(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023010479
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】再生可能エネルギーを活用した二酸化炭素の分離回収方法および再生可能エネルギー活用型二酸化炭素分離回収システム
(51)【国際特許分類】
B01D 53/62 20060101AFI20230113BHJP
B01D 53/22 20060101ALI20230113BHJP
B01D 53/06 20060101ALI20230113BHJP
B01D 53/83 20060101ALI20230113BHJP
B01D 53/26 20060101ALI20230113BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20230113BHJP
【FI】
B01D53/62
B01D53/22 ZAB
B01D53/06 100
B01D53/83
B01D53/26
C01B32/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021132079
(22)【出願日】2021-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】519006506
【氏名又は名称】Solution Creators株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川端 康晴
【テーマコード(参考)】
4D002
4D006
4D012
4D052
4G146
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC10
4D002BA04
4D002BA13
4D002CA05
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4D012CK04
4D052BA04
4G146JA02
4G146JB09
4G146JC11
4G146JC21
4G146JC27
4G146JD02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】再生可能エネルギー活用型の二酸化炭素分離回収方法および分離回収システムを提供する。
【解決手段】地熱流体かバイオマスの燃焼熱、または流水のエネルギーで駆動するガス圧縮機またはガス送風機を用いてバイオガスか排気ガスまたは空気の何れかを圧縮または送風し、二酸化炭素分離膜か二酸化炭素吸着分離装置に供給して二酸化炭素を分離回収するとともに、回収した二酸化炭素ガスをガス圧縮機を用いて圧縮した後に、再生可能エネルギー起源の冷熱により冷却して液化またはドライアイス化させる。また、バイオガスから二酸化炭素分離を行う際には、二酸化炭素の分離時に得られるバイオ燃料をエネルギー利用するとともに、発生したバイオガス起源の二酸化炭素も前記の手段を用いて分離し、液化またはドライアイス化して回収する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地熱流体かバイオマスの燃焼熱か水流のいずれかのエネルギーを駆動源とするタービンと、前記タービン軸に直接または変速機を介して接続されたガス圧縮機またはガス送風機によって、バイオガスか、発電または熱供給システムの排気ガスか空気、および前記のいずれか一つ以上のガスから分離回収された二酸化炭素ガスのいずれか一つ以上を圧縮または送出させることを特徴とする、再生可能エネルギーを活用したガス圧縮方法
【請求項2】
請求項1に記載のガス圧縮機またはガス送風機によって、バイオガスか、排気ガスか、空気のいずれか一つ以上を断熱圧縮して高温高圧化させるか、ガス送出させた後に、地熱流体かバイオマスの燃焼熱か、前記の断熱圧縮されたガスが保有する熱で駆動する吸収式冷凍機または吸着式冷凍機により得られる冷熱か、流水が保有する冷熱か、水力発電によって得られる電力で駆動されるターボ冷凍機によって得られる冷熱のいずれか一つ以上を利用して冷却除湿したうえで二酸化炭素分離膜に通過させることで、供給ガスに含まれる二酸化炭素を分離回収することを特徴とする、二酸化炭素の分離回収方法
【請求項3】
請求項1に記載のガス圧縮機またはガス送風機によって、バイオガスか排気ガス、空気または、これらのガスから分離回収した二酸化炭素ガスのいずれか一つ以上を断熱圧縮して高温高圧化させるかガス送出させた後に、地熱流体かバイオマスの燃焼熱か、前記の断熱圧縮されたガスが保有する熱で駆動する吸収式冷凍機または吸着式冷凍機により得られる冷熱か、流水が保有する冷熱か、水力発電によって得られる電力で駆動されるターボ冷凍機によって得られる冷熱のいずれか一つ 以上を利用して冷却除湿して二酸化炭素吸着材に圧縮ガス中に含まれる二酸化炭素を吸着させたうえで、地熱流体かバイオマスの燃焼熱か、前記の断熱圧縮されたガスまたは分離回収した二酸化炭素ガスが保有する熱か、水力発電で得られる電力で駆動する加熱ヒーターより得られる熱によって、吸着材を加熱して二酸化炭素を放出させて回収することで、供給ガスに含まれる二酸化炭素を分離回収することを特徴とする、二酸化炭素の分離回収方法
