 特開-飛行体 図2
  • 特開-飛行体 図3
  • 特開-飛行体 図4
  • 特開-飛行体 図5
  • 特開-飛行体 図6
  • 特開-飛行体 図7
  • 特開-飛行体 図8
  • 特開-飛行体 図9
  • 特開-飛行体 図10
  • 特開-飛行体 図11
  • 特開-飛行体 図12
  • 特開-飛行体 図13
  • 特開-飛行体 図14
  • 特開-飛行体 図15
  • 特開-飛行体 図16
  • 特開-飛行体 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023104576
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】飛行体
(51)【国際特許分類】
   B64C 11/00 20060101AFI20230721BHJP
【FI】
B64C11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022005647
(22)【出願日】2022-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】592254526
【氏名又は名称】学校法人五島育英会
(71)【出願人】
【識別番号】303056368
【氏名又は名称】東急建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西部 光一
(57)【要約】
【課題】急激な推力の上昇を抑えることができる回転翼を備えた飛行体を提供する。
【解決手段】飛行体(小型無人航空機1)は、1以上の回転翼7を備えている。回転翼7は、回転翼7の回転軸11に取り付けられ、回転軸11の回転と共に回転するハブ13と、ハブ13を取り囲み、回転軸11を中心とし、ハブと同心の環状体15と、ハブ13と環状体15を連結する連結部17と、回転軸11と直交する方向に環状体15の周壁部から延びる複数のブレード19とを備えており、ハブ13と環状体15の間に、貫通孔である圧力回復孔21が形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の回転翼を備えた飛行体であって、
前記回転翼は、
前記回転翼の回転軸に取り付けられ、前記回転軸の回転と共に回転するハブと、
前記ハブを取り囲み、前記回転軸を中心とし、前記ハブと同心の環状体と、
前記ハブと前記環状体を連結する連結部と、
前記回転軸と直交する方向に前記環状体の周壁部から延びる複数のブレードとを備えており、
前記ハブと前記環状体の間に、貫通孔である圧力回復孔が形成されている
ことを特徴とする飛行体。
【請求項2】
請求項1に記載された飛行体において、
前記環状体は、円環状であり、
前記複数のブレードの全ての先端部を通る円の直径寸法をDとした場合、前記環状体の径寸法は、0.2D以上0.6D以下である、
ことを特徴とする飛行体。
【請求項3】
請求項2に記載された飛行体において、
前記環状体の径寸法は、0.5D以上0.6D以下である、
ことを特徴とする飛行体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行体に関する。
【背景技術】
【0002】
構造物の検査に、無人小型飛行体(ドローン)が使用されるようになってきた。ドローンは、備えている回転翼(プロペラ)の回転を制御して、上昇・下降、進行方向の制御を行うものである。回転翼が回転すると、揚力が発生し、飛行体に推力が生じる。「推力」は、回転翼による揚力から抗力(回転翼表面と流体である空気の間で生じる摩擦による力)を引いたものである。飛行体が飛行する際は、回転翼の上側が入口、下側が出口となる下方向の空気流が生じている。
【0003】
飛行体の回転翼が上壁に接近すると、回転翼による推力が急激に増加することが知られている。この現象は、「天井効果(Ceiling Effect)」と呼ばれている。「天井効果」は、飛行体の回転翼が上壁に接近し、回転翼軸方向と直角に近い角度で空気流が回転翼に引き込まれることで、回転翼軸方向速度成分(誘導速度)が低下することによって、(i)回転翼に対する迎角が大きくなり揚力が上昇すると共にトルクが減少し、回転翼下方向成分の抗力が減少すること、また、(ii)上壁と回転翼間(負圧面側)と回転翼下流(静圧面側)に圧力差が生じることが原因と考えられている(例えば、非特許文献1、2及び3)。推力が急激に増加すると、回転翼が上壁に衝突するおそれがある。
【0004】
そこで、従来は、特許文献1のように、上壁に回転翼が衝突しないようにするため、飛行体であるドローンにフレーム構造体を備えているものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-39334号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】T. Nishio et al., "Stable Control in Climbing and Descending Flight under Upper Walls using Ceiling Effect Model based on Aerodynamics," 2020 IEEE International Conference on Robotics and Automation (ICRA), 2020, pp. 172-178, doi: 10.1109/ICRA40945.2020.9197137.
