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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023104656
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】木材被覆RC部材とその形成方法
(51)【国際特許分類】
   E04C 3/36 20060101AFI20230721BHJP
   E04B 1/30 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
E04C3/36
E04B1/30 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022005785
(22)【出願日】2022-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】千▲浜▼ 彬比古
【テーマコード(参考)】
2E163
【Fターム(参考)】
2E163FA02
2E163FF42
(57)【要約】
【課題】汚れ対策を不要にした木材被覆RC部材とその形成方法を提供すること。
【解決手段】木材被覆RC部材50は、先行施工もしくは先行製作されている鉄筋コンクリート製のRC部材10の表面に、木質面材20が取り付けられてRC部材10を被覆している。また、木材被覆RC部材の形成方法は、先行施工もしくは先行製作されている鉄筋コンクリート製のRC部材10の表面に、木質面材20を取り付けてRC部材10を被覆する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先行施工もしくは先行製作されている鉄筋コンクリート製のRC部材の表面に、木質面材が取り付けられて、前記RC部材を被覆していることを特徴とする、木材被覆RC部材。
【請求項2】
前記木質面材が、前記RC部材の表面に対して接着剤により固定されていることを特徴とする、請求項1に記載の木材被覆RC部材。
【請求項3】
前記木質面材が、前記RC部材に対してさらにアンカーにより固定され、
前記アンカーが、前記RC部材に埋設される主筋及びせん断補強筋と干渉しない位置に埋設されていることを特徴とする、請求項2に記載の木材被覆RC部材。
【請求項4】
前記木質面材は、RC部材側にある内側木質面材と、前記内側木質面材に積層する外側木質面材を含み、
前記内側木質面材が接着剤とアンカーにより前記RC部材に固定され、前記アンカーが前記RC部材に埋設される主筋及びせん断補強筋と干渉しない位置に埋設されており、
前記外側木質面材が前記内側木質面材に対して接着剤により固定されていることを特徴とする、請求項1に記載の木材被覆RC部材。
【請求項5】
前記先行施工されているRC部材は、現場施工されているRC柱もしくはRC梁であることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の木材被覆RC部材。
【請求項6】
前記先行製作されているRC部材は、プレキャストコンクリート製のPCa部材である、PCa柱、PCa仕口、PCa梁のいずれか一種であることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の木材被覆RC部材。
【請求項7】
先行施工もしくは先行製作されている鉄筋コンクリート製のRC部材の表面に、木質面材を取り付けて前記RC部材を被覆することを特徴とする、木材被覆RC部材の形成方法。
【請求項8】
前記木質面材を、前記RC部材の表面に対して接着剤により固定することを特徴とする、請求項7に記載の木材被覆RC部材の形成方法。
【請求項9】
前記木質面材を、前記RC部材に対してさらにアンカーにより固定し、その際に、前記アンカーを、前記RC部材に埋設される主筋及びせん断補強筋と干渉しない位置に埋設することを特徴とする、請求項8に記載の木材被覆RC部材の形成方法。
【請求項10】
前記木質面材は、RC部材RC部材側にある内側木質面材と、前記内側木質面材に積層する外側木質面材を含み、
前記内側木質面材を接着剤とアンカーにより前記RC部材に固定し、その際に、前記アンカーは、前記RC部材に埋設される主筋及びせん断補強筋と干渉しない位置に予め埋設しておく、もしくは、後施工により埋設し、