【請求項4】
請求項2および請求項3の二酸化炭素分離回収方法において、分離膜か吸着材の上流配管に、温度測定器か湿度測定器または圧力測定器か流量測定器のいずれか一つ以上を具備させ、前記の測定器から得られた計測値に基づいて、二酸化炭素分離膜や二酸化炭素吸着材を用いたガス分離回収の性能が最適となるよう、供給ガスの温度、湿度、圧力および流量を制御することを特徴とする、二酸化炭素の分離回収方法
【請求項5】
請求項1に記載の方法によって二酸化炭素ガスを圧縮した上で、地熱流体かバイオマスの燃焼熱か、前記の断熱圧縮されたガスが保有する熱で駆動する吸収式冷凍機または吸着式冷凍機により得られる冷熱か、流水が保有する冷熱か、水力発電によって得られる電力で駆動されるターボ冷凍機によって得られる冷熱のいずれか一つ以上を利用して圧縮された二酸化炭素ガスを冷却して液化または固化させることで、請求項2または請求項3の方法によって分離回収した二酸化炭素ガスを液化二酸化炭素かドライアイスとして回収することを特徴とする、二酸化炭素の固液化回収方法
【請求項6】
請求項2または請求項3の方法によって、バイオガスから二酸化炭素を分離回収した後に得られるバイオメタンを燃料として燃料電池発電か酸素燃焼発電を行い、前記の発電システムから得られる二酸化炭素と水蒸気の混合ガスを、請求項1に記載のガス圧縮機またはガス送風機の上流に還流させることで、分離されたバイオメタンの燃料利用に伴って発生する二酸化炭素も分離回収することを特徴とする、二酸化炭素の分離回収方法
【請求項7】
地熱流体か水流、または請求項6に記載のバイオメタンを含むバイオマスのいずれかのエネルギーから得られる発電電力により、請求項2に記載の除湿冷却プロセスで得られるドレン水か、発電または冷熱利用を終えた地熱流体か河川水または海水を浄化して得られる純水の電気分解を行い、得られる水素を請求項6に記載のバイオメタンの供給配管に混合させて発電出力を増強させるとともに、得られる酸素を燃料電池発電か酸素燃焼発電における酸化剤として供給することで、請求項6のバイオメタン利用時に得られる排気ガスを二酸化炭素と水蒸気の混合気とすることを特徴とする、バイオメタンの酸化方法
【請求項8】
請求項1または請求項5に記載のガス断熱圧縮により得られる温熱か、請求項6に記載の発電に伴って発生する排熱から得られる温熱か、水力発電で得られる電力で駆動する加熱ヒーターより得られる熱によって、バイオマス発酵槽の加温か木質バイオマスの乾燥を行うとともに、地熱流体かバイオマスの燃焼熱か、前記の断熱圧縮されたガスが保有する熱で駆動する吸収式冷凍機または吸着式冷凍機により得られる冷熱か、流水が保有する冷熱か、水力発電によって得られる電力で駆動されるターボ冷凍機によって得られる冷熱のいずれか一つ以上を利用してバイオマス発酵槽の冷却を行うことで、バイオマス発酵槽の最適温度制御によるバイオガス発生量の最大化や木質バイオマスの乾燥による燃焼性向上を行うことを特徴とする、バイオマスエネルギー利用時のエネルギー効率向上方法
【請求項9】
請求項1に記載した地熱流体かバイオマスの燃焼熱によって得られる蒸気を用いて発電した際に得られる電力か、前記蒸気が汽水分離器に導入された際に汽水分離器から排出される熱水を用いて得られるバイナリー発電の電力か、水力発電によって得られる電力か、請求項6に記載のバイオメタン利用での発電によって得られる余剰電力のいずれか一つ以上の電力が、請求項1~9に記載された構成機器とその附帯設備および、構成機器を運転制御するシステムのいずれか一つ以上に供給されることを特徴とする、二酸化炭素分離回収システム構成機器の駆動方法
【請求項10】
請求項1に記載のガス圧縮またはガス送出の方法と、請求項2または3および4に記載の二酸化炭素の分離回収方法を用いて、バイオガスか、発電または熱供給システムの排気ガスまたは空気から二酸化炭素の分離回収を行うとともに、請求項5に記載の方法を用いて分離回収した二酸化炭素を液化またはドライアイスとして回収することを特徴とする、再生可能エネルギー活用型の二酸化炭素分離回収システム
【請求項11】
バイオガスを利用する請求項10に記載の二酸化炭素分離回収システムにおいて、請求項6~9に記載された方法を用いて、バイオガス中の炭化水素燃料成分をエネルギー利用するとともに、エネルギー利用時に発生する二酸化炭素も含めて液化またはドライアイスとして回収することを特徴とする、再生可能エネルギー活用型の二酸化炭素分離回収システム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地球温暖化の原因物質の一つである大気中の二酸化炭素や、大気中の二酸化炭素を吸収したバイオマスをガス化して利用する際に発生する二酸化炭素を、再生可能エネルギーを活用して効率よく連続的に分離し、地中貯留槽等への固定化にむけた輸送が容易な液化二酸化炭素や、商工業利用しやすいドライアイスとして回収する方法と、この方法を適用した、再生可能エネルギー活用型の二酸化炭素分離回収システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化の防止と、商工業需要が高い液化二酸化炭素やドライアイス製造の環境性向上にむけて、大気中の二酸化炭素や、化石燃料とバイオマス資源を利用したエネルギーシステムの排気ガスに含まれる二酸化炭素を効率よく分離回収し、汎用性の高い液化二酸化炭素やドライアイスとする技術が必要とされている。
