(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023010459
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】映像における対象物の位置を路面標示等から正確に特定および対象物の移動距離や移動速度などを正確に算出する手法
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20230113BHJP
G01P 3/36 20060101ALI20230113BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20230113BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20230113BHJP
G07C 5/00 20060101ALI20230113BHJP
G06T 7/60 20170101ALI20230113BHJP
G06T 7/70 20170101ALI20230113BHJP
【FI】
G06T7/00 650B
G01P3/36 C
G08G1/16 C
G08G1/00 D
G07C5/00 Z
G06T7/60 180B
G06T7/70 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021114616
(22)【出願日】2021-07-09
(71)【出願人】
【識別番号】596183033
【氏名又は名称】株式会社テクノワークス
(72)【発明者】
【氏名】椋本浩二
【テーマコード(参考)】
3E138
5H181
5L096
【Fターム(参考)】
3E138AA01
3E138AA07
3E138DA03
3E138DB01
3E138GA02
3E138MA01
3E138MD05
5H181AA01
5H181CC04
5H181FF27
5H181LL01
5L096BA04
5L096CA04
5L096FA66
5L096FA69
5L096FA76
5L096HA04
(57)【要約】
【課題】3次元の空間を2次元の平面に投影した映像には奥行きがないため、映像機器によって撮影された映像内の車両等の対象物の位置や基準の路面標示または周辺の施設物や構築物等との距離の算出は困難である。この理由から、前記対象物が移動した場合、前記対象物の移動前位置と移動後位置から算出する移動距離や移動速度等に大きな誤差が生じてしまう。
【解決手段】映像機器の設置の高さ、前記映像機器で撮影された映像内の車両等の対象物の前端部分の高さ、前記映像機器から基準の周辺の施設物や構築物または路面標示までの距離を測定し、前記対象物の前端から基準の前記周辺の施設物や構築物または路面標示までの距離を算出し、前記対象物が移動した場合は経過時間での移動距離や移動速度などを正確に算出することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像機器であるドライブレコーダー、監視カメラ、防犯カメラ、速度違反取締装置、ビデオカメラ、カメラ付き電子機器によって撮影された映像において対象物である車両、二輪車、自転車、歩行者の位置を特定するために寸法測定手段と奥行き算出手段を備え、周辺の施設物や構築物等または路面標示である停止線、横断歩道、予告マーク、速度表示、中央線、車線境界線、区分線、路側線を基準として前記対象物との距離を算出することによって、前記対象物との位置関係を明確に特定することを特徴とする映像における対象物の位置を路面標示等から正確に特定および対象物の移動距離や移動速度などを正確に算出する手法。
【請求項2】
前記寸法測定手段は、前記対象物の位置や前記対象物と前記周辺の施設物や構築物または路面標示との位置関係を正確に特定するために必要な前記対象物、前記映像機器、前記周辺の施設物や構築物または路面標示の距離・寸法を測定することを特徴とする請求項1記載の映像における対象物の位置を路面標示等から正確に特定および対象物の移動距離や移動速度などを正確に算出する手法。
【請求項3】
前記奥行き算出手段は、前記寸法測定手段で測定した前記対象物、前記映像機器、前記周辺の施設物や構築物または路面標示の距離・寸法から前記対象物と前記周辺の施設物や構築物または路面標示までの距離を算出することを特徴とする請求項1記載の映像における対象物の位置を路面標示等から正確に特定および対象物の移動距離や移動速度などを正確に算出する手法。
【請求項4】
