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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023010474
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】電子ラッチ錠
(51)【国際特許分類】
   E05B 47/00 20060101AFI20230113BHJP
【FI】
E05B47/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021114661
(22)【出願日】2021-07-10
(71)【出願人】
【識別番号】504078545
【氏名又は名称】スリーピース株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000131511
【氏名又は名称】株式会社シブタニ
(74)【代理人】
【識別番号】100104396
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 信昭
(72)【発明者】
【氏名】西山弘信
(72)【発明者】
【氏名】高口 剛
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 善洋
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電圧が限界電圧未満になったことを管理者・使用者に認識させることのできる電子ラッチ錠を提供する。
【解決手段】電子駆動源25と、開錠位置と施錠位置の間で揺動するロック部材5と、当該ロック部材が少なくとも開錠位置にあることを検知する位置センサー29cと、当該電子駆動源を駆動させるための電力を供給する電力供給源35と、当該電子駆動源に対する電力供給を制御する駆動制御部30aと、を有する電子ラッチ錠であって、電力供給するも当該位置センサーが当該ロック部材の当該開錠位置到達を検知しない場合に、エラー信号を生成するための駆動監視部30bと、当該エラー信号を出力するためのエラー信号出力端子29eと、が設けられてなる。エラー信号に基づいて告知することにより管理者・使用者が限界電圧未満になったことを認識することができる。
【選択図】図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、
当該ケーシング内に配された電子駆動源と、
当該電子駆動源にカム従動して開錠位置と施錠位置の間で揺動するロック部材と、
当該ロック部材が少なくとも開錠位置にあることを検知する位置センサーと、
当該ケーシングの外部又は内部に配された、当該電子駆動源を駆動させるための電力を供給する電力供給源と、
当該位置センサーの検知結果を通じて、当該電子駆動源に対する電力供給を制御する駆動制御部と、を有する電子ラッチ錠であって、
当該駆動制御部が所定期間電力供給を指示するも当該位置センサーが当該ロック部材の当該開錠位置到達を検知しない場合に、エラー信号を生成するための駆動監視部と、
当該エラー信号を当該ケーシング外へ出力するためのエラー信号出力端子と、が設けられてなる、
ことを特徴とする電子ラッチ錠。
【請求項2】
前記電力供給源から供給される電力の供給電圧Eを監視する電圧監視部が設けられ、
当該供給電圧Eが前記電子駆動源を駆動不可となる所定の限界電圧Eg未満(E<Eg)まで低下したことを当該電圧監視部が検知した場合、前記駆動監視部が前記エラー信号を生成するように構成されてなる、
ことを特徴とする請求項1記載の電子ラッチ錠。
【請求項3】
前記電力供給源は、電池により構成され、
前記駆動監視部は、前記エラー信号を生成する前に予告エラー信号を生成するように構成され、
当該予告エラー信号は前記供給電圧Eが前記限界電圧Egより僅かに高電圧である所定の準限界電圧Ej未満になった(Eg≦E<Ej)ことを前記電圧監視部が検知した際に生成されるように構成されてなる、
ことを特徴とする請求項2記載の電子ラッチ錠。
【請求項4】
前記予告エラー信号は間欠信号で構成されてなる、
ことを特徴とする請求項3記載の電子ラッチ錠。
【請求項5】
前記電子駆動源は、モーター又はソレノイドで構成されてなる、
ことを特徴とする請求項1乃至4何れか記載の電子ラッチ錠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示される技術は、住宅、職場、公共施設等の施設においてロッカー扉等に使用される電子ラッチ錠に関する。
