(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023104584
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】払出装置
(51)【国際特許分類】
B65H 3/08 20060101AFI20230721BHJP
B65H 7/14 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
B65H3/08 310A
B65H7/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022005671
(22)【出願日】2022-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000238005
【氏名又は名称】株式会社フジシールインターナショナル
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石本 諒
(72)【発明者】
【氏名】加納 孝朗
【テーマコード(参考)】
3F048
3F343
【Fターム(参考)】
3F048AB01
3F048BA05
3F048BB02
3F048CB12
3F048DA01
3F048DC14
3F048EB06
3F048EB08
3F048EB13
3F343FA01
3F343FB00
3F343FC00
3F343GA01
3F343GB01
3F343GC02
3F343GD04
3F343HA17
3F343JB02
3F343KB03
3F343KB14
3F343LA04
3F343LA14
3F343LC02
3F343MA03
3F343MA09
3F343MA31
3F343MB04
3F343MC03
(57)【要約】
【課題】構造が簡素化、および、小型化された払出装置を提供する。
【解決手段】本発明に基づく払出装置1において、センサ50は、載置台10に対する最上被搬送物91の相対的な上下方向位置に関する情報を検出し、当該情報に応じた信号を出力する。アーム部20の相対的な移動により保持部40が最上被搬送物91に当接した後、アーム部20が、軸部30に対して相対的に下方に摺動可能に構成されている。制御部60は、上記信号に基づき、上記上下方向位置が第1の位置範囲内から第1の位置範囲とは異なる第2の位置範囲内に変化したと判断すると、アーム部20の移動量の設定値を第1の設定値から第2の設定値に更新し、上記移動量が第2の設定値となるようにアーム部20および載置台10の少なくとも一方を移動させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の被搬送物が上下方向に互いに積み重ねられた積層体の最も上部に位置する最上被搬送物を、1つずつ払い出す払出装置であって、
前記積層体を載置可能な載置台と、
前記載置台の上方において、前記載置台に対して相対的に上下方向に移動するアーム部と、
前記アーム部に支持され、上下方向に延びる軸部と、
前記軸部の下側先端に接続され、当接した前記最上被搬送物を1つ保持可能な保持部と、
前記載置台に対する前記最上被搬送物の相対的な上下方向位置に関する情報を検出し、該情報に応じた信号を出力するセンサと、
前記保持部を前記最上被搬送物に当接させるため、前記信号に基づき、前記載置台に対する前記アーム部の相対的な上下方向の移動量の設定値を設定し、前記移動量が前記設定値となるように前記アーム部および前記載置台の少なくとも一方を移動させる、制御部とを備え、
前記設定値が前記保持部と前記最上被搬送物との離隔距離より大きい場合には、前記アーム部の相対的な移動により前記保持部が前記最上被搬送物に当接した後、前記アーム部が、前記軸部に対して相対的に下方に摺動可能に構成されており、
前記制御部は、前記信号に基づき、前記上下方向位置が第1の位置範囲内から該第1の位置範囲とは異なる第2の位置範囲内に変化したと判断すると、前記移動量の前記設定値を第1の設定値から第2の設定値に更新し、前記移動量が前記第2の設定値となるように前記アーム部および前記載置台の少なくとも一方を移動させる、払出装置。
【請求項2】
前記センサは、
前記上下方向位置が前記第1の位置範囲内、または、前記第2の位置範囲内であるときに、第1の信号を前記制御部に入力し、
前記上下方向位置が前記第2の位置範囲内、または、前記第1の位置範囲および前記第2の位置範囲とは異なる第3の位置範囲内であるときに、第2の信号を前記制御部に入力し、