前記RC部材に前記内側木質面材を固定した後に、前記内側木質面材に対して接着剤により前記外側木質面材を固定することを特徴とする、請求項7に記載の木材被覆RC部材の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材被覆RC部材とその形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今の環境影響への負荷低減に対する高まりや、環境配慮への盛んな取り組みの中で、建築分野においては木質材料を有効に活用した技術開発が盛んに行われている。この木質材料を活用した主たる技術として、木造建築物の設計及び施工が挙げられる。
【0003】
ところで、建築物には、RC(Reinforced Concrete)造やSRC(Steel Reinforced Concrete)造の建築物が存在し、これらの建築物は木造建築物に比べて強度や剛性が高く、高層建築物や超高層建築物を実現する。
【0004】
そこで、建築物の構成部材に関し、上記する木質材料が有効活用されながら、RC部材の強度や剛性を備える構成部材が望まれる。
【0005】
ここで、特許文献1には、三枚以上の長尺な四角形状の木製板材を相互に接合して中空空間を備えた中空柱を製造し、中空空間に鉄筋を配し、コンクリートを充填することにより製造される表面木質柱と、表面木質柱の製造方法が提案されている。この製造方法では、木製板材により形成される中空柱が、コンクリート充填時の型枠として機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-67026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の表面木質柱とその製造方法によれば、木質材料が有効活用されながら、RC部材の強度や剛性を備える柱を製造することができる。しかしながら、木製板材により形成される中空柱を型枠として利用しながらその内部にコンクリートを充填することから、コンクリートが木質材料の表面に付着して汚れてしまう可能性が極めて高く、木質材料を外観意匠性を付与する意匠材料として機能させるためには、表面に付着した汚れを洗い流す後処理が必要になる。あるいは、このような汚れの付着を防止するべく、木質材料に対して予めコンクリート付着防止のための養生を施す等の措置が必要になり、いずれにしても何らかの汚れ対策が必要になるといった課題がある。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、汚れ対策を不要にした木材被覆RC部材とその形成方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成すべく、本発明による木材被覆RC部材の一態様は、
先行施工もしくは先行製作されている鉄筋コンクリート製のRC部材の表面に、木質面材が取り付けられて、前記RC部材を被覆していることを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、先行施工もしくは先行製作されている鉄筋コンクリート製のRC部材の表面に木質面材が取り付けられていることにより、汚れ対策を不要にしながら、木質材料が有効活用されながら、RC部材の強度や剛性を備える建築物構成部材となる。
【0011】
ここで、木材被覆RC部材を構成する木質面材も一定の剛性を有していることから、木質面材は構造材料として機能し、かつ、木材の醸し出す外観意匠性を付与する意匠材料としても機能する。
【0012】
また、「先行施工されている鉄筋コンクリート製のRC部材」とは、現場において施工済みのRC部材であるRC柱やRC梁、RC壁やRCスラブ等を含み、新設のRC部材の他、建設から数年乃至数十年が経過した既設のRC部材が含まれる。一方、「先行製作されている鉄筋コンクリート製のRC部材」とは、工場等で製作されているプレキャストコンクリート部材(プレキャストRC部材)を含んでいる。さらに本明細書において、「RC部材」には、文字通りのRC部材の他に、SRC部材も含まれるものとする。
【0013】
また、本発明による木材被覆RC部材の他の態様において、
前記木質面材が、前記RC部材の表面に対して接着剤により固定されていることを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、RC部材の表面に木質面材が接着剤を介して固定されていることにより、製作性もしくは施工性に優れた木材被覆RC部材となる。
【0015】
また、本発明による木材被覆RC部材の他の態様において、