【0003】
このうち、エネルギー消費やコストの大半を占めるとされる二酸化炭素ガスの分離回収において、化学吸収法の場合は吸収液の循環と再生に、物理吸着法の場合はガス吸脱着のための温度や圧力のスイング処理に、膜分離法の場合はガスの昇圧や温湿度最適化に、それぞれ多大なエネルギー消費とコストが発生しており、特に二酸化炭素の分離回収プロセスの中で化石燃料や化石燃料起源の電力が消費されて二酸化炭素排出を伴う場合には、正味の二酸化炭素回収量が減少して分離回収効率が低下し、コストも増大するという課題に直面している。
【0004】
こうした課題を解決できる技術として、二酸化炭素の排出を伴わない地熱蒸気や温泉熱、河川や潮流の流水、バイオマスやバイオガスの燃焼熱といった、再生可能エネルギーを利用して空気成分の分離を行う、再生可能エネルギー活用型の空気分離方法や、この方法を活用した再生可能エネルギー活用型空気分離システムが提案されており、本技術を活用することで、窒素や酸素といった製造目的ガスの不純物成分となる二酸化炭素を、吸着材と再生可能エネルギー熱を利用した吸着脱離により分離する方法が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記の通り、特許文献1に示された従来技術によれば、二酸化炭素排出の少ない再生可能エネルギーを活用して、効率よく高純度の窒素ガスや液化酸素などを製造することが可能となり、その製造プロセスにおいて副次的に不純物となる二酸化炭素の分離回収も可能となるが、本技術には以下に示す4つの課題がある。
【0007】
まず本技術は、空気を原料ガスとして窒素や酸素およびアルゴンを分離回収するものであり、大気や燃焼排ガス、およびバイオガスから二酸化炭素を再生可能エネルギー利用により効率よく分離回収するための最適化がなされていないため、二酸化炭素の分離回収量が少なく、分離回収効率も低いという課題がある。
【0008】
特に、二酸化炭素の分離回収を行うにあたっては、大気から約0.04vol%という低濃度の二酸化炭素を分離回収するより、5~15vol%と高濃度で回収効率が向上する、炭化水素燃料を利用したエネルギーシステムの排気ガスや、大気中の二酸化炭素を吸収したバイオマスの発酵によって得られ、約40vol%の高濃度二酸化炭素を含むバイオガスからの分離回収に関するものではないため、排気ガスやバイオガスから再生可能エネルギーを活用して効率よく二酸化炭素を分離回収できないという課題がある。
【0009】
また従来技術では、再生可能エネルギー資源が豊富であっても、送配電網への供給可能量不足や熱の貯蔵輸送効率といった制約から、再生可能エネルギーの有効利用が困難な場所であっても、電力系統の停電による影響を受けることなく、空気成分の分離による高純度ガス製造が可能となるが、従来技術ではこうした場所において、電力系統の制約を受けることなく、再生可能エネルギーを活用して継続的に大気中やバイオマス起源の二酸化炭素を効率よく分離回収できる技術にはなっていない。
【0010】
さらに、分離回収した二酸化炭素を地下帯水層や海底の貯留槽まで輸送し、圧入して固定化させる際には、二酸化炭素固定化サイトへの輸送や地下圧入を効率化するため、分離回収した二酸化炭素を液化したり、固体のドライアイスとして輸送することが望ましく、これは二酸化炭素の商工業利用においても輸送効率の高い液化二酸化炭素やドライアイスの方が好適であることは共通であるが、従来技術では分離回収した二酸化炭素を液化またはドライアイス化する方法と、二酸化炭素の液化やドライアイス化に係わるエネルギー消費と二酸化炭素排出を削減し、大気や排気ガスまたはバイオガスからの二酸化炭素の正味回収量を増加させ、回収効率を向上させるための具体的方法が示されていない。
【0011】
また、バイオマスのメタン発酵等によって得られるバイオガスから二酸化炭素の分離回収を行う際には、二酸化炭素の分離回収後に高純度メタンを主成分とするバイオメタンが精製されるが、このバイオメタンを酸化利用する際に発生する二酸化炭素を、再生可能エネルギー利用によって、効率よく分離回収する方法が開示されていない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、地熱蒸気やバイオマスまたはバイオガスの燃焼熱、あるいは水力や潮力といった再生可能エネルギーから得られる回転駆動力と、再生可能エネルギーやガスの圧縮プロセスから得られる温冷熱を直接的に二酸化炭素の分離回収と液化またはドライアイス化のプロセスに利用することで、正味の二酸化炭素分離回収量を増加させ、大気やエネルギーシステムの排気ガスまたはバイオマス起源のバイオガスから高い効率で二酸化炭素の分離回収を行う、再生可能エネルギー活用型の二酸化炭素分離回収方法と、本技術を適用した再生可能エネルギー活用型の二酸化炭素分離回収システムを提供することである。
【0013】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