【非特許文献2】Y. H. Hsiao and P. Chirarattananon, "Ceiling Effects for Surface Locomotion of Small Rotorcraft," 2018 IEEE/RSJ International Conference on Intelligent Robots and Systems (IROS), 2018, pp. 6214-6219, doi: 10.1109/IROS.2018.8593726.
【非特許文献3】Yasutada Tanabe, Masahiko Sugiura, Takashi Aoyama, Hideaki Sugawara, Shigeru Sunada, Koichi Yonezawa, and Hiroshi Tokutake, “Multiple Rotors Hovering Near an Upper or a Side Wall,” J. Robot. Mechatron., Vol.30, No.3, pp. 344-353, 2018, DOI: 10.20965/jrm.2018.p0344
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の例では、飛行体がフレーム構造体を備えるため、部品点数が増加し、また、飛行体全体の重量が増加してしまう、という課題が存在する。
【0008】
本発明の目的は、急激な推力の上昇を抑えることができる回転翼を備えた飛行体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本開示の飛行体は、1以上の回転翼を備えた飛行体であって、前記回転翼は、前記回転翼の回転軸に取り付けられ、前記回転軸の回転と共に回転するハブと、前記ハブを取り囲み、前記回転軸を中心とし、前記ハブと同心の環状体と、前記ハブと前記環状体を連結する連結部と、前記回転軸と直交する方向に前記環状体の周壁部から延びる複数のブレードとを備えており、前記ハブと前記環状体の間に、貫通孔である圧力回復孔が形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
回転翼が上壁に接近すると、上壁と回転翼間(負圧面側)と回転翼下流(静圧面側)に圧力差が生じるが、本開示の飛行体の場合、圧力回復孔により、上壁と回転翼間(負圧面側)に空気が供給され、圧力差が軽減される。その結果、従来の回転翼の場合に比べて、急激な推力の上昇を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】飛行体の一例である小型無人航空機(ドローン)の斜視図である。
図2】回転翼の平面図である。
図3】ハブの直径が0.1Dの圧力回復孔を有さない回転翼(従来翼)の平面図である。
図4】効果確認実験用の実験装置(単独翼)の概念図である。
図5】単独翼の場合の回転翼の上面から上壁面までの高さ寸法g[mm]と推力[N]の関係を表したグラフであり、従来翼と環状体の直径寸法xが0.2Dの場合の回転翼の比較図である。
図6】単独翼の場合の回転翼の上面から上壁面までの高さ寸法g[mm]と推力[N]の関係を表したグラフであり、従来翼と環状体の直径寸法xが0.5Dの場合の回転翼の比較図である。
図7】単独翼の場合の回転翼の上面から上壁面までの高さ寸法g[mm]と推力[N]の関係を表したグラフであり、従来翼と環状体の直径寸法xが0.6Dの場合の回転翼の比較図である。
図8】単独翼の場合の回転翼の上面から上壁面までの高さ寸法g[mm]と推力[N]の関係を表したグラフであり、従来翼と環状体の直径寸法xが0.7Dの場合の回転翼の比較図である。
図9】単独翼の場合の従来翼及び回転翼の環状体の直径寸法x[mm]を0.2D~0.7Dに変化させた際の推力変化率αを表したグラフである。