前記木質面材が、前記RC部材に対してさらにアンカーにより固定され、
前記アンカーが、前記RC部材に埋設される主筋及びせん断補強筋と干渉しない位置に埋設されていることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、RC部材に対して、木質面材が接着剤に加えてさらにアンカーによって固定されていることにより、RC部材と木質面材の固定強度の高い木材被覆RC部材となる。
【0017】
また、本発明による木材被覆RC部材の他の態様において、
前記木質面材は、RC部材側にある内側木質面材と、前記内側木質面材に積層する外側木質面材を含み、
前記内側木質面材が接着剤とアンカーにより前記RC部材に固定され、前記アンカーが前記RC部材に埋設される主筋及びせん断補強筋と干渉しない位置に埋設されており、
前記外側木質面材が前記内側木質面材に対して接着剤により固定されていることを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、接着剤とアンカーによってRC部材に固定されている内側木質面材に対して、接着剤を介して外側木質面材が固定されていることにより、アンカー頭部の露出を外側木質面材にて防止でき、木材被覆RC部材の外観意匠性の低下を抑制することができる。
【0019】
また、本発明による木材被覆RC部材の他の態様において、
前記先行施工されているRC部材は、現場施工されているRC柱もしくはRC梁であることを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、木材被覆RC部材が現場施工されているRC柱もしくはRC梁であることにより、例えば既設のRC柱やRC梁が、木質調の外観意匠性を有する態様でリニューアルされた柱部材や梁部材となる。築古のRC柱等においては、表面にクラック等が生じているケースが往々にしてあるが、表面に木質面材が後付けされることにより、RC柱等の表面のクラック等の目隠しにも繋がる。
【0021】
また、本発明による木材被覆RC部材の他の態様において、
前記先行製作されているRC部材は、プレキャストコンクリート製のPCa部材である、PCa柱、PCa仕口、PCa梁のいずれか一種であることを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、先行製作されているPCa柱、PCa仕口、PCa梁等のPCa部材の表面に木質面材が後付けされていることにより、汚れ対策を不要にして効率的に、PCa部材と木質面材とを備えた木材被覆RC部材が製作される。
【0023】
また、本発明による木材被覆RC部材の形成方法の一態様は、
先行施工もしくは先行製作されている鉄筋コンクリート製のRC部材の表面に、木質面材を取り付けて前記RC部材を被覆することを特徴とする。
【0024】
本態様によれば、先行施工もしくは先行製作されている鉄筋コンクリート製のRC部材の表面に木質面材を後付けで取り付けることにより、汚れ対策を不要にして効率的に、木材被覆RC部材を施工もしくは製作することができる。
【0025】
また、本発明による木材被覆RC部材の形成方法の他の態様は、
前記木質面材を、前記RC部材の表面に対して接着剤により固定することを特徴とする。
【0026】
本態様によれば、RC部材の表面に木質面材を接着剤を介して固定することにより、木材被覆RC部材をより一層効率的に施工もしくは製作することができる。
【0027】
また、本発明による木材被覆RC部材の形成方法の他の態様は、
前記木質面材を、前記RC部材に対してさらにアンカーにより固定し、その際に、前記アンカーを、前記RC部材に埋設される主筋及びせん断補強筋と干渉しない位置に埋設することを特徴とする。
【0028】
本態様によれば、RC部材に対して、木質面材を接着剤に加えてさらにアンカーによって固定することにより、RC部材と木質面材の固定強度の高い木材被覆RC部材を施工もしくは製作できる。
【0029】
また、本発明による木材被覆RC部材の形成方法の他の態様において、
前記木質面材は、RC部材RC部材側にある内側木質面材と、前記内側木質面材に積層する外側木質面材を含み、
前記内側木質面材を接着剤とアンカーにより前記RC部材に固定し、その際に、前記アンカーは、前記RC部材に埋設される主筋及びせん断補強筋と干渉しない位置に予め埋設しておく、もしくは、後施工により埋設し、
前記RC部材に前記内側木質面材を固定した後に、前記内側木質面材に対して接着剤により前記外側木質面材を固定することを特徴とする。