地熱流体かバイオマスの燃焼熱か水流のいずれかのエネルギーを駆動源とするタービンと、前記タービン軸に直接または変速機を介して接続されたガス圧縮機またはガス送風機によって、バイオガスか、発電または熱供給システムの排気ガスか空気、および前記のいずれか一つ以上のガスから分離回収された二酸化炭素ガスのいずれか一つ以上を圧縮または送出させることを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載の発明は、
請求項1に記載のガス圧縮機またはガス送風機によって、バイオガスか、排気ガスか、空気のいずれか一つ以上を断熱圧縮して高温高圧化させるか、ガス送出させた後に、地熱流体かバイオマスの燃焼熱か、前記の断熱圧縮されたガスが保有する熱で駆動する吸収式冷凍機または吸着式冷凍機により得られる冷熱か、流水が保有する冷熱か、水力発電によって得られる電力で駆動されるターボ冷凍機によって得られる冷熱のいずれか一つ以上を利用して冷却除湿したうえで二酸化炭素分離膜に通過させることで、供給ガスに含まれる二酸化炭素を分離回収することを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の発明は、
請求項1に記載のガス圧縮機またはガス送風機によって、バイオガスか排気ガス、空気または、これらのガスから分離回収した二酸化炭素ガスのいずれか一つ以上を断熱圧縮して高温高圧化させるかガス送出させた後に、地熱流体かバイオマスの燃焼熱か、前記の断熱圧縮されたガスが保有する熱で駆動する吸収式冷凍機または吸着式冷凍機により得られる冷熱か、流水が保有する冷熱か、水力発電によって得られる電力で駆動されるターボ冷凍機によって得られる冷熱のいずれか一つ 以上を利用して冷却除湿して二酸化炭素吸着材に圧縮ガス中に含まれる二酸化炭素を吸着させたうえで、地熱流体かバイオマスの燃焼熱か、前記の断熱圧縮されたガスまたは分離回収した二酸化炭素ガスが保有する熱か、水力発電で得られる電力で駆動する加熱ヒーターより得られる熱によって、吸着材を加熱して二酸化炭素を放出させて回収することで、供給ガスに含まれる二酸化炭素を分離回収することを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載の発明は、
請求項2および請求項3の二酸化炭素分離回収方法において、分離膜か吸着材の上流配管に、温度測定器か湿度測定器または圧力測定器か流量測定器のいずれか一つ以上を具備させ、前記の測定器から得られた計測値に基づいて、二酸化炭素分離膜や二酸化炭素吸着材を用いたガス分離回収の性能が最適となるよう、供給ガスの温度、湿度、圧力および流量を制御することを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載の発明は、
請求項1に記載の方法によって二酸化炭素ガスを圧縮した上で、地熱流体かバイオマスの燃焼熱か、前記の断熱圧縮されたガスが保有する熱で駆動する吸収式冷凍機または吸着式冷凍機により得られる冷熱か、流水が保有する冷熱か、水力発電によって得られる電力で駆動されるターボ冷凍機によって得られる冷熱のいずれか一つ以上を利用して圧縮された二酸化炭素ガスを冷却して液化または固化させることで、請求項2または請求項3の方法によって分離回収した二酸化炭素ガスを液化二酸化炭素かドライアイスとして回収することを特徴とする。
【0018】
請求項6に記載の発明は、
請求項2または請求項3の方法によって、バイオガスから二酸化炭素を分離回収した後に得られるバイオメタンを燃料として燃料電池発電か酸素燃焼発電を行い、前記の発電システムから得られる二酸化炭素と水蒸気の混合ガスを、請求項1に記載のガス圧縮機またはガス送風機の上流に還流させることで、分離されたバイオメタンの燃料利用に伴って発生する二酸化炭素も分離回収することを特徴とする。
【0019】
請求項7に記載の発明は、
地熱流体か水流、または請求項6に記載のバイオメタンを含むバイオマスのいずれかのエネルギーから得られる発電電力により、請求項2に記載の除湿冷却プロセスで得られるドレン水か、発電または冷熱利用を終えた地熱流体か河川水または海水を浄化して得られる純水の電気分解を行い、得られる水素を請求項6に記載のバイオメタンの供給配管に混合させて発電出力を増強させるとともに、得られる酸素を燃料電池発電か酸素燃焼発電における酸化剤として供給することで、請求項6のバイオメタン利用時に得られる排気ガスを二酸化炭素と水蒸気の混合気とすることを特徴とする。
【0020】
請求項8に記載の発明は、
請求項1または請求項5に記載のガス断熱圧縮により得られる温熱か、請求項6に記載の発電に伴って発生する排熱から得られる温熱か、水力発電で得られる電力で駆動する加熱ヒーターより得られる熱によって、バイオマス発酵槽の加温か木質バイオマスの乾燥を行うとともに、地熱流体かバイオマスの燃焼熱か、前記の断熱圧縮されたガスが保有する熱で駆動する吸収式冷凍機または吸着式冷凍機により得られる冷熱か、流水が保有する冷熱か、水力発電によって得られる電力で駆動されるターボ冷凍機によって得られる冷熱のいずれか一つ以上を利用してバイオマス発酵槽の冷却を行うことで、バイオマス発酵槽の最適温度制御によるバイオガス発生量の最大化や木質バイオマスの乾燥による燃焼性向上を行うことを特徴とする。
【0021】
請求項9に記載の発明は、
