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特開2023-104771工作機械システム、工具種類推定方法及び特徴量抽出方法
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  • 特開-工作機械システム、工具種類推定方法及び特徴量抽出方法 図1
  • 特開-工作機械システム、工具種類推定方法及び特徴量抽出方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023104771
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】工作機械システム、工具種類推定方法及び特徴量抽出方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/18 20060101AFI20230721BHJP
   B23Q 17/00 20060101ALI20230721BHJP
   B23Q 3/155 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
G05B19/18 W
B23Q17/00 F
B23Q3/155 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022005962
(22)【出願日】2022-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 尚登
(72)【発明者】
【氏名】名畑 英二
【テーマコード(参考)】
3C002
3C029
3C269
【Fターム(参考)】
3C002CC00
3C002LL04
3C002LL05
3C029EE13
3C269AB02
3C269AB03
3C269AB05
3C269BB01
3C269EF25
3C269EF39
3C269KK08
3C269MN08
3C269MN44
3C269QB03
3C269QB17
(57)【要約】
【課題】工具種類を簡便に推定可能な工作機械システム、工具種類推定方法及び特徴量抽出方法を提供する。
【解決手段】工作機械システム1は、工作機械10と、取得部22と、推定部23とを備える。工作機械10は、工具15を用いて被加工物Wを加工する。取得部22は、被加工物Wの加工における工具15の座標データを含む加工データを取得する。推定部23は、加工データに基づいて、工具15の工具種類を推定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具を用いて被加工物を加工する工作機械と、
前記被加工物の加工における前記工具の座標データを含む加工データを取得する取得部と、
前記加工データに基づいて、前記工具の工具種類を推定する推定部と、
を備える工作機械システム。
【請求項2】
前記加工データは、前記被加工物の加工条件データを含み、
前記加工条件データは、前記工具の送り速度と、前記工具が取り付けられる主軸の回転数とを含む、
請求項1に記載の工作機械システム。
【請求項3】
複数の工具種類を示す複数の指標特徴量を記憶する記憶部を更に備え、
前記推定部は、
前記加工データから前記工具の工具種類を示す抽出特徴量を抽出する抽出部と、
前記複数の指標特徴量それぞれと前記抽出特徴量との類似度に基づいて、前記複数の工具種類の中から前記工具の工具種類の候補を選択する選択部と、
を有する、
請求項1又は2に記載の工作機械システム。
【請求項4】
前記選択部は、前記複数の工具種類の中から2以上の工具種類を前記工具の工具種類の候補として選択した場合、前記類似度に基づき前記2以上の工具種類それぞれに優先順位を付与する、
請求項1乃至3のいずれかに記載の工作機械システム。
【請求項5】
前記類似度は、前記複数の指標特徴量それぞれと前記抽出特徴量との内積の値によって示される、
請求項1乃至4のいずれかに記載の工作機械システム。
【請求項6】
工具を用いた被加工物の加工における前記工具の座標データを含む加工データを取得する工程と、
前記加工データに基づいて、前記工具の工具種類を推定する工程と、
を備える工具種類推定方法。
【請求項7】
工具を用いた被加工物の加工における前記工具の座標データを含む加工データを取得する工程と、
前記加工データから前記工具の工具種類を示す指標特徴量を抽出する工程と、
を備える特徴量抽出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、工作機械システム、工具種類推定方法及び特徴量抽出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、NC(Numerical Control)プログラムに従って、被加工物を所望の形状に加工するコンピュータ数値制御工作機械(以下、「工作機械」という。)が知られている。
【0003】
特許文献1では、工作機械に取り付けられた工具の画像データから認識される当該工具の形状に基づいて工具種類を識別する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-032475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の手法では、工具を撮像するために撮像装置、照明装置、コントローラ及びこれらの配線を設置する必要がある。
【0006】
本開示は、工具種類を簡便に推定可能な工作機械システム、工具種類推定方法及び特徴量抽出方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る工作機械システムは、工作機械と、取得部と、推定部とを備える。工作機械は、工具を用いて被加工物を加工する。取得部は、被加工物の加工における工具の座標データを含む加工データを取得する。推定部は、加工データに基づいて、工具の工具種類を推定する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、工具種類を簡便に推定可能な工作機械システム、工具種類推定方法及び学習モデルの生成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る工作機械システムの構成を示すブロック図