前記制御部は、前記第1の信号および前記第2の信号に基づき、前記上下方向位置が前記第1の位置範囲内から前記第2の位置範囲内に変化したと判断すると、前記移動量の前記設定値を前記第1の設定値から前記第2の設定値に更新して、前記移動量が前記第2の設定値となるように前記アーム部および前記載置台の少なくとも一方を移動させ、さらに、前記上下方向位置が前記第2の位置範囲内から前記第3の位置範囲内に変化したと判断すると、前記移動量の前記設定値を前記第2の設定値から第3の設定値に更新して、前記移動量が前記第3の設定値となるように前記アーム部および前記載置台の少なくとも一方を移動させる、請求項1に記載の払出装置。
【請求項3】
前記アーム部は、前記載置台に向かって下降可能であり、
前記制御部は、前記アーム部の下降移動量として前記移動量の前記設定値を設定し、前記移動量が前記設定値となるように、前記アーム部を下降させる、請求項1または請求項2に記載の払出装置。
【請求項4】
前記センサは、前記載置台に載置された前記積層体より上方に位置するように前記載置台に対する相対的な位置が固定されており、前記上下方向位置に関する前記情報として前記最上被搬送物までの距離を検出し、該距離に応じた前記信号を出力する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の払出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、払出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
払出装置を開示した文献として、特開2001-233479号公報(特許文献1)がある。特許文献1に記載された払出装置は、多数枚のシート材が積層されたシート材群から、最上段のシート材を一枚ずつ分離して取り出す積層シート材の取出し装置であって、最上段のシート材を吸着して持ち上げる吸着装置を具備する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の払出装置については、重量を軽減して被搬送物の払出し速度を向上させるため、また、周囲の他装置との干渉発生を抑制して取り回しを容易化するため、構造の簡素化および小型化に改善の余地がある。
【0005】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、構造が簡素化および小型化された払出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に基づく払出装置は、複数の被搬送物が上下方向に互いに積み重ねられた積層体の最も上部に位置する最上被搬送物を、1つずつ払い出す払出装置であって、載置台と、アーム部と、軸部と、保持部と、センサと、制御部とを備えている。載置台は、積層体を載置可能である。アーム部は、載置台の上方において、載置台に対して相対的に上下方向に移動する。軸部は、アーム部に支持され、上下方向に延びている。保持部は、軸部の下側先端に接続され、当接した最上被搬送物を1つ保持可能である。センサは、載置台に対する最上被搬送物の相対的な上下方向位置に関する情報を検出し、当該情報に応じた信号を出力する。保持部を最上被搬送物に当接させるため、制御部は、上記信号に基づき、載置台に対するアーム部の相対的な上下方向の移動量の設定値を設定し、当該移動量が当該設定値となるようにアーム部および載置台の少なくとも一方を移動させる。上記設定値が保持部と最上被搬送物との離隔距離より大きい場合には、アーム部の相対的な移動により保持部が最上被搬送物に当接した後、アーム部が、軸部に対して相対的に下方に摺動可能に構成されている。制御部は、上記信号に基づき、上記上下方向位置が第1の位置範囲内から第1の位置範囲とは異なる第2の位置範囲内に変化したと判断すると、上記移動量の上記設定値を第1の設定値から第2の設定値に更新し、上記移動量が第2の設定値となるようにアーム部および載置台の少なくとも一方を移動させる。
【0007】
本発明の一形態において、センサは、上記上下方向位置が第1の位置範囲内、または、第2の位置範囲内であるときに、第1の信号を制御部に入力し、上記上下方向位置が第2の位置範囲内、または、第1の位置範囲および第2の位置範囲とは異なる第3の位置範囲内であるときに、第2の信号を制御部に入力する。制御部は、第1の信号および第2の信号に基づき、上下方向位置が第1の位置範囲内から第2の位置範囲内に変化したと判断すると、上記移動量の上記設定値を第1の設定値から第2の設定値に更新して、上記移動量が第2の設定値となるようにアーム部および載置台の少なくとも一方を移動させ、さらに、上下方向位置が第2の位置範囲内から第3の位置範囲内に変化したと判断すると、上記移動量の上記設定値を第2の設定値から第3の設定値に更新して、上記移動量が第3の設定値となるようにアーム部および載置台の少なくとも一方を移動させる。