【背景技術】
【0002】
電子ラッチ錠に用いられるプランジャーの出没駆動源としてソレノイドを使用することは、よく知られている(たとえば、特許文献1)。ここで、たとえばロッカーについて、その内に押し込まれた荷物の復帰圧力でロッカーの扉が開放方向に押されると、これによって、ロックのため突き出し状態のプランジャーが引っ張られた状態になる。この状態で開錠しようとするときのソレノイドは、荷物の圧力に抗しながらプランジャーを吸引することになる。このときの吸引力は消費電力が高くなると大きくなり、ストロークが長くなると小さくなる。
【0003】
一方、特許文献2が開示する電子ラッチ錠は、可逆モーターによって回転しネジ構造によるネジ進行によって出没するプランジャーを有している。荷物の圧力が大きくなることは負荷が大きくなることであり、負荷が大きくなることは必要トルクが高くなることであり、そのために消費電力も増えることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許3886498号公報
【特許文献2】特開2001-248338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した先行技術に係る電子ラッチ錠のソレノイド若しくはモーターなどの電子駆動源は、安定継続的な電力供給が前提になっている。そして、その電力供給源は、一般に商用電源か電池である。しかし、商業電源であっても、変圧・整流・配電過程で生じた故障による電圧の低下があり得る。電池であれば、使用によるものと自然を含む放電により電圧低下が起こり、電子駆動源の駆動に必要な最低電圧(限界電圧)以下の値になることは必須である。供給電力の電圧が限界電圧未満になると、電子駆動源が駆動できなくなる。
【0006】
前述したように電子ラッチ錠はロッカー扉などに使用されるものである。特に電池駆動の電子ラッチ錠は、いつだか分からないが必ず来る電池切れの中で使用されることになる。電子駆動源が駆動せずロッカー扉を開錠できないと、ロッカー内に入れた荷物などを取り出せない。駅ロッカーに預けた荷物を電車の発車直前に取り出そうとしたが、電池切れでロッカーを開錠できない場合を想像すれば、その不都合は容易に理解できるであろう。電池切れ自体は仕方のないことであるが、そのロッカーの電子ラッチ錠は電池切れで使用できない、若しくは電池の交換時期が近い、ことを管理者・使用者が認識できれば、先の不都合は大きく改善されるはずである。しかしながら、先に示した従来の電子ラッチ錠は、そのための手段を有しない。電圧低下により電子ラッチ錠に不都合が生じることは、商用電源においても同じである。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、電力供給源、特に電池の電圧が限界電圧以下になったこと、また、駆動可能であるも限界電圧以下になる時期が近いことを管理者・使用者に認識させることのできる電子ラッチ錠を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するため本発明は、次の構成上の特徴を有している。
【0009】
(請求項1記載の発明の特徴)
請求項1の電子ラッチ錠は、ケーシングと、当該ケーシング内に配された電子駆動源と、当該電子駆動源にカム従動して開錠位置と施錠位置の間で揺動するロック部材と、を有する。さらに、当該ロック部材が少なくとも開錠位置にあることを検知する位置センサーと、当該ケーシングの外部又は内部に配された、当該電子駆動源を駆動させるための電力を供給する電力供給源と、当該位置センサーの検知結果を通じて、当該電子駆動源に対する電力供給を制御する駆動制御部と、を有する。ここで、当該駆動制御部が所定期間電力供給を指示するも当該位置センサーが当該ロック部材の当該開錠位置到達を検知しない場合に、エラー信号を生成するための駆動監視部と、当該エラー信号を当該ケーシング外へ出力するためのエラー信号出力端子と、が設けられてなる。
【0010】
(請求項2記載の発明の特徴)
請求項2の電子ラッチ錠は、請求項1の電子ラッチ錠の好ましい態様として、前記電力供給源から供給される電力の供給電圧Eを監視する電圧監視部が設けられ、当該供給電圧Eが前記電子駆動源を駆動不可となる所定の限界電圧Eg未満(E<Eg)まで低下したことを当該電圧監視部が検知した場合、前記駆動監視部が前記エラー信号を生成するように構成されてなる。
【0011】
(請求項3記載の発明の特徴)
