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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023104583
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】モータ制御装置及びモータ制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 6/15 20160101AFI20230721BHJP
   H02P 6/16 20160101ALI20230721BHJP
【FI】
H02P6/15
H02P6/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022005670
(22)【出願日】2022-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】池田 健
【テーマコード(参考)】
5H560
【Fターム(参考)】
5H560BB04
5H560BB08
5H560BB12
5H560DA02
5H560EB01
5H560GG04
5H560JJ15
5H560RR01
5H560SS02
5H560TT02
5H560TT15
5H560UA05
5H560XA12
(57)【要約】
【課題】モータの振動や異音の発生を抑制する。
【解決手段】モータ制御装置は、スイッチング素子と、ロータの回転位置検出センサと、駆動信号を出力する制御部とを備え、制御部は、ゲート制御電圧出力部と、カウンタ値取得部と、切り替え制御部とを有し、補正係数は、最小のカウンタ値である第1ホールステージを構成する第1基準ホールエッジがある相に対応する位置検出信号を第1基準位置検出信号とし、中間値である第2ホールステージを構成する第2基準ホールエッジがある相に対応する位置検出信号を第2基準位置検出信号とし、カウンタ値の平均値と、第1基準位置検出信号を基準とした場合の第1検出誤差と、第2基準位置検出信号を基準とした場合の第2検出誤差とについて、第1検出誤差と、第2検出誤差とが、負の値を含む否かに基づいて、第1検出誤差と第2検出誤差とのいずれか一方から算出された補正係数が選択されて設定されたものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラシレスモータの3相のコイルに通電制御を行って、ロータの回転制御を行うモータ制御装置において、
前記コイルに流す電流を切り替え可能に配置された複数のスイッチング素子と、
前記コイルのそれぞれに対応して設けられ、前記ロータの回転位置を検出する複数のセンサと、
前記複数のセンサの出力である位置検出信号に基づいて前記スイッチング素子を切り替える駆動信号を出力する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記複数のセンサの出力である位置検出信号の電位の組合せで表される6個のホールステージのそれぞれを構成する補正されたホールエッジに基づいて前記スイッチング素子を切り替える駆動信号を出力するゲート制御電圧出力部と、
前記ホールステージのそれぞれを構成する2個のホールエッジの間の時間で表される前記ホールステージの時間であるカウンタ値を、前記位置検出信号から取得するカウンタ値取得部と、
前回のホールステージのそれぞれのカウンタ値と、予め設定された補正係数とを演算した値を、今回のホールエッジのそれぞれの遅延時間として、前記遅延時間で補正されたホールエッジのそれぞれに基づいて、前記ゲート制御電圧出力部に前記駆動信号を出力させる切り替え制御部と、
を有し、
前記補正係数は、
前記カウンタ値取得部が取得した6個のホールステージのカウンタ値のうちの最小のカウンタ値である第1ホールステージを構成する2つのホールエッジのうち、前記ブラシレスモータの回転方向にホールエッジを広げることでカウンタ値が小さくなるホールエッジを第1基準ホールエッジとし、前記第1基準ホールエッジがある相に対応する前記位置検出信号を第1基準位置検出信号とし、
前記カウンタ値取得部が取得した6個のホールステージのカウンタ値のうちの最大のカウンタ値と前記最小のカウンタ値との中間値である第2ホールステージを構成する2つのホールエッジのうち、前記ブラシレスモータの回転方向にホールエッジを広げることでカウンタ値が小さくなるホールエッジを第2基準ホールエッジとし、前記第2基準ホールエッジがある相に対応する前記位置検出信号を第2基準位置検出信号とし、
前記ブラシレスモータの回転方向に連続する3個のホールステージ分のカウンタ値の平均値と、前記ホールステージそれぞれのカウンタ値との差分である検出誤差のうち、前記第1基準位置検出信号を基準とした場合の第1検出誤差と、前記第2基準位置検出信号を基準とした場合の第2検出誤差とについて、
前記第1検出誤差と、前記第2検出誤差とが、負の値を含む否かに基づいて、前記第1検出誤差と前記第2検出誤差とのいずれか一方から算出された補正係数が選択されて設定されたものである
モータ制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記位置検出信号の中から前記第1基準位置検出信号及び前記第2基準位置検出信号を選択する基準相選択部と、
前記平均値を算出する平均値算出部と、
前記第1検出誤差及び前記第2検出誤差を算出する検出誤差算出部と、
前記第1検出誤差を前記平均値で除算した第1補正係数及び前記第2検出誤差を前記平均値で除算した第2補正係数を算出する補正係数算出部と、
算出された前記第1検出誤差及び前記第2検出誤差が負の値を含む否かに基づいて、前記第1補正係数と前記第2補正係数とのいずれか一方を、前記ホールステージそれぞれの前記補正係数として記憶させる記憶制御部と、
を有する請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記記憶制御部は、
算出された前記第1検出誤差と前記第2検出誤差とのうち一方が負の値を含まない場合には、前記第1検出誤差と前記第2検出誤差とのうち負の値を含まない方から算出された前記補正係数を記憶させる請求項2に記載のモータ制御装置。
【請求項4】
前記記憶制御部は、