【0008】
本発明の一形態において、アーム部は、載置台に向かって下降可能である。制御部は、アーム部の下降移動量として上記移動量の上記設定値を設定し、上記移動量が当該設定値となるように、アーム部を下降させる。
【0009】
本発明の一形態において、センサは、載置台に載置された積層体より上方に位置するように載置台に対する相対的な位置が固定されており、上下方向位置に関する情報として最上被搬送物までの距離を検出し、当該距離に応じた信号を出力する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、アーム部が軸部に対して摺動可能であるため、保持部が積層体を過剰に押圧することを簡素な構造にて抑制できる。また、載置台に対するアーム部の相対的な移動量を、最上被搬送物の位置に応じて段階的に更新することで、摺動距離確保のために軸部の長さが過剰に長くなることを抑制できる。これにより、小型化された払出装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態に係る払出装置の第1の状態を示す概略構成図である。
【
図2】
図1の第1の状態から、アーム部が下方に移動した第2の状態を示す概略構成図である。
【
図3】
図2の第2の状態から、アーム部がさらに下方に移動した第3の状態を示す概略構成図である。
【
図4】
図3の第3の状態から、アーム部が上方に移動した第4の状態を示す概略構成図である。
【
図5】一実施形態に係る払出装置の構成の一部を示すブロック図である。
【
図6】一実施形態に係る払出装置において、アーム部の相対的な移動量を設定更新する処理を示すフローチャートである。
【
図7】一実施形態に係る払出装置において、最初の最上被搬送物が払い出されるときの、払出装置の第1の状態を示す概略構成図である。
【
図8】
図7の払出装置の第3の状態を示す概略構成図である。
【
図9】
図7および
図8の積層体において、被搬送物の払出しが複数回実施された後の払出装置の第1の状態を示す概略構成図である。
【
図10】
図9の払出装置の第3の状態を示す概略構成図である。
【
図11】
図9および
図10の積層体から被搬送物の払出しが1回実施された後の払出装置の第1の状態を示す概略構成図である。
【
図12】
図11の払出装置の第3の状態を示す概略構成図である。
【
図13】
図11および
図12の積層体から被搬送物の払い出しがさらに複数回実施された後の払出装置の第1の状態を示す概略構成図である。
【
図14】
図13の払出装置の第3の状態を示す概略構成図である。
【
図15】
図13および
図14の積層体から被搬送物の払出しが1回実施された後の払出装置の第1の状態を示す概略構成図である。
【
図16】
図15の払出装置の第3の状態を示す概略構成図である。
【
図17】
図15および
図16の積層体から被搬送物の払い出しがさらに複数回実施された払出装置の第1の状態を示す概略構成図である。
【
図18】
図17の払出装置の第3の状態を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係る払出装置について説明する。以下の実施形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0013】
図1は、一実施形態に係る払出装置の第1の状態を示す概略構成図である。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る払出装置1は、被搬送物90を1つずつ払い出す払出装置であって、載置台10と、アーム部20と、軸部30と、保持部40と、センサ50と、制御部60とを備えている。
【0014】
載置台10は、複数の被搬送物90が上下方向Yに互いに積み重ねられた積層体9を載置可能である。載置台10は、上下方向Yに移動可能に構成されていてもよいが、本実施形態においては、制御処理の簡素化のため、載置台10を上下方向Yに移動可能に構成されてはいない。
【0015】