請求項3の電子ラッチ錠は、請求項3の電子ラッチ錠の好ましい態様として、前記電力供給源は、電池により構成されている。前記駆動監視部は、前記エラー信号を生成する前に予告エラー信号を生成するように構成されている。当該予告エラー信号は前記供給電圧Eが前記限界電圧Egより僅かに高電圧である所定の準限界電圧Ej未満になった(Eg≦E<Ej)ことを前記電圧監視部が検知した際に生成されるように構成されてなる。
【0012】
(請求項4記載の発明の特徴)
請求項4の電子ラッチ錠は、請求項3の電子ラッチ錠の好ましい態様として、前記予告エラー信号は間欠信号で構成されてなる。
【0013】
(請求項5記載の発明の特徴)
請求項5の電子ラッチ錠は、請求項1乃至4何れかの電子ラッチ錠の好ましい態様として、前記電子駆動源は、モーター又はソレノイドで構成されてなる。モーターやソレノイド以外の電子駆動源を排除する趣旨ではないが、電子ラッチ錠の駆動源としてモーターやソレノイドが一般的である。
【発明の効果】
【0014】
(請求項1記載の発明の効果)
請求項1の電子ラッチ錠によれば、駆動制御部が電力供給を指示するも、何らかの原因によりロック部材の開錠位置到達が検知されない場合にエラー信号が生成される。このエラー信号はエラー信号出力端子から取り出すことができるので、このエラー信号を活用すればロック部材の開錠位置未達を管理者・使用者が認識することができる。
【0015】
(請求項2記載の発明の効果)
請求項2の電子ラッチ錠によれば、予め設定された所定の限界電圧Eg以下まで供給電圧Eが低下した場合にエラー信号が生成される。電圧監視部という簡素な構成により、供給電圧を監視することができる。
【0016】
(請求項3記載の発明の効果)
請求項3の電子ラッチ錠によれば、予告エラー信号を取り出し可能に生成することにより、開錠不可となる時期が近いことを管理者・使用者に認識させることができる。
【0017】
(請求項4記載の発明の効果)
請求項4の電子ラッチ錠によれば、予告エラー信号を間欠にすることにより、予告エラー信号と最終エラー信号との区別をつけやすくする。エラー信号をも間欠にすることを妨げないが、その場合は予告エラー信号の間欠周期を異ならせることにより、両者の区別が容易になる。
【0018】
(請求項5記載の発明の効果)
請求項5の電子ラッチ錠によれば、モーター又はソレノイドが好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】電子ラッチ錠の正面斜視図である。
図2】電子ラッチ錠の背面斜視図である。
図3】蓋体を外した電子ラッチ錠の正面図である。
図4】蓋体を外した電子ラッチ錠の正面図である(隠れた部分を破線で表示)。
図5】電子ラッチ錠の分解斜視図である。
図6】ロック部材の斜視図である。
図7】トリガーの斜視図である。
図8】解除レバーの斜視図である。
図9】カム部材の斜視図(a)(c)(f)、平面図(b)、正面図(d)、側面図(e)である。
図10】蓋を外した電子ラッチ錠の施錠状態(ロック部材が施錠位置にある状態)を示す正面図である。
図11】蓋を外した電子ラッチ錠の施錠と開錠の中間状態(ロック部材が施錠位置と開錠位置の間にある状態)を示す正面図である。
図12】蓋を外した電子ラッチ錠の開錠状態(ロック部材が開錠位置にある状態)を示す正面図である
図13図10に示す電子ラッチ錠の部分拡大図である。
図14図11に示す電子ラッチ錠の部分拡大図である。
図15図12に示す電子ラッチ錠の部分拡大図である。
図16】モーター制御部の概略構成を示すブロック図である。
図17】モーター制御部の動作を示すフローチャートである。
図18】通常運用時を示すPWM図である。
図19】異常発生時を示すPWM図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
各図を参照しながら、本実施形態の電子ラッチ錠について説明する。なお、本願では、図3に示す除隊を電子ラッチ錠の正面視の状態とする。
【0021】
(電子ラッチ錠の概略構造)
図1乃至5を参照する。電子ラッチ錠1を外観構成するのは、蓋部3a付きケーシング3である。ケーシング3は、金属もしくは合成樹脂を素材とする、概ね薄型で一方の側面が開口する横長箱体である。ケーシング3の開放面は、ネジ3b,3bによって固定される蓋部3aにより閉鎖される。横長のケーシング3の一方の短辺側には、ケーシング3の外にある被ロック部材R(図10)を受け入れるための錠止め凹部が横向きU字状に形成されている。ケー深部3の内部には、モーター25、カム部材27,トリガー11、ロック部材5が主要部材として納められている。
【0022】
(モーター周りの構造)