移動距離算出手段は、前記対象物が移動した場合には前記寸法測定手段が測定した前記対象物の移動前と移動後の前記対象物、前記映像機器、前記周辺の施設物や構築物または路面標示の距離・寸法から前記対象物の移動距離を算出することを特徴とする請求項1記載の映像における対象物の位置を路面標示等から正確に特定および対象物の移動距離や移動速度などを正確に算出する手法。
【請求項5】
移動速度算出手段は、前記対象物が移動した場合には前記移動距離算出手段が算出した前記対象物の移動距離と経過時間測定手段が測定した前記対象物の移動前から移動後までの経過時間から前記対象物の移動速度を算出することを特徴とする請求項1記載の映像における対象物の位置を路面標示等から正確に特定および対象物の移動距離や移動速度などを正確に算出する手法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、映像機器であるドライブレコーダー、監視カメラ、防犯カメラ、速度違反取締装置、ビデオカメラ、カメラ付き電子機器によって撮影された映像において対象物である車両、二輪車、自転車、歩行者の位置と基準とする周辺の施設物や構築物または路面標示である停止線、横断歩道、予告マーク、速度表示、中央線、車線境界線、区分線、路側線との距離を算出することによって、対象物との位置関係を明確に特定し、対象物が移動した場合は経過時間での移動距離や移動速度などを正確に算出する手法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
交通事故が発生した時の事故原因や事故状況または交通状況を分析するに際し、対象となる車両の移動距離や移動速度を算出することが求められている。従来技術では、3次元の風景を2次元の平面に投影された映像または画像に映っている対象物と路面標示が横並びの同位置にある場合は3次元上でも同様に横並びの同位置であると判断している。これを
図2と
図3により説明する。映像25が映像分析手段21によって画像化され、画像の中から対象物32と路面標示33が横並びになっている画像を抽出したものが抽出画像31である。抽出画像31では対象物32の最も手前の部分である対象物前端34と路面標示33の最も手前の部分である路面標示前端35が比較基準線36の位置で横並びであることから、対象物前端34と路面標示前端35が同一の位置であるとしている。次に同様の方法で画像の中から同じ対象物32と別の路面標示38が横並びになっている画像を抽出したものが抽出画像37である。抽出画像37では対象物32の最も手前の部分である対象物前端39と路面標示38の最も手前の部分である路面標示前端3Aが比較基準線3Bの位置で横並びであることから、対象物前端39と路面標示前端3Aが同一の位置であるとしている。
【0003】
経過時間測定手段22は抽出画像31から抽出画像37までの経過時間を測定する。通常、映像はフレームレートで表現され、フレームレートは1秒間の画像の数であることから、抽出画像31から抽出画像37までの画像の枚数を数えてフレームレートで除算することによって経過時間を算出することができる。故に経過時間の算出式は、(経過時間)=(抽出画像31から抽出画像37までの画像の枚数)÷(映像25のフレームレート)である。
【0004】
移動距離算出手段23は対象物32が経過時間測定手段22が算出した経過時間で移動した距離を算出する。経過時間測定手段22が算出した経過時間は対象車32が抽出画像31の比較基準線36を越えて抽出画像37の比較基準線3Bに到達するまでであることから、対象車32の移動距離は比較基準線36から比較基準線3Bまでの距離である。故に移動距離は比較基準線36から比較基準線3Bまでを実測または地図や見取図等の精密な図面から測定することができる。
【0005】
移動速度算出手段24は経過時間測定手段22と移動距離算出手段23によって算出した経過時間と移動距離の値より対象物32の移動速度を算出する。速度は距離を時間で除算することで算出できることから、(移動速度)=(移動距離)÷(経過時間)となる。この様に従来技術による対象物32の路面標示との位置関係の特定方法、特定した対象物32の位置を基準とした移動距離の測定方法、測定した移動距離による対象物32の移動速度の算出方法は3次元の遠近の奥行きを全く加味しておらず、実際の対象物32の移動距離や移動速度とは大きな誤差が生じてしまう方法である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