本実施形態に係る払出装置1にて搬送される複数の被搬送物90は、積層体9として互いに積み重ねられている際、互いに接着されていないが、粘着剤で互いに接着されつつ容易に離間可能に積層されていてもよい。複数の被搬送物90は、互いに同一の物品であるが、互いに異なる物品であってもよい。また、本実施形態の説明において、被搬送物90は、具体的には、シート状の物品である。シート状の物品としては、パウチ等に用いられる袋体が平坦状に折り畳まれたもの、または、紙、段ボール、フィルムなどが挙げられる。積層体9の積層方向(すなわち上下方向Y)から見て、被搬送物90は矩形状の外形を有しているが、当該積層方向から見たときの被搬送物90の外形は特に限定されない。
【0016】
図2は、
図1の第1の状態から、アーム部が下方に移動した第2の状態を示す概略構成図である。
図3は、
図2の第2の状態から、アーム部がさらに下方に移動した第3の状態を示す概略構成図である。
図4は、
図3の第3の状態から、アーム部が上方に移動した第4の状態を示す概略構成図である。
図1から
図4に示すように、払出装置1の第1~第4の状態遷移において、アーム部20は、載置台10の上方において、載置台10に対して相対的に上下方向Yに往復移動する。具体的には、アーム部20は、載置台10に向かって下降可能であり、その後上昇可能に構成されている。アーム部20は、移動本体部21と、移動本体部21に接続され、上下方向Yに沿って延びる軸方向を有する筒状部22とを有している。
【0017】
軸部30は、アーム部20に支持され、上下方向Yに延びている。軸部30は、棒状部31と、棒状部31の下方側の先端に位置する下側先端32と、下側先端32とは反対側に位置する係止板33とを有する。棒状部31は、筒状部22に挿通され、筒状部22の内面と摺接している。
図1に示すように、アーム部20が上下方向に移動する前の状態において、係止板33は、筒状部22により下方から支持されている。これにより、軸部30は、アーム部20に対して相対的に静止している状態である。そして、
図2から
図4に示すように、アーム部20は、上記軸部30の構成により、軸部30に対して相対的に下方および上方に摺動可能に構成されている。なお、係止板33が筒状部22により下方から支持されている状態において、アーム部20は、軸部30に対して相対的に下方にのみ摺動可能である。
【0018】
保持部40は、軸部30の下側先端32に接続され、当接した最上被搬送物91(積層体9の最も上部に位置する被搬送物90)を1つ保持可能である。
図3および
図4に示すように、保持部40は、真空吸引により当接した対象物に吸着可能な吸盤である。具体的には、保持部40は、当接した最上被搬送物91に吸着することにより、最上被搬送物91を保持する。
【0019】
ここで、払出装置1の基本動作について説明する。まず、
図1に示すように払出装置1が第1の状態のときに、アーム部20が、載置台10に載置された積層体9に向かって、下降する。そうすると、保持部40が積層体9(具体的には最上被搬送物91)に当接し、
図2に示すように払出装置1は第2の状態となる。さらに、予め設定された設定値によるアーム部20の相対的な移動量が、保持部40と最上被搬送物91との離隔距離Dより大きい場合には、アーム部20は、載置台10に対して引き続き相対的に下方に移動する。アーム部20の相対的な移動により保持部40が最上被搬送物91に当接した後も、アーム部20(具体的には筒状部22)が、軸部30(具体的には棒状部31)に対して相対的に下方に摺動することで、アーム部20は載置台10に対して相対的に下方へ移動できる。アーム部20が、上記移動量の移動を完了すると、払出装置1は
図3に示すような第3の状態となる。なお、第2の状態から第3の状態に遷移する間に、保持部40は、最上被搬送物91を保持する。そして、アーム部20は、載置台10に対して相対的に下方に移動した移動量と同じ移動量だけ、上方に移動する。そうすると、最上被搬送物91が積層体9から引き離され、
図4に示すように払出装置1は第4の状態となる。この後、保持部40から最上被搬送物91が脱離されることで、最上被搬送物91が積層体9から、払い出される。そして、払出装置1は再び第1の状態となるように制御される。この動作を繰り返すことにより、積層体9を構成する被搬送物90の数が減り、全ての被搬送物90が払い出されることとなる。
【0020】
