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特開2023-10475土砂遮断構造物の強度試験方法及び強度試験装置
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  • 特開-土砂遮断構造物の強度試験方法及び強度試験装置 図1
  • 特開-土砂遮断構造物の強度試験方法及び強度試験装置 図2
  • 特開-土砂遮断構造物の強度試験方法及び強度試験装置 図3
  • 特開-土砂遮断構造物の強度試験方法及び強度試験装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023010475
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】土砂遮断構造物の強度試験方法及び強度試験装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/30 20060101AFI20230113BHJP
   E02D 17/08 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
G01N3/30 N
E02D17/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021114672
(22)【出願日】2021-07-10
(71)【出願人】
【識別番号】504268744
【氏名又は名称】独立行政法人労働者健康安全機構
(71)【出願人】
【識別番号】591267925
【氏名又は名称】日本スピードショア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100073689
【弁理士】
【氏名又は名称】築山 正由
(72)【発明者】
【氏名】玉手 聡
(72)【発明者】
【氏名】堀 智仁
(72)【発明者】
【氏名】菊田 亮一
【テーマコード(参考)】
2D044
2G061
【Fターム(参考)】
2D044AA12
2G061AA13
2G061AB04
2G061BA01
2G061CA01
2G061CB20
2G061CC09
2G061DA01
2G061DA10
2G061EA02
2G061EB07
2G061EC02
(57)【要約】
【課題】大掛かりな土砂崩壊実験をしなくても比較的簡便な方法で強度の確認が可能であると共に、土砂を積み上げて崩す方法よりも定量的に荷重を与えることが可能な土砂遮断構造物の強度試験方法及び強度試験装置を提供すること。
【解決手段】請求項1に記載の土砂遮断構造物の強度試験装置は、台座部と、レール部材と、重錘とにより構成される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
台座部と、レール部材と、重錘とにより成る土砂遮断構造物の強度試験装置。
【請求項2】
重錘として整地ローラーを用いた請求項1記載の土砂遮断構造物の強度試験装置。
【請求項3】
整地ローラーを構成する円筒形の本体内に重量物を詰め込むことで、重錘の重量を可変とした請求項2に記載の土砂遮断構造物の強度試験装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3いずれかに記載の強度試験装置を用いて、重錘を土砂遮断構造物に衝突させることで行われる土砂遮断構造物の強度試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溝掘削作業や溝内作業中における土砂崩壊に伴う作業員の死傷事故の防止を図ることを目的とした土砂遮断構造物の強度を試験する方法及び当該強度試験に用いられる強度試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
小規模な溝掘削作業を伴う上下水道等工事においては、溝掘削作業及び溝内作業中における土砂崩壊に伴う労働災害を防ぐため、溝内での作業に先行して土止め支保工を設置する場合がある。
【0003】
具体的にはドラグショベルによって掘削(素掘り)し、その後、軽量鋼矢板を掘削面に張りつけるように建て込み、腹起し・切梁を取り付けて土止め支保工を組み立てるものである。
【0004】
本願出願人は上記土砂崩壊に伴う労働災害を防ぐために、特許文献1記載の土砂遮断装置を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許公報第6431239号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述の土止め支保工等の土砂遮断構造物や上記特許文献1記載の土砂遮断装置の強度試験方法には確立された統一規格がない。したがって様々な方法で試験がなされる事態を招くことにもなりかねず、とすれば、得られた試験結果も絶対的な評価とはいえないものになってしまう恐れがある。なお、以下の記述において特許文献1記載の土砂遮断装置は土砂遮断装置と称する。また、本発明において、この土砂遮断装置を含む土止め支保工やパネル土止め、その他の土止め装置を総称して土砂遮断構造物と称する。本発明はこの総称される土砂遮断構造物の強度試験方法及び強度試験装置に関するものである。
【0007】
出願人が従来行っていた強度試験方法は、土砂遮断構造物の傍らに土砂を積み上げ、自然に崩落させ、該土砂遮断構造物が耐えうるかを確認するというものである。
【0008】
しかし、かかる試験方法は大がかりな装置が必要となること、定量的な荷重を与えることが難しいといった難点がある。
【0009】
そこで本発明は、大掛かりな土砂崩壊実験をしなくても比較的簡便な方法で強度の確認が可能であると共に、土砂を積み上げて崩す方法よりも定量的に荷重を与えることが可能な土砂遮断構造物の強度試験方法及び強度試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成する本発明の構成は以下の通りである。
【0011】
(1) 請求項1に記載の土砂遮断構造物の強度試験装置は、台座部と、レール部材と、重錘とにより構成される。
【0012】
(2) 請求項2に記載の土砂遮断構造物の強度試験装置は、請求項1記載の発明において、重錘として整地ローラーを用いて構成した。
【0013】
(3) 請求項3に記載の土砂遮断構造物の強度試験装置は、請求項2記載の発明において、整地ローラーを構成する円筒形の本体内に重量物を詰め込むことで、重錘の重量を可変に構成した。
【0014】
(4) 請求項4に記載の土砂遮断構造物の強度試験方法は、請求項1乃至請求項3いずれかに記載の強度試験装置を用いて、重錘を土砂遮断構造物に衝突させることで行われるものである。