図3乃至9を参照する。ケーシング3の内部において、符号25で示すものは開錠駆動源となるモーターである。モーター25に対する給電は、後述するモーター制御部29を介して図外から行われる。モーター25のモーター軸25aは、カム部材27のモーター軸孔27b(図9(f))に差し込まれ、側方に開口するピン孔に差し込まれたカム固定ピン27p(図5)によってカム部材27と一体回転するように固定される。
【0023】
(カム部材の構造)
図3、4及び9を参照する。カム部材27は、モーター軸25aと同軸で円筒状のカム本体27aと、カム本体27aの外周面に沿って部分周回する傾斜カム路27dが設けられている。図9(b)が示すように本実施形態では、平面視4時の位置(始点27e)から9時の位置(終点27f)まで反時計回り180度強にわたって傾斜カム路27が部分周回している。傾斜カム路27dの登り傾斜角度は、特に限定はないが、たとえば、20度~60度なら好適である。傾斜カム路27の外周には、磁石片27mが取り付けられている。この磁石片27mをカム本体27aの外周に設けることもできるが、傾斜カム路27の外周に取り付けた方が後述するホールセンサーとの距離を短くできる、すなわち、検知精度が高めることができる。
【0024】
(トリガーの構造)
図3乃至5及び7を参照する。トリガー11は、トリガー軸13によってケーシング13に揺動自在に支持される部材であって、トリガー軸13は、概ね縦長四角形のトリガー本体11aに設けられる。トリガー本体11のトリガー軸13の近傍からロック部材5方向(図3の右方向)に側方アーム11bが突き出している。側方アーム11bの先端部の正面視裏側には、回転ローラー17(図4に破線で表示)がピン孔11p(図7)に差し通されたローラー軸17aにより回転自在に設けられている。側方アーム11bとトリガー本体11aによって形成される略直角の端面は、押圧角部11eになっている。トリガー本体11aからカム部材27方向(図3の下方向)に従動アーム11cが突き出している。従動アーム11cは、カム部材27のカム本体27aの開放端近傍に達し、後述するように駆動モーター25の駆動により傾斜カム路27dと摺動接触可能な位置に配されている。
【0025】
一方、トリガー本体11aの上部から上方(図3の上方向)に解除アーム11gが突き出していて、この解除アーム11gはケーシング3の開口3jから外に突出している。解除アーム11gは、電源消失などの理由によりモーター25を駆動できない場合に、ケーシング3の外において外力を付加してロック部材5を開錠位置に戻すための部材である。トリガー本体11aの側方アーム11bとは反対側の側方に三角突起11dが突き出し、解除レバー19と向き合う端面にレバー当接面11d´が形成されている。トリガー11aの下方から三角突起11dの突き出し方向と同方向にスイッチアーム11fが突出している。スイッチアーム11fの先端は、ケーシング3の内部に向かって(図3の紙面背面方向に)ほぼ直角に折り曲がっている(図7)。なお、トリガー11は、トリガー軸13に巻き付けられたトリガースプリング15(図5)によりロック部材5に向かう方向(図3の正面視時計回り方向)に揺動付勢されている。
【0026】
(ロック部材の構造)
続いて図3乃至5及び6を参照する。ロック部材5は、変形四角形のロック部材本体5aと、ロック部材本体5aの下方に一体形成されたくの字状のフック部5bとを主要部位とする部材である。ロック部材本体5aのフック部5bの近傍には、軸孔5hが貫通形成され(図6)、軸孔5hを差し通したロック軸7により、ケーシング3に対し揺動自在に支持されている。フック部5bはケーシング3の鍵止め凹部3hの近傍に位置し、施錠位置まで揺動したときに、鍵止め凹部3hの底部との間に被ロック部材R(図10)を抱き込む空間を形成する位置に配されている。
【0027】
ロック部材本体5aには、回転ローラー17を転がり接触させるためのローラー当接面5cが緩やかなカーブ状に形成されている。ロック部材5は、トリガー部材11の正面視裏側に位置しており、ロック部材本体5aの上部には、側方アーム11bの下端面と摺動可能に接触する案内ピン5eが正面視手前方向に突き出している。一方、ローラー当接面5cの輪郭線と連続する輪郭線で形成される係合凹部5dが、ロック部材本体5aの中央に向かって食い込むように形成されている。なお、ロック部材5は、ロック軸7に巻き付けられたロックスプリング9(図5)により開錠位置に向かって(図3の時計回り方向)付勢されている。
【0028】
(解除レバーの構造)