次に、センサ50について説明する。センサ50は、載置台10に対する最上被搬送物91の相対的な上下方向位置Pに関する情報を検出し、当該情報に応じた信号を出力する。具体的には、センサ50は、載置台10に載置された積層体9より上方に位置するように載置台10に対する相対的な位置が固定されており、上記上下方向位置Pに関する情報として最上被搬送物91までの距離を検出し、当該距離に応じた信号を出力する。より具体的には、センサ50は、上記上下方向位置Pが第1の位置範囲PR1内、または、第2の位置範囲PR2内であるときに、第1の信号を制御部60に入力し、上記上下方向位置Pが第2の位置範囲PR2内、または、第1の位置範囲PR1および第2の位置範囲PR2とは異なる第3の位置範囲PR3内であるときに、第2の信号を制御部60に入力する。また、上下方向位置Pは、より具体的には、載置台10に対する最上被搬送物91の上面の位置である。
【0021】
なお、
図1から
図4においては、最上被搬送物91の上下方向位置Pが、第1の位置範囲PR1にあるときの状態の積層体9を示している。第2の位置範囲PR2は、第1の位置範囲PR1と連続しており、かつ、第1の位置範囲PR1より載置台10に近い。第3の位置範囲PR3は、第2の位置範囲PR2と連続しており、かつ、第2の位置範囲PR2より載置台10に近い。また、第3の位置範囲PR3の載置台10側の境界位置は、載置台10の上面と略重なっていることが好ましい。また、第1の位置範囲PR1、第2の位置範囲PR2、および、第3の位置範囲PR3の、上下方向Yの長さは、上下方向Yにおける2つの被搬送物90の合計厚さより長いことが好ましい。
【0022】
センサ50は、最上被搬送物91までの距離をレーザにより検出する。具体的には、センサ50は、三角測定式の測距装置である、センサ50は、レーザを照射してから、最上被搬送物91で反射した光を受光する。そして、センサ50に内蔵された受光素子上に結像される位置は、最上被搬送物91までの距離に応じて変化する。センサ50は、この結像位置の変化量に基づき、最上被搬送物91までの距離を計測する。センサ50は、反射されたレーザの受光量や、反射されたレーザを受光するまでの時間に基づいて、最上被搬送物91までの距離を検出する測距装置であってもよい。
【0023】
また、センサ50は、2つのセンサ装置で構成されていてもよく、一方のセンサ装置が第1の信号を出力し、他方のセンサ装置が第2の信号を出力するように構成されていてもよい。
【0024】
次に、制御部60について説明する。
図5は、一実施形態に係る払出装置の構成の一部を示すブロック図である。
図5に示すように、制御部60は、センサ50およびアーム部20のそれぞれと通信可能に接続されている。制御部60は、入力部61と、設定部62と、記憶部63と、指示部64とを有している。入力部61には、センサ50から出力された第1の信号および第2の信号が入力される。設定部62は、保持部40を最上被搬送物91に当接させるため、入力部61に入力されたこれらの信号(第1の信号および第2の信号)に基づき、載置台10に対するアーム部20の相対的な上下方向Yの移動量の設定値を設定または更新する。記憶部63は、設定部62により設定または更新された上記移動量の設定値を記憶する。指示部64は、上記移動量が記憶部63に記憶された設定値となるように、アーム部20および載置台10の少なくとも一方に移動を指示する。具体的には、制御部60は、アーム部20の下降移動量として上記移動量の上記設定値を設定し、上記移動量が当該設定値となるように、アーム部20を下降させる。なお、指示部64は、さらに載置台10にも通信可能に接続され、アーム部20に向かって移動するように載置台10に移動を指示してもよい。
【0025】
次に、制御部60(具体的には設定部62)により上記移動量を設定または更新する方法について説明する。
図6は、一実施形態に係る払出装置において、アーム部の相対的な移動量を設定更新する処理を示すフローチャートである。
【0026】
図6に示すように、払出装置1が起動された後、ステップ(以下、ステップをSと記載する)11にて、制御部60(具体的には設定部62)は、入力部61に第1信号が入力されているか否かを確認し、S21またはS22にて、第2信号が入力されているか否かを確認する。本実施形態においては、第1信号と第2信号の入力判断をこの順で行うが、第1信号の前に第2信号の入力判断を行ってもよい。
【0027】
S11にて第1の信号の入力があり、S22にて第2の信号の入力がないことが確認できれば、制御部60は最上被搬送物91の上下方向位置Pが第1の位置範囲PR1内であると判断できる。そして、制御部60は、S31にて、最上被搬送物91の上下方向位置Pが第1の位置範囲PR1内のときに対応するアーム部20の移動量の設定値である第1の設定値が、記憶部63に記憶されているか否かを確認する。そして、S31にて、設定値が記憶部に記憶されていない、または、記憶部に第1の設定値とは異なる第2の設定値もしくは第1の設定値および第2の設定値とはそれぞれ異なる第3の設定値などが記憶されていることを確認した場合は、S41にて、移動量を第1の設定値に更新する。もし、S31にて、制御部60が、すでに移動量が第1の設定値に設定されていることを確認した場合は、S11、および、S21またはS22にて信号の入力確認を繰り返す。