図10】上壁による天井効果の影響を無視できる無限遠に回転翼が位置している時の推力を一致させた場合の回転翼の上面から上壁面までの高さ寸法g[mm]と推力[N]の関係を表したグラフである。
図11】効果確認実験用の実験装置(4枚翼)の概念図である。
図12】4枚翼の場合の回転翼の上面から上壁面までの高さ寸法g[mm]と推力[N]の関係を表したグラフであり、従来翼と環状体の直径寸法xが0.2Dの場合の回転翼の比較図である。
図13】4枚翼の場合の回転翼の上面から上壁面までの高さ寸法g[mm]と推力[N]の関係を表したグラフであり、従来翼と環状体の直径寸法xが0.5Dの場合の回転翼の比較図である。
図14】4枚翼の場合の回転翼の上面から上壁面までの高さ寸法g[mm]と推力[N]の関係を表したグラフであり、従来翼と環状体の直径寸法xが0.6Dの場合の回転翼の比較図である。
図15】4枚翼の場合の回転翼の上面から上壁面までの高さ寸法g[mm]と推力[N]の関係を表したグラフであり、従来翼と環状体の直径寸法xが0.7Dの場合の回転翼の比較図である。
図16】4枚翼の場合の従来翼及び回転翼の環状体の直径寸法x[mm]を0.2D~0.7Dに変化させた際の推力変化率αを表したグラフである。
図17】上壁による天井効果の影響を無視できる無限遠に回転翼が位置している時の推力を一致させた場合の回転翼の上面から上壁面までの高さ寸法g[mm]と推力[N]の関係を表したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の飛行体の実施の形態を詳細に説明する。
【0013】
図1は、飛行体の一例である小型無人航空機(ドローン)の斜視図である。
【0014】
小型無人航空機1は、本体部3と、4本のアーム部5A乃至5Dと、4つの回転翼7A乃至7Dを備えている、いわゆるクワッドローター型ドローンである。
【0015】
本体部3は、バッテリ(図示せず)や、回転翼7A乃至7Dの回転を制御する制御部(図示せず)が内蔵されているほか、用途によって、各種センサやカメラ等を内蔵・搭載することができる。
【0016】
4本のアーム部5A乃至5Dは、本体部3から放射状に延びており、それぞれの先端部に、バッテリと電気的に接続され、回転翼を回転させるモータ9A乃至9Dが取り付けられている。回転翼7A乃至7Dは、各モータ9A乃至9Dの回転軸11A乃至11Dに固定されている。以下では、特に区別して述べない限り、アーム部5A乃至5Dは、「アーム部5」と、モータ9A乃至9Dは、「モータ9」と、回転軸11A乃至11Dは、「回転軸11」と称する。
【0017】
4つの回転翼7A乃至7Dは、プロペラやロータとも呼ばれるものである。本体部3を挟んで対角線上に並ぶ回転翼7Aと回転翼7Cは同一形状・同一寸法であり、回転翼7Bと回転翼7Dは、回転翼7Aと回転翼7Cとブレードの角度が左右反対のものとなっている。そして、回転翼7Aと回転翼7Cが同じ方向に回転し、回転翼7Bと回転翼7Dが回転翼7Aと回転翼7Cの反対方向に回転することで飛行することができるようになっている。以下では、特に区別して述べない限り、回転翼7A乃至7Dは、「回転翼7」と称する。
【0018】
本実施の形態では、平面視で、隣り合う回転翼7の回転軸(例えば、回転軸11Aと回転軸11B)間の距離寸法は178mmであり、本体部3を挟んで対角線上に並ぶ回転翼7の回転軸(例えば、回転軸11Aと回転軸11C)間の距離寸法は252mmに設定してある。
【0019】
図2は、回転翼7の平面図である。図2に示すように、回転翼7は、ハブ13と、環状体15と、連結部17と、ブレード19と、圧力回復孔21とを備えている。
【0020】
ハブ13は、回転翼7の回転軸であるモータ9の回転軸11に取り付けられ、回転軸11の回転と共に回転する部分である。
【0021】
環状体15は、ハブ13を取り囲み、回転軸11を中心とし、ハブ13と同心の円環状の部材である。本実施の形態では、環状体15の厚み寸法(外周面と内周面の間の厚み寸法)は、3[mm]であり、高さ寸法は、7[mm]である。