算出された前記第1検出誤差と前記第2検出誤差とがいずれも負の値を含む場合には、前記第1検出誤差と前記第2検出誤差とのうち負の値の絶対値が小さい方から算出された前記補正係数を記憶させる請求項2又は請求項3に記載のモータ制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記モータ制御装置の出荷前に算出された前記補正係数を記憶しておく記憶部を有する請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のモータ制御装置。
【請求項6】
ブラシレスモータの3相のコイルに通電制御を行って、ロータの回転制御を行うモータ制御装置において、
前記コイルに流す電流を切り替え可能に配置された複数のスイッチング素子と、
前記コイルのそれぞれに対応して設けられ、前記ロータの回転位置を検出する複数のセンサと、
前記複数のセンサの出力である位置検出信号に基づいて前記スイッチング素子を切り替える駆動信号を出力する制御部と、を備え、
前記制御部は、ゲート制御電圧出力部と、カウンタ値取得部と、切り替え制御部とを有するモータ制御方法であって、
前記ゲート制御電圧出力部が、前記複数のセンサの出力である位置検出信号の電位の組合せで表される6個のホールステージのそれぞれを構成する補正されたホールエッジに基づいて前記スイッチング素子を切り替える駆動信号を出力するゲート制御電圧出力工程と、
前記カウンタ値取得部が、前記ホールステージのそれぞれを構成する2個のホールエッジの間の時間で表される前記ホールステージの時間であるカウンタ値を、前記位置検出信号から取得するカウンタ値取得工程と、
前記切り替え制御部が、前回のホールステージのそれぞれのカウンタ値に、予め設定された補正係数を乗じた値を、今回のホールエッジのそれぞれの遅延時間として、前記遅延時間で補正されたホールエッジのそれぞれに基づいて、前記ゲート制御電圧出力部に前記駆動信号を出力させる切り替え制御工程と、
を有し、
前記補正係数は、
前記カウンタ値取得部が取得した6個のホールステージのカウンタ値のうちの最小のカウンタ値である第1ホールステージを構成する2つのホールエッジのうち、前記ブラシレスモータの回転方向にホールエッジを広げることでカウンタ値が小さくなるホールエッジを第1基準ホールエッジとし、前記第1基準ホールエッジがある相に対応する前記位置検出信号を第1基準位置検出信号とし、
前記カウンタ値取得部が取得した6個のホールステージのカウンタ値のうちの最大のカウンタ値と前記最小のカウンタ値との中間値である第2ホールステージを構成する2つのホールエッジのうち、前記ブラシレスモータの回転方向にホールエッジを広げることでカウンタ値が小さくなるホールエッジを第2基準ホールエッジとし、前記第2基準ホールエッジがある相に対応する前記位置検出信号を第2基準位置検出信号とし、
前記ブラシレスモータの回転方向に連続する3個のホールステージ分のカウンタ値の平均値と、前記ホールステージそれぞれのカウンタ値との差分である検出誤差のうち、前記第1基準位置検出信号を基準とした場合の第1検出誤差と、前記第2基準位置検出信号を基準とした場合の第2検出誤差とについて、
前記第1検出誤差と、前記第2検出誤差とが、負の値を含む否かに基づいて、前記第1検出誤差と前記第2検出誤差とのいずれか一方から算出された補正係数が選択されて設定されたものである
モータ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ制御装置及びモータ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ブラシレスモータは、3相のコイルを有するステータと、界磁用の永久磁石を有するロータとを備え、ロータの回転軸には、ロータと共に回転するセンサマグネットが取り付けられている。センサマグネットは、回転方向にS極とN極が交互に着磁されており、センサマグネットの近傍には、回転位置を検出する3つのホールセンサが回転方向に所定間隔で、センサマグネットの磁極の切り替わりを検出できるように取り付けられている。
【0003】
ブラシレスモータの駆動制御を行うモータ制御装置では、3つのホールセンサの切り替わり位置(ホールエッジ)を基準として、3つのホールセンサの出力である位置検出信号の電位の組合せで表される6個のホールステージに対応する通電パターンを、ブラシレスモータを駆動するインバータ回路に対して出力することで、ブラシレスモータを回転させる。
【0004】
ここで、ブラシレスモータにおけるセンサマグネットの着磁ばらつき、ホールセンサの取り付け位置のばらつきなどにより、6個のホールステージ1~6のそれぞれを構成する2個のホールエッジの間の電気角での間隔が、ホールステージの設計上の電気角での間隔に一致しない場合がある。このような場合、ホールエッジ毎に駆動信号の出力を切り替えると、ブラシレスモータの動きに影響を与えて振動や異音の発生が生じてしまうことがある。
【0005】
そこで、ホールステージの切り替わりを示すホールエッジ毎に位置検出信号を補正し、その補正された位置検出信号に基づいて通電パターンを切り替える構成を有するモータ制御装置が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-121105号公報
【0007】
上述したモータ制御装置は、ホールエッジの位置検出信号が検出されたタイミングから遅延させたタイミングを、通電パターンの切り替わりタイミングとすることで、ブラシレスモータの動きを円滑化している。
しかしながら、上述したモータ制御装置において、3つのホールセンサの取り付け位置によっては、位置検出信号の補正量が負の値になる(つまり、タイミング補正のための遅延時間が負になる)ことがあり、通電パターンの切り替わりタイミングを制御できない場合があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ブラシレスモータの振動や異音の発生の抑制を精度良く行うことができるモータ制御装置及びモータ制御装置の制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、ブラシレスモータの3相のコイルに通電制御を行って、ロータの回転制御を行うモータ制御装置において、前記コイルに流す電流を切り替え可能に配置された複数のスイッチング素子と、前記コイルのそれぞれに対応して設けられ、前記ロータの回転位置を検出する複数のセンサと、前記複数のセンサの出力である位置検出信号に基づいて前記スイッチング素子を切り替える駆動信号を出力する制御部と、を備え、前記制御部は、前記複数のセンサの出力である位置検出信号の電位の組合せで表される6個のホールステージのそれぞれを構成する補正されたホールエッジに基づいて前記スイッチング素子を切り替える駆動信号を出力するゲート制御電圧出力部と、前記ホールステージのそれぞれを構成する2個のホールエッジの間の時間で表される前記ホールステージの時間であるカウンタ値を、前記位置検出信号から取得するカウンタ値取得部と、前回のホールステージのそれぞれのカウンタ値と、予め設定された補正係数とを演算した値を、今回のホールエッジのそれぞれの遅延時間として、前記遅延時間で補正されたホールエッジのそれぞれに基づいて、前記ゲート制御電圧出力部に前記駆動信号を出力させる切り替え制御部と、を有し、前記補正係数は、前記カウンタ値取得部が取得した6個のホールステージのカウンタ値のうちの最小のカウンタ値である第1ホールステージを構成する2つのホールエッジのうち、前記ブラシレスモータの回転方向にホールエッジを広げることでカウンタ値が小さくなるホールエッジを第1基準ホールエッジとし、前記第1基準ホールエッジがある相に対応する前記位置検出信号を第1基準位置検出信号とし、前記カウンタ値取得部が取得した6個のホールステージのカウンタ値のうちの最大のカウンタ値と前記最小のカウンタ値との中間値である第2ホールステージを構成する2つのホールエッジのうち、前記ブラシレスモータの回転方向にホールエッジを広げることでカウンタ値が小さくなるホールエッジを第2基準ホールエッジとし、前記第2基準ホールエッジがある相に対応する前記位置検出信号を第2基準位置検出信号とし、前記ブラシレスモータの回転方向に連続する3個のホールステージ分のカウンタ値の平均値と、前記ホールステージそれぞれのカウンタ値との差分である検出誤差のうち、前記第1基準位置検出信号を基準とした場合の第1検出誤差と、前記第2基準位置検出信号を基準とした場合の第2検出誤差とについて、前記第1検出誤差と、前記第2検出誤差とが、負の値を含む否かに基づいて、前記第1検出誤差と前記第2検出誤差とのいずれか一方から算出された補正係数が選択されて設定されたものである。
【0010】
本発明の一態様は、ブラシレスモータの3相のコイルに通電制御を行って、ロータの回転制御を行うモータ制御装置において、前記コイルに流す電流を切り替え可能に配置された複数のスイッチング素子と、前記コイルのそれぞれに対応して設けられ、前記ロータの回転位置を検出する複数のセンサと、前記複数のセンサの出力である位置検出信号に基づいて前記スイッチング素子を切り替える駆動信号を出力する制御部と、を備え、前記制御部は、ゲート制御電圧出力部と、カウンタ値取得部と、切り替え制御部と、基準相選択部と、平均値算出部と、検出誤差算出部と、補正係数算出部と、記憶制御部と、を有するモータ制御方法であって、前記ゲート制御電圧出力部が、前記複数のセンサの出力である位置検出信号の電位の組合せで表される6個のホールステージのそれぞれを構成する補正されたホールエッジに基づいて前記スイッチング素子を切り替える駆動信号を出力するゲート制御電圧出力工程と、前記カウンタ値取得部が、前記ホールステージのそれぞれを構成する2個のホールエッジの間の時間で表される前記ホールステージの時間であるカウンタ値を、前記位置検出信号から取得するカウンタ値取得工程と、前記切り替え制御部が、前回のホールステージのそれぞれのカウンタ値に、予め設定された補正係数を乗じた値を、今回のホールエッジのそれぞれの遅延時間として、前記遅延時間で補正されたホールエッジのそれぞれに基づいて、前記ゲート制御電圧出力部に前記駆動信号を出力させる切り替え制御工程と、前記基準相選択部が、前記カウンタ値取得部が取得した6個のホールステージのカウンタ値のうち、最小のカウンタ値である第1ホールステージを構成する2つのホールエッジのうち、前記ブラシレスモータの回転方向にホールエッジを広げることでカウンタ値が小さくなるホールエッジを第1基準ホールエッジとし、前記第1基準ホールエッジがある相に対応する前記位置検出信号を第1基準位置検出信号とし、前記カウンタ値取得部が取得した6個のホールステージのカウンタ値のうち、最大のカウンタ値と前記最小のカウンタ値との中間値である第2ホールステージを構成する2つのホールエッジのうち、前記ブラシレスモータの回転方向にホールエッジを広げることでカウンタ値が小さくなるホールエッジを第2基準ホールエッジとし、前記第2基準ホールエッジがある相に対応する前記位置検出信号を第2基準位置検出信号とする基準相選択工程と、前記平均値算出部が、前記ブラシレスモータの回転方向に連続する3個のホールステージ分のカウンタ値の平均値を算出する平均値算出工程と、前記検出誤差算出部が、前記平均値と前記ホールステージそれぞれのカウンタ値との差分である検出誤差のうち、前記第1基準位置検出信号を基準とした場合の第1検出誤差と、前記第2基準位置検出信号を基準とした場合の第2検出誤差とをそれぞれ算出する検出誤差算出工程と、前記補正係数算出部が、前記第1検出誤差を前記平均値で除算した第1補正係数、又は前記第2検出誤差を前記平均値で除算した第2補正係数を算出する補正係数算出工程と、前記記憶制御部が、算出された前記第1検出誤差及び前記第2検出誤差が負の値を含む否かに基づいて、前記第1検出誤差と前記第2検出誤差とのいずれか一方から算出された前記補正係数を記憶させる記憶制御工程と、を有するモータ制御方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ブラシレスモータの振動や異音の発生の抑制を精度良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態によるモータ装置の一例を示す図である。
図2】本実施形態における補正係数の設定手順の一例を示す図である。
図3】本実施形態のホールステージごとのカウンタ値の一例を示す図である。
図4】本実施形態の第1平均値を用いた第1検出誤差の算出結果の一例を示す図である。
図5】本実施形態の第2平均値を用いた第2検出誤差の算出結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施形態]
以下、本発明の一実施形態によるモータ制御装置及びモータ制御方法について、図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本実施形態によるモータ装置100の一例を示す図である。