解除レバー19は、直線状に並ぶ解除アーム19aと押圧アーム19bを、両者の間でやや膨らんだフランジ部19cを有している。フランジ部19cには軸孔19hが貫通形成され、そこに差し入れられたレバー軸21によりケーシング3内に位置するように蓋体3aの内側に揺動自在に支持されている。解除レバー19は、レバー軸21に巻き付けられたレバースプリング23(図5)により、トリガー11のレバー当接面11d´から離れる方向に付勢されている。解除アーム19aは、ケーシング3の側面に貫通形成された開口3kを抜け、外部操作できるように外に突き出している。解除レバー19は、トリガー11の解除アーム11gと同じ目的で儲けられている。解除アーム11gが存在するのに、併せて解除レバー19を設けた理由は、電子ラッチ錠1の取り付け環境の違いに柔軟に対応するためと、万が一、一方の操作に妨げがあっても他方の操作により解除可能とするためである。
【0029】
(モーター制御部の構造)
図3、4、16及び17を参照する。モーター制御部29は、基板本体29aに取り付けられたワンチップマイコン29b等の電子部品群やホールセンサー(ホール素子)29c、外部から電力や開錠信号を受けるための接続端子29d,出力端子29eなどから構成されている。ホールセンサー29cは、基板本体29aのカム部材27側において、カム部材27の磁石片27mの磁力を効率よく検知できる位置に配されている。
【0030】
さらに、外部管理装置(たとえば、管理コンピューター、図示を省略)と管理端子33を介して電気的に接続可能なスイッチ(マイクロスイッチ)31aをスイッチユニット31に取り付けてある(図3、4)。スイッチユニット31は、正面視トリガー11の左側に配してある。スイッチ31aはアクチュエーター31bを備え、アクチュエーター31bとスイッチアーム11fとが、ロック部材5が施錠状態にあるときのトリガー11の揺動に伴ってオン操作とその解除ができる相対位置に両者が配されている。管理端子33は、外部から電気的接続できるようにケーシング3の開口3m(図2)を介して外部に露出している。
【0031】
ワンチップマイコン29bの中には、駆動制御部30a、駆動監視部30b及び電圧監視部30cがプログラム的に設けられている。駆動制御部30aは、主としてホールセンサー(位置センサー)29cの検知結果を通じて、電子駆動源であるモーター25に対する電力供給を制御するものである。駆動監視部30bは、駆動制御部30aが所定期間電力供給を指示するもホールセンサー29cがロック部材5の開錠位置到達を検知しない場合に、エラー信号・準エラー信号を生成する機能を有している。電圧監視部30cは、電力供給源35から供給される電力の供給電圧Eを監視する役目を担っている。なお、本実施形態における電力供給源35は電池(一次電池、二次電池)であり、その場合の供給電圧Eは、たとえば6Vが好適である。商用電源を排除する趣旨ではないが、電池を採用したのは商用電源を調達しにくい場合(たとえば、電源がない、電源はあるが配線不便・不可)にスタンドアローンで電子ラッチ錠(を搭載したロッカー等)を使用可能とするためである。
【0032】
(モーター制御部の作用)
図10乃至19を参照する。図10図13に、図11図14に、そして、図12図15に対応している。図10及び13は施錠位置を、図11及び14は施錠と開錠の間の位置を、そして、図12及び15は開錠位置を、それぞれ示す。順番が逆になるが、図12及び15が示す開錠位置から説明を始める。
【0033】
開錠位置にあるロック部材5は、ロックスプリング9の付勢により、錠止め凹部3hを開放している。ここで、錠止め凹部3h内に被ロック部材Rが侵入して被ロック部材5を押圧すると、この押圧力を受けた被ロック部材5は、ロックスプリング9(図5)の付勢力に逆らいながら反時計回り方向に揺動する。この揺動とトリガースプリング15(図5)の付勢力によるトリガー11の時計回り方向の揺動に伴い、図15に破線で示す回転ローラー17がローラー当接面5cと転がり接触しながら時計回り方向に移動し、ローラー当接面5cを乗り越えて係合凹部5dと係合停止する(図13)。この係合停止によりロック部材5は施錠位置に到達し、フック部5bが錠止め凹部3hの中に被ロック部材Rを抱き込んだ状態で閉鎖する。さらに、案内ピン5eが側方アーム11bの下端に沿って摺動し、揺動したトリガー11の押圧角部11eに当接する。こうしてロック部材5とトリガー11は、回転ローラー17と押圧角部11eにより、互いにそれ以上の揺動が制限される。この際に
スイッチアーム11fは、スイッチ31aのアクチュエーター31bを押圧し、ロック部材5が施錠位置にあることを示すオン操作状態になる。スイッチ31aは、管理端子33に外部管理装置(図示を省略)が電気的に接続されているとき、その外部管理装置にオン操作を認識させることになる。
