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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023104643
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】オートファジー活性化剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/07 20060101AFI20230721BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
A61K36/07
A61P43/00 107
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022005769
(22)【出願日】2022-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000135324
【氏名又は名称】株式会社ノエビア
(72)【発明者】
【氏名】鉄井 崇仁
【テーマコード(参考)】
4C088
【Fターム(参考)】
4C088AA07
4C088AC16
4C088BA05
4C088CA05
4C088CA06
4C088CA08
4C088NA14
4C088ZB22
4C088ZC21
(57)【要約】
【課題】
本発明は、アガリクス茸抽出物を有効成分として含有するオートファジー活性化剤を提供することを課題とする。
【解決手段】
アガリクス茸抽出物を有効成分として含有するオートファジー活性化剤を提供する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アガリクス茸抽出物を有効成分として含有するオートファジー活性化剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アガリクス茸抽出物を有効成分として含有するオートファジー活性化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
オートファジーは日本語では自食作用と訳され、細胞質の一部が隔離膜によって取り囲まれてオートファーゴソームとよばれる膜構造を形成し、このオートファーゴソームがリソソームと融合してオートリソソームとなり、老廃物や不要な蛋白質等を分解する細胞内分解機構であり、広く認知されている。オートファジーは生体において生理学的又は病理学的機能に重要な役割を担っており、オートファジー活性の低下が様々な疾患の発症に関わっていることが知られている。
【0003】
加齢に伴いオートファジー活性が低下することが知られており、オートファジーを活性化することが健康の維持増進において重要と考えられている。現在、オートファジーを活性化させる方法として、ウロリチンを用いた方法(特許文献1)、ケルセチン配糖体を用いる方法(特許文献2)、発酵にんにくを用いる方法(特許文献3)、β-クリプトキサンチンを用いる方法(特許文献4)等が開示されているが、いずれも効果は十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-119180号公報
【特許文献2】特開2021-104968号公報
【特許文献3】特許第6723614号公報
【特許文献4】特開2019-218316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、アガリクス茸抽出物を有効成分として含有するオートファジー活性化剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、アガリクス茸抽出物を有効成分として含有するオートファジー活性化剤を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のオートファジー活性化剤は、アガリクス茸抽出物を有効成分として、オートファジーを活性化する効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下本発明を実施するための形態を説明する。
【0009】
本発明のオートファジー活性化剤はアガリクス茸抽出物を有効成分として含有してなることを特徴とするものである。
【0010】
本発明において、アガリクス茸とはハラタケ科ハラタケ属(Agaricus)に属するキノコをいい、具体例としてハラタケ(A.campestris)、カワリハラタケ(ブラジル原産のA.blazei、A.blasiliensis、北米原産のA.subrufescens、欧州原産のA.rufotegulis等)、マッシュルーム(A.bisporus)、シロオオハラタケ又はホースマッシュルーム(A.arvensis)、シロモリノカサ(A.silvicola)、ザラエノハラタケ(A.subrutilescens)等を挙げることができる。本発明ではアガリクス ブラゼイ ムリル(A.blazei Murill)を使用することが好ましい。
【0011】
本発明のオートファジー活性化剤に用いるアガリクス茸抽出物は、アガリクス茸の子実体抽出物、菌糸体抽出物、並びに菌糸体培養濾液のいずれも区別なく使用可能であるが、子実体及び/又は菌糸体の抽出物を用いることが好ましい。
【0012】