図1に示すように、モータ装置100は、モータ2と、回転軸センサ23と、制御部6と、インバータ50とを備える。
本実施形態によるモータ装置100は、例えば、車両のウィンドウガラスを払拭するワイパー装置に利用される。
【0015】
[インバータの構成例]
インバータ50は、駆動信号生成部46が生成した駆動信号に基づいて、モータ2を回転駆動させる出力信号を出力する。すなわち、インバータ50は、駆動信号生成部46が生成した駆動信号に基づいて、スイッチング素子(51a~51f)を駆動させて、通電波形に基づく印加電圧を3相の電機子コイル(21u、21v、21w)に印加する。
なお、インバータ50は、バッテリ5から供給される直流電力により、印加電圧を生成する。
【0016】
インバータ50は、3相ブリッジ接続された6個のスイッチング素子51a~51fと、ダイオード52a~52fとを備える。
スイッチング素子51a~51fは、例えば、NチャネルMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)であり、3相のブリッジ回路を構成している。
【0017】
スイッチング素子51aとスイッチング素子51dとは、バッテリ5の正極端子と負極端子との間に、直列に説明されて、U相のブリッジ回路を構成している。スイッチング素子51aは、ドレイン端子がバッテリ5の正極端子に、ソース端子がノードN1に、ゲート端子がU相の上側の駆動信号の信号線に、それぞれ接続されている。また、スイッチング素子51dは、ドレイン端子がノードN1に、ソース端子がバッテリ5の負極端子に、ゲート端子がU相の下側の駆動信号の信号線に、それぞれ接続されている。また、ノードN1は、モータ2の接続点21aに接続されている。
【0018】
スイッチング素子51bとスイッチング素子51eとは、バッテリ5の正極端子と負極端子との間に、直列に説明されて、V相のブリッジ回路を構成している。スイッチング素子51bは、ドレイン端子がバッテリ5の正極端子に、ソース端子がノードN2に、ゲート端子がV相の上側の駆動信号の信号線に、それぞれ接続されている。また、スイッチング素子51eは、ドレイン端子がノードN2に、ソース端子がバッテリ5の負極端子に、ゲート端子がV相の下側の駆動信号の信号線に、それぞれ接続されている。また、ノードN2は、モータ2の接続点21bに接続されている。
【0019】
スイッチング素子51cとスイッチング素子51fとは、バッテリ5の正極端子と負極端子との間に、直列に説明されて、W相のブリッジ回路を構成している。スイッチング素子51cは、ドレイン端子がバッテリ5の正極端子に、ソース端子がノードN3に、ゲート端子がW相の上側の駆動信号の信号線に、それぞれ接続されている。また、スイッチング素子51fは、ドレイン端子がノードN3に、ソース端子がバッテリ5の負極端子に、ゲート端子がW相の下側の駆動信号の信号線に、それぞれ接続されている。また、ノードN3は、モータ2の接続点21cに接続されている。
【0020】
また、ダイオード52a~52fは、いずれもいわゆる還流ダイオードである。
なお、以下の説明において、スイッチング素子51a,51b,51c,51d,51e,51fのことを、スイッチング素子UH,VH,WH,UL,VL,WLとも記載する。
【0021】
[モータの構成例]
モータ2は、例えば、3相4極形のブラシレスモータである。モータ2は、後述する駆動信号に基づいて、インバータ50が出力する出力信号により回転駆動する。
また、モータ2は、ステータ21と、ロータ22とを備える。
【0022】
ステータ21は、モータ2のケースの内周に固定されている。ステータ21は、3相の電機子コイル(21u、21v、21w)を備える。ステータ21は、電機子コイル(21u、21v、21w)が巻装されている。例えば、3相の電機子コイル(21u、21v、21w)は、デルタ結線により接続される。
デルタ結線において、電機子コイル21uと、電機子コイル21wとが、接続点21aにより接続され、電機子コイル21vと、電機子コイル21wとが、接続点21bにより接続され、電機子コイル21uと、電機子コイル21vとが、接続点21cにより接続されている。
【0023】
ロータ22は、ステータ21の内側に設けられている。ロータ22は、例えば、ロータ軸22aと、ロータ軸22aに取り付けたセンサマグネット22bとを備える。モータ2のケース内には、複数の軸受(不図示)が設けられており、ロータ軸22aは、複数の軸受により回転可能に支持されている。
【0024】
回転軸センサ23は、ロータ22の回転に応じた信号を検出する。回転軸センサ23は、例えば、3つのホールセンサ(23u、23v、23w)を備える。これらの3つのホールセンサ(23u、23v、23w)は、ロータ22が回転すると、それぞれ互いに約120度位相のずれたパルス信号を制御部6に対して出力する。すなわち、回転軸センサ23は、ロータ22の回転にともない、ロータ軸22aに配置された4極のセンサマグネット22bの磁極の変化に基づいたパルス信号を発生し、制御部6に出力する。各ホールセンサは、それぞれ電気角で約120度毎ずれた位置を検出する。
【0025】
[制御部(モータ制御装置)の構成例]
制御部6は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などを含むプロセッサであり、モータ装置100を統括的に制御する。制御部6は、PWM(Pulse With Modulation:パルス幅変調)制御を行い、目標のロータ22の回転出力(例えば、目標回転数TRPM)に応じたデューティ比を設定し、設定したデューティ比に応じた駆動信号をインバータ50に出力する。また、制御部6は、インバータ50を介して、例えば、矩形波通電によりモータ2の駆動を制御する。
なお、制御部6のことをモータ制御装置ともいう。
【0026】
制御部6は、ゲート制御電圧出力部61と、切り替え制御部62と、カウンタ値取得部63と、基準相選択部64と、平均値算出部65と、検出誤差算出部66と、補正係数算出部67と、記憶制御部68と、記憶部69とを備える。
【0027】
ゲート制御電圧出力部61は、ホールセンサ23u,23v,23wの出力である位置検出信号Hu,Hv,Hwの電位の組合せで表される6個のホールステージのそれぞれを構成する補正されたホールエッジに基づいてスイッチング素子UH,VH,WH,UL,VL,WLを切り替えるPWM信号(駆動信号)を出力する。