【0030】
本態様によれば、RC部材に対して内側木質面材を接着剤とアンカーによって固定し、内側木質面材に対して接着剤によって外側木質面材を固定することにより、アンカー頭部の露出を外側木質面材にて防止でき、木材被覆RC部材の外観意匠性の低下を抑制することができる。
【0031】
ここで、施工済みもしくは製作済みのRC部材に対してアンカーが打設される場合は、設計上のかぶりや配筋ピッチ等に基づいて主筋とせん断補強筋の位置が特定され、これらの鉄筋と干渉しない位置にアンカーが打設される。一方、工場等でRC部材がPCa部材として製作される場合は、主筋やせん断補強筋の配筋の際にアンカーが設置された後にコンクリートが打設され、アンカーを備えた状態でRC部材が製作される。そのため、このアンカーには、RC部材の内部に埋設される端部が頭付きであるアンカーや、RC部材の対向する一対の側面に跨がるアンカーを適用することができるため、耐引き抜き性の高いアンカーにて木質面材を取り付けることが可能になる。
【発明の効果】
【0032】
以上の説明から理解できるように、本発明の木材被覆RC部材とその形成方法によれば、汚れ対策を不要にした木材被覆RC部材とその形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】第1実施形態に係る木材被覆RC部材の一例の斜視図である。
図2A】第2実施形態に係る木材被覆RC部材の一例の斜視図であって、かつ、第1実施形態に係る木材被覆RC部材の形成方法の一例の工程図である。
図2B】第2実施形態に係る木材被覆RC部材の一例の縦断面図である。
図3】第3実施形態に係る木材被覆RC部材の一例の縦断面図である。
図4】第4実施形態に係る木材被覆RC部材の一例の縦断面図である。
図5】第5実施形態に係る木材被覆RC部材の一例の斜視図であって、かつ、第2実施形態に係る木材被覆RC部材の形成方法の一例の工程図である。
図6A】第1実施形態に係る木材被覆RC部材の形成方法の一例の工程図である。
図6B図6Aに続いて、第1実施形態に係る木材被覆RC部材の形成方法の一例の工程図である。
図7A】第2実施形態に係る木材被覆RC部材の形成方法の一例の工程図である。
図7B図7Aに続いて、第2実施形態に係る木材被覆RC部材の形成方法の一例の工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、実施形態に係る木材被覆RC部材とその形成方法の一例を、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0035】
[第1実施形態に係る木材被覆RC部材]
はじめに、図1を参照して、第1実施形態に係る木材被覆RC部材の一例について説明する。ここで、図1は、第1実施形態に係る木材被覆RC部材の一例の斜視図である。
【0036】
木材被覆RC部材50は、先行施工もしくは先行製作されている鉄筋コンクリート製で細長の直方体状のRC部材10の四つの側面にそれぞれ、木質面材20が取り付けられててRC部材10の全側面を被覆していることにより構成される。RC部材10は、既設のRC柱やRC梁、もしくは、工場等により製作されるプレキャストコンクリート製の柱や梁、仕口(PCa柱、PCa梁、PCa仕口)等である。既設のRC柱等は、例えば築古のRC建築物を構成するRC柱であり、PCa部材である場合は、工場にて先行製作されているPCa柱である。ここで、PCa部材が広幅のRC壁やRCスラブ(床)等であってもよく、この形態では、RC壁等の一対の広幅面に対して広幅の木質面材が固定されることになる。
【0037】
RC柱10は、複数の主筋15と、各主筋15を囲繞する複数のせん断補強筋16とを有する。ここで、RC柱10のせん断補強筋16は帯筋であり、RC部材10がRC梁の場合のせん断補強筋はあばら筋もしくはスターラップとなる。
【0038】
木質面材20には、無垢材や集成材、単板積層材(LVL:Laminated Veneer Lumber)、合板等、様々な面材が適用できる。
【0039】
RC柱10の四つの側面に対してそれぞれ、接着剤30を介して木質面材20が固定されることにより、木材被覆RC部材50が形成される。ここで、RC部材10が円柱状の場合は、例えば薄厚の一枚の木質面材がRC部材10の側面に巻装されて円筒状を呈することにより、RC部材10の周囲を被覆する。
【0040】