アガリクス茸の子実体から抽出物を得る場合、生の子実体或いは乾燥した子実体のいずれを用いても良い。取り扱い上、保存性及び抽出効率等の点から乾燥物が好ましい。またアガリクス茸子実体の抽出物を得る抽出溶媒としては、水、エタノール,メタノール,イソプロパノール,イソブタノール,n-ヘキサノール,メチルアミルアルコール,2-エチルブタノール,n-オクチルアルコールなどのアルコール類、グリセリン,エチレングリコール,エチレングリコールモノメチルエーテル,エチレングリコールモノエチルエーテル,プロピレングリコール,プロピレングリコールモノメチルエーテル,プロピレングリコールモノエチルエーテル,トリエチレングリコール,1,3-ブチレングリコール,ヘキシレングリコール等の多価アルコール又はその誘導体、アセトン,メチルエチルケトン,メチルイソブチルケトン,メチル-n-プロピルケトンなどのケトン類、酢酸エチル,酢酸イソプロピルなどのエステル類、エチルエーテル,イソプロピルエーテル,n-ブチルエーテル等のエーテル類などの極性溶媒から選択される1種又は2種以上の混合溶媒が好適に使用できる。また、リン酸緩衝生理食塩水等の無機塩類を添加した極性溶媒、界面活性剤を添加した極性溶媒を用いることもでき、特に限定はされない。上記の抽出溶媒の中でも、エタノール,メタノール,1,3-ブチレングリコール,水から選択される1種の溶媒又は2種以上の混合溶媒、及びこれらの溶媒に無機塩,界面活性剤を添加した溶媒が好ましく用いられる。
【0013】
抽出方法としては、室温,冷却又は加温した状態で含浸させて抽出する方法、水蒸気蒸留等の蒸留法を用いて抽出する方法、生のアガリクス茸を直接圧搾して抽出物を得る圧搾法等が例示され、これらの方法を単独で又は2種以上を組み合わせて抽出を行う。
【0014】
抽出の際のアガリクス茸子実体と溶媒との比率は特に限定されるものではないが、アガリクス茸子実体1に対して溶媒0.5~1000重量倍、特に抽出操作、効率の点で0.5~100重量倍が好ましい。また、抽出温度は、常圧下で室温から溶剤の沸点以下の範囲とするのが便利であり、抽出時間は抽出温度などによって異なるが、2時間~2週間の範囲とするのが好ましい。
【0015】
また、このようにして得られたアガリクス茸子実体抽出物は、抽出物をそのまま用いることもできるが、効果を失わない範囲内で脱臭,脱色,濃縮等の精製操作を加えたり、さらにはカラムクロマトグラフィー等を用いて分画物として用いたりしてもよい。これらの抽出物や精製物、分画物は、これらから溶媒を除去することによって乾固物とすることもでき、さらにアルコールなどの溶媒に可溶化した形態、或いは乳剤の形態で用いることができる。また、リポソーム等のベシクルやマイクロカプセル等に内包させて用いることもできる。
【0016】
得られた抽出物は公知の安定剤、賦形剤、結合剤等の添加物質とともに含有し、本発明のオートファジー活性化剤とすることができる。添加物質としては本発明の効果を損なわないものであれば特に限定されないが、デンプン、デキストリン、粉末セルロース、結晶セルロース、セルロース誘導体、ショ糖脂肪酸エステル、乳糖、アラビアガム、マンニトール、トレハロース、グルコース、ゼラチン、二酸化ケイ素等を単独で又は組み合わせて利用することが可能である。中でもデキストリンを用いることが好ましい。
【0017】
アガリクス茸菌糸体を得るためのアガリクス茸菌株の培養法としては、担子菌の培養に通常用いられる固体培養法及び液体培養法のいずれを採用しても良いが、後者の方法が生産性の点から好ましく用いられる。アガリクス茸の培養に用いる培地としては、菌の発育に必要な諸栄養が含まれていれば良く、通常の培地処方でよい。すなわち炭素源としては、例えばグルコース,シュークロース,マルトース,でんぷん等資化し得る炭素源であれば利用できる。窒素源としては、例えば硫酸アンモニウム塩,硝酸アンモニウム塩,尿素等、天然の複合栄養源としては、例えばじゃがいもエキス,ニンジンエキス,麦芽エキス,ペプトン,コウジエキス,酵母エキス,酵母末等を用いることができ、その他成長に必要な微量元素無機塩類,ビタミン類などを適宜添加して用いる。
【0018】
培養は、通常好気的条件下で行い、例えば振とう培養法或いは通気撹拌培養法が用いられる。培養中の撹拌は、24時間毎に数分間往復振とう又は回転振とうすればよいが、連続振とうしても良い。培養温度は15℃~40℃、好ましくは20℃~30℃前後である。培地のpHは3.0~9.0の範囲が適切で、4.5~7.0で生育が良好である。また、培養中は照光しないほうが好ましいが、1日11~14時間程度の照光は可能である。
【0019】
培養日数は物理的環境,培地組成などの培養条件によって異なるが、菌糸体の生育が十分認められる期間であれば良く、通常は2~120日間、特に好ましくは5~90日で、最大の菌糸体の生産される時期がよい。
【0020】
培養終了後培養液を遠心分離或いは濾過することにより菌糸体と培養濾液を分離する。遠心分離は100~5000G、好ましくは800~3000Gの重力加速度を与える遠心操作により行うことができる。また、濾過は、3.5~200メッシュ、特に好ましくは4~16メッシュのメンブランフィルターなどを用いて濾別する。
【0021】