3次元の風景を2次元の平面に投影した場合には遠近の奥行きがなくなることから、対象物のはるか後方の路面標示が対象物と横並びの同位置で撮影されてしまうが、従来技術では遠近の奥行きを全く考慮せずに平面に投影された対象物と路面標示を同じ位置であると判断している。3次元の風景における対象物と路面標示との位置関係および2次元の平面に投影した際の対象物と路面標示の位置関係を
図4で説明する。
【0007】
図4では例として、対象物である車両のB車42と路面標示である横断歩道46との3次元での位置関係を上面図と側面図の2図で表してある。この状態をA車41に取付けたドライブレコーダー45で撮影すると撮影映像4Fの様な映像が撮影される。この撮影される映像を、具体的に横方向の3本の撮影ライン47、撮影ライン48、撮影ライン49を利用して説明する。
【0008】
まず、撮影ライン49では映像中にB車42の最上部4Cが映り、B車42の後方の風景が遠近関係なく壁紙の様に真後ろに映り込む。次に撮影ライン48では、B車42の最下部4Aが映り、B車42の右側に視界を遮る障害物がない場合はB車42の後方に存在している横断歩道46の白線前端であるA地点4EがB車42の最下部4Aの真横に映る。最後に撮影ライン47では、B車42の中間部4Bが映り、B車42の後方にある横断歩道46の白線後端のB地点4Dが、B車42の中間部4Bの真横に写る。
【0009】
この様に実際の3次元では
図4のB車42と横断歩道46との位置関係になっているが、A車41に取付けたドライブレコーダー45で撮影すると撮影映像4Fの様な映像になることから、従来技術ではB車42の最下部4Aと横断歩道46の白線前端のA地点4Eが同じ位置であると判断していた。その結果、横断歩道46の白線前端のA地点4Eを起点として、B車42が経過時間で移動した距離の測定や速度算出を行うことから、実際のB車42の移動距離や移動速度とは大きな誤差が生じてしまう。
【0010】
この発明は、従来技術でB車42の最下部4Aと同じ位置であると判断していた横断歩道46の白線前端のA地点4Eとの距離を算出することによって、実際のB車42の位置を正確に特定し、B車42が移動した場合には経過時間での移動距離や移動速度などを正確に算出できるようにした、映像における対象物の位置を路面標示等から正確に特定および対象物の移動距離や移動速度などを正確に算出する手法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するために、寸法測定手段3と奥行き算出手段4を備え、従来技術では同じ位置であると判断していた映像機器であるドライブレコーダー、監視カメラ、防犯カメラ、速度違反取締装置、ビデオカメラ、カメラ付き電子機器で撮影された映像において対象物である車両、二輪車、自転車、歩行者が最も前記映像機器に接近している部分と基準とする周辺の施設物や構築物または路面標示である停止線、横断歩道、予告マーク、速度表示、中央線、車線境界線、区分線、路側線との距離を算出することによって、前記対象物との位置関係を明確に特定し、前記対象物が移動した場合には経過時間での移動距離や移動速度などを正確に算出することができる。
【0012】
前記寸法測定手段は、使用する前記映像機器と路面との高さの測定、前記映像機器で撮影された映像において前記対象物が最も前記映像機器に接近している部分と路面との高さの測定、前記対象物の位置を特定するために基準とする前記周辺の施設物や構築物または路面標示から前記映像機器までの距離の測定することで、前記映像機器と前記対象物が最も前記映像機器に接近している部分の位置および基準とする前記周辺の施設物や構築物または路面標示の位置関係を正確に特定することができる。
【0013】
前記奥行き算出手段は、前記寸法測定手段で測定した、前記映像機器と路面との高さ、前記対象物が最も前記映像機器に接近している部分と路面との高さ、基準とした前記周辺の施設物や構築物または路面標示から前記映像機器までの距離によって、前記対象物で最も前記映像機器に接近している部分と基準とした前記周辺の施設物や構築物または路面標示までの距離を算出して前記対象物の正確な位置を特定できる。
【0014】
前記対象物が移動した場合には、前記寸法測定手段が測定した前記対象物の移動前に基準とした前記周辺の施設物や構築物または路面標示と移動後に基準とした前記周辺の施設物や構築物または路面標示との距離に、前記奥行き算出手段が算出した移動前に前記対象物で最も前記映像機器に接近している部分と基準とした前記周辺の施設物や構築物または路面標示までの距離を減算、移動後に前記対象物で最も前記映像機器に接近している部分と基準とした前記周辺の施設物や構築物または路面標示までの距離を加算することで、前記対象物の移動距離を正確に算出することができる。そして、移動距離を経過時間測定手段2によって測定した経過時間で除算すると前記対象物の移動速度を正確に算出することができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、