【0028】
S11にて第1の信号の入力があり、S21にて第2の信号の入力があることが確認できれば、制御部60は最上被搬送物91の上下方向位置Pが第2の位置範囲PR2内であると判断できる。そして、制御部60は、S32にて、最上被搬送物91の上下方向位置Pが第2の位置範囲PR2内のときに対応するアーム部20の移動量の設定値である第2の設定値が、記憶部63に記憶されているか否かを確認する。そして、S32にて、設定値が記憶部に記憶されていない、または、第1の設定値もしくは第3の設定値が記憶されていることを確認した場合は、S42にて、移動量を第2の設定値に更新する。もし、S32にて、すでに移動量が第2の設定値に設定されていることを確認した場合は、S11、および、S21またはS22にて信号の入力確認を繰り返す。
【0029】
S11にて第1の信号の入力がなく、S22にて第2の信号の入力があることが確認できれば、制御部60は最上被搬送物91の上下方向位置Pが第3の位置範囲PR3内であると判断できる。そして、制御部60は、S33にて、最上被搬送物91の上下方向位置Pが第3の位置範囲内のときに対応するアーム部20の移動量の設定値である第3の設定値が、記憶部に記憶されているか否かを判断する。そして、S33にて、設定値が記憶部に記憶されていない、または、第1の設定値もしくは第2の設定値が記憶されていることを確認した場合には、S43にて、移動量を第3の設定値に更新する。もし、S33にて、すでに移動量が第3の設定値に設定されていることを確認した場合は、S11、および、S21またはS22にて信号の入力確認を繰り返す。
【0030】
S11にて第1の信号の入力がなく、S22にて第2の信号の入力もないことが確認できれば、制御部60は積層体9(最上被搬送物91)が載置台10上に位置していないと判断できる。そして、S51にて、制御部60(具体的には指示部64)は、アーム部20に、払出動作の停止を指示してもよい。あるいは、制御部60は、アーム部20による払出し動作を停止させる代わりに、図示しない積層体補充装置に、積層体を載置台に補充するよう指示してもよい。積層体9の補充が完了したら、再度、設定部による移動量の設定値の更新処理と、指示部によるアームの移動指示と、を開始してもよい。なお、このフローチャートに示される一連の処理は、積層体9の補充が所定の時間内に完了することを前提として、所定の制御周期毎に繰り返し実行されてもよい。
【0031】
次に、上述した払出装置1の具体的な動作について以下に例示する。連続的な被搬送物90の払出しが進むに従い、最上被搬送物91の上下方向位置Pは変化していく。具体的には、上下方向位置Pは載置台10に近づいていく。そして、上述した設定値の更新処理により、上下方向位置Pの変化に応じて、段階的にアーム部20の相対的な移動量の設定値を更新する。
【0032】
図7は、一実施形態に係る払出装置において、最初の最上被搬送物が払い出されるときの、払出装置の第1の状態を示す概略構成図である。
図8は、
図7の払出装置の第3の状態を示す概略構成図である。
図7および
図8に示すように、新たな積層体9(たとえば、被搬送物90の積層数が100)が載置されると、最初の最上被搬送物91が払い出される。このとき、制御部60は、上述の設定更新処理により、最上被搬送物91の上下方向位置Pが第1の位置範囲PR1内であると判断し、アーム部20の相対的な移動量を第1の設定値MS1に設定する。そして、制御部60は、上記移動量が第1の設定値MS1となるようにアーム部20および載置台10の少なくとも一方(具体的にはアーム部20)を移動させる。
【0033】
図9は、
図7および
図8の積層体において、被搬送物の払出しが複数回実施された後の払出装置の第1の状態を示す概略構成図である。
図10は、
図9の払出装置の第3の状態を示す概略構成図である。
図9および
図10に示すように、払い出しが複数回実施されて、被搬送物90の積層数が減少(たとえば、67枚に減少)すると、最上被搬送物91の上下方向位置Pは第1の位置範囲PR1内において最も第2の位置範囲PR2に近くなる。
【0034】
図11は、
図9および