【0034】
次は、図10乃至19を参照する。プログラムがスタートすると電圧監視部30cは、電力供給源35の供給電圧Eが電子駆動源25をトルク的に駆動不可となる所定の限界電圧(本実施形態では3V)Eg未満(E<Eg)まで低下していないか継続監視する(図17、S1)。S1で供給電圧Eが限界電圧Eg未満まで低下したことを検知した電圧監視部30cは、その検知結果を駆動監視部30bに伝達する(S1のYes)。限界電圧Egとは、負荷がかかっている状態のモーター25が駆動不可となる電圧である。前述のように本実施形態における供給電圧Eは6Vに設定してあるが、モーター25の定格や負荷の状態に合わせて適宜変更してよい。
【0035】
限界電圧Eg未満まで低下したとの検知結果を受けた駆動監視部30bは、エラー信号を生成して出力端子29eに所定期間出力してからスタート時に戻る(S13、図19(9))。ここで出力端子29eに告知装置37を接続しておき、エラー信号Seを媒体(たとえば、LEDによる可視的告知、スピーカーによる聴覚的告知、いずれも図示を省略)に変換すれば、管理者・使用者に電池切れと対処必要性を認識させることができる。ここで、エラー信号Seの出力期間は、告知装置37が管理者・使用者に対する告知作用を発揮するに十分な期間であることが少なくとも必要で、これに終期を設けてもよいし、設けずに電池切れまでとしてもよい(後述する予告エラー信号Snでも同じ)。
【0036】
S1で供給電圧Eが限界電圧Eg以上であること(E≧Eg)を検知した電圧監視部30cは(S1のNo)、供給電圧Eが準限界電圧Ej未満(E<Ej)になっていないかを確認する(S3)。準限界電圧Ejとは、限界電圧Egより僅かに高電圧な所定の電圧のことである。つまり、負荷がかかった状態のモーター25を回転させられる電圧ではあるが、このまま使用継続すると近いうちに限界電圧Eg未満まで低下してモーター25を回転させられなくなる(開錠できなくなる)電圧である。本実施形態の準限界電圧Ejは、3.5Vに設定した。前述したように3V未満まで低下するとモーター25は回転不能となるので、完全に電池切れになる前に予告するための電圧幅は0.5Vとなる。
【0037】
S3で供給電圧Eが準限界電圧Ej未満まで低下していることを検知した電圧監視部30cは、その検知結果を駆動監視部30bに伝達する(S3のYes)。準限界電圧Ej未満まで低下したとの検知結果を受けた駆動監視部30bは、予告エラー信号Snを生成し出力端子29eに所定期間出力してスタート時に戻る(S15、図19(8))。予告エラー信号Snは、供給電圧Eが近く限界電圧Eg未満になることを管理者・使用者に認識させ、早めの電池交換などを促すための信号である。処理フローでは電圧監視部30cの監視は限界電圧Egを先行確認することになるが(S1、S3)、エラー信号Seが準エラー信号Snより先に出力されることはない。つまり、駆動監視部30bは、S13のエラー信号Seを生成する前に予告エラー信号Snを生成することになる。なお、予告エラー信号Snは間欠信号にすると、エラー信号Seと区別しやすくなる点で好ましい。
【0038】
S3において供給電圧Eが準限界電圧Ej以上であることを確認した電圧監視部30cは(S3のNo)、接続端子29dを介して入力される開錠信号Skを待ち続け(S5のNo)、開錠信号Skを受信したら駆動制御部30aを介してモーター25に電力供給して駆動させる(S5のYes、S7、図18(1)(2))。
【0039】
モーター25が駆動するとカム部材27が回転し、これに伴い磁石片27mも回転する。カム部材27が回転すると、回転してきた傾斜カム路27dにトリガー11の従動アーム11cが当接する。さらなる回転により従動アーム11cは傾斜カム路27dに摺動案内され、トリガースプリング15(図5)の付勢力に逆らいながら反時計回り方向に揺動する。
【0040】
トリガー11の反時計回りの揺動により、トリガー11の回転ローラー17とロック部材5の係合凹部5dとの係合が外れ、トリガースプリング15及びロックスプリング9(図5)の付勢力、さらに、ロック部材5の案内ピン5eとトリガー11の押圧凹部11eとの相互押圧が相まってロック部材5を時計回り方向に揺動させる。このトリガー11の揺動に伴い、モーター制御部29の制御とは無関係であるが、トリガー11のスイッチアーム11fによるマイクロスイッチ31aのアクチュエーター31bのオン操作が解除される(図11及び14)。
【0041】