【0022】
ハブ13と環状体15は、連結部17によって連結されている。本実施の形態では、連結部17はハブ13から環状体15に延びる第1の連結部17a及び第2の連結部17bによって構成されている。第1の連結部17a及び第2の連結部17bは、ハブ13を中心にして、直線状に並ぶように配置されている。本実施の形態では、連結部17の厚み寸法(第1の圧力回復孔21aと第2の圧力回復孔21bの間の厚み寸法)は、3[mm]であり、高さ寸法は、7[mm]である。
【0023】
ブレード19は、回転軸11と直交する方向に環状体15の周壁部15aから延びており、本実施の形態では、第1の連結部17aの延長線上に第1のブレード19aが延び、第2の連結部17bの延長線上に第2のブレード19bが延びている。
【0024】
圧力回復孔21は、ハブ13と環状体15の間に形成された貫通孔である。本実施の形態では、より具体的には、圧力回復孔21は、ハブ13、環状体15の内周面15b、第1の連結部17a及び第2の連結部17bに囲まれた第1の圧力回復孔21a及び第2の圧力回復孔21bである。圧力回復孔21の存在により回転翼7が上壁に近づいた場合に、上壁と回転翼間に空気が供給され、圧力差が軽減されることで、急激な推力の上昇を抑えることができる。
【0025】
図2に示すように、第1のブレード19a及び第2のブレード19bの先端部を通る円の直径寸法をD[mm](127[mm])とし、環状体15(環状体15の周壁部15a)の直径寸法をxとしている。本実施の形態では、後述のように、Dを固定値とし、環状体15の直径寸法x[mm]をDに対して変化させて(x=0.2D~0.7D)、圧力回復孔21の大きさを変化させ、急激な推力の上昇を抑える効果を確認している。
【0026】
<効果確認実験>
圧力回復孔21による急激な推力の上昇を抑える効果の確認のため、図3に示す、ハブの直径が0.1Dの圧力回復孔を有さない回転翼(以下、「従来翼」)を比較対象として、図4及び図11に示す装置による効果確認実験を実施した。
【0027】
図4及び図11に示した実験装置EDは、小型無人航空機1を模した模擬装置SMと、ロードセルLCと、支持台SSを備えている。図4に示した実験装置は、回転翼が1つの場合(以下、「単独翼」)の推力を測定するものであり、図11に示した実験装置は、小型無人航空機1と同様、回転翼が4つの場合(以下、「4枚翼」)の推力を測定するものである。単独翼は、回転翼を1つ備えたシングルローター型ドローンを想定したものであり、4枚翼は、回転翼を4つ備えたクワッドローター型ドローンを想定したものである。
【0028】
模擬装置SMは、小型無人航空機1を模したものであるため、以下では、小型無人航空機1に付した符号と同じ符号を模擬装置SMに付して、各部材の説明は省略する。なお、模擬装置SMでは、本体部3内にモータ9が内蔵されており、アーム部5を介してモータ9の回転力がアーム部5の先端部に設けられた回転軸11に伝達され、回転翼7が回転するようになっている点が小型無人航空機1と異なる。
【0029】
模擬装置SMに取り付ける回転翼7は、環状体15の直径寸法x[mm]がx=0.2D~0.7Dのもの(以下、回転翼を区別するため、回転翼を直径寸法xの値で示すことがある)と従来翼を準備した。
【0030】
ロードセルLCは、力検出センサであり、本例では、支持台SSに固定され、模擬装置SMが鉛直方向に引っ張る力を「推力」として検出するものである。本実験においては、「推力」とは、回転翼による揚力の鉛直成分から抗力(回転翼表面と流体である空気の間で生じる摩擦による力)の鉛直成分を引いたものである。
【0031】
実験装置EDは、上方に上壁がある実験室内に設置した。実験室の床面から上壁面までの高さ寸法は、976[mm]である。地面から回転翼7の上面までの高さ寸法をh[mm]、回転翼7の上面から上壁面までの高さ寸法をg[mm]として、gを上壁による天井効果の影響を無視できる無限遠から3[mm]まで変化させた場合の推力を測定した。