図1に示すように、映像7を画像化して複数の画像から対象物が基準とした周辺の施設物や構築物または路面標示と横並びになっている画像を抽出する映像分析手段1、前記対象物が移動した場合は前記映像分析手段によって抽出された前記対象物の移動前の画像と移動後の画像との経過時間を測定する経過時間測定手段2、前記対象物と前記周辺の施設物や構築物または路面標示および前記映像を撮影した映像機器との位置関係を特定するために必要な距離を測定する寸法測定手段3、前記寸法測定手段によって測定した距離を利用して前記対象物で前記映像を撮影した前記映像機器と最も接近している部分と前記周辺の施設物や構築物または路面標示との距離を正確に算出する奥行き算出手段4、前記対象物が移動した場合は移動前の前記対象物から移動後の前記対象物までの距離を算出する移動距離算出手段5、前記移動距離算出手段によって算出した前記対象物の移動距離を前記経過時間測定手段によって測定した前記対象物の移動前から移動後までの経過時間で除算して前記対象物の移動速度を算出する移動速度算出手段6を備えることによって、前記対象物の位置を正確に特定し、対象物が移動した場合は経過時間での移動距離や移動速度などを正確に算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】この発明による映像における対象物の位置を路面標示等から正確に特定および対象物の移動距離や移動速度などを正確に算出する手法の構成図である。
【
図2】従来技術による映像における対象物の移動距離および移動速度を算出する手法の構成図である。
【
図3】従来技術による対象物と路面標示との位置関係を特定する方法を説明するための説明図である。
【
図4】従来技術による対象物と路面標示との位置関係を特定する方法についての課題を説明するための説明図である。
【
図5】この発明による映像における対象物の位置を路面標示等から正確に特定および対象物の移動距離や移動速度などを正確に算出する手法の寸法測定手段3および奥行き算出手段4で対象物と路面標示との位置関係を特定する方法を説明する説明図である。
【
図6】この発明による映像における対象物の位置を路面標示等から正確に特定および対象物の移動距離や移動速度などを正確に算出する手法の移動距離算出手段5および移動速度算出手段6で対象物が移動した場合に移動距離と移動速度の算出方法について説明するための説明図である。
【
図7】この発明による映像における対象物の位置を路面標示等から正確に特定および対象物の移動距離や移動速度などを正確に算出する手法によって対象物が移動した場合に映像分析手段1が対象物の移動前と移動後として抽出する画像と経過時間測定手段2が測定する経過時間を説明するための説明図である。
【
図8】この発明による映像における対象物の位置を路面標示等から正確に特定および対象物の移動距離や移動速度などを正確に算出する手法を利用した実施例を説明するための説明図である。
【
図9】この発明による映像における対象物の位置を路面標示等から正確に特定および対象物の移動距離や移動速度などを正確に算出する手法の映像分析手段1の動作手順を説明するフローチャートである。
【
図10】この発明による映像における対象物の位置を路面標示等から正確に特定および対象物の移動距離や移動速度などを正確に算出する手法の経過時間測定手段2の動作手順を説明するフローチャートである。
【
図11】この発明による映像における対象物の位置を路面標示等から正確に特定および対象物の移動距離や移動速度などを正確に算出する手法の寸法測定手段3の動作手順を説明するフローチャートである。
【
図12】この発明による映像における対象物の位置を路面標示等から正確に特定および対象物の移動距離や移動速度などを正確に算出する手法の奥行き算出手段4の動作手順を説明するフローチャートである。
【
図13】この発明による映像における対象物の位置を路面標示等から正確に特定および対象物の移動距離や移動速度などを正確に算出する手法の移動距離算出手段5の動作手順を説明するフローチャートである。
【
図14】この発明による映像における対象物の位置を路面標示等から正確に特定および対象物の移動距離や移動速度などを正確に算出する手法の移動速度算出手段6の動作手順を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明による映像における対象物の位置を路面標示等から正確に特定および対象物の移動距離や移動速度などを正確に算出する手法を