請求項1に記載した地熱流体かバイオマスの燃焼熱によって得られる蒸気を用いて発電した際に得られる電力か、前記蒸気が汽水分離器に導入された際に汽水分離器から排出される熱水を用いて得られるバイナリー発電の電力か、水力発電によって得られる電力か、請求項6に記載のバイオメタン利用での発電によって得られる余剰電力のいずれか一つ以上の電力が、請求項1~9に記載された構成機器とその附帯設備および、構成機器を運転制御するシステムのいずれか一つ以上に供給されることを特徴とする。
【0022】
請求項10に記載の発明は、
請求項1に記載のガス圧縮またはガス送出の方法と、請求項2または3および4に記載の二酸化炭素の分離回収方法を用いて、バイオガスか、発電または熱供給システムの排気ガスまたは空気から二酸化炭素の分離回収を行うとともに、請求項5に記載の方法を用いて分離回収した二酸化炭素を液化またはドライアイスとして回収することを特徴とする。
【0023】
請求項11に記載の発明は、
バイオガスを利用する請求項10に記載の二酸化炭素分離回収システムにおいて、請求項6~9に記載された方法を用いて、バイオガス中の炭化水素燃料成分をエネルギー利用するとともに、エネルギー利用時に発生する二酸化炭素も含めて液化またはドライアイスとして回収することを特徴とする。
【0024】
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、地熱蒸気やバイオマスまたはバイオガスの燃焼熱、あるいは水力や潮力といった再生可能エネルギーから得られる回転駆動力や温冷熱と電力を、直接的に大気や排気ガスまたはバイオガスに含まれる二酸化炭素の分離回収に利用することで、二酸化炭素の分離回収に係わる化石燃料の消費を削減して、正味の二酸化炭素回収量を増加させ、商工業利用や固定化にむけた輸送が容易な液化二酸化炭素やドライアイスとして回収することが可能となる。
また、再生可能エネルギー資源が豊富であっても、送配電網への供給可能量不足や熱の貯蔵輸送効率といった制約から、再生可能エネルギーの有効利用が困難な場所であっても、電力系統の停電による影響を受けることなく、大気中やバイオマス起源の二酸化炭素を継続的に分離回収することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明に係る第1実施形態である、バイオマスのメタン発酵システムと二酸化炭素分離膜モジュールで構成される、地熱エネルギー多段階活用型の二酸化炭素液化回収システムを示す模式図である。
【
図2】本発明に係る第2実施形態である、バイオマスのメタン発酵システムと二酸化炭素吸着材モジュールで構成される、地熱エネルギー多段階活用型の二酸化炭素液化回収システムを示す模式図である。
【
図3】本発明に係る第3実施形態である、二酸化炭素分離膜モジュールを活用した、地熱エネルギー多段階活用型の大気中二酸化炭素液化回収システムを示す模式図である。
【
図4】本発明に係る第4実施形態である、バイオマスのメタン発酵システムと二酸化炭素分離膜モジュールで構成される、河川水多段階活用型の二酸化炭素液化回収システムを示す模式図である。
【
図5】本発明に係る第5実施形態である、バイオマス燃焼発電システムと二酸化炭素分離膜モジュールで構成される、バイオマスエネルギー活用型の二酸化炭素液化回収システムを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。なお、本発明の範囲は特許請求の範囲記載のものであって、本実施形態に限定されるものではない。
【0028】
(第1実施形態)
【0029】
まず本発明の第1実施形態に係る、バイオマスのメタン発酵システムと二酸化炭素分離膜モジュールで構成される、地熱エネルギー多段階活用型の二酸化炭素液化回収システムについて、
図1に基づいて説明する。
【0030】
図1に示すように、このシステムには、地熱流体1を100℃~180℃程度の地熱蒸気と100℃未満の熱水に分離する汽水分離器2と、前記汽水分離器から排出された地熱蒸気で駆動される蒸気タービン3と、この蒸気タービンの回転軸に変速機4を介して接続され、バイオマスのメタン発酵システム5から発生した後にバイオガス浄化装置6を介して不純物除去されたバイオガスを吸気して断熱圧縮するガス圧縮機7と、前記圧縮機で圧縮された高温高圧バイオガスを予冷する熱交換器8と、冷却された高圧バイオガスの流量を調整する流量調整弁9と、圧力、流量および温湿度を調整された高圧バイオガスから二酸化炭素とバイオメタンを分離する分離膜モジュール10と、前記の分離膜モジュールから分離された高圧の二酸化炭素ガスをさらに昇圧する二酸化炭素ガス圧縮機11と、昇圧された高圧二酸化炭素ガスを冷却して液化させる熱交換器12が具備されている。
【0031】
さらに本システムには、バイオガスを生成して得られたバイオメタンを利用して発電を行い、その際に発生する排気ガスを二酸化炭素と水蒸気の混合気としたうえで水分を除去し、バイオメタン起源の二酸化炭素を分離回収して液化回収を行えるようにするため、分離膜モジュール10のバイオメタン流路の下流側には燃料電池発電システム13が接続されるとともに、その発電出力が水電解装置14に供給され、前記の水電解装置から発生する水素がバイオメタン流路内に追加供給された後に、前記の燃料電池13の燃料極側に供給され、前記の水電解装置から発生する酸素が前記の燃料電池13の空気極側に供給され、未反応の酸素が排気される空気極側の排気ガスは、ブロワ15を介して燃料電池13の空気極に還流されることで、空気極には常に純酸素が循環供給される構成となっている。