図2】工具種類推定方法の流れを示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
(工作機械システム1の構成)
本実施形態に係る工作機械システム1の構成について図面を参照しながら説明する。図1は、工作機械システム1の構成を示すブロック図である。
【0011】
工作機械システム1は、工作機械10と、工具種類推定装置20とを備える。工作機械システム1における工作機械10の数は特に制限されず、1以上であればよい。
【0012】
[工作機械10]
工作機械10は、機械本体11と、CNC(Computer Numerical Control)制御部12とを有する。
【0013】
機械本体11は、被加工物(いわゆる、ワーク)Wを所望の形状に加工する。機械本体11において行われる加工としては、切削加工が代表的である。切削加工には、穴あけ加工、フライス加工及び旋削加工などが含まれる。
【0014】
機械本体11は、テーブル14と、工具15と、主軸16とを有する。
【0015】
テーブル14上には、被加工物Wが載置される。工具15は、被加工物Wの加工に用いられる。工具15は、主軸16に取り付けられた状態で回転駆動する。工具15は、テーブル14上に載置された被加工物Wに対して相対移動する。工具15は、テーブル14が移動することによって、或いは、主軸16が移動することによって、被加工物Wに対して相対移動する。
【0016】
工具15の種類(以下、「工具種類」と略称する。)は、被加工物Wに対して行われる加工内容に応じて適宜選択される。よって、工作機械10では、通常、複数種類の工具15が用いられる。
【0017】
工具種類としては、例えば、フライス、エンドミル、ドリル、リーマ、タップ、ボーリング、カッタなどが挙げられるが、これらには限られない。
【0018】
CNC制御部12は、NC(Numerical Control)プログラムに従って、機械本体11を制御する。NCプログラムは、被加工物Wの加工条件を含む。加工条件には、工具15の送り速度(いわゆる、Fコード。以下、「送り速度」という。)と、主軸16の回転数(以下、「主軸回転数」という。)とが含まれる。
【0019】
CNC制御部12は、被加工物Wの加工が完了すると、加工データを生成する。加工データには、被加工物Wの加工における工具15の座標データと、被加工物Wの加工条件データとが含まれる。
【0020】
座標データは、工具15の刃先の位置を示す座標の経時変化を表す。座標データは、工作機械10の機械座標(X,Y,Z)における工具15の刃先の座標(x,y,z)の集合である。
【0021】
加工条件データは、工具15の送り速度と、主軸16の主軸回転数とを含む。送り速度及び主軸回転数は、NCプログラムに記載されている。ただし、オペレータが送り速度及び主軸回転数を変更した場合には、変更後の値が用いられる。
【0022】
CNC制御部12は、生成した加工データを工具種類推定装置20に送信する。
【0023】
[工具種類推定装置20]
工具種類推定装置20は、ネットワークを介して、工作機械10及び端末装置30それぞれと相互通信可能である。工具種類推定装置20の機能は、サーバによって達成することができる。サーバは、クラウドサーバであってよい。
【0024】
工具種類推定装置20は、記憶部21、取得部22と、推定部23とを備える。
【0025】
記憶部21は、複数の指標特徴量と、複数の工具種類とを対応付けて記憶している。複数の指標特徴量は、加工データに基づいて工具種類を推定するために用いられる。複数の指標特徴量は、それぞれ異なる工具種類を示す。各指標特徴量は、2次元以上のベクトルによって表される。
【0026】
指標特徴量の抽出法として、フライスを示す指標特徴量を抽出する場合を例に挙げて説明する。まず、フライス用のNCプログラムに従って被加工物を加工したときの加工データを取得する。加工データには、フライスの座標データと、フライスの送り速度と、フライスの主軸回転数とを含む。次に、加工データからフライスを示す指標特徴量を抽出する。指標特徴量の抽出には、オートエンコーダなどの人工知能技術が用いられる。指標特徴量は、2次元以上のベクトルによって表される。そして、工具種類としてのフライスと、フライスを示す指標特徴量とを対応付けて記憶部21に記憶させる。
【0027】
このようにしてフライスだけでなくエンドミル、ドリル、リーマ、タップ、ボーリング、カッタなどの各種工具についても指標特徴量を予め求め、工具種類と指標特徴量とを対応付けて記憶部21に記憶させておく。
【0028】
取得部22は、工作機械10から加工データを取得する。取得部22は、取得した加工データを記憶部21に記憶させる。取得部22は、加工データを取得するたびに、新たに取得した加工データを記憶部21に記憶させる。
【0029】
推定部23は、加工データに基づいて工具15の工具種類を推定する。推定部23は、図1に示すように、抽出部23aと、選択部23bとを有する。
【0030】
抽出部23aは、加工データを記憶部21から取得する。抽出部23aは、取得した加工データから工具15の種類を示す抽出特徴量を抽出する。抽出特徴量の抽出には、オートエンコーダなどの人工知能技術が用いられる。抽出特徴量は、2次元以上のベクトルによって表される。
【0031】
選択部23bは、複数の指標特徴量と、各指標特徴量に対応付けられた工具種類とを記憶部21から取得する。選択部23bは、抽出特徴量を抽出部23aから取得する。
【0032】