接着剤には、耐水性や耐湿性、耐アルカリ性、耐熱性、耐摩耗性に優れているエポキシ系接着剤、硬化速度の早いアクリル系接着剤、柔軟性があって耐衝撃性のあるシリコーン系接着剤、安価な酢酸ビニル系接着剤等が適用される。
【0041】
木材被覆RC部材50によれば、先行施工もしくは先行製作されている鉄筋コンクリート製のRC部材10の表面に木質面材20が接着剤30を介して取り付けられていることにより、汚れ対策を不要にしながら、木質材料が有効活用され、RC部材10の強度や剛性を備えた建築物の柱部材や梁部材となる。
【0042】
また、RC部材10が築古のRC建築物を構成するRC柱等の場合は、その表面に生じているクラックを木質面材20にて目隠ししながら、木材の醸し出す外観意匠性を付与した柱としてリニューアルすることができる。
【0043】
さらに、内側にRC部材10があることから、火災時においては、外側の木質面材が燃焼して炭化するものの、内側のRC部材が燃え止まることにより、建築物の崩壊を抑制することができる。尚、木材被覆RC部材50の形成に当たり、木材を伐採して木質面材として使用する場合は、伐採量相当の木材を植樹することにより、実質的に、使用された木材の保有炭素量に見合うCO削減を図ることができ、環境影響負荷低減を図ることに繋がる。
【0044】
[第2実施形態に係る木材被覆RC部材]
次に、図2A図2Bを参照して、第2実施形態に係る木材被覆RC部材の一例について説明する。ここで、図2Aは、第2実施形態に係る木材被覆RC部材の一例の斜視図であり、図2Bは、第2実施形態に係る木材被覆RC部材の一例の縦断面図である。ここで、図2Aは、以下で説明する第1実施形態に係る木材被覆RC部材の形成方法の一例の工程図でもある。
【0045】
木材被覆RC部材50Aは、直方体状のRC部材10の四つの側面にそれぞれ、接着剤30を介して四つの木質面材20Aが接着されていることに加えて、さらにRC部材10に埋設されるアンカー40にて木質面材20Aが固定される点において、木材被覆RC部材50と相違する。
【0046】
木質面材20Aは、その外側面に複数の座刳り溝25を備えており、座刳り溝25を介して、アンカー40が後施工されてRC部材10に対してねじ込みもしくは打設される。
【0047】
アンカー40は、先端が先鋭の軸部41と、軸部41の端部にある頭部42を有し、軸部41がRC部材10の主筋15やせん断補強筋16と干渉しない位置に埋設され、頭部42が座刳り溝25の溝底に定着される。
【0048】
そして、座刳り溝25においてアンカー40の頭部42を目隠しする間詰め材26が詰め込まれることにより、頭部42の露出を防止して外観意匠性の低下を抑制する。
【0049】
木材被覆RC部材50Aによれば、上記する木材被覆RC部材50と同様の効果を奏することに加えて、木質面材20Aが接着剤30とアンカー40によってRC部材10に固定されることにより、RC部材10と木質面材20の固定強度の高い木材被覆RC部材が形成される。
【0050】
[第3実施形態に係る木材被覆RC部材]
次に、図3を参照して、第3実施形態に係る木材被覆RC部材の一例について説明する。ここで、図3は、第3実施形態に係る木材被覆RC部材の一例の縦断面図である。
【0051】
木材被覆RC部材50Bは、軸部41の両端に頭部42,43を有するアンカー40Aを備えている点において、木材被覆RC部材50Aと相違する。
【0052】
例えば、RC部材10に埋設される内側の頭部43は軸部41と一体に製作されており、木質面材20Aを固定する外側の頭部は、軸部41に対して着脱自在な後付け頭部42である。
【0053】
図示例のRC部材10は例えばPCa柱等であり、工場等における製作の際に、頭部43と軸部41が埋設された状態でRC部材10が先行して製作される。尚、RC部材10の製作の際に木質面材20Aは型枠として使用せず、コンクリート打設用の型枠を使用してRC部材10を製作した後、型枠を脱型して木質面材20Aを取り付ける方法により木材被覆RC部材50Bが製作される。この製作方法により、木質面材20Aの製作に際して汚れ対策は不要になり、「先行製作されたRC部材10」に対して木質面材20Aが後付けされることになる。
【0054】
コンクリート打設の際の型枠が脱型され、製作されたRC部材10の側面からは複数のアンカー40Aの軸部41の端部が露出している。各軸部41に対応する位置に座刳り溝25を備えた木質面材20Aを、接着剤30を介してRC部材10の側面に取り付けた後、座刳り溝25の内部に突出する軸部41の端部のネジ溝に対して、後付け頭部42の備えるネジ孔を螺合することにより、RC部材10に対して木質面材20Aが接着剤30とアンカー40Aにより固定される。そして、木材被覆RC部材50Aと同様に、座刳り溝25に間詰め材26が詰め込まれることにより、後付け頭部42の露出を防止して外観意匠性の低下を抑制する。