【0032】
また本システムでは、分離膜モジュール10のガス分離性能を最適化するための供給ガスの温湿度調整や、回収した二酸化炭素ガスを液化するための冷却とメタン発酵槽の加温や、システムを構成する冷凍機と附帯設備の冷却塔、ポンプ、ブロワや運転制御機器を駆動するための電力を得るため、地熱エネルギーの多段階活用を行うことで、二酸化炭素の液化回収に係わるエネルギー消費で再生可能エネルギー活用を行い、正味の二酸化炭素回収性能を高める構成としている。
【0033】
すなわち、分離膜モジュール10に供給するバイオガスの温湿度調整では、前記メタン発酵システム5から排出されるメタンガスの除湿と冷却において、前記の蒸気タービンから排出される70~90℃の高温水で駆動される吸収式冷凍機16から得られる5~15℃の冷却水が利用され、高圧の二酸化炭素ガスを液化させるための冷却では、前記の汽水分離器で分離された高温熱水を利用して運転されるバイナリー発電システム17から排出される50~80℃の高温水で駆動される吸着式冷凍機18から得られる5~15℃の冷却水が利用されるとともに、前記の吸着式冷凍機から排水される30~60℃の低温温水が、前記のメタン発酵システム5のメタン発酵槽に供給され、メタン発酵槽を加温してバイオマスの発酵促進に活用された後に排水される構成となっている。
【0034】
また、システムを構成する冷凍機と附帯設備の冷却塔、ポンプ、ブロワや運転制御機器は、前記のバイナリー発電システム17から得られる再生可能エネルギー電力で駆動されるように構成されているため、構成機器の運転に係わるエネルギー消費に伴う二酸化炭素の排出を抑制することができるとともに、電力系統に依存することなく二酸化炭素の液化回収を行うことが可能である。なお、本システムの起動停止や過渡的な電力需給バランスの調整には、前記バイナリー発電システムの発電電力を充放電利用できる蓄電システム19を具備しておくことが望ましい。
【0035】
さらに本システムでは、分離膜モジュール10のガス分離性能を最適化するため、供給ガスの温湿度と圧力および流量を最適制御する機構を具備している。具体的にはバイオガス中の水分と、前記燃料電池13からの燃料極排気ガスに含まれる過剰な水分を除去し、分離膜モジュールに供給するガスの湿度を50%未満、より好ましくは20%前後とするため、除湿器20に5~15℃の冷却水を循環ポンプ21を利用して循環供給し、凝縮結露での水分回収を行うが、この凝縮結露での除湿量は、分離膜モジュール10の上流に設置された湿度測定器22の測定値を参照しながら循環ポンプ21の回転数を制御し、分離膜モジュール供給ガスの湿度が高い場合には冷却水の循環量を増加させて凝縮結露を促進することで除湿を強化する一方、供給ガスの湿度が低い場合には冷却水の循環量を減少させて凝縮結露を抑制し、冷却水の循環量制御によって湿度制御を行う機構としている。
【0036】
さらに、供給ガスの温度を最適制御する際には、分離膜モジュール10の上流に設置された温度測定器23の測定値を参照しながら循環ポンプ24の回転数を制御し、バイオガスを予冷する熱交換器8に供給する冷却水の循環供給量を制御し、分離膜モジュール供給ガスの温度が高い場合には、冷却水の循環量を増加させてガス冷却を促進し、供給ガスの温度を低下させる一方、供給ガスの温度が低い場合には冷却水の循環量を減少させて冷却を抑制し、冷却水の循環量制御によって温度制御を行う機構としている。
【0037】
また、供給ガスの圧力を最適制御する際には、分離膜モジュール10の上流に設置された圧力測定器25の測定値を参照しながら、変速機4を制御してバイオガス圧縮機7の回転数を制御し、分離膜モジュール供給ガスの圧力が低い場合には、圧縮機の回転数を増加させてガス圧縮を促進し、供給ガスの圧力を上昇させる一方、供給ガスの圧力が高い場合には圧縮機の回転数を減少させて圧縮を抑制し、変速機を介した圧縮機の回転数制御によって圧力制御を行う機構としている。
【0038】
さらに、供給ガスの流量を最適制御する際には、分離膜モジュール10の上流に設置された流量測定器26の測定値を参照しながら流量調整弁9の開度を制御して、分離膜モジュール供給ガス流量が少ない場合には、流量調整弁の開度を拡げてガス流量を増加させる一方、供給ガスの流量が多い場合には流量調整弁の開度を狭めてガス流量を減少させることで、流量調整弁の開度制御によって流量制御を行う機構としている。
【0039】
また、前記の水電解装置14に供給する純水は、前記20の除湿器から得られるドレン水や、前記18の吸着式冷凍機から排水される排温水を、イオン交換樹脂等の純水製造装置27を通過させることで得られるが、地熱流体の排温水中には多量の温泉成分が含まれて純水製造装置への負荷が大きくなる場合も考えられるため、不純物含有量が少なく純水化が容易な除湿器20からのドレン水を主として利用し、それでも純水が不足する分の原料水として排温水を利用することが望ましい。
【0040】