選択部23bは、複数の指標特徴量それぞれと抽出特徴量との類似度を求める。類似度としては、複数の指標特徴量それぞれと抽出特徴量との内積を用いることができる。内積の値が1に近いほど(すなわち、内積の値が大きいほど)、指標特徴量と抽出特徴量との類似度が高いことを意味する。
【0033】
選択部23bは、求めた類似度に基づいて、複数の工具種類の中から工具15の工具種類の候補を選択する。選択部23bは、複数の指標特徴量のうち抽出特徴量との類似度が高い指標特徴量に対応付けられた工具種類を、工具15の工具種類の候補として選択する。
【0034】
選択部23bは、類似度が高い指標特徴量が2以上存在する場合、工具15の工具種類の候補を2以上選択してもよい。選択部23bは、工具15の工具種類の候補を2以上選択した場合、類似度に基づき2以上の工具種類それぞれに優先順位を付与することが好ましい。選択部23bは、類似度が高いほど優先順位を高くすることができる。
【0035】
(工具種類推定方法)
次に、工作機械システム1における工具種類推定方法について説明する。図2は、工具種類推定方法の流れを示すフローチャートである。
【0036】
ステップS1において、記憶部21は、複数の工具種類それぞれと複数の指標特徴量それぞれとを対応付けて記憶する。上述したとおり、各指標特徴量は、工具種類ごとの加工データから抽出される。
【0037】
ステップS2において、取得部22は、工作機械10から加工データを取得する。
【0038】
ステップS3において、抽出部23aは、加工データから工具15の種類を示す抽出特徴量を抽出する。
【0039】
ステップS4において、選択部23bは、複数の指標特徴量それぞれと抽出特徴量との類似度に基づいて、複数の工具種類の中から工具15の工具種類の候補を選択する。
【0040】
(特徴)
工作機械システム1は、工作機械10と、取得部22と、推定部23とを備える。取得部22は、被加工物Wの加工における加工データを取得する。推定部23は、加工データに基づいて、工具15の工具種類を推定する。このように、加工データに基づいて工具15の工具種類を簡便に推定することができるため、工具15の工具種類をオペレータが手動入力したり、或いは、工具15の撮像データから工具種類を特定したりする必要がない。その結果、工具種類ごとに加工データを纏めたうえで比較することができるため、加工条件の最適化を簡便に行うことができる。
【0041】
加工データには、被加工物Wの加工における工具15の座標データと、被加工物Wの加工条件データとが含まれる。加工条件データには、工具15の送り速度と、主軸16の主軸回転数とが含まれる。このように、工具15の座標データに加えて加工条件データを用いることによって、より正確に工具15の工具種類を推定することができる。
【0042】
推定部23は、加工データから工具15の工具種類を示す抽出特徴量を抽出する抽出部23aと、複数の指標特徴量それぞれと抽出特徴量との類似度に基づいて工具種類の候補を選択する選択部23bとを有する。このように、加工データから抽出される抽出特徴量を用いて工具種類の候補を選択することによって、工具15の工具種類を自動的に推定することができる。
【0043】
選択部23bは、2以上の工具種類を工具15の工具種類の候補として選択した場合、類似度に基づき2以上の工具種類それぞれに優先順位を付与する。これによって、選択された2以上の工具種類の中から工具15の工具種類を特定しやすくなる。
【0044】
(実施形態の変形例)
本開示は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本開示の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
【0045】
(変形例1)
上記実施形態において、工具種類推定装置20の機能は、サーバによって達成することができることとしたが、これに限られない。工具種類推定装置20の機能の少なくとも一部は、端末装置によって達成することができる。例えば、工作機械10と通信可能な端末装置が記憶部21、取得部22及び推定部23を備えていてもよい。
【0046】
(変形例2)
上記実施形態において、加工データには、被加工物Wの加工における工具15の座標データと、被加工物Wの加工条件データとが含まれることとしたが、座標データのみが含まれていてもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、加工データから抽出される抽出特徴量を用いて工具種類の候補を選択することとしたが、加工データから直接的に工具種類の候補を選択してもよい。
【0048】
例えば、フライスを用いて加工する場合には、x座標及びz座標が変動するのに対してy座標は変動しないので、加工データに含まれる座標データを見れば工具15がフライスであると推定できる。従って、加工データに座標データのみが含まれる場合であっても、加工データから直接的に工具種類を推定できる。
【0049】
また、旋盤バイトを用いて加工する場合には、x座標及びy座標が変動するのに対してz座標は変動しないので、加工データに含まれる座標データを見れば工具15が旋盤バイトであると推定できる。従って、加工データに座標データのみが含まれる場合であっても、加工データから直接的に工具種類を推定できる。
【0050】
また、ドリルとタップの座標データは基本的には同じであるが、タップのねじピッチは通常0.6以上6.0以下であるので、送り速度が[0.6×主軸回転数]以上[6.0×主軸回転数]以下であれば工具15はタップであると推定でき、送り速度が当該範囲から外れていれば工具15はドリルであると推定できる。従って、加工データに座標データと加工条件データとが含まれていれば、加工データから直接的に工具種類を推定できる。
【符号の説明】
【0051】
1 工作機械システム
10 工作機械
11 機械本体
12 CNC制御部
14 テーブル
15 工具
16 主軸
20 工具種類推定装置
21 記憶部
22 取得部
23 推定部
23a 抽出部
23b 選択部
図1
図2