アガリクス茸の菌糸体から抽出物を得る場合、上記の通り培養した培養液から得られた生の菌糸体をそのまま、或いは乾燥して用いることができる。取り扱い上、保存性及び抽出効率等の点から乾燥物が好ましい。菌糸体からの抽出溶媒としては、極性溶媒が好ましく用いられる。例えば、水、エタノール,メタノール,イソプロパノール,イソブタノール,n-ヘキサノール,メチルアミルアルコール,2-エチルブタノール,n-オクチルアルコール等のアルコール類、グリセリン,エチレングリコール,エチレングリコールモノメチルエーテル,エチレングリコールモノエチルエーテル,プロピレングリコール,プロピレングリコールモノメチルエーテル,プロピレングリコールモノエチルエーテル,トリエチレングリコール,1,3-ブチレングリコール,ヘキシレングリコール等の多価アルコール又はその誘導体等から選択される1種の溶媒又は2種以上の混合溶媒が使用できる。また、極性溶媒に無機塩類,界面活性剤などを添加して用いても良い。これらの極性溶媒の中でも、エタノール,メタノール,1,3-ブチレングリコール,水から選択される1種の溶媒又は2種以上の混合溶媒、及びこれらの溶媒に無機塩,界面活性剤を添加した溶媒が好ましく用いられる。
【0022】
さらに抽出方法としては、室温下,冷却又は加温した状態で含浸させて抽出する方法、水蒸気蒸留等の蒸留法を用いて抽出する方法、生のアガリクス茸菌糸体を直接圧搾して抽出物を得る圧搾法等が例示され、これらの方法を単独で又は2種以上を組み合わせて抽出を行う。
【0023】
抽出の際のアガリクス茸菌糸体と溶媒との比率は特に限定されるものではないが、アガリクス茸菌糸体1に対して溶媒0.5~1000重量倍、特に抽出操作,効率の点で0.5~100重量倍が好ましい。また抽出温度は、常圧下で5℃から溶剤の沸点以下の範囲とするのが便利であり、抽出時間は抽出温度などによって異なるが、2時間~2週間の範囲とするのが好ましい。
【0024】
また、このようにして得られたアガリクス茸菌糸体抽出物及び濾別した菌糸体培養濾液は、抽出物及び濾液をそのまま用いることもできるが、本発明の効果を失わない範囲内で分画、脱臭,脱色,濃縮等の精製操作を加えて用いることもできる。これらの抽出物および濾液のその精製物、分画物は、これらから溶媒を除去することによって乾固物とすることもでき、さらに精製水などの溶媒に可溶化又は懸濁化した形態、或いは乳剤の形態で皮膚外用剤に添加することができる。また、リポソーム等のベシクルやマイクロカプセル等に内包させて用いることもできる。
【0025】
得られた抽出物および濾液は公知の安定剤、賦形剤、結合剤等の添加物質とともに含有し、本発明のオートファジー活性化剤とすることができる。添加物質としては本発明の効果を損なわないものであれば特に限定されないが、デンプン、デキストリン、粉末セルロース、結晶セルロース、セルロース誘導体、ショ糖脂肪酸エステル、乳糖、アラビアガム、マンニトール、トレハロース、グルコース、ゼラチン、二酸化ケイ素等を単独で又は組み合わせて利用することが可能である。中でもデキストリンを用いることが好ましい。
【0026】
本発明のオートファジー活性化剤の剤型については、特に限定されず、固体状、半固体状、又は液体状のいずれであってもよい。
【実施例0027】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、これにより本発明の範囲が限定されるものではない。なお、配合量は特に断りのない限り質量%である。
【0028】
まず、実施例に用いるアガリクス茸抽出物の調製方法を示す。
【0029】
[アガリクス茸抽出物]
アガリクスブラゼイムリルの子実体・菌糸体混合抽出物にデキストリンを添加したものをアガリクス茸抽出物として使用した。
【0030】
[オートファジー活性化作用]
HL60(メーカー:JCRB、カタログ番号:JCRB0085)を、培地を用いて起眠し、COインキュベーター(37℃、5%CO、湿潤、以下同様)で細胞密度1×10cells/mL~5×10cells/mLとなるよう懸濁培養した。
96ウェルblack plateに2×10cells/100μLとなるよう分化培地を用いて播種し、4日間培養して好中球に分化させた。分化3日目に新たな分化培地に半量交換した。
次に2×濃度のアガリクス茸抽出物を添加した分化培地に半量交換して1×濃度とし、16時間培養後アガリクス茸抽出物処理を行った。アガリクス茸抽出物処理完了2時間前にchloroquine60μM添加分化培地を1/5量添加して10μMとし、2時間chloroquine処理を行った。
各ウェルをCYTO-ID染色液(5%FBS添加1×Assay bufferに、Cyto-ID Green detection Reagentを1/500vol. Hoechst33342を1/1000vol. 添加して調製) 100μLに交換し、COインキュベーターで30分インキュベートした後、5%FBS添加1×Assay buffer 100μLに交換した。
続いて、Operetta CLSを用いて、各ウェル中央部9視野を、20倍対物レンズを用いて、核を青色蛍光、CYTO-ID陽性小胞(オートファーゴソーム)を緑色蛍光として撮影した。
画像を取得後、ハイコンテントアナリシスソフトウェア(Harmony4.6)を用いて核、細胞膜、細胞質、細胞質中のCYTO-ID陽性小胞を検出および定量し、CYTO-ID陽性小胞数/核数により細胞当たりの細胞質中CYTO-ID陽性小胞数を算出した。
また、アガリクス茸抽出物非添加群と陽性対照/アガリクス茸抽出物添加群の差を、アガリクス茸抽出物非添加群をコントロールとしたDunnett’s testにより検定した。有意水準は両側5%とした。
さらに、アガリクス茸抽出物非添加群のオートファジー活性値を100とした場合の相対値を算出した。結果を表1に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
表1に示した通り、アガリクス茸抽出物はオートファジー活性値を上昇させ、オートファジーを活性化する効果を発揮することが明らかとなった。従って、本発明のオートファジー活性化剤はオートファジーを活性化する効果を発揮する。