【0055】
木材被覆RC部材50Bによれば、上記する木材被覆RC部材50Aと同様の効果を奏することに加えて、RC部材10に埋設されるアンカー40Aの内側端部にも頭部43が設けられていることにより、耐引き抜き性が一層高いアンカー40Aにて、RC部材10と木質面材20Aの間の固定強度がより一層高い木材被覆RC部材が形成される。
【0056】
[第4実施形態に係る木材被覆RC部材]
次に、図4を参照して、第4実施形態に係る木材被覆RC部材の一例について説明する。ここで、図4は、第4実施形態に係る木材被覆RC部材の一例の縦断面図である。
【0057】
木材被覆RC部材50Cは、アンカー40Bの軸部41AがRC部材10の対向する側面に跨がって延設していて、双方の側面にある木質面材20Aの座刳り溝25にアンカー40Bの両端がそれぞれ突出し、双方の端部に後付け頭部44が取り付けられる点において、木材被覆RC部材50A,50Bと相違する。
【0058】
図示するRC部材10の製作は、主筋15やせん断補強筋16を包囲するように不図示の矩形枠状の型枠を設置し、対向する型枠にアンカー40Bの軸部41Aを貫通させ、型枠の外側へ突出した軸部41Aの端部を利用して不図示のセパレータにて型枠の背面を固定し、型枠内にコンクリートを充填することにより、RC部材10が製作される。
【0059】
コンクリート打設の際の型枠が脱型され、製作されたRC部材10の対向する側面からは、共通の軸部41Aの端部が突出している。このような複数の軸部41Aが、RC部材10の各側面から突出している。そして、軸部41Aに対応する位置に座刳り溝25を備えた木質面材20Aを、接着剤30を介してRC部材10の側面に取り付けた後、座刳り溝25の内部に突出する軸部41Aの端部のネジ溝に対して、後付け頭部44の備えるネジ孔を螺合することにより、RC部材10に対して木質面材20Aが接着剤30とアンカー40Bにより固定される。そして、木材被覆RC部材50Aと同様に、座刳り溝25に間詰め材26が詰め込まれることにより、後付け頭部44の露出を防止して外観意匠性の低下を抑制する。
【0060】
木材被覆RC部材50Cによれば、上記する木材被覆RC部材50Aと同様の効果を奏することに加えて、RC部材10の対向する側面に跨がるアンカー40Bにて双方の側面に木質面材20Aが固定されることにより、耐引き抜き性がより一層高いアンカー40Bにて、RC部材10と木質面材20Aの間の固定強度がより一層高い木材被覆RC部材が形成される。
【0061】
[第5実施形態に係る木材被覆RC部材]
次に、図5を参照して、第5実施形態に係る木材被覆RC部材の一例について説明する。ここで、図5は、第5実施形態に係る木材被覆RC部材の一例の斜視図である。ここで、図5は、以下で説明する第2実施形態に係る木材被覆RC部材の形成方法の一例の工程図でもある。
【0062】
木材被覆RC部材50Dは、RC部材10側にある内側木質面材20Bと、内側木質面材20Bに積層する外側木質面材20Cを有する点において、木材被覆RC部材50A、50B,50Cと相違する。
【0063】
内側木質面材20Bは、図3に示す木質面材20Aと同様に、接着剤30とアンカー40Aにより、RC部材10に固定される。ここで、内側木質面材20Bは、図1に示す木質面材20と同様に接着剤30のみによりRC部材10に固定されてもよいし、図2A,2Bに示す木質面材20Aと同様に接着剤30と後施工されるアンカー40により固定されてもよいし、図4に示す木質面材20Aと同様に対向する木質面材20Aに跨がるアンカー40Bと接着剤30によりRC部材10に固定されてもよい。
【0064】
RC部材10に対して固定される内側木質面材20Bに対して、外側木質面材20Cが別途の接着剤30を介して固定されることにより、木材被覆RC部材50Dが形成される。
【0065】
木材被覆RC部材50Dによれば、上記する木材被覆RC部材50A等と同様の効果を奏することに加えて、内側木質面材20Bが外側木質面材20Cにて被覆されていることにより、アンカー40Aの後付け頭部42の露出を外側木質面材20Cにて防止できるだけでなく、間詰め材も外部に露出しないことから、木材被覆RC部材の外観意匠性の低下をより一層抑制することができる。