【0028】
カウンタ値取得部63は、ホールステージ1~6のそれぞれを構成する2個のホールエッジの間の時間で表されるホールステージの時間であるカウンタ値を、ホールセンサ23u,23v,23wから入力される位置検出信号Hu,Hv,Hwから取得する。
【0029】
切り替え制御部62は、ホールセンサ23u,23v,23wから入力される位置検出信号Hu,Hv,Hwに基づいて、ホールステージを認識し、記憶部69に記憶されたホールステージに対応する通電パターンを読み出す。切り替え制御部62は、前回の(電気角360度前の)ホールステージのそれぞれのカウンタ値に、予め設定された補正係数を乗じた値を、今回のホールエッジのそれぞれの遅延時間として、遅延時間で補正されたホールエッジのそれぞれに基づいて電気角60度の期間を有するPWM指令信号を、通電パターンから生成し、ゲート制御電圧出力部61に電気角60度の期間を有するPWM信号を出力させる。
【0030】
これにより、スイッチング素子UH,VH,WH,UL,VL,WLは、PWM制御により駆動されて各通電パターンに対応する期間において、それぞれが断続的にオン・オフされる。
【0031】
[補正係数の設定]
補正係数は、モータ制御装置4の出荷前(例えば、製品組み立て後の調整工程や出荷検査工程など)において、次のようにして設定される。
【0032】
図2は、本実施形態における補正係数の設定手順の一例を示す図である。
(ステップS10)制御部6によってモータ2が回転駆動されている状態にする。この状態において、カウンタ値取得部63は、ホールステージ1~6のそれぞれを構成する2個のホールエッジの時間間隔(すなわち、カウンタ値)を取得する。基準相選択部64は、カウンタ値取得部63が取得するホールステージごとのカウンタ値に基づいて、U相、V相、W相のなかから、検出誤差の検出基準となる基準相を選択する。本実施形態の基準相選択部64は、第1基準相と、第2基準相との2種類の基準相を選択する。
【0033】
第1基準相とは、カウンタ値取得部が取得した6個のホールステージのカウンタ値のうちの最小のカウンタ値である第1ホールステージを構成する2つのホールエッジのうち、ブラシレスモータの回転方向にホールエッジを広げることでカウンタ値が小さくなるホールエッジを第1基準ホールエッジとした場合において、この第1基準ホールエッジがある相である。
第2基準相とは、カウンタ値取得部が取得した6個のホールステージのカウンタ値のうちの最大のカウンタ値と最小のカウンタ値との中間値である第2ホールステージを構成する2つのホールエッジのうち、ブラシレスモータの回転方向にホールエッジを広げることでカウンタ値が小さくなるホールエッジを第2基準ホールエッジとした場合において、この第2基準ホールエッジがある相である。なお、ここでいう「中間値」とは、最大のカウンタ値と最小のカウンタ値とのちょうど中間の値に限定されず、単に最大のカウンタ値未満かつ最小のカウンタ値より大きい値を指す。
第1基準相及び第2基準相について、図3を参照して、より具体的に説明する。
【0034】
図3は、本実施形態のホールステージごとのカウンタ値の一例を示す図である。ここで、電気角0~60度をホールステージ1、電気角60~120度をホールステージ2、以下同様にして、電気角300~360度をホールステージ6とする。
同図に示す一例の場合、ホールステージ1のカウンタ値は1121、ホールステージ2のカウンタ値は1164、ホールステージ3のカウンタ値は1139、ホールステージ4のカウンタ値は1129、ホールステージ5のカウンタ値は1165、ホールステージ6のカウンタ値は1141である。
この一例の場合、上述の第1ホールステージ(すなわち、カウンタ値取得部が取得した6個のホールステージのカウンタ値のうちの最小のカウンタ値であるホールステージ)は、ホールステージ1である。
【0035】
なお、カウンタ値は、電気角180度ごとに同様の傾向になる場合がある。例えば、ホールステージ1のカウンタ値が比較的小さくなる場合、電気角が180度ずれたホールステージ4も同様にカウンタ値が比較的小さくなる傾向がある。この場合において、カウンタ値が最小になるホールステージを電気角180度ごとに選定してもよい。例えば、電気角0~180度についてホールステージ1を第1ホールステージとし、電気角180~360度についてホールステージ4を第1ホールステージとしてもよい。
つまり、本実施形態において、6個のホールステージのうち「カウンタ値が最小になるホールステージ」とは、電気角0~360度の範囲においてカウンタ値が最小である1つのホールステージを意味する場合と、電気角0~180度の範囲においてカウンタ値が最小であるホールステージと電気角180~360度の範囲においてカウンタ値が最小であるホールステージとをあわせて意味する場合とがある。
【0036】
上述したように、第1基準相とは、第1基準ホールエッジがある相である。第1基準ホールエッジとは、第1ホールステージを構成する2つのホールエッジのうち、ブラシレスモータの回転方向にホールエッジを広げることでカウンタ値が小さくなるホールエッジである。
同図の一例では、第1ホールステージ(ホールステージ1)を構成する2つのホールエッジ(位置検出信号Huの立ち上がり位置と、位置検出信号Lwの立ち下がり位置)のうち、位置検出信号Huの立ち上がり位置をブラシレスモータの回転方向に広げることでホールステージ1のカウンタ値が「1121」よりも小さくなる。一方、位置検出信号Lwの立ち下がり位置をブラシレスモータの回転方向に広げることでホールステージ1のカウンタ値が「1121」よりも大きくなる。この場合、位置検出信号Huの立ち上がり位置が第1基準ホールエッジであり、第1基準相は、位置検出信号Huがある相、すなわちU相である。
【0037】
基準相選択部64は、カウンタ値取得部が取得した6個のホールステージのカウンタ値のうちの最小のカウンタ値である第1ホールステージを構成する2つのホールエッジのうち、ブラシレスモータの回転方向にホールエッジを広げることでカウンタ値が小さくなるホールエッジを第1基準ホールエッジとし、第1基準ホールエッジがある相に対応する位置検出信号を第1基準位置検出信号とする。
すなわち、この一例の場合、基準相選択部64は、U相を第1基準相とし、位置検出信号Huを第1基準位置検出信号として選択する。