【発明の効果】
【0015】
上記のように構成される本発明が、如何に作用して課題を解決するかを図面を参照しながら概説する。なお、各図におけるUとは上方を、Dは下方を、Rは右方向を、Lは左方向を意味するものである。
【0016】
図2は請求項2あるいは請求項3に記載の土砂遮断構造物の強度試験装置(以下、強度試験装置と称する)を用いた土砂遮断構造物の強度試験方法(以下、強度試験方法と称する)の実施形態を示す説明図である。図示されるようにコンクリート製のL型擁壁2と台座部10との間に模擬的な溝を再現し、その間に土砂遮断装置1を設置してある。
【0017】
この左側の台座部10と右側の台座部10との間にレール部材20を架渡し、レール部材20に沿って自重で整地ローラー30を落下させ、土砂遮断装置1に衝突させるものである。
【0018】
上述のように構成される本発明によれば整地ローラー30の重量、体積をあらかじめ設定可能であり、しかも整地ローラー30の衝突時の速度を計測すれば、衝突時のエネルギーを正確に計算可能となる。
【0019】
かように本発明によれば、比較的簡便な方法で強度の確認が可能であり、しかも定量的に荷重を与えることが可能となるのである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】強度試験装置の斜視図
図2】強度試験方法の実施形態を示す説明図
図3】シート張力と経過時間の関係を示すグラフ
図4】斜材の曲げモーメントと経過時間の関係を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、好ましい発明の実施形態につき、図面を参照しながら概説する。 なお、本発明構成要素の実施形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り、種々の形態を採りうる。また、各請求項において共通する部材は同一符号を用いて概説する。
【0022】
図1図2は請求項2あるいは請求項3記載の強度試験装置を表している。図中台座部10はレール部材20に傾斜をつけるために用いられるものであり、図2に示すように土砂遮断装置1近傍のレール部材20の下側に設置される台座部10aと、レール部材20の逆側端部の下側に設置される台座部10bとが存する。そして、レール部材20に傾斜をつけるために、台座部10aの高さは台座部10bの高さよりも低くなるよう設置される。
【0023】
これら台座部10は、物流などに用いられる樹脂製のパレットを用いている。そして、重ねるパレットの個数を変えることで、台座部10の高さを可変としてある。むろんこれは一例であり、台座部10としては、試験時の重量に耐えうるものであれば、角材その他の素材を利用することも可能であるし、ジャッキを用いて高さが可変な台座部10としても良い。
【0024】
レール部材20は図1に示すように一対の長尺の鋼材20a,20aを、複数の短尺の鋼材20b・・で固定する構造となっている。鋼材20a,20bはH型鋼等を用いることが出来る。
【0025】
整地ローラー30は、鋼板またはステンレス板で作られた円筒にコンクリートなどの重りを充填した本体31と、鉄パイプ等のハンドル32から構成される。なお、請求項3に記載の発明においては、本体31の内部は空洞にしておき、設定重量にするための重量物を充填することが可能な構造となっている。
【0026】
また、レール部材20の端部に突起物であるストッパー21を設けておけば、該ストッパー21にハンドル32を係止しておくことで、整地ローラー30を留め置くことが可能となり、使い勝手に富むものとなる。
【0027】
請求項1記載の発明においては、重錘をレール部材に沿って自重落下させ、土砂遮断構造物に衝突させるものである。重錘としては上記整地ローラー30以外にも、鋼球等を用いることが可能である。またレール部材としては、重錘を落下させることが可能な形状のもの、例えば溝を設けた鋼板等を用いることが可能である。
【0028】
請求項4に記載の土砂遮断構造物の強度試験方法は、上記請求項1乃至請求項3いずれかに記載の強度試験装置を用いて、重錘を土砂遮断構造物に衝突させることで行われるものである。以下、具体的な実施例を図2を用いて詳述する。
【0029】
コンクリート製のL型擁壁2から0.8m離れた位置に台座部10aを設置することで、両者の間に掘削溝を想定した溝部3を再現してる。この溝部3に土砂遮断装置1を設置してある。
【0030】
整地ローラー30の重量は3.1kNであり、その体積は0.196mである。したがって、単位体積重量は15.72kN/mとなる。
【0031】
衝突試験ではレール部材20に設けたストッパー21に整地ローラー30のハンドル32を係止した。この際、整地ローラー30と接するレール部材20の高さは0.9mであり、整地ローラー30の本体31直径0.5mを加えた合計値は、土砂遮断装置1の設置対象として想定している掘削溝の深さ1.5mと概ね一致する。
【0032】
かかる条件の元、ジャッキでハンドル32を押し上げることで整地ローラー30の係止を解除し、レール部材20上を自重で落下させ、土砂遮断装置1に衝突させた。
【0033】
この際、土砂遮断装置1の梁材1aと斜材1bには、対辺2アクティブゲージ法によりひずみゲージを貼り付けることで、梁材1aに作用するシート1cの張力や斜材1bに作用する曲げモーメントの計測が可能となる。また、整地ローラー30の車軸部31aに、画像解析用のLED照明が取り付けられており、衝突の様子を高速度カメラで撮影した。この撮影した動画を解析することで整地ローラー30の土砂遮断装置1に対する衝突時の速度を求めた。これにより衝突時のエネルギーが計算可能となる。
【0034】
図3図4は上記条件・方法で計測したデータを示すものである。
【0035】
図3に示すように整地ローラー30が衝突する側のシート1cにかかる張力の最大値は6.522kN/mとなる。
【0036】
図4に示すように、斜材1bの曲げモーメントの最大値は整地ローラー31の衝突側で1.071kN・mとなり、L型擁壁2側で1.216kN・mとなった。
【0037】
なお、上記実施例は土砂遮断装置の強度試験に関するものであるが、土砂遮断装置に代えて土止め支保工や一対のパネル部材を切梁によって支保したパネル土止め等を設置すれば、これら支保装置の強度試験を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0038】
10・・台座部
20・・レール部材
21・・ストッパー
30・・整地ローラー
31・・本体
32・・ハンドル
図1
図2
図3
図4