【0066】
[第1実施形態に係る木材被覆RC部材の形成方法]
次に、図6A図6B及び図2Aを参照して、第1実施形態に係る木材被覆RC部材の形成方法の一例について説明する。ここで、図6A図6B、及び図2Aは順に、第1実施形態に係る木材被覆RC部材の形成方法の一例の工程図である。ここで、以下、図2A図5に示す木材被覆RC部材50A,50Dを取り上げて、それらの形成方法について詳説する。
【0067】
図6Aに示すRC部材10は、既設の直方体状の建築物のRC柱であり、その表面に多数のクラックCを含んでいる。すなわち、「先行施工されている鉄筋コンクリート製のRC部材」である。
【0068】
図6Bに示すように、RC部材10の四つの側面に対して接着剤30を塗布し、四枚の木質面材20Aを接着する。
【0069】
次に、木質面材20Aの備える各座刳り溝25を介して後施工のアンカー40をRC部材10に対してねじ込みもしくは打設することにより、RC部材10に対して四枚の木質面材20Aを固定し、RC部材10の周囲を被覆する。最後に、各座刳り溝25に対して間詰め材26を詰め込むことにより、図2Aに示す木材被覆RC部材50Aが形成される。
【0070】
図示する形成方法によれば、木質面材20Aを有効利用し、既設のRC部材10のクラックCを目隠ししながら、外観意匠性に優れた木材被覆RC部材50Aを施工することができる。
【0071】
[第2実施形態に係る木材被覆RC部材の形成方法]
次に、図7A図7B及び図5を参照して、第2実施形態に係る木材被覆RC部材の形成方法の一例について説明する。ここで、図7A図7B、及び図5は順に、第2実施形態に係る木材被覆RC部材の形成方法の一例の工程図である。
【0072】
図7Aに示すように、工場等において、PCa柱用の複数の主筋15と複数のせん断補強筋16を組み付け、さらに、主筋15とせん断補強筋16と干渉いない位置に複数のアンカー40Aを配設し、矩形枠状の型枠Kを配設する。型枠Kは、各アンカー40Aに対応する位置に貫通孔K1を有しており、貫通孔K1に対して対応するアンカー40Aの軸部41を貫通させた後、後付け頭部42を軸部41に螺合することにより、型枠Kが複数のアンカー40Aに固定される。軸部41の他端には、軸部41と一体に製作されている頭部43が設けられている。
【0073】
次に、矩形枠状の型枠Kの内部にコンクリートを打設し、コンクリートの硬化を待って後付け頭部42を軸部41から取り外し、型枠Kを脱型する。型枠Kの脱型により、RC部材10の四つの側面にはそれぞれ、複数のアンカー40Aの軸部41が突出している。
【0074】
突出している各軸部41に対応する位置に座刳り溝25を備えた内側木質面材20Bを用意し、RC部材10の側面に接着剤30を塗布した後、各座刳り溝25に対して対応するアンカー40Aの軸部41の端部を挿通させることにより、RC部材10の側面に対して内側木質面材20Bを接着する。次いで、図7Bに示すように、座刳り溝25に突出する軸部41の端部に対して後付け頭部42を螺合することにより、RC部材10に対して接着剤30とアンカー40Aにより内側木質面材20Bが固定される。
【0075】
最後に、内側木質面材20Bの表面に別途の接着剤30を塗布し、外側木質面材20Cを接着することにより、図5に示すように、RC部材10の四つの側面を囲繞する内側木質面材20Bがさらに外側木質面材20Cにて囲繞された、木材被覆RC部材50Dが形成される。
【0076】
図示する形成方法によれば、先行製作されたRC部材10に対して内側木質面材20Bと外側木質面材20Cが順次後付けされることから、木質面材を有効利用しながら、製作の際の木質面材の汚れ対策を不要にした効率的な形成方法により、木材被覆RC部材50Dを製作することができる。
【0077】
上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0078】
10:RC部材(RC柱)
15:主筋
16:せん断補強筋
20,20A:木質面材
20B:内側木質面材
20C:外側木質面材
25:座刳り溝
26:間詰め材
30:接着剤
40,40A,40B:アンカー
41,41A:軸部
42:後付け頭部(頭部)
43:頭部
44:後付け頭部(頭部)
50,50A,50B,50C,50D:木材被覆RC部材
K:型枠
C:クラック
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B