【0038】
なお、基準相選択部64は、電気角180~360度の場合も上述と同様にして、U相を第1基準相とし、位置検出信号Luを第1基準位置検出信号として選択する。
【0039】
次に、第2基準相について説明する。
同図に示す例の、電気角0~180度の範囲において、カウンタ値が最小となるのはホールステージ1(カウンタ値は1121)であり、カウンタ値が最大となるのはホールステージ2(カウンタ値は1164)である。つまり、ホールステージ1~3のうち、カウンタ値が中間値となるのはホールステージ3(カウンタ値は1139)である。
また、電気角180~360度の範囲において、カウンタ値が最小となるのはホールステージ4(カウンタ値は1129)であり、カウンタ値が最大となるのはホールステージ5(カウンタ値は1165)である。つまり、ホールステージ4~6のうち、カウンタ値が中間値となるのはホールステージ6(カウンタ値は1141)である。
この場合、第2ホールステージ(すなわち、カウンタ値取得部が取得した6個のホールステージのカウンタ値のうちの最大のカウンタ値と最小のカウンタ値との中間値であるホールステージ)は、電気角0~180度の範囲においてホールステージ3であり、電気角180~360度の範囲においてホールステージ6である。
【0040】
上述したように、第2基準相とは、第2基準ホールエッジがある相である。第2基準ホールエッジとは、第2ホールステージを構成する2つのホールエッジのうち、ブラシレスモータの回転方向にホールエッジを広げることでカウンタ値が小さくなるホールエッジである。
同図の一例では、電気角0~180度の範囲において第2ホールステージ(ホールステージ3)を構成する2つのホールエッジ(位置検出信号Hvの立ち上がり位置と、位置検出信号Luの立ち下がり位置)のうち、位置検出信号Hvの立ち上がり位置をブラシレスモータの回転方向に広げることでホールステージ3のカウンタ値が「1139」よりも小さくなる。一方、位置検出信号Luの立ち下がり位置をブラシレスモータの回転方向に広げることでホールステージ3のカウンタ値が「1139」よりも大きくなる。この場合、位置検出信号Hvの立ち上がり位置が第2基準ホールエッジであり、第2基準相は、位置検出信号Hvがある相、すなわちV相である。
また、電気角180~360度の範囲において第2ホールステージ(ホールステージ6)を構成する2つのホールエッジ(位置検出信号Lvの立ち下がり位置と、位置検出信号Huの立ち上がり位置)のうち、位置検出信号Lvの立ち下がり位置をブラシレスモータの回転方向に広げることでホールステージ6のカウンタ値が「1141」よりも小さくなる。一方、位置検出信号Huの立ち上がり位置をブラシレスモータの回転方向に広げることでホールステージ6のカウンタ値が「1141」よりも大きくなる。この場合、位置検出信号Lvの立ち下がり位置が第2基準ホールエッジであり、第2基準相は、位置検出信号Hvがある相、すなわちV相である。
【0041】
基準相選択部64は、カウンタ値取得部が取得した6個のホールステージのカウンタ値のうちの最大のカウンタ値と最小のカウンタ値との中間値である第2ホールステージを構成する2つのホールエッジのうち、ブラシレスモータの回転方向にホールエッジを広げることでカウンタ値が小さくなるホールエッジを第2基準ホールエッジとし、第2基準ホールエッジがある相に対応する位置検出信号を第2基準位置検出信号とする。
すなわち、この一例の場合、基準相選択部64は、V相を第2基準相とし、位置検出信号Hvを第2基準位置検出信号として選択する。
【0042】
図2に戻り、補正係数の設定手順についての説明を続ける。
(ステップS20)平均値算出部65は、ブラシレスモータの回転方向に連続する3個のホールステージ分のカウンタ値の平均値を算出する。
図3に示す例では、基準相選択部64は、U相を第1基準相とし、位置検出信号Huを第1基準位置検出信号として選択している。この場合、平均値算出部65は、位置検出信号Huの立ち上がり位置(電気角0度の位置)から位置検出信号Luの立ち下がり位置(電気角180度の位置)までの、ホールステージ1~3を算出対象区間として、カウンタ値の平均値を算出する。
より具体的には、平均値算出部65は、ホールステージ1のカウンタ値1121、ホールステージ2のカウンタ値1164及びホールステージ3のカウンタ値1139を積算した積算値3424を得る。平均値算出部65は、積算値3424を、ホールステージ数(つまり、3)で除して第1平均値1141を得る。
【0043】
平均値算出部65は、ホールステージ4~6についても同様にして、ホールステージ4のカウンタ値1129、ホールステージ5のカウンタ値1165及びホールステージ6のカウンタ値1141を積算した積算値3435を得る。平均値算出部65は、積算値3435を、ホールステージ数(つまり、3)で除して第1平均値1145を得る。
【0044】
また、平均値算出部65は、第2基準相(V相)についても、上述した第1基準相(U相)の場合と同様にしてカウンタ値の平均値を算出する。
同図に示す例では、基準相選択部64は、V相を第2基準相とし、位置検出信号Hvを第2基準位置検出信号として選択している。この場合、平均値算出部65は、位置検出信号Hvの立ち上がり位置(電気角120度の位置)から位置検出信号Lvの立ち下がり位置(電気角300度の位置)までの、ホールステージ3~5を算出対象区間として、カウンタ値の平均値を算出する。
より具体的には、平均値算出部65は、ホールステージ3のカウンタ値1139、ホールステージ4のカウンタ値1129及びホールステージ5のカウンタ値1165を積算した積算値3433を得る。平均値算出部65は、積算値3433を、ホールステージ数(つまり、3)で除して第2平均値1144を得る。
【0045】
平均値算出部65は、ホールステージ6~2についても同様にして、ホールステージ6のカウンタ値1141、ホールステージ1のカウンタ値1121及びホールステージ2のカウンタ値1164を積算した積算値3426を得る。平均値算出部65は、積算値3426を、ホールステージ数(つまり、3)で除して第2平均値1142を得る。
【0046】
(ステップS30)図2に戻り、検出誤差算出部66は、平均値とホールステージそれぞれのカウンタ値との差分である検出誤差のうち、第1基準位置検出信号を基準とした場合の第1検出誤差と、第2基準位置検出信号を基準とした場合の第2検出誤差とをそれぞれ算出する。