図1、
図4,
図5、
図6、
図7、
図9、
図10,
図11、
図12、
図13、
図14により説明する。
図1はこの発明による映像における対象物の位置を路面標示等から特定する手法の構成図、
図4は対象物と路面標示との位置関係を説明するための説明図、
図5は寸法測定手段3および奥行き算出手段4を説明するための説明図、
図6は移動距離算出手段5および移動速度算出手段6を説明するための説明図、
図7は映像分析手段1および経過時間測定手段2を説明するための説明図、
図9は映像分析手段1の動作手順を説明するフローチャート、
図10は経過時間測定手段2の動作手順を説明するフローチャート、
図11は寸法測定手段3の動作手順を説明するフローチャート、
図12は奥行き算出手段4の動作手順を説明するフローチャート、
図13は移動距離算出手段5の動作手順を説明するフローチャート、
図14は移動速度算出手段6の動作手順を説明するフローチャートである。
【0018】
図9の91で映像分析手段1の処理を開始すると、92で映像98を入力し、93で映像98を画像化する。94で画像化された画像の中から
図7のB車72の移動前でB車72の前端73と横断歩道前端75が横並びになっている画像の移動前地点画像71を抽出し、95で同様にB車72の移動後でB車72の前端77と停止線前端79が横並びになっている画像の移動後地点画像76を抽出する。96で移動前地点画像71と移動後地点画像76を出力して、97で処理が終了する。
【0019】
図10の101で経過時間測定手段2の処理を開始すると、102で移動前地点画像71から移動後地点画像76までの画像の枚数をカウントし、103では
図9で映像分析手段1に入力した映像98のフレームレートで除算することによって経過時間を算出する。通常、映像は1秒間の画像の数を表すフレームレートで表現されるため、経過時間は(経過時間)=(移動前地点画像71から移動後地点画像76までの画像の枚数)÷(映像98のフレームレート)で算出できる。104で算出した経過時間を移動速度算出手段6に出力して、105で処理が終了する。
【0020】
寸法測定手段3が測定する次の5箇所の距離は、巻尺等の長さを測る測定器具を利用して実測値を測定または地図や見取図等の精密な図面上で測定・算出する。
図11の111で寸法測定手段3が処理を開始すると、112で
図5のB車52の最下部高さ58を測定するが、最下部高さ58は
図4のB車42の最下部4Aの位置から路面までの距離と同じであるため、
図4のB車42の最下部4Aから路面まで垂直に高さを測定し、113で
図5のドライブレコーダーの高さ59であるドライブレコーダー54から路面まで垂直に高さを測定する。次に、114で
図5の移動前の基準点であるA地点57からドライブレコーダー54までの路面上の距離5Bを測定し、115で
図6の移動後の基準点であるC地点66からドライブレコーダー62までの路面上の距離6Hを測定する。最後に、116で
図7の移動前地点画像71を抽出した
図6の横断歩道前端6Fと同位置のA地点65から、
図7の移動後地点画像76を抽出した
図6の停止線前端6Gと同位置のC地点66までの距離68を測定し、117で測定した5箇所の測定データを奥行き算出手段4と移動距離算出手段5に出力し、118で処理が終了する。
【0021】
図5で撮影ライン56を斜辺として形成する直角三角形イロハと直角三角形イニホは三角の角度が全て等しいことから相似条件を満たし、直角三角形イロハと直角三角形イニホは相似である。
図12の121で奥行き算出手段4を開始すると、122で寸法測定手段3より、
図5のB車52の最下部の高さ58、ドライブレコーダー54の高さ59、A地点57からドライブレコーダー54までの路面上の距離5B、
図6でC地点66からドライブレコーダー62までの路面上の距離6Hの測定データの4値を入力する。前記直角三角形イロハと前記直角三角形イニホは相似であることから、(B車52の最下部の高さ58):(ドライブレコーダー54の高さ59)=(A地点57からB車52の前端5Cまでの距離5A):(A地点57からドライブレコーダー54までの路面上の距離5B)の関係式が成り立つ。この関係式より、123で
図5のA地点57からB車52の前端5Cまでの距離5Aは、(A地点57からB車52の前端5Cまでの距離5A)=(B車52の最下部の高さ58)×(A地点57とドライブレコーダー54までの路面上の距離5B)÷(ドライブレコーダー54の高さ59)で算出する。同様に前記直角三角形イロハと前記直角三角形イニホは相似であることから、