図10の積層体から被搬送物の払出しが1回実施された後の払出装置の第1の状態を示す概略構成図である。
図12は、
図11の払出装置の第3の状態を示す概略構成図である。
図9から
図12に示すように、払い出しの実施により、被搬送物90の積層数がさらに減少(たとえば、66枚に減少)し、最上被搬送物91の上下方向位置Pが第1の位置範囲PR1内から第2の位置範囲PR2内に変化する。制御部60は、上記処理により第1の信号および第2の信号に基づいて最上被搬送物91の上下方向位置Pがこのように変化したことを判断する。そして、制御部60は、移動量の上記設定値を第1の設定値MS1から第2の設定値MS2に更新する。さらに制御部60は、移動量が第2の設定値となるようにアーム部20および載置台10の少なくとも一方(具体的にはアーム部20)を移動させる。
【0035】
図9および
図10においては、保持部40と最上被搬送物91との離隔距離Dが比較的大きくなっているため、軸部30に対して相対的に摺動したアーム部20の相対的な摺動距離SD(具体的には、摺動後の筒状部22と係止板33との隔離距離)が、比較的短くなる。仮にアーム部20の相対的な移動量の設定値を更新せずにアーム部20を移動させて払出しを続ける場合には、軸部30(具体的には棒状部31)の長さを更に長くし、摺動距離SDの長さを十分確保する必要がある。そうすると、アーム部20、軸部30および保持部40を簡素な構成としたにも関わらず、払出装置1が大型化する。
【0036】
そこで、本実施形態においては、上記設定値を所定の期間維持して複数回払出しを実施することで、制御部60の処理を簡素にしつつ、払出しが一定程度進んだときに、
図11および
図12に示すように、移動量の設定値を大きい値に更新する。これにより、摺動距離SDの確保のために軸部30(具体的には棒状部31)が過剰に長くなることを抑制でき、小型化された払出装置1を提供できる。
【0037】
図13は、
図11および
図12の積層体から被搬送物の払い出しがさらに複数回実施された後の払出装置の第1の状態を示す概略構成図である。
図14は、
図13の払出装置の第3の状態を示す概略構成図である。
図13および
図14に示すように、払い出しがさらに複数回実施されて、被搬送物90の積層数が減少(たとえば33枚に減少)すると、最上被搬送物91の上下方向位置Pは第2の位置範囲PR2内において最も第3の位置範囲PR3に近くなる。
【0038】
図15は、
図13および
図14の積層体から被搬送物の払出しが1回実施された後の払出装置の第1の状態を示す概略構成図である。
図16は、
図15の払出装置の第3の状態を示す概略構成図である。
図13から
図16に示すように、払い出しの実施により、被搬送物90の積層数がさらに減少(たとえば、32枚に減少)し、最上被搬送物91の上下方向位置Pが第2の位置範囲PR2から第3の位置範囲PR3内に変化する。制御部60は、上記処理により第1の信号および第2の信号に基づいてこのように変化したことを判断し、移動量の上記設定値を第2の設定値MS2から第3の設定値MS3に更新する。そして、制御部60は、移動量が第3の設定値MS3となるようにアーム部20および載置台10の少なくとも一方(具体的にはアーム部20)を移動させる。
【0039】
図13および
図14においては、保持部40と最上被搬送物91との離隔距離Dが比較的大きくなっているため、軸部30に対して相対的に摺動したアーム部20の相対的な摺動距離SD(具体的には、摺動後の筒状部22と係止板33との離隔距離)が、比較的短くなる。そこで、本実施形態においては、第1の設定値MS1から変更した第2の設定値MS2での払出しが一定程度進んだ後、
図15および
図16に示すように、移動量の設定値をさらに大きい第3の設定値MS3に更新する。これにより、摺動距離SD確保のために軸部30(具体的には棒状部31)が過剰に長くなることを抑制でき、小型化された払出装置1を提供できる。
【0040】
図17は、
図15および
図16の積層体から被搬送物の払い出しがさらに複数回実施された払出装置の第1の状態を示す概略構成図である。
図18は、
図17の払出装置の第3の状態を示す概略構成図である。
図17および
図18に示すように、払い出しが更に複数回実施されて、被搬送物90が最後の1枚になる。ここからさらに被搬送物90が払い出されれば、センサ50は最上被搬送物91までの距離を検出できなくなる。これにより、上記処理により、制御部60は、払出動作の停止をアーム部20に指示したり、新たな積層体の補充などを他の装置へ指示できる。
【0041】