検出誤差算出部66が、第1平均値を用いて第1検出誤差を算出する具体例について図4を、第2平均値を用いて第2検出誤差を算出する具体例について図5を、それぞれ参照して説明する。
【0047】
図4は、本実施形態の第1平均値を用いた第1検出誤差の算出結果の一例を示す図である。
具体的には、ホールステージ1~3の範囲において、検出誤差算出部66は、第1平均値1141と、ホールステージ1のカウンタ値1121との差分+(プラス)20を、ホールステージ1とホールステージ2との切替わり位置(つまり、位置検出信号Lwの立ち下がり位置)の第1検出誤差として算出する。検出誤差算出部66は、第1平均値1141と、ホールステージ3のカウンタ値1139との差分-(マイナス)2を、ホールステージ2とホールステージ3の切替わり位置(つまり、位置検出信号Hvの立ち上がり位置)の第1検出誤差として算出する。
また、ホールステージ4~6の範囲において、検出誤差算出部66は、第1平均値1145と、ホールステージ4のカウンタ値1129との差分+16を、ホールステージ4とホールステージ5との切替わり位置(つまり、位置検出信号Hwの立ち上がり位置)の第1検出誤差として算出する。検出誤差算出部66は、第1平均値1145と、ホールステージ6のカウンタ値1141との差分-4を、ホールステージ5とホールステージ6の切替わり位置(つまり、位置検出信号Lvの立ち下がり位置)の第1検出誤差として算出する。
【0048】
図5は、本実施形態の第2平均値を用いた第2検出誤差の算出結果の一例を示す図である。
具体的には、ホールステージ3~5の範囲において、検出誤差算出部66は、第2平均値1144と、ホールステージ3のカウンタ値1139との差分+5を、ホールステージ3とホールステージ4との切替わり位置(つまり、位置検出信号Luの立ち下がり位置)の第1検出誤差として算出する。検出誤差算出部66は、第2平均値1144と、ホールステージ5のカウンタ値1165との差分+21を、ホールステージ4とホールステージ5の切替わり位置(つまり、位置検出信号Hwの立ち上がり位置)の第2検出誤差として算出する。
また、ホールステージ6~2の範囲において、検出誤差算出部66は、第2平均値1142と、ホールステージ6のカウンタ値1141との差分+1を、ホールステージ6とホールステージ1との切替わり位置(つまり、位置検出信号Huの立ち上がり位置)の第2検出誤差として算出する。検出誤差算出部66は、第1平均値1142と、ホールステージ2のカウンタ値1164との差分+22を、ホールステージ1とホールステージ2の切替わり位置(つまり、位置検出信号Lwの立ち下がり位置)の第2検出誤差として算出する。
【0049】
(ステップS40)図2に戻り、記憶制御部68は、算出された第1検出誤差及び第2検出誤差が負の値を含む否かを判定する。記憶制御部68は、第1検出誤差及び第2検出誤差がいずれも負の値を含むと判定した場合(ステップS40;YES)には、処理をステップS50に進める。記憶制御部68は、第1検出誤差及び第2検出誤差のうちいずれか一方が負の値を含まないと判定した場合(ステップS40;NO)には、処理をステップS60に進める。
【0050】
ここで、図3から図5に示した一例では、位置検出信号Lwの立ち下がり位置について第1検出誤差+20、位置検出信号Hvの立ち上がり位置について第1検出誤差-2、位置検出信号Hwの立ち上がり位置について第1検出誤差+16、位置検出信号Lvの立ち下がり位置について第1検出誤差-4である。すなわち、第1検出誤差は、負の値を含む。
また、位置検出信号Luの立ち下がり位置について第2検出誤差+5、位置検出信号Hwの立ち上がり位置について第2検出誤差+21、位置検出信号Huの立ち上がり位置について第2検出誤差+1、位置検出信号Lwの立ち下がり位置について第2検出誤差+22である。すなわち、第2検出誤差は、負の値を含まない。
この一例の場合には、記憶制御部68は、第1検出誤差及び第2検出誤差のうちいずれか一方が負の値を含まないと判定し、処理をステップS60に進める。
【0051】
一方、センサマグネットの着磁ばらつき、ホールセンサの取り付け位置のばらつきなどによっては、第1検出誤差及び第2検出誤差がいずれも負の値を含む場合がある。この場合には、記憶制御部68は、処理をステップS50に進める。
【0052】
(ステップS50)図2に戻り、記憶制御部68は、第1検出誤差と第2検出誤差とのうち負の値の絶対値が小さい方を補正値として選択する。例えば、第1検出誤差が-(マイナス)1を含み、第2検出誤差が-(マイナス)7を含む場合には、第1検出誤差の方が負の値の絶対値が小さい。この場合には、記憶制御部68は、第1検出誤差を補正値として選択する。
記憶制御部68は、検出誤差に含まれる負の値を0(ゼロ)に置き換える。例えば、第1検出誤差に含まれる-(マイナス)1を0(ゼロ)に置き換える。
記憶制御部68は、0(ゼロ)に置き換えたのちの補正値を、補正係数算出部67に供給する。
【0053】
(ステップS60)一方、第1検出誤差及び第2検出誤差のうちいずれか一方が負の値を含まない場合には、記憶制御部68は、第1検出誤差と第2検出誤差とのうち負の値を含まない方を補正値として選択する。例えば、第1検出誤差が負の値を含み、第2検出誤差が負の値を含まない場合には、記憶制御部68は、第2検出誤差を補正値として選択する。
記憶制御部68は、選択した補正値を、補正係数算出部67に供給する。
【0054】
(ステップS70)補正係数算出部67は、記憶制御部68が選択した補正値を上述した平均値で除算することにより、補正係数を算出する。
具体的には、第1検出誤差が補正値として供給された場合には、補正係数算出部67は、図4に示した、位置検出信号Lwの立ち下がり位置の第1検出誤差+20を第1平均値1141で除算した値、位置検出信号Hvの立ち上がり位置の第1検出誤差+16を第1平均値1145で除算した値、位置検出信号Lvの立ち下がり位置の第1検出誤差-4を第1平均値1145で除算した値、をそれぞれ第1補正係数として算出する。
また、第2検出誤差が補正値として供給されたされた場合には、補正係数算出部67は、図5に示した、位置検出信号Luの立ち下がり位置の第2検出誤差+5を第2平均値1144で除算した値、位置検出信号Hwの立ち上がり位置の第2検出誤差+21を第2平均値1144で除算した値、位置検出信号Huの立ち上がり位置の第2検出誤差+1を第2平均値1142で除算した値、位置検出信号Lwの立ち下がり位置の第2検出誤差+22を第2平均値1142で除算した値、をそれぞれ第2補正係数として算出する。