【0032】
[単独翼の場合]
モータの回転数を4000rpmに統一し、図4に示す実験装置EDを用いて、実験を行った。実験は5回以上行い、その結果をエラーバーにより表示してあり、プロットした点は、その平均値である。
【0033】
図5乃至図8は、単独翼の場合の回転翼の上面から上壁面までの高さ寸法g[mm]と推力[N]の関係を表したグラフである。横軸にg/D、縦軸に推力[N]を示している。図5は、従来翼と環状体15の直径寸法xが0.2Dの場合の回転翼の比較図であり、図6は、従来翼と環状体15の直径寸法xが0.5Dの場合の回転翼の比較図であり、図7は、従来翼と環状体15の直径寸法xが0.6Dの場合の回転翼の比較図であり、図8は、従来翼と環状体15の直径寸法xが0.7Dの場合の回転翼の比較図である。
【0034】
表1は、図5乃至図8に示した結果から、Tmax(上壁に回転翼が最接近した時(g=3[mm])の推力[N])及びT(上壁による天井効果の影響を無視できる無限遠に回転翼が位置している時の推力[N])をまとめたものである。
【0035】
【表1】
また、図9は、単独翼の場合の従来翼及び回転翼7の環状体15の直径寸法x[mm]を0.2D~0.7Dに変化させた際の推力変化率αを表したグラフである。横軸にx/D、縦軸に推力変化率αを示している。
【0036】
「推力変化率α」とは、次式により算出されるものである;
推力変化率α=Tmax/T
ただし、Tmaxは、上壁に回転翼が最接近した時(g=3[mm])の推力[N]であり、Tは、上壁による天井効果の影響を無視できる無限遠に回転翼が位置している時の推力[N]である。
【0037】
この実験により、次のことが判明した。
(1)いずれの回転翼でも、g/D=0.1(g=約12[mm])付近で推力上昇が顕著になる。
(2)環状体15の直径寸法xが0.2D~0.7Dの回転翼の全範囲にて推力上昇を抑える効果が確認できた。
(3)環状体15の直径寸法xが0.6D~0.7Dの回転翼の場合に、推力上昇を抑える効果が大きくなる。
(4)推力上昇を抑える効果と推力変化率αとの関係から、無限遠から天井に接近させる、という飛行時の制御のしやすさを考慮すると、単独翼の場合には、環状体15の直径寸法xが0.5D以上0.6D以下の回転翼が適当な形状であると考えられる。
【0038】
なお、本実施の形態では、環状体15の直径寸法xが大きくなると、ブレード19の長さ寸法が短くなるため、図5乃至図8からも明らかなように、環状体15の直径寸法xが大きくなると、モータの回転数を一致させると得られる推力が小さくなる傾向が表れる。そこで、参考として、図10に、上壁による天井効果の影響を無視できる無限遠に回転翼が位置している時の推力を一致させた場合の回転翼の上面から上壁面までの高さ寸法g[mm]と推力[N]の関係を表したグラフを示す。図10は、従来翼と環状体15の直径寸法xが0.6Dの場合の回転翼の比較である。従来翼が4000rpmの時に得られる推力(T=0.13[N])を得るには、環状体15の直径寸法xが0.6Dの場合の回転翼の場合は4500rpm必要であったため、同程度の推力を得るには消費電力が増加することが予想されるが、その場合でも、推力上昇を抑える効果が得られることがわかる。
【0039】
[4枚翼の場合]
モータの回転数を4000rpmに統一し、図11に示す実験装置EDを用いて、実験を行った。実験は5回以上行い、その結果をエラーバーにより表示してあり、プロットした点は、その平均値である。
【0040】