このように、本発明の二酸化炭素液化回収システムでは、二酸化炭素の分離膜を利用した分離回収プロセスの中で、エネルギー消費の大きい分離膜供給ガスの圧縮と、分離回収した二酸化炭素ガスの圧縮において、地熱蒸気で駆動されるタービンの回転力を直接利用することで、再生可能エネルギーの直接利用による、二酸化炭素の液化回収を可能としている。
【0041】
また、本システムで二酸化炭素を分離回収するガスは、空気を直接吸気して圧縮し、大気中に含まれる約0.04vol%の二酸化炭素を分離回収しても良いが、大気中の二酸化炭素を吸収したバイオマスを発酵させて得られるバイオガス中の二酸化炭素濃度は約40vol%と1000倍程度の高いことから、大気中の二酸化炭素を分離回収して固定化させるうえでは、バイオガス中の二酸化炭素を分離回収して固定化させる方が分離回収効率が高く、より好適である。
【0042】
また、本システムではバイオガスからの二酸化炭素分離回収によって、発電や熱利用などが可能なカーボンニュートラル燃料となるバイオメタンを得ることができるが、このバイオメタン燃料利用に伴って発生する二酸化炭素も分離回収して固定化できれば、大気中の二酸化炭素を減少させるネガティブエミッションをさらに促進できることとなる。
【0043】
このため、本システムでは、バイオメタンを純酸素と反応させ、生成する排気ガスを二酸化炭素と水蒸気の混合気としたうえで、排気ガスを冷却除湿して水分除去することで、高濃度の二酸化炭素ガスを回収できる機構としているが、その手段は燃料電池発電に限定されず、例えば水電解装置を利用して得られる酸素を利用した純酸素燃焼タービン発電を適用しても良い。
【0044】
以上の構成とすることで、二酸化炭素の排出を伴わない再生可能エネルギーである地熱蒸気エネルギーの多段階活用によって、二酸化炭素を効率よく液化回収することが可能となり、豊富な地熱蒸気があっても送配電網への接続供給ができず、発電利用が困難な場所であっても、地熱蒸気の有効活用による二酸化炭素の高効率液化回収を行えるようになる。
(第2実施形態)
【0045】
次に、本発明の第2実施形態に係る、バイオマスのメタン発酵システムと二酸化炭素吸着材モジュールで構成される、地熱エネルギー多段階活用型の二酸化炭素液化回収システムについて、
図2に基づいて説明する。
【0046】
図2に示すように、第2実施形態のシステムでは、二酸化炭素の分離回収方法として、圧縮バイオガスをアミン担持ゼオライト等の二酸化炭素吸着材を搭載し、変速機28を介して地熱蒸気タービンと接続された回転式ローター29に二酸化炭素を吸着させた後に、高温の二酸化炭素ガスを供給して吸着材の温度を上昇させ、二酸化炭素を脱離回収するプロセスを適用している点が異なる。
【0047】
ここで、二酸化炭素の脱離においては、吸着材の高温化により脱離した高温の二酸化炭素ガスを一部還流させてガス圧縮機通過後の高温圧縮ガスと熱交換器30を介して60~80℃に昇温させた後に、ブロワ31を用いて吸着材ローター29に吹きつけることで、吸着材に吸着していた二酸化炭素を脱離して回収させる、二酸化炭素ガスの循環ラインを形成し、この循環ライン上に二酸化炭素の抽気バルブ32から一部の二酸化炭素ガスを抽気し、圧縮機で圧縮した後に、蒸気タービン通過後の蒸気で駆動される吸収式冷凍機から得られる冷却水を循環供給する、圧縮二酸化炭素ガス冷却器33で冷却を行うことで、二酸化炭素の液化回収を行えるようにしている。
【0048】
また、吸着材ローター29に供給するバイオガスは、吸着材の二酸化炭素吸着性能が最も高くなるよう、第1実施形態と同様の技術により、温湿度と圧力および流量が制御される。なお、第1実施形態では、分離回収前のガスの除湿や冷却に吸収式冷凍機の冷却水を利用し、分離回収して圧縮された二酸化炭素ガスの冷却のために、吸着式冷凍機の冷却を利用していたが、本実施形態においては、吸着材ローターに供給するガス圧力は第1実施形態ほど高くする必要がなく、断熱圧縮によるガスの温度上昇も大きくないため、吸着材ローターに供給するガスの冷却負荷が少なくなる一方、回収した二酸化炭素ガスの温度は第1実施形態より高温化し、液化回収に要するガス冷却の負荷が大きくなることから、利用可能な冷熱量の多い、吸収式冷凍機から得られる冷却水を利用する構成としている。
【0049】
このように、蒸気タービン駆動後の排熱蒸気や高温水と、バイナリー発電後の排温水を、吸収式または吸着式の冷凍機に供給して得られる冷却水の供給先や供給量の配分は、用途と冷却負荷に応じて最適化することが好ましい。
(第3実施形態)
【0050】
次に、本発明の第3実施形態に係わる、二酸化炭素分離膜モジュールを活用した、地熱エネルギー多段階活用型の大気中二酸化炭素液化回収システムについて、
図3を用いて説明する。
【0051】
図3に示すように、本システムでは大気中に蓄積された二酸化炭素を分離して液化回収するため、ガス圧縮機で吸気するガスを、吸気フィルタ34を通じて粉塵や過剰な湿度分を除去した空気である。本システムはバイオマスの発酵処理を必要としないため、地熱蒸気の発生地にバイオマス発酵システムを整備する必要がなく、バイオマス資源を調達供給し続ける必要もなく、地熱蒸気が発生している場所であれば、どこでも幅広く実施することが可能である。
(第4実施形態)
【0052】