図6のC地点66からB車61の前端6Iまでの距離69は、(C地点66からB車61の前端6Iまでの距離69)=(B車61の最下部の高さ58)×(C地点66からドライブレコーダー62までの路面上の距離6H)÷(ドライブレコーダー62の高さ59)で算出する。125で測定データの2値を移動距離算出手段5に出力して、126で処理が終了する。
【0022】
図13の131で移動距離算出手段5が開始すると、132で寸法測定手段3から
図6のA地点65からC地点66までの距離68を入力し、133で奥行き算出手段4から
図6のA地点65からB車61の前端6Bまでの距離67とC地点66からB車61の前端6Cまでの距離69を入力し、134でB車61の移動距離6Aは、(B車61の移動距離6A)=(A地点65からC地点66までの距離68)-(A地点65からB車61の前端6Bまでの距離67)+(C地点66からB車61の前端6Cまでの距離69)で算出する。135で算出したB車61の移動距離6Aを移動速度算出手段6に出力し、136で処理が終了する。
【0023】
図14の141で移動速度算出手段6が開始すると、142で経過時間測定手段2から経過時間を入力し、143で移動距離算出手段5から移動距離を入力する。速度は距離を時間で除算するで導くことができるため、144でB車61の移動速度は、(B車61の移動速度)=(移動距離6A)÷(経過時間)で算出する。145で算出したB車61の移動速度を出力し、146で処理が終了する。
【0024】
従来技術によると、B車61が移動前地点6Bから移動後地点6Cまで移動すると、移動前地点6Bの画像である
図7の移動前地点画像71と移動後地点6Cの画像である移動後地点画像76からB車61の位置を判断していることから、移動距離はA地点65からC地点66までの距離68としている。この発明による映像における対象物の位置を路面標示等から正確に特定および対象物の移動距離や移動速度などを正確に算出する手法で算出したB車61の実際の移動距離6Aとは大きな差が生じている。この移動距離から算出されるB車61の実際の移動速度についてはさらに大きな誤差が生じてしまう。
【0025】
これによって、この発明による映像における対象物の位置を路面標示等から正確に特定および対象物の移動距離や移動速度などを正確に算出する手法により、従来方法では横並びの同位置と判断していたA地点65からB車61の前端6Jまでの距離67およびC地点66からB車61の前端6Iまでの距離69が寸法測定手段3と奥行き算出手段4によって誤差なく測定できることから、B車61の移動距離や移動速度などを正確に算出できることは明らかである。
【実施例0026】
この発明による映像における対象物の位置を路面標示等から正確に特定および対象物の移動距離や移動速度などを正確に算出する手法の実施例を
図8により説明する。尚、A車8Aは実際に移動する場合が多いが、実施例をわかり易く説明するために停止していると仮定する。A車8Aに取付けたドライブレコーダー89で撮影された映像を映像分析手段1で画像化して、その画像の中から移動前地点画像81の様なA地点86とB車前端85が横並びの同位置になっている画像と移動後地点画像82の様なC地点88とB車前端87が横並びの同位置になっている画像の2枚を抽出する。
【0027】
次に経過時間測定手段2は移動前地点画像81と移動後地点画像82までの画像の枚数を数え、ドライブレコーダー89で撮影した映像7のフレームレートで除算することによって経過時間を算出することができる。従って、経過時間は、(経過時間)=(移動前地点画像81から移動後地点画像82までの画像の枚数)÷(映像7のフレームレート)で算出する。
【0028】
寸法測定手段3により、B車最下部の高さ8F、ドライブレコーダー89の高さ8G、A地点86からドライブレコーダー89までの路面上の距離8BとC地点88からドライブレコーダー89までの路面上の距離8Cを、巻尺等の長さを測る測定器具を利用して実測値を測定または地図や見取図等の精密な図面上で測定・算出する。
【0029】