図12乃至図15は、4枚翼の場合の回転翼の上面から上壁面までの高さ寸法g[mm]と推力[N]の関係を表したグラフである。横軸にg/D、縦軸に推力[N]を示している。図12は、従来翼と環状体15の直径寸法xが0.2Dの場合の回転翼の比較図であり、図13は、従来翼と環状体15の直径寸法xが0.5Dの場合の回転翼の比較図であり、図14は、従来翼と環状体15の直径寸法xが0.6Dの場合の回転翼の比較図であり、図15は、従来翼と環状体15の直径寸法xが0.7Dの場合の回転翼の比較図である。
【0041】
表2は、図12乃至図15に示した結果から、Tmax(上壁に回転翼が最接近した時(g=3[mm])の推力[N])及びT(上壁による天井効果の影響を無視できる無限遠に回転翼が位置している時の推力[N])をまとめたものである。
【0042】
【表2】
また、図16は、4枚翼の場合の従来翼及び回転翼7の環状体15の直径寸法x[mm]を0.2D~0.7Dに変化させた際の推力変化率αを表したグラフである。横軸にx/D、縦軸に推力変化率αを示している。
【0043】
この実験により、次のことが判明した。
(1)いずれの回転翼でも、g/D=0.1(g=約12[mm])付近で推力上昇が顕著になる。
(2)環状体15の直径寸法xが0.2D~0.7Dの回転翼の全範囲にて推力上昇を抑える効果が確認できた。
(3)環状体15の直径寸法xが0.5D~0.7Dの回転翼の場合に、推力上昇を抑える効果が大きくなる。単独翼の場合と異なる結果となったのは、4枚翼による空気の流れが相互に影響しているものと考えられる。
(4)推力上昇を抑える効果と推力変化率αとの関係から、無限遠から天井に接近させる、という飛行時の制御のしやすさを考慮すると、4枚翼の場合にも、環状体15の直径寸法xが0.5D以上0.6D以下の回転翼が適当な形状であると考えられる。
【0044】
単独翼の場合と同様、参考として、図17に、上壁による天井効果の影響を無視できる無限遠に回転翼が位置している時の推力を一致させた場合の回転翼の上面から上壁面までの高さ寸法g[mm]と推力[N]の関係を表したグラフを示す。図17は、従来翼と環状体15の直径寸法xが0.5Dの場合の回転翼の比較である。従来翼が4000rpmの時に得られる推力(T=0.48[N])を得るには、環状体15の直径寸法xが0.5Dの場合の回転翼の場合は4160rpm必要であったため、同程度の推力を得るには消費電力が増加することが予想されるが、その場合でも、推力上昇を抑える効果が得られることがわかる。
【0045】
以上、本発明の実施の形態について具体的に説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で変更が可能であるのは勿論である。
【0046】
例えば、回転翼の形状や寸法は、上記したものに限るものではないのはもちろんである。環状体の形状も円環状に限られるものではなく、多角形状でもよい。また、ブレードの枚数も2枚に限られるものではなく、環状体の周方向に等間隔にブレードを3枚以上配置して、推力を上げてもよい。また、連結部の本数も2本に限られるものではなく、環状体の周方向に等間隔に連結部を3本以上配置して、強度を上げてもよい。この場合は、連結部が増えて圧力回復孔の面積が小さくなり、それに伴って推力上昇を抑える効果が減少すると考えられるため、強度と推力上昇を抑える効果とのバランスをとった設計を行うのが望ましい。なお、回転翼は環状体を有しているため、ブレードの枚数と連結部の本数を一致させる必要はない。例えば、連結部の本数を2本のまま、ブレードの枚数を3枚以上にすることもできるし、ブレードの枚数を2枚のまま、連結部の本数を3本以上にすることもできる。
【符号の説明】
【0047】
1 小型無人航空機(飛行体)
3 本体部
5(5A乃至5D) アーム部
7(7A乃至7D) 回転翼
9(9A乃至9D) モータ
11(11A乃至11D) 回転軸
13 ハブ
15 環状体
17(17a及び17b) 連結部
19(19a及び19b) ブレード
21(21a及び21b) 圧力回復孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17