次に、本発明の第4実施形態に係わる、バイオマスのメタン発酵システムと二酸化炭素分離膜モジュールで構成される、河川水多段階活用型の二酸化炭素液化回収システムについて、
図4を用いて説明する。
【0053】
図4に示すように、本システムではバイオマス起源の二酸化炭素を液化回収しているが、その再生可能エネルギー源や水電解装置に供給する原料水として、河川の水力と河川水の冷熱および河川水そのものを利用している点が異なる。
【0054】
すなわち、分離膜モジュールに供給するバイオガスや、回収した二酸化炭素ガスの圧縮では、河川流路上に設置された水車式回転力伝達装置35の回転力を直接利用し、圧縮されたバイオガスや二酸化炭素ガスの冷却においては、河川水との熱交換によるガス冷却装置36および37を利用するとともに、水電解装置や附帯設備を駆動するための電力や、バイオマス発酵槽を加温する電気ヒーター38の電力は、河川に敷設された水力発電システム39から得られる再生可能エネルギー電力を利用する構成としている。
【0055】
このような構成とすることで、地熱資源がなく、水力資源に恵まれた地域においても、二酸化炭素の高効率液化回収が可能となる。なお、本システム構成はバイオマスの発酵システムとの組み合わせ事例であるが、第3実施形態と同様、二酸化炭素の分離回収対象ガスを空気とする場合には、バイオマス資源調達等の制約がなく、水力資源を活用できる場所であれば、幅広く適用することが可能である。
(第5実施形態)
【0056】
次に、本発明の第5実施形態に係わる、バイオマス燃焼発電システムと二酸化炭素分離膜モジュールで構成される、バイオマスエネルギー活用型の二酸化炭素液化回収システムについて、
図5を用いて説明する。
【0057】
図5に示すように、第5実施形態のシステムでは、バイオマスガス化燃焼システム40を利用し、バイオマスの空気燃焼によって蒸気タービンを駆動して得られる動力を用いてバイオマス燃焼排ガスの圧縮を行うとともに、蒸気タービン駆動後の高温水を利用してバイナリー発電を行った後、バイナリー発電システムから排水される温水を利用して吸収式冷凍機を駆動し、吸収式冷凍機から排水される低温の温水を利用して吸着式冷凍機を駆動し、燃焼排ガス中の水分除去や圧縮された燃焼排ガスの冷却、および昇圧された二酸化炭素ガスの冷却に利用されている点が、他の実施形態と異なる。
【0058】
このような実施形態とすることで、地熱資源や水力資源がない一方、バイオマス資源が多量に発生する場所や、バイオマス資源の集積地においても、バイオマス起源の二酸化炭素を高効率に液化回収することが可能となる。
【0059】
以上のように、地域に分散する多様な再生可能エネルギーを利用して二酸化炭素の分離と液化回収を行うことで、これまでの産業活動等で大気中に排出された二酸化炭素を効率よく液化二酸化炭素として回収し、地中等への圧入固定化やドライアイス等の商工業利用、カーボンニュートラル燃料等を製造するための原料として利用することが可能となる。また、再生可能エネルギー資源があっても送配電網への接続が困難で、再生可能エネルギー発電が困難な場所においても適用が可能で、電力系統で停電が起こっても継続的に二酸化炭素の液化回収が行えるようになり、幅広い地域で大気中の二酸化炭素を液化回収することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
なお本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、例えば
図3や
図4および
図5の実施形態は、
図2に示した二酸化炭素吸着材で構成される吸着材ローターを用いた分離回収方法でも適用可能であり、
図4の実施形態は河川水の利用に限らず、潮流発電が可能な海峡地域においても適用可能である。
【0061】
このように、前記の実施形態は例示であり、本発明の特許請求範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0062】
1・・・・地熱流体
2・・・・汽水分離器
3・・・・蒸気タービン
4・・・・ガス圧縮機用変速機
5・・・・バイオマス発酵システム
6・・・・バイオガス浄化装置
7・・・・ガス圧縮機
8・・・・ガス冷却器
9・・・・ガス流量調整弁
10・・・二酸化炭素分離膜モジュール
11・・・二酸化炭素ガス圧縮機
12・・・高圧二酸化炭素ガス冷却器
13・・・燃料電池発電設備
14・・・水電解装置
15・・・酸素ガス循環ブロワ
16・・・吸収式冷凍機
17・・・バイナリー発電システム
18・・・吸着式冷凍機
19・・・蓄電システム
20・・・除湿器
21・・・除湿器用冷却水循環ポンプ
22・・・供給ガス湿度測定器
23・・・供給ガス温度測定器
24・・・供給ガス冷却用冷却水循環ポンプ
25・・・供給ガス圧力測定器
26・・・供給ガス流量測定器
27・・・純水製造装置
28・・・吸着材ローター用変速機
29・・・二酸化炭素吸着材搭載ローター
30・・・二酸化炭素循環ガス熱交換器
31・・・二酸化炭素ガス循環ブロワ
32・・・二酸化炭素ガス抽気バルブ
33・・・高圧二酸化炭素ガス冷却器
34・・・吸気フィルタ
35・・・水車式回転力伝達装置
36・・・供給ガス冷却器
37・・・二酸化炭素ガス冷却器
38・・・バイオマス発酵槽加温ヒーター
39・・・水力発電システム
40・・・バイオマスガス化燃焼システム