【0055】
すなわち、補正係数算出部67は、第1検出誤差を平均値で除算した第1補正係数又は、第2検出誤差を平均値で除算した第2補正係数を算出する。
記憶制御部68は、算出された補正係数を記憶部69に記憶させる。
【0056】
すなわち、記憶制御部68は、算出された第1補正係数及び第2補正係数が負の値を含む否かに基づいて、第1検出誤差と第2検出誤差とのいずれか一方から算出された補正係数を、ホールステージそれぞれの補正係数として記憶させる。
【0057】
また、ステップS50において説明したように、記憶制御部68は、算出された第1検出誤差と第2検出誤差とがいずれも負の値を含む場合には、第1検出誤差と第2検出誤差とのうち負の値の絶対値が小さい方から算出された補正係数を記憶部69に記憶させる。
【0058】
また、ステップS60において説明したように、記憶制御部68は、算出された第1検出誤差と第2検出誤差とのうち一方が負の値を含まない場合には、第1検出誤差と第2検出誤差とのうち負の値を含まない方から算出された補正係数を記憶させる記憶部69に記憶させる。
【0059】
このようにして記憶部69には、モータ制御装置の出荷前に行われる補正係数の算出による補正係数が記憶される。
【0060】
これにより、切り替え制御部62は、前回のホールステージのそれぞれのカウンタ値に、予め設定された補正係数を乗じた値を、今回のホールエッジのそれぞれの遅延時間として、遅延時間で補正されたホールエッジのそれぞれに基づいて電気角60度の期間を有するPWM指令信号を生成し、ゲート制御電圧出力部61に電気角60度の期間を有するPWM信号を出力させ、モータ2の正逆転駆動制御を行う。
【0061】
このように構成された本実施形態のモータ制御装置によれば、ホールステージの切り替わりを示すホールエッジ毎に位置検出信号を補正することができるため、振動や異音の発生の抑制を精度良く行うことができる。
【0062】
ここで、モータ装置100をより小型化するためや、外部環境からの磁界の影響を低減するために、ホールセンサをセンサマグネット22bに比較的接近させた設計がなされる場合がある。このような場合、基板上に一列に配置された3つのホールセンサ(23u、23v、23w)どうしの配置間隔がより狭くなる(すなわち、ホールセンサピッチが狭小化する)ことがある。このような場合、センサマグネットの着磁ばらつき、ホールセンサの取り付け位置のばらつきが、ホールエッジ間の時間間隔(つまり、カウント値)の誤差に与える影響が比較的大きくなる。したがって、ホールセンサピッチを狭小化した場合、センサマグネットの着磁ばらつき、ホールセンサの取り付け位置のばらつきの状態によっては、ロータの回転方向を基準とした場合において、カウント値を補正する補正値が負の値になりやすい。
ロータの回転方向を基準とした場合において、補正値(すなわち、経過時間)が負の値であるということは、時間軸を過去に遡って補正することを意味している。したがって、補正値が負の値になってしまうと、補正が実現できないことになる。
【0063】
そこで、本実施形態のモータ制御装置は、補正値(すなわち、検出誤差)が負の値であるか否かを判定し、補正値が負にならないようにして補正係数が設定されている。このように構成された本実施形態のモータ制御装置によれば、ホールセンサピッチが狭小化した場合であっても、位置検出信号を補正することができるため、振動や異音の発生の抑制を精度良く行うことができる。
【0064】
また、本実施形態のモータ制御装置は、上述したように小型化できるため、低コストで製造することができ、また、製造に要する材料の量や廃棄物の量を低減することができる。したがって、本実施形態のモータ制御装置によれば、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標7「全ての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」、及び目標12「持続可能な方法で生産し、責任をもって消費する」の達成に寄与することができる。
【0065】
なお、上述した実施形態では、制御部6が、カウンタ値取得部63と、基準相選択部64と、平均値算出部65と、検出誤差算出部66と、補正係数算出部67と、記憶制御部68と、記憶部69とを備える場合を一例にして説明したが、これに限られない。カウンタ値取得部63、基準相選択部64、平均値算出部65、検出誤差算出部66、補正係数算出部67、記憶制御部68、及び記憶部69は、モータ装置100が備える他の装置や、モータ装置100の外部にある試験装置などの装置に備えられていてもよい。
【0066】
制御部6が有する機能の少なくとも一部は、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)等の回路部(circuitry)を含むハードウェアにより実現されてもよい。或いは、モータ制御装置30が有する機能の少なくとも一部は、ソフトウェアとハードウェアの協働により実現されてもよい。また、これらのハードウェアは、一つに統合されていてもよいし、複数に分かれていてもよい。
【0067】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明した。ただし、モータ制御装置及びモータ制御方法は、上述した実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形、置換、組み合わせ及び設計変更の少なくとも一つを加えることができる。
【0068】
また、上述した本発明の実施形態の効果は、一例として説明した効果である。したがって、本発明の実施形態は、上述した効果以外にも上述した実施形態の記載から当業者が認識し得る他の効果も奏し得る。
【符号の説明】
【0069】
2…モータ、23…回転軸センサ、6…制御部、21…ステータ、21u,21v,21w…電機子コイル、50…インバータ、51a~51f…スイッチング素子、61…ゲート制御電圧出力部、62…切り替え制御部、63…カウンタ値取得部、64…基準相選択部、65…平均値算出部、66…検出誤差算出部、67…補正係数算出部、68…記憶制御部、69…記憶部、100…モータ装置
図1
図2
図3
図4
図5