S7におけるモーター25の駆動後、駆動監視部30bは、ホールセンサー29cが磁石片27mの磁力を所定期間(本実施形態では2秒に設定。適宜、増減してよい)内に検知したら(S17)、その旨を駆動制御部30aに伝達する(S9のYes)。磁力検知の伝達を受けたということはロック部材5が開錠位置にあることだから、ここで駆動制御部30aは、給電を中止してモーター25の回転を停止させスタートに戻る(S11、図18)。
【0042】
上述したS7乃至S11の処理を信号面から見ると、次のようになる。図18の(3)は、モーター25の駆動前(停止状態)の磁石片27mは、その磁力がホールセンサー29cにより検知可能位置に停止していたことを示している。その後、駆動制御部30aを介したモーター25の駆動により一時的に検知不能となるが(図18(3))、さらなる駆動により再び検知される(図18(4))。磁力検知によりモーター25は停止する(図18(5))。
【0043】
S9に戻る。駆動監視部30bは、ホールセンサー29cが磁石片27mの磁力を検知しない状態が設定時間である2秒続いたところで、駆動制御部30aを介して給電しモーター25を再駆動させる(S17のYes、S19、図18(1))。再稼働後、再び設定時間である2秒以内に磁石片mの磁力がホールセンサー29cによって検知されるのを待つ(S21、23)。磁石片mの磁力が検知されたら(S23のYes)、それは開錠を示すものだから、S11へ戻り駆動制御部30aを介して給電を遮断しモーター25を停止させる。一方、2秒間待ってもホールセンサー29cが磁石片mの磁力を検知しなかった場合(S23のNo)、駆動制御部30aは、S13へ進んで駆動監視部30bにエラー信号Seを生成させる(図19(7))。
【0044】
(実施例特有の効果)
電子ラッチ錠1によれば、まずは、電力供給源35の不都合による開錠不能をエラー信号Seによって管理者・使用者に認識させる。供給電圧Eの放電による電圧低下を予告エラー信号Eyの生成・出力とエラー信号の生成・出力という二段階方式により、管理者・使用者に電力供給源35の電圧低下の発生・到来を認識させる。これにより管理者は電池の交換などにより、開錠不能による使用者の不都合を有効に回避することができる。よって、電子ラッチ錠1は、住宅、職場、公共施設等の施設においてロッカー扉等に使用するのに大変使い勝手がよい。
【0045】
本実施形態では、モーター25を電子駆動源として採用したが、供給電源Eの電圧低下によって駆動不能となる点でソレノイドも事情は同じである。つまり、本発明はソレノイドにも適用可能である。また、電力供給源35として、電池だけでなく、商用電源も適用可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 電子ラッチ錠
3 ケーシング
3a 蓋体
3b 蓋ネジ
3h 錠止め凹部
3j 開口
3k 開口
3m 開口
5 ロック部材
5a カム本体
5b 鍵止めフック
5c ローラー当接面
5d 係合凹部
5e 案内ピン
5h 軸孔
7 ロック軸
9 ロックスプリング
11 トリガー
11a トリガー本体
11b 側方アーム
11c 従動アーム
11d レバー当接面
11e 押圧凹部
11f スイッチアーム
11g 解除アーム
11h 軸孔
11p ピン孔
13 トリガー軸
15 トリガースプリング
17 回転ローラー
17a ローラー軸
19 解除レバー
19a 解除アーム
19b 押圧アーム
19h 軸孔
21 レバー軸
23 レバースプリング
25 モーター(電子駆動源)
25a モーター軸
27 カム部材
27a カム本体
27b モーター軸孔
27c ピン孔
27d 傾斜カム路
27h ピン孔
27m 磁石片
27p カム固定ピン
29 モーター制御部
29a 基板本体
29b ワンチップマイコン
29c ホールセンサー(位置センサー)
29d 接続端子
29e 出力端子
30a 駆動制御部
30b 駆動監視部
30c 電圧監視部
31 スイッチユニット
31a スイッチ(マイクロスイッチ)
31b アクチュエーター
33 外部管理端子
35 電力供給源
37 告知装置
E 供給電圧
Eg 限界電圧
Ej 準限界電圧
R 被ロック部材
Se エラー信号
Sk 開錠信号
Sn 予告信号

































図1
図2
図3
図4
図5
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図7
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図19