上記のように、本実施形態に係る払出装置1は、複数の被搬送物90が上下方向Yに互いに積み重ねられた積層体9の最も上部に位置する最上被搬送物91を、1つずつ払い出す払出装置1である。払出装置1は、載置台10と、アーム部20と、軸部30と、保持部40と、センサ50と、制御部60とを備えている。載置台10は、積層体9を載置可能である。アーム部20は、載置台10の上方において、載置台10に対して相対的に上下方向Yに移動する。軸部30は、アーム部20に支持され、上下方向Yに延びている。保持部40は、軸部30の下側先端に接続され、当接した最上被搬送物91を1つ保持可能である。センサ50は、載置台10に対する最上被搬送物91の相対的な上下方向位置に関する情報を検出し、当該情報に応じた信号を出力する。保持部40を最上被搬送物91に当接させるため、制御部60は、上記信号に基づき、載置台10に対するアーム部20の相対的な上下方向Yの移動量の設定値を設定し、当該移動量が当該設定値となるようにアーム部20および載置台10の少なくとも一方を移動させる。上記設定値が保持部40と最上被搬送物91との離隔距離より大きい場合には、アーム部20の相対的な移動により保持部40が最上被搬送物91に当接した後、アーム部20が、軸部30に対して相対的に下方に摺動可能に構成されている。制御部60は、上記信号に基づき、上記上下方向位置が第1の位置範囲内から第1の位置範囲とは異なる第2の位置範囲内に変化したと判断すると、上記移動量の上記設定値を第1の設定値から第2の設定値に更新し、上記移動量が第2の設定値となるようにアーム部20および載置台10の少なくとも一方を移動させる。
【0042】
アーム部20が軸部30に対して摺動可能であるため、保持部40が積層体9を過剰に押圧することを簡素な構成にて抑制できる。また、載置台10に対するアーム部20の相対的な移動量を、最上被搬送物91の位置に応じて段階的に更新することで、アーム部20の摺動距離SD確保のために軸部30に長さが過剰に長くなることを抑制できる。これにより、小型化された払出装置1を提供できる。
【0043】
また、本実施形態において、センサ50は、上記上下方向位置が第1の位置範囲内、または、第2の位置範囲内であるときに、第1の信号を制御部60に入力し、上記上下方向位置が第2の位置範囲内、または、第1の位置範囲および第2の位置範囲とは異なる第3の位置範囲内であるときに、第2の信号を制御部60に入力する。制御部60は、第1の信号および第2の信号に基づき、上下方向位置が第1の位置範囲内から第2の位置範囲内に変化したと判断すると、上記移動量の上記設定値を第1の設定値から第2の設定値に更新して、上記移動量が第2の設定値となるようにアーム部20および載置台10の少なくとも一方を移動させ、さらに、上下方向位置が第2の位置範囲内から第3の位置範囲内に変化したと判断すると、上記移動量の上記設定値を第2の設定値から第3の設定値に更新して、上記移動量が第3の設定値となるようにアーム部20および載置台10の少なくとも一方を移動させる。
【0044】
これにより、2種の信号により、上記移動量を3段階で設定できる。すなわち、簡素な制御処理により、摺動距離SD確保のために軸部30の長さが過剰に長くなることをより抑制できる。
【0045】
また、本実施形態において、アーム部20は、載置台10に向かって下降可能である。制御部60は、アーム部20の下降移動量として上記移動量の上記設定値を設定し、上記移動量が当該設定値となるように、アーム部20を下降させる。
【0046】
これにより、アーム部20を載置台10に対して相対的に移動させる際に載置台10を移動させる必要がない。ひいては、払出装置1を簡素化でき、また、小型化することができる。
【0047】
また、本実施形態において、センサ50は、載置台10に載置された積層体9より上方に位置するように載置台10に対する相対的な位置が固定されており、上記上下方向位置に関する情報として最上被搬送物91までの距離を検出し、当該距離に応じた信号を出力する。
【0048】
これにより、最上被搬送物91の形状や重量によらず、上記上下方向位置を検出することができる。
【0049】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0050】
1 払出装置、9 積層体、10 載置台、20 アーム部、21 移動本体部、22 筒状部、30 軸部、31 棒状部、32 下側先端、33 係止板、40 保持部、50 センサ、60 制御部、61 入力部、62 設定部、63 記憶部、64 指示部、90 被搬送物、91 最上被搬送物。