図5で撮影ライン56を斜辺として形成する直角三角形イロハと直角三角形イニホは三角の角度が全て等しいことから相似条件を満たし、直角三角形イロハと直角三角形イニホは相似であった。この理由から、(B車最下部の高さ8F):(ドライブレコーダー89の高さ8G)=(A地点86からB車前端85までの距離8D):(A地点86からドライブレコーダー89までの路面上の距離8B)の関係式が成り立つ。従って、B車前端85からA地点86までの距離8Dは、(A地点86からB車前端85までの距離8D)=(B車最下部の高さ8F)×(A地点86からドライブレコーダー89までの路面上の距離8B)÷(ドライブレコーダー89の高さ8G)で算出できる。B車移動後地点84においても同様に、(B車最下部の高さ8F):(ドライブレコーダー89の高さ8G)=(C地点88からB車前端87までの距離8E):(C地点88からドライブレコーダー89までの路面上の距離8C)の関係式が成り立つ。従って、C地点88からB車前端87までの距離8Eは、(C地点88からB車前端87までの距離8E)=(B車最下部の高さ8F)×(C地点88からドライブレコーダー89までの路面上の距離8C)÷(ドライブレコーダー89の高さ8G)で算出できる。
【0030】
移動距離算出手段5によって算出されるB車移動前地点83からB車移動後地点84に移動した時の移動距離は、(実際のB車の移動距離8I)=(A地点86からC地点88までの距離8H)ー(A地点86からB車前端85までの距離8D)+(C地点88からB車前端87までの距離8E)である。そして、移動速度算出手段6によって、移動速度は経過時間測定手段2で測定した経過時間と実際のB車の移動距離8Iによって(移動速度)=(実際のB車の移動距離8I)÷(経過時間)で算出できる。
【0031】
従来技術によると、B車移動前地点83からB車移動後地点84までの移動距離はA地点86からC地点88までの距離8Hと従来技術で算出されるB車の移動距離8Jは同じであり、この発明による映像における対象物の位置を路面標示等から正確に特定および対象物の移動距離や移動速度などを正確に算出する手法で算出した移動距離である実際のB車の移動距離8Iと大きな差が生じている。この移動距離の差によって算出される移動速度についてはさらに大きな誤差が生じる。従って、この発明による映像における対象物の位置を路面標示等から正確に特定および対象物の移動距離や移動速度などを正確に算出する手法を利用することで、B車移動前地点83とB車移動後地点84の位置を正確に特定し、移動距離や移動速度などを正確に算出できることは明らかである。
【0032】
以上の説明においては、映像7を取得するための映像機器として、車両に搭載されるドライブレコーダーを用いた場合について説明したが、ドライブレコーダーに代えて街角、道路上などに設置されている監視カメラ、防犯カメラ、速度違反取締装置を用いても良く、さらに携帯型のビデオカメラやカメラ付スマートフォンなどのカメラ付電子機器を用いてもよく、要は映像を撮影することができる機器であればよい。また、以上の説明では、車両の移動距離や移動速度を算出するための基準として、路面にある横断歩道のマークを使用したが、これに代えて停止線、予告マーク、速度表示、中央線、車線境界線、区分線、路側線などの路面標示を基準としてもよく、また道路周辺の施設物や構築物などを基準として使用するようにしてもよい。さらに、上記説明では、車両の移動距離、移動速度を算出する場合について説明したが、この発明はこれに限るものではなく、二輪車、自転車、歩行者の移動距離、移動速度を算出する場合にも同様に実施できるものである。要は、地上を移動するもの広くに適用できるものである。
【0033】
なお、上記説明において、映像分析手段1、経過時間測定手段2、奥行き算出手段4、移動距離算出手段5、移動速度算出手段6などは、パソコン等のコンピュータ装置を用いて構成し、
図9~
図10、
図12~
図14のフロチャートにしたがったプログラムによって動作制御することによって実現できる。この場合、映像分析手段1で抽出した移動前画像と移動後画像、経過時間測定手段2によって算出された経過時間、奥行き算出手段4によって算出された距離、移動距離算出手段5で算出された移動距離、移動速度算出手段6で算出された移動速度などのデータはコンピュータ装置を構成する記憶装置に適宜記憶されて使用される。また、これらのデータはディスプレイ装置に表示される。寸法測定出手段3としては、巻尺等の実際の長さを測る測定器具や地図や見取図等の精密な図面上で距離を測定できるものを用いることができ、この寸法測定手段3で測定したデータはコンピュータ装置に入力され、奥行き算出手段4(
図12)で用いられる。
本発明による映像における対象物の位置を路面標示等から正確に特定および対象物の移動距離や移動速度などを正確に算出する手法は、ドライブレコーダー等の映像機器によって撮影された映像において車両等の対象物の位置や移動距離または移動速度等を正確に算出できることから、主に交通事故が発生した時の事故原因や事故状況または交通状況の分析を行う際に利用できるものである。